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審決分類 審判 全部無効 商4条1項10号一般周知商標 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) W12
審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) W12
審判 全部無効 商4条1項7号 公序、良俗 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) W12
審判 全部無効 商4条1項19号 不正目的の出願 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) W12
管理番号 1352466 
審判番号 無効2017-890019 
総通号数 235 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2019-07-26 
種別 無効の審決 
審判請求日 2017-03-15 
確定日 2019-06-17 
事件の表示 上記当事者間の登録第5779610号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第5779610号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5779610号商標(以下「本件商標」という。)は、「KCP」の欧文字を標準文字により表してなり、平成27年2月18日登録出願、第12類「コンクリートポンプ車,コンクリートミキサー車,その他の自動車並びにその部品及び附属品,陸上の乗物用の動力機械(その部品を除く。),陸上の乗物用の機械要素,タイヤ又はチューブの修繕用ゴムはり付け片」を指定商品として、同年6月1日に登録査定、同年7月17日に設定登録されたものである。

第2 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第155号証を提出した。
1 商標法第4条第1項第10号について
(1)請求人について
請求人は、2002年に創立された韓国法人で、「コンクリートポンプ、コンクリートポンプ車コンクリートミキサー車並びにその部品及び附属品」等(以下「請求人商品」という。)の製造・販売を主業務としている(甲5?甲8)。請求人は、韓国国内に2つの工場を持ち、また、カナダ、中国、日本、ウズベキスタンにも拠点を持つグローバル企業である(甲9)。
(2)請求人の使用に係る商標
請求人は、請求人商品につき、創立の2002年から現在に至るまで、主に、別掲のとおりの4件の商標「KCP」(以下、まとめて「請求人商標」という。)を一貫して使用している(甲5?甲13、ほか。)。なお、これら資料の中には「KCP」をデザイン化したものも含まれているが、これらは容易に「KCP」と読み得る程度のデザインといえる。また「KCP」は、請求人商号の略称でもあり、請求人が創立当時から大切に使用してきたハウスマークでもある。
(3)請求人商標の周知性について
ア 韓国国内の市場占有率
請求人の韓国国内の市場占有率は、直近では2012年から2016年にわたってトップである(甲10、甲11)。
イ 韓国国内及び韓国国外での販売台数・売上高
請求人は、創立の2002年から、本拠地である韓国のみならず韓国国外へも請求人商品を販売している。直近の2011年から2016年にかけては、韓国国内、及び、ロシア、フィンランド等47か国へ、合計1,562台のコンクリートポンプトラックを販売し、また、2011年から、本件商標が出願された2015年にかけて、請求人が順調にその売上を伸ばし、急速に成長してきた企業である(甲12、甲13)。
また、請求人が2013年から2015年にかけて、韓国国外へ輸出した売上高については、社団法人韓国貿易協会(Korea Internatinoal Trade Association)の発行した証明書によれば、請求人の韓国国外への輸出売上高総額(1USドル=114円で計算)は、2013年に約17億52万円、2014年に約24億5959万円、2015年(1?7月)に約20億2037万円である(甲14)。
ウ 世界各国での展示会
請求人は、本件商標の登録出願日よりも前から今日に至るまで、世界各国の展示会に請求人商品を出展している(甲16ないし甲37)。
エ 広告・報道等
(ア)請求人は、2008年5月、フィンランドにおいて建設・運輸業界最大の発行部数を誇る雑誌の「Europorssi」(甲39)に請求人商品の広告を掲載している(甲38)。
(イ)2011年7月21日に、中国のバス等運送業等に関連する情報を発信するウェブサイト「CNbuses.com」において、請求人と中大グループとが協力関係を確定した旨のニュースが掲載された(甲40)。この記事内において、「KCP社は韓国での販売量が第1位」、「先端技術を持ち、質が良い」、「将来性がある」等の記載がある。
(ウ)2014年11月25日に、中国の建設機械に関する総合情報発信ウェブサイトにおいて、請求人が、上海で開催された展示会「bauma China 2014」に出展したニュースが掲載された(甲25)。この記事内において、「海外ではKCPはすでに知名度と影響力があり」、「現在韓国KCPは海外での販売状況が非常に良い」等の記載がある。
(エ)2016年6月23日に、請求人が韓国政府より「World Class 300 2016」に選ばれた旨の投稿が請求人facebookページヘ掲載された(甲41)。「WORLD CLASS 300」とは、「Korea Institute for Advancement of Technology」が行う、成長力のある中小企業に対しグローバル市場を拡げるために必要とされる一連の支援政策を提供する取組であり(甲42)、請求人は成長力のあるグローバル企業であると認められたことがわかる。
(オ)2016年12月29日に、フランスの雑誌「Beton[s]」(12月号)に請求人商品が掲載された旨の投稿が請求人facebookページへ掲載された(甲44)。
(カ)2017年2月4日に、韓国のニュース専門テレビ局「YTN」にて、請求人を取材したドキュメント番組(30分)が放映された(甲45)。
オ 世界各国への輸出
上記イで述べたとおり、請求人は、現時点では世界47か国へ、また、本件商標の登録出願日以前の2014年時点においても、30か国へ請求人商品の輸出実績がある(甲12、甲13)。
カ 米国での本件商標の登録出願時、及び現在における請求人商品の取引
米国では現在、米国の建設機械販売業者である「Irving Equipment,LLC.」(以下「Irving社」)のウェブサイトにて請求人商品の販売が行われているが(甲47)、本件商標の登録出願日以前の2014年4月19日時点においても、既にこのウェブサイト上で請求人商品の販売が行われていた(甲48)。
また、掲載当時から本件商標の登録出願日まで、請求人の「KCP」ロゴ及び「KCP Concrete Pumps」の文字が、当該ウェブページにおいて閲覧者の目に留まりやすい位置と考えられる一番左に掲載されている(甲48、甲49)。そして当該請求人ロゴの右隣には、イタリアの建設機械メーカーである「CIFA.S.p.A.」(以下「CIFA社」)のロゴが掲載されているが(甲48、甲49)、このCIFA社は建設分野において85年もの歴史を持つ老舗建設機械メーカーである(甲50)。
このように、Irving社のウェブサイトにおいて、CIFA社のような長年にわたって信頼が蓄積された老舗メーカーよりも左側、すなわちウェブサイトにおいて閲覧者の目に留まりやすいと考えられる位置に請求人のロゴが掲載されていた事実から、少なくとも当該ウェブサイトを訪れた北米における建設業界の需要者・取引者は、請求人のロゴに着目したものと推認できる。
キ 日本のコンクリートポンプ業界での本件商標の登録出願時における請求人商標の認識
(ア)日本企業6社の陳述書
被請求人は、代表取締役を藤田道男氏、及び方鍾泰(パンジョンテ、以下「被請求人代表者」という。)氏として、2014年(平成26年)7月15日に設立された日本法人(甲53)で、日本においてコンクリートポンプ車等を販売している(甲54?甲63)。
ここで、日本でコンクリートポンプを取り扱う企業である6社にヒアリングを行ったところ、各社は、標章「KCP」は、請求人商品に使用される商標として認識していた旨、また、被請求人が、商標「KCP」が付されたポンプカー又はポンプカーの部品を製造・販売した場合には、これらを請求人商品であると誤認・混同する旨も陳述している(甲64)。
実際に、2014年10月3日付けで被請求人からコンクリートポンプ取扱企業各社へFAXされたダイレクトメール(甲65)を見ると、請求人が何らかの形で関係する商品の宣伝かと誤認・混同されるような記載がなされている。
すなわち、甲第65号証では、左上部の四角枠内に「販売元:GSF」の表記があるため、少なくとも商品「プライマー(誘導剤)」についての販売元は、「GSF」であることが分かる。しかしながら、同書面内には別途「販売元(注文及びお問い合わせ)GSF KCP LTD.」及び、「ジーエスエフ・ケーシーピー(株)」の表記もあり、これらの表記は、当該書面FAX送信時には既に知られていたと考えられる請求人のハウスマーク「KCP」または「ケーシーピー」を含んでいる。また、ただ含むのみならず、前者は、「GSF」「KCP」「LTD.」の各表記の間にそれぞれ1文字分のスペースがあり、また後者は、「ジーエスエフ」及び「ケーシーピー(株)」の表記の間に「・」があることから、スペースや「・」によって各表記が分離観察され、「KCP」または「ケーシーピー」の各表記のみが独立して認識される場合もある。
これより、「GSF KCP LTD.」及び「ジーエスエフ・ケーシーピー(株)」の各表記を看取した取引者・需要者は、商品「プライマー(誘導剤)」についての販売元「GSF」と、コンクリートポンプ業界において当時既に知られて請求人とが合同で会社を起こしたかのように認識することもあり得る。
したがって、上記の実際の被請求人の使用態様により、被請求人商品は、請求人が何らかの形で関係する商品であるかのような誤認・混同を生じていた蓋然性が高い。
以上より、本件商標の登録出願時において、少なくとも関東圏におけるコンクリートポンプ業界の需要者・取引者の間では、請求人商標は、請求人商品に使用される商標として認識されており、またそれのみならず、被請求人がこれを請求人商品に使用した場合には、請求人商品であると誤認・混同されるほどに十分な知名度を獲得していた。
(イ)全圧連加盟企業の請求人本社への訪問
2012年4月23日に、「全国コンクリート圧送事業団体連合会(Japan Concrete Pumping Association、以下「全圧連」という。甲67、甲68)」に加盟している日本のコンクリートポンプ企業数社が、請求人商品の購入を見据えた視察のため、請求人の本社(韓国ハマン郡所在)を訪問し、写真を撮った事実がある(甲66)。
したがって、本件商標の登録出願時以前に、日本のコンクリートポンプ企業数社が請求人の本社を訪問したことが明らかで、請求人商標は、日本のコンクリートポンプ車業界において、ある程度認識されていたことが推認できる。
ク 日本での本件商標の登録出願時、及び現在における請求人商品の取引
日本における2016年の請求人商品の売上は、801,600,000ウォン(約8016万円)にも上り(甲13)、現在も請求人商品は日本国内において取引され、日本における取引者・需要者間において請求人商標は広く認識されている。
また、現在日本では、中古建設機械等の販売業者であるマスカス・ジャパン(以下「マスカス社」という。甲69)のウェブサイト内の「中古機械カテゴリー」→「建設機械」→「コンクリート設備」→「コンクリートポンプ」のカテゴリー内において、請求人商品の中古品取引も行われている(甲70)。
そして、既に、本件商標の登録出願日以前の2013年6月9日時点において、マスカス社のウェブサイト内で、請求人商品の中古品取引が行われていたことが認められる(甲71)。なお、当該ウェブサイトでは当時、建設機械だけでも106,293件掲載されていることが認められ、多数の中古建設機械が取引されていたことがわかる(甲72)。
ここで、中古コンクリートポンプ車市場については、経済産業省が主催する「中小企業IT経営力大賞」に2011年及び2012年に連続して認定された、株式会社東協の受賞内容掲載ウェブページ(甲73)によれば、日本においては、少なくとも2008年頃から、コンクリート圧送分野の市場縮小により、中古コンクリートポンプ車の需要が高まっていた背景が明らかとなっている。また、株式会社東協が2008年に中古車販売事業に取り組んでから僅か2年で、中古車の販売台数は+200%、売上高は+500%も増加し、同社ウェブサイトへのアクセス数も倍以上に増加したことが分かる。したがって、日本では、2008年から2010年頃にかけて、中古のコンクリートポンプ車への潜在的な需要があったことがわかる。
なお、その後、現在においても、株式会社ホットガレージの運営する中古車販売ウェブサイト「トラックジャパン」及び、Nentrys株式会社の運営する中古トラック販売ウェブサイト「トラック王国」によれば、依然としてコンクリートポンプ車業界では、中古品の需要も高いことがわかる(甲74、甲75)。
したがって、本件商標の登録出願日時点において、日本のコンクリートポンプ車の業界では中古品取引も需要が高く、この分野の需要者・取引者は中古品も視野に入れて取引を行っていたものと推認でき、さらに、上記したとおり、2013年6月9日時点において、マスカス社ウェブサイトにおいて、実際に請求人商品の中古品が取り扱われていた事実をもってすれば、日本のコンクリートポンプ車の需要者・取引者の間で請求人商標は、ある程度知られていたものと推認できる。
ケ 近時のコンクリートポンプを扱う分野における国際交流
近時、コンクリートポンプを扱う分野においても、国際交流が盛んに行われている。
例えば、一般社団法人日本建設機械施工協会は、建設機械・施工に関する試験・調査・研究・技術開発、その他普及・支援活動等を行う団体であるが、その事業概要の中には、「国際交流活動」が明記されている(甲76)。そして、同協会の「コンクリート機械技術委員会」は、国土交通省、施工業者、メーカー等が所属し、「コンクリート機械」に関する様々な調査研究や標準化を行っているが(甲77)、この活動実績(甲78)をみると、国際交流を盛んに行っていることが分かる。
したがって、当該協会では韓国や米国を含む世界各国での交流を通じて、各国のコンクリート業界の情報が共有されていることが推認でき、また、当該協会には日本国内の施工業者、メーカーも所属しているため、これら日本国内の請求人商品を取り扱う分野の需要者・取引者の間で、韓国国内及び国際的にも広く知られている請求人商品の情報が共有されたことも十分推認し得る。
なお、独立行政法人国際観光振興機構の統計による日本人の米国及び韓国訪問者数(甲79)とその他の国々と比較すると、米国及び韓国は、日本人の海外訪問先として、常にトップ3に位置づけられる国であり、日本における一般的な関心度も高い国といえる。
したがって、請求人商標が、少なくとも米国や韓国において知られていたという事実は、コンクリート業界においても、関心度の高い事項として共有されたことが十分推認し得る。
コ 請求人商標の周知性のまとめ
上記のとおり、請求人は、その創立当時から請求人商標を一貫して請求人商品に使用し、また、ハウスマークとしても使用し続け、韓国国内では、本件商標の登録出願時及び現在においても市場占有率トップとなっている。
また、韓国国外へは、本件商標の登録出願時には30か国へ、また、現在は47か国への請求人商品輸出の実績があり、その売上は、2011年の約28億2817万円から右肩上がりで、現在では、100億円を超えるものとなっている。さらに請求人は、本件商標の登録出願日以前から現在に至るまで、積極的に世界各国への展示会への出展や宣伝活動を行い、中国ではウェブサイトでのニュースに取り上げられ、韓国では「WORLD CLASS 300」に選ばれ、YTNにてドキュメント番組が放映された。そして、本件商標の登録出願日時点及び現時点においても、米国で請求人商品が取引されている事実が明らかである。
したがって、請求人商標は、本件商標の登録出願時及び現在において、少なくとも韓国国内のコンクリートポンプ車を取り扱う分野の需要者・取引者の間では広く知られており、また、上記で述べたとおりの請求人商品を輸出したり宣伝を行ったりしている国々、及び米国における同分野の需要者・取引者の間でも知られていたといえる。
また、日本でも、2016年現在の請求人商品の売上は、約8016万円にも上り、取引者・需要者間において広く認識されているものである。そして、本件商標の登録出願日時点において、実際にコンクリートポンプを扱う企業の、少なくとも5社が請求人商標を請求人の商品を示すものとして認識していた旨陳述し、全圧連加盟企業が実際に請求人本社を訪問した事実もある。
さらに、本件商標の登録出願日時点において、マスカス社を通じて請求人商品の中古品が取引されていた事実が明らかである。加えて、近時、コンクリートポンプを扱う業界においても国際交流が盛んに行われており、商品のみならず人的な国際交流も盛んに行われていることを併せ考えれば、日本において請求人商標は、本件商標の登録出願時においても、既に取引者・需要者間である程度認識されていたものと推認できる。
(4)本件商標と請求人商標との類否
本件商標は、欧文字「KCP」を標準文字で表したもので、第12類に属する上記第1のとおりの商品を指定商品とするものである(甲1、甲2)。
一方で、請求人商標は、欧文字「KCP」を表したもので、請求人商品に使用をするものである。
本件商標と請求人商標とを比べると、両者は同一の文字綴りの欧文字「KCP」を構成要素とする点で外観上極めて類似し、また、同一の称呼「ケーシーピー」を生じるものである。さらに標章「KCP」は、上記(3)で述べたとおり、コンクリートポンプ業界においては請求人商品を表示するものとして国際的に広く知られ、また日本においても知られているため、請求人ブランドとしての「KCP」の観念をも生じるものと考えられる。したがって、両者は外観、称呼、観念上、全体として極めて類似する。
(5)請求人商品と本件指定商品
請求人商品は、「コンクリートポンプ、コンクリートポンプ車、並びにその部品及び附属品」であり、これら商品は、本件商標の登録に係る指定商品に含まれている。
(6)小括
以上のとおり、本件商標は、その登録出願時及び現在において、請求人の業務に係る商品を表示するものとしてその需要者・取引者の間に広く認識されている請求人商標と類似する商標であって、その商品又はこれに類似する商品について使用するものであるため、商標法第4条第1項第10号に該当する。
2 商標法第4条第1項第15号について
上記のとおり、請求人は、本件商標の登録出願日以前から現在に至るまで、請求人商標を使用して、請求人商品を製造、販売する業務を行っていること、本件商標は、本件商標の登録出願時及び現在において、請求人商品を表示するものとして、その需要者・取引者の間で国際的に広く認識され、また、日本においても知られていたと認められること、本件商標は、請求人商標と同一の文字綴りで表され、同一の称呼を生じ、観念も類似するため請求人商標と極めて類似する商標であり、その指定商品に請求人商品「コンクリートポンプ車」等を含むこと、さらに、実際に日本でコンクリートポンプを扱う企業が、被請求人が商標「KCP」をポンプカー等に使用した場合、請求人商品と誤認・混同すると陳述し、実際に被請求人は請求人商品と混同を惹き起こし得る態様で使用していたこと等を総合すると、本件商標は、請求人の業務に係る商品と混同を生ずるおそれのある商標に該当すると認められる。
したがって、本件商標は商標法第4条第1項第15号に該当する。
3 商標法第4条第1項第19号について
(1)請求人商標及びその周知性
上記のとおり、請求人は、本件商標の登録出願日以前から現在に至るまで、請求人商標を使用して、請求人商品を製造、販売する業務を行い、本件商標の登録出願時及び現在において、請求人の業務に係る商品を表示するものとして、その需要者・取引者の間で広く認識されているものと認められる。
(2)本件商標と請求人商標との類否等
上記のとおり、本件商標と請求人商標とは、外観、称呼、観念上、全体として極めて類似する。
ここで、そもそも、本件商標の文字綴りは、請求人が創立当時より一貫して使用し、また、請求人のハウスマークでもある「KCP」とまったく同一である。
さらに、本件商標に係る指定商品をみると、請求人の主要商品である「コンクリートポンプ車」が、その包括表示である「自動車並びにその部品及び附属品」とは別に積極的に指定されている(甲1及び甲2)。これより、被請求人が「コンクリートポンプ車」を主要商品として事業を行う意図が窺え、また、実際に被請求人は、「コンクリートポンプ車」の販売に係る業務を行っている(甲54?甲63)。
一般に欧文字3文字を商標として採択することはよく行われることではあるものの、本件商標に関しては、この「商標の完全一致」及び「商品の完全一致」は偶然の一致とはいい難く、この事実だけをもってしても、被請求人の不正の目的が推認される。以下、被請求人の不正の目的につき詳述する。
(3)被請求人の不正の目的
ア 被請求人の代表者と請求人との関係について
(ア)被請求人の代表者
被請求人の履歴事項全部証明書によれば、代表取締役として、藤田道男、及び方鍾泰(パン ジョンテ)が記載されている(甲53)。また、被請求人のウェブサイトには、「代表者:John,PANG(パンジョンテ)」とあり(甲54)、実質的には、主として方鍾泰(パン ジョンテ)氏が被請求人の代表者として業務を行っている。
(イ)被請求人代表者の連絡先
被請求人のウェブサイト及びカタログ「製品案内」には、連絡先電話番号、連絡先メールアドレスがそれぞれ掲載されており、被請求人はこれらを業務上使用していることが認められる(甲54、甲63)。
ここで、2016年11月17日付けで韓国の建設機械に関するウェブサイトに被請求人代表者が書き込んだ投稿(甲80)には、被請求人の連絡先メールアドレスとして「johntepang@hotmail.com」が記載されている。また、ドメイン情報を掲載するウェブサイト「DomainBigData」(甲81)によれば、この「johntepang@hotmail.com」は、被請求人代表者により取得され、このアドレスで「gsf-kcp.com」及び「pride-p.com」の2つのドメインが取得されている。前者は現在使われていないようだが(甲82)、ドメインに使われている文字列は被請求人の商号と一致する。そして後者「pride-p.com」は、現在の被請求人のウェブサイトのURLとして使われている(甲55)。
したがって、被請求人代表者は、「johntepang@hotmail.com」のアドレスも被請求人の業務において使用しているものと認められる。
(ウ)被請求人代表者と「GSF Inc.」
被請求人代表者は、被請求人商号の構成中「KCP」部分のない「GSF Inc.」(以下「GSF社」という。)の商号を用いて、本件商標の登録出願日以前に、請求人に対し、請求人のコンクリートポンプ車及びその関連部品等につき問合せを行っていた(甲83?甲85)。これらメールに記載の連絡先メールアドレスは、「johntepane@hotmail.com」であり、被請求人代表者のメールアドレスと一致する。したがって、被請求人代表者は、本件商標の登録出願日以前に、少なくとも請求人商標を知っていたことが明らかである。なお、これらメールには、被請求人代表者の連絡先電話番号として、「02-803-2132」が記載されている。
(エ)請求人とウォンジン産業
請求人は、ウォンジン産業へ、2014年5月12日:「KCP19Z」、2015年1月6日:「KCP31ZX5」及び「KCP19ZX」の請求人商品を販売した(甲87?甲89)。
また、甲第87号証の顧客事項欄には、ウォンジン産業の電話番号として「02-803-2132」が記載されており、これは、甲第83号証ないし甲第85号証に記載のGSF社としての被請求人代表者の電話番号と一致する。さらに、メールアドレスは、「johntepang@hotmail.com」が記載されており、これも、被請求人代表者のメールアドレスと一致する。したがって、少なくとも被請求人代表者は、請求人からウォンジン産業への請求人商品「KCP19Z」の販売に関与していたものと認められる。
ウォンジン産業CEOのジョン・ウォンソック氏の名刺(甲86)には、「WonJin INDUSTRY」と「GSF Inc.」が併記され、ウォンジン産業とGSF社は実質的に同一の企業であったことが認められる。
したがって、上記の請求人からウォンジン産業への請求人商品「KCP31ZX5」及び「KCP19ZX」の販売についても、被請求人代表者が関与あるいは少なくとも知り得たことが推認できる。
(オ)請求人の販売店社長としての被請求人代表者の活動
2013年4月23日付けで、大阪府河内長野市所在の中古コンクリートポンプ車販売及び生コン圧送専門会社である有限会社TPネット(以下「TPネット社」という。甲90)のブログにおいて、「TPネットのホームページを見て韓国からKCP(コンクリートポンプ車)販売店のパン社長が来社してくれました!」との記載がある(甲91)。そして、当該ブログには、コンクリートポンプのカタログを写した写真2枚が掲載されているが、これは、請求人が使用しているカタログ(甲7)の30頁目及び2頁目と同一である(甲92、甲93)。
したがって、被請求人代表者は2013年4月23日頃、KCP販売店社長としてTPネット社を訪問し、請求人カタログを使用して、「コンクリートポンプ車」等の販売に係る業務を行っていたことが認められる。
(カ)2015年4月3日付け、被請求人から請求人へのメール
被請求人代表者は、2015年4月3日付けで、請求人の「金・ウォンシック」を宛先とし、ウォンジン産業の「ジョン・ヨングァン」(wjin14@naver.com)にCCを入れ、題名を「ご連絡」としたメールを送っている(甲94)。このメール内には「私は、貴社のポンプトラックの販売を中断しております。」との一文があり、少なくとも2015年4月3日以前においては、請求人商品の販売を行っていたことが認められる。
(キ)2015年4月27日付け、被請求人から株式会社エスケイコンクリートポンプへのFAX書面
被請求人代表者は、2015年4月27日付けで、株式会社エスケイコンクリートポンプ(函館市所在)宛に「ご連絡」と題した全4頁に及ぶ書面を、同月28日付でFAX送信している(甲95)。この書面の内容は、概ね請求人と株式会社エスケイコンクリートポンプとの間でのコンクリートポンプ車の取引に関するものであり、この2頁目下部に、「とにかく、改めてこれからも私がKCPのポンプを収めるようになったことをお知らせします。」との一文がある。
したがって、被請求人代表者は、少なくとも2015年4月27日以前に、請求人商品を取り扱っていたこと、及び、これ以降も取り扱う意思のあったことが認められる。
(ク)請求人商品の写真が掲載された被請求人のカタログ
被請求人のカタログ「製品案内」(甲63)の表紙左側にはコンクリートポンプ車及びその部品等の写真が掲載されているが、このうち上から2枚目の写真を拡大してみると、これに写っているコンクリートポンプ車の車体左側面には、請求人の「KCP」ロゴ及び「KCP19」の各表示が付されている(甲96)。この写真の商品は、請求人商品であり、請求人のウェブサイトでは、ブームポンプ「JCP19Z80」として掲載されている(甲97)。
したがって、被請求人は、少なくとも請求人商品の写真が掲載されたカタログを用いて業務を行っていることが明らかで、請求人商品を認識していることが認められる。
(ケ)まとめ(被請求人代表者と請求人との関係)
a 以上より、本件商標の登録出願日以前に、被請求人代表者は、メールアドレス「johntepang@hotmail.com」を使用し、GSF社担当者として、請求人宛にコンクリートポンプ車及びその関連部品につき問い合わせていたこと、請求人はGSF社と実質上同法人であるウォンジン産業へ請求人商品を販売し、この売買契約に被請求人代表者が関与していたものと認められること、被請求人代表者は請求人カタログを用いてTPネット社に営業活動を行っていたこと、被請求人代表者は請求人に対し請求人商品の販売を中断している旨のメールを送ったこと、被請求人代表者は株式会社エスケイコンクリートポンプに対し請求人商品の取扱を示唆する書面を送ったこと、被請求人代表者は請求人商品の写真が掲載されたカタログを使用していること等が明らかであり、すなわち、被請求人代表者は、本件商標の登録出願日時点において、本件商標が、請求人商品を表すもの、ということは当然知っていたはずであり、請求人商標が需要者の間で広く知られていることについても知り得たはずである。
b 被請求人代表者は、2015年4月27日付け書面にて、請求人商品をこれからも被請求人代表者が収める旨言及している(甲95)。しかしながら、現在請求人と被請求人代表者との間で、請求人商品を日本において被請求人代表者を通じて販売する旨の内容の契約はない。
したがって、被請求人代表者は、請求人商品を取り扱いたいという意思はあるものの、実際に正規販売の契約はないため、請求人の日本参入を阻止ないし困難にする目的、又は請求人との日本国内代理店契約締結を強制する目的等のために本件商標を先取り的に出願し登録を受けたことが推認される。
c 被請求人商品の写真の不自然なデジタル処理
上記のとおり、被請求人は請求人商品の写真が掲載されたカタログ(甲63)を使用して業務を行っているものと認められる。
ここで、現在の被請求人ウェブサイトを見てみると、請求人商品であるブームポンプ「JCP19Z80」(甲97)と酷似した商品が「19Mポンプ車M ポンプ車」又は「製品名 19Z-110」として掲載されている(甲98)。この画像を拡大してよく見ると、請求人の「KCP」ロゴ及び「KCP 19」の各表示が付されているはずの車体左側面には、車体の青色と酷似した色で丸く塗り重ねたようなデジタル処理をした形跡が認められる(甲99)。また、被請求人カタログ(甲63)の表紙の上から2枚目の写真の右下部には、車体の青色と酷似した色の楕円形図形がなぜか表示されている(甲96)。これは、被請求人がこの青色の楕円図形を用いて、車体左側面に付されている請求人の「KCP」ロゴ等を隠すデジタル処理をしたことが窺えるものである。
同様に、被請求人のウェブサイトに掲載されている写真にも、不自然にデジタル処理がなされた形跡がみられる(甲55及び甲100、甲57及び甲101、甲58及び甲102)。
このうち、「32RZXポンプ車」は、請求人の「KCP」ロゴ及び「KCP 31」の各表示が付された請求人商品と酷似しており、不自然にデジタル処理をされたような箇所と、各表示が付されている箇所は一致する(甲102)。
したがって、被請求人は、被請求人ウェブサイトにおいて、請求人商品の車体に付された請求人の「KCP」ロゴ等請求人商品であると識別するための表示につき、これらをデジタル処理により隠した写真を使用していることが明らかであり、少なくとも被請求人には、請求人商品であることを知りながら、それを公にできずに業務を行う何らかの事情があることが窺える。そもそも、被請求人は本件商標につき商標登録を受けながら、それをあえて隠した写真を使用していること自体、不自然としか言いようがない。
d 被請求人の使用商号「GSF Inc.」から「GSF KCP LTD.」に変更
被請求人代表者は、上記のとおり、少なくとも2013年11月11日までは「GSF Inc.」の名称で業務を行っていたことが明らかである(甲83?甲85)。そしてその後、上記のとおり、2014年10月3日付けで被請求人からコンクリートポンプ取扱企業各社へFAXされたダイレクトメール(甲65)では、「GSF KCP LTD.」「ジーエスエフ・ケーシーピー(株)」の表記を使用しており、請求人と取引を行うようになってから、「GSF」に「KCP」を結合させた名称を用いるようになったことが認められ、これには、請求人商標の顧客吸引力に便乗する意図が窺える。
e 被請求人代表者の取引書類における、請求人商標の顧客吸引力に便乗する意図が窺える使用
被請求人は、「GSFKCP LTD.」の名称で、被請求人電話番号「03-5577-4652」及び被請求人代表者のメールアドレス「johnpang@hotmail.co.jp」を記載した上で、「コンクリートポンプ車のラジコン」に関するキャンペーンの取引書類を配布していた(甲103)。この取引書類が実際に配布された日付は明らかではないものの、締切日が「2015年5月29日まで」と記載されているため、少なくともこの日付前に配布されたものと推認される。
この取引書類(甲103)には、「弊社では『KCP』の商標権を所有しております。」と記載されており、被請求人があたかも請求人と関連があるかのように誤認され得る。実際に、上記のとおり、日本の建設機械販売業者の6社が、被請求人が商標「KCP」が付されたポンプカー又はポンプカーの部品を製造・販売した場合には、これらを請求人商品であると誤認・混同する旨を陳述している(甲64)。このような誤認・混同を惹き起こすような記載は、請求人商標の顧客吸引力に便乗する意図が窺えるものである。
なお、被請求人が配布した取引書類(甲103)が配布されたと推認される2015年5月29日より前の時点においては、本件商標の登録出願は未だ審査中であった。それにもかかわらず、被請求人は、あたかも商標「KCP」につき商標権が発生しているかのように誤解され得る記載をしていたこととなる。
f 被請求人代表者の「ニュース・リリース」における請求人商標の顧客吸引力に便乗する意図が窺える使用
被請求人は、「GSFKcp Ltd.」の名称で、被請求人電話番号「03-5577-4652」及び被請求人代表者のメールアドレス「johnpang@hotmail.co.jp」を記載した上で、「ニュース・リリース」と題し、自社のコンクリートポンプ車「Pride」ブランドを紹介する宣伝資料を、日本のコンクリートポンプ車を取り扱う企業宛に配布していた(甲104)。この書面では、「KCP」ブランドを「中低価格帯ブランド」として記載し、それよりも被請求人商品「Pride」が高い品質であることを示唆している。これは、明らかに請求人商標と被請求人商品とを比較する宣伝資料と認められ、請求人商標の顧客吸引力を希釈化若しくはこれに便乗する意図が窺えるものである。
なお、この書面に掲載されている写真のコンクリートポンプ車は、請求人商品「19Z80」であると認められるが、上記と同様に、この車体左側面に付されているはずの、請求人商品であることを表す表示が、不自然にデジタル処理された形跡が認められる(甲105)。
g まとめ(被請求人の不正の目的)
上記のとおり、被請求人代表者は、本件商標の登録出願日時点において、本件商標が請求人商品を表すもの、及び、請求人商標が需要者間で広く知られていることは当然知っていたはずであること、被請求人は、日本で請求人商品を取り扱いたい意思はあるが明確な契約はないこと、被請求人は、請求人商品に付された請求人ロゴ商標「KCP」等を隠した写真を使用していること、被請求人は、請求人と取引を行うようになってから「GSF」に「KCP」を結合させた名称を用いるようになったこと、被請求人があたかも請求人と関連があるかのように誤認され得る記載をした取引書類を配布し、需要者・取引者間において、実際に誤認されていたこと、被請求人が請求人商標の顧客吸引力に便乗する意図が窺える「ニュース・リリース」なる書面を配布していたこと等の事実・事情を総合すれば、被請求人は、未だ本件商標が日本において登録出願されていないことを奇貨として、請求人の日本参入を阻止ないし困難にする目的、又は請求人との日本国内代理店契約締結を強制する目的、又は本件商標の顧客吸引力を希釈化若しくはこれに便乗し不当な利益を得る目的等の不正の目的があったことが推認される。
(4)小括
以上のとおり、被請求人は、本件商標の登録出願時に本件商標が需要者間において広く認識されていることを知りながら、不正の目的のために本件商標を登録出願したものと推認されるため、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当するものである。
4 商標法第4条第1項第7号について
上記のとおり、本件商標権の取得には、商標法第4条第1項第19号に規定する「不正の目的」が推認されるのみならず、被請求人は、請求人と一定の取引関係にあった者であり、その関係を通じて知り得た請求人の使用する商標を剽窃したと言わざるを得ない。
してみれば、本件商標は、その登録出願の経緯に著しく社会的妥当性を欠くものがあり、その商標登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するもので、公の秩序または善良の風俗を害するおそれのある商標というべきであるから、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当するものである。
5 被請求人に対する弁駁の要旨
(1)請求人が架空の法人であり当事者能力が無い旨の主張について
請求人は、2002年5月15日に設立され、今日まで現存する韓国企業である(甲106)。甲第106号証によれば、記載されている住所は、本件審判請求に係る住所と一致している。なお、請求人は韓国法に基づく法人で正式名称は甲第106号証に記載のハングル文字であり、その英語表記は、「KCP HEAVY IDUSUTRIES CO., LTD.」である(甲7、甲8、甲10?甲14、甲16、甲18、甲19、甲21、甲22?甲24、甲26、甲27、甲33、甲64)。また、日本語表記は「株式会社ケーシーピー重工業」である。
被請求人が主張する乙第1号証に記載の法人は、請求人が、大韓民国京畿道華城市において楊甘準産業団地開発のために、一時的に2013年7月3日に設立した法人で、請求人とは別法人である(甲107)。当該産業団地開発が終了したため、同法人は解散し、2017年2月28日に清算終結されたものである。
そして、請求人の正式名称であるハングル文字が(甲106)、英語表記「KCP HEAVY IDUSUTRIES CO., LTD.」と訳されることは、「コリア・インターナショナル・トレード・アソシエーション」会員書(甲14)、「KOTARA(大韓貿易投資振興公社)」のウェブページ(甲138)、請求人企業情報掲載ウェブページ(甲139)、「韓国地方国税庁」が発行した事業者登録証明(甲140)、「SGS Testing Korea Co., Ltd.」が発行したCEマークに関する適合性証明書(甲141)における請求人の表記からも明かである。
(2)請求人商標の著名性について
被請求人は、「韓国での売上は、第1位は『エバダイム』、第2位は『ジョンジン』、第3位は請求人、第4位は『ディワイ』になりそうだ」と主張している。そして乙第4号証にて、「エバダイム」「ディワイ」については、韓国金融監督院の報告書を引用し、さらに、「請求人は精算終結された企業だから信頼できる報告書はない」旨主張している。
これにつき、まず、請求人は、上記(1)で述べたとおり、確かに現存する韓国企業であり、韓国金融監督院の電子公示システム「DART」にて、売上等の情報が公開されている(甲112)。
そして、甲第112号証によれば、請求人の2015年の売上高は、116,982,308,109ウォンで、甲第13号証に記載の売上高合計の数値と一致する。したがって、甲第13号証は信頼できる書面である。なお、甲第13号証の2016年の売上高合計の数値と、甲第112号証に記載の数値が一致していないのは、甲第13号証は、2016年10月までの売上しか反映されていないためである。
順位については、甲第10号証ないし甲第13号証の資料は、請求人の営業部が独自の調査により得たデータを基に作成したもので、その限りにおいて請求人の市場占有率が1位であったことは間違いがない。
しかしながら、この甲第112号証によれば、請求人の2016年の売上は123,760,549,529ウォンに上り、韓国のコンクリートポンプ市場において十分競争力のある売り上げをあげていることは、事実である。
なお、被請求人は、被請求人のマーケティング活動により本件商標は被請求人を表すものとして広く知られている旨主張するが、被請求人の販売実績等、主張を裏付ける具体的な証拠資料は何も提出されていない。
(3)被請求人または被請求人代表者の行動の経緯、及び不正の目的の確認と整理について
被請求人が本件商標に係る商標権を取得した経緯の概要を、以下のように整理する。また、当該経緯を整理した時系列図を提出する(甲113)。
ア 全圧連加盟企業の請求人本社への訪問
2012年4月23日に、全圧連に加盟している日本のコンクリートポンプ企業数社が、請求人商品の購入を見据えた視察のため、請求人の本社(韓国ハマン郡所在)を訪問した(甲66)。したがって、請求人商標は、日本のコンクリートポンプ車業界において、この当時からある程度認識されていたことが推認できる。
イ 被請求人代表者からの販売代理店契約の申込み
2012年12月頃、被請求人代表者から請求人に対し、請求人商品を日本において販売する旨の販売代理店の契約を締結したいとの要請があった(甲114、甲83、甲115、甲116)。
ウ 被請求人代表者からの販売代理店契約の申込みに対し、請求人による拒絶
請求人は、上記イの被請求人代表者からの申込みに対し、被請求人代表者では日本での販売店としての経験や実績が足りないと判断し、被請求人代表者の申込みを断った(甲114)。そこで、請求人は、まずは、被請求人代表者が日本の販売店として実績を出した後、改めて販売代理店契約締結について話し合いをすることにした(甲114)。その後、請求人は、被請求人代表者と取引を行ったが、取引を行っていく中で、被請求人代表者では日本の販売代理店として不適切であると判断した(甲114)。
そのため、請求人は、平成27年1月より、日本支社の開業準備を開始し(甲118)、平成27年7月22日、日本支社であるKCPジャパン株式会社を設立した(甲119、以下「KCPジャパン」という)。また、株式会社国際建機販売(甲120、以下「国際建機販売」という)を販売店として、日本において請求人商品を販売した。
これに対し被請求人代表者は、2015年(平成27年)8月11日付で、KCPジャパン従業員1名と国際建機販売に対し、商標法違反だと主張する催告書を通知し(甲121)、また、2017年(平成29年)4月11日付で、KCPジャパン従業員1名と国際建機販売に対し商標権侵害訴訟を提起し(甲122)、さらには、2017年(平成29年)9月12日付で、KCPジャパンに対し商標法違反だと主張する催告書を通知し(甲123)、すなわち、請求人が日本において営業活動をすることができないようにしてきた。
このような経緯からすれば、被請求人代表者は、日本で請求人商品を取り扱いたいという意思はあったものの、販売代理店契約を拒絶されたため、請求人との日本国内代理店契約締結を強制する目的、請求人の日本参入を阻止ないし困難にする目的等のために本件商標を先取り的に出願し登録を受けたと言わざるを得ない。すなわち、被請求人代表者は本件商標が請求人の商標であることを認識して請求人のポンプ車についての営業販売活動を行った上で、日本における請求人の正当な活動を阻害するために商標登録出願を行ったことが明らかである。
エ 被請求人による請求人商品の取引
被請求人代表者は、本件商標登録出願以前に、請求人に対し、請求人商品につき問い合わせており(甲83?甲85)、韓国における請求人商品の売買に関与しており(甲87?甲89、甲116、甲117)、日本で請求人の販売店社長として営業活動を行い、請求人商品を販売しており(甲87?甲89、甲114、甲117、甲125、甲126)、請求人商品の広告を出し(甲127)、請求人商品の写真を自らの営業に使用していたことから明らかなとおり、請求人と取引関係にあり、実際に日本における請求人商品の取引を行っていた者である。
よって、被請求人は、A)請求人商標「KCP」が、請求人商品を表すものとして、取引者、需要者の間で広く知られていること、B)請求人商品が日本国内で販売されていることを当然知っていた。
オ 「GSF Inc.」から「GSF KCP LTD.」への商号変更
被請求人代表者は、被請求人設立以前においては「GSF Inc.」の商号で業務を行っていたが、突如として「GSF」に「KCP」を結合させた名称を用いるようになった。
よって、被請求人代表者は、請求人商標「KCP」の存在を知りながら、あえて自らの商号に「KCP」を加えたのであるから、請求人商標に化体した信用、名声、顧客吸引力等に便乗する意図が窺える。
カ 本件商標と請求人商標との一致
被請求人は、請求人と取引関係にあり、請求人商標が、請求人商品を表すものとして、取引者、需要者の間で広く知られていること、請求人商品が日本国内で販売されていることを知っていたにもかかわらず、請求人商標と同一の本件商標の登録出願を行った。
本件商標の文字綴り、及び指定商品の表示は一致しており、これは偶然の一致とはいい難い。
したがって、被請求人は、請求人商品を狙い撃ちして、請求人商標を剽窃したとい言わざるを得ない。
キ 請求人商標に化体した信用、名声、顧客吸引力等への便乗
(ア)取引書類
被請求人は、請求人とあたかも関連があるかのように誤認・混同を惹き起こすような記載をした取引書類を配布しており(甲103)、請求人商標に化体した信用、名声、顧客吸引力等に便乗する意図が窺える。
(イ)ニュース・リリース
被請求人は、「ニュース・リリース」と題した宣伝資料を配布しているが(甲104)、当該書面は、被請求人商品と請求人商品とを比較する宣伝資料であり、被請求人商品があたかも請求人商品よりも優れたものであるかのように宣伝し、請求人商標に化体した信用、名声、顧客吸引力等に便乗する意図が窺える。
ク 被請求人のトラブル
被請求人は、2014年10月28日、株式会社エスケイコンクリートポンプに対し、請求人商品の建設機械(KCP19ZX)を販売したが、その後トラブルとなり(甲94、甲95、甲114、甲129)、訴訟を提起するまでに至った(甲125)。
また、被請求人は、2015年1月6日、有限会社札幌技建興業に対し、請求人商品の建設機械(KCP31ZX5)を販売したが、アフターサービスを行わなかったため、有限会社札幌技建興業は、部品を購入することができなくなった。そのため、有限会社札幌技建興業から、請求人に対し、部品供給の依頼がきた(甲130)。
このような被請求人の行動は、請求人商標に化体した信用、名声、顧客吸引力等を毀損するものである。
ケ 被請求人の権利行使
上記ウで述べた通り、被請求人は、KCPジャパン及びその従業員1名、及び国際建機販売に対し、商標法違反だと主張する催告書の通知、ないしは商標権侵害訴訟を提起し、請求人が日本において営業活動をすることができないようにしてきた(甲121?甲123)。
このような被請求人の行動は、請求人の日本参入を阻止ないし困難にするものであり、本件商標出願時及び査定時において、その意図があったものと推認できる。
コ 小括
上記のとおり、被請求人は、日本で請求人商品を取り扱いたい意思はあったものの、販売代理店契約を拒絶されたため、請求人との日本国内代理店契約締結を強制する、または、請求人の日本参入を阻止ないし困難にする等の目的のために本件商標を剽窃し、先取り的に出願し登録を受けたのである。(上記イ、ウ)。
また、被請求人は、上記エのとおり、本件商標登録出願以前に、請求人に請求人商品につき問い合わせており、韓国における請求人商品の売買に関与しており、日本で請求人の販売店社長として営業活動を行い、請求人商品を販売しており、請求人商品の広告を出し、請求人商品の写真を自らの営業に使用していたことから明らかなとおり、請求人と取引関係にあり、実際に日本における請求人商品の取引を行っていた者であるから、A)請求人商標が、請求人商品を表すものとして、取引者、需要者の間で広く知られていること、B)請求人商品が日本国内で販売されていることを当然知っていた。
そして、被請求人は、請求人商標の存在を知りながら、あえて自らの会社の商号である「GSF」に「KCP」を加えたのであるから、請求人商標に化体した信用、名声、顧客吸引力等に便乗する意図があった。(上記オ)。
さらに、本件商標は、造語である請求人商標と全く同一の商標であり、指定商品も請求人商品を積極的に指定したものであるから、被請求人は、請求人商品を狙い撃ちして、請求人商標を剽窃したと考えるはかない(上記カ)。
加えて、被請求人は、請求人商標に化体した信用、名声、顧客吸引力等に便乗する行動をとったり(上記キ)、それを毀損する行動をとっている(上記ク)。
そして、被請求人は、実際に、請求人商品を日本で取り扱うKCPジャパン及びその従業員1名、国際建機販売に対し、商標法違反だと主張する催告書を通知し、商標権侵害訴訟も提起しているのであるから、請求人の日本参入を阻止ないし困難にする意図があった(上記ケ)。
したがって、被請求人は、未だ請求人商標が日本において登録出願されていないことを奇貨として、請求人の日本参入を阻止ないし困難にする目的、請求人との日本国内代理店契約締結を強制する目的、又は本件商標に化体した信用、名声、顧客吸引力等に便乗し不当な利益を得る目的等の不正の目的のために、本件商標を登録出願したのである。
(3)東京地方裁判所平成29年(ワ)12058号について
被請求人は、東京地方裁判所平成29年(ワ)12058号(以下、「本件審判外訴訟」という。)において提出された準備書面13(乙18)を提出しているが、ここに記載された内容については、その後行われた、当事者尋問当日に事実関係の整理が行われたため、この尋問調書(甲154)提出する。
そして、本件審判外訴訟において、本件商標は、他人の業務に係る商品を表示するものとして韓国国内における需要者の間に広く認識されているKCP社商標と同一または類似の商標であって、不正の目的をもって使用するものであるから、商標法4条1項19号に該当し、商標登録無効審判により無効とされるべきものと認められた(甲142)。
6 むすび
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第10号、同項第15号、同項第19号及び同項第7号に該当し、同法第46条第1項第1号により、その登録を無効とされるべきである。

第3 被請求人の主張
1 請求人について
本件審判請求書に、請求人の名称は「ケーシーピー ヘビー インダストリーズ カンパニー リミテッド」と表記されている。これを英語に訳すると「KCP HEAVEY INDUSTRIES CO. LTD.」になる。
請求人は、一人のオーナーあるいは同じ仲間が取締役人として登記されている三つの商号がある(乙5)。
株式会社ケーシーピー重工業(清算終結)(乙1、乙5、乙6)
株式会社ケーシーイーピー重工業(乙5、乙7)
株式会社ケーシーピーインダストリー(乙5、乙8)
しかしながら「ケーシーピー ヘビー インダストリーズ カンパニー リミテッド」の商号は存在しない。
「株式会社ケイシピ重工業」は2013年7月3日設立登記し、2017年2月28日に清算終結されたと、韓国当局に登録されている(乙1)。
したがって、「株式会社ケーシーピー重工業」、又は「ケーシーピー ヘビー インダストリーズ カンパニー リミテッド」は清算終結された法人であり、存在しない架空請求人である(乙6)。
請求人は韓国企業であり、韓国の登記簿謄本とか、韓国国税庁に記されて名称は登記簿謄本に記されているように、韓国語に基づいて和訳すれば、株式会社ケイシイピ重工業、又は韓国語→英語→和訳すれば、株式会社ケーシーイーピー重工業となっている(乙12)。
したがって、日本語の表記では「ケーシーイーピー ヘビー インダストリーズ カンパニー リミテッド」、「(株)ケイシイピ重工業」又は「(株)ケーシーイーピー重工業」になる。英語では、「KCEP HEAVEY INDUSTRIES CO. LTD.」になる。
請求人は甲第14号証を持って請求人のハングル文字を「KCP HEAVEY INDUSTRIES CO. LTD.」に訳するという主張をするが、甲第14号証は韓国にある「社団法人韓国貿易協会」への会員証である。「社団法人韓国貿易協会」は、加入企業から会費をもらいながら営む団体であり、会員から提出された資料などについて審査等を行う機関ではないところから、同協会が作成した資料であったとしてもその内容は、会員が自身で作成したものである。したがって、その資料が真正なものであるとの証明力はない。
以上より、請求人は実体がいない架空の法人である。法律上、行為主体が欠けている。
2 請求人商標について
請求人は、請求人の従業員に作らせた甲第13号証を持って、請求人が韓国でトップ企業であると主張する。
しかしながら、韓国金融監督院に各社が提出した報告書を参照した乙第4号証によれば、韓国でのランキング第1位は「エバダイム」、第2位「ジョンジン」、第3位は請求人(ケイシピ)、第4位はディワイになりそうだ。
なお、乙第4号証における、請求人の数値については、請求人は清算終結された企業だから信頼できる報告書はないため、請求人提出の甲第13号証をそのまま引用した。
請求人は2013年に日本で販売活動したことがあったが、日本の圧送企業から全く反応がなかったので撤退したと請求人の従業員から聞いた。その理由は、韓国産の上物が日本の規格に則ったものでなく、日本国内で利用することができないからである。短い販売活動であったために、日本の圧送企業に浸透することはなかったのである。
また、請求人は、2014年と2015年に数十ヶ国へ参入するために展示会などに出展したというが、日本でのマーケッティング活動はなかった。
請求人は、請求人商標が国際的に広く知られているというが、4年間、海外販売628台(甲13)の数字を持って国際的に広く知られていると言う主張は無理がある。加えて、この数字も請求人が作った資料に基づいているため信頼性がない。
請求人が海外へ販売したポンプ車の上物には、請求人商標を付さず、OEM生産も多かった(乙3)。
北米、ヨロッパ、オーストラリア地域への輸出は殆どOEM生産になったことから、請求人は商標に対して関心がなかったと推察できる。
また、韓国では「KCP」という標章も多いし、韓国特許庁に登録されている商標も何件あるが、請求人商標は韓国でも登録されていなかった。
したがって、請求人商標の周知性は認められない。
3 本件商標について
被請求人が2012年夏頃から日本全国の圧送企業へのマーケッティング活動により、本件商標に関する認識が業界に広く認知されている。
2012年当時、日本の圧送企業の99%以上では韓国産のポンプ車に対して全然興味を持っていなかった。被請求人は、日本の規格に合わせて製造販売する韓国産のコンクリートポンプ車だとイメージ的に説明をした。これが「KCP」というイメージになった。
被請求人は日本で販売出来るポンプ車の上物を開発したと広報した結果、「KCP」は、日本の圧送企業の多くが被請求人の商標だと認識している。
4 結び
請求人の主張は認められない。
そして、請求人は当事者能力が不適格であるので本件審判は却下されるべきである。

第4 当審の判断
1 請求人について
請求人は、2002年5月15日に設立され、現存する韓国法人である(甲106)ことから当事者能力を有する。
そして、被請求人は、請求人の業務に係る商品を我が国において販売する行為は、被請求人の有する本件商標の侵害に当たる旨の商標権侵害行為差止等請求事件(本件審判外訴訟)を提訴したのであるから、請求人は本件審判を請求する利害関係を有する。
なお、被請求人は、請求人は実体がいない架空の法人であるから当事者能力が不適格である旨主張するが、その理由は、被請求人の正式名称のハングル文字を、被請求人自らが翻訳した日本語表示と、請求人が本件審判請求書において記載した請求名称の日本語表記が異なるからという、客観的な根拠を欠くものである。
しかしながら、請求人は甲第106号証の登記事項全部証明書のとおり現存する韓国法人であり、会社名の外国語表記は当該会社が決めるものであるから、被請求人のこの主張は採用できない。
2 本件商標と請求人商標との類否
(1)本件商標について
本件商標は、上記第1のとおりの外観は標準文字で「KCP」欧文字を標準文字より表してなるものである。
そして、本件商標の構成文字は、辞書等に掲載されておらず、何らかの略語としてしられているような事情もみあたらない。
これより、本件商標は、その構成文字に相応して、「ケーシーピー」との称呼を生じ、特定の観念は生じないものである。
なお、被請求人は本件商標構成文字中の「CP」との部分は略語ではないものの、「Concrete Pump」あるいは「Concrete Pumping」かつ「construction productions」の頭文字であることから一生忘れない観念が生じる旨主張するが、本件商標の指定商品を取り扱う業界において、「CP」の文字が何かの頭文字として知られていることを認められる証拠の提出もなく、そのような事情も発見できない。
そうすると、本件商標は「KCP」中、「CP」の部分をもって何らかの観念が生じるとする、被請求人のこの主張は採用できない。
(2)請求人商標について
請求人商標は、別掲のとおりの構成からなるところ、文字にデザインを施したものも含まれるものの、「KCP」の欧文字からなるものと容易に認識し得る態様と認められるものである。
これより、請求人商標は、本件商標と同様に、「ケーシーピー」との称呼を生じ、特定の観念は生じないものである。
(3)本件商標と請求人商標との類否
本件商標と引用商標とは、その構成文字のデザイン化の有無の差異があるものの、その綴り字を同じくすることから、外観上近似した印象をあたえるものというべきである。
そして、両商標は「ケーシーピー」の称呼を共通とし、観念においては両商標とも特定の観念が生じないことから比較することができず、観念において区別することができない。
そうすると、本件商標と請求人商標は、外観において近似し、称呼において共通し、観念において区別することができない互いに紛れるおそれのある類似の商標というべきである。
そして、本件商標の指定商品は、請求人商標を使用する請求人商品を含むものである。
3 請求人商標の周知性
請求人の提出に係る証拠によれば、請求人は、「コンクリートポンプ車」等の製造販売を主たる業務とする2002年(平成14年)に設立された韓国の法人であり、請求人は、請求人商標を、請求人商品について、その車体、カタログ、ウェブページによる広告等に使用している(甲5?甲13等)。
請求人商品の韓国国内のシェアは、2012年(平成24年)が36%、2013年(平成25年)が40%、2014年(平成26年)が32%、2015年(平成27年)が37%で、第1位であった(甲10、甲11)。
また、請求人商品の韓国内の売上げ台数及び売上高(括弧内は1韓国ウォンを0.1円で換算した金額)は、2012年(平成24年)が87台、248億7800万0000ウォン(24億8780万0000円)、2013年(平成25年)が127台、385億8250万0000ウォン(38億5825万0000円)、、2014年(平成26年)が149台、454億5700万0000ウォン(45億4570万0000円)と、年々売上げ台数及び売上高を伸ばし、本件商標が出願された、2015年(平成27)には、206台、669億2900万0000ウォン(66億9290万0000円)に達していた事(甲12、甲13)が認められる。
これより、請求人商標は、請求人商品を表示するものとして、本件商標の登録出願日前既に、すくなくとも韓国国内におけるコンクリートポンプ車を取り扱う分野の取引者、需要者の間においては広く知られていたものと認めることができる。
なお、被請求人は、請求人の売上げ等の根拠となった資料(甲10?甲13)は請求人自身が作成した資料にすぎず、信用性は低い旨主張するが、同資料記載の2015年(平成27年)の売上額高の、1169億8230万8109ウォン(甲13)は、韓国金融監督院の売上公開情報における売上額(甲112)と一致してしていことから不審な点はなく、その他の数字についても、この信用性を覆すに足りる証拠はない。
4 不正の目的
請求人の主張及び提出に係る証拠によれば、以下の事実を認めることができる。
(1)被請求人代表者と請求人との関係について
ア 被請求人の履歴事項全部証明書(甲53)によれば、被請求人は、平成26年7月15日に設立、その代表取締役は、藤田道男及び方鐘泰(パン ジョンテ)であり、また、被請求人のウェブサイト(甲54)には、「代表者:Jong,PANG(パン ジョンテ)」の記載があることから、実質的には、被請求人代表者である「パン ジョンテ」氏が代表者としての業務を行っているといえる。
イ 被請求人代表者は、「johntepang@hotmail.com」のアドレス、「GSF Inc.」の商号、「電話番号:02-803-2132」を用いて、2012年12月25日付けの電子メール(甲83、甲115)、2013年2月12日付けの電子メール(甲84)及び同年11月11日付けの電子メール(甲85)をもって、請求人宛てに、請求人商品の日本への輸出に関する事項、商品「FUJI18z80」のデザインの進行状況についての問い合わせ及び見積の依頼などに関する内容を送信している。
その他、2014年4月9日付け「KCP31ZX5」に関する注文書/契約書(甲126)、平成26年4月発行の被請求人代表が請求人商品「KCP35ZX5150」の広告を掲載した全圧連名簿、2013年(平成25年)6月28日付け秘密保持契約書(甲143、甲144)より、被請求人代表者は、被請求人を設立する平成26年7月15日まで、「GSF Inc.」(あるいは「GSF INC.」)との商号を用いて活動を行っていた。
ウ 請求人は、ウォンジン産業との建設機械売買契約書(甲87?甲89)により、2014年5月12日に「KCP19Z」、2015年1月6日に「KCP31ZX5」及び「KCP19ZX」の請求人商品を販売した。
甲第87号証の顧客事項欄には、ウォンジン産業の電話番号として「02-803-2132」が記載されており、これは、甲第83号証ないし甲第85号証に記載のGSF社としての被請求人代表者の電話番号と一致する。また、メールアドレスは、「johntepang@hotmail.com」が記載されており、これも、被請求人代表者のメールアドレスと一致する。
さらに、ウォンジン産業CEOのジョン・ウォンソック氏の名刺(甲86)には、「WonJin INDUSTRY」と「GSF Inc.」が併記され、また、左上部に「ROBOTEC/現場から求められる小さな巨人ポンプ車/FUJI18z80」と記載され、被請求人代表者が請求人に宛てた2013年2月12日付けの電子メールで問い合わせをした内容の「FUJI18z80」と一致する。
したがって、ウォンジン産業とGSF社は、被請求人代表者のもと関連会社又は実質的に同一の企業であったというべきである。
また、被請求人代表者は、平成24年12月24日頃、ヴォンジン産業の社長と共に請求人を訪問し、被請求人代表者と請求人会社理事は、同日、被請求人代表等からの日本における販売代理人契約締結の申し込みには同意しなかったものの、被請求人代表者が、今後、日本においてKCP社の商品を販売するための支援をこなうことに合意している(甲83、甲106、甲114?甲117)。
その後、被請求人代表者及びヴォンジン産業は、日本国内においてKCP社のコンクリートポンプ車等の営業活動を行い、KCP社のコンクリートポンプ車3台を日本国内のコンクリート圧送業者等に販売している(甲7、甲87?甲93、甲114、甲117、甲127、甲130、甲145?甲147)。
エ 請求人による日本への業務展開について
請求人は、日本における営業拠点として平成27年7月22日に、井上氏を代表取締役(以下、単に「井上氏」という。)としてKCPジャパンを設立(甲119)した。
請求人と井上氏とは、KCPジャパンを設立に先駆け2015年1月15日に雇用契約を締結し(甲118)、井上氏は、同月から請求人の日本における営業活動を開始し、複数のコンクリートポンプ業界の関係者に対し、「KCP」の文字及び「Chie Operating Officer」の役職名が記載された名刺を配布した(甲114、甲118、甲154の7頁、甲155)。
オ 本件商標出願前後における被請求人代表者の行動
(ア)被請求人代表者は、平成27年1月頃、請求人の工場の従業員から、同社が日本に進出するとの噂を聞いた(甲154の6頁、7頁〕)。
また、被請求人代表者は、同年1月ないし2月頃、他のコンクリート圧送業者から、井上氏の名刺(甲155)を見せられるなどして、井上氏が請求人の日本における最高執行責任者として営業活動を行っていると告げられ、被請求人と同人との関係について問い合わせを受けた(甲154の8頁)。
(イ)甲第152号証は、平成27年5月28日に被請求人代表者と井上氏とが面談した差異の録音データ及び反訳書とのことであるが、これによれば、被請求人代表者は井上氏に対し「もちろん私は今まではKCP一本化して日本で販売しようと思ったんですが、」「私がしっかりと足止め、私から足止めさせているから活動が出来ませんと(KCP社に)報告した方が(いい)」、「KCPとも相談してください。」、「商標権はあきらめずに私が握っているから。それはKCPが必要になれば購入しなければならない。」、「(請求人が)買うんだったら、まあそれも考えますし、いろいろ選択肢がありますが、KCPからはただでもらいたいということが候補だと…。」、「まずKCPからは無償で使いたいというよりは今までの活動に対して評価しなくてはならないと思いますよ。そうじゃないですか。」、「一銭も払いたくない。それが問題で。」などと言っている。
このことから、被請求人代表者は、当初、日本における請求人商品の代理店的立場を考えていたものの、KCPジャパン社設立されることを知ると、井上氏に対し、KCPジャパン社が日本において営業活動を行わないように求めるとともに、その旨を請求人にに報告するように求め、さらに、請求人が日本において「KCP」を使用したいのであれば本件商標権を買い取るか、請求人に本件商標の使用させる代わりに、被請求人の日本におけるこれまでの営業活動に対する金銭的な見返りを要求したが、請求人がこれに応じないことについて不満を持っていることがわかる。
(ウ)被請求人は、本件商標の登録査定日の前である平成27年5月29日をキャンペーンの締切日とした、「ポンプ車のラジコン、気軽に新しいものに取り換えるチャンス!」と題するポンプ車の無線操縦機に関するパンフレットを作成し、同パンフレットのお知らせとして「弊社では『KCP』の商標権を所有しております。弊社以外のところで『KCP』の商標がついているポンプ車の販売及び購入は商標権の侵害として民事賠償と刑事罰を受けることになることを、予めお知らせ致します。」と記載し(甲103)、その後、本件商標の登録後である平成27年8月12日に、国際建機販売とKCPジャパン社に対し、甲第121号証の「催告書」を送付し、その書類中には「1.国際建機販売では韓国から導入したコンクリートポンプ車にKCPという文字は使用できないですから削除して下さい。書類にも部品でも、日本に入った時点では商標法違反であります。 2.KCPJAPANと言う名付けて、日本語のホームページを展開していますが、このホームページの中に表現されたKCPという文字は使用できないですから削除して下さい。 3.従って、上記1と2を、2015年8月28日までに施行して、弊社に報告して下さい。 4.今までに上記関係社に3回以上警告をしたことがありましたが、引き続きこのような商標法違反が改善されなければ、商標法に基づいて、商標法の侵害として対応するのを催告します。」等と記載し、請求人による請求人商標の使用が、本件商標の商標権侵害に当たることを複数回にわたり警告している。
(2)本件商標の「不正の目的」について
上記(1)の事実によれば、被請求人代表者は、本件商標の登録前より、我が国において請求人商品を販売していた事実があることから、被請求人は、本件商標の登録出願前には、すでに請求人、請求人商品及び請求人商標を知っていたといえる。
そして、請求人が我が国における営業拠点であるKCPジャパン社を設置する活動を始めた2015年(平成27年)1月の直後である平成27年2月18日に、上記第1のとおり被請求人は、請求人商標と類似する本件商標を請求人商品と同一又は類似の商品にについて商標登録出願し、その出願は平成27年7月17日に設定登録されたしたものである。
そして、被請求人は、登録出願後、請求人に対し、日本において請求人商標を使用した請求人商品を輸入、販売する場合には本件商標の商標権侵害に該当する旨の警告をし、請求人が日本において請求人商標を使用をしたいのであれば、本件商標の買い取りあるいは、これまでの被請求人による請求人商品についての営業活動についての見返りを求めている。
してみれば、被請求人が本件商標を登録出願したことは、請求人商標を知った上で、請求人商標が我が国において登録されていないことを奇貨として、請求人の国内参入を阻止したりする等の目的で、先取り的に、出願したというのが相当であり、被請求人は本件商標を不正の目的をもって登録出願といえる。
5 商標法第4条第1項第19号該当性について
請求人商標は、上記3のとおり、韓国においてコンクリートポンプ車を取り扱う取引者・需要者の間において広く認識されていたといえる。
また、本件商標と請求人商標並びに本件商標の指定商品と請求人商標が使用されている請求人商品とは、同一又は類似の商品である。
さらに、上記4(2)のとおり、被請求人は、本件商標の登録出願前には、すでに請求人商品及び請求人商標を知っており、我が国において登録されていないことを奇貨として、外国の権利者である請求人の国内参入を阻止したりする等の目的で、先取り的に、不正の目的をもって使用するために出願したと言わざるを得ない。
したがって、本件商標は、請求人の業務に係る商品を表示するものとして韓国における需要者の間に広く認識されている請求人商標を承知の上、請求人商標に化体した顧客吸引力を希釈化させ、その信用、名声を毀損させ若しくはその信用に便乗し不当な利益を得る等の不正の目的のもとに、請求人商標と極めて類似する本件商標を出願し、登録を受けようとしたというべきでああるから、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当する。
6 むすび
以上のとおり、その余の請求理由について判断するまでもなく、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第19号に違反してされたというべきであるから、同法第46条第1項により、無効とすべきである。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲 請求人商標(甲5?甲13、他)
(1)


(2)


(3)(色彩については請求書を参照)



(4)(色彩については請求書を参照)


審理終結日 2018-10-11 
結審通知日 2018-10-15 
審決日 2018-10-29 
出願番号 商願2015-14532(T2015-14532) 
審決分類 T 1 11・ 22- Z (W12)
T 1 11・ 25- Z (W12)
T 1 11・ 271- Z (W12)
T 1 11・ 222- Z (W12)
最終処分 成立  
前審関与審査官 海老名 友子 
特許庁審判長 井出 英一郎
特許庁審判官 大森 友子
田中 幸一
登録日 2015-07-17 
登録番号 商標登録第5779610号(T5779610) 
商標の称呼 ケイシイピイ 
代理人 特許業務法人YKI国際特許事務所 

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