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審決分類 |
審判 全部申立て 登録を維持 W09 審判 全部申立て 登録を維持 W09 審判 全部申立て 登録を維持 W09 |
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管理番号 | 1354341 |
異議申立番号 | 異議2019-900030 |
総通号数 | 237 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標決定公報 |
発行日 | 2019-09-27 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2019-01-25 |
確定日 | 2019-08-05 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 登録第6099794号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて,次のとおり決定する。 |
結論 | 登録第6099794号商標の商標登録を維持する。 |
理由 |
1 本件商標 本件登録第6099794号商標(以下「本件商標」という。)は,「EYE PHONE」の文字を標準文字で表してなり,平成30年2月26日に登録出願,第9類「眼鏡」を指定商品として,同年10月16日に登録査定され,同年11月22日に設定登録されたものである。 2 引用商標 登録異議申立人(以下「申立人」という。)が引用する商標(以下「引用商標」という。)は,「iPhone」の文字からなり,同人が「スマートフォン」について使用し,需要者の間に広く認識されているとするものである。 3 登録異議の申立ての理由 申立人は,本件商標は商標法第4条第1項第15号,同項第19号及び同項第7号に該当し,商標登録を受けることができないものであるから,その登録は同法第43条の2第1号により取り消されるべきであるとして,その理由を要旨次のように述べ,証拠方法として甲第1号証ないし甲第14号証(枝番号を含む。)を提出した。 (1)商標「iPhone」の著名性について 申立人の製品のうち,スマートフォン「iPhone」(以下「申立人商品」という。)は,申立人が製造販売する唯一のスマートフォンである。スマートフォンの市場開拓の先兵となったのは申立人が2007年(平成19年)に発表した申立人商品である(甲3)。これは世界的なヒット商品であるが,特に日本のスマートフォン市場は当該製品の人気が突出し(甲4),スマートフォンのメーカー別シェアを見ると,2018年(平成30年)には申立人が2012年(平成24年)から7年連続の首位を獲得しており,申立人商品のシェアは44.1%といえる(甲5,甲6)。 このような事実から,申立人商品が著名であることは明らかである。かかる事実は特許庁においても認識されている(甲7)。 さらに,総務省の情報通信白書(平成28年度)によれば,2015年(平成27年)末のインターネット利用者数は1億人強,人口普及率は83.0%,インターネット利用端末として54.3%の人がスマートフォンを使用している(甲8)。そうすると,2016年(平成28年)のスマートフォンのメーカー別シェア(甲9)から考慮すると,約5,455万人がインターネット利用端末として,スマートフォンを使用しているため,約2,951万人(インターネット利用者数の約3割)が申立人商品を使用しているといえる。これは,日本人の4人に1人が申立人商品を使用していることになる。 以上から,我が国において「iPhone」が申立人のスマートフォンを示すものとして著名であることは顕著な事実といえる。 (2)商標法第4条第1項第15号該当性 ア 審査基準では,「他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標」についての考慮事項として,以下を挙げている。これらについて検討すると,本件商標は,次のとおりその全てに該当し,出所混同が生じるおそれがあると判断されるべきものである。また,引用商標の希釈化・汚染化が生じるおそれもある。 (ア)本件商標とその他人の標章との類似性の程度 a 引用商標は,「iPhone」の欧文字を横書きした構成からなるところ,「アイフォーン」又は「アイフォン」の称呼を生ずる。引用商標は,申立人が創作した造語であり,特定の観念を生じないものである。 本件商標は,「EYE PHONE」の欧文字を標準文字で横書きした構成からなるところ,その構成文字全体に相応して「アイフォーン」又は「アイフォン」の称呼が生ずるものである。そして,辞書類に載録された成語とは認められないから,特定の語義を有しない一種の造語として理解されるものである。 そこで,本件商標と引用商標の類否について検討すると,両商標は,その構成中,語頭の「i」の文字と「EYE」の文字において相違はあるとしても,語尾において「PHONE」の文字を共通にするから,外観上近似した印象を与えるものである。加えて,両商標は,「アイフォーン」「アイフォン」の称呼を共通にするものである。 そして,両商標は,共に特定の観念を生じない造語であるから,観念上,比較することができない。 そうすると,本件商標と引用商標とは,観念上,比較できないとしても,称呼を共通にし,外観においても近似した印象を与えるものであるから,両商標は,互いに紛れるおそれのある類似の商標というべきである。 b 過去の裁判例(甲10)を鑑みれば,本件においても,本件商標から生じる「アイフォン」の称呼を頼りに,その指定商品「眼鏡」について取引されると考えられる。 したがって,本件商標と引用商標とは,互いに紛れるおそれのある類似の商標というべきである。 (イ)その他人の標章の周知度 引用商標が著名であることは上記のとおりであり,本件商標は,その「アイフォーン」又は「アイフォン」の称呼からは,申立人商品を容易に想起させ,「EYE」は「i」の同音異義語を当てたにすぎないものと感得させるものである。 (ウ)その他人の標章が創造標章であるかどうか 引用商標は既存の言葉にはなく,申立人が創作した造語商標である。 (エ)その他人の標章がハウスマークであるかどうか 引用商標は,ハウスマークには該当しないが,需要者,消費者の認知度は非常に高い。 (オ)企業における多角経営の可能性 申立人は,コンピュータの分野以外にも音楽事業や映像事業等様々な事業分野で商品・役務展開している(甲11,甲12)。したがって,多角経営の可能性は十分に認められる。 (カ)商品間,役務間又は商品と役務間の関連性 引用商標が使用されている商品「スマートフォン」は,多量の「ブルーライト」を放出しているため,ブルーライトから目を守る対策のーつとして,スマートフォン専用の眼鏡やブルーライトカット眼鏡が利用されている(甲13,甲14)。 したがって,本件商標の指定商品「眼鏡」と商品「スマートフォン」の関連性は高いといえる。 加えて,スマートグラスと称される眼鏡型携帯情報端末が近年話題となっており,また,特許庁において腕時計型携帯情報端末(いわゆるスマートウォッチ)と腕時計は類似推定する旨の審査基準をとっていることから,眼鏡と眼鏡型携帯情報端末も同様に関連性が高いといえる。 したがって,眼鏡と携帯情報端末の関連性は認められる。 (キ)商品等の需要者の共通性その他取引の実情 スマートフォンを使用する際に「眼鏡」を着用する者や,スマートフォン購入時に同時に眼鏡を購入する者もいることから,需要者の範囲に共通性がある。 イ 本号に係る最高裁判決(平10(行ヒ)85号)に照らしても,本件商標がその指定商品「眼鏡」に使用された場合,本件商標に接する取引者,需要者は,「申立人に関係する何らかの眼鏡」,「申立人の新コンセプトによる眼鏡」,「申立人の子会社・関連会社の製造販売ないし提供する眼鏡」及び「申立人の新事業により生まれた眼鏡」等を想起することは必至であって,その出所について混同を生じさせるおそれが極めて高いというべきである。 ウ 小括 以上のとおり,本件商標が,商標法第4条第1項第15号に該当することは明らかというべきである。 (3)商標法第4条第1項第19号該当性 上記のとおり,本件商標は,日本国内で全国的に知られている引用商標と極めて類似する商標であって,引用商標は造語よりなるものである。 本件商標の指定商品は「眼鏡」であり,「PHONE」の語とは何ら関係が無い分野であり,恣意的に採用されていることは明らかである。かかる恣意性において,申立人の著名商標を観念していることは容易に推認できる。 したがって,本件商標は,他人の著名・周知な商標を不正の目的をもって使用するものと推認されるものである。 よって,本件商標は,商標法第4条第1項第19号に該当する。 (4)商標法第4条第1項第7号該当性 上記のとおり,本件商標は,申立人の名声にフリーライドする意図があったことは明白であるから,本件商標の登録は,著しく社会的相当性を欠くものとして,公序良俗に反することは明らかである。 よって,本件商標は,商標法第4条第1項第7号に該当する。 4 当審の判断 (1)引用商標の周知性について 申立人提出の甲各号証及び同人の主張によれば,申立人商品は,スマートフォンのメーカー別出荷台数シェアにおいて,2018年(平成30年)が1,543.8万台,シェア44.1%であったこと,及び2012年(平成24年)から2018年(平成30年)まで7年連続で首位であったことが認められる(甲5)ことから,申立人商品及びそれに使用されている引用商標「iPhone」は,本件商標の登録出願の日(平成30年2月26日)前から,登録査定日はもとより現在まで継続して,申立人の業務に係る商品として,及び同人の業務に係る商品(スマートフォン)を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものと認めることができる。 (2)商標法第4条第1項第15号該当性について ア 本件商標と引用商標の類似性の程度 (ア)本件商標は,上記1のとおり,「EYE PHONE」の文字からなるものであるから,該文字に相応して「アイフォーン」又は「アイフォン」の称呼を生じ,特定の観念を生じないものである。 (イ)引用商標は,上記2のとおり,「iPhone」の文字からなるものであるから,該文字に相応して「アイフォーン」又は「アイフォン」の称呼を生じるものであって,上記(1)のとおり,申立人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものであるから,「(申立人のブランドとしての)iPhone」の観念を生じさせるものと判断するのが相当である。 (ウ)本件商標と引用商標の類否を検討すると,両者は,外観において,2語と1語という構成語数に差異を有し,さらにつづり字の比較においても文字商標における外観の識別上重要な要素である語頭において,「EYE」と「i」の文字の差異を有するから,両者を離隔的に観察しても,相紛れるおそれのないものと判断するのが相当である。 次に,称呼においては,両者は「アイフォーン」又は「アイフォン」の称呼を共通にするものである。 さらに,観念においては,前者が特定の観念を生じないのに対し,後者は「(申立人のブランドとしての)iPhone」の観念を生じさせるものであるから,相紛れるおそれのないものである。 そうすると,本件商標と引用商標は,称呼を共通にするものの,外観及び観念において相紛れるおそれのないものであるから,両者の外観,称呼及び観念によって取引者,需要者に与える印象,記憶,連想等を総合して全体的に考察すれば,両商標は,相紛れるおそれのない非類似の商標というべきものであって,類似性の程度は低いものである。 イ 引用商標の周知著名性及び独創性の程度 上記(1)のとおりの申立人商品の出荷台数及びシェアからすれば,引用商標の周知著名性の程度は高いというのが相当である。 また,独創性については,引用商標の構成文字「iPhone」は既成語ではないものの,該文字は「電話」を意味する英語として親しまれている「Phone」の語の語頭に,欧文字1字「i」を結合してなるにすぎないものであるから,独創性の程度は高いといえない。 ウ 本件商標の指定商品と申立人の業務に係る商品との間の性質,用途又は目的における関連性の程度 本件商標の指定商品「眼鏡」(以下「本件指定商品」という。)と申立人の業務に係る商品「スマートフォン」は,両者の性質,用途及び目的が異なることは明らかであり,両者の関連性の程度は低いというべきである。 エ 商品の取引者及び需要者の共通性その他取引の実情など 本件指定商品と申立人の業務に係る商品「スマートフォン」は,両商品の一般的,恒常的な取引の実情において,生産者,販売者など取引者が異なることは明らかであり,また,両商品の用途,目的が異なることから,需要者の範囲も異なるものと判断するのが相当である。 オ 出所混同のおそれ 上記アないしエに照らし,本件指定商品の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準として判断すれば,引用商標の周知著名性の程度は高いといえるものの,本件商標と引用商標の類似性の程度は低く,引用商標の独創性の程度は高いといえず,本件指定商品と申立人の業務に係る商品との関連性の程度は低く,両商品の取引者及び需要者の範囲は異なるから,本件商標は,商標権者がこれを本件指定商品について使用しても,取引者,需要者をして引用商標を連想又は想起させることはないものと判断するのが相当である。 そうすると,本件商標は,商標権者がこれを本件指定商品について使用しても,取引者,需要者をして引用商標を連想又は想起させることはなく,その商品が他人(申立人)あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように,その商品の出所について混同を生ずるおそれはないものといわなければならない。 その他,本件商標が出所の混同を生じさせるおそれがあるというべき事情も見いだせない。 したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当しない。 (3)商標法第4条第1項第19号及び同項第7号該当性について 上記(1)のとおり,引用商標は,申立人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものと認められるものの,上記(2)アのとおり,本件商標と引用商標は相紛れるおそれのない非類似の商標であり,上記(2)オのとおり,本件商標は引用商標を連想又は想起させるものではない。 そうすると,本件商標は,引用商標の名声にフリーライドするなど不正の目的をもって使用をするものと認めることはできない。 さらに,本件商標が,その出願及び登録の経緯に社会的相当性を欠くなど,公序良俗に反するものというべき事情も見いだせない。 したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第19号及び同項第7号のいずれにも該当しない。 (4)むすび 以上のとおり,本件商標は,商標法第4条第1項第7号,同項第15号及び同項第19号のいずれにも該当するものでなく,その登録は,同条第1項の規定に違反してされたものとはいえず,他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから,同法第43条の3第4項の規定により,維持すべきである。 よって,結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2019-07-25 |
出願番号 | 商願2018-28791(T2018-28791) |
審決分類 |
T
1
651・
22-
Y
(W09)
T 1 651・ 222- Y (W09) T 1 651・ 271- Y (W09) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 日向野 浩志 |
特許庁審判長 |
薩摩 純一 |
特許庁審判官 |
榎本 政実 平澤 芳行 |
登録日 | 2018-11-22 |
登録番号 | 商標登録第6099794号(T6099794) |
権利者 | 株式会社ノベルティアイウェア |
商標の称呼 | アイフォーン、アイフォン、アイ、イイワイイイ |
代理人 | 特許業務法人大島・西村・宮永商標特許事務所 |