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審決分類 審判 一部無効 商品と役務の類否 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) X35
審判 一部無効 外観類似 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) X35
審判 一部無効 称呼類似 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) X35
審判 一部無効 観念類似 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) X35
管理番号 1344969 
審判番号 無効2017-890002 
総通号数 227 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2018-11-30 
種別 無効の審決 
審判請求日 2016-12-30 
確定日 2018-09-18 
事件の表示 上記当事者間の登録第5555563号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第5555563号の指定役務中、第35類「飲食料品中のサンドイッチ、中華まんじゅう、ハンバーガー、ピザ、ホットドッグ、ミートパイの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」についての登録を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5555563号商標(以下「本件商標」という。)は、「CHIDORIYA」の欧文字を標準文字で書してなり、平成23年12月21日に登録出願、第35類「飲食料品(菓子及びパンを除く)の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」を指定役務として、同24年12月27日に登録査定、同25年2月8日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
本件審判請求人(以下「請求人」という。)が、本件商標の登録の無効の理由において引用する商標は、以下の2件であり、これらをまとめていうときは「引用商標」という。
1 登録第1811505号商標(以下「引用商標1」という。)は、「チドリヤ」の片仮名を横書きしてなり、昭和58年12月9日に登録出願、第30類「菓子,パン」を指定商品として、同60年9月27日に設定登録され、その後、平成8年3月28日及び同17年9月13日に商標権の存続期間の更新登録がされ、同27年9月27日に商標権の存続期間が満了し、同28年6月8日に商標権の登録の抹消登録がされているものである。
2 登録第1811506号商標(以下「引用商標2」という。)は、「CHIDORIYA」の欧文字を横書きしてなり、昭和58年12月9日に登録出願、第30類「菓子,パン」を指定商品として、同60年9月27日に設定登録され、その後、平成8年3月28日及び同17年9月13日に商標権の存続期間の更新登録がされ、同27年9月27日に商標権の存続期間が満了し、同28年6月8日に商標権の登録の抹消登録がされているものである。

第3 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第8号証を提出した。
1 請求の理由
本件商標は、引用商標と類似する商標であって、本件商標の指定役務中「飲食料品中のサンドイッチ、中華まんじゅう、ハンバーガー、ピザ、ホットドッグ、ミートパイの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」は、引用商標の指定商品「菓子及びパン」に類似する。したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当するものであるから、同法第46条第1項の規定に基づき、その登録は無効とされるべきものである。
2 本件商標と引用商標の類否について
(1)称呼の同一性
本件商標は、標準文字にて「CHIDORIYA」とローマ字で書してなり、その構成文字に相応して「チドリヤ」の称呼を生ずるものである。
一方、引用商標1は、ゴシック文字にて「チドリヤ」の片仮名を横書きしてなり、「チドリヤ」の称呼を生ずるものである。
したがって、本件商標と引用商標1との相違点は、本件商標がローマ字表記であるのに対して、引用商標1が「チドリヤ」と片仮名表記であるという点だけであり、外観は異なるが、本件商標と引用商標1とは互いに称呼が同一である。
また、引用商標2は、ゴシック文字にて「CHIDORIYA」のローマ字を横書きしてなるところ、その構成文字に相応して「チドリヤ」の称呼を生ずるものである。
したがって、本件商標と引用商標2との相違点は、本件商標が標準文字であるのに対して、引用商標2がゴシック文字であり、書体が異なる以外は外観及び称呼が同一である。
(2)観念の類似性及び同一性
株式会社岩波書店発行の「広辞苑第6版」には、「チドリ」の称呼に関する記載として「千鳥」のみが存在する。
一方、検索サイト(Google、Yahoo!、Bing、goo、インフォシーク)にて、「チドリヤ」と「CHIDORIYA」を検索すると、検索文字「ちどりや」に対して、Googleの場合は「もしかして:千鳥屋」と表記され、Yahoo!の場合も「千鳥屋ではありませんか?」と表記される。そして、検索結果のほぼ9割が「千鳥屋」、「ちどりや」及び「CHIDORIYA」の文字であり、これ以外に検索されたのは、「馳どり屋」のみである。
この結果を踏まえれば、世間一般的には「チドリヤ」、「CHIDORIYA」という商標に接したときには、約9割以上の人が「千鳥屋」を観念するものであることが容易に理解できる。
したがって、本件商標と引用商標1とは、観念において類似である。
また、本件商標と引用商標2とは、外観及び称呼が同一なので、観念においても同一である。
(3)拒絶理由対応時における商標の類似性の認識
被請求人は、平成24年5月11日付け発送の拒絶理由の通知書(甲1)に対して、同年6月11日付けで提出した手続補正書にて、引用商標1及び2の指定商品「菓子及びパン」に対応する指定役務を削除し、指定役務を「飲食料品(菓子及びパンを除く)の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」と補正し、登録査定を受けている。
すなわち、被請求人は、本件商標と引用商標とが外観、観念及び称呼の点において、同一又は類似であるとの拒絶理由を回避するために、上記補正を行っている。
この事実は、審査時に、本件商標と引用商標とが外観、観念及び称呼の点において、同一又は類似であることを被請求人が認めたことを示している。
3 商品又は役務の類否について
(1)本件商標の指定役務中の「サンドイッチ、中華まんじゅう、ハンバーガー、ピザ、ホットドッグ、ミートパイ」は、いずれも基本的には小麦粉を原料とするパン生地を使用するものであることは周知の事実である。
これら個々の商品については、「広辞苑第6版」には、「サンドイッチ」は、「(イギリスの政治家サンドイッチ伯(4世1718?1792)の創案という)薄く切ったパンの間にハム・卵・野菜などを挟んだ食物」、「中華まんじゅう」は、「イーストなどを加えてふくらませた小麦粉の皮に、豚肉・野菜などを包んで蒸した中華饅頭。豚饅頭。にくまん」、「ハンバーガー」は、「ハンバーグステーキを丸いパンに挟んだもの。バーガー。」、「ピザ」は、「発酵させた小麦粉の生地を薄くのばし、トマトソースや野菜・魚介・チーズなどさまざまな具をのせ、焼いた食物。ピザパイ。ピッツァ。」、「ホットドッグ」は、「温めた細長いロールパンに切り目を入れ、芥子(からし)などを塗り、熱いソーセージを挟んだ食物」、「ミートパイ」は、「挽肉入りの具を包み込んで焼いたパイ」とそれぞれ記載されているように、いずれも親しまれた食物であって、日常一般に食されるものである。
(2)他方、引用商標の指定商品中の第30類「菓子及びパン」については、「広辞苑第6版」には、「菓子」は、「(「菓」はくだものの意)常食のほかに食する嗜好品。昔は多く果実であったが、今は多く米・小麦の粉、餅などに砂糖・飴などを加え、種々の形に作ったものをいう。和菓子と洋菓子とに大別。これに対し果実を水菓子という。」、「パン」は、「小麦粉(またはライ麦その他の穀粉)を主材料とし、これに水とイーストなどを加えてこね、発酵させてから焼き上げた食品。」とそれぞれ記載されているように、いずれも親しまれた食物であって、日常一般に食されるものである。
(3)そして、昨今は、需要者の洋食化や嗜好の多様化などにより、中華まんじゅう、ピザ、ミートパイや菓子パンを含むパンなどを常食としたり、おやつとして食するなど、いずれも、老若男女によって日常一般に食されるものであり、例えば、山崎製パン株式会社などの製パン会社が食パン、菓子パン、洋菓子等と共にサンドイッチや中華まん(中華まんじゅう)を製造販売している。
(4)また、例えば、ヴィドフランス(http://www.viedefranee.co.jp/)やスワンベーカリー(http://www.swanbakery.co.jp/)などの「パン屋、ベーカリー」といわれるような店舗では、「サンドイッチ、中華まんじゅう、ハンバーガー、ピザ、ホットドッグ、ミートパイ」と「あんぱん、クリームパン、ジャムパン、食パン、バンズ」等のパン類とが同一店舗において取り扱われ販売されている。
(5)そうすると、「サンドイッチ、中華まんじゅう、ハンバーガー、ピザ、ホットドッグ、ミートパイ」と「菓子及びパン」とは、生産部門、販売部門が一致することが多く、用途や需要者の範囲も一致する。
(6)したがって、引用商標と類似する本件商標がその指定役務中「サンドイッチ、中華まんじゅう、ハンバーガー、ピザ、ホットドッグ、ミートパイの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」について使用された場合、これに接する取引者、需要者は、該商品が引用商標を使用した「菓子及びパン」と同一の営業主によって製造又は販売されたものであるかのように、商品の出所について誤認混同するおそれがある。
(7)上記のような取引の実情を考慮すれば、本件商標の登録査定時において、本件商標の指定役務中の第35類「飲食料品中のサンドイッチ、中華まんじゅう、ハンバーガー、ピザ、ホットドッグ、ミートパイの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」と引用商標の指定商品中の第30類「菓子及びパン」とは、互いに類似するものであったといえる。
(8)本件商標の指定役務の第35類「サンドイッチ、中華まんじゅう、ハンバーガー、ピザ、ホットドッグ、ミートパイの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」が、引用商標の指定商品の第30類「菓子及びパン」に類似することについては、平成24年1月1日施行の「類似商品・役務審査基準」(国際分類第10版対応)(甲5)において、第30類に「菓子,パン,サンドイッチ,中華まんじゅう,ハンバーガー,ピザ,ホットドッグ,ミートパイ」の各商品について、互いに類似する商品又は役務であることが明記されている。
4 商品又は役務の類否の判断時期
(1)本件商標の出願時(平成23年12月21日)には、「類似商品・役務審査基準」(国際分類第9版対応)(甲6)が運用されており、これによれば、第35類に属する「サンドイッチ、肉まんじゅう、ハンバーガー、ピザ、ホットドッグ、ミートパイの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」と「菓子及びパン」とは非類似の商品又は役務として例示されていた。
(2)その後、「類似商品・役務審査基準」(国際分類第10版対応)(甲5)が平成24年1月1日に発効し、それに対応して商標法施行令別表及び同法施行規則別表の一部改正が行われ、「類似商品・役務審査基準」も国際分類第10版対応として変更され同日から運用されている。そして、国際分類第10版対応の「類似商品・役務審査基準」(甲5)では、上記「飲食料品中のサンドイッチ、中華まんじゅう、ハンバーガー、ピザ、ホットドッグ、ミートパイの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」と「菓子及びパン」とは類似する商品又は役務として明示されている。
(3)すなわち、「類似商品・役務審査基準」(国際分類第10版対応)(甲5)は、本件商標の出願時(平成23年12月21日)には発効しておらず、「類似商品・役務審査基準」(国際分類第10版対応)の「本審査基準実施に伴う措置について(甲7)」には、「3 本審査基準は平成24年1月1日より施行します。なお、本審査基準の導入にあたって、本審査基準施行後、施行前の出願の審査が継続している場合は、出願人の予見可能性の確保の観点から、『類似商品・役務審査基準』(国際分類第9版対応)以前の審査基準に沿って審査することとします。ただし、審査の過程において、出願人から本審査基準に沿った取引の実情に関する主張及び立証があった場合は、本審査基準への変更事由も十分に考慮したうえで判断することとします。」と明記してある。
(4)本件商標は、国際分類第9版対応の「類似商品・役務審査基準」(甲6)にしたがって、第35類に属する「飲食料品中のサンドイッチ、中華まんじゅう、ハンバーガー、ピザ、ホットドッグ、ミートパイの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」と「菓子及びパン」とは非類似の商品又は役務と誤って認定され登録されたものと思慮する。
(5)無効2013-890034の審決(甲8)において、登録第5281591号商標は、「類似商品・役務審査基準」(国際分類第10版対応)の発効日(平成24年1月1日)前の平成18年9月7日に出願し、同21年10月8日に登録査定、同年11月20日に設定登録されている。
しかしながら、当該審決の中では「本件商標の登録出願時及び登録査定時には、『サンドイッチ,肉まんじゅう,ハンバーガー,ピザ,ホットドッグ,ミートパイ』と『菓子及びパン』とは非類似の商品として例示されていたとしても、上記2で述べたとおり、両商品の製造場所及び販売場所の同一性並びに需要者の同一性などの実情からすれば、類似の商品であったというべきであり、上記『類似商品・役務審査基準』の変更経緯をも合わせ考慮すると、本件商標の登録査定時において、『サンドイッチ,肉まんじゅう,ハンバーガー,ピザ,ホットドッグ,ミートパイ』と『菓子及びパン』とは、類似する商品として取り扱うのが相当であったといわざるを得ない。以上のとおりであるから、本件商標は、その指定商品中、第30類『サンドイッチ,肉まんじゅう,ハンバーガー,ピザ,ホットドッグ,ミートパイ』については、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものであり、同法第46条第1項の規定に基づき、上記指定商品についての登録を無効にすべきものである。よって、結論のとおり審決する。」と結論付け、上記登録第5281591号商標は無効となっている。
(6)本件商標のように、「類似商品・役務審査基準」(国際分類第10版対応)(甲5)の発効前に出願され、登録査定時及び登録時には、既に「類似商品・役務審査基準」(国際分類第10版対応)(甲5)が発効していたのであるから、上記審決(甲8)に従えば「飲食料品中のサンドイッチ、中華まんじゅう、ハンバーガー、ピザ、ホットドッグ、ミートパイの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」と「菓子及びパン」とは、登録査定時において類似する商品・役務として取り扱われ、拒絶されてしかるべきものであったといわざるを得ない。
(7)すなわち、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。

第4 被請求人の主張
被請求人は、本件請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べた。
1 利害関係
請求人が本件審判請求についてどのような利害関係を有するのか、審判請求書において明らかにされていない。
請求人が本件審判請求について利害関係を有するものでない限り、本件審判請求は不適法であるとして却下されるべきである。
2 無効理由非該当性
(1)請求人は、引用商標の各指定商品と本件商標の第35類の指定役務中「サンドイッチ、中華まんじゅう、ハンバーガー、ピザ、ホットドッグ、ミートパイの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」が類似すると主張し、請求の理由において、その類似性の根拠として、取引の実情について主張しているが、そのような実情があったとする時期については不明であり、その主張を裏付ける証拠方法も何ら提出されていない。
(2)「類似商品・役務審査基準」(国際分類第10版対応)に示されているのは、「本審査基準の運用について」において明記されているとおり、類似商品又は類似役務であるとの推定であり、また、請求の理由において請求人が述べるとおり、平成24年1月1日の同審査基準の施行後、施行前の出願の審査が継続している場合は、「出願人の予見可能性の確保の観点から、『類似商品・役務審査基準』〔国際分類第9版対応〕以前の審査基準(『菓子及びパン』と『サンドイッチ,肉まんじゅう,ハンバーガー,ピザ,ホットドッグ,ミートパイ』は非類似)に沿って審査することとします。ただし、審査の過程において、出願人から本審査基準に沿った取引の実情に関する主張及び立証があった場合は、本審査基準への変更事由も十分に考慮したうえで判断することとします。」とされていたのであるから、取引の実情の時期及び立証は極めて重要である。
また、この点からして、請求の理由における「本件商標のように、『類似商品・役務審査基準』(国際分頬第10版対応)(甲5)の発効前に出願され、本件商標登録の査定時及び登録時には、既に『類似商品・役務審査基準』(国際分類第10版対応)(甲5)が発効していたのであるから、上記審決(甲8)に従えば『飲食料品中のサンドイッチ、中華まんじゅう、ハンバーガー、ピザ、ホットドッグ、ミートパイの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供』と『菓子及びパン』とは、登録査定時において類似する商品・役務として取り扱われ、拒絶されてしかるべきものであったといわざるを得ない。」との請求人の主張は失当である。
(3)よって、請求人の上記取引の実情に関する主張及びその主張に基づく引用商標の各指定商品と本件商標の第35類の指定役務中「サンドイッチ、中華まんじゅう、ハンバーガー、ピザ、ホットドッグ、ミートパイの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」が類似するという主張は成り立たない。
したがって、本件商標が商標法第4条第1項第11号に該当し、本件商標登録が無効理由を有するという請求人の主張は成り立たない。

第5 当審の判断
1 利害関係について
被請求人は、請求人が本件審判を請求することについて、どのような利害関係を有するかは不明であると主張している。
しかしながら、請求人による商標登録出願に対し、本件商標を引用して、商標法第4条第1項第11号に該当する旨の拒絶理由が通知されている事実がある。
したがって、請求人は、本件商標に係る商標権の存在によって、自己の商標登録出願が拒絶査定を受けるおそれがあるという、法的な不利益を受けるものであるから、請求人は、本件商標の無効審判を請求することについて利害関係を有しているといえる。
2 本件商標と引用商標の類否について
(1)本件商標
本件商標は、「CHIDORIYA」の文字を標準文字で表してなるものであり、「チドリヤ」の称呼が生じるものと認められる。また、「CHIDORIYA」の文字は、辞書等に記載のないことから、商標全体として直ちに特定の観念を生ずるとはいい難いものである。
(2)引用商標
引用商標1は、「チドリヤ」の片仮名を横書きしてなり、引用商標2は、「CHIDORIYA」の欧文字を横書きしてなるものであるから、引用商標1及び引用商標2からは、いずれも「チドリヤ」の称呼が生じることは明らかである。そして、引用商標を構成する「チドリヤ」及び「CHIDORIYA」の文字は、辞書等に記載のないことから、商標全体として直ちに特定の観念を生ずるとはいい難いものである。
(3)本件商標と引用商標の類否
商標の類否は、同一又は類似の商品に使用された商標が外観、観念、称呼等によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すべきであり、かつ、その商品の取引の実情を明らかにし得る限り、その具体的な取引状況に基づいて判断すべきものである(最高裁昭和39年(行ツ)第110号同43年2月27日第三小法廷判決・民集22巻2号399頁参照)。
これを踏まえて以下検討する。
本件商標と引用商標は、称呼において同一であると認められる。
次に、外観についてみるに、本件商標と引用商標2は、書体は異なるものの、共に「CHIDORIYA」の欧文字を普通に表してなるものであるから、外観において酷似するものというべきである。
また、本件商標と引用商標1とは、本件商標が、欧文字を書してなるものであるのに対し、引用商標1は、片仮名を書してなるものであるから、本件商標と引用商標の外観は同一であるとはいえない。
しかしながら、本件商標と引用商標1は、いずれも格別の特徴を有しない文字のみからなる商標であり、我が国において、同一語の片仮名表記とローマ字表記が併用されることが多く見られる事情があることを考慮すると、本件商標の指定役務及び引用商標の指定商品の需要者にとって、文字種が異なることは、本件商標と引用商標1が別異のものであることを認識させるほどの強い印象を与えるものではないというべきである。
また、本件商標と引用商標は、いずれも特定の観念を生ずるものとはいい難いものであるから、観念において比較することはできない。
そうすると、本件商標と引用商標とは、観念において比較することができないとしても、「チドリヤ」の称呼を共通にするものであって、外観については、本件商標と引用商標2とは、酷似するものであり、また、本件商標と引用商標1の外観における差異は、文字種が異なるにすぎないものであって、この差異が、本件商標と引用商標1が別異のものであることを認識させるほどの強い印象を与えるというような事情も見いだせないことから、外観、観念、称呼等によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すれば、本件商標と引用商標は、互いに相紛れるおそれのある類似の商標というのが相当である。
3 本件商標の指定役務と引用商標の指定商品との類否について
指定商品が類似のものであるかどうかは、商品自体が取引上誤認混同の虞があるかどうかにより判定すべきものではなく、それらの商品が通常同一営業主により製造又は販売されている等の事情により、それらの商品に同一又は類似の商標を使用するときは同一営業主の製造又は販売にかかる商品と誤認される虞があると認められる関係にある場合には、たとえ、商品自体が互に誤認混同を生ずる虞がないものであつても、・・・類似の商品にあたると解するのが相当である(最高裁昭和33年(オ)第1104号、昭和36年6月27日第三小法廷判決参照)。
これを本件についてみるに、本件商標の指定役務「飲食料品(菓子及びパンを除く)の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」の小売等の役務の取扱商品に含まれる「サンドイッチ、中華まんじゅう、ハンバーガー、ピザ、ホットドッグ、ミートパイ」は、請求人が主張するように、いずれも基本的には小麦粉を原料とするパン生地を使用するものであることは周知の事実である。
これら個々の商品については、例えば、岩波書店発行「広辞苑第6版」によれば、「サンドイッチ」は、「(イギリスの政治家サンドイッチ伯(4世1718?1792)の創案という)薄く切ったパンの間にハム・卵・野菜などを挟んだ食物」、「中華まんじゅう(中華饅頭)」は、「肉や餡などを入れた饅頭」、「ハンバーガー」は、「ハンバーグステーキを丸いパンに挟んだもの。バーガー。」、「ピザ」は、「発酵させた小麦粉の生地を薄くのばし、トマトソースや野菜・魚介・チーズなどさまざまな具をのせ、焼いた食物。ピザパイ。ピッツァ。」、「ホットドッグ」は、「温めた細長いロールパンに切り目を入れ、芥子などを塗り、熱いソーセージを挟んだ食物」、「ミートパイ」は、「挽肉入りの具を包み込んで焼いたパイ」とそれぞれ説明されているように、いずれも親しまれた食物であって、日常一般に食されるものといえる。
他方、引用商標の指定商品である第30類「菓子,パン」については、前掲「広辞苑第6版」によれば、「菓子」は、「(「菓」はくだものの意)常食のほかに食する嗜好品。昔は多く果実であったが、今は多く米・小麦の粉、餅などに砂糖・餡などを加え、種々の形に作ったものをいう。和菓子と洋菓子とに大別。これに対し果実を水菓子という。」、「パン」は、「小麦粉(またはライ麦その他の穀粉)を主材料とし、これに水とイーストなどを加えてこね、発酵させてから焼き上げた食品。」とそれぞれ説明されているように、やはり、いずれも親しまれた食物であって、日常一般に食されるものといえる。
そして、昨今は、需要者の洋食化や嗜好の多様化などにより、中華まんじゅう、ピザ、ミートパイや菓子パンを含むパンなどを常食としたり、おやつとして食するなど、いずれも、老若男女によって日常一般に食されるものであり、例えば、山崎製パン株式会社などの製パン会社が食パン、菓子パン、洋菓子等と共にサンドイッチや中華まんじゅうを製造販売していることが認められる。
また、例えば、ヴィドフランス(http://www.viedefrance.co.jp/)やスワンベーカリー(http://www.swanbakery .co.jp /)などの「パン屋、ベーカリー」といわれるような店舗では、「サンドイッチ、中華まんじゅう、ハンバーガー、ピザ、ホットドッグ、ミートパイ」と「あんぱん、クリームパン、ジャムパン、食パン、バンズ」等のパン類とが同一店舗において取り扱われ販売されているといえる。
加えて、商品の販売と、その商品を取り扱う小売等役務の提供とが同一の者によって行われることは、商取引上、しばしば見受けられるものであり、そのような場合、当該商品の販売場所や需要者の範囲が、当該役務の提供場所や需要者の範囲と一致することも少なからずあるとみるのが相当である。
そうすると、「飲食料品中のサンドイッチ、中華まんじゅう、ハンバーガー、ピザ、ホットドッグ、ミートパイの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」と「菓子,パン」とは、役務の提供の場所と商品の販売場所が一致することが多く、需要者の範囲も一致するものといえる。
かかる事情の下に、同一又は類似する商標を「飲食料品中のサンドイッチ、中華まんじゅう、ハンバーガー、ピザ、ホットドッグ、ミートパイの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」及び「菓子,パン」について使用した場合には、これに接する取引者、需要者は、当該役務と商品は、同一の営業主によって提供又は製造、販売されたものであるかのように、その出所について誤認混同するおそれがあるものというべきである。
してみれば、本件商標の指定役務中の「飲食料品中のサンドイッチ、中華まんじゅう、ハンバーガー、ピザ、ホットドッグ、ミートパイの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」と引用商標の指定商品「菓子,パン」とは、互いに類似するものといわざるを得ない。
4 商標法第4条第1項第11号該当性について
前記2及び3のとおり、本件商標は、引用商標と類似する商標であり、かつ、本件商標の指定役務中の「飲食料品中のサンドイッチ、中華まんじゅう、ハンバーガー、ピザ、ホットドッグ、ミートパイの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」は、引用商標の指定商品「菓子,パン」と類似するものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。
5 被請求人の主張について
被請求人は、「請求人は、引用商標の指定商品と本件商標の指定役務中『サンドイッチ、中華まんじゅう、ハンバーガー、ピザ、ホットドッグ、ミートパイの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供』が類似すると主張し、その類似性の根拠として、取引の実情について主張しているが、そのような実情があったとする時期については不明であり、その主張を裏付ける証拠方法も何ら提出されていない。」と主張している。
しかしながら、「飲食料品中のサンドイッチ、中華まんじゅう、ハンバーガー、ピザ、ホットドッグ、ミートパイの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」の取扱商品である「サンドイッチ、中華まんじゅう、ハンバーガー、ピザ、ホットドッグ、ミートパイ」と引用商標の指定商品「菓子,パン」は、いずれも基本的には、さほど高価とはいえない日常的に消費される性質の商品(食品)であって、一般消費者がその需要者といい得るところ、当該商品・役務は、同一の営業主により製造又は販売されることがあり、同一店舗で取り扱われることも多いという取引の実情が、当該商品・役務の分野において、本件商標の登録時と現在において、大きく変化しているというような事情も見いだせない。
したがって、被請求人のかかる主張は採用することはできない。
6 むすび
以上のとおり、本件商標は、その指定役務中、本件審判請求に係る指定役務である「飲食料品中のサンドイッチ、中華まんじゅう、ハンバーガー、ピザ、ホットドッグ、ミートパイの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」について、商標法第4条第1項第11号に該当するものであり、その登録は、同条第1項の規定に違反してされたものであるから、同法第46条第1項の規定に基づき、「飲食料品中のサンドイッチ、中華まんじゅう、ハンバーガー、ピザ、ホットドッグ、ミートパイの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」についての登録を無効とすべきである。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2018-07-06 
結審通知日 2018-07-10 
審決日 2018-08-06 
出願番号 商願2011-92215(T2011-92215) 
審決分類 T 1 12・ 263- Z (X35)
T 1 12・ 262- Z (X35)
T 1 12・ 265- Z (X35)
T 1 12・ 261- Z (X35)
最終処分 成立  
前審関与審査官 豊泉 弘貴 
特許庁審判長 山田 正樹
特許庁審判官 冨澤 美加
鈴木 雅也
登録日 2013-02-08 
登録番号 商標登録第5555563号(T5555563) 
商標の称呼 チドリヤ、チドリ 
代理人 高良 尚志 
代理人 高橋 浩三 

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