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審決分類 審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) W42
管理番号 1348829 
審判番号 取消2016-300709 
総通号数 231 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2019-03-29 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2016-10-12 
確定日 2019-02-04 
事件の表示 上記当事者間の登録第5621414号商標の登録取消審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 登録第5621414号商標の指定役務中,第42類「インターネットにおけるブログのためのサーバーの記憶領域の貸与,ウェブログ上の電子掲示板用サーバの記憶領域の貸与及びこれに関する情報の提供,インターネットホームページを閲覧するための電子計算機の貸与,インターネット上で利用者が交流するためのソーシャルネットワーキング用サーバコンピュータの記憶領域の貸与,インターネット等の通信ネットワークにおいて利用可能な記憶装置の記憶領域の貸与」についての商標登録を取り消す。 審判費用は,被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5621414号商標(以下「本件商標」という。)は,「ブロマガ」の片仮名と「BlogMaga」の欧文字を上下二段に書してなり,平成24年9月13日に登録出願,第42類「インターネット等の通信ネットワークにおけるホームページの設計・作成又は保守,インターネット等の通信ネットワークにおけるホームページの設計・作成又は保守に関するコンサルティング,インターネット等の通信ネットワークにおけるホームページの設計・作成又は保守に関する情報の提供,インターネット等の通信ネットワークにおける情報・サイト検索用の検索エンジンの提供,インターネット等の通信ネットワークを利用するためのコンピュータシステムの設計・作成又は保守に関するコンサルティング,インターネット等の通信ネットワークを利用するプログラムの設計・作成又は保守,コンピュータにおけるウィルスの検出・排除及び感染の防止・パスワードに基づくインターネット情報及びオンライン情報の盗用の防止並びにコンピュータにおけるハッカーの侵入の防止等の安全確保のためのコンピュータプログラムによる監視,インターネットサイトにおけるブログ検索用の検索エンジンの提供,インターネットにおけるブログのためのサーバーの記憶領域の貸与,ウェブログの運用管理のための電子計算機用プログラムの提供,ウェブログ上の電子掲示板用サーバの記憶領域の貸与及びこれに関する情報の提供,オンラインによるブログ作成用コンピュータプログラムの提供又はこれに関する情報の提供,インターネットホームページを閲覧するための電子計算機の貸与,インターネット上で利用者が交流するためのソーシャルネットワーキング用サーバコンピュータの記憶領域の貸与,インターネット上の情報を閲覧するためのコンピュータプログラムの提供,インターネット等の通信ネットワークにおいて利用可能な記憶装置の記憶領域の貸与」を指定役務として,同25年10月11日に設定登録され,その後,商標権の一部無効審判が請求された結果,同28年7月11日に上記指定役務中「ウェブログの運用管理のための電子計算機用プログラムの提供,オンラインによるブログ作成用コンピュータプログラムの提供,インターネット上の情報を閲覧するためのコンピュータプログラムの提供」についての登録を無効とする旨の審決の確定登録がされたものである。
そして,本件審判の請求の登録日は,平成28年10月21日である。

第2 請求人の主張
請求人は,結論同旨の審決を求め,その理由を審判請求書,弁駁書及び口頭審理陳述要領書において,その要旨を次のように述べ,証拠方法として,甲第1号証ないし甲第5号証を提出した。
1 請求の理由
本件商標は,その指定役務中,「インターネットにおけるブログのためのサーバーの記憶領域の貸与,ウェブログ上の電子掲示板用サーバの記憶領域の貸与及びこれに関する情報の提供,インターネットホームページを閲覧するための電子計算機の貸与,インターネット上で利用者が交流するためのソーシャルネットワーキング用サーバコンピュータの記憶領域の貸与,インターネット等の通信ネットワークにおいて利用可能な記憶装置の記憶領域の貸与」(以下「取消請求役務」という。)について,継続して3年以上日本国内において使用した事実が存しないから,その登録は,商標法第50条第1項により取り消されるべきものである。
2 弁駁の理由
(1)被請求人の提出に係る証拠について
ア 乙第3号証について
乙第3号証は,被請求人によれば,サービスの流れを説明するための資料とされ,被請求人の内部資料のようである。被請求人は,本件商標の予告登録日前3年以内(以下「要証期間内」という。)の使用を立証する証拠として,乙第3号証を提出するものではないが,念のため主張すれば,同乙号証をもって要証期間内における本件商標の使用の事実が立証されたということはできない。
(ア)要証期間における証拠ではない
同乙号証中には情報が掲載された日付に関する情報が一切表示されておらず,当該資料が何時に作成されたのかを確認することはできないから,同乙号証は要証期間内における本件商標の使用の事実の証拠とはならない。
(イ)本件商標の使用の事実が確認できない
同乙号証中には,本件商標がその指定役務に使用されていることを示す記載はおろか,本件商標そのものの記載すら見当たらない。したがって,同乙号証は,本件商標がその指定役務について使用されていたことを証するものであるとはいえない。
以上のとおり,乙第3号証をもって,要証期間内に本件商標がその商標権者(被請求人),専用使用権者又は通常使用権者によって使用された事実が立証されたということはできない。
イ 乙第4号証について
乙第4号証は,本件商標を使用したサービスの内容を説明したウェブサイトのマニュアルとのことである。しかしながら,同乙号証をもって要証期間内における本件商標の使用の事実が立証されたということはできない。
(ア)要証期間における証拠ではない
乙第4号証のウェブページの右下には,印刷日と推察される「2017/01/13」と日付の記載があるものの,該証拠が要証期間内に閲覧可能であったウェブページであるか否かは何ら立証されていない。よって,同乙号証は要証期間内における本件商標の使用の事実の証拠とはならない。
(イ)本件商標の使用の事実が確認できない
乙第4号証中には,「FC2ブログ マニュアル」の文字が太い文字で顕著に記載されているほか,「ブロマガ(R)(○にRの文字,以下,同じ。)(ブログマガジン)って何?」等の記載がある。しかしながら,使用に係る「ブロマガ」の片仮名は,本件商標と社会通念上同一の商標ということができない。
(ウ)指定役務についての使用の事実が確認できない
被請求人が本件商標を使用していると主張する指定役務は「サーバーの記憶領域の貸与」等であるところ,乙第4号証においては「ブロマガとは雑誌の袋とじのようにブログ記事に価格を設定し,料金をお支払いただく訪問者だけが閲覧できる機能です。」と記載されているのみであり,上記指定役務に係る「サーバーの記憶領域の貸与」等に使用している事実は確認できない。
以上のとおり,乙第4号証をもって,要証期間内に本件商標がその商標権者(被請求人),専用使用権者又は通常使用権者によって使用された事実が立証されたということはできない。
ウ 乙第5号証について
乙第5号証は,インターネットアーカイブサイトにおける,本件商標を使用したサービスの内容を説明したウェブサイトのマニュアルとのことである。しかしながら,同乙号証をもって要証期間内における本件商標の使用の事実が立証されたということはできない。
(ア)本件商標の使用の事実が確認できない
乙第5号証中には,「FC2ブログ マニュアル」の文字が太い文字で顕著に記載されているほか,「ブロマガ(R)(ブログマガジン)って何?」等の記載がある。しかしながら,使用に係る「ブロマガ」の片仮名は,本件商標と社会通念上同一の商標ということができない。
(イ)指定役務についての使用の事実が確認できない
被請求人が本件商標を使用していると主張する指定役務は「サーバーの記憶領域の貸与」等であるところ,乙第5号証においては「ブロマガとは雑誌の袋とじのようにブログ記事に価格を設定し,料金をお支払いただく訪問者だけが閲覧できる機能です。」と記載されているのみであり,上記指定役務に係る「サーバーの記憶領域の貸与」等に使用している事実は確認できない。
したがって,乙第5号証は,本件商標が指定役務について使用されていたことを証するものであるとはいえないので,同乙号証をもって,要証期間内に本件商標がその商標権者(被請求人),専用使用権者又は通常使用権者によって使用された事実が立証されたということはできない。
エ 乙第6号証について
乙第6号証は,ブログのランキングを記載したウェブサイトとのことである。しかしながら,同乙号証をもって要証期間内における本件商標の使用の事実が立証されたということはできない。
(ア)要証期間内における証拠ではない
乙第6号証のウェブページの右下には,印刷日と推察される「2017/01/13」と日付の記載があるものの,該証拠が要証期間内に閲覧可能であったウェブページであるか否かは何ら立証されていない。よって,同乙号証は要証期間内における本件商標の使用の事実の証拠とはならない。
(イ)本件商標の使用の事実が確認できない
乙第6号証中には,「FC2 ブロマガ」の文字が太い文字で顕著に記載されているほか,「ブログランキング」の記載がある。しかしながら,使用に係る「ブロマガ」の片仮名は,本件商標と社会通念上同一の商標ということができない。
(ウ)指定役務についての使用の事実が確認できない
被請求人が本件商標を使用していると主張する指定役務は「サーバーの記憶領域の貸与」等であるところ,乙第6号証においては被請求人がウェブサイトを通じて配信するブログ記事の人気ランキングを内容とする情報の提供を行っているにすぎず,上記指定役務に係る「サーバーの記憶領域の貸与」等に使用している事実は確認できない。
以上のとおり,乙第6号証をもって,要証期間内に本件商標がその商標権者(被請求人),専用使用権者又は通常使用権者によって使用された事実が立証されたということはできない。
オ 乙第7号証について
乙第7号証は,インターネットアーカイブサイトにおける,ブログのランキングを記載したウェブサイトとのことである。しかしながら,同乙号証をもって要証期間内における本件商標の使用の事実が立証されたということはできない。
(ア)本件商標の使用の事実が確認できない
乙第7号証中には,「FC2 ブロマガ」の文字が太い文字で顕著に記載されているほか,「ブログランキング」等の記載がある。しかしながら,使用に係る「ブロマガ」の片仮名は,本件商標と社会通念上同一の商標ということができない。
(イ)指定役務についての使用の事実が確認できない
被請求人が本件商標を使用していると主張する指定役務は「サーバーの記憶領域の貸与」等であるところ,乙第7号証においては被請求人がウェブサイトを通じて配信するブログ記事の人気ランキングを内容とする情報の提供を行っているにすぎず,上記指定役務に係る「サーバーの記憶領域の貸与」等に使用している事実は確認できない。
したがって,乙第7号証は,本件商標の指定役務について使用されていたことを証するものであるとはいえないので,同乙号証をもって,要証期間内に本件商標がその商標権者(被請求人),専用使用権者又は通常使用権者によって使用された事実が立証されたということはできない。
カ 乙第8号証について
乙第8号証は,アップロードされている動画の一例とのことである。しかしながら,同乙号証をもって要証期間内における本件商標の使用の事実が立証されたということはできない。
(ア)要証期間内における証拠ではない
同乙号証のウェブページの右下には,印刷日と推察される「2017/01/13」と日付の記載があるものの,該証拠が要証期間内に閲覧可能であったウェブページであるか否かは何ら立証されていない。よって,同乙号証は要証期間内における本件商標の使用の事実の証拠とはならない。
(イ)指定役務についての使用の事実が確認できない
乙第8号証に係るウェブページは「FC2 Video」という標題からも明らかなとおり,動画の提供を行うサイトであり,この点,被請求人も乙第8号証について「アップロードされている動画の一例」としている。被請求人が本件商標を使用していると主張する指定役務は「サーバーの記憶領域の貸与」等であるところ,同乙号証においては被請求人が「ウェブサイトを通じた動画の提供」に関する役務を行っているにすぎず,上記指定役務に係る「サーバーの記憶領域の貸与」等に使用している事実は確認できない。
(ウ)日本の需要者を対象として,日本国内で取引がなされた事実を推認できない
乙第8号証中には,日本語の記載が散見されるものの,ウェブページ上の基本構成をなす部分は,日本人には馴染みのない外国語(ポルトガル語)で記載されており,また同ウェブページ上に掲載されているバナー広告においても同様にすべての文字部分が,日本人には直ちにその意味を理解することができない外国語(ポルトガル語)で記載されている。
そこで,請求人において同乙号証に係るウェブページにアクセスしたところ,同乙号証にも記載されている,サイトの右上の「Language」のボタンを開くとプルダウンメニューにおいて「Portugues(ポルトガル語)」(eの上に「アクサン・テギュ」の記号あり。)を含む複数の言語が用意されていることが判明した(甲3)。そして,同サイトの上記プルダウンメニューで「日本語」を選択すると,日本語のウェブサイト(甲4)ヘリンクすることができ,日本向けウェブサイトが別途存在することが明らかとなった。他方,日本語版のウェブサイトにはポルトガル語版のような「Language」のボタンは存在せず,そこからは,ポルトガル語版のウェブサイトヘアクセスすることができない。よって,日本の需要者が同乙号証に係るウェブサイトにアクセスすることは困難である。また,同サイトはJPドメインでもなく,サーバーの所在地も不明である。
そうすると,同乙号証に係るポルトガル語版のウェブページは日本の需要者を対象として提供されているものではないことは明らかであり,かつ,当該ウェブページを管理するサーバーの所在地も不明であり,JPドメインでもない。よって,このウェブページをもって日本の需要者を顧客対象として日本国内において何らかの役務提供行為が行われていたと想定することは困難というべきである。
以上のとおり,乙第8号証をもって,要証期間内に本件商標がその商標権者(被請求人),専用使用権者又は通常使用権者によって使用された事実が立証されたということはできない。
キ 乙第9号証について
乙第9号証は,インターネットアーカイブサイトにおける,アップロードされている動画の一例とのことである。 しかしながら,乙第8号証をもって要証期間内における本件商標の使用の事実が立証されたということはできない。
(ア)指定役務についての使用の事実が確認できない
乙第9号証に係るウェブページは「FC2 Video」という標題からも明らかなとおり,動画の提供を行うサイトであり,この点,被請求人も乙第8号証について「アップロードされている動画の一例」としている。被請求人が本件商標を使用していると主張する指定役務は「サーバーの記憶領域の貸与」等であるところ,同乙号証においては被請求人が「ウェブサイトを通じた動画の提供」に関する役務を行っているにすぎず,上記指定役務に係る「サーバーの記憶領域の貸与」等に使用している事実は確認できない。
(イ)日本の需要者を対象として,日本国内で取引がなされた事実を推認できない
乙第9号証は,乙第8号証と同様にポルトガル語のページであり,上記で述べたように,このウェブページをもって日本の需要者を顧客対象として日本国内において何らかの役務提供行為が行われていたと想定することはできない。
ク 使用に係る「ブロマガ」の片仮名が,本件商標と社会通念上同一であるかについて
商標法第50条に規定する商標登録の取消審判における「登録商標」には,いわゆる「社会通念上同一の商標」を含むものであるところ,本件商標は,「ブロマガ」の片仮名を上段に,その下段に「BlogMaga」の欧文字を書した二段書きの構成よりなるものである。これに対し,乙第2号証ないし乙第7号証には,「ブロマガ」の片仮名が表示されているものであり,該文字は,本件商標中の「ブロマガ」の片仮名部分と同じであるが,本件商標の下段に配された「BlogMaga」の欧文字部分の使用の事実が存在しないものである。よって,「ブロマガ」の片仮名のみの使用をもってして,本件商標の「書体のみに変更を加えた同一の文字からなる商標」ということはできない。そして,本件商標の構成中の「ブロマガ」の片仮名は,特定の意味を理解させるとはいえない造語というべきものであって,これを欧文宇で表す場合は,「blomaga」と表示するのが一般的といえるものである。
他方,構成中の「BlogMaga」の欧文字も,特定の意味を有しない造語といえるものであって,これを片仮名で表す場合は,「ブログマガ」と表示するのが一般的といえるものである。
そうすれば,本件商標の「ブロマガ」の片仮名と,「BlogMaga」の欧文字とは,同一の称呼及び観念を生ずるものということができず,本件商標からは,その構成各文字に相応して「ブロマガ・ブログマガ」の称呼を生じ,特定の観念を生じないものである。
これに対し,使用に係る「ブロマガ」の片仮名からは,「ブロマガ」の称呼を生じ,特定の観念が生ずるともいえないものである。
したがって,使用に係る「ブロマガ」の片仮名は,本件商標の「平仮名,片仮名及びローマ字の文字を相互に変更するものであって同一の称呼及び観念を生ずる商標」ということができないので,本件商標と社会通念上同一の商標ではない。
ケ 本件商標の使用に係る役務について
乙第4号証ないし乙第9号証によれば,被請求人は,自身の運営するウェブサイトにおいて,ブログ記事や動画等を販売又はダウンロードを伴わない形式で提供しているとみられるものであるが,それらは第9類の「電子出版物,ダウンロード可能な映像ファイル」や第41類の「電子出版物の提供,インターネットを通じた動画の提供」に該当するものであって,当該役務は,被請求人が本件商標を使用していると主張する指定役務「サーバーの記憶領域の貸与」等には該当しない。被請求人の提出した答弁書によれば,「被請求人は,ブログ等の販売(有料での提供)を希望する者が作成したブログ等を,自社の管理するサーバーに記憶し,これを購読することを希望する者に販売するというサービスを行っている」とされる。そして,被請求人は,そのサービス提供の流れとして「ブログ等を作成して販売を希望する者が,その記事を作成してアップロードする」,「そのブログの内容が被請求人の管理するサーバーの記憶領域に保存される」,「購入者がそのブログを購入し,決済を行うことで,記事の内容をサーバーの記憶領域から呼び出すことが可能となり,その購読が可能となる」と説明している。
しかしながら,被請求人が提出する乙第4号証ないし乙第9号証において,ブログ等を保存するための「サーバーの記憶領域の貸与」を行っている事実は見いだせないばかりでなく,その役務を提供するために本件商標を用いている事実は何ら見当たらないものである。また,「そのブログの内容が被請求人の管理するサーバーの記憶領域に保存される」,「購入者がそのブログを購入し,決済を行うことで,記事の内容をサーバーの記憶領域から呼び出すこと」については,乙第3号証において,「ブロマガ購入の内部動作を説明します」と記載されていることからもわかるように,ブログ記事を自社管理のサーバーに保存するのは,あくまでも,ブログ記事の販売や配信をするための「内部動作」にすぎず,被請求人が「ブロマガ」商標を用いて行っている役務は,「ブログ記事等の販売」や「ブログ記事等のウェブサイトを通じたダウンロードを伴わない提供」に他ならない。そもそも,すべてのインターネットを利用するサービスにおいては,データはサーバーの記憶領域に保存されるため,被請求人が主張するように,投稿者が作成したブログ記事等が被請求人の管理するサーバーの記憶領域に保存されることが,「サーバーの記憶領域の貸与」の使用に該当するのであれば,インターネットを利用するほぼすべてのサービスが「サーバーの記憶領域の貸与」を役務として提供することになるが,これは上記指定役務の範囲を不当に拡張するものであって,かかる判断がされた場合には,実務に混乱をきたすことは間違いない。
(2)不使用についての正当な理由は存在しない
被請求人は,本件商標を使用していないことについて正当な理由があることは何ら主張立証していない。
3 口頭審理陳述要領書(平成29年9月8日付け)
(1)使用役務と指定役務の同一性について
被請求人は,同人が本件商標を使用している役務の内容について「ブログ記事等をインターネット上において販売を希望する者の記事等を,サーバーの記憶領域に格納する。一方でこれを購入することを希望する者は,検索機能を通じて自己の欲する情報を見つけ,購入を実行すると,これをサーバーの記憶領域から呼び出し,購入者のパソコン等の画面上に表示する」と説明し,また,金銭の流れについては,被請求人は,記事・動画コンテンツ等の閲覧者から購読料を徴収し,その金額の一部を「システム利用手数料」の名目で自らの取り分として差し引いて,残金をコンテンツ等の投稿者に支払うものであると説明するが,被請求人の上記説明に係る役務の内容は,記事・動画等のコンテンツ作成者がインターネット上で他人に対して閲覧に供する目的を持って投稿した記事・動画等をインターネットユーザーの求めに応じて,ダウンロードが不可能な形式(ユーザーの端末装置に保存ができない形態)において閲覧を可能にする役務であると理解されるものである。このような役務の内容及び被請求人の提出した証拠に鑑みれば,その役務は,まさに「電子出版物の提供」又は「インターネットを通じた動画の提供」の役務表示から理解される役務そのものである。この点については,被請求人自身も,請求人が所有する商標登録第5617331号に対して被請求人が行った無効審判(無効2017-890035)において提出した審判請求書(甲5)において,自らの役務を「ブログを通じて有料コンテンツの購入販売を行うことができるサービス」と称して,そのようなサービスは「電子出版物の提供,通信ネットワークを利用した電子書籍及び電子定期刊行物」に該当すると自認している。また,被請求人は,口頭審理陳述要領書において,被請求人の役務が「サーバーの記憶領域の貸与」に該当すると考える理由について説明するが,請求人が弁駁書でも述べたように,被請求人が提出する乙第4号証ないし乙第9号証において,ブログ等を保存するための「サーバーの記憶領域の貸与」を独立した取引の対象となる役務として提供している事実は客観的に見いだせない。むしろ,ブログ記事を自社管理のサーバーに保存するプロセスは,ブログ記事を配信するプロセスの一部にすぎない。
すなわち,商標法にいう「役務」は,他人のためにする労務又は便益であって,「付随的ではなく独立して市場において取引の対象となり得るものをいう」と解されている。そのため,商品の販売又は役務の提供等に附随して提供される業務は,独立した取引の対象になるものではなく,商標法上の「役務」に該当しない。
被請求人が主張する被請求人の役務提供の流れについてみると,「ブログ記事等をインターネット上において販売を希望する者の記事等を,サーバーの記憶領域に格納する。一方でこれを購入することを希望する者は,検索機能を通じて自己の欲する情報を見つけ,購入を実行すると,これをサーバーの記憶領域から呼び出し,購入者のパソコン等の画面上に表示」するとされる。これは,いいかえれば,『ブログ記事等を販売することを希望する者』は,『ブログ記事等を販売することを希望』してそれらのデータを被請求人に対して投稿し,被請求人は,そのデータを一時的に自己の管理・運営するサーバーコンピュータに格納して,閲覧を希望する一般消費者(インターネット利用者)に対して閲覧可能にするということであるが,被請求人の管理・運営するサーバーの記憶領域に『ブログ記事等を販売することを希望する者』が投稿したブログ記事等のデータを保管することは,これらのデータをインターネットを介してそれらの閲覧を希望する者に対してアクセス可能にするために必要なプロセスにすぎないものであるから,「電子出版物の提供」又は「インターネットを通じた動画の提供」を行うに当たって必然的に伴うものとして,これら第41類の役務の内容に当然含まれるものである。
次に,被請求人のサービスに対する対価も,乙第4号証に「ブロマガとは,雑誌の袋とじのようにブログ記事に価格を設定し,料金をお支払いただいた訪問者だけが閲覧できる機能です。」とあるようにブログ記事等の販売に対して設定されている。なお,被請求人はブログの販売を希望する者に対して,ブログ記事等の販売に際して得た金額の30パーセントを「システム利用料」として受領していると主張する。しかし,「サーバーの記憶領域の貸与」について対価を設定するのであれば,データがサーバーに保存された時点で料金が発生し,データ使用料に応じて課金がなされるのが一般的であるのに対して,上記「システム利用料」はブログ記事等の販売がなされて初めて発生し,販売実績に応じて課金されるものであるから,かかる金銭を受領したとしても,被請求人が独立したサービスとして「サーバーの記憶領域の貸与」等について対価を受領していることにはならない。このような被請求人のサービスの実態や対価の設定方法を鑑みると,被請求人によってブログ記事の販売や配信をするプロセスにおいてブログ記事等のサーバーへの格納が行われているとしても,これは,「電子出版物の提供」又は「インターネットを通じた動画の提供」に付随して提供される業務であって,「サーバーの記憶領域の貸与」等が独立した商取引の対象として提供されているものではないことは明らかである。
なお,この点については,被請求人自身もブログ記事等のデータをサーバーに格納するプロセスについて,「ブロマガ購入の内部動作」であると説明しており(乙3),ブログ記事を自社管理のサーバーに保存するのは,あくまでも,ブログ記事の販売や配信をするための「内部動作」の一部にすぎないことを自認しているものといえる。
してみると,本件商標は,その指定役務には含まれていない「電子出版物の提供」又は「インターネットを通じた動画の提供」に使用されているものであり,その指定役務である「インターネットにおけるブログのためのサーバーの記憶領域の貸与」にも「インターネット等の通信ネットワークにおいて利用可能な記憶装置の記憶領域の貸与」にも使用されていない。
(2)使用に係る「ブロマガ」の片仮名が,本件商標と社会通念上同一であるかについて
本件商標の構成中の「ブロマガ」の片仮名は,特定の意味を理解させるとはいえない造語というべきものであるのに対して,本件商標の他の構成要素である「BlogMaga」の欧文字も,特定の意味を有しない造語といえるものであるところ,その自然な称呼は「ブログマガ」である。よって,本件商標の「ブロマガ」の片仮名と,「BlogMaga」の欧文字とは,同一の称呼及び観念を生ずるものということができず,社会通念上同一の商標とはいえないものである。ところが,被請求人は,本件商標の「BlogMaga」の部分から生ずる称呼は「ブロマガ」であるとして,その理由を述べるところである。
ア 「g」を含む英単語の存在について
「Blog」(ブログ)と「Maga」(マガ)を組み合わせたと思しき造語である「BlogMaga」と被請求人が列挙する既成語は全く関係のない文字構成に係るものであって,何ら事案を共通にするところがない。被請求人は,英単語で,英語における発音の法則によって「g」を発音しない単語を恣意的に列挙し,それらが存在することをもって「BlogMaga」の「g」が「グ」と発音されないというのは論理の飛躍である。「g」を「グ」と発音する英単語は枚挙にいとまがないが,たとえば「Dog(ドック)」,「Morning(モーニング)」,「Long(ロング)」,「Bag(バッグ)」など極めて平易な英単語においても「グ」は発音されることが一般的であるし,そもそも「Blog(ブログ)」という単語自体が「グ」を発音するのであり,これを省略する法則は存在しない。被請求人のサービスの需要者は一般消費者なのであるから,「g」から「グ」の発音を想起すること,「Blog」から「ブログ」という発音を想起することがむしろ通常である。
したがって,「g」を発音しないいくつかの英単語の存在が,「BlogMaga」中の「g」が「グ」と発音されず,「ブロマガ」と称呼されることという被請求人の主張の客観的根拠とはなり得ない。
イ 被請求人の提供する役務が周知であるとの主張について
提出された証拠においても,依然として「BlogMaga」の使用例は一切見当たらないものである。よって,これらの証拠をもってしても,本件商標に接する需要者等が,片仮名で表した「ブロマガ」と,欧文字で表した「BlogMaga」が同一の商標であると理解・把握するものと推定することは極めて困難である。
なお,被請求人が「ブロマガ」を用いて行っている役務については,被請求人による当該役務のシェアや周知性は何ら客観的な証拠で立証されていない。すなわち,役務内容を紹介するとされる他人のウェブサイト(乙12?乙15)は,いずれもサービス開始時とされる2009年1月20日の記事であり,そのようなウェブサイトの存在が僅かに4例確認できるのみである。また,書籍(乙6?乙20)についても,わずかな数が存在するにすぎず,しかも,「ブロマガ」の文字が,数か所みられるとしても本件商標の使用状況を容易に理解できない,小さな表示にとまるものである。両者を合算しても,本件取消審判の要証期間を含む約10年もの期間において,わずか10例しか存在しないことになる。また,これらウェブサイトのニュース記事を実際に見た者の数や書籍の発行部数は不明であるし,これらの証拠以外の例えば,新聞記事(五大紙を含む全国紙)・雑誌記事など,要証期間またはそれ以前に「ブロマガ/BlogMaga」の文字からなる本件商標が被請求人の業務に係る商標として使用され,周知なものとなっている事情を証する証拠は提出されていない。乙第21号証ないし乙第33号証にあっては,本件商標「ブロマガ/BlogMaga」はもちろんのこと,被請求人標章「ブロマガ」の記載は一切みられないし,「ブロマガ」を使用したサービスとの関連性も見当たらないので何ら考慮に値しないものである。
よって,提出に係る証拠からは,本件商標「ブロマガ/BlogMaga」はもちろんのこと,被請求人標章「ブロマガ」が被請求人の役務との関係で周知であるという事実は存在しないし,その他,本件商標の構成中の「BlogMaga」の語が,「ブロマガ」と同一のものとして理解され,称呼・観念されるとすべき事情は何ら示されていない。なお,乙第12号証ないし乙第33号証が,被請求人による本件商標の使用事実を立証するものでないことは明らかである。
ウ 日本語における「略語」の文化の存在について
被請求人は,「エアーコンディショナー」,「パーソナルコンピュータ」等が夫々「エアコン」,「パソコン」等と略称される例があることをもって,本件商標構成中の「BlogMaga」の自然な称呼「ブログマガ」が「ブロマガ」と略称されると主張するものと推察するが,これらの例は,「Blog」(ブログ)と「Maga」(マガ)を組み合わせたと思しき造語である「ブログマガ(BlogMaga)」とは全く関係のない文字構成に係るものであって,本件とは関連性がない。また,一般論として日本語において略語が使用される場合があることと,「BlogMaga」が「ブロマガ」と呼称されるかは全く関連性がなく,被請求人の主張には論理の飛躍がある。これら事実をもって,「BlogMaga」の自然な称呼である「ブログマガ」が略称されて,「ブロマガ」と称呼されることの客観的根拠とはなり得ないことは明白である。被請求人は「『BlogMaga』から生ずる称呼が,語呂の悪い『ブログマガ』ではなく,『ブロマガ』として認識されるようになった」と主張するが,被請求人の都合のよい独自説である。
なお,かかる主張は被請求人自身が「BlogMaga」から「ブログマガ」の称呼が生じることを認めているに他ならない。また,乙第34号証ないし乙第36号証が,被請求人による本件商標の使用事実を立証するものでないことは明らかである。
エ 「BlogMaga」と「ブロマガ」が併記されている例
被請求人は,欧文字「BlogMaga」と片仮名「ブロマガ」が,他人のウェブサイト等において併記して使用されている例(乙37?乙39)を挙げ,その事実をもって,一般需要者にとっては「ブロマガ」と「BlogMaga」が社会通念上同一の商標であると認識されていると考えているようである。
しかしながら,インターネットユーザーである個人によるインターネット上の書き込み等と思しきものであるところ,被請求人の提供する役務との関連性は全く見られないところである。よって,被請求人とその提供する役務とは無関係の個人が,たまたま,欧文字「BlogMaga」と片仮名「ブロマガ」の双方を用いている例が僅かに3例あることをもって,「一般需要者にとっては『ブロマガ』と『BlogMaga』が社会通念上同一の商標であると認識している」という事実の存在など把握することはできない。
なお,乙第37号証ないし乙第39号証が,被請求人による本件商標の使用事実を立証するものでないことは明らかである。
オ 上記アないしエを踏まえた被請求人の主張について
被請求人は,上記アないしエを踏まえ,片仮名「ブロマガ」の使用は本件商標と社会通念上同一の商標の使用であると結論付けるが,前記したように,上記アないしエはいずれも理由がないから,本件商標の構成中の「BlogMaga」が「ブロマガ」と称呼されるような特別な事情は存在しないものである。よって,本件商標の構成中に含まれる「BlogMaga」と被請求人の使用する商標「ブロマガ」は,本件商標の「平仮名,片仮名及びローマ字の文字を相互に変更するものであって同一の称呼及び観念を生ずる商標」ということができないので,本件商標と社会通念上同一の商標ではない。
以上より,本件商標が商標権者,専用使用権者,通常使用権者によって使用された事実は依然として立証されない。
(3)使用行為(商標法第2条第3項各号)について
上記で主張したように,被請求人は本件商標の指定役務である「インターネットにおけるブログのためのサーバーの記憶領域の貸与,インターネット等の通信ネットワークにおいて利用可能な記憶装置の記憶領域の貸与」のいずれにも本件商標を使用していないから,被請求人の主張が,商標法第2条第3項各号のいずれの使用に該当するかを問うまでもないが,念のため反論すれば,被請求人の使用態様として提出された証拠はインターネット上のものに限られることからすれば,同法第2条第3項第7号及び同第8号はともかくとして,同第3号及び同第4号の使用の事実は何ら立証されていない。
(4)提出された新たな証拠について
乙第10号証及び乙第11号証は,被請求人によれば,「ブログの販売を希望する者が,その販売に際して得た金額の内の30パーセントを『システム利用料』として,被請求人はブログの販売を希望する者から受領している」又は,インターネットアーカイブサイトにおける「ブログの販売を希望する者が,その販売に際して得た金額の内の30パーセントを『システム利用料』として,被請求人はブログの販売を希望する者から受領している」証拠とのことである。
しかしながら,これらの乙号証をもって要証期間内における本件商標の使用の事実が立証されたということはできない。
ア 要証期間内における証拠ではない
乙第10号証のウェブページの右下には,印刷日と推察される「2017/08/04」と日付の記載があるものの,該証拠が要証期間内に閲覧可能であったウェブページであるか否かは何ら立証されていない。よって,同乙号証は要証期間内における本件商標の使用の事実の証拠とはならない。
イ 本件商標の使用の事実が確認できない
乙第10号証及び乙第11号証中には,「ブロマガの設定に関して」の文字のほか,本文中に「ブロマガ」の文字が記載されている。しかしながら,使用に係る「ブロマガ」の片仮名は,本件商標と社会通念上同一の商標ということができない。
ウ 指定役務についての使用の事実が確認できない
被請求人が本件商標を使用していると主張する指定役務は「サーバーの記憶領域の貸与」等であるところ,同乙号証においては「ブロマガ」の販売に関する各種情報が記載されているのみであり,上記指定役務に係る「サーバーの記憶領域の貸与等」に使用している事実は確認できない。
なお,上記2つの乙号証からは特定の需要者との金銭の受け渡しの事実は確認できないので「ブログの販売を希望する者が,その販売に際して得た金額の内の30パーセントを『システム利用料』として,被請求人はブログの販売を希望する者から受領している」事実は把握できない。
以上のとおり,これらの乙各号証をもって,要証期間内に本件商標がその商標権者(被請求人),専用使用権者又は通常使用権者によって使用された事実が立証されたということはできない。

第3 被請求人の主張
被請求人は,本件審判の請求は成り立たない,審判費用は請求人の負担とする,との審決を求め,その理由を答弁書,口頭審理陳述要領書及び上申書において要旨以下のように述べ,証拠方法として,乙第1号証から乙第42号証を提出した。
1 答弁の理由
(1)本件商標を使用している役務
本件商標の商標権者は,本件商標を指定役務中の「インターネットにおけるブログのためのサーバーの記憶領域の貸与,インターネット等の通信ネットフークにおいて利用可能な記憶装置の記憶領域の貸与」に使用している。
(2)被請求人が提供するサービスの説明
被請求人は,ブログ等の販売(有料での提供)を希望する者が作成したブログ等を,自社の管理するサーバーに記憶し,これを購読することを希望する者に販売するというサービスを行っている。このようなサービスを行うに際しての流れとしては,「ブログ等を作成して販売することを希望する者が,その記事を作成してアップロードする。」,「そのブログの内容が被請求人の管理するサーバーの記憶領域に保存される。」,「購読者がそのブログを購入し,決済を行う事で,記事の内容をサーバーの記憶領域から呼び出すことが可能となり,その購読が可能となる。」という流れとなっている。参考にブロマガ購入時の動作説明を提出する(乙3)。上記のようなサービスは,これらが一体となって,提供されているものであるが,取引者,需要者のうちの「ブログ等を作成して販売することを希望する者」との関係においては,「ブログ等をアップロードするための自社管理サーバの記憶領域を貸与する」の目印としても機能しているものであることは明らかである。
(3)使用態様について
提出する各証拠には,前述のようなサービスを行うに際し,本件商標が指定役務「インターネットにおけるブログのためのサーバーの記憶領域の貸与」又は「インターネット等の通信ネットワークにおいて利用可能な記憶装置の記憶領域の貸与」に使用されている事実が示されている。すなわち,各提出証拠のうち,乙第4号証ないし乙第7号証については,片仮名「ブロマガ」の文字が表示されており,また,乙第8号証及び乙第9号証においては,「BlogMaga」及び「ブロマガ」の文字が表示されている。ところで,一般に,横書き二段表示の文字商標において,「【 】」のような表示態様の変更は,登録商標を具体的な指定商品に付して取引の場に置くに当たっての各種の制約等を考慮し,また,このような具体的に使用されている商標の態様は,本来,需要者によって隔離的に観察されるものであることを勘案すると,同一性の範囲にとどまる程度の変更,つまり,商標の識別性に影響を与えない程度の表示態様の変更と認めるのが相当である(東京高裁昭和63年(行ヶ)269号事件)。
したがって,乙第8号証及び乙第9号証に示される「【 】」のような表示態様は,本件商標と社会通念上同一であるというべきである。また,本件商標は,片仮名「ブロマガ」と欧文字「BlogMaga」を二段に横書きしてなるものであり,そのいずれも「ブロマガ」の称呼を生じる一方,特定の観念を生じないものである。
したがって,本願商標の構成中の片仮名又は欧文字のいずれかの使用であっても,本件商標との関係では,社会通念上同一の商標と認められる。
(4)本件商標の使用者
本件商標は,商標権者である被請求人がそのサービスを使用する際に使用を行っている。
(5)商標の使用の事実及び期間等
本件商標の使用したサービスの提供は,現在に至るまで継続して行われている。乙第4号証,乙第6号証,乙第8号証については,現在において本件商標が使用されている事実が,乙第5号証,乙第7号証,乙第9号証については,要証期間内に本件商標が使用されている事実が以下のとおり示されている。
ア 乙第4号証は,本件商標を使用したサービスについてのウェブサイト上のマニュアルの記載の一部である。ブログを販売する事を希望する者に対するサービスの内容の説明とともに,「ブロマガ」の語が使用されており,ブログを販売する際の概要が記載されている。
イ 乙第5号証は,ウェブサイト上の過去の記載を確認することができるサービス「WAYBACKMACHINE」を使用し,乙第4号証と同様の頁について,一例として,平成28年4月7日当時の記載を確認したものであり,乙第4号証と同様,「ブロマガ」の語が使用されていることが確認できる。
ウ 乙第6号証は,各種ブログ記事の概要を,ランキング形式で紹介したものであり,「ブロマガ」の語が使用されている。
エ 乙第7号証は,乙第6号証の過去の記載を確認したものであり,平成28年4月30日当時の同頁においても,「ブロマガ」の語が使用されていることを確認することができる。
オ 乙第8号証は,アップロードされている動画の一例であり,「ブロマガ」並びに「BlogMaga」の語が使用されている事実が確認できる。なお,当ページの記載の一部は外国語となっているが,ページ右上に言語切り替えのタブが存在することからもわかるとおり,世界各国から閲覧できるようになっており,当然ながら日本からもアクセス可能である。
したがって,日本をサービスの対象に含むものであるといっても差し支えない。
カ 乙第9号証は,乙第8号証の過去の記載を確認したものであり,平成28年4月1日当時の同頁においても,「ブロマガ」及び「BlogMaga」の語が使用されている事実を確認することができる。これらの各使用例を見れば,ブログ等を有料で提供することを希望する者が,記事等を作成し,その記事等の内容の一覧を被請求人が提供するウェブサイト上の記載等から確認し,その購読を希望する者が,購入をした上でその内容を確認することができるようになるというサービスに際して,被請求人がその販売希望者に対し,そのブログ記事(動画含む)等の保存先として,「記憶領域の貸与」を行っているという事が明らかである。
キ 以上より,商標権者である被請求人が,要証期間内に,本件商標を,請求にかかる指定役務中,少なくとも「インターネットにおけるブログのためのサーバーの記憶領域の貸与」又は「インターネット等の通信ネットワークにおいて利用可能な記憶装置の記憶領域の貸与」について使用している事実は明らかである。
2 口頭審理陳述要領書(平成29年8月14日付け)
(1)指定役務該当性について
ア 指定役務の該当性に関する検討
被請求人の行うサービスでは,ブログ記事等をインターネット上において販売することを希望する者の記事等を,サーバーの記憶領域に格納する。一方でこれを購入することを希望する者は,検索機能を通じて自己の欲する情報を見つけ,購入を実行すると,これをサーバーの記憶領域から呼び出し,購入者のパソコン等の画面上に表示するというサービスを行っており,この過程において,購入者の購入金額の一部をブログ等を販売する者の「システム利用手数料」として販売者から受領し,その残額は販売者へ支払っている。このような一連の流れの中においては,「ブログ記事等の販売を希望する者」と「ブログ記事等の購入を希望する者」の両者がサービスの提供を受ける需要者として想定されるところである。上記の点をふまえて考えると,前述の合議体の見解等を見る限り,本件商標を使用したサービスが誰に対して行われているのか,つまり需要者の認定において,誤認があると思われるためである。被請求人のようなウェブ上のホスティングサービスを行う企業にとっては,上記のようなフローにおいてサービスの提供行うに際しての需要者は,第一にコンテンツやデータをウェブサイト上にあげる者,次に,そのコンテンツやデータを利用する者が考えられる。本件商標について,被請求人が主として問題にしているのは,上記の内の前者に対する役務の提供についてである。被請求人は,需要者である「ブログ記事等の販売を希望する者」のブログ記事等のデータをサーバーに格納したうえで,購入者の購入処理に対応してそのデータを抽出して,購入者の画面上に表示している。その流れは乙第3号証からもわかるとおりである。このような,サービスの提供の流れの中において,需要者である「ブログ記事等の販売を希望する者」いい換えれば「コンテンツやデータをウェブサイト上にあげる者」にとってみれば,「『ブログ記事等を販売することを希望する者』のブログ記事等のデータをサーバーに格納したうえで,購入者の求めに応じてそのデータを抽出して,購入者の画面上に表示する。」という一連の流れの全体の目印として,「ブロマガ」の語が使用されており,そのサービスに係るユーザーマニュアル(乙4,乙5)等においても当該語が使用されているのであるから,その需要者にとってみれば「インターネットにおけるブログのためのサーバーの記憶領域の貸与」又は「インターネット等の通信ネットワークにおいて利用可能な記憶装置の記憶領域の貸与」の目印としても機能しているといえる。
なお,被請求人はブログの販売を希望する者が,その販売に際して得た金額の内の30パーセントを「システム利用料」として,被請求人はブログの販売を希望する者から受領している(乙10)。販売仲介料等としていない点から見ても,その一連のサービスにおける個々のサービス,例えば「インターネットにおけるブログのためのサーバーの記憶領域の貸与」又は「インターネット等の通信ネットワークにおいて利用可能な記憶装置の記憶領域の貸与」を,その取引の対象物の一つとして捉えて実際に提供していることがうかがえる。なお,乙第10号証は,平成29年8月14日時点の記載であるが,インターネットアーカイブサイトで要証期間である平成28年4月8日の記載を確認してみても,同様の記載がなされていることがわかる(乙11)。
また,乙第6号証ないし乙第9号証については,「『ブログ記事等を販売することを希望する者』のブログ等のデータをサーバーに格納したうえで,購入者の求めに応じてそのデータを抽出して,購入者の画面上に表示している。」という一連のサービスが行われているという事実を示すものとして提出したものであり,これらと乙第3号証を総合して考慮すれば,その一連のサービスの中で需要者である「ブログを販売することを希望する者」に対しては,「インターネットにおけるブログのためのサーバーの記憶領域の貸与」又は「インターネット等の通信ネットワークにおいて利用可能な記憶装置の記憶領域の貸与」といったサービスが提供されているという事は明らかである。
なお,請求人は,全てのインターネットを利用するサービスにおいては,データはサーバーの記憶領域に保存されることになるから,被請求人の請求が認められると実務に混乱をきたすという旨の主張を行っている。しかし,商標の使用の有無を判断するに際しては,実際にどのようなサービスが提供されているかふまえ,個別具体的に判断すべきものであるので,全てのインターネットを利用するサービスで,データがサーバーの記憶領域に保存されるか否かということと,被請求人の使用がサーバーの記憶領域の貸与等にあたるのか否かは全くの別問題であり,本件商標が「インターネットにおけるブログのためのサーバーの記憶領域の貸与」又は「インターネット等の通信ネットワークにおいて利用可能な記憶装置の記憶領域の貸与」という役務に使用されていると認められるか否かの判断を個別具体的にすべきである。
以上の点からして,被請求人が一連のサービスの提供を行う中において,需要者である,例えば「ブログ記事等を販売することを希望する者」に対して,そのデータを格納するために「インターネットにおけるブログのためのサーバーの記憶領域の貸与」又は「インターネット等の通信ネットワークにおいて利用可能な記憶装置の記憶領域の貸与」等のサービスを提供していることは明らかである。
なお,審理事項通知書における合議体の見解では,「本件商標は『電子出版物の提供,インターネットを通じた動画の提供』の役務に使用されているというべきである。」としており,請求人についても同様の主張をしている。しかし,前述のような被請求人の行うサービス提供の形態からすれば,これが,「ブログ記事等を販売することを希望する者」が,「それを購読することを希望する者」に対し,コンテンツを提供する取次や仲介,すなわち「電子出版物の提供の取次,インターネットを通じた動画の提供の取次」にあたることはあったとしても,「電子出版物の提供,インターネットを通じた動画の提供」にあたるものとはいえない。
イ 社会通念上同一の商標の使用か否かについて
(ア)合議体の見解・請求人の主張について
合議体の暫定的見解によれば,本件商標の上段の片仮名「ブロマガ」のみの使用は,本件商標と社会通念上同一の商標の使用とみることはできないとしており,その理由としては,本件商標の構成中の上段「ブロマガ」と下段「BlogMaga」では,それぞれから生ずる称呼が異なり,観念を同一にするものということもできない点を挙げている。
また,請求人は,本件商標構成中の「ブロマガ」と「BlogMaga」は,本件商標の社会通念上同一の商標の使用であるとはいえない旨述べているが,被請求人は使用に係る「ブロマガ」と本件商標とが社会通念上同一の商標であると考えている。
まず,請求人のあげている社会通念上同一の範囲の定義は,商標法第50条第1項の括弧書きの事を指すと思われるが,当該括弧書きの趣旨については,「工業所有権法逐条解説」からすれば,「書体のみに変更を加えた同一の文字からなる商標」,「外観において同視される図形からなる商標」,「平仮名,片仮名及びローマ字の文字の表示を相互に変更するものであって同一の称呼及び観念を生じる商標」等の点は,あくまでも例示にすぎず,社会通念上同一の商標であるといえるか否かは,個別具体的に取引社会の通念に照らして判断されるべきである。つまり,その趣旨に照らして考えるのであれば,本願商標に接する需要者が,実際の取引において「BlogMaga」の文字列を,「ブロマガ」と認識している実情が存在すれば,仮に本件商標の構成中の片仮名のみの使用であっても,本願商標と社会通念上同一の商標の使用であると認められる。
本件商標の構成中の欧文字部分は,「BlogMaga」からなるものであり,審判官合議体及び請求人は,ここから「ブログマガ」という称呼が生ずるのが当然であるかのように認定し,それをもとに,片仮名「ブロマガ」の使用が,本件商標と社会通念上同一の商標の使用にはあたらない旨述べている。
しかし,被請求人は実際の取引の実情をもふまえて考えれば,ここから生ずる称呼は「ブロマガ」であると考えているため,まずは「BlogMaga」の文字列からいかなる称呼を生ずるものであるのか検討すべきであると考える。 第一に,我が国における欧文字の一般的な読み方として,「g」が必ず「グ」と発音されると断定できるものではない,例えば「HongKong」を「ホンコン」,「PingPong」を「ピンポン」,「Sign」を「サイン」,「Foreign」を「フォーリン」と読むがごとくである。このように「g」を「グ」と読まない場合もあることをふまえれば,「BlogMaga」の文字列から,いかなる称呼を生ずるかは,実際の取引において,需要者がどのような理解をしているのか,取引の実情をふまえて個別具体的に判断する必要があると考えられるところである。
この点,仮に,以前は「BlogMaga」から生ずる称呼が「ブログマガ」であったとしても,少なくとも本件商標の使用の有無を立証すべき要証期間において当該文字列から生ずる称呼は,「ブロマガ」であると考えられる。なぜなら,被請求人の提供するサービスの名称として使用されているサービスの名称「ブロマガ」が,その需要者にとって周知であると考えられるためである。
(イ)被請求人の提供するサービスの周知性について
被請求人は,平成21年1月21日にブログを通じて有料コンテンツの販売・購入ができるサービスを開始しており,そのサービスの名称として用いられたのが「ブロマガ」である。サービスの開始の事実は,当時の各種ニュース記事からも明らかである(乙12?乙15)。当該「ブロマガ」の語は,一般の画面上に表示されるだけでなく,ブログの操作画面等にも表示されるようになり,当該サービスを紹介する書籍も多数発行されている(乙16?乙20)。
ここで,被請求人の提供するFC2は,我が国においても高いシェアを有する,著名なブログサービスである。被請求人は,1999年7月にホスティングサービスを提供する会社として設立され,2001年2月には,ホームページサービスを開始し,2004年10月には,FC2ブログサービスを開始しており,日本国内でブログサービスの先駆者的な立場にある。その後,2006年1月には,ブログのランキングサービスや,2008年5月には英語対応し,2008年7月には繁体字,2008年8月には簡体字,2009年1月には,ハングル,タイ語,2009年2月にはスペイン語,ドイツ語,2009年4月にはロシア語,2009年5月にはフランス語,2013年2月にはベトナム語に対応するなど,世界の人々に向けてブログサービスを提供してきている(乙21)。
FC2ブログのユーザーは,ユーザー数データによれば,既に2012年12月の時点で,500万人弱(490万621人)である(乙22)。また,FC2ブログは,インターネット視聴率の測定及びデジタル市場分析などを業とするコムスコア・ジャパン株式会社のリリースした,「SNS大流星時代を迎えても,日本はまだまだ『ブログ大国』!」という,日本のブログ利用に関するレポートによれば,2011年6月の1ヶ月間に4,670万人以上のブログ訪問者数を記録し,日本国内第1位となっていたことが報道されている(乙23,乙24)。
さらに,2011年度の日本社会情報学会第26回全国大会で発表された「テキスト系CGM利用時の不安に関する自由記述を中心とした調査結果について」という論文や(乙25),マーケティングリサーチ事業を行う株式会社バルクによる,「コミケ(コミックマーケット)に関する調査」とする調査等でも(乙26),高い利用率が示されているように,FC2ブログは既にブログの分野において著名であり,最大手の1つである。
そして,ブログのユーザーが利用する管理画面には,常に「ブロマガ」の紹介がなされている。つまり,これだけの多数のユーザーに対して,随時,「ブロマガ」についての周知の措置がとられていたのである。
このように,周知の措置がとられていたことは,FC2ブログに関して書かれた前述の書籍(乙16?乙20)に掲載された記事や記事中の表示画面に「ブロマガ」の文言が見られることからも明らかである。
さらに,「ブロマガ」は,請求人の提供するブログの有料配信サービスとして,以下のとおりインターネット上で大きく取り上げられている。
乙第12号証は,ウェブメディア「インターネットコム」において,「ブロマガ」が取り上げられた2009年1月20日付けの記事であるが,当該メディアは,月間ページビューが約150万の著名なサイトである(甲27)。
乙第13号証は,ウェブメディア「MarkeZine」で「ブロマガ」が取り上げられた2009年1月20日付けの記事であるが,当該メディアも,月間ページビューが約100万の著名なサイトである(乙28)。
乙第14号証は,ウェブメディア「ZDNet Japan」で「ブロマガ」が取り上げられた2009年1月20日付けの記事であり,当該メディアは朝日インタラクティブ株式会社が運営する,年間ページビューが約600万の著名なサイトである(乙29)。また,同社が運営する「CNET Japan」でも2009年1月20日付けの記事で「ブロマガ」が紹介されているが(乙15),同サイトの年間ページビューは1,300万である(乙30)。
乙第31号証は,「ITmedia NEWS」において,ホリエモン(堀江貴文氏)のFC2ブロマガ等が紹介されている2010年11月30日付けの記事である。「ITmedia」は,ITメディアの様々なコンテンツを網羅する著名なIT総合情報サイトであり,1ヶ月のページビューは300万を超える。また,前記記事が掲載されている「ITmedia NEWS」についても,1か月のページビューは100万を超えている(乙32)。
以上より,控えめに推測しても,数百万の閲覧者が「ブロマガ」をFC2の提供するブログの有料配信サービスとして目にしているはずである。このように数百万を超える閲覧者に示されること自体から判断しても,単なる閲覧者に比して,より範囲が限定される請求人のサービスの需要者,すなわち,自らブログを開設して記事を発信しようとしている者にとって,「ブロマガ」が広く知られていたことは明らかである。
したがって,遅くとも2012年の時点では,「ブロマガ」は,請求人が提供するサービスに係る標章として取引者及び需要者に広く認識されていた。そして,その状況は現在においても変わりはない。
ウ 「ブロマガ」が本件商標と社会通念上同一の商標であること
以上のように,被請求人が提供するサービスが広く知られていたことを踏まえて考えれば,仮に本件商標のように,「ブロマガ」と「BlogMaga」が併記されていたとしても,その知名度が故に,その欧文字から生ずる称呼は「ブロマガ」であるとして違和感なく受け入れられていたと考えられる。この点については,以下のような日本語におけるいわゆる省略の文化も大きく影響を与えていると考えられる。我が国においては,語呂の悪い語,冗長な語等を略して使用するという事が広く行われており,言語の使用上の特徴の一つとして挙げられている。一例をあげれば,「エアーコンディショナー」を「エアコン」,「パーソナルコンピュータ」を「パソコン」,「ドラゴンクエスト」を「ドラクエ」,「キムラタクヤ」を「キムタク」等であるが,同様の例は枚挙に暇がない。
また,このような,いわゆる略語における使用例は,4音で構成されるものが圧倒的に多く,さらに複数の語が結合した結合語において,結合する各語の前半部分を2語ずつ抽出した態様での使用例が非常に多い。例えば,上記「エアコン」が「エアー」「コンディショナー」の前半2語「エア」「コン」を結合したものであり,「ドラクエ」が「ドラゴン」「クエスト」の前半2語「ドラ」「クエ」を結合した結合語として使用されているようにである。
上記のような点は,被請求人の独断による見解ではなく,各種書籍やウェブサイトにおいても,例えば以下のように記されている。
乙第33号証は,言語学者の窪園晴夫氏による書籍「新語はこうして作られる」の一部の写しである,その中において,複合語が短縮される際の類型が記されており,二語が結合した複合語においては,それぞれの語の語頭から,ニモーラ(二拍)ずつを取るパターンが基本的なものである,「ニモーラ(二拍)+ニモーラ(二拍)」という音韻構造が日本語の複合語短縮において非常に安定したものである等とされている。
その他,株式会社日本ネーミング&リサーチのウェブサイト,他,各種ウェブサイトにおいて,「日本人が略語を好むこと」,「結合語について,二つの言葉のそれぞれ前半部分をとった4文字読みが多いこと」,「略語には4音構成のものが多いこと」等に触れた記述は多数存在しているところである(乙34?乙36)。
以上の点を踏まえれば,片仮名「ブロマガ」に対して,欧文字表記が「BlogMaga」であったとしても,そのサービス及びサービスの名称の周知性も相まって,少なくともその需要者にとっては,「BlogMaga」から生ずる称呼が,語呂の悪い「ブログマガ」ではなく,「ブロマガ」として認識されるようになった。つまり,需要者にとっては,「ブロマガ」と「BlogMaga」が社会通念上同一の商標であると認識されていたと考えるのが自然である。この点は実際の使用において,「BlogMaga」が「ブロマガ」として表記されている点からみても明らかである(乙37?乙39)。
エ まとめ
上記のとおりの現実の取引の実情をふまえて考えるのであれば,片仮名「ブロマガ」の使用は,本件商標と社会通念上同一の商標の使用といって差し支えない。
(2)商標法第2条第3項各号の該当性について
被請求人は,本件商標と社会通念上同一の商標である「ブロマガ」を,指定役務「インターネットにおけるブログのためのサーバーの記憶領域の貸与」等に係るサービスを行うに際し,需要者である例えば「ブログ記事等を販売することを希望する者」の「役務の提供を受ける者の利用に供するもの」である,「ユーザーマニュアル」に標章を付すものであるから,商標法第2条第3項第3号に該当し,これを通じてサービスを提供する行為にあたるために,同法第2条第3項第4号に該当する。また,被請求人のサービスはウェブサイト上に表示される映像面を介して提供されるサービスであるために,「電磁的方法により行う映像面を介した役務の提供にあたり,その映像面に標章を表示して役務を提供する行為」,すなわち,商標法第2条第3項第7号に該当するものである。また,取引書類の一つといえる「ユーザーマニュアル」がウェブサイト上にアップロードされていることを考慮すれば,同法第2条第3項第8号にも該当するものである。
(3)その他請求人の主張について
請求人は,乙第5号証,乙第7号証,乙第9号証を除く,被請求人が提出した各証拠について,要証期間内における証拠ではない旨主張しているので,この点について,被請求人の意見を以下に述べる。
まず,乙第1号証は,本件商標の書誌事項及び現在有効に存続していることを示すために提出したものであるので,商標の使用の有無とは本来的に無関係のものである。
次に,乙第3号証については,あくまでも被請求人のサービスのフローを説明するために提出したものであり,そのサービスの開始時点から現在に至るまでの間変わるものではないので,その役割からすれば,必ずしも要証期間内のものである必要はないと考えられる。
さらに,乙第4号証,乙第6号証,乙第8号証については,それぞれ,乙第4号証は乙第5号証,乙第6号証は乙第7号証,乙第8号証は乙第9号証と対になることで,本件商標の使用の事実を示す証拠の一つとなっている。すなわち,被請求人は乙第4号証,乙第6号証,乙第8号証を答弁書作成時点でのウェブサイトの状態,乙第5号証,乙第7号証,乙第9号証をそれらのページの要証期間内における状態を表すものとして提出しており,これらは一体となって,要証期間における本件商標の使用状態を表すものである。これにより,本願商標が継続して使用されてきたことを示すものであって,乙第4号証,乙第6号証,乙第7号証(審決注:乙第8号証の誤り。)を個別に取り上げたうえで,要証期間内における証拠ではないとする請求人の主張が失当であることは明らかである。
3 上申書(平成29年10月13日付け)
(1)上申の理由
乙第3号証,乙第5号証,乙第7号証,乙第9号証,乙第22号証,乙第37号証ないし乙第39号証について,以下のとおり各証拠について補足説明を行うとともに,証拠書類を提出する。
(2)上申の内容
乙第3号証は,当該書面の作成時に被請求人の業務の外注先である株式会社ホームページシステムに勤務し,メンテナンス等を担当していた前田益宏氏が,FC2のサービスの流れを説明する目的で作成したものであるので,この点に関する陳述書を提出する(乙40)。また,平成29年8月14日付けで提出の証拠説明書における,乙第3号証の作成者については,「前田益宏氏」と訂正する。
乙第5号証,乙第7号証,乙第9号証については,代理人弁理士三井直人が,ウェブサイトの過去の表示の状態を確認することができるインターネットアーカイブサイト「Wayback Machine」にアクセスし,その結果を出力したものであるため,その旨の陳述書を提出する(乙41)。なお,平成29年8月14日付けで提出の証拠説明書における,これら各号証の作成者については,「被請求人代理人弁理士三井直人」と訂正する。
乙第22号証は,FC2の担当者より提供を受けたブログ閲覧者データである。
乙第37号証ないし乙第39号証については,復代理人弁護士壇俊光が当該ページにアクセスし,その内容を出力したものであるため,その旨の陳述書を提出する(乙42)。なお,前記証拠説明書におけるこれら各号証の作成者については,「被請求人復代理人弁護士壇俊光」と訂正する。

第4 当審の判断
1 被請求人の主張及びその提出した証拠によれば,以下のとおりである。
(1)乙第4号証について
乙第4号証は,被請求人のウェブサイトの「FC2ブログ マニュアル」であるところ,その中央に「FC2ブログ マニュアル」,その下に「ブロマガ(R)(ブログマガジン)って何?」の記載,また,その下に「ブロマガとは,雑誌の『袋とじ』のようにブログ記事に価格を設定し,料金をお支払いいただいた訪問者だけが閲覧できる機能です。」の記載,さらに,その下に「お支払いはFC2ポイントまたはクレジットカードで決済され,販売価格の内,システム手数料30%を差し引いて,販売者へ支払われます。」の記載,右下に「2017/01/13」の記載,2葉目には,「商標について」の項に「『ブロマガ』はFC2,INC.の登録商標です。」の記載がある。
(2)乙第5号証について
乙第5号証は,被請求人のウェブサイトの「FC2ブログ マニュアル」であるところ,左上部に「WayBackMachine」の記載,右上部に「4/7/2016」の記載,その下の中央に「FC2ブログ マニュアル」,また,その下に「ブロマガ(R)(ブログマガジン)って何?」の記載,さらに,その下に「ブロマガとは,雑誌の『袋とじ』のようにブログ記事に価格を設定し,料金をお支払いいただいた訪問者だけが閲覧できる機能です。」の記載,加えて,その下に「お支払いはFC2ポイントまたはクレジットカードで決済され,販売価格の内,システム手数料30%を差し引いて,販売者へ支払われます。」の記載,2葉目には,「商標について」の項に「『ブロマガ』はFC2,INC.の登録商標です。」の記載がある。
(3)乙第6号証について
乙第6号証は,被請求人のウェブサイトの「ブロマガランキング」であるところ,その左上部に「ブロマガランキング」の記載,その下に「FC2 ブロマガ」の記載,その下の中央に「ブロマガランキング」,また,その下に映画,スポーツ,政治・経済等のコンテンツが,1葉目から2葉目に続けて1位から20位までの表題とその内容の説明書きの記載,右下に「2017/01/13」の記載がある。
(4)乙第7号証について
乙第7号証は,被請求人のウェブサイトの「ブロマガランキング」であるところ,その左上部に「ブロマガランキング」の記載,その下に「WayBackMachine」の記載,その下に「FC2ブロマガ」の記載,右上部に「4/30/2016」の記載,その下の中央に「ブロマガランキング」,また,その下に映画,スポーツ,政治・経済等のコンテンツが,1葉目から2葉目に続けて1位から20位までの表題とその内容の説明書きの記載がある。
(5)乙第8号証について
乙第8号証は,被請求人のウェブサイトの「FC2 Video Adulto」であるところ,その左上部に「FC2 Video」の記載,その中段に「【ブロマガ限定】」の記載,その下に長方形で囲われた中に「BlogMaga」の記載及びそのビデオの内容の説明が,全部で8件分の記載があり,右下に「2017/01/13」の記載がある。
(6)乙第9号証について
乙第9号証は,被請求人のウェブサイトの「FC2 Video Adulto」であるところ,その左上部に「WayBackMachine」の記載,その下に「FC2 Video」の記載,また,右上部には「4/1/2015」の記載,その中段に「【ブロマガ限定】」の記載,その下に長方形で囲われた中に「BlogMaga」の記載及びそのビデオの内容の説明が,全部で8件分の記載がある。
(7)乙第10号証について
乙第10号証は,被請求人のウェブサイトの「ブロマガの設定に関して」であるところ,その左上部に「ヘルプ」の記載,その中央下に「FC2ブログ Q&A」,その下に「ブロマガの設定に関して」の記載,ブロマガに関する質問が全部で19件分の記載がある。そして,2葉目には,「Q.ブロマガ販売の売り上げはいくらになりますか?/A.システム利用料として30%差し引いたポイントが売り上げになります。」の記載,右下に「2017/08/04」の記載がある。
(8)乙第11号証について
乙第11号証は,被請求人のウェブサイトの「ブロマガの設定に関して」であるところ,その左上部に「ヘルプ」の記載,その中央下に「FC2ブログ Q&A」,その下に「ブロマガの設定に関して」の記載,ブロマガに関する質問が全部で19件分の記載があり,一番下に「https://web.archive.org/web/2016040813450/https://heip.fc2.com/blog/qa/group295/1198」の記載がある。そして,2葉目には,「Q.ブロマガ販売の売り上げはいくらになりますか?/A.システム利用料として30%差し引いたポイントが売り上げになります。」の記載,一番下には上記と同じインターネットアドレスの記載がある。
(9)乙第12号証ないし乙第15号証について
乙第12号証は,「japan.internet.com」のウェブサイトであるところ,2009年1月20日に「FCブログ,記事を月額購読制にできる課金記事『ブロマガ』を開始」の見出しの下,「FC2は,2009年1月20日,同社が運営する無料Blogサービス『FC2ブログ』にて,ユーザーがBlog記事を月額購読制にできる,課金記事『ブロマガ』を開始した。」の記載があり,同様の記事が,同日のウェブサイト「MarkeZine」(乙13),「ZDNet Japan」(乙14)及び「CNET Japan」(乙15)にも記載されている。
(10)乙第18号証及び乙第20号証について
ア 乙第18号証は,書籍の「はじめてのFC2ブログ」であるところ,その226頁には,「SECTION/71/ブログの記事を有料化するには」の見出しの下,「ブロマガとは」の項に,「ブログの記事に課金設定をしておくことで,月額購読ポイントを支払った読者のみがその記事を閲覧できるようにする機能です。」の記載,227頁には,「月額の設定」の項に,「ブロマガを利用するのに,必ず必要な設定が月額の設定です。」の記載,228頁には,「ブロマガは記事単位」の項に,「ブロマガは記事単位で設定できます。」の記載,229頁には,「ブロマガの売上を確認する」の項に,「ブロマガの売上は,ブログ管理ページで『ホーム』の[ブロマガ(課金機能)の管理]をクリックすると確認できます。」の記載がある。
そして,奥付には,「発行日2010年3月25日」と記載されている。
イ 乙第20号証は,書籍の「はじめてのFC2ブログ/最新かんたんブログ作成入門」であるところ,その222頁には,「SECTION/70/ブログの記事を有料化するには」の見出しの下,「ブログマガとは」の項に,「ブログの記事に課金設定をしておくことで,読者が雑誌を購入するようにブログの有料記事を購読できる仕組みのことです。」の記載,223頁には,「ブロマガの販売方式」の項に,「ブロマガの販売方式には,『有料ブログモード』と『バックナンバーモード』『単独販売』の3種類があります。」の記載,224頁には,「ブロマガは記事単位で設定できる」の項に,「ブロマガは記事単位で設定できます。」の記載,225頁には,「ブロマガの売上を確認する」の項に,「ブロマガの売上は,ブログ管理ページで『ホーム』の[ブロマガ(課金機能)の管理]をクリックすると確認できます。」の記載がある。
そして,奥付には,「発行日2012年3月10日」と記載されている。
(11)被請求人が提出した他の証拠について
ア 乙第3号証は,「ブロマガ購入の内部動作」を記載した説明資料であり,これには,「ブロマガ」の文字の表示があるが,使用に係る役務についての記載はなく,また,これが要証期間のものということができない。
イ 乙第16号証,乙第17号証,乙第21号証ないし乙第32号証は,書籍やウェブサイトの情報等であるところ,これらは,「ブロマガ」がFC2の提供するブログの有料配信サービスとして,広く知られたことを証明する証拠として提出されたものであるが,いずれの証拠においても,本件商標の取引請求役務についての使用は見いだせない。
ウ 乙第33号証ないし乙第36号証は,略称について説明した書籍やインターネット記事情報であるところ,これらは,いずれも本件商標の取引請求役務についての使用は見いだせない。
エ 乙第37号証ないし乙第39号証は,インターネット記事情報であるところ,これらに,ウェブサイト上での「ブロマガ」及び「BlogMaga」の文字の記載があるとしても,その使用者及び使用役務も不明であり,いずれも本件商標の取引請求役務についての使用は見いだせない。
2 上記1からすれば,次のとおり判断できる。
(1)使用商標
ア 使用商標1
被請求人のウェブサイトである乙第4号証及び乙第5号証の「FC2ブログ マニュアル」には,「ブロマガ」(R)の文字が表示され,また,2葉目には「『ブロマガ』はFC2,INC.の登録商標です。」と表示されていることから,被請求人は,「ブロマガ」(以下「使用商標1」という。)の文字を商標として使用しているものと認められる。
イ 使用商標2
被請求人のウェブサイトである乙第8号証及び乙第9号証の「FC2 Video」には,各コンテンツの表題の部分に四角で囲われた中に「BlogMaga」の欧文字を表示していることから,被請求人は,「BlogMaga」(以下「使用商標2」という。)の欧文字を商標として使用しているものと認められる。
なお,以下,使用商標1及び使用商標2をまとめて「使用商標」という。
(2)使用商標の使用に係る役務について
被請求人は,使用商標を,「インターネットにおけるブログのためのサーバーの記憶領域の貸与」又は「インターネット等の通信ネットワークにおいて利用可能な記憶装置の記憶領域の貸与」に使用していると主張するが,被請求人の提出された全証拠からは,これらの役務に関する記載は一切なく,使用商標を該役務に使用している事実を見いだすことができない。
また,被請求人は,上記役務を提供している旨の主張をする一方で,被請求人が行っている業務は「ブログ等の販売(有料での提供)を希望する者が作成したブログ等を,自社の管理するサーバーに記憶し,これを購読することを希望する者に販売するというサービスを行っている。」旨を主張しているところ,仮に,作成された「ブログ」等の内容が動画であれば,「インターネットを通じた動画等の提供」という役務としての側面もあるが,たとえば,総務省の「国民のための情報セキュリティサイト」の「基礎知識」には,「電子掲示板の仕組み」の項において,「電子掲示板とは,インターネット上で記事(スレッドやトッピングなどと呼ばれています)を書き込んだり,閲覧したりできる仕組みです。・・・個人が開設するものや企業の中だけに限定したものなど小規模なものから,多数の電子掲示板を集めて一つのWebサイトとして発展させた大規模なものまで,さまざまな電子掲示板が存在します。」と記載されており,これからすれば,被請求人の行う業務は,上記の「電子掲示板」に類似しているものである。
そして,前記1に記載した乙第4号証ないし乙第11号証等によれば,被請求人の提供するサービスは,上記に記載された電子掲示板に関するウェブサイトを運営しているものであって,「電子掲示板の提供」に係る役務であることを理解させるものである。
そうすると,被請求人の行っている役務は,「電子掲示板の提供」とみるのが相当である。
してみれば,いずれにしても,被請求人が行っている役務は,「インターネットにおけるブログのためのサーバーの記憶領域の貸与」又は「インターネット等の通信ネットワークにおいて利用可能な記憶装置の記憶領域の貸与」の役務とみることはできない。
(3)使用商標が,本件商標と社会通念上同一であるかについて
ア 商標法第50条に規定する商標登録の取消審判における「登録商標」には,いわゆる「社会通念上同一の商標」を含むものであり,「その社会通念上同一の商標」と認められるものは,例えば,「書体のみに変更を加えた同一の文字からなる商標,平仮名,片仮名及びローマ字の文字を相互に変更するものであって同一の称呼及び観念を生ずる商標,外観において同視される図形からなる商標」などである(商標法第50条第1項参照)。
イ そこで,本件商標と使用商標を比較してみるに,乙第4号証ないし乙第7号証には,本件商標中の上段の「ブロマガ」の片仮名と同一の文字からなる「ブロマガ」(使用商標1)の文字が表示されているが,本件商標中にある下段の「BlogMag」欧文字部分が存在しないものであるから,「ブロマガ」の片仮名は,本件商標の「書体のみに変更を加えた同一の文字からなる商標」ということができない。
また,乙第8号証及び乙第9号証には,本件商標中の下段の「BlogMag」の欧文字と同一の文字からなる「BlogMaga」(使用商標2)の欧文字が表示されているが,本件商標中の上段の「ブロマガ」の片仮名が存在しないものであるから,「BlogMaga」の欧文字は,本件商標の「書体のみに変更を加えた同一の文字からなる商標」ということができない。
上記のとおり,使用商標は,それぞれ本件商標と社会通念上同一の商標ということができない。
(4)小括
上記(1)ないし(3)からすれば,使用商標は,本件商標と社会通念上同一の商標とは認めることができず,使用商標の使用に係る役務は,「電子掲示板の提供」である。
したがって,被請求人が,要証期間内に取消請求役務について,本件商標と社会通念上同一の商標を使用していた事実を認めることができない。
その他,被請求人が提出した乙各号証において,本件商標を要証期間内に取消請求役務に使用したことを認め得る証左は見いだせない。
3 被請求人の主張について
(1)被請求人は,「乙第6号証ないし乙第9号証については,『「ブログ記事等を販売することを希望する者」のブログ等のデータをサーバーに格納したうえで,購入者の求めに応じてそのデータを抽出して,購入者の画面上に表示している。』という一連のサービスが行われているという事実を示すものとして提出したものであり,これらと乙第3号証を総合して考慮すれば,その一連のサービスの中で需要者である「ブログを販売することを希望する者」に対しては,『インターネットにおけるブログのためのサーバーの記憶領域の貸与』又は『インターネット等の通信ネットワークにおいて利用可能な記憶装置の記憶領域の貸与』といったサービスが提供されているという事は明らかである。」旨を主張している。
しかしながら,被請求人は,口頭審理陳述要領書において,「・・・合議体の見解では,『本件商標は「電子出版物の提供,インターネットを通じた動画の提供」の役務に使用されているというべきである。』としており,請求人についても同様の主張をしている。・・・被請求人の行うサービス提供の形態からすれば,これが,『ブログ記事等を販売することを希望する者』が,『それを購読することを希望する者』に対し,コンテンツを提供する取次や仲介,すなわち『電子出版物の提供の取次,インターネットを通じた動画の提供の取次』にあたることはあったとしても・・・」と述べていることから,取消請求役務に使用していないことを自ら供述している。
また,需要者自身が,ブログ等を発信するために被請求人から記憶領域を貸与されていることを裏付ける証拠の提出はなく,さらに,当然存在するはずの「インターネットにおけるブログのためのサーバーの記憶領域の貸与」又は「インターネット等の通信ネットワークにおいて利用可能な記憶装置の記憶領域の貸与」の賃貸借契約に係る書面等の提出もない。
(2)被請求人は,「・・・数百万の閲覧者が『ブロマガ』をFC2の提供するブログの有料配信サービスとして目にしているはずである。このように数百万を超える閲覧者に示されること自体から判断しても,単なる閲覧者に比して,より範囲が限定される請求人のサービスの需要者,すなわち,自らブログを開設して記事を発信しようとしている者にとって,『ブロマガ』が広く知られていたことは明らかである。・・・遅くとも2012年の時点では,『ブロマガ』は,請求人が提供するサービスに係る標章として取引者及び需要者に広く認識されていた。そしてその状況は現在においても変わりはない。」旨を主張している。
しかしながら,商標権者が,「ブロマガ」の片仮名を「ブログの有料配信サービス」等で使用しているとしても,提出に係る証拠からは,「ブロマガ」の片仮名が,「インターネットにおけるブログのためのサーバーの記憶領域の貸与」又は「インターネット等の通信ネットワークにおいて利用可能な記憶装置の記憶領域の貸与」の役務(サービス)を表すものとして使用されている事実は,一切認められず,また,該文字が周知,著名であるとする証拠,例えば,売上高,提供した役務の実績,並びに該文字の広告・宣伝した時期,回数及びその方法など具体的な証拠の提出もない。
(3)被請求人は,「・・・片仮名『ブロマガ』に対して,欧文字表記が『BlogMaga』であったとしても,そのサービス及びサービスの名称の周知性も相まって,少なくともその需要者にとっては,『BlogMaga』から生ずる称呼が,語呂の悪い『ブログマガ』ではなく,『ブロマガ』として認識されるようになった。つまり,需要者にとっては,『ブロマガ』と『BlogMaga』が社会通念上同一の商標であると認識されていたと考えるのが自然である。この点は実際の使用において,『BlogMaga』が『ブロマガ』として表記されている点からみても明らかである。」旨を主張している。
しかしながら,上記(4)のとおり,使用商標1は,片仮名のみであり,使用商標2は,欧文字のみであって,本件商標の構成文字に応じた表記の変更とみることはできないから,「ブロマガ」の片仮名及び「BlogMaga」の欧文字からなる本件商標とは,「書体のみに変更を加えた同一の文字からなる商標」ということができず,両者を社会通念上同一の商標とみることはできない。
さらに,被請求人の提出した証拠からは,「BlogMaga」の欧文字が「ブロマガ」と称呼又は表示されるものとして認識されているといえるほどの周知性があるものとは認められない。
よって,被請求人の主張は,いずれも採用することができない。
4 まとめ
以上のとおり,被請求人は,要証期間内に日本国内において商標権者,専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが取消請求役務について,本件商標を使用していたことを証明したものと認めることはできない。
また,被請求人は,取消請求役務について本件商標を使用していないことについて正当な理由があることも明らかにしていない。
したがって,本件商標の登録は,商標法第50条の規定により,その登録を取り消すべきである。
よって,結論のとおり審決する。
別掲
審理終結日 2018-02-27 
結審通知日 2018-03-01 
審決日 2018-03-22 
出願番号 商願2012-74287(T2012-74287) 
審決分類 T 1 32・ 1- Z (W42)
最終処分 成立  
前審関与審査官 泉田 智宏 
特許庁審判長 井出 英一郎
特許庁審判官 榎本 政実
山田 正樹
登録日 2013-10-11 
登録番号 商標登録第5621414号(T5621414) 
商標の称呼 ブロマガ、ブログマガ 
代理人 鈴木 一永 
代理人 工藤 貴宏 
代理人 宮川 美津子 
代理人 三井 直人 
復代理人 高橋 淳 
代理人 波田野 晴朗 
代理人 江頭 あがさ 
代理人 山本 典弘 
代理人 涌井 謙一 
復代理人 壇 俊光 
代理人 右馬埜 大地 
代理人 田中 克郎 
代理人 稲葉 良幸 
代理人 高藤 真人 

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