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審決分類 審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない Y28
管理番号 1351544 
審判番号 取消2016-300755 
総通号数 234 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2019-06-28 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2016-10-26 
確定日 2019-04-26 
事件の表示 上記当事者間の登録第4811454号商標の登録取消審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 審判費用は,請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4811454号商標(以下「本件商標」という。)は,「桃鉄」の漢字と「モモテツ」の片仮名を上下二段に書してなり,平成15年11月12日に登録出願,第28類「スキーワックス,遊園地用機械器具(業務用テレビゲーム機を除く。),愛玩動物用おもちゃ,おもちゃ,人形,囲碁用具,将棋用具,さいころ,すごろく,ダイスカップ,ダイヤモンドゲーム,チェス用具,チェッカー用具,手品用具,ドミノ用具,トランプ,花札,その他の遊戯用カード,マージャン用具,遊戯用器具,ビリヤード用具,運動用具,釣り具,昆虫採集用具」並びに第9類及び第16類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として,同16年10月22日に設定登録されたものである。
そして,本件審判の請求の登録は,平成28年11月9日にされた(以下,当該登録前3年以内を「要証期間」という。)
なお,本件商標は,「株式会社ハドソン」を権利者(以下「旧商標権者」という。)として設定登録されたものであるが,その後,平成26年7月7日受付で一般承継による本商標権の移転登録がされ,被請求人が権利者(以下「現商標権者」という。)となった。

第2 請求人の主張
請求人は,商標法第50条第1項により,本件商標の指定商品中,第28類「全指定商品」についての商標登録を取り消す,審判費用は被請求人の負担とする,との審決を求め,その理由を要旨以下のように述べた。
1 請求の理由
本件商標は,その指定商品中の第28類「全指定商品」について継続して3年以上日本国内において商標権者,専用使用権者又は通常使用権者のいずれの者によっても使用した事実が存在しないから,その商標登録は,商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきものである。
2 答弁に対する弁駁
(1)本件商標の使用について
ア タカラトミーアーツ社サイト(乙2)について
(ア)株式会社タカラトミーアーツ(以下「タカラトミーアーツ社」という)のウェブサイトの写し(乙2)をもって,被請求人はこれが広告であることを意図しているのかもしれないが,広告ならば,それが商標法上の「使用」というためには,標章を付して展示,頒布等をしなければならない(商標法第2条第3項第8号)にもかかわらず,被請求人は,2014年(平成26年)4月1日前後から当該ホームページを印刷した2016年(同28年)12月21日まで使用していると主張するだけで,当該期間において,その広告を展示,頒布等をしていることを証明してはいない。
また,当該写しが印刷されたのは要証期間外であって,この証拠のみをもって要証期間内の使用を証明したとはいえない。
(イ)さらに,タカラトミーアーツ社のウェブサイトの写し(乙2)において,「桃鉄」の記載があることを根拠に本件商標の使用を主張しているが,そもそも商標法第50条の適用上,「商品」というためには,市場において独立して商取引の対象として流通に供される物でなければならず,また,「商品についての登録商標の使用」があったというためには,当該商品の識別表示として,同法第2条第3項,第4項所定の行為がされることを要するものというべきである(東京高裁 平成12年(行ケ)第117号判決)。
これを本件についてみると,被請求人が主張する商品は,「桃太郎電鉄ボードゲーム大どんでん返しの巻」であって「桃鉄」でも「モモテツ」でもない。
また,「3 桃鉄コマ」,「いつもの桃鉄モード」の記載は,それぞれ「桃太郎電鉄ボードゲーム大どんでん返しの巻」に同封されるコマとボードの名称であって,これが独立した商品として個別に取引されていることは証明されていない。さらに,「桃鉄とは,プレイヤーが『電鉄会社』の社長となって各地の物件を買い集め,稼いだ資金を競う簡単スゴロク型ボードゲームだぞ!!・・」,「桃鉄ファン」,「『桃鉄』は4月からスタートです。」の各記載は,それぞれ文章中に他の文字と大差のない大きさの文字で表示されている形態からすれば,商品の識別表示として使用されている商標とはいえない。
このように,被請求人が当該写しで示している商品における商標は,「桃太郎電鉄ボードゲーム大どんでん返しの巻」であって,被請求人が示した前記記載は,いずれも識別標識としての標章ではなく,また,商標法上の商品にも該当しない。
(ウ)以上のとおり,タカラトミーアーツ社のウェブサイトの写し(乙2)は,タカラトミーアーツ社の広告用のウェブサイトであったとしても,要証期間内に使用されていたことが証明されていない。また,当該写しで示されている「桃鉄」の表示は,商標法に示す商品について使用されている表示とはいえないものであるから,本件審判の請求に係る指定商品のいずれかについての商標の使用を証明したということはできない。
イ Amazonの商品販売ページの写し(乙3の1?3)について
Amazonの商品販売ページの写し(乙3の1?3)をもって,被請求人はこれが広告であることを意図しているのかもしれないが,広告ならば,それが商標法上の「使用」というためには,標章を付して展示,頒布等をしなければならない(商標法第2条第3項第8号)にもかかわらず,被請求人は,2012年(平成24年)4月18日から2016年(同28年)12月21日に至るまで継続して使用していると主張するだけで,当該期間において,その広告を展示,頒布等をしていることを証明してはいない。
当該写し(乙3の1・2)に記載されている2012年(平成24年)4月18日及び2016年(同28年)12月21日の各日付は,いずれも要証期間外であるし,また,当該写し(乙3の1)においても,「取り扱い開始日 2012/4/18」としているのであって,継続して販売されていると示されてはおらず,当該記載のみで要証期間内の取り扱いを証明できるものではない。
なお,当該写し(乙3の1)に「桃鉄」の記載があると主張しているが,その記載は需要者が記載している表示であって,商品についての使用とはいえない。
以上のとおり,当該写し(乙3の1・2)は,タカラトミーアーツ社の広告用のウェブサイトであったとしても,要証期間内に使用されていたことが証明されていない。
さらに,当該写し(乙3の1・3)で示されている「桃鉄」の表示は,商標法に示す商品について使用されている表示とはいえないものであるから,本件審判の請求に係る指定商品のいずれかについての商標の使用を証明したということはできない。
ウ 任天堂ファミリーコンピュータ用ゲームカセットのパッケージ及びカセットの写真(乙4)について
任天堂ファミリーコンピュータ用ゲームカセットは,指定商品「家庭用テレビゲームおもちゃ」に属する商品であり,本件審判の請求に係る指定商品には含まれない。また,「桃鉄」の名称が周知であることと,商標法第50条第2項に示す使用を行っていることは,全く別の要件である。
エ 商品化に関する契約書等(乙5,6)について
被請求人は,旧商標権者と株式会社ディーライツ(以下「ディーライツ社」という。)他2社との「桃太郎電鉄」の商品化に関する契約書(乙5)と現商標権者とディーライツ社他2社との権利の承継に関する契約書(乙6)とにより,現商標権者がディーライツ社に対し,本件商標の使用を許諾している,と主張する。
しかしながら,当該商品化に関する契約書の第2条第2項に「前条の定めにも関わらず,丁は次の各号に定める業務については甲,乙及び丙による当事者全員からの書面による許諾がない限り,これを実施することができない」とあり,同項第3号に「本件商品化権の許諾に際し,ライセンシーに対し第三者への再許諾権を与えること」として再許諾権について書面の承諾を必要としている。また,当該商品化に関する契約書の第2条第3項に「丁(ディーライツ社)は,甲(旧商標権者)乙丙の事前の承認を取得せずに本件著作物の商品化権をライセンシー以外の第三者に許諾してはならないものとする」と規定されており,丁(ディーライツ社)は,甲乙丙の承諾なく,商品化権の許諾をすることを認めないとの規定になっている。
つまり,丁(ディーライツ社)は,これら甲乙丙の承諾がなければ,被請求人が通常使用権者と主張するタカラトミーアーツ社に対して,再許諾の権利を付与することはできないところ,当該商品化に関する契約書及び当該権利の承継に関する契約書においても,丁(ディーライツ社)が,甲乙丙の承諾を受けている旨の証明がないため,被請求人は,タカラトミーアーツ社に対して通常使用権の許諾を行っている事実を証明していない。
また,当該商品化に関する契約書において示されている「本件著作物」とは,「桃太郎電鉄」シリーズ及びこれを構成するタイトル(ロゴも含む),サブタイトル,キャラクターの形状・名称,シナリオ,ストーリ,音声,効果音等をいうものとするとなっているが,「桃鉄」は,被請求人が主張するように「桃太郎電鉄」の略称であって,タイトル名でもサブタイトルでもない。そして,キャラクターなどでもないことから,少なくとも当該商品化に関する契約書の記載より,略称である「桃鉄」の表示について使用の許諾を受けていると明文上解釈することはできず,本件商標について使用を許諾したことが証明されていない。
オ 商品化権使用基本契約書等(乙7?10)について
被請求人は,ディーライツ社とタカラトミーアーツ社との商品化権使用基本契約書等(乙7?10)をもって,タカラトミーアーツ社が本件商標の通常使用権者であると主張する。また,被請求人は,「桃鉄」が「桃太郎電鉄」の略称として広く認識されていることをもって,「本件商品化権の許諾」に「桃鉄」を利用(使用)する権利も許諾されていると主張する。
しかしながら,商品化権使用基本契約書(乙7)の第1条において「覚書に定める甲(ディーライツ社)が管理する許諾対象著作物及びその名称を,覚書に定める乙(タカラトミーアーツ社)が製造・販売する許諾商品に使用することを許諾する」とあるが,当該覚書(乙8)には「桃鉄」及び「モモテツ」の記載はなく,本件商標について使用を許諾したことが証明されていない。
(2)「桃太郎電鉄」及び「桃鉄」について
「桃太郎電鉄」の名称は,コンピュータゲームカセットの題号として使用され,広く知られるに至った名称であり,「桃鉄」は,そのコンピュータゲームカセットの題号の略称として需要者を中心に使用されてきた名称である。
このことは,被請求人がウェブサイト「Weblio辞書 実用日本語表現辞典」(乙11)で示すように,「桃太郎電鉄」は,多くの派生商品を含むコンテンツの名称であって,コンピュータゲームカセットのほか,携帯電話機用ゲーム用アプリケーション,パチンコやスロットなどといった多くの派生商品のコンテンツの内容を示す表示として使用されていることより確認できる。
また,被請求人が主張するように,需要者及び取引者においても,特定の商品について「桃太郎電鉄」の名称を使用することはなく,鉄道会社の運営をモチーフにしたボードゲーム形式のゲームの総称として使用されており,コンピュータゲームを始めとするいわゆる映画著作物の題号として,認識・把握されていることが,被請求人が提出した証拠より確認することができる。
(3)著作物の題号と商標の使用について
上記のとおり,「桃太郎電鉄」はコンピュータゲームを始めとするいわゆる映画著作物の題号であり,「桃鉄」はその題号の略称に該当するものであるといえる。
被請求人は,タカラトミーアーツ社のウェブサイトの写し(乙2)などで掲載されている商品の識別表示として本件商標を使用していることを立証する必要があるところ,被請求人が使用を行っていると主張する「桃鉄」の表示は,鉄道会社の運営をモチーフにしたボードゲーム形式のゲームの創作物としての内容を表示する著作物の題号について示したものであって,個別具体的な商品の識別表示として使用されているものではなく,したがって,当該写しに示される「桃鉄とは,……スゴロク型ボードゲームだぞ!!」の記載を始めとする「桃鉄」の記載は,シリーズ商品としての「桃太郎電鉄」の一般的な内容,すなわち鉄道会社の運営をモチーフにしたボードゲーム形式のゲームとしての内容を紹介するものであって,この「桃鉄」の記載が掲載商品の識別標識として使用されているものとはいえない。
以上のように,被請求人がウェブサイト上の辞書等(乙11?20)の証拠において主張するように,「桃太郎電鉄」は,鉄道会社の運営をモチーフにしたボードゲーム形式のゲームを内容とする著作物の題号であって,「桃鉄」はその略称であることは明らかである。
また,需要者において「桃太郎電鉄」及び「桃鉄」の記載が広く知られているとする事実は,本件商標が本件審判の請求に係る指定商品について使用されていることを証明したことにはならない。むしろ,テレビゲームやアニメーションを題材とした,この種商品の取引に当たっては,商品の包装に記載された表示をもって自他商品の識別が行われるというべきであり,タカラトミーアーツ社のウェブサイトの写し(乙2)で示される「桃鉄」の記載により,自他商品識別機能を有する本件商標の使用を立証したものとはいえない。
(4)まとめ
以上のとおり,被請求人は,本件商標と社会通念上同一の商標を,要証期間内に,本件審判の請求に係る指定商品のいずれかについて,商標権者又は使用権者が使用していたことを立証するには至っていない。

第3 被請求人の主張
被請求人は,結論同旨の審決を求めると答弁し,その理由を要旨以下のように述べ,証拠方法として乙第1号証ないし乙第20号証(枝番を含む。)を提出した。
1 「桃鉄」について
「桃鉄」は,著名なゲームシリーズ「桃太郎電鉄」の略称として,広く知られている。すなわち,ゲームシリーズ「桃太郎電鉄」は,1988年(昭和63年)に任天堂ファミリーコンピュータ用ゲームカセットとして第1作目が発売されて以来,現在に至るまで,ゲームソフトやゲームアプリ等に多数展開され,およそ30年という長期にわたり人気を誇り続ける大ヒット作品である。第1作目のゲームカセット発売時には,既に「桃鉄(ももてつ)」の名称が使用されており(乙4),「桃鉄」は,「桃太郎電鉄」の名称とともに長年にわたり使用されてきた商標である。そして,その結果,商標権者,通常使用権者のみならず,商品の需要者の間でも「桃太郎電鉄」を指し示すものとして,「桃鉄」と表記したり,「モモテツ」と称呼したりして,広く使用されている(乙11?20)。
2 使用の事実
(1)タカラトミーアーツ社のウェブサイトの写し(乙2)には,ボードゲームに「桃鉄」が使用されている。
当該写しには,「3 桃鉄コマ」,「桃鉄とは,プレイヤーが『電鉄会社』の社長となって各地の物件を買い集め,稼いだ資金を競う簡単スゴロク型ボードゲームだぞ!!カードを使ったりして,ゲームを有利にすすめよう!」,「いつもの桃鉄モード」,「桃鉄ファン」,「『桃鉄』は4月からスタートです!!」,「2014年4月1日以降ご購入の際は消費税8%で算出された価格になります。」及び「株式会社タカラトミーアーツCOPYRIGHT2016 T-ARTS」との記載があり,少なくとも2014年(平成26年)4月1日前後から当該ホームページを印刷した2016年(同28年)12月21日までタカラトミーアーツ社の商品として継続的に販売されていたことは明らかである。
(2)Amazonの商品販売ページの写し(乙3の1)は,タカラトミーアーツ社のウェブサイトの写し(乙2)で示したタカラトミーアーツ社の商品の販売ページである。Amazonの商品販売ページの写し(乙3の1)の第1頁中段に「Amazon.co.jpでの取り扱い開始日 2012/4/18」との記載があり,少なくとも同日より当該写しを印刷した2016年(平成28年)12月21日まで継続的に販売されていたことが明らかである。また,当該印刷日時点でも複数の出品者から新品が販売されている(乙3の2)。
当該写しの「トップカスタマーレビュー」,「最近のカスタマーレビュー」の欄には,同商品を「桃鉄」と記載している書き込みが数多く存在しており,多くの顧客が同商品を「桃鉄」として広く認識していることがわかる。
そして,当該写しの第1頁上段の左側にある画像の上から5番目の画像を拡大したものには,「桃鉄」と「ももてつ」とが併記されている(乙3の3)。
3 本件商標の通常使用権者について
旧商標権者,ディーライツ社及び外2社との間で交わされた「桃太郎電鉄」の商品化に関する契約書(乙5),ディーライツ社とタカラトミーアーツ社との間で交わされた商品化権使用基本契約書(乙7,8),現商標権者とディーライツ社他2社との間で交わされた当該契約書に関する覚書(乙6)により,現商標権者はタカラトミーアーツ社に対し,本件商標の使用を許諾していた。
なお,現商標権者は,平成24年に旧商標権者を吸収合併しており,当該吸収合併により桃太郎電鉄に関する一切の権利を承継している。
ディーライツ社とタカラトミーアーツ社との間で交わされた契約期間延長に関する覚書(乙9,10)により,ディーライツ社がタカラトミーアーツ社に対し本件商標の使用について再許諾していた。
以上より,タカラトミーアーツ社が本件商標の通常使用権者であったことは明らかである。なお,「桃鉄」が「桃太郎電鉄」の略称として広く認識され,使用されていることは周知の事実であるから,「本件商品化権の許諾」には,「本件著作物」たる「『桃太郎電鉄』シリーズ及びこれを構成するタイトル(ロゴを含む),サブタイトル」等に「認められる」商標として,「桃鉄」を利用(使用)する権利も許諾されていることは明らかである。
4 まとめ
以上のとおり,本件商標は,本件審判の請求に係る指定商品中「すごろく」について,要証期間内に,日本国内において本件商標の通常使用権者により使用されていたものであることが立証されている。

第4 当審の判断
1 事実認定
証拠及び被請求人の主張によれば,以下の事実が認められる。
(1)「桃鉄」の名称について
「桃鉄」とは,旧商標権者が開発,販売した日本全国の鉄道駅をマスとしたすごろく風の家庭用テレビゲーム機用のソフトウェアの名称「桃太郎電鉄」の略称であって,「モモテツ」と称呼される(乙11?15)。
(2)「桃鉄」の文字の使用について
タカラトミーアーツ社のウェブサイトの写し(乙2。印刷日は平成28年12月21日)には,「桃太郎電鉄ボードゲーム 大どんでん返しの巻」(「桃太郎電鉄ボードゲーム」及び「大どんでん返しの巻」の各文字は上下二段に書されており,また,上段の「桃太郎電鉄ボードゲーム」の文字は,赤字による「桃太郎電鉄」部分が,青字による「ボードゲーム」部分よりも大きく書され,かつ,「桃」,「太」,「郎」,「電」及び「鉄」の各漢字には,それぞれ,「もも」,「た」,「ろう」,「でん」及び「てつ」のルビが付されている。)の見出しの下,第2頁には「桃鉄とは,プレイヤーが『電鉄会社』の社長となって各地の物件を買い集め,稼いだ資金を競う簡単スゴロク型ボードゲームだぞ!!」の記載,及び第1頁には当該ボードゲームの価格の記載,並びに,当該ボードゲームの箱,すごろく風のゲーム盤,サイコロ及び取扱説明書等の写真が掲載されている(以下,当該スゴロク(すごろく)型ボードゲームに係る商品を「本件使用商品」という。)。また,第4頁の下部には,「『価格』は,すべてメーカー希望小売価格です。税別記載のない価格は,消費税5%を含む価格ですので,2014年(平成26年)4月1日以降ご購入の際は消費税8%で算出された価格になります。」の記載がある。
(3)Amazonのウェブサイトの写し(乙3の1。印刷日は平成28年12月21日)の第1頁には,本件使用商品について,その取扱い開始日が2012年(平成24年)4月18日及び発売日が同年7月26日と記載されている。
(4)旧・現商標権者等,ディーライツ社及びタカラトミーアーツ社の間に係る契約について
ア 「桃太郎電鉄」の商品化に関する契約書(乙5。以下「本件契約書1」という。)は,旧商標権者及び件外2者(以下「旧商標権者ら」という。)がディーライツ社に対し,ゲームソフトウェア「桃太郎電鉄」に係る著作物等を用いて物品,商品及びサービス等へ利用する権利を第三者に許諾する業務を委託するものであって,平成22年10月1日に締結された。本件契約書1の第1条には,用語に関する定義があり,「本件著作物」の項に「『桃太郎電鉄』シリーズ及びこれを構成するタイトル(ロゴを含む。),サブタイトル,・・・効果音等」との記載,「本件商品」の項に「本件著作物及びこれに認められる意匠,商標等をライセンシーが物品,商品,サービス等へ利用し制作したものをいうものとする。」との記載,及び「本件商品化権」の項に「本件著作物を使用し本件商品を制作する権利をいうものとする。」との記載がある。
また,本件契約書1の第2条第2項には,「前条の定めにも関わらず,丁(審決注:ディーライツ社)は,次の各号に定める業務については,甲,乙及び丙(審決注:旧商標権者ら)による当事者全員からの書面による許諾がない限り,これを実施することができない。」と規定され,例えば,同項第4号には,「第三者に対し,コンピュータゲームソフトウェア商品及びその販売促進物品につき,本件商品化権の使用許諾をすること」と記載がある。
さらに,本件契約書1の第2条第3項には,「丁(審決注:ディーライツ社)は,甲乙丙(審決注:旧商標権者ら)の事前の承認を取得せずに本件著作物の商品化権をライセンシー以外の第三者に,許諾してはならないものとする。」と規定されている。
なお,本件契約書1の有効期間は,当該契約締結日より1年間とされ,その後も契約当事者が更新拒絶の意思表示をしない場合には,自動的に1年間更新を繰り返す旨の記載がある。
イ 平成27年10月1日付け「覚書」(乙6。以下「本件契約書2」という。)によれば,現商標権者は,同24年3月1日付けで旧商標権者を吸収合併し,旧商標権者の契約上の地位を承継したことが認められる。そして,本件契約書2には,「第1条 KDE(審決注:現商標権者),・・・およびディーライツ(審決注:ディーライツ社)は,ディーライツが行った原契約(審決注:本件契約書1)第12条の定めに基づく更新拒絶の意思表示に関わらず,平成27年10月1日以降も原契約を引き続き有効に存続させることに合意する。」,「第2条 ディーライツは,原契約の当事者としての地位および権利,義務の一切を,平成27年10月1日(以下「承継日」という)をもってKDEに承継するものとし,・・・はこれを承諾する。」及び「第3条 前項に定める原契約の承継に伴い,承継日以降,原契約に記載されている『丁(審決注:ディーライツ社)』を『甲(審決注:現商標権者)』と読み替える。」との記載がある。
そうすると,現商標権者が旧商標権者を吸収合併し,旧商標権者の契約上の地位を承継した平成24年3月1日以降,本件契約書1は,現商標権者及び件外2者(以下「現商標権者ら」という。)とディーライツ社の間の契約となり,その状態は,同27年10月1日に現商標権者が本件契約書1に係るディーライツ社の契約上の地位を承継するまで有効に存続していたものと認められるから,現商標権者らとディーライツ社を契約当事者とする本件契約書1に係る契約の有効期間は,同24年3月1日から同27年9月30日までであったといえる。
ウ 商品化権使用基本契約書(乙7)及び覚書(乙8)(以下,これらをまとめて「本件契約書3」という。)は,ディーライツ社がタカラトミーアーツ社に対し,許諾対象著作物「桃太郎電鉄に登場するキャラクター」及びその名称を,タカラトミーアーツ社が製造・販売する商品「桃太郎電鉄ボードゲーム『大どんでん返しの巻』」(本件使用商品)に使用することを許諾するものであって,平成24年4月1日に締結された。なお,本件契約書3の有効期間は,平成26年9月30日まで延長された(乙9,10)。
2 判断
(1)上記1(2)及び(3)認定の事実によれば,タカラトミーアーツ社は,平成26年4月1日に施行された消費税の改正前である同年3月31日以前から同28年12月21日までの間,自社ウェブサイトにおいて,本件使用商品の販売に係る広告を掲載していたものと認められる。
そして,本件使用商品に係る上記広告において,「桃鉄とは,プレイヤーが『電鉄会社』の社長となって各地の物件を買い集め,稼いだ資金を競う簡単スゴロク型ボードゲームだぞ!!」と記載された説明文における冒頭の「桃鉄」の文字部分(以下「本件使用標章」という。)は,その記載内容からして本件使用商品であるすごろく型ボードゲームを指称している語であることは明らかであって,本件使用標章は,本件使用商品の出所識別標識として認識されるというべきである。
したがって,タカラトミーアーツ社は,平成26年3月31日以前から同28年12月21日まで自社ウェブサイトにおいて,本件使用商品に関する広告を内容とする情報に,本件使用標章を使用していたものと認められる。
(2)本件商標と本件使用標章の社会通念上の同一性について
ア 上記1(1)認定の事実によれば,家庭用テレビゲーム機用のソフトウェア「桃太郎電鉄」は,日本全国の鉄道駅をマスとしたすごろくを内容とするゲームであり,そして,請求人も認めるとおり,「桃鉄」の名称は,「モモテツ」と称呼され,ゲームソフトウェア『桃太郎電鉄』の略称として,ゲームソフトウェアの需要者において,それ相応に広く知られていたといえる。
他方,本件使用商品は,上記1(2)によれば,プレイヤーが「電鉄会社」の社長となって各地の物件を買い集め,稼いだ資金を競うすごろく型ボードゲームである。
そうすると,本件使用商品と家庭用テレビゲーム機用のソフトウェア「桃太郎電鉄」とは,両者の需要者が共にゲームを行う一般需要者であって,しかも,両者が共に鉄道を題材にしたすごろくを内容とするものであるから,「桃鉄」の名称は,ゲームソフトウェア「桃太郎電鉄」の略称として,本件使用商品の需要者においても,それ相応に広く知られていたというのが相当である。
イ 本件商標は,上記第1のとおり,「桃鉄」の漢字と「モモテツ」の片仮名とを上下二段に書してなるところ,その構成中,下段の片仮名は,上段の漢字の読みを特定したものと無理なく認識できるから,本件商標からは「モモテツ」の称呼のみが生じるものである。そして,「桃鉄」は,上記アのとおり,ゲームソフトウェア「桃太郎電鉄」の略称として広く知られている語であると認められるから,本件商標からは「ゲームソフトウェア『桃太郎電鉄』」の観念が生じるものと認められる。
一方,本件使用標章は,「桃鉄」の漢字を横書きしてなるものであるところ,上記アのとおり,「桃鉄」は,ゲームソフトウェア「桃太郎電鉄」の略称として,本件審判の請求に係る指定商品中「すごろく」の分野においても,それ相応に広く知られている語であると認められるから,「モモテツ」の称呼及び「ゲームソフトウェア『桃太郎電鉄』」の観念が生じるものと認められる。
そうすると,本件使用標章は,本件商標とは,「桃鉄」の漢字部分を共通にし,同一の称呼及び観念が生じるものであるから,社会通念上同一の商標であると認められる。
(3)本件使用商品について
本件使用商品は,上記1(2)のとおり,すごろく型ボードゲームであるから,本件審判の請求に係る指定商品中の第28類「すごろく」に含まれるものと認められる。
(4)使用時期について
上記1(2)のとおり,タカラトミーアーツ社のウェブサイト(乙2)における本件使用商品に係る広告は,平成26年3月31日以前から同28年12月21日までされていたものと認められるから,要証期間内においても当該ウェブサイト上に掲載されていたといえる。
(5)使用者について
ア タカラトミーアーツ社は,上記(4)のとおり,要証期間内に本件使用商品に係る上記広告をした。
イ 現商標権者らとディーライツ社の契約について
(ア)現商標権者らとディーライツ社の契約の契約期間について
本件契約書1は,上記1(4)イのとおり,平成24年3月1日から同27年9月30日までの間は,現商標権者らとディーライツ社の間の契約であったといえる。
(イ)現商標権者らとディーライツ社の契約において,「桃鉄」の略称が含まれることについて
本件契約書1によれば,ディーライツ社は現商標権者らから,ゲームソフトウェア「桃太郎電鉄」に係る著作物等を用いて物品,商品及びサービス等へ利用する権利を第三者に許諾する業務につき委託を受けていたところ,本件契約書1の第1条の「本件著作物」の項には,「『桃太郎電鉄』シリーズ及びこれを構成するタイトル(ロゴを含む。),サブタイトル,・・・効果音等」との記載,「本件商品」の項には,「本件著作物及びこれに認められる意匠,商標等をライセンシーが物品,商品,サービス等へ利用し,制作したものをいうものとする。」との記載,及び「本件商品化権」の項には,「本件著作物を使用し本件商品を制作する権利をいうものとする。」との記載があること,及び「桃鉄」は,上記(2)アのとおり,ゲームソフトウェア「桃太郎電鉄」の略称として広く知られている語であることが認められることからすると,現商標権者は,ディーライツ社に対し,本件契約書1をもって,ゲームソフトウェア「桃太郎電鉄」に係る著作物に認められる商標として,「桃太郎電鉄」の略称である「桃鉄(モモテツ)」に関しても,これを使用した商品等を制作することについて,第三者に許諾する業務を委託していたものと解される。
(ウ)請求人は,現商標権者らとディーライツ社の契約について,本件契約書1の規定によれば,ディーライツ社は,現商標権者らの承諾がなければ,タカラトミーアーツ社に対して,再許諾の権利を付与することはできないところ,ディーライツ社が,当該再許諾する権利を,現商標権者らから承諾を受けている事実を証明していない旨主張する。
しかしながら,本件契約書1の第2条第3項には,「丁(審決注:ディーライツ社)は,甲乙丙(審決注:旧商標権者ら)の事前の承認を取得せずに本件著作物の商品化権をライセンシー以外の第三者に,許諾してはならないものとする。」と規定されていることから,当該条項により,ディーライツ社がタカラトミーアーツ社と商品化契約を締結するに当たっては,現商標権者らの事前承認を得る必要があるとしても,本件契約書1の第2条第2項各号に規定されている特定の業務(例:第三者に対し,コンピュータゲームソフトウェア商品及びその販売促進物品につき,本件商品化権の使用許諾をすること)とは異なり,書面による許諾までは求められていないこと,タカラトミーアーツ社が発売した本件使用商品については,現商標権者らが何らかの異議を唱えていることをうかがわせる証拠もないことからすると,ディーライツ社とタカラトミーアーツ社における平成24年4月1日の「商品化権使用基本契約書」(乙7)は,現商標権者らの事前の承認を口頭等によって得ていたものと推認できる。
したがって,上記請求人の主張は,採用できない。
ウ ディーライツ社とタカラトミーアーツ社の契約について
本件契約書3によれば,ディーライツ社は,平成24年4月1日から同26年9月30日までの間,タカラトミーアーツ社に対し,許諾対象著作物「桃太郎電鉄に登場するキャラクター」及びその名称を,タカラトミーアーツ社が製造・販売する商品「桃太郎電鉄ボードゲーム『大どんでん返しの巻』」(本件使用商品)に使用することを許諾した(乙7?10)。そして,上記イ(イ)のとおり,現商標権者は,本件契約書1をもってディーライツ社に,「桃鉄(モモテツ)」の略称を含むゲームソフトウェア「桃太郎電鉄」に係る商標等を使用した商品等を制作することについて,第三者に許諾する業務を委託したと解されるから,本件契約書1に基づき締結された本件契約書3における本件使用商品についても,「桃鉄(モモテツ)」に関する商標の使用許諾が含まれるものと解すべきである。
エ 現商標権者とタカラトミーアーツ社の関係について
上記ウのとおり,ディーライツ社は,本件契約書1に基づき,本件契約書3をもってタカラトミーアーツ社に対し,平成24年4月1日から同26年9月30日までの間,「桃鉄(モモテツ)」に関する商標についても,本件使用商品に使用することを許諾したものと認められる。
そうすると,現商標権者は,本件契約書1に基づき締結された本件契約書3における本件使用商品については,「桃鉄」の漢字と「モモテツ」の片仮名とからなる本件商標についても,当然,その使用を許諾していたものと解される。
したがって,タカラトミーアーツ社は,少なくとも要証期間内である平成25年11月9日から同26年9月30日までの間は,本件商標の通常使用権者であったということができる。
(6)小括
以上のとおり,本件商標の通常使用権者であるタカラトミーアーツ社は,要証期間内に日本国内向けの自社ウェブサイトにおいて,本件審判の請求に係る指定商品中の第28類「すごろく」に含まれる本件使用商品(すごろく型ボードゲーム)に関する広告を内容とする情報に,本件商標と社会通念上同一と認められる商標を使用していたものと認められる。
そして,通常使用権者による上記行為は,商標法第2条第3項第8号にいう「商品に関する広告を内容とする情報に標章を付して電磁的方法により提供する行為」に該当する。
3 請求人の主張について
(1)請求人は,本件使用商品における商標は,「桃太郎電鉄ボードゲーム大どんでん返しの巻」であるから,本件使用商品の説明文中に他の文字と大差のない大きさの文字で表示されている本件使用標章は,本件使用商品の識別標識としての商標ではない旨主張する。
しかしながら,本件使用商品において,「桃太郎電鉄ボードゲーム大どんでん返しの巻」が識別標識としての商標として使用されているとしても,本件使用標章である「桃鉄」の文字は,上記2のとおり,本件使用商品に係る上記広告において,その記載内容からして本件使用商品であるすごろく型ボードゲームを指称している語として使用されていることは明らかであるから,たとえ,他の文字と大差のない大きさの文字で表示されているとしても,本件使用商品の識別標識としての商標として使用されているものと認められる。
(2)請求人は,「桃太郎電鉄」は,コンピュータゲームを始めとするいわゆる映画著作物の題号であり,「桃鉄」はその題号の略称に該当する旨主張する。
しかしながら,タカラトミーアーツ社のウェブサイト(乙2)において,本件使用標章は,上記2のとおり,本件使用商品の識別標識として使用されている商標であると認められる。
(3)以上のとおり,請求人の主張は,いずれも採用することができない。
4 まとめ
以上によれば,被請求人は,要証期間内に日本国内において,本件商標の通常使用権者が,本件審判の請求に係る指定商品中の第28類「すごろく」に含まれる本件使用商品(すごろく型ボードゲーム)について,本件商標(社会通念上同一と認められる商標を含む。)の使用をしていることを証明したというべきである。
したがって,本件商標の登録は,その請求に係る指定商品について,商標法第50条の規定により取り消すべきではない。
よって,結論のとおり審決する。
審理終結日 2018-12-25 
結審通知日 2018-12-27 
審決日 2019-03-15 
出願番号 商願2003-100100(T2003-100100) 
審決分類 T 1 32・ 1- Y (Y28)
最終処分 不成立  
特許庁審判長 早川 文宏
特許庁審判官 田村 正明
平澤 芳行
登録日 2004-10-22 
登録番号 商標登録第4811454号(T4811454) 
商標の称呼 モモテツ、トーテツ 
代理人 舩越 輝 
代理人 北口 貴大 
代理人 横川 聡子 
代理人 永岡 愛 
代理人 城山 康文 

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