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審決分類 審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない Y41
管理番号 1344035 
審判番号 取消2016-300636 
総通号数 226 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2018-10-26 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2016-09-14 
確定日 2018-09-06 
事件の表示 上記当事者間の登録第4844117号商標の登録取消審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 審判費用は,請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4844117号商標(以下「本件商標」という。)は,「国際学友会日本語学校」の文字を書してなり,平成16年3月19日に登録出願,第41類「国際交流を目的とした教育研修・講座の企画又は運営,国際交流を目的とした教育研修・講座の企画又は運営に関する情報の提供,国際交流を目的とした研修施設の提供,国際交流を目的とした研修施設の提供に関する情報の提供,国際交流を目的とした展示会の企画又は運営,国際交流を目的とした展示会の企画又は運営に関する情報の提供,国際会議・セミナーの企画・運営又は開催,国際教育交流関連会議の企画・運営又は開催,国際文化交流・国際親善のためのセミナーの企画・運営又は開催,技芸・スポーツ又は知識の教授,生け花の教授,学習塾における教授,空手の教授,着物着付けの教授,剣道の教授,高等学校における教育,語学の教授,国家資格取得講座における教授,茶道の教授,自動車運転の教授,柔道の教授,小学校における教育,水泳の教授,そろばんの教授,大学における教授,中学校における教育,テニスの教授,ピアノの教授,美容の教授,舞踊の教授,簿記の教授,洋裁の教授,理容の教授,和裁の教授,動物の調教,植物の供覧,動物の供覧,図書及び記録の供覧,美術品の展示,庭園の供覧,洞窟の供覧,電子出版物の提供,映画・演芸・演劇又は音楽の演奏の興行の企画又は運営,映画の上映・制作又は配給,演芸の上演,演劇の演出又は上演,音楽の演奏,放送番組の制作,スポーツの興行の企画・運営又は開催,ゴルフの興行の企画・運営又は開催,サッカーの興行の企画・運営又は開催,相撲の興行の企画・運営又は開催,ボクシングの興行の企画・運営又は開催,野球の興行の企画・運営又は開催,競馬の企画・運営又は開催,競輪の企画・運営又は開催,競艇の企画・運営又は開催,小型自動車競走の企画・運営又は開催,当せん金付証票の発売,通訳,翻訳,写真の撮影,音響用又は映像用のスタジオの提供,運動施設の提供,ゴルフ場の提供,スキー場の提供,スケート場の提供,体育館の提供,テニス場の提供,プールの提供,ボウリング場の提供,野球場の提供,陸上競技場の提供,娯楽施設の提供,囲碁所又は将棋所の提供,カラオケ施設の提供,スロットマシン場の提供,ダンスホールの提供,ぱちんこホールの提供,ビリヤード場の提供,マージャン荘の提供,遊園地の提供,興行場の座席の手配,運動用具の貸与,映画機械器具の貸与,映写フィルムの貸与,おもちゃの貸与,楽器の貸与,カメラの貸与,光学機械器具の貸与,テレビジョン受信機の貸与,図書の貸与,ラジオ受信機の貸与,レコード又は録音済み磁気テープの貸与,録画済み磁気テープの貸与,遊園地用機械器具の貸与,遊戯用器具の貸与」を指定役務として,同17年3月11日に設定登録されたものである。
なお,本件審判の請求の登録日は,平成28年9月28日であり,商標法第50条第2項に規定する「審判の請求の登録前3年以内」とは,同25年9月28日から同28年9月27日(以下「要証期間」という場合がある。)である。

第2 請求人の主張
請求人は,商標法第50条第1項の規定により,本件商標の指定役務中,「国際交流を目的とした教育研修・講座の企画又は運営,国際交流を目的とした教育研修・講座の企画又は運営に関する情報の提供,国際交流を目的とした研修施設の提供,国際交流を目的とした研修施設の提供に関する情報の提供,国際交流を目的とした展示会の企画又は運営,国際交流を目的とした展示会の企画又は運営に関する情報の提供,国際会議・セミナーの企画・運営又は開催,国際教育交流関連会議の企画・運営又は開催,国際文化交流・国際親善のためのセミナーの企画・運営又は開催,技芸・スポーツ又は知識の教授,生け花の教授,学習塾における教授,空手の教授,着物着付けの教授,剣道の教授,高等学校における教育,語学の教授,国家資格取得講座における教授,茶道の教授,自動車運転の教授,柔道の教授,小学校における教育,水泳の教授,そろばんの教授,大学における教授,中学校における教育,テニスの教授,ピアノの教授,美容の教授,舞踊の教授,簿記の教授,洋裁の教授,理容の教授,和裁の教授,電子出版物の提供」(以下「取消請求役務」という。)についての登録を取り消す,審判費用は被請求人の負担とする,との審決を求め,その理由を審判請求書及び審判事件弁駁書等において要旨以下のように述べ,証拠方法として甲第1号証及び甲第2号証を提出した。
1 請求の理由
本件商標は,その指定役務中,「取消請求役務」について継続して3年以上日本国内において商標権者,専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実が存在せず,さらには本件商標を使用していないことについての正当な理由も認めることができないから,その登録は商標法第50条第1項の規定により取消されるべきものである。
2 答弁に対する弁駁
(1)商標の使用意思について
被請求人は,「統合後の被請求人にとっても永年にわたり使用をしてきた歴史的に重要な標章であったため,その引き継ぎ後においてもそれら標章の保護を図り,同時に私利目的での使用がなされて被請求人らの公的事業との混同が生じることを防止するため,それらの標章について商標登録出願をなした」と主張するところ,出願経緯をみるに当初から防衛的な目的での出願であった点を自認しており,出願時より商標の使用の意思がないことは明白である。
次に各証拠の記載を見るに,乙第1号証に関しては,沿革の欄にて「(財)国際学友会」を記載するのみであること,乙第2号証の1に関しては会長挨拶にて『これに伴い,財団法人国際学友会は,昭和10年12月発足からの68年4か月にわたる活動を閉じることとなります。今後,国際学友会日本語学校は,日本学生支援機構東京日本語教育センター(国際学友日本語学校)として,新たな機構にしっかりと引き継ぎ,さらなる発展が図られるよう期待するものです。』と記載が見受けられる。
上記の主張や証拠からは,出願時より自ら使用意思のないこと,さらに現在まで使用していないことを自認しているものであり,また,後述するように直接的な需要者との取引書類,営業資料等が全く提出されていないこと等を考慮すると,本件商標がその請求に係る指定役務につき,本件審判請求の要証期間内に商標権者及び専用使用権者,通常使用権者のいずれかにより使用されていないことは明白である。
(2)各証拠の適否について
ア 乙第3号証及び乙第4号証について
出席簿における「国際学友会日本語学校」の使用は,取消請求役務との関係で本来的な商標の使用に該当しない。すなわち,該出席簿は何の授業で使用されていたのか全く言及がなく,少なくとも授業の概要については平成27年の資料であることから説明されていてしかるべきであるところ何ら言及されていない。次に,該出席簿は担当教員が生徒の出席確認のため使用するものであり,知識の教授の需要者である生徒・学生が直接的に目に触れるものではない。この該出席簿における使用はあくまで自己の管理用に用いられるものであり,役務の提供を受ける生徒・学生の立場では,商標としての機能は何ら発揮されていない。
次に,被請求人は,本件商標を使用する意思は出願当初からなく防衛目的との主張をし,平成16年4月1日の事業統合により現在まで「独立行政法人日本学生支援機構」の「東京日本語教育センター」として「国際文化交流・国際親善のためのセミナーの企画・運営又は開催,技芸・スポーツ又は知識の教授,語学の教授」を行っていると自認している。しかしながら,12年以上使用していなかった,複数ある前身の団体の中の一つの名称を現在においても継続して使用を続けているとの主張は誠に不自然としかいいようがない。
イ 乙第5号証ないし乙第9号証について
本件商標と「国際学友会日本語学校蔵書」の標章とは「蔵書」の語の有無で相違するところ,商標の構成文字において2文字が相違し,外観上の相違を有する。そして,各々から生ずる「コクサイガクユウカイニホンゴガッコウ」と「コクサイガクユウカイニホンゴガッコウゾウショ」という称呼,及び「国際的な学生,卒業生や教職員の親睦会の日本語を教える学校」と「かつて関西圏にあった国際的な学生,卒業生や教職員の親睦会の日本語を教える学校の書物を所蔵していること」(審決注:「かつて関西圏にあった」は誤記と認める。)という観念においても相違するものである。
なお,被請求人は「蔵書」の語の識別機能について述べているが,一般的な商標の類否判断における要部観察と社会通念上同一の商標に該当するか否かを同列に論ずることは適切ではない。
次に,図書を貸出する行為は,そもそも「図書の貸与」に該当するものであり,取消請求役務とは全く異なるものである。また,当該図書は東京日本語教育センターが独立行政法人日本学生支援機構の一機関であり,その前身の一つである「財団法人 国際学友会」を統合した際に所有していた備品を単に譲り受けてそのまま使用していたと考えるのが自然的な解釈であるところ,当該備品に付された「国際学友会日本語学校蔵書」は単にかつての所有者を表示したものと理解されるにとどまるものであり,何ら商標としての識別機能を発揮しておらず,商標の使用に該当しない。
ウ 乙第10号証及び乙第11号証について
本件商標と「旧 国際学友会日本語学校」の標章とは「旧」の語の有無で相違するところ,商標の構成文字において1文字が相違し,外観上相違を有する。そして,各々から生ずる「コクサイガクユウカイニホンゴガッコウ」と「キュウコクサイガクユウカイニホンゴガッコウ」という称呼,及び「国際的な学生,卒業生や教職員の親睦会の日本語を教える学校」と「かつての国際的な学生,卒業生や教職員の親睦会の日本語を教える学校」という観念においても十分識別されるものである。
なお,被請求人は「旧」の語の識別機能について述べているが,上述のように一般的な商標の類否判断における要部観察と社会通念上同一の商標に該当するか否かを同列に論ずることは適切ではない。
また,乙第10号証の「HP更新依頼票」を検討すると,備考欄にて「旧名称」と自ら称し,「知名度が現在でも高く,取り急ぎ日本語ページに挿入することとした。」との記載を考慮すると,2014年12月15日まで「国際学友会日本語学校」を使用しておらず,今後も使用する意思はないものの,使用の態を装うため「旧 国際学友会日本語学校」と挿入した経緯がうかがえる。この記載からも,2014年12月15日当時より,被請求人が本件商標を取消請求役務に使用意思がないことが推測されるものである。
(3)その他(予備的主張)について
商標の構成部分に識別力の弱い語が含まれているとしても,上述のように一般的な商標の類否判断における要部観察と社会通念上同一の商標に該当するか否かを同列に論ずることは適切ではない。
なお,被請求人は予備的主張の4例を示しているが,いずれの使用態様についても本件商標の使用には該当しない。
ア 乙第13号証及び乙第14号証について
本件商標と「国際学友会」及び「財団法人 国際学友会」の標章とは「日本語学校」及び「財団法人」の語の有無で相違するところ,商標の構成において顕著な相違を有する。また,椅子,机、脚立,置物,講演台,書画,図書等の備品についても,東京日本語教育センターの前身である「財団法人 国際学友会」を独立行政法人日本学生支援機構へと統合した際に「財団法人 国際学友会」が所有していた備品を単に譲り受けてそのまま使用していたと考えられるところ,当該備品に付された標章は元の所有者を表示したものと理解されるにとどまるものであり,何ら商標として識別機能を発揮しておらず,取消請求役務との関連性も具体的に説明されていないことから,本来的な商標の使用には該当しない。
そして,乙第14号証添付の図書の写真10ないし14については,上記(2)イで述べたように,学生に図書を貸出する行為はそもそも「図書の貸与」に該当するものであり,取消請求役務とは全く異なるものである。
イ 乙第16号証及び乙第17号証について
本件商標と「財団法人 国際学友会」の標章とは「財団法人」及び「日本語学校」の語の有無で相違するところ,商標の構成において顕著な相違を有する。また,標章が付された図書は「図書の貸与の役務の提供に当たり,その提供を受ける者の利用に供する物」であり,取消請求役務とは全く異なることから,本件商標の使用を証明するものではない。
3 口頭審理陳述要領書(平成29年8月10日付け)
被請求人が提出していた証拠(乙1?乙17)からも,また,被請求人が新たに提出した証拠(乙18?乙58)からも,「被請求人が本件審判の取消請求に係る指定役務の提供をした」事実が認められないことは明らかである。
4 上申書(平成29年9月28日付け)
(1)入学案内等に関するリーフレットの提出について
当該リーフレットの日本語表記のページにおける中心部の一番上の記載は被請求人の業務についての説明文であるところ,この説明文中,「語学の教授」を行っている名称である「JASSO東京日本語教育センター」と共に「(旧国際学友会日本語学校)」の表示が記載されている。
上記記載を鑑みるに,上記使用態様は,単に一文に記述的に示されているのみであること,さらに「旧」の文字が付されていることから,日本語が相当程度理解できる本件商標の需要者ならば容易にかつての名称が「国際学友会日本語学校」であったことを想起させるのみであり,商標的機能は何ら発揮されていない。
一方,日本語をこれから学習しようとする需要者ならば,「旧国際学友会日本語学校」の表示に接した場合,単なる何らかの日本語の文字であることしか理解できず,この場合でも商標的機能は何ら発揮されていない。
むしろ,当該リーフレットの記載で出所表示機能を発揮していると考えられるのは「東京日本語教育センター」部分である。
これは,リーフレット日本語版の右下部には「語学の教授」を行っている「東京日本語教育センター」が他の部分に比して極めて大書されていること,右上部の関係者の写真において中心に写る看板にも「東京日本語教育センター」が大書されていることからも明らかである。
次に,当該リーフレットが日本語のみでなく,現地の言語も印刷する理由としては,このフェア自体が日本語をまだ学習していない,これから学習を目指す学生を対象としたものであることから,理解しやすいように現地の言語が印刷されていると考えられる。その場合,日本語版に,しかも文中の一部に単に記述的に示された部分をもってして,リーフレットを受け取ったフェアの来場者が「(旧国際学友会日本語学校)」部分を認識することは困難としかいいようがない。
また,日本在住の連絡者が当該リーフレットを目にした場合でも,上記使用態様には「旧」の文字が付されていることから,単にかつての名称が「国際学友会日本語学校」であり,要証期間内には別の名称で役務の提供を行っていることを容易に想起させるのみである。上述のようにリーフレットを検討しても,「知識の教授」との関係で本件商標は記述的に使用されているのみであり,何ら商標的機能は発揮されていない。これは当該リーフレットが国内の大学や大使館関係者等の如何なる関係者に配布されたとしても同様である。
(2)被請求人提出のその他証拠について
ア 入学願書及びテキストについて
被請求人はその指定役務中「国際文化交流・国際親善のためのセミナーの企画・運営又は開催,技芸・スポーツ又は知識の教授,語学の教授」の提供に関し本件商標を使用していると主張するものの,被請求人提出の証拠の大多数は視認可能性が全くない,若しくは極めて低い備品のみの使用証明である。
そこで,請求人としては,特に「知識の教授」との関係では使用証明としては当然に存在してしかるべきである本件商標が付された入学願書やテキストの提出を求めたものである。被請求人は先に提出された口頭審理陳述要領書において「伝統(ブランド)を守り,商標の品質保証機能を発揮させるため」や「現在の学生に誇りをもってもらうため」等主張しており,そのような高邁な目的があるならば,「知識の教授」との関係で最も需要者の目に触れる機会の多いテキスト等に使用することが,まさに商標の諸機能(品質・質保証機能や出所表示機能)が発揮されることに資するものであり,備品等の提出が可能であるならば,これらの証拠も提出されてしかるべきである。
しかしながら,提出された乙第52号証の入学願書を検討するも,本件商標である「国際学友会日本語学校」の文字は一切見受けられず,「東京日本語教育センター入学願書」との記載があるのみであり,新たなテキストは提出がされなかった。
これは,被請求人がその指定役務中「語学の教授,技術・スポーツ又は知識の教授」の提供に関し使用している標章は「東京日本語教育センター」であり,本件商標を使用していないことの証左といえるものである。
イ 乙第36号証ないし乙第41号証について
被請求人の示す使用はいずれも文章中で記述的に使用されているのみ(挨拶文等)であり,商標の諸機能(品質保証機能や出所表示機能)が発揮する態様で使用されていない。真に商標の諸機能(品質保証機能や出所表示機能)が発揮する態様で使用されているのであれば,例えば教科書として一番目を引く表紙において本件商標が使用されてしかるべきであるが,そのような使用は見受けられず,代わりにいずれもその指定役務「語学の教授,技術・スポーツ又は知識の教授」の提供を行っている「東京日本語教育センター」の表示が使用されている。また,各教科書の裏書においても,著作者(著者),編著者,問い合わせ先等は全て「日本学生支援機構東京日本語教育センター」であり,本件商標がその指定役務「語学の教授,技術・スポーツ又は知識の教授」の提供を行うものとして使用されていないことは明白である。
さらに,日付に関しても,1994年10月や1998年12月,平成16年4月といずれも要証期間外の使用例であり,要証期間内の証明には該当しない。
ウ 乙第59号証の1,乙第60号証の1及び乙第62号証の1について
被請求人提出の証拠のうち,乙第59号証の1,乙第60号証の1及び乙第62号証の1は各々3頁からなるところ,この各1頁の下部には概要として「長い歴史と伝統,優秀な留学生を多数輩出」なる記載がある。この記載冒頭にて「本センターは,2004年3月までは,国際学友会日本語学校と称していました。」と説明されているところ,この記載は,2015年10月13日時点において被請求人は既に「国際学友会日本語学校」との名称が使用されていたのは2004年3月までであったことを自認する厳然たる証拠といえる。また,上述したように,このような既に使用を終え,今後使用予定もない名称をインターネットサイトにおいて記載する使用をもってして,商標法第2条第3項第8号の規定に該当する使用ということはできない。
これは,特許庁編工業所有権法(産業財産権法)逐条解説〔第20版〕の商標法第2条の趣旨説明における第2条第3項第8号に説明されていることからも明らかである。
上記を当該インターネットサイトにおける使用について検討すると,その「役務に使用する予定の商標」に該当するのは,「独立行政法人日本学生支援機構東京日本語教育センター」であって,「国際学友会日本語学校」ではなく,本件商標の使用を証明するものではない。
エ 本件商標の理解度について
また,別の観点からは,本件商標の需要者層における日本語の理解度が問題となる。すなわち,被請求人から提出された使用証拠から推測すると,被請求人の行っている「語学の教授,技術・スポーツ又は知識の教授」の需要者は日本語を学ぶことを目的として海外から留学してきた学生であると思われる。その場合,それらの学生は日本語を習うために留学してくることから,願書を提出する段階では,日本で通常用いられる平仮名表記,片仮名表記,漢字表記を読み,理解できない学生が大多数と考えられるところ,このような学生のために被請求人は入学願書において日本語表記の他,英語で願書を併記しているものである。
そして,入学前の留学生は,当該センターを「東京日本語教育センター」ではなく「TOKYO JAPANESE LANGUAGE EDUCATION CENTER」で認識すると考えるのが極自然である。ましてや,入学願書自体に本件商標はおろか,その英語表記さえ記載されていない状態で何をもって識別機能が発揮されていると主張するのか見当が付かない。
オ 本件商標の識別可能性について
被請求人の主張する本件商標の取消請求役務の需要者が日本語を母国語とした者ではなく,外国からの留学生であった場合,以下の点も問題となる。上述のように海外からの留学生であるならば,入学前の段階であれば英語や母国語で記載された願書や入学案内を母国で見ていると考えるのが極自然的な解釈である。これをわざわざ日本語のリーフレットや日本語版のインターネットサイトで,しかも旧名称で役務の提供主体を識別すると考える合理的な理由は全く見受けられない。
次に,日本在住の外国人が入学を検討する場合でも,これから日本語学習を行おうと希望する者が英語や母国語で記載された願書や入学案内ではなく,日本語で記載された願書や入学案内を見て,さらに英語や母国語表記さえ付されていない日本語の旧名称(国際学友会日本語学校)で役務の提供主体を識別すると考える合理的な理由も全く見受けられない。
カ テキストにおける使用について
テキストでの使用を確認したのは上述したとおりであり,被請求人自らが「テキストに登録商標を必ず使用しなければならない理由は何もなく,請求人の要求は何の意味もない。」と主張することは,指定商品・役務(本件の場合「知識の教授」との関係で最も役務の用に供されると思われるテキスト)に反復継続的に使用されることにより業務上の信用が化体するという商標の本質を何ら理解していないと思われるものである。

第3 被請求人の主張
被請求人は,結論同旨の審決を求めると答弁し,その理由を要旨以下のように述べ,証拠方法として乙第1号証ないし乙第67号証(枝番を含む。)を提出した。
1 被請求人について
被請求人の前身は,昭和10年12月に外務省の外郭団体として創立された「国際学友会」が昭和15年に財団法人化された「財団法人国際学友会」,及び昭和31年6月に創設された「財団法人関西国際学友会」等であり,平成16年4月1日に「財団法人国際学友会」,「特殊法人日本育英会」,「財団法人内外学生センター」,「財団法人日本国際教育協会」及び「財団法人関西国際学友会」が統合再編され,現在の独立行政法人日本学生支援機構が上記の各組織の事業を引き継ぐこととなったものである(乙1)。
2「国際学友会日本語学校」及び「関西国際学友会」の著名性
(1)「国際学友会日本語学校」は,昭和20年の終戦に伴い一旦廃校とされ,国庫補助金の大幅減額などもあり厳しい状況にもあったが,昭和26年6月に「日本語クラス」を開設し,昭和33年2月に再び「国際学友会日本語学校」を設置し,各種学校として認可されている。各国政府派遣技術研修生やインドネシア賠償留学生の受入れなど,東南アジアの復興等,国の施策を引き受けての事業を展開し,昭和57年度から国費高専生の受入れを行い,各国政府派遣留学生,私費留学生の受入れと共に日本語教育を中心に事業を行うなどした結果「国際学友会」が平成16年ころまでに受け入れた学生は,122か国・地域に上り,これらの学生は「国際学友会日本語学校」において学び,国内の大学等で学業を終えた学生は,自国あるいは日本において,いろいろな分野でめざましい活躍をしている(乙2)。
(2)「関西国際学友会」は,関西における外国人留学生支援の機運の高まりとともに,昭和31年6月,関西財界が,設立発起人会の結成と資金調達ならびに設立準備業務を行い,大阪市が土地・建物・設備等の改善,無償提供するための整理および手続きを行うなどして設立され同時に東京の国際学友会とは友好・協力に基づく姉妹団体となった。そして,日本語教室は,昭和42年10月1日に授業を開始し,昭和44年までの3年間に14か国の在籍者数となり,昭和45年,日本万国博覧会の年に,日本語教室を発展させ,学校教育法による各種学校として大阪初の日本語学校である関西国際学友会日本語学校が開校された。それ以来,関西国際学友会日本語学校は,主として私費で日本の大学・大学院等の高等教育課程に進学・留学することを希望する外国の若者達に,日本語と進学に必要な数学,英語等を1年または1年半にわたって教育することになった。
このように,「国際学友会日本語学校」及び「関西国際学友会」なる標章は,外国人留学生に対する公的支援事業を象徴する標章として国内外において著名な標章であり,その著名性は,今日においても失われていない。
3 被請求人と「国際学友会日本語学校」及び「関西国際学友会」の重要性
平成16年の再編統合により,「国際学友会」,「国際学友会日本語学校」,「関西国際学友会」,「関西国際学友会日本語学校」の事業は,日本学生支援機構「日本語教育センター」(東京日本語教育センター,大阪日本語教育センター)にその業務が引き継がれたが,上記のとおり「国際学友会日本語学校」,「関西国際学友会」なる標章は,引き継ぎ当時においても外国人留学生に対する公的支援事業を象徴する標章として国内外において著名な標章であり,統合後の被請求人にとっても永年にわたり使用をしてきた歴史的に重要な標章であったため,その引き継ぎ後においてもそれら標章の保護を図り,同時に私利目的での使用がなされて被請求人らの公的事業との混同が生じることを防止するため,それらの標章について商標登録出願をなし,登録が認められたものである。
4 本件商標の使用の事実を示す書類
被請求人は,留学生支援事業の一環として,乙第1号証の案内書の14頁に示すように,日本語教育センターにおいて「国際文化交流・国際親善のためのセミナーの企画・運営又は開催,語学の教授を含む知識の教授」を行なっている。この役務「国際文化交流・国際親善のためのセミナーの企画・運営又は開催,知識の教授」を提供する日本語教育センターには,長年にわたって使用し続けられてきた被請求人の旧ハウスマーク(国際学友会日本語学校,関西国際学友会)が現在でも多数存在している。
そして,旧ハウスマークに化体した業務上の高い信用は今でも確実に存在しており,この業務上の高い信用を独立行政法人日本学生支援機構の日本語教育センターが承継したことを理解してもらうため,被請求人は旧ハウスマークを適所に使用している。
(1)乙第3号証及び乙第4号証について
ア 役務の提供に係る物及び使用時期
乙第3号証は出席簿(役務の提供の用に供する物)であり,東京日本語教育センターの実際の授業において,学生の面前で使用される。そして,その表紙の利用年月日(平成27年4月10日より平成27年7月24日まで)の記載から,この期間に使用されていたことが分かる。また,乙第4号証はその他の出席簿の表紙の写真であり,その利用年月日の記載から,本件審判の要証期間内に使用されていたことが分かる。
イ 使用標章(乙3、乙4)
乙第3号証及び乙第4号証の出席簿には「国際学友会日本語学校」が付されており,この使用標章と本件商標とは同一である。
(2)乙第5号証ないし乙第8号証について
ア 役務の提供に係る物及び使用時期
乙第5号証は東京日本語教育センター内の図書室内に置かれ,学生に貸し出すための図書「風立ちぬ」であり,この図書「風立ちぬ」は乙第8号証の図書貸出簿に記載のとおり,平成27年12月15日?平成28年1月12日まで貸し出されていた。また,乙第6号証及び乙第7号証は同上図書室内に置かれていた図書「1年・2/光村読書シリーズ」及び「1年・4/光村読書シリーズ」であり,これらは乙第8号証の図書貸出簿に記載のとおり,平成28年8月24日?平成28年11月28日まで貸し出されていた。
したがって,乙第5号証ないし乙第7号証の図書は,本件審判の要証期間内に使用されていた。ところで,学校における図書室内の図書の貸出は,貸出を独立して取引の対象としているわけではなく,あくまでも「知識の教授」自身又はそれに付随するサービスであり,「知識の教授の用に供する物(知識の教授を受ける者の利用に供する物を含む)」に他ならない。
イ 使用標章(乙5?乙7)
乙第5号証ないし乙第7号証の図書には「国際学友会日本語学校蔵書」が付されている。この「国際学友会日本語学校蔵書」の「蔵書」の部分は単に「書籍を所蔵すること」を意味するもので,自他役務識別力を有さない。このため,「国際学友会日本語学校蔵書」の自他役務識別力を発揮する主要な部分は「国際学友会日本語学校」であり,まさに,この図書に付された「国際学友会日本語学校蔵書」は当該図書の出所が「国際学友会日本語学校」であることを意味している。
したがって,この使用標章と本件商標とは社会通念上同一の商標である。
(3)乙第9号証について
ア 役務の提供に係る物及びその使用時期
乙第9号証は,東京日本語教育センターの図書室内において,2016年11月25日に撮影された図書の写真が添付された陳述書である。この図書(4年・9/光村読書シリーズ)については,乙第9号証に添付の2枚目の写真に示されるように,そもそも「国際学友会日本語学校」を含む文字が付されていること自体,被請求人の前身である「財団法人国際学友会」が存在していた2004年には使用されていたことが分かる。そして,現在も該図書が置かれているということは,乙第9号証に撮影されている図書は,少なくとも2004年から撮影日の2016年11月25日まで使用されていたことは明らかである。
イ 使用標章(乙9)
乙第9号証に示される図書には,商標「国際学友会日本語学校蔵書」が付されている。この点,上述のように,「蔵書」の部分は「書籍を所蔵すること」を意味するもので自他役務識別力を発揮せず,まさに出所が「国際学友会日本語学校」であることを表している。
したがって,この使用標章と本件商標とは社会通念上同一の商標である。
(4)乙第10号証及び乙第11号証について
ア 役務の提供に係る物及び使用時期
乙第10号証は,被請求人のホームページの「/tokyo」のディレクトリを有する画面について,変更を求めたHP更新依頼票であり,乙第11号証は,この変更部分を指示する際に作成したウェブ画面である。そして,乙第10号証にはホームページの内容が変更(更新)される期限(2014年12月15日)が記載されている。
したがって,乙第11号証に示す「旧 国際学友会日本語学校」が付されたウェブ画面が,少なくとも2014年12月15日には被請求人のホームページに掲載されていたことが分かる。
イ 使用標章(乙11)
乙第11号証のホームページには「旧 国際学友会日本語学校」が表示されている。この使用標章の「旧」の部分は現在の「東京日本語教育センター」が,かつての「国際学友会日本語学校」と同一であることを積極的に示すものであり,「旧」の部分自体には自他役務識別力を有さない。
したがって,「旧 国際学友会日本語学校」の自他役務識別力を発揮する主要な部分は「国際学友会日本語学校」であり,この使用標章と本件商標とは社会通念上同一の商標である。
ウ その他
乙第10号証のHP更新依頼票の備考欄の「旧名称の知名度が現在でも高く,取り急ぎ日本語ページに挿入することとした」の記載から,「国際学友会日本語学校」には著名性があり,業務上の高い信用が現在でも存在することがうかがえる。
(5)その他(予備的主張)
以上のとおり,被請求人は,「知識の教授」を行う日本語教育センターにおいて本件商標と社会通念上同一の商標を使用している。本件商標の自他役務識別力を発揮する主要な部分は「国際学友会」であり,この「国際学友会」を要部とする多数の商標が日本語教育センター内で使用されている。このことは被請求人の長年使用されてきた旧ハウスマークに今でも業務上の高い信用が化体している事実の一端を示すものである(乙13,乙14,乙16)。
5 口頭審理陳述要領書(平成29年7月27日付け)
(1)本件請求が信義則違反・権利濫用であること
本件請求は信義則違反・権利濫用であって,本件商標の使用の有無に拘わらず,認められない。すなわち,本件請求は,被請求人がその前身である「国際学友会」なる名称を現在の独立行政法人日本学生支援機構に変更したことを奇貨とし,請求人自ら「国際学友会」なる商標出願(商願2016-100448)と同時に,本件請求を行っているものであり,公的留学生支援事業として著名である「国際学友会日本語学校」の標章を,請求人のものとして剽窃して得ようとするためになしたもので,本件著名商標が被請求人に帰属していることを失わせようと目論んでいる点で被請求人を明らかに害する目的であり,合わせてその著名商標を自己のものとするためになされたものであるから,商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないものであり,本件請求自体が信義則に反し権利濫用である。
(2)被請求人が指定役務を提供している事実
被請求人は,被請求人のパンフレット(乙1)の2枚目にあるように,財団法人国際学友会及び財団法人関西国際学友会などが統合されて,平成16年に設立された法人である。この財団法人国際学友会及び財団法人関西国際学友会は,乙第2号証の1の「会長挨拶」に記載されているように戦前から存在していた組織であってその事業は日本語教育等であり,被請求人はこの日本語教育等の事業を引き継いでいる。
具体的には,乙第1号証の後ろから2枚目の「日本語教育センター」の頁で被請求人の上記承継事業の一つを紹介している。該頁に示されるように,被請求人は日本語教育及び基礎科目の教育を行っている。
このような教育,すなわち役務「語学の教授」を含む役務「技芸・スポーツ又は知識の教授」を被請求人が行っていることは,毎年発行される日本語教育センター報の2014年度版(乙44)の大阪日本語教育センターの授業実施状況,及び東京日本語教育センターの授業実施状況の報告からも明らかである。
また,被請求人のホームページ(乙45)に「日本の大学入学資格が得られます」の記載から分かるように,被請求人は日本の大学入学資格を得る準備教育機関として知識の教授を提供していることも分かる。すなわち,海外では日本と同じ6-3-3制を採用せず,日本の大学入学資格のない外国人がおり,そのような者であっても,本センターの授業を受けて所定要件を満たして卒業することで大学入学資格を得ることができるように文部科学大臣の指定を受けている(乙43の1?2)。
したがって,被請求人は,少なくとも本件審判請求に係る指定役務「語学の教授,技術・スポーツ又は知識の教授」の提供を,要証期間に行っていたことは明らかである。
また,被請求人は,乙第46号証の被請求人のホームページの「貸出施設について」のとおり,通常は知識の教授に伴う入学式や卒業式等に使用されている学生ホールや,授業に使用されている教室を,国際交流を目的として貸し出す業務も行っている。実際に国際交流を目的として施設を貸し出している一例として,乙第47号証の1ないし乙第50号証の2を提出する。例えば,乙第48号証の1は平成26年7月1日付けアスジャ・インターナショナルの貸出施設利用申込書を受け,乙第48号証の2のとおり利用を許可している。なお,アスジャ・インターナショナルは,乙第49号証のとおり国際交流事業を実施している団体である。
したがって,被請求人は,指定役務「語学の教授,技術・スポーツ又は知識の教授」だけではなく,本件審判請求に係る指定役務「国際交流を目的とした研修施設の提供」の提供も,要証期間内に行っていたことは明らかである。
(3)乙号証と本件商標の使用の関係について
ア 乙第3号証及び乙第4号証について
被請求人は,主に日本語と基礎教科の教授を提供し,役務「知識の教授」を提供している。そして,乙第1号証の後ろから2枚目の「授業風景」の写真,乙第44号証の4頁に示される写真,乙第51号証の写真のような授業を通じて「知識の教授」を提供する際に出席簿は使用されている。このことは新たに提出する乙第52号証の陳述書の「日本語と基礎科目の授業を行っていますが・・・その毎時間の出席の記録として,提出した刊行物の出席簿を使用していました」の陳述からも明らかである。
そして,この出席簿は,授業と密接な関係にあり,その出席状況から学生が被請求人から知識の教授を十分に受けているかを確認するためにも重要な存在である。教師は出席簿を見て,学生への知識の教授の仕方が変わることもあり,それは学生のためである。
特に,留学生の場合,乙第52号証の陳述書のとおり,進学を希望する大学等から高い出席率を求められ,また,在留資格の更新を得るためにも高い出席率が求められていることから,学生は非常に出席率を気にしている。このため,出席簿は学生がこの出席率を把握できる手段であり,乙第52号証の陳述書に「自分の出席状況を見せて欲しいと言ってくる学生もいます。」の記載からも分かるように,学生の利用に供する物に他ならない。
したがって,出席簿は,役務「知識の教授」の提供に当り,その提供を受ける者の利用に供する物として欠くことができず,これに標章「国際学友会日本語学校」を付する行為は商標法第2条第3項第3号に該当する。
さらに,出席簿は,授業中は教壇の上に置かれており,授業終了後等に学生が実際に視認することがある。したがって,出席簿は,授業を通した役務「知識の教授」の提供の用に供する物に標章「国際学友会日本語学校」を付したものを役務の提供のために展示する行為でもあり,商標法第2条第3項第5号の行為に該当する。
ところで,平成28年12月26日付け答弁書の乙第4号証では,表紙の写真のみ提出したが,表紙とその中身をコピーしたものを証拠として追加して提出する(乙53の1?9)。
イ 乙第5号証ないし乙第9号証について
(ア)被請求人は,答弁書において要部観察を行ったわけではない。一般に,登録商標に加えて,自他役務識別機能を奏さない役務名等の文字を加えて表示しても,その付加された標章は自他役務識別機能を奏さないのが通常であるから,この場合も,登録商標を単独で使用した場合と同様に,登録商標と社会通念上同一の商標の使用と解すべきことは多く,このような理論は,裁判や審判で広く採用されている(例えば,知財高裁平成27年(行ケ)第10032号)。本件の場合,図書に記載されている標章は「国際学友会日本語学校蔵書」であるが,「蔵書」とは乙第55号証の広辞苑に示されるように,「書物を所蔵すること」であり,図書との関係では「蔵書」は付記的部分と認識されるため,「国際学友会日本語学校」の文字が独立して把握され,該文字部分の称呼をもって取引される。そもそも「蔵書」が付加されていることで,所蔵者は「国際学友会日本語学校」であることを観念することになり,その意味でも使用者は,図書の出所は「国際学友会日本語学校」であると認識する。
したがって,本件商標と標章「国際学友会日本語学校蔵書」とは,称呼及び観念を同じくするものであり,社会通念上同一である。
(イ)役務とは「他人のためにする労務・便益であって,独立して商取引の対象とするもの」である。この点,被請求人の図書の貸出は,乙第51号証の「図書室(自習室)」の写真に示されるように校内施設であり,被請求人の学生となって役務「知識の教授」の提供を受けることを前提に貸し出せるものである。また,図書の貸与の料金を明示することもなく,授業料を支払えば誰でも図書を借りることができる。しかも,この図書室は,乙第51号証の同上写真のとおり,「自習室」でもあり,ここで自習する学生は,自習で調べものをする際に自由に図書を手に取って学習できる状態になっており,まさに「知識の教授」に他ならない。
してみれば,乙第5号証ないし乙第9号証に係る図書の貸出行為は,「図書の貸与」を独立して取引の対象とするものではない。被請求人が行っている図書の貸出行為は,図書を利用することで学生が知識を教授することを目的とするものであり,独立して商取引の対象としているものは,あくまでも「知識の教授」である。
したがって,この図書は,「知識の教授という役務の提供に当り,その提供を受ける者の利用に供する物に標章を付する行為」であって,これに標章を付する行為は商標法第2条第3項第3号に該当する。
(ウ)請求人は「『財団法人 国際学友会』を統合した際に所有していた備品を単に譲り受けてそのまま使用していたと考えるのが自然な解釈である。」と主張するが,被請求人は,単に本件商標を残しているわけではなく,上述のように,伝統(これがブランドとなる)を守り,現在の学生に誇りを持ってもらうため,さらに,卒業生等のため,積極的に本件商標が残るように使用しており,これは商標の使用に他ならない。
ウ 乙第10号証及び乙第11号証について
(ア)一般に,自他役務識別機能を奏さない役務名等の文字を加えて表示しても,その付加された標章は自他役務識別機能を奏さないのが通常であるから,この場合も,登録商標を単独で使用した場合と同様に,登録商標と社会通念上同一の商標の使用と解すべきことは多い(知財高裁平成27年(行ケ)第10032号)。
そして,「旧」は過去の名称であることを示し,東京日本語教育センターのホームページにアクセスした者に,ここが「国際学友会日本語学校」であるという出所を表示するものであり,この「国際学友会日本語学校」が出所表示機能という商標の機能を発揮している。特に,留学希望者は,旧名称「国際学友会日本語学校」の下で卒業した者が子供や知人に母校を紹介し,それにより留学を決めることが多く,この際,卒業生から紹介を受けた留学希望者は,ホームページの「国際学友会日本語学校」の部分により,このホームページの学校が探している学校であるか否かを把握するものである。このことは,乙第33号証の楊氏の「親から聞いた“国際学友会日本語学校”を目印にして,インターネットで日本語学校を検索し」という陳述書からも分かる。
また,乙第11号証の「旧 国際学友会日本語学校」の標章の場合,「旧」と「国際学友会日本語学校」との間にはスペースもあり,一体的な態様ではないことからも,この「旧」の部分は「国際学友会日本語学校」の部分の独自の識別性に影響を与えない程度にとどまっている。
したがって,本件の場合,商標的機能を発揮する部分は「国際学友会日本語学校」と把握してよく,本件商標とは社会通念上同一である。
なお,「旧 国際学友会日本語学校」を表示する被請求人(独立行政法人日本学生支援機構)の一事業部門である東京日本語教育センターのホームページは,乙第11号証の下側の【概要】の欄に記載されているように,日本語・基礎教科の予備教育を行う学校であることを第三者に紹介するための「知識の教授に関する広告」である。
以上より,乙第11号証は,役務に関する広告に標章を付して電磁的方法により提供する行為であり,商標法第2条第3項第8号に該当する。
(イ)審判請求日よりも2年前の2014年のホームページについて,請求人は何をもって「使用の態を装う」と判断したのか全く不可解である。乙第10号証の「備考」欄に「旧名称の知名度が現在でも高く,取り急ぎ日本語ページに挿入することとした」と記載があるのは,学校に「貴校は国際学友会ではないのか?」という問い合わせが多く,2014年12月現在でも著名性を有していたため,その問い合わせに対応すべく,「旧 国際学友会日本語学校」を使用して欲しいという依頼を広報課に行ったものである。この依頼票が使用の態を装うとの主張は何の根拠もない。被請求人の使用意思を何の根拠もなく否定することで,被請求人を示すと把握されている「国際学友会日本語学校」を剽窃的に自分のものにして,海外留学生を誤って自らの学校に入学させようとする請求人の行為は明らかである。すなわち,乙第11号証の最下欄に記載されているように「長い歴史と伝統,優秀な留学生を多数輩出」してきた登録商標のグッドウィルを,名称が変わったことを奇貨として,別途,商標出願をして(商願2016-100448),その商標出願を登録させて我が物にしようとする剽窃的行為であり,そのような不使用取消審判は許されることでないのは明らかである。
(4)その他の主張について
ア 商標の社会通念上同一について
本件の場合,被請求人が行う役務は「日本語の教授を伴う知識の教授」であって,「日本語学校」の部分は,乙第12号証の1ないし8に示されるように普通名称であるといえ,少なくとも役務内容を直接的に表すにすぎないため,自他役務識別力を本来的に発揮するのは「国際学友会」の文字部分のみである。また,乙第13号証及び乙第14号証に示される「財団法人」は単に法人の種類を示すものであって自他役務識別力を有さず,自他役務識別力を発揮するのは「国際学友会」の文字部分のみである。このように法人の種類名は識別標識としての機能を発揮し得ないことは,乙第57号証の1及び乙第57号証の2の審決からも明らかである。
したがって,両商標は社会通念上同一である。
イ 乙第13号証及び乙第14号証のサインについて
乙第13号証のサインは,学生ホールの視聴覚機器収容の扉に付けられ,学生ホールに露出している。この学生ホールは,乙第58号証の写真に示されるように,卒業式,留学生と日本人学生との交流会,実践授業ないし授業の成果を披露するための弁論大会(平成28年度より日本語スピーチコンテストと名称を変更:乙44)等に利用される場所である。また,乙第14号証のサインはL.L教室の入り口の扉に付けられており,L.L教室は乙第51号証の写真に示されるように授業に用いられる教室であり,「知識の教授」が提供される場所である。
したがって,これらのサインは,役務「知識の教授」に当り,その提供を受ける者の利用に供する物(学生ホール・教室)に標章を付する行為であり,商標法第2条第3項第3号に該当する。
また,これらのサインを学生が視認することに疑う余地はなく,少なくとも視認可能な状態であり,これらのサインは,役務の提供の用に供する物(学生ホール・教室)に標章を付したものを役務「知識の教授」の提供のために展示する行為であって,商標法第2条第3項第5号に該当する。
ウ 乙第14号証の脚立について
脚立は,例えばロビーの電球を交換したりする際に使用されるものであり,その際は学生に視認される。脚立は役務「知識の教授」を行う学校を円滑に運営するのに必要な物である。
したがって,役務「知識の教授」の提供の用に供する物(脚立)に標章を付したものを役務「知識の教授」の提供のために展示する行為であって,商標法第2条第3項第5号に該当する。
エ 乙第13号証の各備品に付された各表示及び乙第14号証の各表示について
これらの各表示は,被請求人の校内の至るところに,被請求人のブランドに共通する「国際学友会」の文字を有するサインが残っていることを証明するものであり,したがって,学校の伝統が引き継がれており,そのブランドに化体した業務上の信用が現存することを主張するものである。
オ 乙第16号証及び乙第17号証について
請求人は,弁駁書で乙第16号証の図書に付された「財団法人 国際学友会」と本件商標「国際学友会日本語学校」とは社会通念上同一でないと主張するが,「財団法人」は法人の種類を表すもので自他役務識別力がなく,また,「日本語学校」も役務「日本語の教授」の普通名称であって自他役務識別力がない。
そうすれば,両商標の識別標識としての機能を発揮するは「国際学友会」であり,両商標は社会通念上同一の商標である。
したがって,図書に「財団法人 国際学友会」を付する行為は,商標法第2条第3項第3号に該当する。
6 上申書(平成29年9月14日付け)
(1)入学案内等に関するインターネットサイトの提出について
被請求人は,本件商標を使用している証拠として乙第59号証の1ないし乙第62号証の4を新たに提出する。
ア 乙第59号証について
乙第59号証の1は,左側上部に「独立行政法人日本学生支援機構」と記載されているように被請求人のホームページである。このホームページには,本件商標と社会通念上同一の標章「旧 国際学友会日本語学校」が表示されており,この使用は商標法第2条第3項第8号の使用に該当する。すなわち,乙第59号証の1は,その上部に記載されているように,国立国会図書館がインターネット資料収集保存事業(WARP)で保存した2015年10月13日時点のページであり,要証期間に使用していたものである。
乙第59号証の1は,学校の概要や特色等の役務「知識の教授」に関する情報を表示しており,「4月生《2016年4月(1年)コース》海外生出願受付のお知らせ」をクリックすると,海外から応募する海外留学生の出願受付の入学案内である乙第59号証の2が表示され,また,「10月生《2015年10月(1年半)コース》在日生出願受付のお知らせ」をクリックすると,日本国内から応募する在日者の出願受付の入学案内である乙第59号証の3が表示される。
また,乙第59号証の1の右側の「入学案内・願書」をクリックすると,入学案内・願書が記載された乙第59号証の4が表示される。この乙第59号証の4では,下から5行目に記載されているように,入学願書をダウンロードすることもできる。
したがって,乙第59号証の1及びその下位頁である乙第59号証の2ないし4の使用は,役務「知識の教授」に関する入学案内や取引書類などに標章を付して電磁的方法により提供する行為であり,商標法第2条第3項第8号に該当する。
イ 乙第60号証について
同様にして,国立国会図書館がインターネット資料収集保存事業(WARP)により2016年1月8日時点で保存した乙第60号証の1及びその下位頁である乙第60号証の2ないし4の使用も,役務「知識の教授」に関する入学案内や取引書類などに標章を付して電磁的方法により提供する行為であり,商標法第2条第3項第8号に該当する。
ウ 乙第61号証及び乙第62号証について
被請求人は,乙第61号証の電子メールに示されるように,ホームページを平成28年(2016年)1月22日にリニューアルしてIPアドレスを変更したが,変更前の状態をそのまま他のIPアドレス「http://www.intra.jasso.go.jp/tokyo/」に移して保存していた。そこで,この変更前の状態,すなわち,要証期間に使用していたウェブページを乙第62号証として提出する。この乙第62号証の使用も,乙第59号証と同様に,役務「知識の教授」に関する入学案内や取引書類などに標章を付して電磁的方法により提供する行為であり,商標法第2条第3項第8号に該当する。
(2)入学案内等に関するリーフレットの提出について
被請求人は,本件商標を使用(商標法第2条第3項第8号の使用)している証拠として乙第63号証ないし乙第67号証を新たに提出する。
乙第63号証は,被請求人の入学案内等に関するリーフレットである。該リーフレットは,被請求人がマイクロソフト社の文書作成ソフト「Word」を用いて作成したものであり,被請求人が自ら印刷し,三つ折りにして使用している。該リーフレットにも本件商標と社会通念上同一の標章である「旧国際学友会日本語学校」が表示されている。そして,このリーフレットについては,被請求人が自ら作成及び印刷して使用しているため,納品書等は存在しないが,これを作成した「Word」の情報(乙64)に示されるように,更新日時及び最終印刷日が「2014/06/11」となっており,これにより要証期間内である2014年6月11日に作成及び印刷したことが分かる。また,乙第63号証のリーフレットは中国語繁体字版(台湾向け)であるが,中国語簡体字版(中国向け),英語版,韓国語版,モンゴル語版,アラビア語版,ベトナム語版,インドネシア語版もあり,全ての種類の片面に日本語が表示されている。そして,これらリーフレットは,例えば乙第65号証の2014年と2015年の日本留学フェアに送る「発送資料明細」に示されるように,要証期間内に使用していたことが分かる。日本留学フェアにおけるリーフレットの配布数については,乙第65号証から,各地の1回のフェア毎に100部から150部程度であることがうかがえる。
なお,該リーフレットは,日本留学フェアだけではなく,その他の学生募集及び日本留学の広報宣伝のために使用される。すなわち,乙第66号証の「入学案内」のインターネットサイトに示されるように,被請求人の出願方法には,海外からの応募と国内からの応募の二通りがあり,海外からの応募の場合,紹介機関(同窓会等)を通じての応募以外は,原則として日本在住者の連絡者が必要であり,これらの日本在住者が被請求人の窓口まで願書等の書類を持参して,手続きを行うことが基本となっている。そして,この日本在住者(日本語が堪能な者や日本人等)が窓口に来て願書等を提出する際にも,入学案内リーフレットは配布されている。また,該連絡者や経費支弁者等の関係者は,願書等を持参する前に窓口等に相談に来ることも多く,その際にも該リーフレットは配布されている。さらに,国内の大学や大使館関係者等の関係者にも,機会があるごとに,該リーフレットは配布されている。
(3)請求人からの要求について
ア 願書について
請求人から,被請求人への入学応募は日本語と現地言語のいずれで申し込むのかを明らかにすべきという要求があったが,被請求人への入学応募は,例えば海外からの応募の願書である乙第67号証に示されるように,原則日本語か英語で記入することになっている。また,「日本留学を希望する理由書」については現地言語でも可能であるが,その場合は日本語の訳文が必要である。
イ テキストについて
請求人から,知識の教授を行っていることを示すテキストを提出すべきとする要求があったが,要証期間内に使用していたテキストは,一例をあげれば,既に提出した乙第36号証ないし乙第38号証のとおりである。この点,テキストに本件商標を必ず使用しなければならない理由は何もなく,請求人の要求は何の意味もない。なお,乙第36号証ないし乙第38号証のテキストに表示された「国際学友会日本語学校」は,本件商標のもつ品質表示機能等を発揮させた商標の使用である。

第4 当審の判断
1 被請求人の提出した証拠によれば,以下のとおりである。
(1)乙第11号証について
乙第11号証は,被請求人のウェブサイトであり,上部に大きく「独立行政法人/日本学生支援機構」の文字,その下に「東京日本語教育センター(旧 国際学友会日本語学校)」の文字が記載され,さらにその下に「【概要】優れた日本語・基礎教科の予備教育」の項に,「・・・優れた日本語教育と必要な基礎科目の徹底した習得を含めた、日本で大学院・大学等に進学するための予備教育を行っています。・・・」の記載があり,右下に「2014/12/11」の記載がある。
(2)乙第59号証の1について
乙第59号証の1は,被請求人のウェブサイトであり,上部に大きく「独立行政法人/日本学生支援機構」の文字,その下に「東京日本語教育センター(旧 国際学友会日本語学校)」の文字が記載され,さらにその下に「【概要】優れた日本語・基礎教科の予備教育」の項に,「・・・優れた日本語教育と必要な基礎科目の徹底した習得を含めた、日本で大学院・大学等に進学するための予備教育を行っています。・・・」の記載がある。
そして,該ウェブサイトの上部には,「ご覧いただいているのは国立国会図書館が保存した2015年10月13日時点のページです。」の記載がある。
(3)乙第60号証の1について
乙第60号証の1は,被請求人のウェブサイトであり,上部に大きく「独立行政法人/日本学生支援機構」の文字,その下に「東京日本語教育センター(旧 国際学友会日本語学校)」の文字が記載され,さらにその下に「【概要】優れた日本語・基礎教科の予備教育」の項に,「・・・優れた日本語教育と必要な基礎科目の徹底した習得を含めた、日本で大学院・大学等に進学するための予備教育を行っています。・・・」の記載がある。
そして,該ウェブサイトの上部には,「ご覧いただいているのは国立国会図書館が保存した2016年1月8日時点のページです。」の記載がある。
2 上記1からすれば,次のとおり判断できる。
(1)使用商標及び使用者について
被請求人のウェブサイト(乙11,乙59の1,乙60の1)の上部には,「独立行政法人/日本学生支援機構」の記載,その下には,「東京日本語教育センター(旧 国際学友会日本語学校)」の文字が表示されているところ,これらに表示されている「(旧 国際学友会日本語学校)」(以下「使用商標」という。)の文字中の「旧」の文字は,「昔,過去」等を意味する語として理解されるものであり,この文字は,過去の名称であることを表すものとして理解されるにとどまるというのが相当であるから,自他役務識別標識としての機能を果たし得ないものである。
そして,この文字を除く「国際学友会日本学校」の文字部分は,旧学校名である使用商標の表示中において,自他役務を識別する標識としての機能を果たし得るものというのが相当である。
してみれば,被請求人のウェブサイト(乙11,乙59の1,乙60の1)に表示されている「国際学友会日本語学校」の文字部分は,取引者,需要者において「旧 国際学友会日本語学校」の要部として理解されるものである。
そして,これらのウェブサイトには,被請求人である「独立行政法人/日本学生支援機構」の名称が記載されていることからすれば,使用商標の使用者は,被請求人といえる。
(2)使用時期について
ア 被請求人のウェブサイト(乙11)の上部には,使用商標が表示され,右下には「2014/12/11」と記載されている。
これは,2014年(平成26年)12月11日に印刷出力されたものと理解するのが相当であり,この日付は,要証期間内である。
イ 被請求人のウェブサイト(乙59の1)の上部には,使用商標が表示され,国立国会図書館が保存した日付は,「2015年10月13日」と記載さている。
これは,2015年(平成27年)10月13日に存在した被請求人のウェブページと理解するのが相当であり,この日付は,要証期間内である。
ウ 被請求人のウェブサイト(乙60の1)の上部には,使用商標が表示され,国立国会図書館が保存した日付は,「2016年1月8日」と記載されている。
これは,2016年(平成28年)1月8日に存在した被請求人のウェブページと理解するのが相当であり,この日付は,要証期間内である。
以上のとおり,これらのウェブサイトは,要証期間内のものである。
したがって,被請求人は,自身のウェブサイトに使用商標を要証期間内に使用したものと認めることができる。
(3)本件商標と使用商標との社会通念上同一について
本件商標は,前記第1のとおり,「国際学友会日本語学校」の文字からなるものであり,一方,使用商標は「旧 国際学友会日本語学校」の文字からなるところ,上記(1)のとおり,使用商標の要部は,本件商標と同一の「国際学友会日本語学校」の文字部分であるから,使用商標において,「国際学友会日本語学校」の文字からなる本件商標の本質的機能は損なわれていないというべきである。
してみれば,使用商標は,取引社会における旧名称としての商標の使用という観点からして普通の表示方法と認められるものであって,本件商標と同一性を有するものと判断するのが相当である。
そして,旧名称として表示していることをもって,直ちに,使用商標の要部といい得る「国際学友会日本語学校」の文字を,商標として使用していないとみるのは妥当ではなく,商標の要部が,本件商標と同一の文字からなる使用商標は,本件商標と社会通念上同一の商標といえるものである。
よって,使用商標は,本件商標と社会通念上同一の商標と認められる。
(4)使用役務について
被請求人のウェブサイト(乙11,乙59の1,乙60の1)には,「日本語教育と必要な基礎科目の徹底した習得を含めた、日本で大学院・大学等に進学するための予備教育を行っています。」の記載があることからすれば,被請求人は,学校において様々な科目の授業を行っており,大学等への進学を目的とした教育の実施を業務として行っていると認められ,この業務は,「学校で行う知識の教授」と認められるものであって,これは,「技芸・スポーツ又は知識の教授,語学の教授」の範ちゅうに含まれる役務である。
(5)小括
上記(1)ないし(4)によれば,被請求人は,要証期間内である平成26年12月11日,同27年10月13日及び同28年1月8日に自身が業務として行う取消請求役務「技芸・スポーツ又は知識の教授,語学の教授」の範ちゅうに含まれる「学校で行う知識の教授」を広告するウェブサイトに,本件商標と社会通念上同一と認められる商標を表示したものと認めることができる。
そして,上記の使用行為は,商標法第2条第3項第8号にいう「役務に関する広告に標章を付して電磁的方法により提供する行為」に該当するものと認められる。
3 まとめ
以上のとおり,被請求人は,本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において,商標権者が,その請求に係る指定役務中の「技芸・スポーツ又は知識の教授,語学の教授」について,本件商標と社会通念上同一と認められる商標を使用していたことを証明したものと認められる。
したがって,本件商標の登録は,その請求に係る指定役務について,商標法第50条の規定により,その登録を取り消すことができない。
よって,結論のとおり審決する。
審理終結日 2018-01-22 
結審通知日 2018-01-29 
審決日 2018-02-16 
出願番号 商願2004-25864(T2004-25864) 
審決分類 T 1 32・ 1- Y (Y41)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 高橋 厚子 
特許庁審判長 井出 英一郎
特許庁審判官 山田 正樹
榎本 政実
登録日 2005-03-11 
登録番号 商標登録第4844117号(T4844117) 
商標の称呼 コクサイガクユーカイニッポンゴガッコー、コクサイガクユーカイ、コクサイガクユー、コクサイガクユーカイニッポンゴ 
代理人 野口 和孝 
代理人 小川 雅也 
代理人 新井 全 
代理人 吉澤 敬夫 
代理人 武市 吉生 

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