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審決分類 審判 一部無効 外観類似 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) W43
審判 一部無効 観念類似 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) W43
審判 一部無効 称呼類似 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) W43
管理番号 1346011 
審判番号 無効2017-890007 
総通号数 228 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2018-12-28 
種別 無効の審決 
審判請求日 2017-01-25 
確定日 2018-03-06 
事件の表示 上記当事者間の登録第5851277号商標の商標登録無効審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 登録第5851277号の指定商品及び指定役務中,第43類「飲食物の提供」についての登録を無効とする。 審判費用は,被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5851277号商標(以下「本件商標」という。)は,別掲1のとおりの構成からなり,平成27年6月26日に登録出願され,第29類「食用油脂,乳製品,食肉,卵,食用魚介類(生きているものを除く。),冷凍野菜,冷凍果実,肉製品,加工水産物(「かつお節・寒天・削り節・食用魚粉・とろろ昆布・干しのり・干しひじき・干しわかめ・焼きのり」を除く。),かつお節,寒天,削り節,食用魚粉,とろろ昆布,干しのり,干しひじき,干しわかめ,焼きのり,加工野菜及び加工果実,油揚げ,凍り豆腐,こんにゃく,豆乳,豆腐,納豆,加工卵,チャウダー,チャウダーのもと,カレー・シチュー又はスープのもと,お茶漬けのり,ふりかけ,なめ物,豆,食用たんぱく」,第30類「アイスクリーム用凝固剤,家庭用食肉軟化剤,ホイップクリーム用安定剤,食品香料(精油のものを除く。),茶,コーヒー,ココア,氷,菓子,パン,サンドイッチ,中華まんじゅう,ハンバーガー,ピザ,ホットドッグ,ミートパイ,みそ,ウースターソース,グレービーソース,ケチャップソース,しょうゆ,食酢,酢の素,そばつゆ,ドレッシング,ホワイトソース,マヨネーズソース,焼肉のたれ,角砂糖,果糖,氷砂糖,砂糖,麦芽糖,はちみつ,ぶどう糖,粉末あめ,水あめ,ごま塩,食塩,すりごま,セロリーソルト,うま味調味料,香辛料,アイスクリームのもと,シャーベットのもと,コーヒー豆,穀物の加工品,春巻き,春巻きの皮,ぎょうざ,しゅうまい,すし,たこ焼き,弁当,ラビオリ,イーストパウダー,こうじ,酵母,ベーキングパウダー,即席菓子のもと,パスタソース,酒かす,米,脱穀済みのえん麦,脱穀済みの大麦,食用グルテン,食用粉類」,第35類「トレーディングスタンプの発行,経営の診断又は経営に関する助言,市場調査又は分析,商品の販売に関する情報の提供,輸出入に関する事務の代理又は代行,広告用具の貸与,求人情報の提供,飲食料品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」,第40類「食料品の加工,食料加工用又は飲料加工用の機械器具の貸与,浄水装置の貸与,ボイラーの貸与,業務用加湿器の貸与,業務用空気清浄器の貸与,暖冷房装置の貸与」及び第43類「飲食物の提供,業務用加熱調理機械器具の貸与,業務用食器乾燥機の貸与,業務用食器洗浄機の貸与,加熱器の貸与,食器の貸与,調理台の貸与,流し台の貸与,カーテンの貸与,家具の貸与,壁掛けの貸与,敷物の貸与,おしぼりの貸与,タオルの貸与」を指定商品及び指定役務として,同28年5月20日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
請求人が請求の理由において引用する登録商標は,以下のとおりであり,現に有効に存続しているものである。
1 登録第4543841号商標(以下「引用商標1」という。)は,別掲2のとおりの構成からなり,平成12年12月18日に登録出願され,第42類「中華料理を主とする飲食物の提供」を指定役務として,同14年2月15日に設定登録されたものである。
2 登録第4378569号商標(以下「引用商標2」という。)は,別掲3のとおりの構成からなり,平成11年2月19日に登録出願され,第42類「ラーメンの提供」を指定役務として,同12年4月21日に設定登録されたものである。
なお,引用商標1及び引用商標2をまとめていうときは,以下「引用商標」という場合がある。

第3 請求人の主張
請求人は,結論同旨の審決を求め,その理由を要旨以下のように述べ,証拠方法として,甲第1号証ないし甲第6号証を提出した。
1 請求の理由
本件商標の第43類「飲食物の提供」は,商標法第4条第1項第11号に該当し,同法第46条第1項第1号により無効とされるべきである。
2 具体的な理由
請求人の所有に係わる引用商標1及び引用商標2は,本件商標の先願に係わるもので各商標は類似しており,その指定役務も同一又は類似するものである。
(1)外観について
本件商標の黒塗り部分の内部中央に欧文字で「MiSYA」と横書きしてなり,「Y」の上部に黒色の円のような図形,その右上部には落款のような赤い図形部分を有し,「S」の上部に「RAMEN」と記載され,「S」の下部に平仮名3文字で「みそや」と横書きされたものと,引用商標1の「味噌屋」と,引用商標2の「らーめん工房」及び「味噌屋」と対比すると,外観において相違する。
(2)称呼について
本件商標は「MiSYA」から「ミシャ」の称呼を生じ,「MiSYA」と「Y」の上部の円で「MiSOYA」から「ミソヤ」の称呼を生じ,さらに,「みそや」から「ミソヤ」の称呼を生じる。
引用商標1の「味噌屋」からは「ミソヤ」の称呼を生じ,同様に引用商標2の「らーめん工房」からは「ラーメコウボウ」と,「味噌屋」から「ミソヤ」の称呼を生じる。
したがって,本件商標と引用商標は,称呼において同一である。
(3)観念について
観念において本件商標は「MiSOYA」と「みそや」から「味噌を販売する店」を意味する。
これに対して引用商標1の「味噌屋」から「味噌を販売する店」を意味する。
さらに,引用商標2と対比すると,「らーめん工房」から「ラーメンを作る所」の観念を有し,また,「味噌屋」から「味噌を販売する店」を意味する。
したがって,本件商標と引用商標は,観念において同一である。
(4)指定役務について
本件商標は,指定役務が「飲食物の提供」で,引用商標1は,指定役務が「中華料理を主とする飲食物の提供」であり,引用商標2は,指定役務が「ラーメンの提供」で,互いに同一の類似群に属する役務である。
(5)周知著名性について
引用商標の「味噌屋」は,請求人が経営するラーメン店の店名として使用しているもので,全国的に周知著名で自他商品識別力を十分に有するものである。
請求人が,経営するラーメン店の「味噌屋」の商標を使用して甲第4号証に示すようにカップ麺の大手である日清食品株式会社との間で商品化権使用許諾を締結して,全国7,600店のコンビニエンスストア・ローソンで販売し,第1回目の平成15年には当初生産した21万食が完売となり,その後13回にわたって販売され,現在まで252万食を下らない数のカップ麺が販売されており,「味噌屋」は全国的に著名で自他商品識別力ある商標である。
被請求人は「味噌屋」という文言は,「八百屋」,「米屋」等のように,取引に際し必要的適切な表示として何人もその使用を欲するものであるから,特定人にその独占的使用を認めるのは公益上適当でないと審査段階の意見書で主張しているが,登録商標はその指定商品や指定役務との関係で登録が認められるものである。つまり,引用商標1は,「中華料理を主とする飲食物の提供」の役務について,引用商標2は,「ラーメンの提供」について「味噌屋」を独占使用することができる権利であり,味噌を販売している味噌屋の使用を禁止する権利ではなく公益上問題は全くない。この被請求人の主張を入れて登録となった審査は不当である。
(6)結論
したがって,本件商標は,引用商標と「ミソヤ」の称呼が同一で,しかも指定役務が同一又は類似しており,本件商標の第43類「飲食物の提供」の登録は商標法第4条第1項第11号に違反してなされたものである。
(7)利害関係について
請求人と,被請求人とは請求人の所有する引用商標1について平成25年11月5日に商標の通常使用権設定契約を締結し,使用料を毎年請求人に支払うことで合意した。使用料は平成25年からの3年間契約どおりに支払われた。
しかしながら,平成28年5月23日付で被請求人から請求人に対して解除通知書が送付され,使用料の支払いを拒否した。しかるに現実には被請求人のフランチャイズ加盟店で,店名に依然として「味噌屋」を使用していることが判明した。
このため請求人は被請求人に対して商標権侵害差止等請求訴訟を平成28年7月21日に福島地方裁判所郡山支部に提訴(平成28年(ワ)第195号商標権侵害差止等請求事件)した。
「みそや」の文字を構成要件とする本件商標の存在により,請求人の業務との混同により多大の不利益を被るおそれがあるから,本件商標の登録無効審判を請求する利益がある。

第4 被請求人の主張
被請求人は,本件審判の請求は成り立たない,審判費用は請求人の負担とする,との審決を求め,その理由を要旨以下のように述べ,証拠方法として,乙第1号証ないし乙第17号証を提出した。
1 答弁の要旨
多数の図形要素が一体不可分に結合された本件商標と,独特の書体により縦書きされた引用商標とは,同一又は類似する役務に使用されたとしても需要者が誤認混同を生じるおそれのない互いに非類似の商標である。
特に,引用商標の自他役務識別力はその外観にあり,称呼・観念の点において自他役務識別力が乏しいものである。そして,本件商標と引用商標とは,その外観を全く異にする別異のものであるから,需要者が誤認混同を生じるおそれのない互いに非類似の商標である。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものではないから,その登録は維持されるべきものである。
2 請求人の主張に対する被請求人の反論
(1)外観の対比について
本件商標は,横長長方形の黒塗り部分の内部中央に最も看者の目を惹く態様の朱色の大きな欧文字で「MiSYA」と横書きしてなり,その右上部分には落款のような赤い図形部分を有し,前述の「MiSYA」との朱書き部分の「Y」の上部に黒色の毛筆体で下部が切れた円のような図形を有してなり,さらに,黒塗り部分の上下中央の楕円形の白抜き部分内に「RAMEN」及び「みそや」と横書きしてなる外観である。これに対して,引用商標1は,独特の丸文字のような書体で大きな文字で「味噌屋」と縦書きしてなる外観であり,引用商標2は,引用商標1の「味噌屋」との縦書き文字部分と同一の構成よりなり,その左上部にやや小さな文字で「ら?めん工房」と縦書きしてなる外観である。
このように,黒塗りの横長長方形内の朱書きの大きな文字を基調とする図形商標である本件商標と,特徴ある字体で縦書きされた文字列である引用商標とは,その外観上の類似点・共通点が一切見出せないといっても過言ではなく,たとえ,本件商標と引用商標が同一又は類似の役務に使用されたとしても,一般の需要者・取引者が誤認混同することは考えられない程に外観上の大きな相違を有する外観上非類似の商標である。
(2)称呼の対比について
本件商標から生じる称呼と,引用商標から生じる称呼が一部類似する場合があることは被請求人も認めるところであるが,両商標から生じる称呼を詳細に検討すると次のとおりである。
まず,縦書きの文字列である引用商標よりは,それぞれの構成文字に相応して「ミソヤ」及び「ラーメンミソヤ」との称呼が生じる。これに対して,図形商標である本件商標のうち,最初に目につく大きな朱書き部分「MiSYA」からは「ミスヤ」との称呼が生じ,「Y」の上部の円をアルファベットの「O(オー)」とみれば,「MiSOYA」となり,そこから「ミソヤ」との称呼が生じる。さらに,本件商標上下中央の楕円形の白抜き部分からは構成文字に相応して「ラーメン」及び「ミソヤ」の称呼が生じ,右上の落款部分には「味噌屋」の文字が認識されるから,そこからも「ミソヤ」との称呼が生じる。
そうすれば,本件商標と引用商標とは「ミソヤ」の称呼を共通にする場合があるということになる。ただし,この「ミソヤ」との称呼を生じる部分が商標としての機能を果たし得ない部分であり商標の類否判断に影響しない部分であることは後述のとおりである。
(3)観念の対比について
請求人は,本件商標及び引用商標から生じる観念について,辞書等の記載を引用することなく独自の見解を述べているが,辞書等を参酌してその観念を考察するに,「広辞苑(第六版)」によれば「みそ【味噌】:調味料の一つ。赤味噌・白味噌などの種類がある。」(乙2),「や【屋・家】:《接尾》その職業の家またはその人を表す語。『花屋』『八百屋』。家号や雅号,書斎に用いる語。」(乙3),「ラーメン【拉麺】:(中国語から)中国風に仕立てた汁そば」(乙4),「こうぼう【工房】:美術家や工芸家などの仕事場。アトリエ」(乙5)とある。
したがって,引用商標1からは「味噌を作ること,売ることを職業とする家またはその人」との観念が生じ,引用商標2からは「ラーメンを作る仕事場/味噌を作ること,売ることを職業とする家またはその人」との観念が生じるといえる。
これに対して,本件商標において,大きく朱書きされた「MiSYA」の文字は,即座に我が国において親しまれた英単語等を想起させるものではなく,一見すると特定の観念が生じない文字部分であるかのように認識され,黒塗り部分の上下中央の楕円形の白抜き部分内の「RAMEN」及び「みそや」との文字からは「ラーメン」及び「味噌を作ること,売ることを職業とする家またはその人」との観念が生じる。この下部の「みそや」との平仮名部分をみれば,上記の「MiSYA」の「Y」の上部にある黒色の円をアルファベットの「O(オー)」であると認識し,全体として「MiSOYA」と読むこともできるが,そこから生じる観念は,前記の「味噌を作ること,売ることを職業とする家またはその人」と同一である。
したがって,本件商標と引用商標とは,「味噌を作ること,売ることを職業とする家またはその人」という観念を共通にする場合があることとなる。ただし,後述のとおり,この観念は取引に際し必要適切な表示として何人もその使用を欲するものであるから,特定人によるその独占使用を認めるのを公益上適当としないものであるとともに自他役務識別力を欠き,商標としての機能を果たし得ない部分であるから,商標の類否判断に影響しない部分である。
(4)指定役務について
本件商標の指定役務中,第43類の「飲食物の提供」と,引用商標の指定役務とが,同一又は類似する役務である点については,被請求人は争わない。
(5)引用商標の周知著名性について
請求人は,請求書「(5)周知著名性」との箇所において,引用商標の周知著名性を主張し,引用商標1を使用したカップ麺について「現在まで252万食を下らない数のカップ麺が販売されており『味噌屋』は全国的に著名で自他商品識別力がある商標である」と主張する。
しかし,以下の3点において明らかに失当である。
ア 請求人の主張の意図が不明である点
請求人が主張する本件無効理由は,本件商標が商標法第4条第1項第11号に該当するというものであるが,請求人が引用商標の周知著名性に関する主張をなしている点からは,本件商標について商標法第4条第1項第10号若しくは同第15号の該当性を主張するものであるとも理解することができる。しかし,そのような主張は,新たな無効理由の根拠法条の追加であるから,本件審判請求書の要旨を変更するものであり,認められない。
イ 証拠に基づかない主張である点
請求人は,日清食品株式会社との契約,全国7,600店のコンビニエンスストアでの販売,252万食の販売等,美辞麗句を羅列するが,その何れについても客観的な証拠の提出がなく,何れも認めることはできない。
ウ カップ麺(第30類の商品)の周知著名性と本件審判との関係
引用商標2の指定役務は,第42類の役務であるから,カップ麺への使用は登録商標の使用に該当せず,また,第30類の商品たるカップ麺についての周知著名性が,本件商標の指定役務中,第43類の「飲食物の提供」についての登録可否に関する本件審判と,どのような関係にあるのか,不明である。
(6)「味噌屋」の語の自他役務識別力について
請求人の理解に資するべく記載すると,引用商標に係る商標権は,引用商標1「味噌屋」及び引用商標2「らーめん工房/味噌屋」と同一又は類似する商標を,それぞれの指定役務と同一又は類似する役務について,日本国内において独占的に使用することができる権利である。
加えて,商標の自他役務識別力の有無について全く誤った理解に基づくものであって,失当である。
ア 「飲食物の提供」との関係における「味噌屋」との語の自他役務識別力
請求人は「味噌を販売している味噌屋の使用を禁止する権利ではなく公益上問題は全くない。」と主張するが,確かに「味噌屋」との語について,明らかに自他役務識別力を有さないであろうと考えられる役務は,例えば「味噌に関する情報の提供」,「味噌の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」等の役務が考えられる。しかし,「味噌」は我が国において一般的に調味料として多用されるものであるから,「レストランに入り味噌だけを食べる」ということは通常では考えられない。このように「味噌」という調味料を表す語を含む「味噌屋」との語について,「八百屋」,「米屋」等の他の語と同列に議論する請求人の主張は誤りである。したがって,「味噌屋」との語が「飲食物の提供」の役務に使用されていた場合には,一般の需要者・取引者は「味噌味の飲食物の提供,味噌を使用した飲食物の提供」と認識し,理解するのが極めて一般的であって,その点において,「味噌屋」との語は,「飲食物の提供」の役務に関して自他役務識別力が無いか,若しくは非常に弱いといわざるを得ない。実際,「味噌屋」との看板を掲げた飲食店において,味噌そのものを食べにくる需要者は想定し難い。
よって,「味噌屋」との語は,「飲食物の提供」の役務との関係において自他役務識別力が無いか,若しくは非常に弱いものである。
イ 引用商標の自他役務識別力について
前記のとおり「味噌屋」との語(標準文字商標を含む。)は,「飲食物の提供」の役務との関係において自他役務識別力が無いか,若しくは非常に弱いものであるが,引用商標は,標準文字商標ではなく,独特の丸文字の書体による縦書きの構成よりなる商標であるから,その外観上の特徴に起因する自他役務識別力を具備するものであって,それ故に現に商標登録されているものである。
つまり,引用商標において,自他役務識別力を発揮する部分は,その外観の点においてであり,その他の観念・称呼の点においては自他役務識別力が無いか,若しくは非常に弱いものである。
ウ 請求人の主張について
以上のとおり,引用商標は,その特徴ある外観に自他役務識別力を具備するものであるが,請求人は,恰も引用商標が標準文字商標であるかのような,若しくは,引用商標が標準文字商標の「味噌屋」と類似するものであるかのような主張を展開しているが,仮にそうであるとするならば,請求人の主張は,引用商標の外観上の自他役務識別力の具備を自ら否定するに等しく,結果として,引用商標に商標法第3条第1項第3号該当性の無効理由が存することを自白するものである。
(7)「結論」に対する反論
請求人の主張は,称呼類似だけを理由として本件商標と引用商標を互いに類似する商標であると結論付けているが,「商標の外観,観念又は称呼の類似は,その商標を使用した商品につき出所の誤認混同のおそれを推測させる一応の基準にすぎず,したがって,上記三点のうちその一において類似するものでも,他の二点において著しく相違することその他取引の実情等によって,商品の出所に誤認混同をきたすおそれの認めがたいものについては,これを類似商標と解すべきでない(最高裁昭和43年2月27日第三小法廷判決・民集22巻2号399頁参照)。」ものであるから,請求人の主張は失当である。
3 被請求人の主張
(1)外観の相違性と,観念・称呼の類似性
引用商標において,「味噌屋」との語に相応して生じる「味噌を作ること,売ることを職業とする家またはその人」との観念が生じ,「ミソヤ」との称呼が生じる。ここで,引用商標1の指定役務は「中華料理を主とする飲食物の提供」であり,引用商標2の指定役務は「ラーメンの提供」であるところ,中華甘味噌ともいわれる「甜麺醤」や,辛味噌である「豆板醤」が中華料理の調味料として多用されていること,及び「味噌ラーメン」が醤油・塩・豚骨と並ぶ代表的なラーメンの味付けであることを考え併せると,「味噌屋」との語は「味噌味の中華料理・ラーメンの提供,味噌を使用した中華料理・ラーメンの提供」であることを認識させるにすぎず,自他役務の識別標識として機能するものではないことは明らかである。
これに対し,引用商標の外観は,前述のとおり特徴ある書体で縦書きされた構成よりなるから,一定の自他役務識別力を有するものである。
してみれば,たとえ本件商標と引用商標とにおいて,称呼・観念の点において類似しようとも,その点は商標の自他役務の識別機能を有さない部分であるから,役務の出所に誤認混同をきたすおそれの有無には何ら影響しないものである。
これに対して,引用商標の外観は,唯一自他役務の識別機能を発揮する部分であるから,本件商標と引用商標とにおいて,外観が類似するとすれば,役務の出所に誤認混同をきたすおそれが生じることとなる。
しかしながら,前述のとおり,本件商標と引用商標との外観は,一見して視別することができる全く別異の外観を有するものであるから,両商標が時と場所を異にして同一又は類似する役務に使用されたとしても,役務の出所につき誤認混同が生じる恐れはなく,互いに非類似の商標であるといえる。
(2)取引の実情
本件商標の商標権者である株式会社トライ・インターナショナルは,2003年4月21日に千葉県千葉市に設立され(本店所在地:千葉県千葉市花見川区武石町1ー227ー1),今年で14年目を迎えた味噌らーめん専門店(資本金:600百万円:乙6)であり,暖簾分け・フランチャイズ体制を基盤に国内外で事業活動を続けており,商標権者の日本における事業実績は,平成28年3月末決算で単独売上高2,012百万円に上っている(乙7,乙8)。また,商標権者は,味噌作りの技術・経験を強みとして,事業展開については暖簾分け・フランチャイズ体制を基盤に,加盟店に対する研修プログラム,開業準備から開業後の運営フォローまで,充実した支援体制を完備するなどし(乙9),現在,日本全国各地(北海道:1店舗,関東:42店舗,中部:18店舗,近畿:10店舗,中四国:1店舗,九州:7店舗)に加盟店等を有し(乙10),平成28年3月末決算ではチェーン売上高合計6,049百万円に達し,また外国においては,海外売上高774百万円であり(乙8),日本国内における事業実績・ビジネス体制を踏まえ,外国における新規顧客・市場シェアを獲得すべく,2008年6月のブラジル出店をスタートに(乙7),現在,アメリカ(5店舗:シリコンバレイ,ニューヨーク,シカゴ,グアム,ラスベガス,),カナダ(1店舗:モントリオール),ブラジル(1店舗:サンパウロ),マカオ(1店舗:タイパ),台湾(1店舗:台北市),タイ(3店舗:バンコク),ベトナム(2店舗:ホーチミン市郊外・カナリー)の各地での出店を果たしており(乙11)。外国各店舗に関しても,日本の本社による徹底した運営管理を行っているので,現地での充実した研修プログラム・フォロー体制を実現し,安定した事業基盤を構築しており,外国における事業実績を重ねてきた商標権者は,これまでに5店舗(シリコンバレイ,ニューヨーク,シカゴ,グアム,ラスベガス)の出店を実現したアメリカにおいて,本件商標と同一の商標(米国登録番号:4978533号)については,2016年6月14日に商標登録されている(乙12)。
このように本件商標は,自他商品役務識別機能及び出所表示機能を十分に発揮するものであり,本件商標には事業者としての信用・信頼が着実に蓄積しているものである。レストランの評価を星の数で表すことで知られ,毎年美食家の注目を集める「ミシュランガイド」(ニューヨーク版)の2013年?2016年の4年連続で商標権者の店舗が掲載され,話題性・周知性を獲得していることからも,本件商標は,商標権者の業務に係る商品・役務を表示するものとして,需要者の間に広く認識されていることは明らかである(乙13)。
なお,本件商標については,今後も安心して海外事業展開を推進すべく,国際登録(指定国:欧州・ベトナム:乙14)及びカナダ(出願番号:1748500:乙15)への商標登録出願をしている。さらに商標権者は,インターネットホームページのURLに「www.misoya.net」を使用し,日本語ページのみならず,英語及び中国語のページをも備えている(乙16,乙17)。
(3)出所の誤認混同の恐れ
上記のように,本件商標は日本国内のみならず広く海外においても使用されている商標であって,需要者の間に広く認識されているものであるから,一般の需要者・取引者が本件商標と引用商標とに離隔的に接した場合であっても,本件商標の周知性及び引用商標の自他商品・役務識別力の希薄性(観念及び称呼の点において自他商品・役務識別力を有さない)により,商品・役務の出所につき誤認混同することは有り得ないといわざるを得ない。そうすれば,「商標の類否は,対比される両商標が同一又は類似の商品に使用された場合に,商品の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあるか否かによって決すべきであるが,・・・(中略)・・・取引の実情等によって,商品の出所に誤認混同をきたすおそれの認めがたいものについては,これを類似商標と解すべきでない」(最高裁昭和43年2月27日第三小法廷判決・民集22巻2号399頁参照)との判例に基づいて考察すれば,本件商標と引用商標とを類似商標と解することはできないものである。
(4)まとめ
以上のとおり,本件商標と引用商標とは,それぞれの指定役務との関係において自他役務の識別機能を有さない観念・称呼の点において同一又は類似するものの,自他役務の識別機能を最も発揮する外観の点において非常に大きな差異を有するものであるから,互いに非類似の商標であるといえるものである。さらに,本件商標は商標権者の使用によって,既に日本国内及び海外において需要者の間に広く認識されているものであり,そのような取引の実情を考慮すれば,一般の需要者・取引者が本件商標と引用商標とに離隔的に接した場合であっても,役務の出所につき誤認混同することはなく,それ故に,本件商標と引用商標とを類似商標と解すべきではない。
4 結語
以上のとおり,請求人の主張はいずれも理由がなく,本件商標は商標法第46条第1項第1号の規定により無効とされるべきものではない。

第5 当審の判断
1 本件審判の請求の利益について
請求人は,被請求人に対し商標権侵害差止等請求訴訟(平成28年(ワ)第195号福島地裁)を提訴しており,本審判を請求する利害がある旨を主張している。この点について,被請求人は何ら反論しておらず,当事者間に争いがないので,当審は,請求人が本件審判の請求人適格を有するものと判断する。
2 商標法第4条第1項第11号該当性について
(1)本件商標について
本件商標は,別掲1のとおり,黒塗り長方形のほぼ中央の白抜きされた部分に,文字及び落款が大きく表示されているところ,その文字部分は,「O」の部分が黒色で毛筆風の書体で表されているとしても,「MiSOYA」(「O」の部分以外は赤色で書されている。以下同じ。)と看取されるものであり,また,その落款には,赤色の背景に白抜きで「味噌屋」の漢字が表されているものである。
さらに,これらの部分を挟んで,上部に角が丸い横長の長方形の白抜き部分に「RAMEN」の欧文字,及び,下部に角が丸い横長の長方形の白抜き部分に「みそや」の平仮名を横書きしてなるものである。
そして,本件商標の構成中,上部の「RAMEN」の文字部分は,「ラーメン」,「拉麺」に通じる文字で,「中国風に仕立てた汁そば」(乙4)を意味する語であるから,本件商標の指定役務のとの関係においては,役務の質を表すものであって,自他役務の識別標識としての機能を有しないか,又は,極めて弱いものである。
また,落款中にある「味噌屋」の文字部分は,「味噌」の文字が「調味料の一つ。赤味噌・白味噌などの種類がある。」(乙2)を,「屋」の文字が,「その職業の家またはその人を表す語。『花屋』『八百屋』。家号や雅号。」(乙3)を意味する語であることから,全体として「味噌を売る店」程の意味合いを理解させるものである。
そして,中央に大きく表された「MiSOYA」の文字部分は,落款中の「味噌屋」の文字と,下部に表された「みそや」の文字があることからすれば,該部分は,これらの文字の読みを欧文字で表したものと理解されるとみるのが自然である。
そうすれば,本件商標は,落款中の「味噌屋」の文字,中央に大きく表された「MiSOYA」の文字及び下部の「みそや」の文字に相応して,「ミソヤ」の称呼を生じ,また,観念ついては,「味噌を売る店」の観念を生じるものである。
(2)引用商標について
ア 引用商標1について
引用商標1は,別掲2のとおり,ややレタリングされた書体で「味噌屋」(「噌」の文字は,異体字で表されている。以下同じ。)の漢字を縦書きしてなるところ,該文字は,上記2に記載した「味噌屋」の文字と同様に,その構成文字に相応して,「ミソヤ」の称呼を生じ,「味噌を売る店」の観念を生じるものである。
イ 引用商標2について
引用商標2は,別掲3のとおり,右側に小さな文字で「ら?めん工房」と縦書きし,その左側に,一文字分下げたところから,ややレタリングされた書体で「味噌屋」(「噌」の文字は,異体字で表されている。以下同じ。)の漢字を縦書きしてなるものである。
そして,本件商標の構成中,「らーめん」の文字部分は,上記2のとおり「中国風に仕立てた汁そば」等を意味する語であり,「工房」の文字部分は,「美術家や工芸家などの仕事場。アトリエ」等を意味する語(乙5)であって,全体として,「ラーメンを作るところ」程の意味合いを理解させるものであるから,該「らーめん工房」の文字部分は,その指定役務との関係においては,役務の質,役務の提供の場所を表すものというのが相当であって,自他役務の識別標識としての機能を有しないか,又は,極めて弱いものである。
また,その構成中,「味噌屋」の文字部分は,「味噌を売る店」程の意味合いを理解させるものである。
そうすれば,引用商標2は,その左側の「味噌屋」の文字に相応して「ミソヤ」の称呼を生じ,「味噌を売る店」の観念を生じるものである。
(3)本件商標と引用商標の類否について
本件商標と引用商標の類否を検討すると,両者は,外観においては,上記のとおり構成態様が異なるものであるから,一見して明らかに相違するものであるが,本件商標の構成中の落款における「味噌屋」の文字部分と引用商標1の「味噌屋」及び引用商標2の構成中「味噌屋」の文字は,その文字の書体は異なるものの共に「味噌屋」の文字からなり,外観上,「味噌屋」の文字部分において,近似した印象を与えるものである。
次に,称呼においては,両者は,共に「ミソヤ」の称呼を生じるから,称呼上,同一である。
さらに,観念においては,両者は,「味噌を売る店」の観念を生じるから,観念上,同一である。
そうすると,本件商標は引用商標とは,外観においては「味噌屋」の文字部分において近似した印象を与えるものであり,称呼及び観念において共通するものであるから,両者の外観,称呼及び観念は,「味噌屋」の文字に繋がるものであって,取引者,需要者に与える印象,記憶,連想等を総合して全体的に考慮すれば,両者は,相紛れるおそれのある類似の商標と判断するのが相当である。
また,本件商標の指定役務中の「飲食物の提供」は,引用商標1の指定役務「中華料理を主とする飲食物の提供」及び引用商標2の指定役務「ラーメンの提供」とは,同一又は類似の役務である。
(4)小括
してみれば,本件商標は,引用商標と類似する商標であって,その指定役務は,引用商標の指定役務と同一又は類似のものであるから,本件商標は,類似の商標であるといわざるを得ない。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第11号に該当する。
3 被請求人の主張について
(1)「味噌屋」の語の自他役務識別力について
被請求人は,「『味噌屋』との語が『飲食物の提供』の役務に使用されていた場合には,一般の需要者・取引者は『味噌味の飲食物の提供,味噌を使用した飲食物の提供』と認識し,理解するのが極めて一般的であって,その点において,『味噌屋』との語は,『飲食物の提供』の役務に関して自他役務識別力が無いか,若しくは非常に弱いといわざるを得ない。」及び「引用商標は,標準文字商標ではなく,独特の丸文字の書体による縦書きの構成よりなる商標であるから,その外観上の特徴に起因する自他役務識別力を具備するものであって,それ故に現に商標登録されているものである。つまり,引用商標において,自他役務識別力を発揮する部分は,その外観の点においてであり,その他の観念・称呼の点においては自他役務識別力が無いか,若しくは非常に弱いものである。」旨を主張している。
しかしながら,被請求人は,「飲食物の提供」の役務に,「味噌屋」の語が使用されている事実を証拠として提出しておらず,また,その「味噌屋」の語が需要者,取引者において,「味噌味の飲食物の提供,味噌を使用した飲食物の提供」と認識し,理解されているとの事情も証拠として提出していない。
そうすると,被請求人は,「味噌屋」の文字に自他役務識別力がないか,若しくは非常に弱いものであると主張するのみであって,「味噌屋」の文字が具体的な役務の質等を表すものとして使用されているとはいえないものである。
そして,「味噌屋」の文字が「味噌を売る店」程の意味合いを理解させるとしても,引用商標の指定役務との関係において具体的な役務の質等を表示するとはいえないものであるから,該文字は,自他役務の識別標識として十分機能し得るものであって,引用商標においても,該文字をもって,取引に当たるものというのが相当である。
してみれば,引用商標は,共に自他役務の識別機能を有する「味噌屋」の文字を有しており,該文字がややレタリングされた書体で縦書きしてなるとしても,被請求人のいうように,その外観上の特徴に起因して商標登録されたものではない。
(2)外観の相違と観念・称呼の類似性について
被請求人は,「引用商標において,『味噌屋』との語に相応して生じる『味噌を作ること,売ることを職業とする家またはその人』との観念が生じ,『ミソヤ』との称呼が生じる。ここで,引用商標1の指定役務は『中華料理を主とする飲食物の提供』であり,引用商標2の指定役務は『ラーメンの提供』であるところ,・・・『味噌屋』との語は『味噌味の中華料理・ラーメンの提供,味噌を使用した中華料理・ラーメンの提供』であることを認識させるにすぎず,自他役務の識別標識として機能するものではないことは明らかである。これに対し,引用商標の外観は,前述のとおり特徴ある書体で縦書きされた構成よりなるから,一定の自他役務識別力を有するものである。・・・本件商標と引用商標との外観は,一見して視別することができる全く別異の外観を有するものであるから,両商標が時と場所を異にして同一又は類似する役務に使用されたとしても,役務の出所につき誤認混同が生じるおそれはなく,互いに非類似の商標であるといえる。」旨を主張している。
しかしながら,上記(1)のとおり,引用商標の「味噌屋」の文字は,「味噌を売る店」程の意味合いを理解させるものであって,仮に,「ラーメンの提供」に使用しても,「味噌味の中華料理・ラーメンの提供,味噌を使用した中華料理・ラーメンの提供」であることを直ちに理解し,認識させるものではない。
そして,上記2(3)のとおり,本件商標と引用商標とは,外観においては「味噌屋」の文字部分において近似した印象を与えるものであり,称呼及び観念において共通するものであるから,両者の外観,称呼及び観念は,「味噌屋」の文字に繋がるものであって,取引者,需要者に与える印象,記憶,連想等を総合して全体的に考慮すれば,両者は,相紛れるおそれのある類似の商標である。
(3)取引の実情
被請求人は,「本件商標の商標権者である株式会社トライ・インターナショナルは,・・・今年で14年目を迎えた味噌らーめん専門店であり,暖簾分け・フランチャイズ体制を基盤に国内外で事業活動を続けており,商標権者の日本における事業実績は,平成28年3月末決算で単独売上高2,012百万円に上っている(乙7,乙8)。また,商標権者は,味噌作りの技術・経験を強みとして,事業展開については暖簾分け・フランチャイズ体制を基盤に,・・・現在,日本全国各地(北海道:1店舗,関東:42店舗,中部:18店舗,近畿:10店舗,中四国:1店舗,九州:7店舗)に加盟店等を有し(乙10),平成28年3月末決算ではチェーン売上高合計6,049百万円に達し,また外国においては,海外売上高774百万円であり(乙8),日本国内における事業実績・ビジネス体制を踏まえ,外国における新規顧客・市場シェアを獲得すべく,2008年6月のブラジル出店をスタートに(乙7),現在,アメリカ(5店舗),カナダ(1店舗),ブラジル(1店舗),マカオ(1店舗),台湾(1店舗),タイ(3店舗),ベトナム(2店舗)の各地での出店を果たしており(乙11)・・・アメリカにおいて,本件商標と同一の商標(米国登録番号:4978533号)については,2016年6月14日に商標登録されている(乙12)。このように本件商標は,自他商品役務識別機能及び出所表示機能を十分に発揮するものであり,本件商標には事業者としての信用・信頼が着実に蓄積しているものである。」旨を主張している。
そうすると,被請求人に係るラーメン店の加盟店は,日本各地に79店舗,海外に14店舗が存在し,平成28年3月末のチェーン売上高60億4千9百万円,海外売上高7億7千4百万円である。
しかしながら,被請求人の提出した証拠からは,本件商標を掲げて営業している店舗は,国内に8店舗(海外は9店舗)しかなく,これらの店舗の売上高が上記全体の売上高のどの程度を占めるかが不明であり,また,被請求人のラーメン事業の我が国におけるラーメン業界の市場占有率(シェア)も不明である。さらに,本件商標を掲げて営業している店舗の宣伝広告等に関しては,宣伝広告額,宣伝広告量,宣伝広告の内容,時期及び範囲など,宣伝広告の実績を示す証左は見いだせないから,本件商標に事業者としての信用,信頼の蓄積,及び本件商標の使用によって,その周知性が獲得されているのかは不明である。
したがって,本件商標は,我が国において広く認識されているものと認めることはできない。
(4)出所の誤認混同のおそれについて
被請求人は,「本件商標は日本国内のみならず広く海外においても使用されている商標であって,需要者の間に広く認識されているものであるから,一般の需要者・取引者が本件商標と引用商標とに離隔的に接した場合であっても,本件商標の周知性及び引用商標の自他商品・役務識別力の希薄性(観念及び称呼の点において自他商品・役務識別力を有さない)により,商品・役務の出所につき誤認混同することは有り得ないといわざるを得ない。そうとすれば,『商標の類否は,対比される両商標が同一又は類似の商品に使用された場合に,商品の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあるか否かによって決すべきであるが,・・・(中略)・・・取引の実情等によって,商品の出所に誤認混同をきたすおそれの認めがたいものについては,これを類似商標と解すべきでない』(最高裁昭和43年2月27日第三小法廷判決)との判例に基づいて考察すれば,本件商標と引用商標とを類似商標と解することはできないものである。」旨を主張している。
しかしながら,上記(3)のとおり,本件商標は,我が国において広く認識されているものと認めることはできない。
そうすると,本件商標と引用商標とは,著名性を有することをもって区別されるというような事情にはないものである。
してみれば,上記2(2)のとおり,本件商標と引用商標は,両者の外観,称呼及び観念が,「味噌屋」の文字に繋がるものであって,取引者,需要者に与える印象,記憶,連想等を総合して全体的に考慮すれば,両者は,離隔的に観察した場合であっても,相紛れるおそれのある類似の商標であって,出所の誤認混同を生ずるものというのが相当である。
よって,被請求人の主張は,いずれも採用することができない。
4 まとめ
以上のとおり,本件商標の登録は,商標法第4条第1項第11号に違反してされたものであるから,同法第46条第1項の規定により,その登録を無効とする。
別掲 別掲1(本件商標:色彩については、原本参照。)



別掲2(引用商標1)



別掲3(引用商標2)



審理終結日 2017-06-21 
結審通知日 2017-06-27 
審決日 2017-07-12 
出願番号 商願2015-61005(T2015-61005) 
審決分類 T 1 12・ 261- Z (W43)
T 1 12・ 262- Z (W43)
T 1 12・ 263- Z (W43)
最終処分 成立  
前審関与審査官 白鳥 幹周佐藤 松江 
特許庁審判長 井出 英一郎
特許庁審判官 中束 としえ
榎本 政実
登録日 2016-05-20 
登録番号 商標登録第5851277号(T5851277) 
商標の称呼 ラーメンミソヤ、ラーメン、ミソヤ、ミソ 
代理人 特許業務法人共生国際特許事務所 
代理人 吉川 勝郎 

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