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審決分類 |
審判 全部申立て 登録を維持 W3537 審判 全部申立て 登録を維持 W3537 審判 全部申立て 登録を維持 W3537 審判 全部申立て 登録を維持 W3537 審判 全部申立て 登録を維持 W3537 |
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管理番号 | 1340390 |
異議申立番号 | 異議2017-900329 |
総通号数 | 222 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標決定公報 |
発行日 | 2018-06-29 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2017-10-30 |
確定日 | 2018-05-19 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 登録第5970189号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 登録第5970189号商標の商標登録を維持する。 |
理由 |
第1 本件商標 本件登録第5970189号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成よりなり、平成29年5月16日に登録出願、第35類「電気機械器具類の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」及び第37類「電気通信機械器具の修理又は保守,電子応用機械器具の修理又は保守」を指定役務として、同年7月19日に登録査定、同年8月4日に設定登録されたものである。 第2 引用商標 登録異議申立人(以下「申立人」という。)が、登録異議の申立ての理由として引用する登録商標は、以下の9件であり、いずれも現に有効に存続しているものである。 1 登録第2173459号商標(以下「引用商標1」という。) 商標の構成:別掲2のとおり 登録出願日:昭和60年6月6日 設定登録日:平成元年9月29日 最新更新登録日:平成21年7月7日 書換登録日:平成22年3月24日 指定商品:第7類、第9類及び第17類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品 2 登録第4684951号商標(以下「引用商標2」という。) 商標の構成:別掲2のとおり 登録出願日:平成14年5月20日 設定登録日:平成15年6月20日 最新更新登録日:平成25年2月12日 指定役務:第37類「電子計算機の修理又は保守,コンピューターハードウェアの保守に関する助言 」を含む第37類及び第42類に属する商標登録原簿記載のとおりの役務 3 登録第4696655号商標(以下「引用商標3」という。) 商標の構成:別掲2のとおり 登録出願日:平成14年3月27日 設定登録日:平成15年8月1日 放棄による一部抹消の登録日:平成15年11月10日 最新更新登録日:平成25年3月5日 指定商品及び指定役務:第9類及び第38類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品及び役務 4 登録第5054551号商標(以下「引用商標4」という。) 商標の構成:別掲2のとおり 登録出願日:平成18年7月31日 設定登録日:平成19年6月15日 最新更新登録日:平成29年1月31日 指定商品及び指定役務:第37類「コンピュータネットワーク機械設備及び周辺機器の修理又は保守,電子応用機械器具の修理又は保守,電話機械器具の修理又は保守,オーディオ機械器具の修理又は保守,ビデオ機器の修理又は保守,その他の電気通信機械器具の修理又は保守」を含む第9類、第16類及び第37類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品及び役務 5 登録第5137030号商標(以下「引用商標5」という。) 商標の構成:別掲2のとおり 登録出願日:平成19年4月13日 設定登録日:平成20年6月6日 指定役務:第35類「コンピュータ・コンピュータソフトウェア・その他の電気機械器具類の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供(電子商取引によるものを含む。)」を含む第35類に属する商標登録原簿記載のとおりの役務 6 登録第5548200号商標(以下「引用商標6」という。) 商標の構成:別掲2のとおり 登録出願日:平成24年5月25日 設定登録日:平成25年1月11日 指定商品及び指定役務:第7類、第10類、第11類、第17類、第39類及び第45類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品及び役務 7 登録第5940873号商標(以下「引用商標7」という。) 商標の構成:別掲2のとおり 登録出願日:平成28年9月14日 設定登録日:平成29年4月14日 指定商品:第2類、第3類及び第6類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品 8 国際登録第885881号商標(以下「引用商標8」という。) 商標の構成:別掲2のとおり 国際商標登録出願日:2006年(平成18年)3月22日 設定登録日:平成20年2月8日 最新更新登録日:平成28年4月12日 指定役務:第37類「Installation of computer hardware; maintenance of computer hardware; repair of computer hardware; advisory and consultancy services relating to all the aforesaid.」を含む第36類、第37類及び第38類に属する国際登録に基づく商標権に係る商標登録原簿記載のとおりの役務 9 国際登録第1014459号商標(以下「引用商標9」という。) 商標の構成:別掲2のとおり 国際商標登録出願日:2009年(平成21年)4月29日 優先権主張:United States of America 2009年1月13日 設定登録日:平成22年7月2日 指定商品:第9類に属する国際登録に基づく商標権に係る商標登録原簿記載のとおりの商品 以下、これらをまとめて「引用商標」という。 第3 登録異議の申立ての理由 申立人は、本件商標は、商標法第4条第1項第11号、同第15号及び同第19号に違反して登録されたものであるから、商標法第43条の2第1号により取り消されるべきものであるとして、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第11号証(枝番号を含む。)を提出した。 1 申立人について 申立人は、アメリカ合衆国カリフォルニア州に本社を置く、インターネット関連製品・デジタル家庭電化製品及び同製品に関連するソフトウェア製品を開発・販売する多国籍企業であって、パーソナルコンピュータを市販化した最初の会社であり、その製品である「Macbook」や「iMac」は、コンピュータ業界において広く知られている。近年は、スマートフォン「iPhone」の爆発的なヒットに加え、タブレットコンピュータ「iPad」や時計型コンピュータ「AppleWatch」も大きな話題を呼んだ。加えて「iTunes」における音楽配信サービスにより、音楽産業の業態に変革を与えるほど大きな存在となっており、今や、我が国において申立人及びその製品・サービスを知らない者はいないといって過言ではない。 申立人は、「世界の最も価値あるブランドランキング」で首位を獲得するなど、高い知名度を誇り、当該ランキングにおいては、2011年から7年連続で首位の座を維持している(甲3)。 2 申立人の引用商標(リンゴ図形)の著名性 引用商標は、前記第2のとおり、リンゴ図形から構成されている。 申立人の企業ロゴである引用商標は、申立人の公式ウェブサイト(https://www.apple.com/jp/)の他、銀座、表参道、福岡天神、心斎橋の申立人店舗では看板として用いられている。 また、申立人の製品、サービス、広告、販売促進資材等と常に併せて使用されている。 引用商標に係るリンゴ図形は、「APPLE」の語とともに申立人製品・サービスの利用者であれば必ず目にすることのある商標であって、申立人を表す商標として需要者の間において広く知られている。 事実、甲第4?7号証のとおり、申立人のリンゴ図形は、トヨタ、マクドナルド、アディダス等と並ぶ有名ロゴとして理解され、記事にされている。 すなわち、引用商標は、明らかに「著名」であり、世界でも最も価値のある商標のひとつであり、我が国においても、テクノロジー関連業界はもとより、ほとんどの一般消費者にも認識されているといっても過言ではない。 以上のとおり、引用商標は、我が国及び世界各国における申立人の長年の販売及び販売促進活動の努力により、本件商標の出願時(平成29年5月16日)以前より、申立人の莫大な業務上の信用が化体した著名商標となっていたことが明らかである。 3 商標法第4条第1項第11号該当性 本件商標は、前記第1のとおり、赤色の光沢感のある円図形の中に、白色のリンゴ図形を表した構成からなる。 引用商標は、前記第2のとおり、リンゴ図形を表した構成からなる。 本件商標は、その構成中、赤色の光沢感のある円図形を有するが、当該赤色円図形は、装飾的背景であり、円図形の中心部にあるリンゴ図形に溶け込んだ構成ではないため、商標の要部を構成するものではない。したがって、本件商標と引用商標の類否判断は、リンゴの図形部分を比較して判断されるべきである。 まず、実の部分を比較すると、本件商標には、引用商標の一口かじったようなデザインは施されていないものの、全体の丸み、底部の窪みの傾斜、上部の芯の窪み部分の傾斜は同一といってもいいくらい酷似している。 次に葉の部分を比較すると、引用商標にはリンゴの軸を表したとみられる図形が存在し、葉の大きさが若干異なるものの、葉の形及び傾斜角度は、同一といってもいいくらい似ており、本件商標の葉図形は、引用商標の葉図形を反転させ、大きさを変えただけの構成と認められる。 引用商標はリンゴの実と葉という2つの構成要素からなるが、本件商標は、この2つの構成要素それぞれに酷似したものを備えており、それにリンゴの芯、赤色の円図形を付加したにすぎず、両者は外観上類似する。 上述したとおり、円図形に識別力はなく、その赤い色彩はリンゴとして当たり前の色彩を付しただけであり、リンゴの芯もリンゴの実と葉からなるデザインの構成上簡単に考えつくデザインであるから、これらの付加要素は、本件商標の特徴的なデザインとはいえず、引用商標との類似関係を否定する根拠とはならない。 また、観念は、共にリンゴの図形からなる商標であり、申立人の著名商標を基礎として多少の改変を加えているにすぎない本件商標は、「リンゴ」ないし申立人を想起させることは明らかであって、同一又は類似である。 したがって、本件商標と引用商標は、外観及び観念を共通にする類似の商標である。 そして、周知商標であるというような取引における明白な実情については、商標の類否判断において、当然配慮、斟酌されるべき要素である。 そうすると、引用商標に係るリンゴ図形は我が国において広く知られていること、申立人は同リンゴ図形を用いて、本件商標の指定役務に係る第35類「電気機械器具類の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」並びに第37類「電気通信機械器具の修理又は保守,電子応用機械器具の修理又は保守」を現に提供していること(甲8及び甲9)、さらに後述のとおり、本件商標は現に申立人の製品である「iPhone」のアクセサリ製品の小売、「iPhone」の修理業について使用されていることを考慮すると、本件商標は、この点からも、引用商標と混同を生じるおそれの高い類似の商標と解すべきである。 また、本件商標の指定役務と引用商標の指定商品及び指定役務とが同一又は類似であることも明白である。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。 4 商標法第4条第1項第15号該当性 前記のとおり、引用商標は、申立人の商標として長年にわたって使用され、申立人を表示するものとして著名な商標である。 しかして、本件商標は、前述のとおり、引用商標と類似する。仮に類似しないとしても、申立人の著名商標の構成に改変を加えたことが明らかな商標であり、申立人の信用にただ乗りする意図があることは明らかである。 したがって、本件商標が、その指定役務について使用された場合には、その役務は、申立人又は関連する企業の役務と誤認されるおそれがあることは明らかである。 特に、申立人の商標は電気機械器具関連商品・サービス分野で広く知られているものであるから、第35類「電気機械器具類の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」及び第37類「電気通信機械器具の修理又は保守,電子応用機械器具の修理又は保守」を指定役務とする本件商標におけるリンゴ図形は、即座に申立人を想起させ、強い出所表示機能を担うものであるから、本件商標に接する需要者・取引者は、本件商標から「申立人に関係する何らかの商品・役務」をイメージすると考えられ、その出所を混同するおそれが高い。 特許庁の商標審査基準では、「他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標」についての考慮事項として、以下を挙げている。これらについて検討すると、本件商標が使用されると、出所の混同が生じるおそれや、申立人から公認を受けているとの誤認あるいは、申立人の周知な引用商標にかかるリンゴ図形の希釈化・汚染化が生じるおそれがある。 (1)その他人の標章の周知度 申立人の引用商標が著名であることは前記のとおりである。 (2)その他人の標章が創造標章であるかどうか 申立人の引用商標は、申立人が依頼したデザイナーが創作した商標である。 (3)その他人の標章がハウスマークであるかどうか 申立人のハウスマーク(会社ロゴ)であることは前記のとおりである。 (4)企業における多角経営の可能性 申立人は、コンピュータの分野以外にも音楽事業等様々な事業分野で商品・役務展開している。例えば、申立人本社では、コンピュータ関連製品の他、マグカップやTシャツ、文房具等が販売されている(甲10)。したがって、多角経営の可能性は十分に認められる。 (5)商品間、役務間又は商品と役務間の関連性 商品等の関連性があることは、本件の指定役務から十分に認められる。 (6)商品等の需要者の共通性その他取引の実情 申立人の製品・サービスと本件商標の指定役務は関連性があるから、需要者の共通性は当然に認められる。 事実、本件商標権利者は、甲第11号証に示されるとおり、本件商標を使用して「iPhone」のアクセサリ製品の小売、「iPhone」の修理業を行っている。したがって、本件商標が申立人の引用商標を意識したものであることは明らかである。 また、本件商標権利者は、申立人製品に関する商品の販売及び申立人製品の修理業を行っていることに加え、甲第11号証のとおり、本件商標のみならず、申立人である「アップル インコーポレイテッド」を容易に想起させ、申立人の提供する著名サービス「アップルストア」を翻訳したにすぎない「リンゴ屋」を屋号として使用していることから、さらに需要者における混同のおそれは高い。 また、商標法第4条第1項第15号には、いわゆる「広義の混同」、すなわち、ある他人の業務に係る商品等であると誤信されるおそれのある商標のみならず、その他人との間にいわゆる親子会社や系列会社等の緊密な営業上の関係又は同一の表示による商品化事業を営むグループに属する関係にある営業主の業務に係る商品等であると誤信されるおそれがある商標を含むものであるから、申立人の著名商標であるリンゴ図形と酷似する本件商標は、少なくとも、申立人と何らかの関係にある営業主の業務に係る役務と誤認されるおそれがあることは明らかである。 さらに、商標法第4条第1項第15号は、単純な「出所の混同」のみならず「ただ乗り」「希釈化」をも防止しようとする規定であるとの解釈が最高裁判例であるところ、本件商標権者は、引用商標と酷似する本件商標及び申立人を想起させる「リンゴ屋」を屋号として使用し、申立人ブランドに「ただ乗り」し、これを「希釈化」させ、申立人の業務上の信用が損なわれる状況となっている。 以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。 5 商標法第4条第1項第19号該当性 前記のとおり、本件商標が申立人の著名商標である引用商標に類似すること及び引用商標は、申立人の著名商標であることは明らかである。 一般的に、リンゴという果物の図柄を、本件商標の指定役務の商標として採用しなければならない必然性ないし必要性は全くない。 したがって、商標権者は、申立人の著名商標であるリンゴ図形の存在を当然に知りながら、本件商標を採択し登録出願したものと優に推認できる。 上記の事実及び申立人の引用商標が著名であって、極めて大きな顧客吸引力を有する事実を考慮すれば、本件商標は、引用商標のもつ強大な顧客吸引力・名声へのただ乗りによって不正の利益を得る目的を有するか、申立人商標の有する強い識別力・表示力・顧客吸引力を希釈化することによって申立人に損害を加える目的を有するかのいずれかの不正の目的をもって使用するものと解さざるを得ないものである。 よって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当する。 第4 当審の判断 1 引用商標の周知著名性について (1)申立人の提出した証拠及び同人の主張によれば、以下のことが確認できる。 ア 申立人は、アメリカ合衆国カリフォルニア州に本社を置く、インターネット関連製品・デジタル家庭電化製品及び同製品に関連するソフトウェア製品を開発・販売する企業であって、コンピュータ業界においては、その製品「Macbook」や「iMac」、スマートフォン「iPhone」に加え、タブレットコンピュータ「iPad」や時計型コンピュータ「AppleWatch」を開発した企業として知られている。 イ 申立人は「『世界で最も価値あるブランド』、アップルが7年連続トップ」と題する2017(平成29)年5月31日付け「Forbes JAPAN」のインターネット記事において、高いブランド価値を有する企業として紹介されており、2011年から7年連続で首位の座を維持していることが記載されている。また、同記事には、引用商標とほぼ同一の図形が写った申立人本社の看板とおぼしき写真が掲載されている(甲3)。 ウ 申立人のウェブサイト(https://www.apple.com/jp/)において、引用商標と同一の図形は、申立人の業務に係るパーソナルコンピュータ、スマートフォンに付されていること、また、申立人の業務に係るパーソナルコンピュータ・スマートフォンの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供(甲8)及びパーソナルコンピュータ・スマートフォンの修理(甲9)の広告に表示されていること、並びに、銀座、表参道、福岡天神、心斎橋の申立人各店舗では、引用商標とほぼ同一の図形が目立つように建物に大きく看板として表示されている。 エ 2014年5月から2017年10月の日付のインターネット記事に、引用商標と同一の図形が、トヨタ、マクドナルド、アディダス等と並ぶ有名企業のロゴとして紹介されている(甲4?甲7)。 (2)周知著名性の判断 以上によれば、引用商標は、申立人の業務に係るパーソナルコンピュータ、スマートフォン、パーソナルコンピュータ・スマートフォンの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供、パーソナルコンピュータ・スマートフォンの修理について使用されているものである。 そして、銀座、表参道、福岡天神、心斎橋等の繁華街に所在する申立人各店舗では、引用商標とほぼ同一の図形が目立つように看板として表示されており、多くの人の目に触れるものといえる。 さらに、引用商標とほぼ同一の商標は、申立人が高いブランド価値を有する企業として「2011年から7年連続で首位の座を維持している」ことを紹介する「Forbes JAPAN」のインターネット記事(2017年5月)に掲載されており、2014年5月から2017年10月にかけて、複数のウェブサイトにおいて、トヨタ、マクドナルド、アディダス、グーグル等の広く知られた商標とともに、有名商標として紹介されているものである。 してみれば、引用商標は、本件商標の登録出願時(平成29年5月16日)及び登録査定時(同年7月19日)において、申立人の業務に係るパーソナルコンピュータ、スマートフォン、パーソナルコンピュータ・スマートフォンの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供、パーソナルコンピュータ・スマートフォンの修理を表示するものとして、取引者、需要者の間に広く認識されていたといい得るものである。 2 商標法第4条第1項第11号該当性について (1)本件商標について 本件商標は、別掲1のとおり、光沢感のある赤色の円図形の中央部に、リンゴとおぼしき果実の図形を、その中に収まるようにまとまりよく白抜きした構成からなるものである。 また、本件商標中の白抜きされたリンゴとおぼしき果実の輪郭部分には、上方に、左上に向かって伸びる果実の葉及び果実の軸が表されている。 そして、本件商標は、全体として特定の事物又は意味合いを表すものとして認識され、親しまれているものではないから、特定の称呼及び観念を生じないものである。 (2)引用商標について 引用商標は、別掲2のとおり、右上方にかじられたような丸い切り欠きのある簡略化されたリンゴとおぼしき果実の黒色の図形よりなり、果実の上方に、右上に向かって伸びる葉が表されている。 そして、引用商標は、特定の称呼をもって親しまれたものではないから、これより特定の称呼は生じず、また、引用商標を構成する図形の形状から「かじられたリンゴ」程の観念、あるいは、広く知られたコンピュータ企業「申立人のロゴマーク」の観念を生じるというのが相当である。 (3)本件商標と引用商標との類否について 本件商標と引用商標とを比較すると、両者は、上記(1)及び(2)のとおりの構成からなるところ、外観においては、光沢感のある赤色の円図形の有無、リンゴとおぼしき果実の図形が白抜きか黒色かの点において差異がある。 また、両者のリンゴとおぼしき果実の図形部分においては、「かじられたような丸い切り欠き」の有無、果実の軸の有無、葉と実が離れているか否か、果実の上方の葉の向きが左右で異なることに加え、本件商標の葉は、引用商標の葉に比較して明らかに大きく表されているものである。 以上の相違点からすると、両者は、外観上、明確に区別できるものである。 次に、称呼においては、本件商標及び引用商標はいずれも特定の称呼を生じないものであるから、両者を比較することができないものである。 そして、観念においては、本件商標からは特定の観念を生じないのに対し、引用商標からは「かじられたリンゴ」又は「申立人のロゴマーク」の観念を生じるものであるから、両者は、観念上、紛れるおそれはない。 そうすると、両商標は、外観、称呼及び観念のいずれの点からみても紛れるおそれのない、非類似の商標とみるのが相当である。 (4)申立人の主張について 申立人は「引用商標に係るリンゴ図形は我が国において広く知られていること、申立人は同リンゴ図形を用いて、本件商標の指定役務に係る第35類『電気機械器具類の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供』並びに第37類『電気通信機械器具の修理又は保守,電子応用機械器具の修理又は保守』を現に提供していること、本件商標は現に申立人の製品である『iPhone』のアクセサリ製品の小売、『iPhone』の修理業について使用されていることを考慮すると、本件商標は、この点からも、引用商標と混同を生じるおそれの高い類似の商標と解すべきである。」旨主張している。 しかしながら、本件商標と引用商標とは、上記(3)のとおり、外観、称呼及び観念のいずれの点においても紛れるおそれのない、非類似の商標であり、両商標はその印象が明らかに異なる全く別異の商標であると判断するのが相当である。 よって、申立人の主張は採用することができない。 (5)小括 以上のとおり、本件商標は、引用商標と非類似の商標であるから、商標法第4条第1項第11号に該当しない。 3 商標法第4条第1項第15号該当性について (1)引用商標の周知著名性について 上記1のとおり、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係るパーソナルコンピュータ、スマートフォン、パーソナルコンピュータ・スマートフォンの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供、パーソナルコンピュータ・スマートフォンの修理を表示するものとして、取引者、需要者の間に広く認識されているといい得るものである。 (2)役務の関連性、需要者の共通性について 引用商標が使用されている上記商品及び役務と、本件商標の指定役務、第35類「電気機械器具類の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」及び第37類「気通信機械器具の修理又は保守,電子応用機械器具の修理又は保守」とを比較してみると、これらの商品及び役務の分野では、販売店が販売した商品の修理を行うことも一般的であるから、取扱業者が一致する等の関連性を有するものであり、その取引者、需要者を共通にするものといえる。 (3)引用商標の独創性について 引用商標は、親しまれた果物であるリンゴをモチーフにしたものではあるものの、その右上方にかじられたような丸い切り欠きのある簡略化されたリンゴの図形であること及び葉と実が離れていることに独創性を有しているといい得るものである。 (4)本件商標と引用商標の類似性の程度について 上記2のとおり、本件商標と引用商標とは、赤色の光沢感のある円図形の有無、リンゴとおぼしき果実の図形が白抜きか黒色かの点、また、両者のリンゴとおぼしき果実の図形部分においては、「かじられたような丸い切り欠き」の有無、果実の軸の有無、葉と実が離れているか否か、果実の上方の葉の向きが左右で異なることに加え、葉の図形部分の大小について差異を有し、外観、称呼及び観念のいずれの点においても相紛れるおそれのない、非類似の商標であって、その印象が明らかに異なる別異の商標というべきものである。 (5)出所混同のおそれについて 上記(1)ないし(4)によれば、引用商標は周知著名性を有し、本件商標と引用商標の取引者、需要者は共通するとしても、本件商標と引用商標は、前記のとおり、明らかな差異を有する別異の商標である。 してみれば、本件商標をその指定役務に使用した場合、これに接する取引者、需要者が、引用商標を想起、連想して、当該役務を申立人の業務に係る役務、あるいは同人と経済的又は組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る役務であるかのように、役務の出所について混同を生じさせるおそれがある商標ということはできない。 (6)申立人の主張について 申立人は、「本件商標権利者は、甲第11号証に示されるとおり、本件商標を使用して『iPhone』のアクセサリ製品の小売、『iPhone』の修理業を行っている。したがって、本件商標が申立人の引用商標を意識したものであることは明らかである。・・・本件商標のみならず、申立人である『アップル インコーポレイテッド』を容易に想起させ、申立人の提供する著名サービス『アップルストア』を翻訳したにすぎない『リンゴ屋』を屋号として使用していることから、さらに需要者における混同のおそれは高い。・・・本件商標は、・・・申立人の著名商標の構成に改変を加えたことが明らかな商標であり、申立人の信用にただ乗りする意図があることは明らかである。・・・本件商標権者は、引用商標と酷似する本件商標及び申立人を想起させる『リンゴ屋』を屋号として使用し、申立人ブランドに『ただ乗り』し、これを『希釈化』させ、申立人の業務上の信用が損なわれる状況となっている。」旨主張している。 しかしながら、本件商標と引用商標とは前記2(3)のとおり、明確に区別できる非類似のものである。 また、本件商標のリンゴとおぼしき果実の輪郭部分は、リンゴを表す一般的な図形の一つといえるものであり、本件商標が引用商標に改変を加えたものであると断定することはできない。 さらに、申立人は、「本件商標のみならず、申立人である『アップル インコーポレイテッド』を容易に想起させ、申立人の提供する著名サービス『アップルストア』を翻訳したにすぎない『リンゴ屋』を屋号として使用していることから、さらに需要者における混同のおそれは高い。」旨主張しているが、片仮名文字と漢字を結合した「リンゴ屋」は、我が国における屋号の一種と認識されるにとどまるというべきであって、片仮名で表した英語を認識させる「アップル インコーポレイテッド」や「アップルストア」とは、構成文字や印象が明らかに異なるものである。また、「アップルストア」の文字が申立人の著名サービスであることを立証する証拠の提出もなく、「リンゴ屋」の屋号が「アップル インコーポレイテッド」や「アップルストア」を容易に想起させ、需要者に出所の混同を生じるというべき特段の理由を見いだすことはできない。 してみれば、本件商標権者がリンゴとおぼしき果実の輪郭を商標に採択したことや、「リンゴ屋」の文字を屋号として採択したことのみをもって、本件商標は、引用商標に「ただ乗り」し、引用商標を「希釈化」させるものであると認めることもできない。 よって、申立人の主張は採用できない。 (7)小括 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。 4 商標法第4条第1項第19号該当性について 上記1のとおり、引用商標は、申立人の業務に係る商品及び役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものであるとしても、上記2のとおり、本件商標と引用商標とは、相紛れるおそれのない非類似の商標であって別異の商標である。 また、商標権者が、不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的その他の不正の目的を持って本件商標を出願し、登録を受けたと認めるに足りる具体的事実を見いだすこともできない。 そうすると、本件商標は、引用商標の出所表示機能を希釈化し又は名声を毀損させるなど不正の目的をもって使用をするものと認めることはできない。 なお、申立人は「一般的に、リンゴという果物の図柄を、本件商標の指定役務の商標として採用しなければならない必然性ないし必要性は全くない。したがって、商標権者は、申立人の著名商標であるリンゴ図形の存在を当然に知りながら、本件商標を採択し登録出願したものと優に推認できる。」旨主張しているが、本件商標の商標権者が引用商標の周知性に便乗して不正の利益を得ることを目的にしていたとか、申立人に損害を与えることを目的に登録出願したとの事情を認めるに足りる証拠はないものであるから、申立人の主張は採用できない。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当しない。 5 むすび 以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号、同第15号及び同第19号のいずれにも違反してされたものとはいえないから、同法第43条の3第4項の規定により、その登録を維持すべきである。 よって、結論のとおり決定する。 |
別掲 |
別掲1(本件商標:色彩については原本参照。) 別掲2(引用商標1?引用商標9) |
異議決定日 | 2018-05-11 |
出願番号 | 商願2017-66541(T2017-66541) |
審決分類 |
T
1
651・
271-
Y
(W3537)
T 1 651・ 262- Y (W3537) T 1 651・ 261- Y (W3537) T 1 651・ 222- Y (W3537) T 1 651・ 263- Y (W3537) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 佐藤 松江 |
特許庁審判長 |
冨澤 美加 |
特許庁審判官 |
真鍋 恵美 鈴木 雅也 |
登録日 | 2017-08-04 |
登録番号 | 商標登録第5970189号(T5970189) |
権利者 | 株式会社りんごや名古屋通商 |
代理人 | 特許業務法人大島・西村・宮永商標特許事務所 |