• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 一部無効 外観類似 無効としない W03
審判 一部無効 観念類似 無効としない W03
審判 一部無効 称呼類似 無効としない W03
管理番号 1354299 
審判番号 無効2018-890080 
総通号数 237 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2019-09-27 
種別 無効の審決 
審判請求日 2018-10-22 
確定日 2019-08-05 
事件の表示 上記当事者間の登録第5985134号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5985134号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成からなり、平成28年8月18日に登録出願され、第3類「かつら装着用接着剤,洗濯用でん粉のり,洗濯用ふのり,つけまつ毛用接着剤,せっけん類,歯磨き,化粧品,香料,薫料,つけまつ毛」を指定商品として、同29年6月6日に登録査定され、同年10月6日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
請求人が、本件商標の無効の理由として引用する登録第543313号商標(以下「引用商標」という。)は、別掲2のとおりの構成からなり、昭和33年9月11日に登録出願、第3類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同34年10月20日に設定登録され、その後、平成13年2月28日に指定商品を、第3類「おしろい,化粧水,クリーム,頭髪用化粧品(染毛剤を除く),香水類,マスカラー,ネイルエナメル,ネイルエナメル除去剤,パック用化粧料」とする指定商品の書換登録がされたものであり、現に有効に存続しているものである。

第3 請求人の主張
請求人は、本件商標の指定商品中、第3類「化粧品」についての登録を無効とする、審判費用は、被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第4号証を提出した。
1 請求の理由
本件商標は、その指定商品中、第3類「化粧品」について、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項第1号により、その登録を無効にすべきものである。
(1)本件商標と引用商標との類否
ア 本件商標
本件商標は、英文字「C」と英文字「A」を図案化させたものを上段に、英文字「L」と「M」を図案化させたものを下段に各々同じ大きさで横書きにしてなるものであり、かかる構成からすると、「穏やかな、静かな」等の意味を有する「CALM」の語の「CA」を上段に、「LM」を下段に「A」のみを図案化した上で表したものと認められる。そうすると、本件商標からは、その構成に相応し「カーム」の称呼及び「穏やかな、静かな」等の観念が生じることが認められる。
このように認定することは、被請求人白身の商品力タログにおいて、本件商標を使用している「化粧用油、美容液、化粧水」といった商品等について「ABOUT CALM」、「CALMのこだわり」など、「CALM」と紹介していることからしても何ら不自然なものとはいえない(甲3)。
イ 引用商標
引用商標は、筆記体で書した「Calm」の英文字と「カーム」の片仮名を上下二段に横書きしてなるものであり(甲2)、その構成文字に相応し、引用商標からも「カーム」の称呼及び「穏やかな、静かな」等の観念が生じる。
ウ 本件商標と引用商標の対比
本件商標と引用商標からはいずれも「カーム」の称呼、「穏やかな、静かな」等の観念が生じると認定できるため、両者は、観念及び称呼上、相紛らわしく、相互に類似する商標であるといわざるを得ない。
なお、本件商標の審査過程において、被請求人は、引用商標が引用された際に、本件商標については「『シーエー』と『エルエム』と読むのが自然であって、称呼が異なり、特段の概念も生じないと考えるのが普通であります。」などとしていたが(甲4)、本件商標を使用した商品について、自らこれと異なる広告等を行っているのは上記アに記載のとおりである(甲3)。
(2)指定商品の対比
引用商標の指定商品、第3類「おしろい,化粧水,クリーム,頭髪用化粧品(染毛剤を除く),香水類,マスカラー,ネイルエナメル,ネイルエナメル除去剤,パック用化粧料」は、いずれも本件商標の指定商品中、第3類の「化粧品」に含まれる商品である。
したがって、本件商標の指定商品中、第3類の「化粧品」は、引用商標の指定商品と同一又は類似の関係にあるといえる。
(3)まとめ
本件商標と引用商標とは、互いに類似する商標であり、本件商標の指定商品中、第3類「化粧品」は、引用商標の指定商品と同一又は類似する商品である。

第4 被請求人の答弁
被請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証及び乙第2号証を提出した。
1 本件商標と引用商標との類否
商標は、一般に、その品質等を表示するものである場合は、「普通に表示する場合は登録されない」と規定されている(商標法第3条第1項第3号)が、このことは逆に普通に表示されない形態の場合は登録されることの裏返しであり、その特異な表示に基づき登録された場合は、その効力の制限として、普通にその特性を表示するものには商標の効力が及ばないことは当然である(同法第26条第1項第2号)。
引用商標は、別掲2のとおりの構成態様であって、「Calm」の筆記体と、「カーム」の片仮名を二段に併記したものであることが明らかである。 すなわち、「Calm」の筆記体単独でもなく、「カーム」単独でもなく、両者が併記されたものであり、併記の状態は「Calm」の筆記体を上段に配し、「カーム」をその下段に配したものとなっている。
これに対し、本件商標は、別掲1のとおりの構成態様であって、「C∧」を上段に、「LM」を下段に二段に分けて表記したものであり、「CALM」、「Calm」及び「カーム」のいずれでもないことは一目瞭然であるから、引用商標と明らかに外観が異なる。
次に、両商標の称呼を比較すると、引用商標の称呼は明らかに「カーム」となると思われるが、本件商標は、別掲1のとおり、上段右が「∧」という表記であり、これは「V」の上下反転したものであって、直ちに「A」とは読めない。仮に「A」と読めたとしても、上下二段に分けて記載されているので、「シーエー」+「エルエム」の称呼となるのが自然と思料する。
したがって、本件商標は、称呼の点も、引用商標とは異なるといえる。
さらに、観念については、請求人も容認しているように、「CALM」は、「穏やかな、静かな」等の観念が生じることは明白な事実である。
一方、本件商標は、「C∧」の下に「LM」を分けて配置したものであり、「CALM」とは異なることから、引用商標の観念は直ちに生ずるとはいえない。しかも上段右が「∧」なので、直ちに「A」とはならず、引用商標の観念は生じないとするのが自然である。
2 総合的な判断
商標の類否は、外観、称呼、観念の三者を勘案し、総合的に判断するものといえる。したがって、仮に本件商標が「カーム」の称呼を生じ、そこから派生して「穏やかな」「静かな」等の観念を生じたとしても、外観は、明らかに異なっていることから、総合的に両者は非類似とするのが当然である。
3 他の観点からの反論
商標法では、通常、登録されないものとして、その商品の品質等を普通に表示するものが挙げられているところ、一般論としては、「CALM」自体は、通常の表記では、商標法第3条第1項第3号により登録できない語句であることが明らかであることを鑑みると、引用商標は、「普通に用いられる表示」以外の状態の表示であるとして登録されたと推測できる。
すなわち、「穏やかな」「静かな」「落ち着いた」のようなマイルドな意味合いを持つ「Calm」の普通の表示の場合、商標法第3条第1項第3号で拒絶されるところ、引用商標が、普通に用いられる表示「Calm」又は「カーム」と異なるとの観点から、その表示の独自性をもって登録されたと推測される。そうとすれば、「CALM」に関しての商品の性状、意味合い等を普通に説明する使用に関しては、商標権の効力が及ばない範囲として、商標法第26条第1項第2号に明記されていることも考慮されるべきである。
そして、上記した種々の観点が総合的に判断され、本件商標も、無理やりであれば「CALM」の構成要素を含むものであるにも拘わらず、一旦引用商標の存在を理由に拒絶理由通知がなされたものの、意見書の内容が容認されて登録されたと理解している。
なお、請求人は、被請求人のカタログでの「CALM」に関しての説明に関して言及しているが(甲3)、これは化粧品の業界で認識されている「CALM」についての性状等に関する言及であり、上記商標法第26条第1項第2号により、何ら制約を受けない一般的な説明であり、何人も普通に表現できる範囲に含まれ、この一般的な性状の説明に関しての言及は言い掛かりといわざるを得ない。
4 「CALM」、「カーム」の化粧品での使用例
化粧品の業界において、「CALM」及び「カーム」が穏やかな等の性状を現す語として使用されている例が普通に見受けられる。例として、大手通販のアマゾンでの使用例(乙1)、クリューベル化粧品での使用例(乙2)を添付する。

第5 当審の判断
請求人が本件審判を請求するにつき、利害関係を有する者であることについては、当事者間に争いがないので、本案に入って審理し、判断する。
1 商標法第4条第1項第11号該当性について
(1)本件商標
本件商標は、別掲1のとおり、上段の左側に「C」の欧文字、その右側にアルファベットのA字状の図形(以下「デザイン部分」という。)、下段に「LM」の欧文字を配した構成からなるところ、これらは、同じ大きさ、同じ太さで均等の間隔に配してなることから、本件商標の構成中、「デザイン部分」は、他の欧文字同様、何らかのアルファベットを表したものと把握される場合も少なくないとみるのが相当である。
また、商標を構成する文字列の一部をデザイン化し、表すことも少なくないことから、デザイン部分は、その形状から、アルファベットの「A」として表したものと容易に理解され、認識されるといえる。
そして、かかる構成においては、全体として何らかの語を表したものとして看取されるというよりは、むしろ「C」「A」「L」「M」の欧文字4字を四方に均等に配してなる標章と認識されるといえることから、本件商標からは、「シイエイエルエム」の称呼のみを生じ、特定の観念を生じないものというのが相当である。
(2)引用商標
引用商標は、別掲2のとおり、「Calm」の欧文字と「カーム」の片仮名を二段に横書きしてなるものである。
そして、一般に、欧文字と片仮名とを併記した構成の商標において、その片仮名部分が欧文字部分の称呼を特定すべき役割を果たすものと無理なく認識できるときは、片仮名部分より生じる称呼が、その欧文字部分より生ずる自然の称呼とみるのが相当である。(知財高裁平成23年(行ケ)第10203号同24年2月21日判決参照)。
そうすると、本件商標においては、「Calm」の欧文字の下段に「カーム」の片仮名が記載されていることから、これが「Calm」の読みを特定したものと無理なく認識できるから、引用商標からは、「カーム」の称呼及び「穏やかな、静かな」(「小学館ランダムハウス英和大辞典」株式会社小学館)の観念を生じるものである。
(3)本件商標と引用商標との類否
本件商標及び引用商標の構成態様は、それぞれ、上記(1)及び(2)のとおりであるところ、本件商標は、欧文字の二段書きであるのに対し、引用商標は、欧文字と片仮名の二段書きの構成という差異を有することから、両者は、外観において、判然と区別し得るものである。
また、本件商標から生じる「シイエイエルエム」の称呼と、引用商標から生じる「カーム」の称呼とは、構成音、構成音数において明らかな差異を有することから、両者は、称呼において、明瞭に聴別し得るものである。
さらに、本件商標は、特定の観念を生じないのに対し、引用商標は、「穏やかな、静かな」の観念を生じることから、両者は、観念においても区別し得るものであり、相紛れるおそれはない。
そうすると、本件商標と引用商標とは、外観、称呼及び観念のいずれにおいても異なるものであるから、両者は互いに相紛れるおそれのない非類似の商標というべきである。
したがって、本件商標は、引用商標と非類似の商標であるから、商標法第4条第1項第11号に該当しない。
2 請求人の主張
請求人は、被請求人自身の商品カタログにおいて、「化粧用油、美容液、化粧水」について、「ABOUT CALM」「CALMのこだわり」など「CALM」と紹介していることに言及し(甲3)、本件商標から「カーム」の称呼及び「穏やかな、静かな」の観念が生じる旨主張している。
しかしながら、商標法第4条第1項第11号における商標の類否判断は、当該商標と他人の登録商標(引用商標)との対比において、個別、具体的に判断すべきものであって、本件商標と引用商標の類否の判断は、前記1のとおりであるから、カタログに「CALM」の表示があることのみをもって、本件の判断が左右されるべきものではないし、また、本件商標は、上記1(1)で述べたとおりの構成からなるものであり、「CALM」の文字がカタログ中に表示されていることをもって、直ちに本件商標が、上記観念及び称呼を生じる成語である「CALM」の語を表わしたものと認識されるものということもできない。
したがって、請求人のかかる主張は採用できない。
3 まとめ
以上のとおり、本件商標の登録は、その指定商品中、第3類「化粧品」について、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものではないから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲1(本件商標)



別掲2(引用商標)


審理終結日 2019-06-12 
結審通知日 2019-06-14 
審決日 2019-06-25 
出願番号 商願2016-95535(T2016-95535) 
審決分類 T 1 12・ 262- Y (W03)
T 1 12・ 263- Y (W03)
T 1 12・ 261- Y (W03)
最終処分 不成立  
特許庁審判長 金子 尚人
特許庁審判官 小田 昌子
中束 としえ
登録日 2017-10-06 
登録番号 商標登録第5985134号(T5985134) 
商標の称呼 シーエイエルエム、カーム、カルム、キャルム 
代理人 大向 尚子 
代理人 谷口 登 
代理人 岩瀬 ひとみ 

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ