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審決分類 審判 全部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない 009
管理番号 1353316 
審判番号 取消2015-300818 
総通号数 236 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2019-08-30 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2015-11-13 
確定日 2019-07-18 
事件の表示 上記当事者間の登録第4075066号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4075066号商標(以下「本件商標」という。)は、「QR コード」及び「QR Code」の文字を上下二段に書してなり、平成7年6月16日に登録出願され、第9類「理化学機械器具,測定機械器具,配電用又は制御用の機械器具,電池,電気磁気測定器,電線及びケーブル,写真機械器具,映画機械器具,光学機械器具,眼鏡,加工ガラス(建築用のものを除く。),電気通信機械器具,電子応用機械器具及びその部品,ロケット,回転変流機,調相機,電気アイロン,電気式ヘアカーラー,電気式ワックス磨き機,電気掃除機,電気ブザー,消防艇,磁心,抵抗線,電極,映写フィルム,スライドフィルム,スライドフィルム用マウント,録画済みビデオディスク及びビデオテープ」を指定商品として、同9年10月24日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。
そして、本件審判の請求の登録は、平成27年12月1日である。

第2 請求人の主張
請求人は、商標法第50条第1項により、本件商標の登録を取り消す、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由、答弁に対する弁駁において、要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第68号証(枝番を含む。)を提出した。
1 請求の理由
本件商標は、その全指定商品について、継続して過去3年以上、日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実が存しないから、その登録は、商標法第50条の規定により取り消されるべきものである。
2 被請求人の主張について
(1)使用に係る商標の社会通念上同一性について
審判便覧の「53-01登録商標の不使用による取消審判」には、「2(2)イ 登録商標の使用とは認められない事例」として、その(イ)に「同一の称呼を生ずる場合があって、平仮名及び片仮名とローマ字のいずれかに別異の観念が含まれるときの相互間の使用」が記載されており、審判においても同様に判断されている(甲2、甲3)。
ア 「QRコード」のみの使用について
本件商標上段の「QRコード」中、「QR(クイック・レスポンス)」という語は、1994年以前から存在する既成語であって、被請求人の独自創作にかかる新規の造語ではない(甲4)。
また、本件商標上段の「QRコード」中、「コード」という称呼が生じる語としては、「符号」等の観念が生じる「Code」の他に、「紐」或いは「(電気・電話の)コード」等の観念が生じる「Cord」や、「(楽器の)弦」等の観念が生じる「Chord」等複数が存在し、いずれも、日常生活において広く使用されている。
このため、本件商標上段の「QRコード」という称呼を生じさせる語としては、本件商標下段の「QR Code」の他にも、「QR Cord」や「QR Chord」等を想起することができる(甲5、甲6)。
そして、本件商標下段の「QR Code」からは、「素早く反応する『符号』」という観念が生じるのに対し、「QR Cord」及び「QR Chord」からは、それぞれ「素早く反応する『紐』或いは『(電気・電話の)コード』」及び「素早く反応する『(楽器の)弦』」という別異の観念が生じる。
なお、実際に「QR-CORD2-BK Cordies Mini Black」という名称のデスクトップ型ケーブルウェイトホルダーが存在する(甲42)。
したがって、本件商標上段の「QRコード」は、本件登録商標と社会通念上同一の商標ではない。
イ 「QR Code」のみの使用について
本件商標下段の「QR Code」中、「Code」という語からは、「コード」という称呼の他に、「コーデ」という称呼を生じ、「Code」を「コーデ」という称呼で使用する場合、「Code」からは、「コード」とは別異の「(ファッションの)コーディネート」という観念が生じる(甲7)。
そして、上記の「QR(クイック・レスポンス)」という語が「主にアパレル業界に適用される。」(甲4)ことに鑑みれば、「QR(クイック・レスポンス)」という語と、「(ファッションの)コーディネート」という観念が生じる「コーデ」という語とは親和性が非常に高く、これらが結び付いて「QRコーデ」という語を生じせしめることは極めて自然なことである。
実際にも、「素早い反応で『コーディネートできる』」という観念を生じさせる「QRコーデ」(甲8)という語が使用されている。
とすれば、本件商標下段の「QR Code」からは、本件商標上段の「QRコード」の他、本件商標上段の「QRコード」とは別異の称呼及び観念を生じさせる「QRコーデ」等も当然に想起される。
したがって、本件商標下段の「QR Code」は、本件登録商標と社会通念上同一の商標ではない。
ウ 「QRコード」、「QR Code」、及びこれらの文字を横一連に併記した「QRコード\QR Code」について
商標法第50条括弧書に規定の「登録商標と社会通念上同一と認められる商標」とは、登録された際の形態における商標の識別性に影響を与えることなく構成部分に変更を加えた商標をいい、登録商標の識別性に影響を与えるような変更が構成部分に加えられたものは、もはや登録商標と社会通念上同一の商標ではない。
これを本件商標について見るに、本件商標上段の「QRコード」ないし下段の「QR Code」のいずれかのみを使用しても、これに接する取引者・需要者は、「QRコード」ないし「QR Code」に関連する商品・役務と理解するにとどまり、何人かの業務に係る商品・役務であることを認識することができるものではない。
「QRコード」及び「QR Code」がもはや自他商品等識別力を発揮し得ないものである以上、これらを単純に併記しても、「QRコード」及び「QR Code」と同様に、自他商品等識別力を発揮し得ないことは明らかである。
そうとすれば、仮に本件登録商標が自他商品等識別力を発揮し得えるものだとすれば、自他商品等識別力を発揮し得ない横一連の「QRコード\QR Code」を併記したものへの変更は、識別力を喪失させるといった識別性に多大な影響を与える重大な変更であることは明らかである。
したがって、本件商標上段の「QRコード」、本件商標下段の「QR Code」、及び本件商標上段の「QRコード」と本件商標下段の「QR Code」を横一連に併記したものは、いずれも本件商標と社会通念上同一の商標ではない。
(2)本件商標及び使用に係る商標の自他商品識別機能について
ア 「QRコード」又は「QR Code」の文字は、「2次元コードの種類のうち、QRコード(QR Code)規格のもの」ということを表すに過ぎない文字である。すなわち、多数ある2次元コード規格のうちの1つの規格・仕様に従ったコードであることを説明的に表示しているにすぎない文字であり、自他商品等識別標識として機能する文字ではない。
これを裏付けるものとして、QRコード規格・仕様に従った2次元コードを作成するコンピュータ用プログラムは、被請求人のみならず、様々なソフトウェア作成者により有料又は無料により提供されている実情がある(甲10)。このように何人も自由に作成できるQRコード規格・仕様に従った2次元コードに対し「QRコード」又は「QR Code」と表示しても、もはや何者を出所とするQRコードであるか不明なのである。さらに、全世界には被請求人以外の者が作成したQRコード規格の2次元コードが、さまざまな商品やサービスとの関連で大量に用いられている。
したがって、たとえQRコード規格の2次元コード付近に「QRコード」又は「QR Code」なる表示を行なっても、単に「2次元コードの規格の1つであるQRコード(QR Code)規格に基づいて作成されたコード」であることを説明するにすぎない表示というべきである。
このように、出所表示機能という商標が発揮すべき極めて基本的な機能も失われた状態にあるのが、「QRコード」及び「QR Code」の表示の実態であることから、本件商標を本件指定商品に表示しても、自他識別標識としての機能は発揮し得ないため、商標法第2条第3項各号及び第50条に規定する使用とはいえない。
このことは特許庁のこれまでの審査手法・判断においても整合する(甲11?甲23)。
イ 用語事典・辞典等の記述を根拠とする識別力欠如について
さらに、各種用語解説集や事典・辞典においても、「QRコード」又は「QR Code」の文字は単に2次元コード規格の1種であることを説明するものにすぎないとして解説されている(甲24?甲30)。
被請求人自身が「QRコード」及び「QR Code」の文字を規格の正式名称の一部として使用した結果、これらの規格については、被請求人のみならず全ての取引者・需用者は、「QRコード」又は「QR Code」の文字を用いる以外に方法がない。
したがって、「QRコード」又は「QR Code」の表示に接する者も、当該表示は単に2次元コードの1つの規格・仕様を意味するものとして認識するのである。
ウ 被請求人による自他商品等識別力がある旨の主張について
被請求人自身による「QRコード」及び「QR Code」の出願は、これまでに繰り返し6件も行なわれてきたが、自他商品等識別力欠如を指摘する拒絶理由通知に対し、具体的反論は行なわれていない(甲31)。
エ 小括
以上より、本件商標、本件商標上段の「QRコード」、本件商標下段の「QR Code」、及びこれらの文字を横一連に併記した「QRコード\QR Code」の表示は、いずれも自他商品等識別機能を有するものではない。
(3)不使用取り消し審判における使用について
商標の本質的機能は自他商品・役務を識別することであるから、商標法第50条に規定する「使用」に該当するためには、同法2条3項各号に定める「使用」の定義に形式的に該当することでは足りず、実質的な商標としての使用、すなわち自他商品等の識別標識として機能していると認められる使用であることが必要であると考えるのが通説である(甲40)。
つまり、商標自体に識別力がなければ、商標法2条3項各号に定める「使用」を形式的に行ったとしても、自他商品等の識別機能を発揮し得ないため、同法第50条に規定する「使用」に該当することはない。
上述のとおり、「QRコード」及び「QR Code」並びにこれらを二段に横書きしてなる本件商標は、識別力を有するものではない。
そして、識別力を有しない「QRコード」及び「QR Code」並びに本件商標を、いかなる商品に付して商標法2条3項各号に定める「使用」を形式的に行ったとしても、自他商品等の識別機能を発揮し得ないため、同法第50条に規定する「使用」に該当することはない。
さらに、被請求人は、本件不使用取消審判の争点は、本来的に本件商標が使用されているか否かの点に絞られるべき旨述べているが、本件においては、本件商標が指定商品との関係おいて自他商品等の識別標識として機能する態様で表示されているかが重要な争点である。この点こそが、被請求人が主張する「本来的に本件商標が使用されているか否かの点」であるからである。
また、被請求人は、「不使用取消審判における登録商標の『使用』が争われた最近の裁判では、商標法第50条所定の登録商標の『使用』については、不使用取消審判制度の趣旨、すなわち全く使用されていない登録商標は第三者の商標選択の余地を狭めるため排他的な権利を与えておくべきでないという理由からすれば、当該商標がその指定商品・役務について何らかの態様により商標法第2条第3項各号に規定されている『使用』が行われていれば十分であり、自他商品役務識別標識としての使用には限定されない、と判断される傾向にある。」として、判決例を挙げている(乙47?乙49)。
しかしながら、被請求人の挙げる上記の判例は、商標の本質的機能である自他商品等の識別機能から派生する出所表示機能、品質保証機能、及び宣伝広告機能という三つの諸機能のうち、その一つである「出所表示機能」を果たさずとも、少なくとも他の質保証機能又は宣伝広告機能を果たす態様であれば商標法50条の「使用」たり得ることを判示したに過ぎず、商標の本質的機能である「自他商品等の識別機能」、すなわち出所表示機能、品質保証機能及び宣伝広告機能の全てを全く果たさなくても商標法50条の「使用」に当たる、とまで判示したものではない。
そして、多くの判例では、商標法50条の「使用」と言えるためには、商標の本質的機能である「自他商品等の識別機能」を果たす態様での使用でなければならないということを当然の前提としている(甲54、甲65?甲68、乙19、乙20、乙22、乙23)。
また、元知的財産高等裁判所長判事の飯村氏の論文「商標関係訴訟?商標的使用等の論点を中心にして?」(甲55)には、「登録商標が、様々な機能を有する態様で活用されているとみられる場合において、出所識別機能が全く認められない場合はさておき、出所識別機能が示唆され、推認されるような場合には、『使用』していると判断されることが多いように推測されます。そのようなことに照らすと、登録商標の不使用取消審判に係る『商標的使用』に係る判断基準は、侵害訴訟における『商標的使用』に係る判断基準より緩やかであると思われますが、制度趣旨に照らすならば、合理的であると解されます。」と記載されている。
すなわち、商標法50条の「使用」と言えるためには、侵害訴訟における判断基準より緩やかではあるとても「商標的使用」でなければならず、識別機能が全く認められない場合には、商標法50条の「使用」に当たらないとされている。
この点に関し、日本大学大学院知的財産研究科(専門職)非常勤講師で弁理士の外川氏の論文において、被請求人のような主張が如何に誤謬に満ち溢れているかを、適格に指摘している(甲64)。
(4)登録商標の表示について
被請求人は、これまでも「登録商標」との注意書きや登録表示「R」(以下、○の中に「R」を記載した記号を、登録表示「R」という。)が付記されていることを根拠に自他商品識別機能の発揮が認められ、「商標」として認識されると判断され、使用による商標登録の維持が認められた事例(乙19、乙20)が多々ある旨主張する。
しかしながら、被請求人の提出する判決例は、本件とは事案を異にするというべきであり、さらに、登録商標との注意書きや登録表示「R」が付記されていることのみを根拠に、自他商品識別機能の発揮等を認めたものではない。
また、「登録商標」との注意書き及び登録表示「R」が付記されているが、商標が普通名称であると判断され、自他商品識別機能の発揮が否定されている例も存在する(甲48)。
したがって、「登録商標」との注意書きや登録表示「R」が付記されてさえいれば自他商品識別機能の発揮が認められるべきとの被請求人の主張は誤りである。
(5)使用に係る商品について
ア 「符号記録済みバーコード用ラベル」について
被請求人は、「符号記録済みバーコード用ラベル」ないし「光学的に情報が記録された、あるいはコード化されたラベル」(以下「本件商品1」という。)は第9類「電子応用機械器具」に含まれる商品として、我が国及び国際的に認められている指定商品表記であると主張するが、「類似商品・役務審査基準〔国際分類第10-2016版対応〕」には、第9類「電子応用機械器具及びその部品」に含まれる商品の中に、いずれも記載されていない。
また、「符号記録済みバーコード用ラベル」は、「WIPO Madrid Goods and Services Manager」に、「光学的に情報が記録された、あるいはコード化されたラベル」は、「TM5 IDリスト」にそれぞれ記載されているが、「電子応用機械器具」に含まれる商品であるとの記載はない。
とすれば、被請求人の本件商品1は第9類『電子応用機械器具』に含まれる商品として、我が国及び国際的に認められている指定商品表記であるとの主張は、誤っている。
さらに、被請求人が提出した証拠からは、被請求人が本件商品1を、業として生産等している事実を確認できない。
イ 共同開発したダウンロード可能な電子計算機用プログラムについて
被請求人は、乙第17号証で示される、本件商標「QR Code」と「QとRの文字が組み合された形状のアイコン」は、2014年に、被請求人が、アララ株式会社(以下「アララ社」という。)と共同開発したダウンロード可能な電子計算機用プログラムであるアプリケーションソフトウェア(これについて「本件商品2」という。以下、同じ。)について、被請求人及びアララ社によって使用されているアイコンであり(乙25、乙26)、当該アイコンからダウンロード可能なプログラムは、被請求人のものと主張する。
しかしながら、当該アイコンが被請求人により使用されているとは認められない。
また、乙第17号証に表示されている「QR Code」の表示のアイコン及び当該アイコンからダウンロード可能なプログラムは、いずれも被請求人のものであるとは認められない。
乙第25号証、乙第26号証及び乙第30号証からすれば、被請求人はあくまで本件商品2の開発段階でアララ社に技術協力した立場にすぎず、本件商品2の提供主体はあくまでアララ社であることが明らかである。
したがって、当該ソフトウェアはアララ社のみにより提供されているのであるから、「QR Code」の文字及び「QとRの文字が組み合された形状のアイコン」の使用者は、アララ社のみである。
そして、アララ社は、本件商標の商標登録原簿に専用使用権者としても、通常使用権者としても登録されていない(甲39)。
なお、被請求人は、アララ社作成に係る確認書(乙54)を提出するが、当該確認書には、通常使用権の範囲として、「期間:平成24年12月1日から平成27年12月1日まで」、「地域:日本全国」、及び「指定商品:全指定商品」と記載されている。
しかしながら、アララ社は、どのような事情をもって、平成24年12月1日に「黙示の通常使用権」の許諾契約が開始され、平成27年12月1日にの許諾契約が終了したと認識するに至ったのか、全く不明であり、不自然である(甲60、甲61)。
このような不自然さから、当該確認書の主張における不自然な点を確認する必要があるため、当該確認書の名義人であるアララ社の代表取締証人とする証人尋問を申し立てる。
ウ 被請求人が第三者に対して販売した2次元コード読み取り用コンピュータソフトウェアについて
被請求人は乙第18号証及び乙第32号証を提出し、被請求人が第三者に対して販売した2次元コード読み取り用コンピュータソフトウェア(以下「本件商品3」という。)の名称として「QRコードデコードソフトウェアライブラリロイヤリティ」という。)を使用してきたと主張する。
しかしながら、本件商品3の名称と、本件商標とを比較すれば、「デコードソフトウェアライブラリロイヤリティ」の文字の有無において相違し、さらに欧文字「QR Code」の有無においても相違する。
したがって、そもそも本件商標と本件商品3の名称とは全く異なるものであるから、この時点で両証拠は、本件商標の使用の事実を証明するものとはなり得ない。
また、被請求人の説明によれば、本件商品3は他社が製造するビデオカメラ等の出荷時に搭載される「2次元コード読み取り用コンピュータソフトウェア」であるとのことであるから、「QRコードデコードソフトウェアライブラリロイヤリティ」のうち「QRコード」の部分は、単にソフトウェアの用途・品質を表示しているにすぎない表示であり、本件商品3との関係では「QRコード」部分は自他識別機能を発揮する表示とはいえない。
また、被請求人が提出する乙第18号証及び乙第32号証には、商品名として「QRコードデコードソフトライブラリロイヤリティ」と記載されている。乙第44号証には、製品名として「QRコードデコードライブラリ」と記載され、その下には、「ロイヤリティ」と記載されている。「ロイヤリティ」とは「特許権・商標権・著作権などの使用料」を意味する(甲56)。さらに、乙第45号証及び乙第46号証には、「ライセンス名」として「QRコードデコードライブラリ」と記載されていることからすれば、被請求人は、「QRコードデコードソフトライブラリ」若しくは「QRコードデコードライブラリ」という名称のライブラリの著作権のライセンスを株式会社JVCケンウッド(以下「JVCケンウッド社」という。)に許諾していたのである。
そして、ライブラリの著作権のライセンスを許諾する行為は、第45類の「工業所有権及び著作権のライセンスの許諾」という役務を提供する行為に当たる。
すなわち、被請求人は、本件商品3について、第45類の「工業所有権及び著作権のライセンスの許諾」という役務を提供していたのであって、本件商標に係る第9類の指定商品を譲渡等していたのではない。
さらに、乙第43号証のウェブサイトの表示を行っているのは、JVCケンウッド社であって、被請求人ではない。そして、JVCケンウッド社は、本件商標の商標登録原簿に専用使用権者としても、通常使用権者としても登録されていない(甲39)。
そうとすれば、乙第43号証の「※QRコードは(株)デンソーウェーブの登録商標です。」との表示は、本件商標の商標権者、専用使用権者、又は通常使用権者により行われたものではない。
エ 被請求人ウェブサイトに記載のソフトウェアについて
乙第24号証のウェブサイトに記載のソフトウェア「QRdraw Jr」「QRdraw Ad」「QRmaker Ad」及び「QRmaker JV』)(以下「本件商品4」という。)については、被請求人が作成・販売したソフトウェアであって、本件審判の登録前3年以内(以下「要証期間内」という。)に作成・販売されたソフトウェアが、起動時に本件商標が表示される場合は、その点についても含めた主張及び立証をすることになっていたが、その点については、被請求人上申書において、何等の主張も立証もされていない。
被請求人が作成・販売したソフトウェア用のユーザーマニュアルと主張する乙第40号証及び乙第42号証は、いずれも要証期間内に頒布されたことを示す証拠は何も提出されておらず、さらに、要証期間内に発行されたものでもない。
乙第24号証は、被請求人のウェブサイトが要証期間内に存在していた事実を示すために、米国の非営利法人「InternetArchive(インターネット・アーカイブ)」が提供するウェブアーカイブ検索サイト「Wayback Machine」(以下「ウェイバックマシン」という。)を利用して作成されているとのことであるが、口頭審理において、「要証期間内の同一日付に統一したウェブサイト画面」及び「その画面の対となる現在のウェブサイト画面」となるように整理し直した、証拠書類を提出することとなっていたが、被請求人からは、言い訳のみで、何も提出されなかった。
また、被請求人は、「ウェイバックマシン」のシステム上、必ずしもウェブサイトに含まれる全てのページが同一の日付で保存されているわけ無い旨主張する。つまり、それは、乙第24号証の1には、その程度の証拠力しかないということである。
さらに、被請求人は、乙第24号証の1の各ページ右上に記載された日付によれば、被請求人のウェブサイトの各ページが2014年2月6日?3月15日の約1ヶ月半という短い期間内に存在していたことが明らかであるから、乙第24号証の1に含まれる被請求人のウェブサイトの各ページは要証期間内の同一日付に存在していたと考えるのが極めて妥当と主張するが、約1ヶ月半という期間は、被請求人ほどの会社であれば、ウェブサイトに含まれる複数のページが、複数回更新されても何等不思議のない期間である。
とすれば、乙第24号証の1に含まれる被請求人のウェブサイトの各ページが、要証期間内の同一日付に存在することがなかったとしても、何等不思議はない。
(6)その他の乙号証について
その他の被請求人が提出した証拠についても、本件商標と同一ではなく、また、本件商標と社会通念上同一の商標でもなく、さらに、自他商品等識別機能を発揮しない標章を、いかなる商品に付して商標法第2条第3項各号に定める「使用」を形式的に行ったとしても、同法第50条に規定する「使用」について立証したことにはならない。
(7)まとめ
以上のとおりであるから、本件審判の登録前3年以内に被請求人により日本国内において本件商標又は本件商標と社会通念上同一と認められる商標が、その指定商品について使用されているとは認められない。

第3 被請求人の主張
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第55号証(枝番を含む。)を提出した。
なお、乙号証の枝番については、別掲のとおり読み替える。
1 本件商標について
本件商標は、被請求人の独自開発にかかる符号記録済み2次元バーコード用ラベルに関する商標として被請求人自身により採択され、1994年に発表されたものである(乙1)。
本件商標中「QR」部分は「クイック・レスポンス」に由来しており、被請求人の独自創作にかかる新規の造語である(乙2)。
被請求人は、本件商標と同一商標を世界各国へ出願し、すでに33か国以上で権利化してきており(乙3、乙4)、特に2001年に登録された米国商標登録第2435991号「QR Code」に関しては使用証拠を適時提出し、これらが米国特許商標庁に認められた結果、更新もされてきている。
1994年よりも前からバーコードは普及していたが、情報容量に限界があった。そこで、被請求人は、多くの情報を格納するとともに高速にコードを読み取れるようにすべく四角い形をした切り出しシンボルを入れたラベル形状の2次元コード、すなわち本件商標にかかる本件商品1を開発し、日本はじめ米国や欧州等で数多くの特許権を獲得してきたことは、被請求人が2015年2月に経済産業省にて行った経済産業技官及び経済産業事務官に対する研修資料(乙4)や2000年6月に発行されたデンソー50年誌等に示すとおりである(乙5)。
本件商品1を開発以降、被請求人は、企業や団体へ紹介して回った。その結果、自動車部品業界、食品業界、薬品業界、コンタクトレンズ業界等の商品管理などにも使われ(乙4)、本件商品1が、我が国産業界において不可欠な存在となってきたことは周知の事実である。
上述の普及過程で被請求人は、本件商標を付した本件商品1中「符号記録済みバーコード用ラベル」について、被請求人が定めた規格通りに使用されている限りは、先述の特許権を行使しないと明言した。これはすなわち、上記規格に定められた以外の符号記録済みバーコード用ラベルに対しては先述の特許権を行使するという方針であって、本件商品1の周辺のノウハウを秘密に保持していることと相まって、本件商標は、その品質を本件商標によって証明されているものである(乙4)。
上記方針の下で、被請求人は、本件商品1について業界標準化、国内規格化(JIS規格)、国際規格化(ISO規格)を推進し、平成12年以降、本件商標を付した本件商品1は爆発的に普及した(乙2、乙4)。
そして、平成26年6月17日には、被請求人の国内外にわたる、本件商標及び本件商標を付した商品「符号記録済みバーコード用ラベル」の展開・活動実績が評価されて被請求人の本件商品1開発チームが、欧州発明家賞「人気賞(ポピュラープライス)」を受賞するに至った。これは日本人初の受賞であった(乙6)。
被請求人は、本件商品1の普及活動にあたり、無償配布したマニュアル「2次元コードQRコード読本」(乙7)はじめ、各種媒体において「QRコードは株式会社デンソーウェーブの登録商標です」というように、本件商標がその指定商品である「符号記録済みバーコード用ラベル」の「登録商標」であることを常に強調しながら広告宣伝してきている。前出の欧州発明家賞に関する欧州特許庁によるプレスリリースにおいても「QRコードは商標権で保護されており使用にはコードと共に商標を表示する必要があります」と明記されている(乙6)。
このような被請求人の20年以上の長きにわたる、かつ、絶え間ない宣伝広告活動の結果、本件商標は、いまや国内・海外の各分野の企業活動に従事する取引者需要者間においても著名な登録商標となっており、このことは特許庁においても顕著な事実である(乙8)。
2 本件商標の社会通念上同一の商標について
本件商標は「QRコード」及び「QR Code」と二段に横書きしてなるものであるところ、被請求人は「QRコード」ないし「QR Code」のいずれかのみを使用する場合もあった。
しかしながら、商標法第50条及び審判便覧において「社会通念上同一と認められる商標」を認めている。
そうとすれば、たとえ本件商標が二段に横書きしてなるものであったとしても、上段及び下段の各部が観念を同一にすることは明らかであるから、その一方のみの使用であっても本件商標と「社会通念上同一の商標」の使用と認められる。
また、要証期間内に、被請求人が「QRコード」と「QR Code」を併記して使用している例も存在する。
例えば、被請求人は、2013年11月22日から12月1日まで東京ビッグサイトで開催された「TOKYO MOTOR SHOW」にて発表した「Navicon」に関する資料で、本件商標「QRコード/QR Code」を二段に併記して付して使用している(乙9)ほか、一般人がアクセス可能な2015年5月17日付及び同年6月17日付の自社ウェブサイトにおいて、「QRコード/QR Codeは株式会社デンソーウェーブの登録商標です。」と記載している(乙10)。また、本件商標について広告、宣伝するための「QRコードドットコム 株式会社デンソーウェーブ」と題するウェブサイトにおいて、2013年4月28日付、2014年5月8日付、及び同年9月27日付、「QR Code」と「QRコード」と併記している(乙11)。さらに新聞広告等においても、「QR Code登録表示「R」」と表示するとともに同じ広告面において「QRコード登録表示「R」はデンソーウェーブが開発しました。」と、併記して使用している(乙12)。
このように、「QRコード」と「QR Code」の併記使用は、実質的に「QRコード」と「QR Code」の二段書きと同一である。
請求人は、本件商標上段の「QRコード」からは、本件商標下段の「QR Code」とは別意の観念も想起され、また、本件商標下段の「QR Code」からは、本件商標上段の「QRコード」とは別意の称呼及び観念を生じさせる「QRコーデ」等も想起されることから、本件商標の上段又は下段の何れか一方の使用は本件商標と社会通念上同一の商標ではないと主張している。
しかしながら、「QRコード」及び「QR Code」が、被請求人により開発された2次元コードとしてわが国の取引者・需要者において広く知られている。これは、請求人提出に係る各種用語解説集等(甲24?甲26、甲28?甲30)においても「QRコード」は「QR Code」を示すものとして常に解説されていることから、「QRコード」と「QR Code」は相互に一義的な観念関係にあるといえる。
以上より、本件商標について、その一方の「QRコード」又は「QR Code」のいずれかのみが使用された場合であっても、本件商標と「社会通念上同一の商標」の使用としで認められるべきである。
そうとすると、「QRコード」及び「QR Code」の文字がごく普通の活字体により上下2段に併記されるという単純な構成態様からなる本件商標について、「QRコード」、「QR Code」及びこれらの文字を横一連に併記した「QRコード/QR Code」のいずれかが使用された場合であっても、本件商標の識別性に影響を与える変更が構成部分に加えられているとする主張は妥当でなく、本件商標と「社会通念上同一の商標」の使用として認められるべきである。
3 本件商標及び使用に係る商標の自他商品識別機能について
乙各号証に記載の内容は、「2次元コードの規格を示すものとしての説明」ではなく、本件商標が、その指定商品中の「電子応用機械器具及びその部品」に含まれる「符号記録済みバーコードラベル」ないし「光学的に情報が記録された、あるいはコード化されたラベル」である本件商品1について品質保証機能及び自他商品識別機能を発揮する態様で使用されてきたことを明示している。
2次元コードには「QRコード」以外にも複数存在する(乙7)。すなわち、数ある2次元コードの中の1つに「QRコード」がある。
被請求人は、特定の特徴に加えて、高い品質基準を全て満たした2次元コードのみについて、本件商標を表示してきている。
また、本件商標を第三者が使用する際には、上記所定の品質を備えた本件商品1についてのみ使用することを許容しており(乙7、乙13)、当該品質を備えていない二次元コードについては、模倣品や粗悪品として、被請求人が権利行使をすることによって、本件商標が付された本件商品1に関する所定の優良な品質を担保かつ保証し、ユーザーの保護を図ってきている(乙4)。
したがって、本件商標は、本件商品1について商標の本質的機能である品質保証及び出所表示機能を十分に発揮してきている。
とりわけ、乙第9号証から乙第15号証の要証期間中における証拠に示されているように、被請求人は、各種宣伝広告媒体等において長期間にわたり、「『QR CODE』ないし『QRコード』は、株式会社デンソーウェーブの商標または登録商標です」(乙9)等、本件商標が登録商標である旨を明記し、一般の需要者や取引者に対して繰り返し注意喚起を行ってきている。
そして、これまでも「登録商標」との注意書きや登録表示「R」が付記されていることを根拠に自他商品識別機能の発揮が認められ、「商標」として認識されると判断され、使用による商標登録の維持が認められた事例(乙19、乙20)が多々ある。
また、たとえ本件商標に規格名称的な一側面があったとしても、本件商標が、本件商品1について自他商品識別機能、品質保証機能を十分に発揮しているという事実は変らず、規格名称と登録商標は反対概念ではなく、規格名称でありながらも自他商品識別力を発揮することは十分にあり得る(乙21、乙22)。
請求人は、弁駁書において、甲第11号証等を挙げ本件商標の後発的識別力の喪失の主張を展開している。
しかしながら、本件審判の争点は、本件商標が使用されているか否かの点であり、上記主張は失当である。
また、被請求人は、本件商標の普通名称化等を防止するために、「QRコード(QR Code)普通名称化防止規定」を2015年2月2日付で制定し(乙52)、本件商標の使用方法や第三者に対する使用許諾の範囲及び内容について規定している。そして、第三者に対する使用許諾の範囲及び内容は、上記規定中の「4.3 許諾範囲」並びに同条項に付随する別表「子会社・協力会社に対する商標・会社マーク使用許諾のガイドライン」に詳細に規定されている。
請求人が指摘するような第三者による「QR Code」又は「QRコード」の表示については、被請求人は、当該第三者の性質や行為の内容等に応じて、使用方法の是正や本件商標に係る商標権の侵害のおそれを警告する書面の送付等適切な措置を採ってきており、また今後も適切に対応する予定である。
なお、第三者による「QR Code」又は「QRコード」の表示に関する被請求人の対応の一例を示すために、「QRコード」の品質是正や再発防止策の要請等を行った事例に関する被請求人社内向け報告資料の写し(乙53)を提出する。
このように、被請求人が、本件商標の出所表示機能及び品質保証機能を担保すべく、本件商標のブランド管理を行ってきた。
4 不使用取り消し審判における使用について
不使用取消審判における登録商標の「使用」が争われた最近の裁判では、商標法第50条所定の登録商標の「使用」については、不使用取消審判制度の趣旨、すなわち全く使用されていない登録商標は第三者の商標選択の余地を狭めるため排他的な権利を与えておくべきでないという理由からすれば、当該商標がその指定商品・役務について何らかの態様により商標法第2条第3項各号に規定されている「使用」が行われていれば十分であり、自他商品役務識別標識としての使用には限定されないと判断される傾向にある(乙47?乙49)。
この主張を裏付けるために、上記裁判の裁判長であった知的財産高等裁判所判事・高部氏の著作に係る「実務詳細商標関係訴訟」の抜粋を提出する(乙55)。
この中で、高部氏は、「商標法50条所定の「登録商標の使用」は、商標がその指定商品について何らかの態様で使用されていれば十分であって、識別標識としての使用(すなわち、商品の彼此識別など商標の本質的機能を果たす態様の使用)に限定しなければならない理由は、考えられない。」と述べている。
5 使用に係る商品について
(1)本件商品1について
ア 「符号記録済みバーコード用ラベル」ないし「光学的に情報が記録された、あるいはコード化されたラベル」である本件商品1は、第9類「電子応用機械器具」に含まれる商品である。
被請求人は、本件商標をその登録表示「R」とともに、商品カタログ2015年2月発行版において「符号記録済みバーコード用ラベル」に近接して付している(乙13)。これは、商標法第2条第3項第1号規定の「使用」に該当する。
また被請求人は、従来に続き本件商品に関する広告等において本件商標が被請求人の本件商品にかかる出所標識かつ登録商標であることを強調しながら付して、展示や頒布を行ってきている(乙9?乙15)。これらは、商標法第2条第3項第8号規定の「使用」に該当する。
イ 本件商品1の取引について
被請求人は、本件商品1の広くかつ迅速な標準化を推進するために、1990年代から2000年代にかけて、本件商品を作成するマニュアル(乙7)を無償配布し、第三者による二次元コードの生成を促してきた。また、乙第11号証は、被請求人が運営するウェブサイト「QRコードドットコム」のトップページ画面の写しであるが、当該ページ中の「導入するには?」の部分をクリックすると、「QRコードを生成する」といった表示を含むページにリンクし、さらにQRコードの生成に関する様々な情報を入手することが可能である。
なお、被請求人が運営する上記ウェブサイト及び当該ページは、要証期間中から現在までアクセスすることができる(乙24)。
そして上記マニュアルの無償配布と引き換えに、被請求人は、本件商品1をより早くかつ正確に読み取るためのデコード機器やデコードソフトウェアを有償で販売する(乙18ほか)ことによって、本件商品1の譲渡に対する対価を得てきた。
以上の商取引を全体としてみれば、本件商品自体の無償性にかかわらず、本件商品1を対象とした商取引が日本国内で広く実質的に行われてきたと考えるのが極めて妥当である。
ウ まとめ
上述のとおり、被請求人が、要証期間内に本件商品について自他商品識別標識・品質保証標識として本件商標を付し、また本件商標を付した本件商品を日本国内で実質的に広く譲渡してきた。また、第三者に対しても、標準化推進やデコードツールの有償販売と引換えに、無償ではあるものの、本件商品1に対する本件商標の使用を実質的に許諾してきたことが明らかである。そして、乙各号証が示すように本件商品1に関する広告等に本件商標が付して頒布され、これらを内容とする情報に本件商標を付して電磁的方法により提供されてきている。
したがって、被請求人が、要証期間内に本件商品1について本件商標の商標法第2条第3項第1号及び同項2号及び同項8号に定める標章の「使用」を行ってきたことは明白である。
(2)本件商品2について
ア 「ダウンロード可能な電子計算機用プログラム」は第9類「電子応用機械器具」に含まれる商品である。
2014年10月22日付朝日新聞記事における「一般利用者は無料配布するスマホ用の専用アプリをダウンロード」という記載(乙16)からも明らかなように、被請求人はスマートフォンの画面上に表示されるアプリケーションソフトウェアのアイコンに近接して、本件商標を付している(乙17)。
スマートフォンの所有者が、スマートフォン用アプリを、そのアプリの販売者から購入するのは公知の事実であるところ、上記QRコードリーダーのスマートフォン用アプリの販売者である被請求人が、本件商標がその指定商品に付されたものをもって消費者に対し電気回線を通じた提供等をしていることも明白である。
したがって、これらが商標法第2条第3項第1号、同項2号規定の「使用」に該当することは明らかである。
また、被請求人は、本件商品中「ダウンロード可能な電子計算機用プログラム」に該当するスマートフォン用アプリ等のソフトウェアに関する広告や取引書類等に、本件商標を付して頒布等している(乙18)。これは商標法第2条第第3項第8号に規定する「使用」に該当する。
イ 乙第17号証で示される、本件商標「QR Code」と「QとRの文字が組み合された形状のアイコン」は、2014年に、被請求人が、スマートフォン事業を手掛けるアララ社と共同開発したダウンロード可能な電子計算機用プログラムであるアプリケーションソフトウェアである本件商品2について、被請求人及びアララ社によって使用されているアイコンである(乙25、乙26)。
また、乙第17号証に表された「QR Code」の表示のアイコン及び当該アイコンからダウンロード可能な本件商品2は、被請求人のものである。
本件商品2であるアプリケーションソフトウェアの発表に際し、被請求人は、「QとRの文字が組み合された形状のアイコン」の下に本件商標と社会通念上同一の商標である「QR Code」を本件商品2の出所標識として使用することを決定した(乙27)。
本件商品2は、2014年9月10日?12日に東京ビッグサイトで開催された「第16回自動認識総合展」においてリリースが発表された後、被請求人がアララ社とともに、要証期間内の2014(平成26)年10月17日よりiOS版の提供を開始し、2014年9月9日よりアンドロイド版の提供を開始した(乙29)その後、現在に至るまで、本件商標が付された本件商品2は随時バージョンアップが行われ、数多くのユーザーに提供されている(乙30)。
ウ 請求人は、要証期間内において本件商品2を、電気通信回線を通じて提供したのは、アララ社であって、被請求人ではない。また、アララ社は、本件商標の商標登録原簿に専用使用権者としても、通常使用権者としても登録されていない(甲39)ことから、本件商標を本件商品2について使用することについて許諾したことを裏付ける証拠は何等提出されていないと主張する。
この点については、本件商品2に関する事業が被請求人とアララ株式会社の共同で行われていることは明らかである(乙25?乙30)から、本件審判の要証期間内に、被請求人からアララ社に対して、本件商標権に関する黙示の通常使用権が許諾されていることも明らかである。
なお、被請求人は、本件審判の要証期間内に、被請求人からアララ社に対して、本件商標権に関する通常使用権が許諾されていたこと認めるアララ作成に係る確認書を提出する(乙54)。
(3)本件商品3について
被請求人が乙第18号証として提出した取引書類写しは、被請求人が第三者に対して販売した「QRコードデコードソフトウェアライブラリロイヤリティ」という名称の2次元コード読み取り用コンピュータソフトウェアである本件商品3に関する2015年10月19日付納品書及び請求書の写しでる。
本件商品3については、被請求人が設計・開発した本件商品3が当該第三者により製造販売されるビデオカメラ等にあらかじめ搭載され、当該ビデオカメラ等の出荷台数に応じて本件商品3の対価が被請求人から当該第三者に請求されるという取引手法が取られる。
なお、要証期間内において、当該第三者に対して本件商品3を販売した事実を証明する別の納品書及び請求書の写しを乙第32号証として提出する。
そうとすると、被請求人は、要証期間内において、本件指定商品中の「電子応用機械器具及びその部品」に含まれる本件商品3に関する取引書類に本件商標を付して頒布し、又はこれらを内容とする情報に本件商標を付して電磁的方法により提供していたことになり、これらの行為が商標法第2条第3項第8号に規定される標章の「使用」に該当することも明らかである。
本件商品3に関する取引の注文先(乙18、乙32)、及び、本件商品3があらかじめ搭載(インストール)されるビデオカメラの製造者は、いずれもJVCケンウッド社である。
ユーザーが宅外からインターネットを通じて当該ビデオカメラにアクセスできるように、本件商品3は当該ビデオカメラにあらかじめ搭載(インストール)されている。ユーザーは宅外モニターの設定に必要な情報が人力された2次元コードを生成して当該ビデオカメラに設定し、その後本件商品3に係るソフトウェアを起動して当該ビデオカメラの画面上で当該2次元コードを読み取り、当該ビデオカメラに無線LANルーターのアクセスポイントを登録することにより、スマートフォン等の外部機器から当該ビデオカメラにアクセスすることが可能となる(乙43)。乙第43証の1第6頁及び乙第43号証の2第4頁の「4 QRコードを読み取る」の当該ビデオカメラの画面を示した図から明らかなように、本件商品3に係るソフトウェアが起動されると、本件商標を含む「QRコードを読み取って下さい」という文字が表示される。
なお、乙第44証は、2012年第3四半期から2015年第3四半期におけるJVCケンウッド社に対する本件商品3の出荷台数や売上高の一覧表であり、乙第45号証及び乙第46号証は、それぞれ、2014年第1四半期(4月?6月)及び2014年第3四半期(10月?12月)におけるJVCケンウッド社に対する本件商品3の出荷実績の明細である。乙第45号証及び乙第46号証中の「機種名」の欄には、JVCケンウッド社が製造するビデオカメラの機種名が記載されており、そのうちの「GZ-RX-130」シリーズに関する「QRコード」を利用したWi-Fi設定等は、乙第43号証として提出したJVCケンウッド社による当該機種の取扱いに関するウェブサイト「ビデオカメラ/Webユーザーガイド/GZ-RX-130」から情報を得ることができる。そして、上記ウェブページ上では、本件商標が被請求人名義の登録商標であることがユーザーに認識されるよう、「※QRコードは(株)デンソーウェーブの登録商標です。」と明記されている。
なお、上記ウェブサイトに含まれる各ウェブページが要証期間内に存在していたことは、乙第43号証の1各ページ右上の記載(2015年8月21日?23日)より明らかである。
そうとすると、被請求人は、要証期間内において、本件指定商品中の「電子応用機械器具及びその部品」に含まれる本件商品3に係るソフトウェアに本件商標を付したものを譲渡し、あるいは、本件商品3に係るソフトウェアに関する取引書類に本件商標を付して頒布し、又はこれらを内容とする情報に本件商標を付して電磁的方法により提供していたことになるから、これらの行為が商標法第2条第3項第2号及び第8号に規定される標章の「使用」に該当することは明らかである。
(4)本件商品4について
ア 乙第24号証に記載のソフトウェア(「QRdraw Jr」「QRdraw Ad」「QRmaker Ad」及び「QRmaker JV」)である本件商品4は、被請求人が作成・販売するソフトウェアである。各ソフトウェアは、被請求人により開発された2次元コードである「QRコード」を生成し、又は、当該生成機能をサポート等するためのソフトウェアである(乙36?乙39)。上記ソフトウェアのうち、「QRmaker Ad」用のユーザーマニュアルの中では、「QRコード、QR Code、・・・・・は(株)デンソーウェーブの登録商標です」と明記されている(乙40)。
また、被請求人が作成・販売するバーコード・2次元コード読み取り用ソフトウェア「QRdecoder」に関する被請求人のウェブサイト抜粋(乙41)及び、そのユーザーマニュアルの中でも、「QRコード、QR Codeは(株)デンソーウェーブの登録商標です」と名義されている(乙42)。
イ 乙第24号証は、被請求人のウェブサイト「QRコードドットコム」が要証期間内に存在していた事実を示すために、米国の非営利法人「Internet Archive」が提供するウェブアーカイブ検索サイトウェイバックマシンを利用して作成された。
しかし、ウェイバックマシンでは、そのシステム上、必ずしもウェブサイトに含まれる全てのページが同一の日付で保存されているわけではないため、被請求人のウェブサイト「QRコードドットコム」の各ページが別々の日付で保存されたものの写しを提出したが、各ページ右上に記載された日付によれば、被請求人のウェブサイトの各ページが2014年2月6日?3月15日の約1ヶ月半という短い期間内に存在していたことが明らかである。
なお、乙第24号証の2は、乙第24号証の1に含まれるページと対応するページが現在もアクセス可能であることを示すために提出したものである。
6 まとめ
以上より、本件商標が本件審判の取消請求に係る商品について、本件審判の請求の登録前3年以内に被請求人によって使用されていたことが客観的に証明された。

第4 当審の判断
1 本件商品2について
(1)証拠及び被請求人の主張によれば、以下の事実を認めることができる。
ア 乙第25号証は、アララ社による2014年(平成26年)9月9日付けプレスリリースとのことであるが、当該書証には「アララ、デンソーウェーブと共同開発アプリ『QR Code Reader"Q"』を自動認識総合展にて発表」のタイトルのもと、「AR技術をベースにスマートフォン事業を手掛けるアララ株式会社(・・・)は、株式会社デンソーウェーブ(・・・)と共同開発したQRコードリーダーアプリ『QR Code Reader"Q"』を9月10日?9月12日東京ビックサイトにて開催される『第16回自動認識総合展』にて発表いたします。」の記載が確認できる。
イ 乙第30号証の1は、App Storeにおける本件商品2に係るアプリ(iOS版)の紹介ページ抜粋とのことであるが、当該書証1頁には「公式QRコードリーダー"Q"」のタイトルのもと、「開発:arara inc」、「更新:2015年11月25日 バージョン:1.7.0」、「サイズ:40.6MB」、「販売元:arara inc」の記載、「説明」として「QRコードリーダーの決定版!平均評価4.86!今まで読み取りにくかった『小さなQRコード』や『細かいQRコード』も簡単に読み取る事ができます。」の記載や「利用者の声」には「■一瞬で読み取ってくれる上に精度もいい。」等の、「機能一覧」には「QRコード(以下「使用商標1」という。)登録表示『R』作成(テキスト、URL、連絡先、地図から生成)」等の、「新機能」についての説明の記載がある。そして、当該書証1頁の下段には「*QRコード登録表示『R』、フレームQR登録表示『R』は株式会社デンソーウェーブの登録商標です。」「※"Q"は、株式会社デンソーウェーブとアララ株式会社が共同開発しています。」の記載がある。
(2)判断
以上より、本件商標権利者である被請求人は、アララ社と共同開発をした本件商品2の「QR Code Reader"Q"」なるQRコードリーダーアプリケーションソフトウェアを2014年(平成26年)9月10日から同月12日まで東京ビックサイトにて開催された「第16回自動認識総合展」において発表し(乙25)、その後当該アプリケーションソフトウェアは、アララ社により、ウェブサイト上の「App Store」から、バージョン1.7.0が、2015年(平成27年)11月25日に提供されたことが認められる(乙30の1)。
ア 使用商標1について
本件商標は上記第1のとおり「QR コード」及び「QR Code」の文字を上下二段に書してなるものである。
ところで、本件商標を構成する「QR コード」及び「QR Code」の文字は、新聞記事、辞書類(乙1、乙2、甲24?甲26、甲28)からすれば、両文字は「キューアールコード」と称呼され、「被請求人が開発した2次元コード」を表すものとして一般的に認識されているものと認められる。
これより、本件商標からは、「キューアールコード」の称呼及び「被請求人が開発した2次元コード」の観念が生じるものと認められる。
一方、使用商標1は「QRコード」の文字からなるところ、使用商標1は本件商標と同様に、「キューアールコード」の称呼及び「被請求人が開発した2次元コード」の観念が生じるものと認められる。
そこで使用商標1と本件商標とを比較してみると、両商標は称呼及び観念を同じくし、使用商標1と本件商標構成中の「QR コード」とはその文字綴りをも同じくし、使用商標1と本件商標構成中の「QR Code」とは片仮名及びローマ字の文字の表示を相互に変更するものといえるから、使用商標1は本件商標と社会通念上同一の商標と認められる。
イ 使用商品について
本件商品2である「QR Code Reader"Q"」なるQRコードリーダーアプリケーションソフトウェアは、被請求人とアララ社とが共同開発したダウンロード可能な電子計算機用プログラムであることから、本件商標の指定商品中の「電子応用機械器具及びその部品」に含まれる商品である。
ウ 使用時期について
使用商標1が使用されているアララ社によるウェブサイト(乙30の1)には、「更新:2015年11月25日」の記載があることから、当該ウェブサイトは少なくとも2015年(平成27年)11月25日には存在していたと認められ、これは要証期間内の日付である。
エ 使用者について
使用商標1が使用されているアララ社によるウェブサイト(乙30の1)には、本件商品2の開発社、商品のバージョン、サイズ、販売元、商品の説明、商品の評価、利用者の声、機能一覧等が記載されていることから、当該ウェブサイトは本件商品2についての広告をも兼ねるものといえる。
また、当該ウェブサイトは、アララ社によるものと認められるところ、アララ社は、被請求人と本件商品2を共同開発し、その旨を2014年(平成26年)9月9日付けプレスリリースにより公表していること(乙25)、その後、アララ社によるウェブサイトにおいて本件商品2を広告、提供すると共に、当該ウェブサイトに「*QRコード登録表示『R』、フレームQR登録表示『R』は株式会社デンソーウェーブの登録商標です。」「※"Q"は、株式会社デンソーウェーブとアララ株式会社が共同開発しています。」の記載を掲載していること(乙30の1)、この事実に対して被請求人がアララ社に商標権の侵害の警告を行っている等の事情は確認できないばかりで無く、本件商標の商標権者である被請求人は、アララ社に対して、本件商標権に関する黙示の通常使用権を許諾している旨の主張をしている。
そうとすれば、アララ社は本件商標の通常使用権者というべきである。
(3) 小括
以上より、本件商標の通常使用権者のアララ社は、我が国において、少なくとも本件審判の請求の登録前3年以内である平成27年11月25日ごろ、本件商標の指定商品中に含まれる「ダウンロード可能な電子計算機用プログラム」についての広告をも内容とするウェブサイトにおいて、本件商標と社会通常上同一の商標を使用し、電磁的方法により提供していたと認められ、当該行為は、商標法第2条第3項第8号に定める商標の「使用」に該当する。
2 本件商品4について
(1)証拠及び被請求人の主張によれば、以下の事実を認めることができる。
ア 乙第24号証の1は、2017年1月25日にプリントアウトされたものと認められる被請求人のウェブサイト「QRコードドットコム」の抜粋であり、米国の非営利法人「InternetArchive」が提供するウェブアーカイブ検索サイト「ウェイバックマシン」による要証期間内のものとのことであるが、当該書証の第1葉目には、そのヘッダ部分に「INTERNET ARCHIVE/WaybackMachine」及び「3/14/2014」の記載があり、そのコンテンツ部分には「みんなの知りたい使いたいを解決!/キューアール/QRコードドットコム/DENSO WAVE,the Inventor of QR Code」のタイトルの記載、「QRコードとは?」、「導入するには?」、「道のり」、「QRコードのいろいろな使い方」、「QRコードの種類」の見出しの記載及び「QRコード、iQRコード、SQRCは(株)デンソーウェーブの登録商標です。」の記載がある(以下、当該書証に記載の「QR Code」及び「QRコード」を「使用商標2」という。)。
次に、当該書証の第3葉目には、そのヘッダ部分に「INTERNET ARCHIVE/WaybackMachine」及び「3/15/2014」の記載があり、そのコンテンツ部分の下部には「デンソーウェーブのコード生成・検証・デコードソフトウェア」、「デンソーウェーブでは、ニーズに合わせて下のQRコード生成ソフトをラインナップしています。」の見出しのもと、「QRderaw Ad/PCにインストールしてQRコードを生成するソフトウェア。各種バーコードの生成できます。OLEオートメーション機能も備えています。」の記載のほか、「QRderaw Jr」、「QRmaker Ad」、「QRmaker JV」及びそれぞれに対応した説明の記載がある。
イ 乙第24号証の2は、2017年1月25日にプリントアウトされたものと認められる被請求人のウェブサイト「QRコードドットコム」の抜粋であるが、その記載内容は乙第24号証の1の記載内容と、そのヘッダ部分を除いてほぼ同一である。
ウ 乙第37号証の1は、2017年3月15日にプリントアウトされたものと認められる被請求人のウェブサイトの抜粋であり、米国の非営利法人「InternetArchive」が提供するウェブアーカイブ検索サイト「ウェイバックマシン」による要証期間内のものとのことであるが、当該書証には、そのヘッダ部分に「INTERNET ARCHIVE/WaybackMachine」及び「9/2/2013」の記載があり、そのコンテンツ部分には「バーコード・2次元コード生成/QRderaw Ad」、「パソコンでバーコード・2次元コードを生成するソフトウェア」、「製品名/QRderaw Ad」、「希望小売価格/¥35,000」、「※QRderaw Adはライセンス証書販売となります。(CD-ROM等のメディアがございません)/1PCに対して1ライセンス必要です。本製品1本で1ライセンスです。」の記載があり、その直下に「ダウンロードへ/(マニュアル/ドライバ/ソフトウェア)」と表示されたダウンロード用ボタンがある。
エ 乙第37号証の2は、2017年3月8日にプリントアウトされたものと認められる被請求人のウェブサイトの抜粋であるが、その記載内容は乙第37号証の1の記載内容と、そのヘッダ部分を除いてほぼ同一である。
(2)判断
以上より、本件商標権利者である被請求人は、被請求人ウェブサイト(乙24の2)「QRコードドットコム」において、本件商品4である「QRdraw Jr」「QRdraw Ad」「QRmaker Ad」及び「QRmaker JV」なる名称のソフトウェアを販売している。そして、当該ウェブサイトは2014年3月頃から同じ内容で存在していたことが認められる(乙24の1)。
ア 使用商標2について
使用商標2は「QR Code」及び「QRコード」の文字からなるところ、両文字は上記1(2)アのとおり、共に「キューアールコード」の称呼及び「被請求人が開発した2次元コード」の観念が生じるものであることから、使用商標2は本件商標と社会通念上同一の商標と認められる。
イ 使用商品について
本件商品4である「QRdraw Jr」、「QRdraw Ad」「QRmaker Ad」及び「QRmaker JV」なる名称のソフトウェア中、例えば「QRdraw Ad」はダウンロード可能な電子計算機用プロラムであるから(乙37の2)、本件商標の指定商品中の「電子応用機械器具及びその部品」に含まれる商品である。
そして、「QRdraw Ad」は、遅くとも2013年(平成25年)9月2日には存在し、被請求人によって販売されていたと認められる(乙37の1)。
ウ 使用時期について
使用商標2が使用されている被請求人のウェブサイト「QRコードドットコム」は、2017年1月25日にプリントアウトされたものと(乙24の2)、ウェイバックマシンにより保存されていた2014年3月ごろのものとが、その記載内容において頁レイアウトを含め同一であることから、要証期間内である2014年(平成26年)3月ごろ以降、2017年(平成29年)1月25日まで継続して存在し、その間の当該ウェブサイトの内容は、使用商標2の使用を含め、ほぼ同一であったと推認できる。
エ 使用者について
使用商標2が使用されている被請求人のウェブサイト「QRコードドットコム」中には、本件商品4についての商品に関する紹介、機能説明も記載されていることから、当該ウェブサイトは本件商品4についての広告をも兼ねるものといえる。
そして、当該ウェブサイトは、被請求人によるものであるから、当該ウェブサイトに使用された使用商標2は被請求人である本件商標権利者の使用と認められる。
(3) 小括
以上より、本件商標の商標権者は、我が国において、本件審判の請求の登録前3年以内である平成26年3月ごろ、本件商標の指定商品中に含まれる「ダウンロード可能な電子計算機用プログラム」についての広告をも内容とするウェブサイトにおいて、本件商標と社会通常上同一の商標を使用し、電磁的方法により提供していたと認められ、当該行為は、商標法第2条第3項第8号に定める商標の「使用」に該当する。
3 請求人の主張について
(1)本件商標と使用商標1及び使用商標2の社会通念上の同一性について
請求人は、本件商標の構成中上段の「QRコード」のみの使用は、「コード」の称呼が生じる語として「Code」、「Cord」、「Chord」等複数が存在するのであるから、下段の「QR Code」とは別異の観念が生じる場合があり、また、本件商標の構成中下段の「QR Code」のみの使用は、「Code」の部分から、「コーデ」の称呼と「(ファッションの)コーディネート」の観念も生じ得ることから、「QRコード」のみ又は「QR Code」のみの使用は、本件商標と社会通念上同一とはいえない旨主張する。
しかしながら、本件商標を構成する「QR コード」及び「QR Code」の両文字が、共に「キューアールコード」と称呼され、「被請求人が開発した2次元コード」を表すものとして一般的に認識されていることから、「QR コード」又は「QR Code」いずれかの文字のみの使用であっても、本件商標と社会通念上同一の商標の使用といえることは上記1(1)アのとおりである。また、請求人が挙げる使用例(甲4?甲6、甲42)についても「QR Code」の誤記と思える例を含めて僅かにすぎず、上述の認定を覆すことはできない。
(2)使用商標1及び使用商標2の自他商品等識別機能
請求人は、本件商標は、2次元コードの規格の1つを表すもので自他商品等識別機能を発揮しない標章であるから、これをいかなる商品に形式的に使用したとしても、商標法第50条に規定する「使用」に該当しない旨主張する。
しかしながら、被請求人が開発した2次元コードについて、被請求人が「QR コード」及び「QR Code」と命名し、「QR コード」が被請求人の登録商標である旨とともに、その取引者に当該2次元コードの普及に務めた(乙1、乙2、乙3?乙7)結果、「QR コード」及び「QR Code」の文字が、新聞記事、辞書等(乙1、乙2、甲24?甲26、甲28)に「被請求人が開発した2次元コード」として掲載されていることからすれば、両文字は取引者のみならず一般的な需要者にも、単に2次元コードの規格の名称というよりは、辞書等の記載と同様に「被請求人が開発した2次元コード」として認識されているというのが相当であるから、両文字が2次元コードの規格の名称(普通名称)としてのみ認識され、自他商品等の識別標識としての機能を喪失しているとはいえない。
そうとすれば、「QR コード」及び「QR Code」の文字を、使用商品2及び使用商品4に使用した場合、これらの文字が商品の品質、内容を表すものともいえない。
さらに、上記1(1)及び2(1)のとおり、使用商標1及び使用商標2の使用に際しては同一ウェブサイト上に、「QRコード」が被請求人の登録商標である旨の表示を行っていること、「QRコード」に登録表示「R」付して使用している場合も有ることを考慮すれば、使用商品2及び使用商品4についての使用商標1及び使用商標2の使用がを商標法第50条に規定する「使用」に該当しないとはいえない。
(3)証人尋問について
請求人は、本件商品2の提供主体はあくまでアララ社であり、アララ社は、本件商標の商標登録原簿によれば専用使用権者でも通常使用権者でもない旨を主張し、この件に関し被請求人は、アララ社作成に係る確認書(乙54)を提出するが、当該確認書の、不自然な点を確認する必要があることから、当該確認書の名義人であるアララ社代表取締役を証人とする証人尋問を申し立てるとして証人尋問申出書を提出している。
しかしながら、上記1(2)エのとおり、アララ社は、被請求人と本件商品2を共同開発している旨をプレスリリースにより公表していること(乙25)、アララ社によるウェブサイトにおいても「QRコード」が被請求人の商標登録であること及び本件商品2がアララ社と被請求人との共同開発によるものである事を表示している事実に対して被請求人がアララ社に商標権の侵害の警告を行っている等の事情は確認できないことから、本件商標の商標権者である被請求人は、アララ社に対して、本件商標権に関する黙示の通常使用権を許諾があったとするのが自然である。加えて、被請求人自身もアララ社に対して本件商標権に関する黙示の通常使用権を許諾している旨の主張を行っているのであるから、アララ社は本件商標の通常使用権者といって差し支えない。
これに対し、請求人が証人尋問において証明しようとするアララ社名義の確認書(乙54)は、上記事実を確認書として記憶等をもとに事後的に作成したものであろうことから、仮に確認書に不明確な点があったとしてもアララ社が本件商標の通常使用権者との上記1の認定に影響を及ぼすものではなく、さらに、本件審判においては被請求人(商標権者)自身の使用についても認められることから、当合議体は、証人尋問は要しないと判断した。
4 まとめ
以上のとおり、商標権者及び使用権者は、本件審判の請求の登録前3年以内に、日本国内において、本件審判の請求に係る指定商品に含まれる商品「ダウンロード可能な電子計算機用プログラム」について、本件商標と社会通念上同一と認められる標章の使用を証明したということができる。
したがって、本件商標の登録は、商標法第50条により、取り消すことはできない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲



審理終結日 2018-03-13 
結審通知日 2018-03-15 
審決日 2018-03-27 
出願番号 商願平7-60813 
審決分類 T 1 31・ 1- Y (009)
最終処分 不成立  
特許庁審判長 今田 三男
特許庁審判官 薩摩 純一
田中 幸一
登録日 1997-10-24 
登録番号 商標登録第4075066号(T4075066) 
商標の称呼 キュウアアルコード、コード 
代理人 大橋 啓輔 
代理人 雨宮 康仁 
代理人 田島 壽 
代理人 石神 恒太郎 
代理人 磯田 一真 
代理人 青木 篤 
代理人 山口 健司 
代理人 外川 奈美 

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