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審決分類 審判 全部申立て  登録を取消(申立全部取消) W18
管理番号 1353393 
異議申立番号 異議2018-900019 
総通号数 236 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2019-08-30 
種別 異議の決定 
異議申立日 2018-01-15 
確定日 2019-04-01 
異議申立件数
事件の表示 登録第5990777号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて,次のとおり決定する。 
結論 登録第5990777号商標の商標登録を取り消す。
理由 第1 本件商標
本件登録第5990777号商標(以下「本件商標」という。)は,「adidog」の欧文字を標準文字により表してなり,平成28年10月17日に登録出願,第18類「愛玩動物用被服,ペット服」を指定商品として,同29年9月6日に登録査定,同年10月27日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
1 登録第1499855号商標(以下「引用商標1」という。)は,別掲のとおりの構成からなり,昭和52年11月30日に登録出願,第24類に属する商標登録原簿に記載の商品を指定商品として,同57年2月26日に設定登録,その後,平成15年1月15日に指定商品を第25類「運動用特殊衣服,運動用特殊靴」及び第28類「運動用具」とする指定商品の書換登録がされたものである。
2 登録第1663111号商標(以下「引用商標2」という。)は,別掲のとおりの構成からなり,昭和55年7月31日に登録出願,第24類に属する商標登録原簿に記載の商品を指定商品として,同59年2月23日に設定登録,その後,平成17年2月16日に指定商品を第25類「運動用特殊衣服,運動用特殊靴(「乗馬靴」を除く。),乗馬靴,仮装用衣服」及び第28類「運動用具,おもちゃ,人形,囲碁用具,将棋用具,歌がるた,さいころ,すごろく,ダイスカップ,ダイヤモンドゲーム,チェス用具,チェッカー用具,手品用具,ドミノ用具,トランプ,花札,マージャン用具,遊戯用器具,ビリヤード用具,釣り具」とする指定商品の書換登録がされたものである。
以下,これらをまとめて「引用商標」という。

第3 登録異議の申立ての理由
登録異議申立人(以下「申立人」という。)は,本件商標は商標法第4条第1項第15号及び同項第7号に該当するものであるから,同法第43条の2第1号により,取り消されるべきである旨申し立て,その理由を要旨以下のように述べ,証拠方法として甲第1号証ないし甲第167号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 本件商標が本件指定商品に使用されれば,世界的な著名ブランドの一つであり,極めて高い金銭的評価(甲106?109)を受けている「adidas」のブランド価値及びその商品出所表示機能が著しく毀損,希釈化されることは明白である。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当する。
2 本件商標の登録及び使用は,社会一般の道徳観念,公正な取引秩序の維持を旨とする商標法の精神,さらには国際信義に反することが明白であり,公の秩序を害するおそれがある。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第7号に該当する。

第4 取消理由の通知
当審において,本件商標権者に対し,「本件商標は,商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものであるから,同法第43条の3第2項の規定により,その登録を取り消すべきものである。」旨の取消理由を平成30年9月28日付けで通知した。

第5 取消理由に対する商標権者の意見
本件商標権者は,上記第4の取消理由に対して,指定した期間内に意見を述べなかった。

第6 当審の判断
1 商標法第4条第1項第15号該当性について
(1)引用商標の周知著名性及び独創性の程度について
ア 証拠及び申立人の主張並びに職権調査によれば,以下の事実が認められる。
(ア)申立人は,ドイツ連邦協和国ヘルツオーゲンアウラッハを本拠とする世界的に有名なスポーツ用品メーカーである(甲26)。
(イ)引用商標は,申立人のハウスマークであって,世界各国において,申立人の製造に係るスポーツシューズ,スポーツウェア等に使用されている。
我が国における申立人の営業活動は,遅くとも昭和46年(1971年)頃に使用権者であった株式会社デサントによって開始された(甲27)。これ以降平成10年(1998年)までは株式会社デサント(途中,兼松スポーツ用品株式会社を含む。)を介してスポーツシューズ,スポーツウェア,スポーツバッグ等について引用商標が使用された(甲27?48,54?62)。そして,平成11年(1999年)から現在に至るまでは,申立人の日本法人であるアディダスジャパン株式会社によって,引用商標の使用が継続された(甲49?53,68?94)。
(ウ)英国ブランドファイナンス社が平成29年(2017年)に公表した世界アパレルブランド価値ランキング「Brand Finance Apparel 50,2017(The most valuable apparel brands of 2017)」において,引用商標は第5位,そのブランド価値は101億6900万ドル(約1兆880億円。同年における112円/ドルで換算)の記載がある(甲106,107)。同じく米国インターブランド社が同年に公表したブランドランキング「Best Global Brands 2017」において,引用商標は,総合ランキングで第55位,そのブランド価値は92億1600万ドル(約9870億円。同上)の記載がある(甲108,109)。
(エ)「adidas」は,申立人の創業者のAdi Dassler(アディ・ダスラー)の名「Adi」に姓「Dassler」の最初の3文字を「Das」を結合して作られた創造標章である(甲95,96)。
そして,「adid」で始まる単語は,英語・仏語・独語・伊語のいずれの辞書にも掲載されていない。また,独立行政法人工業所有権情報・研修館の特許情報プラットフォーム「J-PlatPat」(トップページ>商標>商標出願・登録情報)で検索すると,語頭が「adid」で始まる登録商標は,申立人に係る商標のほかには,本件商標を除き見当たらない(以上,職権調査)。
イ 上記アの認定事実によれば,引用商標は,申立人のハウスマークであって,スポーツシューズを始め,スポーツウェア等について使用する商標として,我が国を含む世界各国において申立人が長年にわたり継続して使用しているものであって,平成29年(2017年)にそれぞれ公表された世界アパレルブランド価値ランキング(英国ブランドファイナンス社)及びブランドランキング(米国インターブランド社)においても,そのブランド価値は,いずれも1兆円程度と非常に高く評価されている。
また,引用商標が付された商品は,本件商標の登録出願前から,各種競技の多くの選手に広範に使用され,かつ,各種競技大会はテレビ,新聞,雑誌などのマスメディアにより広く視聴者一般に報道されていることは周知の事実である。
そうすると,引用商標は,申立人の業務に係る商品「スポーツシューズ,スポーツウェア」等の商品(以下「申立人商品」という。)を表すものとして,本件商標の登録出願時及び登録査定時には,既に,我が国のスポーツ,ファッション関連分野の需要者の間に広く認識され,著名性を獲得している商標といえるものである。
また,「adidas」は,申立人の創造標章であるところ,「adid」で始まる単語は,英語・仏語・独語・伊語のいずれの辞書にも掲載されていないこと,また,語頭が「adid」で始まる登録商標は,申立人に係る商標のほかには,本件商標を除き見当たらないことからすると,「adid」で始まる引用商標の独創性の程度は高いといえる。
(2)本件商標と引用商標との類似性の程度について
ア 本件商標は,上記第1のとおり,「adidog」の6文字の欧文字からなるところ,その構成文字に相応し「アディドッグ」の称呼を生じ,該文字は,辞書等に掲載がない一種の造語と認められるから,特定の観念を生じないものである。
イ 引用商標は,別掲のとおり,「adidas」の6文字の欧文字を丸みを帯びたゴシック体で表してなるところ,上記(1)イのとおり,引用商標は,申立人商品を表す商標として周知著名であると認められるから,その構成文字に相応し「アディダス」の称呼を生じ,「申立人の業務に係るadidasブランド」の観念を生じる。
ウ 本件商標と引用商標を対比すると,いずれも6文字の欧文字からなり,本件商標の構成中,看者の注意を強く惹きつける冒頭部分の「a」,「d」,「i」及び「d」の4文字が引用商標の冒頭部分4文字と配列も含めて一致している。そして,語頭が「adid」で始まる登録商標は,申立人に係る商標のほかには,本件商標を除き見当たらない。
また,広く知られている引用商標のデザイン化において「a」の文字は「o」の文字の右側に短い縦棒を付したようなデザインがなされ,「s」の文字は,上下二つの空間を有する8の字を描くように書されているから,上下二つの空間を有する「g」の文字と近似した印象を与えるといえる。
そうすると,本件商標と引用商標において相違する「o」と「a」及び「g」と「s」の文字が相似た文字に看取される場合もあるといえることから,本件商標と引用商標は,外観において近似した印象を与え得るものである。
そして,称呼においては,本件商標から生じる「アディドッグ」の称呼と,引用商標から生じる「アディダス」の称呼とは,後半において「ドッグ」と「ダス」の音に差異を有するとしても,称呼の識別において重要な語頭部分において,「アディ」の音を同じくするものである。
また,観念においては,本件商標からは特定の観念は生じない一方,引用商標からは「申立人の業務に係るadidasブランド」の観念が生じるものであるから,観念において比較することはできない。
したがって,本件商標と引用商標の外観,称呼及び観念を総合して考察すれば,両者は,観念において比較することはできないところ,称呼の識別において重要な語頭部分において,「アディ」の音を同じくし,外観において近似した印象を与え得るから,両商標の類似性の程度は相当程度高いものといえる。
(3)本件商標の指定商品と申立人商品との関連性並びに商品の取引者及び需要者の共通性について
本件商標の指定商品は,上記第1のとおり,「愛玩動物用被服,ペット服」であるところ,これは愛玩動物の防寒や着飾り等のファッションとして用いられる商品であり,その需要者は愛玩動物を飼う一般の消費者である。
他方,申立人商品中「スポーツウェア」は,人が運動するときのみならず,ファッションの一環として着用されることもあり,その需要者はスポーツを行う者だけでなく一般の消費者も含まれるといえる。
そして,本件商標の指定商品は,有名ファッションブランドを取り扱う業者によっても製造販売されている(甲149?152)一方,「スポーツウェア」は,ファッション関連商品の売り場においても販売されるものである。
以上のことからすれば,「愛玩動物用被服,ペット服」及び「スポーツウェア」は,愛玩動物用か人用かという違いはあっても,いずれもファッションとして用いられる関連の商品であるともいえる。
そして,「愛玩動物用被服,ペット服」の需要者は,愛玩動物を飼う一般の消費者であって,「スポーツウェア」の需要者は,スポーツを行う者だけでなく一般の消費者も含まれるものであり,その製造販売者も共通する場合があるといえることから,商品の取引者及び需要者を共通にすることも少なくないといえるものである。
(4)出所の混同を生ずるおそれについて
上記(1)のとおり,引用商標は,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,申立人商品を表すものとして,我が国のスポーツ,ファッション関連分野の需要者の間に広く認識されていたものであって,その独創性の程度も高いといえる。また,上記(2)のとおり,本件商標と引用商標とは,外観において近似した印象を与えるものである。
そして,本件商標の指定商品と申立人商品の「スポーツウェア」とは,関連性を有し,その取引者及び需要者を共通にすることも少なくないといえることなどを併せ考慮すれば,本件商標をその指定商品について使用した場合には,これに接する需要者は,周知著名となっている引用商標を連想,想起し,該商品が申立人又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように誤認し,その出所について混同を生じるおそれがあるものというべきである。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当する。
2 まとめ
以上のとおり,本件商標は,商標第4条第1項第15号に違反して登録されたものであるから,その余の申立ての理由について論及するまでもなく,同法第43条の3第2項の規定により,その登録を取り消すべきものである。
よって,結論のとおり決定する。
別掲 別掲 引用商標


異議決定日 2019-02-19 
出願番号 商願2016-120615(T2016-120615) 
審決分類 T 1 651・ 271- Z (W18)
最終処分 取消  
前審関与審査官 渡辺 悦子 
特許庁審判長 小出 浩子
特許庁審判官 平澤 芳行
田村 正明
登録日 2017-10-27 
登録番号 商標登録第5990777号(T5990777) 
権利者 張 善俊
商標の称呼 アディドッグ 
代理人 柳田 征史 

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