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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W0942
審判 全部申立て  登録を維持 W0942
審判 全部申立て  登録を維持 W0942
審判 全部申立て  登録を維持 W0942
管理番号 1352478 
異議申立番号 異議2018-900369 
総通号数 235 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2019-07-26 
種別 異議の決定 
異議申立日 2018-12-06 
確定日 2019-06-10 
異議申立件数
事件の表示 登録第6088250号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて,次のとおり決定する。 
結論 登録第6088250号商標の商標登録を維持する。
理由 1 本件商標
本件登録第6088250号商標(以下「本件商標」という。)は,「きりんカルテ」の文字を標準文字で表してなり,平成30年7月25日に登録出願,第9類「電子応用機械器具(「ガイガー計数器・高周波ミシン・サイクロトロン・産業用X線機械器具・産業用ベータートロン・磁気探鉱機・磁気探知機・地震探鉱機械器具・水中聴音機械器具・超音波応用測深器・超音波応用探傷器・超音波応用探知機・電子応用扉自動開閉装置・電子顕微鏡」を除く。),電子計算機用プログラム,コンピュータソフトウェア,アプリケーションソフトウェア,電子カルテシステム用コンピュータソフトウェア」及び第42類「コンピュータシステムの設計・作成又は保守,電子計算機用プログラムの設計・作成又は保守,ウェブサイトの作成又は保守,電子計算機の貸与,通信ネットワークを通じたサーバーの記憶領域の貸与,電子計算機用プログラムの提供,電子計算機その他その用途に応じて的確な操作をするためには高度の専門的な知識・技術又は経験を必要とする機械の性能・操作方法等に関する紹介及び説明,機械・装置若しくは器具(これらの部品を含む。)又はこれらの機械等により構成される設備の設計」を指定商品及び指定役務として,同年9月26日に登録査定され,同年10月12日に設定登録されたものである。

2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が引用する商標は次のとおり(以下,これらをまとめて「引用商標」という。)であり,いずれの商標権も現に有効に存続しているものである。
(1)登録第3304823号商標(以下「引用商標1」という。)
商標の態様 KIRIN
指定役務 第42類に属する商標登録原簿に記載の役務
登録出願日 平成4年9月29日
設定登録日 平成9年5月16日
(2)登録第3304824号商標(以下「引用商標2」という。)
商標の態様 キリン
指定役務 第42類に属する商標登録原簿に記載の役務
登録出願日 平成4年9月29日
設定登録日 平成9年5月16日
(3)登録第3304825号商標(以下「引用商標3」という。)
商標の態様 麒麟
指定役務 第42類に属する商標登録原簿に記載の役務
登録出願日 平成4年9月29日
設定登録日 平成9年5月16日
(4)登録第4376782号商標(以下「引用商標4」という。)
商標の態様 麒麟
指定商品 第9類及び第28類に属する商標登録原簿に記載の商品
登録出願日 平成10年10月7日
設定登録日 平成12年4月14日
(5)登録第4377018号商標(以下「引用商標5」という。)
商標の態様 KIRIN
指定役務 第35類ないし第42類に属する商標登録原簿に記載の役務
登録出願日 平成10年12月28日
設定登録日 平成12年4月14日
(6)登録第4514650号商標(以下「引用商標6」という。)
商標の態様 KIRIN
指定商品 第5類,第9類,第10類及び第28類に属する商標登録原簿に記載の商品
登録出願日 平成12年8月1日
設定登録日 平成13年10月19日
(7)登録第5240434号商標(以下「引用商標7」という。)
商標の態様 KIRIN
指定役務 第35類に属する商標登録原簿に記載の役務
登録出願日 平成19年6月25日
設定登録日 平成21年6月19日

3 登録異議の申立ての理由
申立人は,本件商標は商標法第4条第1項第11号及び同項第15号に該当するものであるから,その登録は同法第43条の2第1号により取り消されるべきものであるとして,その理由を要旨次のように述べ,証拠方法として甲第1号証ないし甲第51号証を提出した。
(1)前提となる事実
ア 商標調査会発行の「日本商標名鑑」に,「麒麟」の図形商標,「麒麟」,「キリン」及び「KIRIN」の各文字商標が掲載されるとともに(甲11,甲12),社団法人国際工業所有権保護協会日本部会作成の「FAMOUS TRADEMARKS IN JAPAN 日本有名商標集」に,「KIRIN」の文字商標が掲載されている(甲13)。
商標審査便覧に「FAMOUS TRADEMARKS IN JAPAN 日本有名商標集」に掲載されている商標については,「わが国における周知度,指定商品及び指定役務との関係等を考慮して取り扱うものとする」という記載があり(甲14),商標審査基準に「指定商品又は指定役務について需要者の間に広く認識された他人の登録商標と他の文字又は図形等と結合した商標は,その外観構成がまとまりよく一体に表されているもの又は観念上の繋がりがあるものを含め,原則として,その他人の登録商標と類似するものとする」と記載されている(甲15)。
イ 「KIRIN」の文字商標は,第9類「電子応用機械器具及びその部品,ほか」及び第42類「機械・装置若しくは器具(これらの部品を含む。)又はこれらにより構成される設備の設計,ほか」等を含む広範囲に及ぶ指定商品及び指定役務について,また,「キリン」及び「麒麟」の文字商標は第35類「電気機械器具類の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,ほか」等を含む広範囲に及ぶ指定商品及び指定役務について防護標章登録されている(甲16?甲19)。
ウ 「麒麟」,「キリン」及び「KIRIN」の各文字が申立人及びその関連会社(以下「申立人等」という。)の業務に係る商品又は役務を表示する商標として取引者及び需要者の間に広く認識されている旨判断した審判決がある(甲22?甲27)。
(2)商標法第4条第1項第11号該当性について
本号に係る最高裁判決(平成19年(行ヒ)第223号ほか)の判示基準に沿って,以下検討する。
ア 本件商標
本件商標は,「きりんカルテ」の文字を標準文字で表してなるものである。
そして,本件商標は,平仮名「きりん」と片仮名「カルテ」の種類の異なる文字で構成され,視覚上分離して観察されるものであること,その構成文字全体から生じる「キリンカルテ」の称呼もやや冗長であり,中間音の「ン」で一拍おいて発音され,「キリン」と「カルテ」に区切って称呼されること,及び全体として1個の熟語を形成しているものとは認められないことから,「きりん」と「カルテ」とを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものとはいえないものである(甲28?甲33)。
さらに,現在,電子カルテの普及が進んでいることから,本件商標の指定商品(第9類「電子カルテシステム用コンピュータソフトウェア」など)及び指定役務(第42類「コンピュータシステムの設計・作成又は保守」など)に使用される場合,本件商標の構成中「カルテ」の文字部分は,単に指定商品の品質又は指定役務の質(電子カルテに関する商品及び役務)を表示する部分と認識し,理解されるのが自然であり,商品又は役務の出所識別標識としての称呼,観念が生じない(甲34?甲36)。
これに対し,「きりん」の文字部分は,「中国で聖人の出る前に現れると称する想像上の動物。」,「最も傑出した人物のたとえ。」及び「ウシ目キリン科の哺乳類。」を意味し(甲33),その指定商品及び指定役務との関係において,商品及び役務の出所識別標識としての機能を発揮する部分であり,「カルテ」の文字部分よりも識別力が高いから,取引者及び需要者に対して強く支配的な印象を与える商標の要部と認められるものである。
したがって,本件商標からは,その要部である「きりん」の文字部分より「キリン」の称呼が生じ,想像上の動物である「麒麟」と,キリン科の動物である「キリン」の観念が生じるものである。
イ 引用商標
引用商標1及び引用商標5ないし引用商標7は「KIRIN」の文字,引用商標2は「キリン」の文字,引用商標3及び引用商標4は「麒麟」の文字からそれぞれなるものであり,いずれも各文字より「キリン」の称呼が生じ,想像上の動物である「麒麟」と,キリン科の動物である「キリン」の観念が生じる。
ウ 本件商標と引用商標との類否
本件商標の要部「きりん」と引用商標とを比較すると,両者は「キリン」の称呼が同一であり,想像上の動物である「麒麟」又はキリン科の動物である「キリン」の観念を生じる点で共通するから,本件商標と引用商標は,称呼及び観念において相紛らわしい。
なお,商標審査基準には,「…商品の品質,原材料等を表示する文字,若しくは役務の提供の場所,質等を表示する識別力を有しない文字を有する結合商標は,原則として,それが付加結合されていない商標と類似する」と記載されている(甲15)。
したがって,本件商標と引用商標とは,その外観,観念及び称呼を総合的に判断した場合,互いに類似の商標であるというべきである。
そして,本件商標の指定商品及び指定役務は,引用商標の指定商品又は指定役務と同一又は類似のものであることは明らかである。
エ 小括
以上のとおり,本件商標は,その出願の日前の出願に係る引用商標と同一又は類似であって,引用商標に係る指定商品及び指定役務と同一又は類似の商品及び役務について使用するものである。
したがって,本件商標は商標法第4条第1項第11号に該当する。
(3)商標法第4条第1項第15号該当性について
本号に係る最高裁判決(平成10年(行ヒ)第85号ほか)の判示基準に沿って,以下検討する。
ア 引用商標の周知・著名性及び独創性の程度
引用商標は,キリングループの業務に係る「ビール,清涼飲料」等を表示するものとしてのみならず,その使用方法,使用期間及び使用規模から,食品事業,医薬品事業,小売事業,飲食事業など多岐に亘る業務に係る商品又は役務を表示するキリングループの代表的出所標識として,需要者の間で広く認識されているといえ,その周知・著名性の程度は極めて高く,周知・著名性の及ぶ範囲も相当程度広い(甲37?甲43)。
また,引用商標は,キリングループの商品又は役務の出所識別標識,すなわち商標として採択する行為それ自体がまさに独創的であるというべきものであり,それ故,引用商標は,独創性の程度が高い表示といえる。
イ 本件商標と引用商標との類似性の程度
本件商標と引用商標は,いずれも「キリン」の称呼が同一であり,「麒麟(キリン)」の観念を生じる点で共通するから,称呼又は観念において極めて相紛らわしいものであり,両商標の類似性の程度が極めて高い。
ウ 本件商標の指定商品とキリングループの業務に係る商品との間の関連性の程度,取引者及び需要者の共通性その他取引の実情
本件商標の指定商品及び指定役務は,キリングループの業務に係る商品又は役務との関連性の程度が高いものであり,取引者及び需要者の範囲も共通する場合も少なくないものであるから,本件商標の指定商品及び指定役務に係る業務を,キリングループに属する会社が行うことは容易に予想できるものといえる(甲37?甲39,甲43?甲51)。
エ 小括
以上のとおり,引用商標の周知・著名性の程度が極めて高いこと(引用商標の周知・著名性が本件商標の指定商品及び指定役務の範囲にも及ぶこと),引用商標の独創性の程度が高いこと,本件商標と引用商標との類似性の程度が高いことなどを踏まえると,本件商標は,これを商標権者がその指定商品又は指定役務に使用するときは,その商品又は役務があたかもキリングループに属する会社が提供する商品又は役務であるか,あるいはキリングループと経済的,組織的に何らかの関係がある者が提供する商品又は役務であるかの如く,商品又は役務の出所について混同を生じさせるおそれがあるものである。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当する。

4 当審の判断
(1)引用商標等の周知性について
ア 申立人提出の証拠及び同人の主張並びに職権調査(商標登録原簿,インターネット情報など)によれば,次の事実が認められる。
(ア)申立人の持株会社であるキリンホールディングス株式会社の有価証券報告書(第179期:2017年1月1日?12月31日。甲9)によれば,申立人等(日本綜合飲料事業)は,ビール,清涼飲料などの商品の製造・販売を行っており,日本綜合飲料事業連結売上収益が1兆510億円であった(ただし,その全てが「KIRIN」,「キリン」又は「麒麟」の各商標に係るものであるとの確認はできない。)。
(イ)「KIRIN」の文字からなる登録第5325099号商標,「キリン」の文字からなる登録第4498171号の1商標及び「麒麟」の文字からなる登録第4486902号の1商標に係る商標登録は,いずれも申立人を商標権者とするものであって,指定商品中に第32類「ビール,清涼飲料」を含み,かつ多数の区分に属する商品及び役務を指定商品及び指定役務として防護標章登録がなされており,また,それらに係る権利は現在も有効に存続している。
さらに,それら防護標章登録に係る登録査定日は,平成25年11月12日又は同26年10月1日である(甲17?甲19,職権調査)。
(ウ)本件商標の登録出願の日前の複数の審判決において,「KIRIN」,「キリン」及び「麒麟」の文字の周知性を認める判断がなされている(甲22?甲27,職権調査)。
(エ)申立人の関連会社は,コンピュータシステムの設計・作成又は開発などの役務及びマウスパッドなどの商品について,「KIRIN」の文字を使用していることがうかがえるが(甲37?甲41),それら役務及び商品の取引実績は確認できない。また「キリン」及び「麒麟」の文字がそれら役務及び商品に使用されていると認め得る証左は見いだせない。
イ 上記事実から次のとおり判断できる。
(ア)「KIRIN」,「キリン」及び「麒麟」の文字からなる商標(以下,これらをまとめて「使用商標」という。)は,いずれも本件商標の登録出願の日前から,登録査定日はもとより現在においても継続して,申立人等の業務に係る商品(ビール,清涼飲料等)を表示するものとして,我が国の取引者及び需要者の間に広く認識されているものと判断するのが相当である。
(イ)しかしながら,「KIRIN」の文字からなる引用商標1及び引用商標5ないし引用商標7は,その指定商品及び指定役務に使用されていることがうかがえるものの,それら商品及び役務の取引実績は確認できず,また,「キリン」の文字からなる引用商標2並びに「麒麟」の文字からなる引用商標3及び引用商標4は,それらの指定商品及び指定役務について使用されていると認め得る証左は見いだせないから,引用商標は,いずれも申立人等の業務に係る商品及び役務(引用商標の指定商品及び指定役務)を表示するものとして取引者及び需要者の間に広く認識されているものと認めることはできない。
(2)商標法第4条第1項第11号について
ア 本件商標
本件商標は,上記1のとおり,「きりんカルテ」の文字を標準文字で表してなるところ,平仮名「きりん」と片仮名「カルテ」の文字を結合してなるものと認識できるとしても,その構成文字は同書同大同間隔で,まとまりよく一体に表され,これから生じる「キリンカルテ」の称呼も,よどみなく一連に称呼し得るものであるから,看者をして,その構成文字全体をもって,特定の意味合いを想起させることのない一体不可分の造語を表したものとして認識,把握されるとみるのが相当である。
したがって,本件商標は,その構成文字に相応し「キリンカルテ」の称呼を生じるものであり,特定の観念を生じないものである。
イ 引用商標
引用商標1及び引用商標5ないし引用商標7は「KIRIN」の文字,引用商標2は「キリン」の文字並びに引用商標3及び引用商標4は「麒麟」の文字からなるものであり,いずれも各文字に相応し「キリン」の称呼を生じ,「(キリン科の動物である)キリン」,「(想像上の動物である)麒麟」の観念を生じるものである。
ウ 本件商標と引用商標との類否
本件商標と引用商標との類否を検討すると,両者は,外観においては,本件商標の構成文字「きりんカルテ」と,引用商標の構成文字「KIRIN」,「キリン」及び「麒麟」が明らかに異なり,外観上,相紛れるおそれのないものである。
次に,称呼においては,本件商標の称呼「キリンカルテ」と,引用商標の称呼「キリン」とは,後半部の「カルテ」の音の有無の差異を有するから,その差異により,称呼上,明瞭に聴別し得るものである。
また,観念においては,本件商標が特定の観念を生じないものであるのに対し,引用商標が「(キリン科の動物である)キリン」,「(想像上の動物である)麒麟」の観念を生じるものであるから,観念上,相紛れるおそれのないものである。
そうすると,両商標は,外観,称呼及び観念のいずれの点からみても相紛れるおそれのない非類似の商標であって,別異の商標というべきものである。
エ 申立人の主張について
申立人は,本件商標はその構成中「カルテ」の文字が指定商品及び指定役務中第9類「電子カルテシステム用コンピュータソフトウェア」,第42類「コンピュータシステムの設計・作成又は保守」等について,商品の品質又は役務の質を表示するものであって出所識別標識として称呼,観念が生じないなどとして,本件商標は,その構成中「きりん」の文字部分が要部であって,引用商標と類似する旨主張している。
しかしながら,申立人提出の証拠によっては「カルテ」の文字が本件商標の指定商品及び指定役務について,取引者及び需要者をして商品の品質又は役務の質を表示するものと認識させると認め得る証左は見いだせず,また,他に本件商標の構成中「きりん」の文字部分が取引者及び需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与える,又は,それ以外の部分から出所識別標識としての称呼,観念が生じないと認めるに足る事情も見いだせない。
したがって,申立人のかかる主張は採用できない。
オ 小括
以上のとおり,本件商標は引用商標と非類似の商標であるから,両商標の指定商品及び指定役務が類似するとしても,本件商標は,商標法第4条第1項第11号に該当しない。
(3)商標法第4条第1項第15号について
ア 引用商標との関係において
上記(1)のとおり,引用商標は,いずれも申立人等の業務に係る商品及び役務を表示するものとして取引者及び需要者の間に広く認識されていると認められないものであり,上記(2)のとおり本件商標と引用商標は,外観,称呼及び観念のいずれの点においても相紛れるおそれのない非類似の商標であって,別異の商標というべきものである。
そうすると,本件商標は,これに接する取引者及び需要者が引用商標を連想又は想起するものということはできない。
してみれば,本件商標は,商標権者がこれをその指定商品及び指定役務について使用しても,取引者及び需要者をして引用商標を連想又は想起させることはなく,その商品及び役務が他人(申立人等)あるいは同人と経済的又は組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように,その商品の出所について混同を生じるおそれはないものというべきである。
イ 使用商標との関係において
(ア)本件商標と使用商標との類似性の程度
使用商標の構成は,引用商標の構成と同一といえるから,上記(2)と同様に本件商標と使用商標は,外観,称呼及び観念のいずれの点からみても相紛れるおそれのない非類似の商標であって,別異の商標ということができる。
(イ)使用商標の周知著名性及び独創性の程度
申立人等はビール,清涼飲料については我が国有数の企業であって,使用商標をハウスマークなどとして使用していることから,使用商標は,上記(1)のとおり,申立人等の業務に係る商品である「ビール,清涼飲料」等を表示する標章として,我が国の取引者及び需要者の間で広く認識されているものと認められる。
しかしながら,使用商標は,本件商標の指定商品及び指定役務については,我が国の取引者及び需要者の間で広く認識されていたとはいえない。
また,使用商標は,「(キリン科の動物である)キリン」,「(想像上の動物である)麒麟」などの意味を有する親しまれた語又はそれをローマ字表記した「KIRIN」の文字であるから,独創性の程度は低い。
(ウ)本件商標の指定商品等と使用商標に係る商品等との間の性質,用途又は目的における関連性の程度など
本件商標の指定商品及び指定役務は,上記1のとおり第9類及び第42類に属する商品及び役務であり,使用商標に係る主な商品は,上記(1)のとおり「ビール,清涼飲料」であるから,両者の性質,用途又は目的における関連性の程度は極めて低く,また,取引者及び需要者が共通するとはいえない。
(エ)混同のおそれ
上記(ア)ないし(ウ)に照らし,本件商標の指定商品並びに指定役務の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準として判断すれば,使用商標が,申立人等の業務に係る商品である「ビール,清涼飲料」等を表示する標章として,我が国の取引者及び需要者の間で広く認識されていたものと認められるとしても,本件商標の指定商品及び指定役務の分野までは著名性を認めることはできないこと,本件商標と使用商標が非類似の商標であって別異の商標であること,使用商標の独創性の程度が低いこと,両商標の商品等の関連性の程度が極めて低いこと,取引者及び需要者が共通するといえないことなどを総合すると,本件商標は,商標権者がこれをその指定商品及び指定役務について使用しても,取引者及び需要者をして使用商標を連想又は想起させることはなく,その商品が他人(申立人等)あるいは同人と経済的又は組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように,その商品及び役務の出所について混同を生じるおそれはないものと判断するのが相当である。
(オ)申立人の主張について
申立人は,使用商標の周知著名性は極めて高い,使用商標は独創性の程度が高い,本件商標と使用商標は「キリン」の称呼及び「麒麟(キリン)」の観念を共通にするので類似性の程度が高い,申立人等は「電子応用機械器具及びその部品」に含まれる「マウスパッド」の販売,プログラムの開発・販売などに使用商標を使用しているなどとして,本件商標は出所の混同を生じさせるおそれがある旨主張している。
しかしながら,上記(イ)のとおり,使用商標が「ビール,清涼飲料」等を表示する標章として我が国の取引者及び需要者の間で広く知られていたものと認められるとしても,本件商標の指定商品及び指定役務の分野にまで著名性を認めることはできず,使用商標の創造性の程度は低く,本件商標と使用商標の類似性の程度は,上記(ア)のとおり両商標は非類似の商標であって別異の商標というべきものであるから低いというべきであり,さらに本件商標の指定商品等と使用商標に係る商品等との関連性の程度が極めて低いことなどをあわせて考慮すれば,本件商標は上記(エ)のとおり商品及び役務の出所について混同を生じさせるおそれはないものと判断するのが相当である。
したがって,申立人のかかる主張は採用できない。
ウ 小括
以上のとおり,本件商標は,引用商標及び使用商標のいずれの関係においても商標法第4条第1項第15号に該当しない。
(4)むすび
以上のとおり,本件商標は,商標法第4条第1項第11号及び同項第15号のいずれにも該当せず,その登録は,同条第1項の規定に違反してされたものではないから,同法第43条の3第4項の規定により,維持すべきである。
よって,結論のとおり決定する。
異議決定日 2019-05-31 
出願番号 商願2018-95245(T2018-95245) 
審決分類 T 1 651・ 262- Y (W0942)
T 1 651・ 261- Y (W0942)
T 1 651・ 271- Y (W0942)
T 1 651・ 263- Y (W0942)
最終処分 維持  
前審関与審査官 谷村 浩幸 
特許庁審判長 榎本 政実
特許庁審判官 薩摩 純一
浜岸 愛
登録日 2018-10-12 
登録番号 商標登録第6088250号(T6088250) 
権利者 きりんカルテシステム株式会社
商標の称呼 キリンカルテ 
代理人 飯島 紳行 
代理人 藤森 裕司 

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