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審決分類 審判 判定 その他 属さない(申立て成立) X25
管理番号 1351655 
判定請求番号 判定2018-600023 
総通号数 234 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標判定公報 
発行日 2019-06-28 
種別 判定 
2018-07-20 
確定日 2019-05-10 
事件の表示 上記当事者間の登録第5145594号商標の判定請求事件について、次のとおり判定する。 
結論 商品「スパッツ」に使用するイ号標章は、登録第5145594号商標の商標権の効力の範囲に属しない。
理由 第1 本件商標
本件登録第5145594号商標(以下「本件商標」という。)は、「学校へ行こう」の文字を標準文字で表してなり、平成19年7月27日に登録出願、第25類「洋服,コート,セーター類,ワイシャツ類,寝巻き類,下着,水泳着,水泳帽,アイマスク,エプロン,えり巻き,靴下,ゲートル,毛皮製ストール,ショール,スカーフ,足袋,足袋カバー,手袋,布製幼児用おしめ,ネクタイ,ネッカチーフ,バンダナ,保温用サポーター,マフラー,耳覆い」を指定商品として、同20年6月27日に設定登録されたものである。

第2 イ号標章
請求人が商品「スパッツ」について使用する標章(以下「イ号標章」という。)は、別掲に示した構成からなるものである。

第3 請求人の主張
請求人は、結論同旨の判定を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第3号証(枝番を含む。なお、枝番号を有する証拠において、枝番号のすべてを引用する場合は、枝番号の記載を省略する。)を提出した。
1 判定請求の理由の要約
請求人は、スパッツを製造・販売しているところ、平成30年6月13日付通知書(甲1)が被請求人より送付された。
その内容は、被請求人が所有する本件商標を、請求人が侵害しているとの主張である。

2 判定請求の必要性
請求人は、指定商品は抵触しているが、本件商標とイ号標章とは非類似と確信している。
過去、請求人が商標登録出願し拒絶査定になった商標「学校に履いて行こう/がっこうにはいていこう/がっこうにはいてゆこう」が、本件商標とは先後願違反とは判断されず、商標法第3条第1項第6号に該当するとの判断のみがされていた。すなわち、「学校に行こう」(判定注:「学校へ行こう」の誤り)と「学校に履いて行こう」とは、類似しないとの判断であると思料する。
そこで、厳正中立的な立場の特許庁の判定を求める。

3 イ号標章の説明
(1)イ号標章(判定請求書に添付した「イ号標章」の赤線で四角に囲んだ部分)は、文字、図形、色彩からなる商標であり、その構成は、文字、記号、図形とで「学校へ履いて行こう!」と記載されてなり、「学校へ」と、「履いて行こう!」とは上下二段に記載されている。
(2)「学」の文字は赤色に着色され、「校」の文字は青色に着色され、文字の一部はハートの図形で描かれ、「へ」の文字は赤色に着色され、かつ、鋏の図形が描かれ、「履」の文字は青色に着色され文字の一部に花びらの図形が描かれており、「い」の文字は黒色で曲がった形状の万年筆と、白色と薄水色に着色された曲がった試験管の図形に形成されており、そして「!」の記号は黄色に着色された物差しと灰色に着色された消しゴムの図形が描かれている。
このように、イ号標章は、文字、記号、そして図形からなり、かつ、色彩を有する標章である。
(3)イ号標章に使用している商品は、スパッツである。

4 イ号標章が本件商標権の効力の範囲に属しないとの説明
(1)本件商標は、標準文字で「学校へ行こう」と一列に記載されている商標である(甲2)。
(2)それに対して、イ号標章は、文字、図形、記号そして色彩とで「学校へ履いて行こう」と表示した標章である。
そこで、本件商標とイ号標章との類否判断をするに際し、両者は外観判断及び称呼判断においては、明らかに異なっており、観念判断においても、「行こう」と「履いて行こう」との大きな観念の相違がある。
すなわち、本件商標の「学校へ行こう」は、単に「行こう」との観念であるが、イ号標章の「学校へ履いて行こう」は、「履いて」の部分に特異性があって、使用する商品が「スパッツ」(伸縮性のあるアウターウエアまたはボトムスの一種をいう。)であることより、イ号商標は、自他商品の識別標識としてみるというよりは、単に、学校に履いていくことを推奨するための宣伝文句として理解、認識するにとどまり、記述的商標であって識別力のない商標にすぎない。
このように、両商標は、非類似の関係にあるし、また、本件商標が、たとえ、登録商標であっても、自他商品の識別標識に該当しないイ号標章と、同一または類似であるとして本件商標を侵害すると判断することには無理がある。
(3)ところで、請求人は、平成20年8月5日に、第25類のストッキング、婦人用及び少女用パンテーストッキング等の商品を指定して、商標登録出願(甲3の1)を行なった。商標の構成は、漢字と平仮名とで、「学校に履いて行こう」、「がっこうにはいていこう」、「がっこうにはいてゆこう」の三段からなる文字商標である(但し、イ号標章が「学校へ履いて行こう」に対して「学校に履いて行こう」であり、「へ」と「に」の相違がある。)。
これに対して、平成21年4月24日に拒絶理由通知書(甲3の2)を受けた。
その理由は、「・・・単に学校に履いていくことを推奨するための宣伝文句として理解、認識するにとどまるものとみるのが相当ですから、これは需要者が何人かの業務に係る商品であるかを認識できない商標と判断せざるを得ません。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第6号に該当します。」とだけ述べられている。
被請求人が主張するように、本件商標をイ号標章が侵害するのであれば、両商標は類似の関係であり、特許庁は、イ号標章の出願に対して(判定注:商願2008-64411(甲3)の誤り)、本件商標である先願があるとの拒絶理由(商標法第8条第1項違反)も記載されるはずである。
それに対して、請求人は意見書を提出するが、先後願違反の記載が加筆されることもなく、平成21年6月26日に拒絶査定(甲3の3)が出された。
そうであるとすると、特許庁の審査では、イ号標章は、本件商標とは類似関係にはなく、単に、自他商品識別力を持たない商標であると判断されたと解される。

5 むすび
以上のとおり、イ号標章が本件登録第5145594号の商標権効力の範囲に属しないことは明らかである。

第4 被請求人の答弁
被請求人は、商品「スパッツ」に使用するイ号標章は、本件商標の商標権の効力の範囲に属する、との判定を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第2号証(枝番を含む。なお、枝番号を有する証拠において、枝番号のすべてを引用する場合は、枝番号の記載を省略する。)を提出した。
被請求人は、本件商標を有しており、女子学生向けの靴下類として「学校へ行こう」シリーズを、商標登録と同時期となる2008年から販売している。
今般、請求人は、被請求人と同じく女子学生向けの靴下類として「学校へ履いて行こう」を販売し、量販店などの売場でも「学校へ履いて行こう」のホップを大々的に使用して、製品を販売していることが発覚した(乙2)。
被請求人は、請求人の上記の行為は、商標権侵害行為であるとして、平成30年6月13日付の通知書(甲1)並びに、同年7月2日付けの連絡書(乙1)において、被請求人に対してその理由を申し上げた上で、侵害行為を停止するよう要請した。
「学校へ行こう」とイ号標章とは、商標の類否判断要素である「観念」及び「外観」が紛らわしく、類似商標である。
すなわち、1)使用する商品が「靴下」等として共通しており、学校へ行く場合には、素足では靴は履かず、靴下を履いて行くのが常識的だと考えられること、2)登録商標「学校へ行こう」が指定商品「靴下」等に使用された場合には、「この靴下(等)を履いて学校へ行こう」=「学校へ行くときには、この靴下(等)を履いて行こう」という意味が想起されざるを得ないこと、3)「学校へ『履いて』行こう」が指定商品の靴下(等)に使用された場合にも、「この靴下(等)を履いて学校へ行こう」=「学校へ行く時はこの靴下(等)を履こう」と同様の意味合いが想起されることがあげられる。
また、構成文字の相違という点からは、中間部分の文字「履いて」の有無だけで、冒頭の「学校へ」と末尾の「行こう」は同一であることから、両者は上記1)?3)で指摘した観念が共通するだけでなく、外観も紛らわしく、商標として類似するものであることは明白である。
以上のとおりであるから、本判定請求は却下されるべきもの(判定注:この項の冒頭に記載の答弁の趣旨をいうものと解される。)である。

第5 当審の判断
1 本件商標について
本件商標は、前記第1に記載のとおり、「学校へ行こう」の文字を標準文字で表してなるものであり、該構成文字から「ガッコウエイコウ」の称呼及び「学校へ行くことの呼びかけ」の観念が生じるものである。

2 イ号標章について
イ号標章は、別掲に示した構成からなるところ、「学校へ」と「履いて行こう!」の文字を図案化して表したと思しきものを上下二段に横書きしたものといえる。
具体的には、当該構成は、上記構成中の「い」、「う」及び「!」に相当する部分を除く構成各文字を肉太に赤色と青色とで交互に着色し、そのうちの「校」、「へ」及び「履」の各文字について順にハート型、鋏型又は花型の各図形を施し、また、図形を施した「履」と「て」の間に、湾曲した万年筆様の図形と試験管様の図形とで表現した「い」の平仮名と共通する形状を、「こ」の次に横線状に配した鉛筆様の図形と肉太の青色に着色された曲線とで「う」の平仮名と共通する形状を表し、さらに、末尾部分に黄色の長方形と灰色の長方形とで「!」の感嘆符と共通する形状を表してなるものということができる。
そして、上記構成態様は、顕著に図案化されているといえるものの、その全体を見た場合には、「学校へ履いて行こう!」の文字を図案化して表現したものと把握することができる。
そうすると、イ号標章は、「ガッコウエハイテイコウ」と読まれ、該標章を使用する商品「スパッツ」との関係においては「学校へ該標章を使用した商品(スパッツ)を履いて行くことの呼びかけ」といった意味合いが理解されるものということができる。
もっとも、本件商品「スパッツ」に普通に用いられる方法で「学校へ履いて行こう!」の文字を表示した場合には、「学校へ該標章を使用した商品(スパッツ)を履いて行くことの呼びかけ」といった意味合いが理解されるとみるのが自然であり、当該構成文字自体については識別力がないか極めて弱いものといえるから、イ号標章にかかる構成態様にあっては、その特徴的な外観において強く印象づけられるものというのが相当である。

3 本件商標とイ号標章との類否について
本件商標とイ号標章とは、前記1及び2で認定した両者の構成態様からすれば、その外観において、図案化された「履いて」の文字の有無等、図案化の有無や構成文字数について顕著に相違する。また、イ号標章から称呼及び観念が生じた場合を本件商標と比較したとしても、称呼「ガッコウエハイテイコウ」においては「ハイテ」の有無によってその構成音数が明らかに異なり、観念においても「履いて」の有無によって、単に「学校へ行くこと」を呼びかけるのか、「学校へ当該商品を履いて行くこと」を呼びかけるのかについて相違があり明らかに異なるものである。
そうすると、本件商標とイ号標章とは、外観において判然と区別し得るものであり、称呼及び観念においても相紛れるおそれはないものであるから、これらを総合的に勘案すると、両者を同一又は類似の商品に使用したとしても、相紛れるおそれのない、非類似のものというのが相当である。
その他、本件商標とイ号標章とが類似するといえる特段の事情は見出せない。

4 被請求人の主張について
被請求人は、本件商標とイ号標章の類否について、1)両者が商品「靴下」等に使用された場合には、いずれからも「この靴下(等)を履いて学校へ行こう」や「学校へ行くときはこの靴下(等)を履こう」といった同様の意味が想起されることを前提として、両者が観念上紛らわしいこと、2)両者の構成文字は、中間部分の「履いて」の有無が相違するのみでその他の文字は同一であるから、両者が外観上紛らわしいことを述べ、本件商標とイ号標章とが類似商標であると主張する。
しかしながら、上記1)については、本件商標を商品「靴下」等に使用した場合であっても前記1で認定した「学校へ行こう」の観念が生じる以上により具体的な意味合い(「この靴下(等)を履いて学校へ行こう」など)が理解されるとはいい難いから、その前提において認めることができず、その主張は採用できない。また、上記2)については、格別構成文字数が多いとはいえない構成において、「履いて」の有無が全体に与える影響は大きいといえる上、イ号標章は前記2で認定したとおり顕著に図案化されてもいるものであって、両者は外観において顕著な差異を有するものであるから、外観上紛らわしいとはいうことができず、その主張は採用できない。

5 まとめ
以上のとおり、本件商標とイ号標章とは、外観、称呼及び観念のいずれにおいても類似するということができないから、商品「スパッツ」に使用するイ号標章は、本件商標の商標権の効力の範囲に属しないものである。
よって、結論のとおり判定する。
別掲 別掲
(商品のラベルからイ号標章が付されている部分(赤線で四角に囲んだ部分)を抜粋したもの。)(色彩は判定請求書参照。)

判定日 2019-04-26 
出願番号 商願2007-83667(T2007-83667) 
審決分類 T 1 2・ 9- ZA (X25)
最終処分 成立  
前審関与審査官 泉田 智宏 
特許庁審判長 木村 一弘
特許庁審判官 板谷 玲子
瀬戸 俊晶
登録日 2008-06-27 
登録番号 商標登録第5145594号(T5145594) 
商標の称呼 ガッコーエイコウ、ガッコーエイコー 
代理人 広瀬 史乃 
代理人 三原 靖雄 
代理人 信末 孝之 
代理人 小林 浩 
代理人 鈴木 康仁 

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