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審決分類 審判 全部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない Z30
管理番号 1354232 
審判番号 取消2017-300404 
総通号数 237 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2019-09-27 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2017-06-14 
確定日 2019-07-22 
事件の表示 上記当事者間の登録第4592964号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4592964号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおり「大勝軒」の文字からなり、平成13年9月27日に登録出願、第30類「コーヒー及びココア,コーヒー豆,茶,みそ,ウースターソース,ケチャップソース,しょうゆ,食酢,酢の素,そばつゆ,ドレッシング,ホワイトソース,マヨネーズソース,焼肉のたれ,角砂糖,果糖,氷砂糖,砂糖,麦芽糖,はちみつ,ぶどう糖,粉末あめ,水あめ,ごま塩,食塩,すりごま,セロリーソルト,化学調味料,香辛料,食品香料(精油のものを除く。),米,脱穀済みのえん麦,脱穀済みの大麦,食用粉類,食用グルテン,穀物の加工品,ぎょうざ,サンドイッチ,しゅうまい,すし,たこ焼き,肉まんじゅう,ハンバーガー,ピザ,べんとう,ホットドック,ミートパイ,ラビオリ,菓子及びパン,即席菓子のもと,アイスクリームのもと,シャーベットのもと,アーモンドペースト,イーストパウダー,こうじ,酵母,ベーキングパウダー,氷,アイスクリーム用凝固剤,家庭用食肉軟化剤,酒かす,ホイップクリーム用安定剤」を指定商品として、同14年8月9日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。
そして、本件審判の請求の登録は、平成29年6月26日にされていることから、本件審判について、商標法第50条第2項に規定する「その審判の請求の登録前三年以内」とは、同26年(2014年)6月26日から同29年(2017年)6月25日までの期間である(以下、この期間を「要証期間」という場合がある。)。

第2 請求人の主張
請求人は、本件商標の登録を取り消す、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由について、要旨次のように述べ、証拠方法として、審判請求書において、甲第1号証及び甲第2号証を、審判事件弁駁書において、甲第1号証ないし甲第6号証(枝番号を含む。)を提出しているところ、上記審判事件弁駁書において提出された甲各号証については、本審決においては、甲第3号証ないし甲第8号証と読み替えて扱うこととする。
なお、被請求人が回答書において提出した乙第1号証ないし乙第16号証については、後記「第3 被請求人の主張」に記載のとおり、乙第7号証ないし乙第22号証と読み替えている。
1 請求の理由
本件商標は、その指定商品について、継続して3年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実が存しないから、その登録は、商標法第50条第1項の規定により、取り消されるべきものである。
2 答弁に対する弁駁
(1)被請求人は、「べんとう」その他本件審判の請求に係る指定商品に、本件商標を使用していることを立証していない。
ア 被請求人は、乙第1号証に係る商品(以下「乙1商品」という。)及び乙第2号証に係る商品(以下「乙2商品」という。)は、第30類「調理済みラーメン」、「冷凍処理された調理済みラーメン」(以下「調理済みラーメン等」という場合がある。)(類似群コード32F06)に該当し、「調理済みラーメン等」は、スーパーやコンビニエンスストアで販売されている弁当と同様にレンジで温めればすぐに食べることができるので第30類の「べんとう」(類似群コード32F06)に含まれる概念だとしている。
しかし、乙1商品及び乙2商品は、次のとおりの商品(甲3の2、甲5)である。
(ア)電子レンジによる調理の場合には、スープについては、(a)外袋を外し、スープを袋のままお湯につけて解凍し、麺については、(b)凍ったままの麺を透明袋ごと皿などに置き電子レンジで、オート(自動)調理機能は使用せずに、500Wの場合約6分30秒、600Wの場合約5分30秒加熱し(冷たい場合は10秒ずつ追加熱し)、(c)スープを小鉢にあけ、熱湯約80CCを注ぎ、よくかき混ぜ、(d)レンジから麺を取り出し、ザルにあけて冷水で冷やし、よく水を切って、(e)麺を器に移して、ようやく食べられる状態になり、具材は別途入手して適宜加えるというものである。
(イ)鍋による調理の場合は、スープについては、(a)外袋を外し、スープを袋のままお湯につけて解凍し、麺については、(b)内袋を外し、鍋にたっぷりの沸騰したお湯を用意し、凍ったままの麺を入れ、3分から3分30秒間加熱しながら麺をゆで、(c)スープを小鉢にあけ、熱湯約80CCを注ぎ、よくかき混ぜ、(d)レンジから麺を取り出し、ザルにあけて冷水で冷やし、よく水を切って、(e)麺を器に移して、ようやく食べられる状態になり、具材は別途入手して適宜加えるというものである。
(ウ)したがって、乙1商品及び乙2商品は、食べることができる状態になるまで、各場合に応じて上記(ア)の(a)?(e)までの調理又は(イ)の(a)?(e)までの調理という「めんどう」な調理(甲5)をしなければならない。
端的にいえば、完成品又はそれに近い状態で販売される弁当とは異なり、つけ麺のための食材を取り集めた、未調理の食品というべきものである。
しかも、乙1商品及び乙2商品には、麺とスープが入っているのみであり、前記商品の包装に表示されている写真にあるようには、つけ麺に加える具材は入っていない(甲3の1、甲5)。
また、下記のとおり弁当は容器に入れて携えるものであるが、乙1商品及び乙2商品は、容器に入れて販売されているわけではなく、食べる際に器を別に用意して盛り付ける必要がある。
してみれば、前記商品は、「スーパーやコンビニエンスストアで販売されている弁当と同様にレンジで温めればすぐに食べることができる」ものではなく、被請求人の主張する「べんとう」でもないことも明白である。また、類似群コード32F06に含まれる商品(特許庁商標課「商品及び役務の区分解説」〔国際分類第10版対応〕によれば「複数の食材を用いて調理し、そのまま又は温める程度で食すことができる」商品)のいずれにも明らかに該当しないものであり、調理済みラーメン等にも該当しないことも明白である。
イ 弁当の取引上の通念に裏付けられた概念からすると、乙1商品及び乙2商品はもちろん、調理済みラーメン等についても、「べんとう」に含まれないと解すべきである。
弁当は、広辞苑(甲6)の記載、特許庁の「類似商品・役務審査基準」で「弁当」の英語表記は「boxed lunches consisting of rice, with added meat, fish or vegetables」(米、付加的に肉、魚又は野菜からなる器物に入ったランチ)とされていること、その他取引上の通念などからすると「外出先で食事するため、器物に入れて携える食品。」であり、購入した後、特に電化製品などの無い外出先であっても、難なく食事をすることができるものである。
乙1商品及び乙2商品はもちろん、調理済みラーメン等も購入した後、特に電化製品などの無い外出先であっても、難なく食事をすることができるものとは到底いえない。乙1商品及び乙2商品はもちろん、調理済みラーメン等のうち、調理がさらに必要である、具材を付け足す必要がある、容器を準備して盛り付けをする必要がある等の商品についても、「べんとう」に含まれるとはいえない。
ウ 被請求人は、その他、本件商標を本件審判の請求に係る指定商品に使用していることを主張立証していない。
(2)被請求人は、本件商標を「使用」していることを立証していない。
被請求人が、本件商標を「使用」していると主張する態様は、いずれも、商標的使用とはいえないものであり、また、本件商標と同一性があるものの使用とはいえないものである。
ア 被請求人は、乙1商品については、その外装に、「東池袋大勝軒 創設者 大勝軒山岸一雄」の記載とその写真を掲載したうえ、「大勝軒監修 伝統の味 もりそば」と記載していることをもって、本件商標の使用を立証しようとしている。
日本国内には多数の大勝軒を称する店、系列があり、つけ麺(もりそば)の考案者であり池袋大勝軒創設者である大勝軒山岸一雄氏は死亡していることは広く知られていることである(甲7)。
このような背景からすると、乙1商品の外装の上記記載は、つけ麺(もりそば)の考案者であり池袋大勝軒創設者である亡き山岸一雄氏が監修した伝統の味を再現したものである旨の記述をしてキャッチコピーとしているものである。すると、上記記載中の「大勝軒」は、記述の一部であって商標的使用とはいえず、また、「大勝軒」に上記記載の態様と付加要素を加えたことにより、商品の出所表示機能からみても、本件商標の「大勝軒」とは同一性を欠くものとなっているといわざるを得ない。
イ 被請求人は、乙2商品については、「東池袋大勝軒創業者山岸一雄」「麺屋こうじグループ代表 弟子 ・・・」「つけ麺道 店主 孫弟子 ・・・」の記載とその写真と掲載したうえ、「大勝軒監修 豚骨魚介つけ麺 濃厚」と記載していることをもって、本件商標の使用を立証しようとしている。
前記のように日本国内には多数の大勝軒を称する店、系列があり、つけ麺(もりそば)の考案者であり池袋大勝軒創設者である大勝軒山岸一雄氏は死亡していることは広く知られていることである(甲7)。
このような背景からすると、乙2商品の外装の上記記載は、つけ麺(もりそば)の考案者であり池袋大勝軒創設者である亡き山岸一雄氏とその特定の弟子と孫弟子が共同又は、創設者の名を借りて、監修した「豚骨魚介」の「濃厚」な味の商品である旨の記述をしてキャッチコピーとしているものである。すると、上記記載中の「大勝軒」は、記述の一部であって商標的使用とはいえず、また、「大勝軒」に上記記載の態様と付加要素を加えたことにより、商品の出所表示機能からみても、本件商標とは同一性を欠くものとなっているといわざるを得ない。
3 回答に対する弁駁
(1)使用商標と本件商標の同一性について
ア 被請求人の主張する商標の使用は、次のとおりであるが、これらの使用商標は本件商標と社会通念上同一ではない。
(ア)乙第14号証の態様での、山岸一雄氏の氏名、肖像や「麺絆」「元祖つけめん」等の表示を伴う「もりそば なま 池袋大勝軒」等の使用(以下この態様で使用される商標を「乙14使用商標」という。)、使用商品は「穀物の加工品」、使用主体は被請求人。
(イ)乙第15号証の態様での、山岸一雄氏の肖像や「麺絆」等の表示を伴う「中華そば なま 池袋大勝軒」等の使用(以下この態様で使用される商標を「乙15使用商標」という。)、使用商品は「穀物の加工品」、使用主体は被請求人。
(ウ)乙第7号証の態様での、山岸一雄氏の肖像と氏名等の表示を伴う「大勝軒監修 伝統の味 もりそば」等の態様の商標(以下この態様で使用される商標を「乙7使用商標」という。)、使用商品は「穀物の加工品」及び「べんとう」、使用主体は株式会社キンレイ(以下「キンレイ」という。)。
(エ)乙第8号証の態様での、東池袋大勝軒創業者山岸一雄氏と弟子及び孫弟子の肖像と氏名等の表示を伴う「大勝軒監修 豚骨魚介つけ麺」等の使用(以下この態様で使用される商標を「乙8使用商標」という。)、使用商品は「穀物の加工品」及び「べんとう」、使用主体はキンレイ。
イ 社会通念上の同一性は、次のような社会的法的状況を前提に判断すべきである。
(ア)「大勝軒」の多数存在と系列
「大勝軒」の店名のラーメン屋は、東京を中心に古くから多数存在し、大きく東池袋系、代々木上原系、永福町系、人形町系その他の系列に分類でき、東池袋系と代々木上原系を除き互いに関係ないという状況であり、各系列の創業者、創業地、技術伝承、飲食類の味の傾向、規模などは社会的に強い関心を呼び広く社会的に認識されている(甲7)。このような状況では、単に「大勝軒」と示されただけでは、取引関係者、需要者は、どの系列のどのような「大勝軒」であるかに関心が向き、系列を示す地名、人名、創業者等の肖像、関連語句などと結びつけて出所を判断することとなる。
(イ)「大勝軒」を含む商標登録の併存
本件商標の属する第30類においては、登録第4592964号、登録第5328998号等10件の「大勝軒」を含む併存登録例が存在する。
「大勝軒」と地名、人名、関連の深い商品名、二次的店名などと結合した商標が、併存的に登録されており、本件商標とこれら結合商標は、各々、同一でも類似でもないと公的に判断されているのである。社会通念上の同一性の判断は、このような商標登録に関する公的判断に沿って行わなければならない。また、このような多数の商標の存在とその使用により、単に「大勝軒」と示されただけでは、取引関係者、需要者が、どの系列のどのような「大勝軒」であるかに関心が向き、系列を示す地名、人名、創業者等の肖像、関連語句などと結びつけて出所を判断することは一層強まるという連鎖が生じる。
(ウ)その他の状況
山岸一雄氏は、東池袋大勝軒で、後に「つけめん」と呼ばれるようになった「もりそば」を開発したことで広く知られており(甲7、甲8)、また「麺絆」は、「麺がつくる絆」の意味で、山岸一雄氏が作った言葉であり、このことも広く知られている(甲8)。
ウ 被請求人の主張について
(ア)(a)被請求人は、「大勝軒」の商標を、山岸一雄氏の意思に基づいて取得したこと、これを山岸一雄氏の死後、同氏の妹であるS氏が追認する書面を作成していること(乙10)、(b)キンレイは、S氏が代表取締役を務める有限会社大勝軒との「ノウハウ」及び「商標、商号、意匠、およびこれに類する名称、肖像等」の使用許諾に関する契約書(乙11)に基づき「大勝軒」の表示を使用していること、(c)被請求人は、キンレイによる「大勝軒」を含む商標の使用を認識していたこと、(d)本件審判取消の請求後、回答書提出直前に、被請求人が、山岸一雄氏の遺族保護の意思を尊重して作成した書面で、有限会社大勝軒がキンレイに使用許諾している、有限会社大勝軒の「商標、商号、意匠及びこれに類する名称、肖像等」に、本件商標を含まれるものとする書面を作成した(乙16)こと、などを主張している。
(イ)「大勝軒」の商標出願に山岸一雄氏の承諾が必要だという根拠はなく、また、同氏の肖像等の使用について妹のS氏がこれを追認したり、S氏が代表者である会社が使用許諾したりする根拠もないことなどからしても、被請求人の上記主張は、極めて不可解な主張である。また、乙第11号証と乙第16号証との間での有限会社大勝軒の記名方法や字体の相違、乙第16号証の作成日時などからすると上記証拠の真性、証明力にも疑いがある。
しかし、上記の社会的法的状況を前提とし上記の主張及び証拠から、キンレイが使用したい商標は、単なる「大勝軒」の文字からなる商標ではなく、山岸一雄氏の肖像や同氏ゆかりの地名等と「大勝軒」が結合した商標であり、これには山岸一雄氏又は法的には人格権の承継は認められないが同氏の人格権承継者の承諾が必要と考えていた(乙10、乙11)が、本件の不使用取消が問題となるまで、単なる「大勝軒」の文字からなる商標である本件商標の商標権者の許諾が必要とは考えていなかったこと、被請求人は、キンレイの乙第7号証及び乙第8号証の使用を熟知しながら、本件の不使用取消が問題となるまで、これを放置しており、被請求人も乙第7号証及び乙第8号証の使用は、単なる「大勝軒」の文字からなる商標ではなく、山岸一雄氏の肖像や同氏ゆかりの地名等と「大勝軒」が結合した商標であると考えていたこと、及び本件の不使用取消が問題となり、合議体の審尋(平成30年1月25日付け)を受けたのち、急きょ、平成30年2月19日付け確認書(乙16)を作成し、キンレイが、有限会社大勝軒を通じて、被請求人の本件商標の使用許諾を受けているという、取引常識上ありえない奇妙な法律構成の証拠とした事実が推認できる。
すなわち、被請求人が主張する乙7使用商標、乙8使用商標、乙14使用商標及び乙15使用商標の各使用商標は、被請求人、キンレイなどの関係者の意思、意識としても、「大勝軒」と山岸一雄氏の肖像等との結合商標であることを、上記証拠及び被請求人の主張が裏付けているのである。
さらに、乙第19号証には「新 池袋大勝軒 もりそば【2食入り】しょうゆ味」との商品名の記載があり、また、乙第21号証には「池袋大勝軒もりそば2食」との商品名の記載があり、これらが示す商品が、乙14使用商標の商品であるかどうかは疑わしいが、仮に乙14使用商標の商品であるとすれば、被請求人をはじめ関係者の意思、意識として、乙14使用商標は、「池袋」と「大勝軒」の結合商標であったことを示している。
また、乙第20号証には「新 池袋大勝軒 中華そば【2食入り】しょうゆ味」との商品名の記載があり、乙第21号証には「池袋大勝軒中華そば2食」との商品名の記載があり、これらが示す商品が、乙15使用商標の商品であるかどうかは疑わしいが、仮に乙15使用商標の商品であるとすれば、被請求人をはじめ関係者の意思、意識として、乙15使用商標も、「池袋」と「大勝軒」の結合商標であったことを示している。
エ 以上からすると、以下のとおりである。
(ア)乙14使用商標は、山岸一雄氏の肖像と文字列「大勝軒」との結合商標、又は「池袋」と「大勝軒」の結合商標であり、単なる文字列「大勝軒」からなる本件商標との同一性はない。肖像と文字列との距離や、各文字列の大きさの違いなども、上記イで述べた社会的法的な状況からすれば、要素の結合を否定する根拠とはならない。山岸一雄氏の氏名の付加や同氏にちなむ「麺絆」「元祖つけめん」などの付加は、「大勝軒」と山岸一雄氏の肖像との結合や山岸一雄氏の創業地である「池袋」との結合を強化するものである。
(イ)乙15使用商標も、山岸一雄氏の肖像と文字列「大勝軒」との結合商標、又は「池袋」と「大勝軒」の結合商標であり、単なる文字列「大勝軒」からなる本件商標との同一性はない。肖像と文字列との距離や、各文字列の大きさの違いなども、上記イで述べた社会的法的な状況からすれば、要素の結合を否定する根拠とはならない。山岸一雄氏にちなむ「麺絆」などの付加は、「大勝軒」と山岸一雄氏の肖像との結合や山岸一雄氏の創業地である「池袋」との結合を強化するものである。
(ウ)乙7使用商標は、商標的使用とはいえない記述的なものであるが、仮にこのような使用も不使用取消審判での使用として検討すべきであるとしても、山岸一雄の氏名及び肖像等と「大勝軒」の文字からなる結合商標である。上記イで述べた社会的法的な状況からすれば、肖像と「大勝軒」の文字の距離なども問題とならない。「山岸一雄」の記載や、山岸一雄氏が開発命名した「伝統の味 もりそば」を記載することにより山岸一雄氏の肖像と「大勝軒」の結合が強化されている。
(エ)乙8使用商標も商標的使用とはいえない記述的なものであるが、仮にこのような使用も不使用取消審判での使用として検討すべきであるとしても、山岸一雄の氏名及び肖像等と「大勝軒」の文字からなる結合商標である。山岸一雄氏の弟子、孫弟子の氏名肖像の付加も、あくまで山岸一雄氏を中心とする集団を示しており、「つけ麺」の文字の付加も、創始者である山岸一雄氏のとの結びつき、その肖像との結びつきを強化するものである。
(2)使用商標の使用時期について
ア 乙14使用商標
被請求人は、乙14使用商標の使用期間を立証するものとして、「納品書・請求書・領収書」(乙19)の「新 池袋大勝軒 もりそば【2食入り】しょうゆ味」とある商品、及び「販売実績リスト」(乙21)の「池袋大勝軒もりそば2食」とある商品についての記述を挙げる。
しかし、「納品書・請求書・領収書」(乙19)は、発行日が2018年2月7日で受注日が2015年1月16日となっている、押印などがまったくない書面であり、作成名義が被請求人の本社なのか東京工場なのかも明確でない書面であり、信用できない。また、「納品書・請求書・領収書」(乙19)の「新 池袋大勝軒 もりそば【2食入り】しょうゆ味」とある商品が、乙14使用商標を用いていたことについては、何らの立証もされていない。
「販売実績リスト」(乙21)は、「池袋大勝軒もりそば2食」とある商品の販売リストであるが、この商品が、乙14使用商標を用いていたことについては、何らの立証もされていない。また、「納品書・請求書・領収書」(乙19)に記載された商品との同一性も不明である。
以上からすると、乙14使用商標が要証期間に使用されたことは、立証されていない。
イ 乙15使用商標
被請求人は、乙15使用商標の使用期間を立証するものとして、「納品書・請求書・領収書」(乙20)の「新 池袋大勝軒 中華そば【2食入り】しょうゆ味」とある商品、及び「販売実績リスト」(乙21)の「池袋大勝軒中華そば2食」とある商品についての記述を挙げる。
しかし、「納品書・請求書・領収書」(乙20)は、発行日が2018年2月7日で受注日が2014年7月31日となっている、押印などがまったくない書面であり、作成名義が被請求人の本社なのか東京工場なのかも明確でない書面であり、信用できない。また、「納品書・請求書・領収書」(乙20)の「新 池袋大勝軒 中華そば【2食入り】しょうゆ味」とある商品が、乙15使用商標を用いていたことについては、何らの立証もされていない。
「販売実績リスト」(乙21)は、「池袋大勝軒中華そば2食」とある商品の販売リストであるが、この商品が、乙15使用商標(「中華そば なま 池袋大勝軒」との記載がある)を用いていたことについては、何らの立証もされていない。また、乙第20号証に記載された商品との同一性も不明である。
以上からすると、乙15使用商標が要証期間に使用されたことは、立証されていない。
ウ 乙7使用商標及び乙8使用商標
被請求人は、乙7使用商標及び乙8使用商標の使用期間の証拠として、乙第12号証をあげ「インターネット上でのプレスリリース」と説明し、「https://news.infoseek.co.jp./article/atpress 86565/」を付記しているが、これがプレスリリースであるのか、プレスリリースに基づく報道なのか、文書の作成者、作成日等が不明である。また、文書記載の予定のとおり販売が開始されたのかどうかの立証もなく、乙7使用商標及び乙8使用商標の要証期間の使用についても、未だ立証されていない。
(3)「べんとう」での使用について
ア 被請求人は、乙7使用商標及び乙8使用商標は、本件審判の請求に係る指定商品「べんとう」に使用されていると主張し、その論拠として、(a)乙7使用商標及び乙8使用商標のパッケージに「要冷凍」「レンジで簡単(レンジでつけ麺)」と記載されている(b)そうとすれば、乙7使用商標及び乙8使用商標を付した商品はレンジで温めれば調理をせずにそのまま食べることができるものである(c)したがって、この商品は調理済みラーメン等(類似群コード32F06)に該当する(d)調理済みラーメン等は「べんとう」(類似群コード32F06)に含まれる概念であると主張する。
イ 上記アの論拠(a)と(b)との間には、論理の飛躍、すり替えがある。
(a)はパッケージ上の記載の問題であり、(b)は商品の性質の問題であって、(a)は(b)の論拠とはならない。
被請求人は、特許庁の商標課商標国際分類室に乙第7号証及び乙第8号証を示して問い合わせたところ「調理済みラーメン」に該当するとの回答を得たとのことであるが、仮に、それが真実であるとしても、乙第7号証及び乙第8号証はあくまでパッケージであって、特許庁としては、実際の商品の性質について判断できる立場にはなかったものと考えられ、また、このような問い合わせの回答により、審判の判断が左右されることはない。
ウ 次に、上記アの論拠(b)と(c)は、理論の展開として不可解であるが、類似性と同一性又は包摂を混同している。
弁当は、調理を要さないことのみならず「器物に入れて携え」、電化製品などのない外出先でも難なく食事をすることができるものである(甲6等)。「調理済みラーメン等」と弁当は、調理を要さないという点で類似し、重なり合うこともあり得るかもしれないが、これらが「べんとう」に含まれるわけでも両者が同一なわけでもない。調理済みラーメン等は本件商標の指定商品ではなく、取消の対象としている指定商品でもない。本件と関係のない調理済みラーメン等という概念を挿入しても、乙7使用商標及び乙8使用商標は、本件審判の請求に係る指定商品「べんとう」に使用されているとの結論を導き出すことはできない。
エ 以上のとおり、被請求人は、本件商標を「べんとう」に使用しているとの立証をしていない。
(4)キンレイの地位について
ア 被請求人は、乙7使用商標及び乙8使用商標の使用者であるキンレイが本件商標の通常使用権者であることを立証しようとして、(a)被請求人は、「大勝軒」の商標を、山岸一雄氏の意思に基づいて取得したこと、これを山岸一雄氏の死後、同氏の妹であるS氏が追認する書面(乙10)を作成していること、(b)キンレイは、S氏が代表取締役を務める有限会社大勝軒との「ノウハウ」及び「商標、商号、意匠、およびこれに類する名称、肖像等」の使用許諾に関する契約書(乙11)に基づき「大勝軒」の表示を使用していることなど、及び(c)被請求人は、キンレイによる「大勝軒」を含む商標の使用を認識していたこと、(d)本件審判の請求後、回答書提出直前に、被請求人が、山岸一雄氏の遺族保護の意思を尊重して、作成した書面で、有限会社大勝軒がキンレイに使用許諾している、有限会社大勝軒の「商標、商号、意匠及びこれに類する名称、肖像等」に、被請求人の「大勝軒」の商標を含まれるものとする書面を作成した(乙16)ことなどを主張している。
イ 「大勝軒」の商標出願に山岸一雄氏の承諾が必要だという根拠はなく、また、山岸一雄氏の肖像等の使用について山岸一雄氏の妹S氏がこれを追認したり、同氏が代表者である会社が使用許諾したりする根拠もないことなどからしても、被請求人の上記主張は、極めて不可解な主張である。また、乙第11号証と乙第16号証との間での有限会社大勝軒の記名方法や字体の相違、乙第16号証の作成日時などからすると上記証拠の真性、証明力にも疑いがある。
ウ 上記の社会的法的状況を前提とし上記の主張及び証拠から、キンレイが使用したい商標は、単なる「大勝軒」の文字からなる商標ではなく、山岸一雄氏の肖像や同氏ゆかりの地名等と「大勝軒」が結合した商標であり、これには山岸一雄氏又は法的には人格権の承継は認められないが同氏の人格権承継者の承諾が必要と考えていた(乙10、乙11)が、本件の不使用取消が問題となるまで、単なる「大勝軒」の文字からなる商標である本件商標の商標権者の許諾が必要とは考えていなかったこと、被請求人は、キンレイの使用(乙7、乙8)を熟知しながら、本件の不使用取消が問題となるまで、これを放置しており、被請求人も当該使用は、単なる「大勝軒」の文字からなる商標ではなく、山岸一雄氏の肖像や同氏ゆかりの地名等と「大勝軒」が結合した商標であると考えていたこと、本件の不使用取消が問題となり、審判官の審尋(平成30年1月25日付け)を受けたのち、急きょ、平成30年2月19日付け確認書(乙16)を作成し、キンレイが、有限会社大勝軒を通じて、本件商標の使用許諾を受けているという、技巧をこらしているが、取引常識上ありえない法律構成の証拠としたという事実が推認できる。
エ 以上からすると、キンレイが、本件商標の使用権者であったことは立証されておらず、むしろ、キンレイ及び被請求人は、乙7使用商標及び乙8使用商標について、本件商標の使用許諾は必要ないと考えていたことが推認される。
(5)その他、本件商標の要証期間の使用を立証する証拠はない。

第3 被請求人の主張
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、審判事件答弁書において、乙第1号証ないし乙第6号証を、回答書において、乙第1号証ないし乙第16号証を提出しているところ、上記回答書において提出された乙各号証については、本審決においては、乙第7号証ないし乙第22号証と読み替えて扱うこととする。
1 答弁の理由
本件商標の通常使用権者が、本件審判の請求に係る指定商品について、審判の請求の登録前3年以内に、日本国内において、本件商標の使用をしていることから、本件商標の指定商品についての登録を取消されるべき理由はない。
(1)「べんとう」についての本件商標の使用
ア 本件商標の使用の態様
使用の態様は、乙第1号証及び乙第2号証のとおりである。
乙第1号証と乙第2号証は、本件商標の通常使用権者であるキンレイのホームページの写しであり、ここには「大勝軒」の大きな文字が付された「大勝軒監修 伝統の味 もりそば」「大勝軒監修 豚骨魚介つけ麺」と記載されている。
上記商品は、パッケージの右下に「要冷凍」と記載されていることから、冷凍食品の一つである「冷凍ラーメン」に該当し、当該パッケージの左下には「レンジで簡単」の表示がされており、レンジで温めれば、調理をせずにそのまま食べることができるものである。
したがって、当該「冷凍ラーメン」は、特許情報プラットフォームでの検索によれば、第30類「調理済みラーメン等」(類似群コード32F06)に該当する。
「調理済みラーメン等」はスーパーやコンビニエンスストアで販売されている弁当と同様にレンジで温めればすぐに食べることができるので第30類の「べんとう」(類似群コード32F06)に含まれる概念である。
そして、乙第1号証と乙第2号証で明示されているように、商標「大勝軒」が使用されており、本件商標は、漢字で「大勝軒」と記載された文字商標であるのに対し、通常使用権者であるキンレイが使用している商標も、漢字で「大勝軒」と大きく記載されており、本件商標と実際の使用商標は、自他商品の識別標識として同一の機能を果たしていると評価できる。
したがって、この使用の態様は、本件商標と同一と認められる。
なお、使用商標は、本件商標と字体が異なるが、このような字体の変更は、本件商標を実際に使用する場合に通常行われるものであり、商標法第50条第1項かっこ書にも明示されているとおり、本件商標と使用商標間における自他商品識別標識としての同一性を阻害するほどの要因にはなっていないことから、本件商標と使用商標との間には、少なくとも社会通念上の同一性が確実に保持されていると評価すべきである。
イ 本件商標の使用者
本件商標の使用者は、キンレイであるところ、キンレイは、被請求人から許諾を受けた通常使用権者に該当する。
有限会社大勝軒の履歴事項全部証明書(乙3)からわかるように同社は、大勝軒の創始者である故山岸一雄氏が代表取締役を務めていた会社であり、同氏が平成27年4月1日に死去された後、遺族であるS氏が代表取締役を務めている。
被請求人は、大勝軒の創始者である故山岸一雄氏の生前に、同氏の意思に基づき本件商標について商標登録を取得した。この事実は、有限会社大勝軒の現代表者であるS氏の承諾書(乙4)から明らかである。
また、上記承諾書(乙4)には「商標の使用に関しての全権限はカネジン食品が持ち許諾が必要になる」旨記載されている。
「ノウハウ実施許諾契約書」(乙5)からわかるようにキンレイは、有限会社大勝軒からのノウハウ実施許諾契約に基づき冷凍麺類の製造販売を行い、かつ、被請求人の承諾の下に、「大勝軒」の表示を使用している。
したがって、キンレイは、本件商標の通常使用権者である。
ウ 本件商標の使用時期及び使用場所
乙第6号証は「大勝軒監修 伝統の味 もりそば」「大勝軒監修 豚骨魚介つけ麺」のインターネット上でのプレスリリースの写しであり、これは、前記商品が、2016年2月22日から全国の量販店で発売されたことを示している。
したがって、前記商標の使用が、要証期間にされたことが明白であり、また、前記商品は、乙第1号証及び乙第2号証から、インターネット上での通信販売がされており、商標登録を維持するに十分な量の使用がされていることが明白であって、通常使用権者であるキンレイの使用は、日本国内での使用である。
(2)まとめ
以上のように、通常使用権者は、本件審判の請求に係る指定商品について、要証期間に、日本国内において、本件商標の使用をしている。
2 回答書
被請求人は、審判事件答弁書で、日本国内において、「べんとう」について本件商標を使用している旨主張したが、これは、請求人が本件商標の指定商品中「穀物の加工品」を除き本件審判請求をしてきたものであると認識したからであり、新たに「穀物の加工品」についても、被請求人が本件商標を使用していることを証明する。
(1)本件商標の使用者について
ア 本件商標の使用者は、商標権者(被請求人)であるカネジン食品株式会社である。使用の態様は、乙第13号証ないし乙第15号証のとおりである。
乙第13号証は、被請求人のホームページの写しである。ここでは「商品紹介」がされており「池袋 大勝軒 もりそば」と「池袋 大勝軒 中華そば」が掲載されている。また、乙第14号証は、乙第13号証で示した「池袋 大勝軒 もりそば」のパッケージの拡大写真であり(表面・裏面)、乙第15号証は、乙第13号証で示した「池袋 大勝軒 中華そば」のパッケージの拡大写真である(表面・裏面)。乙第13号証ないし乙第15号証には「大勝軒」の大きな文字が付された商品が記載されている。
イ キンレイも本件商標の使用者である。使用の態様は、乙第7号証及び乙第8号証のとおりである。乙第7号証及び乙第8号証は、使用者であるキンレイのホームページの写しであり、ここにも「大勝軒」の大きな文字が付された商品が記載されている。
キンレイは、被請求人から使用許諾を受けた通常使用権者に該当する。
有限会社大勝軒の履歴事項全部証明書(乙9)からわかるように有限会社大勝軒は、大勝軒の創始者である故山岸一雄氏が代表取締役を務めていた会社であり、同氏が平成27年4月1日に死去された後は、遺族であるS氏が代表取締役を務めている。被請求人は、大勝軒の創始者である故山岸一雄氏の生前に、同氏の意思に基づき本件商標について商標登録を取得した。この事実は、有限会社大勝軒の現代表者であるS氏の承諾書(乙10)から明らかである。また、この承諾書には「商標の使用に関しての全権限はカネジン食品(被請求人)が持ち許諾が必要になる」旨記載されているところ、許諾は必ずしも書面等で明示する必要はなく、黙示的に許諾した場合も含まれている。
「ノウハウ実施許諾契約書」(乙11)からわかるようにキンレイは、有限会社大勝軒からのノウハウ実施許諾契約に基づき麺類の製造販売を行っている。そして、キンレイから有限会社大勝軒には、上記ノウハウ実施許諾契約に基づき、ライセンス料が支払われている。被請求人は、キンレイによる本件商標の使用を認識していた。被請求人とキンレイの間に直接の商標使用許諾契約書は存在しないが、被請求人は「自分の遺族に少しでも金銭を残してあげたい」という故山岸一雄氏の意思も認識しており、その意思を尊重したいと考えていたことから、被請求人は有限会社大勝軒に商標の再使用許諾を認めており、それを有限会社大勝軒もキンレイも認識していた。この商標の再使用許諾に関する「有限会社大勝軒」「株式会社キンレイ」「カネジン食品株式会社」の3社の確認書を乙第16号証として提出する。
本件商標は上記のように被請求人の意思が介在し通常使用権者といえるキンレイによって日本国内で、現に使用されており、まったくの無関係な第三者による使用ではない。今回の状況で本件商標を取り消すことは、商標法第50条の趣旨にそぐわないものであり、仮に今回の状況で使用権者の使用を認めないと使用により商標「大勝軒」に化体している業務上の信用が損なわれることになる。
以上のことから、キンレイは被請求人の通常使用権者に該当するといえる。
(2)本件商標を使用している商品について
ア 乙第14号証及び乙第15号証には、商品のパッケージの裏面に「生ラーメン」と記載されており、当該商品は「スープつき中華そばの麺」「具・スープ付きの中華そばの麺」「即席半生ラーメン」に該当し、第30類の「穀物の加工品」(類似群コード32F03)の範ちゅうに属する。
イ 乙第7号証及び乙第8号証には、商品パッケージの右下に「要冷凍」と記載されており、また、スープも入っている。このことから当該商品は「スープ付きの冷凍中華そばの麺」に該当し、第30類の「穀物の加工品」の範ちゅうに属する。
また、上記商品のパッケージの左下には「レンジで簡単(レンジでつけ麺)」の表示がされており、レンジで温めれば、調理をせずにそのまま食べることができるものである。
したがって、当該商品は第30類「調理済みラーメン等」(類似群コード32F06)にも該当するものであり、この点については、特許庁の商標課商標国際分類室に乙第7号証又は乙第8号証を示して問い合わせしたところ「第30類の調理済みラーメンに該当すると認められます」とのことであった。
そして、「調理済みラーメン等」はスーパーやコンビニエンスストアで販売されている弁当と同様にレンジで温めればすぐに食べることができるので第30類の「べんとう」(類似群コード32F06)に含まれる概念である。
(3)本件商標と使用商標の同一性について
ア 乙第13号証ないし乙第15号証で明示されているように、被請求人は、漢字で大きく記載した「大勝軒」を使用している。
一方、本件商標は、漢字で「大勝軒」と記載された文字商標であり、本件商標と実際の使用商標は、自他商品の識別標識として同一の機能を果たしていると評価でき、したがって、使用の態様は、本件商標と同一と認められる。
なお、使用商標は、本件商標と字体が異なるが、このような字体の変更は、登録商標を実際に使用する場合に通常行われるものであり、商標法第50条第1項かっこ書にも明示されているとおり、本件商標と使用商標間における自他商品識別標識としての同一性を阻害するほどの要因にはなっていない。本件商標と使用商標との間には、少なくとも社会通念上の同一性が確実に保持されていると評価すべきである。
イ 乙第7号証及び乙第8号証で明示されているように、使用権者であるキンレイは、漢字で大きく記載した「大勝軒」を使用している。
一方で本件商標は、漢字で「大勝軒」と記載された文字商標であり、本件商標と実際の使用商標は、自他商品の識別標識として同一の機能を果たしていると評価でき、したがって、使用の態様は、本件商標と同一と認められる。
なお、使用商標は、本件商標と字体が異なるが、このような字体の変更は、登録商標を実際に使用する場合に通常行われるものであり、商標法第50条第1項かっこ書にも明示されているとおり、本件商標と使用商標間における自他商品識別標識としての同一性を阻害するほどの要因にはなっていない。本件商標と使用商標との間には、少なくとも社会通念上の同一性が確実に保持されていると評価すべきである。
(4)本件商標の使用について
ア 乙第13号証ないし乙第15号証で明示されているように、被請求人は、本件商標を「穀物の加工品」の範ちゅうに属する「スープつき中華そばの麺」「具・スープ付きの中華そばの麺」「即席半生ラーメン」の包装に使用して販売している。これは、商標法第2条第3項第1号の「商品又は商品の包装に標章を付する行為」に該当する。
また、被請求人は、乙第13号証で明示されているように自社のホームページで本件商標を付した「穀物の加工品」の範ちゅうに属する「スープつき中華そばの麺」「具・スープ付きの中華そばの麺」「即席半生ラーメン」を掲載している。この行為は商標法第2条第3項第8号の「商品若しくは役務に関する広告、価格表若しくは取引書類に標章を付して展示し、若しくは頒布し、又はこれらを内容とする情報に標章を付して電磁的方法により提供する行為」に該当する。
さらに、乙第17号証で示すように、被請求人は、オンラインショップで本件商標を付した「穀物の加工品」の範ちゅうに属する「スープつき中華そばの麺」「具・スープ付きの中華そばの麺」「即席半生ラーメン」を掲載しており、希望者はオンラインショップで本件商標が付された当該商品を購入することができる。この行為は商標法第2条第3項第2号の「商品又は商品の包装に標章を付したものを譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、又は電気通信回線を通じて提供する行為」に該当する。
以上のとおり、被請求人は、商標法第2条第3項各号の使用をしている。
イ 乙第7号証及び乙第8号証で明示されているように、使用権者であるキンレイは、本件商標を「穀物の加工品」と「べんとう」の範ちゅうに属する商品の包装に使用して販売している。これは、商標法第2条第3項第1号の「商品又は商品の包装に標章を付する行為」に該当する。
また、使用権者であるキンレイは、乙第7号証及び乙第8号証で明示されているように、自社のホームページで本件商標を付した「穀物の加工品」と「べんとう」の範ちゅうに属する当該商品を掲載している。この行為は商標法第2条第3項第8号の「商品若しくは役務に関する広告、価格表若しくは取引書類に標章を付して展示し、若しくは頒布し、又はこれらを内容とする情報に標章を付して電磁的方法により提供する行為」に該当する。
さらに、乙第18号証で示すように、使用権者であるキンレイは、オンラインショップで本件商標を付した「穀物の加工品」と「べんとう」の範ちゅうに属する商品を掲載しており、希望者は本件商標が付された当該商品を購入することができる。この行為は商標法第2条第3項第2号の「商品又は商品の包装に標章を付したものを譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、又は電気通信回線を通じて提供する行為」に該当する。
以上のとおり、使用権者は、商標法第2条第3項各号の使用をしていたといえる。
(5)本件商標の使用時期及び使用場所について
ア 被請求人の使用時期は、乙第19号証ないし乙第21号証において証明する。乙第19号証は、乙第14号証の納品書、請求書、領収書の写しであり、これによれば、2015年1月16日に乙第14号証の「新 池袋大勝軒 もりそば【2食入り】しょうゆ味」の発注を受け納品し、請求書、領収書を発行したことがわかる。「新 池袋大勝軒 もりそば【2食入り】しょうゆ味」と乙第13号証の「池袋 大勝軒 もりそば」は同一のものであり、要証期間(平成26年6月26日から平成29年6月25日)の間に本件商標を指定商品に使用していたといえる。
また、乙第20号証は、乙第15号証の納品書、請求書、領収書の写しであり、これによれば2014年7月31日に乙第15号証の「新 池袋大勝軒 中華そば【2食入り】しょうゆ味」の発注を受け納品し、請求書、領収書を発行したことがわかる。「新 池袋大勝軒 中華そば【2食入り】しょうゆ味」と乙第13号証の「池袋 大勝軒 中華そば」は同一のものであり、要証期間(平成26年6月26日から平成29年6月25日)に本件商標を指定商品に使用していたといえる。
さらに、乙第21号証は、被請求人の「2016年8月から2017年8月の市販品の販売実績のリスト」であり、これによれば、乙第14号証の「池袋 大勝軒 もりそば」は販売数量が合計で2,003個と記載されており、また乙第15号証の「池袋大勝軒 中華そば」は、販売数量が合計で326個と記載されている。
したがって、上記本件商標の使用が、要証期間にされたことが明白である。
なお、乙第19号証ないし乙第21号証は、被請求人の社内文書であるが、この内容が真正で偽りない内容であることを乙第22号証の宣誓書で宣誓する。
イ 使用権者であるキンレイの使用時期は、乙第12号証において証明する。乙第12号証は、「大勝軒監修 伝統の味 もりそば」「大勝軒監修 豚骨魚介つけ麺」のインターネット上でのプレスリリースの写しであり、上記商品が、2016年2月22日から全国の量販店で発売されたことを示している。
したがって、上記商標の使用が、要証期間にされたことが明白である。
(6)まとめ
以上のように、被請求人と通常使用権者は、本件審判の請求に係る指定商品について、要証期間に、日本国内において、本件商標の使用をしている。

第4 当審の判断
1 被請求人提出の証拠について
(1)乙第8号証は、「更新日:2016年2月」の表示があるキンレイのウェブサイトとされるものであるところ、これには、別掲2の商品のパッケージ写真が掲載されており、器に入った中華そばの写真を背景に、その中央には、大きく筆書き風に黒色で表された「大勝軒」とその下部に当該文字に比べて4分の1程度の大きさで筆書き風に赤色で表された「監修」の文字とを縦書きした「大勝軒監修」(以下「本件使用商標」という。)の文字が表示され、その左側には「豚骨魚介つけめん」及び「キンレイ」の文字が表示され、右側には3名の人物の写真が表示されている。また、当該パッケージ写真には、「調理例*具材は入っておりません。」の記載があり、「原材料」の記載によれば、当該商品は、「麺」と「スープ」からなるものである。
(2)乙第12号証は、「2016年(平成28年)1月13日16時0分」の表示があるウェブサイトであるところ、これには「?大勝軒監修のつけ麺2品をリニューアル!?『大勝軒監修 伝統の味 もりそば』『大勝軒監修 豚骨魚介つけ麺』2月22日(月)より全国の量販店で新発売」の見出しの下、「株式会社キンレイ(本社:京都市伏見区、代表取締役社長:・・・)は、ご好評をいただいております冷凍食品『大勝軒監修 伝統の味 もりそば』『大勝軒監修 豚骨魚介つけ麺』の麺の改良(リニューアル)を行い、さらにパッケージも一新いたしました。2016年2月22日(月)より全国の量販店で販売いたします。」の記載があり、二種類の商品のパッケージ写真が掲載されており、そのうちの右側には乙第8号証と同一の構成からなる商品のパッケージ写真が掲載されている。
(3)乙第9号証は、有限会社大勝軒の「履歴事項全部証明書」であり、これによれば、同社は平成17年4月28日に設立の登記がされ、同27年4月1日に代表取締役の山岸一雄氏の死亡後、S氏が同年6月12日に代表取締役に就任している。
(4)乙第10号証は、上記(3)に記載のS氏が被請求人である「カネジン食品株式会社」宛てに平成28年3月5日付けで作成した「承諾書」の写しであるところ、これには、S氏が同氏の兄である故山岸一雄氏の意志に基づいて本件商標を取得しており、使用することについて承諾していること、本件商標の使用に関しての全権限はカネジン食品が有し、その使用には許諾が必要である旨が記載されている。
(5)乙第11号証は、有限会社大勝軒を「甲」とし、キンレイを「乙」とする、平成27年10月14日付けで締結された「ノウハウ実施許諾契約書」(以下「ノウハウ契約書」という。)であるところ、これには、「(実施許諾)第2条」に「甲は、乙が甲の所有するノウハウを用いた冷凍麺類(以下「本件商品」という)」の製造販売を行うことを許諾する。」の記載が、また、「(商標等の使用)第3条」に「乙は、本件商品について、甲の所有する商標、商号、意匠、およびこれに類する名称、肖像等を使用することができる。」の記載がある。
(6)乙第16号証は、有限会社大勝軒を「甲」、キンレイを「乙」被請求人を「丙」とする、平成30年2月19日付け「確認書」であるところ、これには、「甲」、「乙」及び「丙」が、ノウハウ契約書中の第3条に基づく甲の商標、商号等の使用許可条項には、丙が所有する本件商標の甲に対する再実施許諾権付き使用許諾に基づく甲の乙に対する再許諾の趣旨が含まれるものである旨の記載がある。
2 判断
(1)使用商標について
本件商標は、別掲1のとおり「大勝軒」の文字を横書きしてなるものであるところ、本件使用商標は、上記1(1)のとおり、大きく筆書き風に黒色で表された「大勝軒」とその下部に当該文字に比べて4分の1程度の大きさで筆書き風に赤色で表された「監修」の文字を縦書きした構成からなるものである。
そして、その構成中、大きく表された「大勝軒」の文字部分が強く看者の注意を惹くといえるものであり、当該文字部分をもって、取引に当たる場合も少なくないものといえるものであって、本件商標と本件使用商標中の「大勝軒」の文字部分とは、縦書きと横書き及び字体の違いがあるとしても、その構成文字を同じくするものであるから、両者は社会通念上同一の商標と認められるものである。
(2)使用商品について
本件商品は、上記1(1)のとおり、「麺」と「スープ」からなる商品であり、当該商品のパッケージ写真及び同写真の記載内容からすれば、「スープ付きの中華そばの麺」(以下「本件使用商品」という場合がある。)であって、本件審判の請求に係る指定商品中の第30類「穀物の加工品」の範ちゅうに含まれる商品である。
(3)使用時期について
上記1(1)及び(2)によれば、本件使用商品は、平成28年2月22日から販売されたことがうかがわれ、同商品は、同年2月にキンレイのウェブサイトに掲載されていることが認められることからすれば、本件使用商品は平成28年2月頃に、キンレイのウェブサイトに掲載されていたものと推認することができるものであり、上記期間は要証期間である。
(4)使用者について
被請求人は、キンレイに対し本件商標の使用を許諾しており、キンレイが通常使用権者である旨主張しているところ、被請求人とキンレイとの間の本件商標に係る契約書は提出されていない。
しかしながら、被請求人と有限会社大勝軒の代表取締役との間において、本件商標の取得について許諾を得ている旨の「承諾書」(乙10)があり、キンレイと有限会社大勝軒との間において、商標の使用許諾を含む契約(乙11)が締結され、被請求人、有限会社大勝軒、キンレイの三者間において、本件商標の使用許諾を受けた有限会社大勝軒によるキンレイに対する本件商標の許諾が含まれている旨の確認がされている(乙16)ことからすれば、被請求人と有限会社大勝軒の間において何らかの業務上の関係があることがうかがえ、また、上記有限会社大勝軒とキンレイの間において取引関係があることが認められ、さらに、上記三者間において、本件商標の使用許諾に関する確認がされていることを総合勘案すれば、要証期間において、被請求人がキンレイに対して本件商標の使用を許諾していたものとみるのが自然であるから、キンレイを本件商標の通常使用権者とみて差し支えないものというのが相当である。
(5)小括
上記(1)ないし(4)からすれば、本件商標に係る通常使用権者は、要証期間に、日本国内において、本件審判の請求に係る指定商品中の「穀物の加工品」に含まれる「スープ付きの中華そばの麺」について、その包装に本件商標と社会通念上同一と認められる商標を表示したものをウェブサイトにおいて提供していたということができる。
そして、上記行為は、商標法第2条第3項第8号の「商品若しくは役務に関する広告、価格表若しくは取引書類に標章を付して展示し、若しくは頒布し、又はこれらを内容とする情報に標章を付して電磁的方法により提供する行為」に該当するものである。
3 請求人の主張について
(1)請求人は、「大勝軒」の店名のラーメン屋が多数存在すること、「大勝軒」の文字を含む商標が本件商標と同一又は類似と判断されることなく併存して登録されていること、被請求人の証拠及び同人の主張によれば被請求人、キンレイなどの関係者も乙8使用商標等の各使用商標は、「大勝軒」と山岸一雄氏の肖像等との結合商標であることを意識していたといえることなどからすれば、乙8使用商標は、山岸一雄の氏名及び肖像等と「大勝軒」の文字からなる結合商標であり、「大勝軒」の文字のみからなる本件商標とは、社会通念上同一とはいえないものである旨主張している。
しかしながら、乙第8号証の商品のパッケージ写真において、「大勝軒監修」の文字とともに、人物の写真や「豚骨魚介つけ麺 濃厚」等の文字が表示され、人物の写真と「大勝軒監修」の文字から、当該商品が山岸一雄氏が創業したラーメン店と関係する商品であると認識する場合があるとしても、当該商品パーケージの中央に大きく表示されている「大勝軒」の文字部分が強く看者の注意を惹くものであり、当該文字部分をもって、取引に当たる場合が少なくないものといえることは、上記2(1)のとおりである。
(2)請求人は、「大勝軒」の商標出願に山岸一雄氏の承諾が必要だという根拠はなく、また、同氏の肖像等の使用について妹のS氏がこれを追認したり、S氏が代表者である会社が使用許諾したりする根拠もないこと、また、乙第11号証と乙第16号証との間での有限会社大勝軒の記名方法や字体の相違があること、乙第16号証の作成日時などからするとこれらの証拠の真性、証明力にも疑いがあることなどから、キンレイが、本件商標の使用権者であったことは立証されていない旨主張している。
しかしながら、被請求人はキンレイが本件商標の通常使用権者であると主張しており、キンレイが本件商標の通常使用権者といえることは、上記2(4)のとおりであり、また、乙第11号証と乙第16号証の記名方法や字体が相違することのみをもって、乙第11号証の契約が締結していないとか、乙第16号証の確認書の記載内容が真実ではないとまではいうことはできない。
したがって、請求人の上記主張は、いずれも認めることができない。
4 むすび
以上のとおり、被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において通常使用権者がその請求に係る指定商品について、本件商標と社会通念上同一と認められる商標の使用をしたことを証明したということができる。
したがって、本件商標の登録は、商標法第50条の規定により、取り消すことはできない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲1
(本件商標)


別掲2
(乙第8号証の商品のパッケージ写真:色彩については原本参照)




審理終結日 2019-05-17 
結審通知日 2019-05-21 
審決日 2019-06-10 
出願番号 商願2001-87219(T2001-87219) 
審決分類 T 1 31・ 1- Y (Z30)
最終処分 不成立 
前審関与審査官 薩摩 純一 
特許庁審判長 金子 尚人
特許庁審判官 中束 としえ
小松 里美
登録日 2002-08-09 
登録番号 商標登録第4592964号(T4592964) 
商標の称呼 ダイショーケン、ダイカツケン、オーガチケン 
代理人 山本 彰司 
代理人 山本 龍郎 
代理人 清水 定信 
代理人 濱田 修 
代理人 藤本 英介 
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