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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W33
審判 全部申立て  登録を維持 W33
管理番号 1353379 
異議申立番号 異議2018-900304 
総通号数 236 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2019-08-30 
種別 異議の決定 
異議申立日 2018-10-19 
確定日 2019-07-05 
異議申立件数
事件の表示 登録第6065543号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第6065543号商標の商標登録を維持する。
理由 1 本件商標
本件登録第6065543号商標(以下「本件商標」という。)は、「龍泉」の文字を標準文字で表してなり、平成29年2月6日に登録出願、第33類「リキュール,泡盛,薬味酒,焼酎,清酒」を指定商品として、同30年5月29日に登録査定、同年7月27日に設定登録されたものである。

2 登録異議の申立ての理由(要旨)
申立人は、本件商標は、出願の経緯に著しく社会的妥当性を欠き、公正な取引秩序に反する行為によってなされたものであるから、本件商標に係る登録商標は、公序良俗を害するおそれがあり、商標法第4条第1項第7号に該当するものであるから、同法第43条の2第1号により、その登録は取り消されるべきであると申立て、証拠方法として甲第1号証ないし甲第7号証を提出した。

3 当審の判断
(1)本件商標の商標法第4条第1項第7号該当性について
ア 商標の登録出願が適正な商道徳に反して社会的妥当性を欠き、その商標の登録を認めることが商標法の目的に反することになる場合には、その商標は商標法4条1項7号にいう商標に該当することもあり得ると解される。しかし、同号が「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」として、商標自体の性質に着目した規定となっていること、商標法の目的に反すると考えられる商標の登録については同法4条1項各号に個別に不登録事由が定められていること、及び、商標法においては、商標選択の自由を前提として最先の出願人に登録を認める先願主義の原則が採用されていることを考慮するならば、商標自体に公序良俗違反のない商標が商標法4条1項7号に該当するのは、その登録出願の経緯に著しく社会的妥当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような場合に限られるものというべきである(平成14年(行ケ)第616号、東京高等裁判所平成15年5月8日判決)。また、出願人が本来商標登録を受けるべき者であるか否かを判断するに際して、日本の商標法の制度趣旨や商標法第4条第1項第19号の趣旨に照らすならば、「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれ」を私的領域にまで拡大解釈することにより、商標登録出願を排除することは、商標登録の適格性に関する予見可能性及び法的安定性を著しく損なうことになるので、特段の事情のある例外的な場合を除くほか、許されないというべきである(平成19年(行ケ)第10391号、知的財産高等裁判所平成20年6月26日判決)。
イ そこで、本件についてみるに、申立人は、「本件商標登録は、株式会社龍泉酒造(以下「龍泉酒蔵」という場合がある。)の経営権を失い、同社を退職した者が、退職した会社の主力商品の商品名が商標登録されていないことを奇貨として、これと同一の商標について商標登録を得る行為であり、適正な商道徳に反するだけでなく、著しく社会的妥当性を欠く行為であり、公正な取引秩序の維持の観点からみても不相当であるから、公序良俗を害するおそれがある商標に該当する。」旨を主張している。
ウ そして、本件において、本件商標権者が本件商標の登録出願をした経緯は、申立人の提出した証拠及び同人の主張によれば、以下のとおりである。
(ア)本件商標権者である羽地酒造合同会社の代表者Aがその親族(以下、その親族を含めて「Aら」という。)と共に経営していた龍泉酒造合資会社は、平成25年当時、金融機関や取引先に対する合計約6,000万円の負債を抱え、泡盛製造の事業継続が困難な状況にあった。
(イ)そこで、Aらは、平成25年5月31日、株式会社沖縄銀行から紹介された株式会社ネットリサーチ(以下「ネットリサーチ」という。)との間で、全ての債務を引き受けてもらう代わりに龍泉酒造合資会社の経営権を移転することで泡盛製造の事業を委ねる契約を締結した(甲2)。
(ウ)その後、ネットリサーチは、龍泉酒造合資会社を株式会社龍泉酒造に組織変更し、同年7月31日、Aらから龍泉酒造合資会社の出資持分を買い受けた(甲3、甲4)。
(エ)Aらは、龍泉酒造合資会社の保証債務から開放された。
(オ)Aは、平成26年8月20日に、ネットリサーチに対して、龍泉酒造合資会社の債務引き受けのために出捐した費用相当額を償還することを条件に、自らが龍泉酒造の全株式を有することの確認を求める調停を申し立てた(甲5)。
(カ)同27年6月5日に、Aらは残りの全ての株式を株式会社沖縄六角堂(平成27年4月1日、上記(オ)のネットリサーチが商号変更した。)に譲渡し、龍泉酒造の代表取締役及び役員を辞任して同社を退職することで、調停が成立した(甲6)。
(キ)Aは、龍泉酒造を退職した数か月後の平成27年11月に龍泉酒造の敷地の隣地に羽地酒造合同会社を設立し、龍泉酒造が商品「泡盛」に使用していたと推認し得る(甲7)本件商標について、自らが代表を務める同社の名義で同29年2月6日に出願し、同30年7月27日に登録を受けた(甲1)。
エ 以上、ウ(ア)ないし(キ)によれば、Aは、平成27年6月5日付け調停成立後に龍泉酒蔵を退職するまでの間、代表取締役として在籍していたことから、本件商標の登録出願時には、龍泉酒蔵の商品「泡盛」の商品名が標章「龍泉」であって、標章「龍泉」が商標登録出願されていないことを承知していたことは推認できる。
しかしながら、申立人の提出した証拠からは、具体的に、商標権者が、申立人に対して、本件商標を金銭的な交渉材料に利用して不当な利益を得ようとしていたとか、事業の遂行を妨害しようとしているとか、本件商標の登録出願が剽窃に当たることなどを裏付ける事実は見いだせないことからすれば、本件商標が、商標登録されていないことを奇貨として、Aが代表を務める羽地酒造合同会社(本件商標権者)により、出願、登録を受けたとまではいえず、出願の経緯に社会的相当性を欠くものとまではいえない。
また、上記ウのような事情は、あくまでも、当事者間の私的な問題といわざるを得ず、申立人は、商品「泡盛」に使用する商標「龍泉」の使用開始にあたり、その商標を自ら登録出願する機会は十分にあったにもかかわらず、自ら登録出願しなかった責めを商標権者に求めるべき事情を見いだすこともできないから、本来商標登録を受けるべき者であるか否かを判断するに際して、特段の事情のある例外的な場合にはあたらないというべきである。
さらに、「龍泉」の文字からなる本件商標は、その構成自体が非道徳的、卑わい、差別的、きょう激又は他人に不快な印象を与えるような文字からなるものではなく、また、本件商標を、その指定商品について使用することが社会公共の利益に反し、社会の一般的道徳観念に反するものともいえず、さらに、他の法律によって、当該商標の使用等が禁止されているものではないし、特定の国若しくはその国民を侮辱し、又は一般に国際信義に反するものでもない。
その他、本件商標が公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標と認めるに足る事情は見いだせない。
以上のことから、本件商標は、その登録出願の経緯に著しく社会的相当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標ということはできない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当しない。
(2)申立人は、本件異議申立てにおける商標法第4条第1項第7号該当性の理由の中で、「本件商標権者は、『泡盛、焼酎、清酒』の商品に対する製造免許も販売免許も取得しておらず、前記商品の製造も販売もできないにもかかわらず、『泡盛、焼酎、清酒』の指定商品について、使用意思を偽って商標登録を得ているから、商標法第3条第1項柱書に違反する瑕疵がある。」とも主張している。
しかしながら、商標法第3条第1項柱書にいう「自己の業務に係る商品又は役務について使用をする」とは、出願商標を現に使用している場合のみな
らず、将来において出願商標を使用する意思を有している場合を含むものであるから、仮に、商標権者が、登録査定時において、本件商標をその指定商品に使用していなかったとしても、該事実をもって本件商標が同法同条同項柱書の要件を具備していないとはいえない。
したがって、本件商標は、商標法第3条第1項柱書に違反して登録されたものということはできない。

(3)むすび
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第7号及び同法第3条第1項柱書きに違反してされたものではないから、同法第43条の3第4項の規定により、その登録を維持すべきである。
よって、結論のとおり決定する。
異議決定日 2019-06-27 
出願番号 商願2017-19273(T2017-19273) 
審決分類 T 1 651・ 22- Y (W33)
T 1 651・ 18- Y (W33)
最終処分 維持  
前審関与審査官 椎名 実 
特許庁審判長 金子 尚人
特許庁審判官 岩崎 安子
小田 昌子
登録日 2018-07-27 
登録番号 商標登録第6065543号(T6065543) 
権利者 羽地酒造合同会社
商標の称呼 リューセン、タツイズミ 
代理人 大久保 秀人 
代理人 福島 康文 

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