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審決分類 |
審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Y35 |
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管理番号 | 1337130 |
審判番号 | 取消2015-300622 |
総通号数 | 219 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標審決公報 |
発行日 | 2018-03-30 |
種別 | 商標取消の審決 |
審判請求日 | 2015-08-26 |
確定日 | 2018-01-30 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第4882830号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 登録第4882830号商標の指定商品及び指定役務中,第35類「全指定役務」については、その登録は取り消す。 審判費用は、被請求人の負担とする。 |
理由 |
第1 本件商標 本件登録第4882830号商標(以下「本件商標」という。)は,別掲1のとおりの構成からなり,平成16年9月17日に登録出願,第16類,第36類,第38類,第39類,第41類,第42類及び第45類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品及び役務,並びに第35類「広告,トレーディングスタンプの発行,経営の診断又は経営に関する助言,市場調査,商品の販売に関する情報の提供,ホテルの事業の管理,財務書類の作成,職業のあっせん,競売の運営,輸出入に関する事務の代理又は代行,新聞の予約購読の取次ぎ,速記,筆耕,書類の複製,文書又は磁気テープのファイリング,電子計算機・タイプライター・テレックス又はこれらに準ずる事務用機器の操作,建築物における来訪者の受付及び案内,広告用具の貸与,タイプライター・複写機及びワードプロセッサの貸与,求人情報の提供,自動販売機の貸与」を指定役務として,同17年7月29日に設定登録され,その後,同27年7月21日に商標権の存続期間の更新登録がされたものである。 なお,本件審判の請求の登録は,平成27年9月8日にされたものである。 また,本件審判請求の登録前3年以内の期間である同24年9月8日から同27年9月7日までの期間を,以下「要証期間」という。 第2 請求人の主張 請求人は,結論同旨の審決を求め,審判請求書,審判事件弁駁書,口頭審理陳述要領書及び上申書において,その理由及び答弁に対する弁駁等を要旨以下のように述べ,証拠方法として甲第1号証ないし甲第14号証を提出した。 1 請求の理由 本件商標は,その指定及び指定役務中,第35類「全指定役務」について,継続して3年以上日本国内において,商標権者,専用使用権者又は通常使用権者のいずれもが使用した事実が存しないから,商標法第50条第1項により取り消されるべきである。 2 答弁に対する弁駁 (1)請求人答弁の理由について 被請求人は,答弁書とともに提出した証拠方法(特に乙2ないし乙6)により,要証期間内の我が国における第35類「広告」及び「市場調査」(以下,まとめて「使用役務」という場合がある。)に関する本件商標の使用の事実を証明しようとしている。 しかし,提出された答弁書及び証拠方法からは,要証期間内に我が国において第35類の使用役務及びその他の指定役務について本件商標が使用されている事実を認めることができない。 (2)乙第2号証及び乙第3号証について 被請求人は,2015年9月11日から16日まで東京ビッグサイトにおいて開催された印刷・紙工・デジタルグラフィックス関連の技術・サービスの国際総合印刷機材展である「IGAS2015」(以下「IGAS展」という。)におけるコダック株式会社(以下「コダック社」という。)のブースにおいて,同社の業務用カラー高性能プリンタのノベルティーに関する看板に,本件商標が表示されていることから,当該表示は,第35類「市場調査」に関する本件商標の使用といえる,と主張し,その証拠として,写真(乙3)を提出している。 しかしながら,乙第3号証の写真には日付が一切表示されていないから,当該写真により,要証期間における第35類「市場調査」及びその他の指定役務に関する本件商標の使用の事実が証明され得ないことは明らかである。 なお,当該写真の撮影は本件審判の請求の登録日である2015年9月8日より後の2015年9月11日であるから,写真(乙3)により,要証期間内における本件商標の使用は証明され得ない。 また,乙第3号証の写真中には,本件商標が表示された看板が確認でき,当該看板には中央に大きく表示された2次元コードの下に「このQRコードは,LogoQ Code Marketingで作られています」の記載があるが,上記看板は,コダック社のデジタル印刷機「Kodak NexPress」に関する技術や機能を紹介するための展示において,上記印刷機に関するアンケートへの回答を呼びかけるために設置されたものであり,当該アンケートの回答のために被請求人オリジナルの2次元コードが利用されていたと認識するのが自然である。 そうとすると,それは「2次元コード」関連の商品又は役務についての使用と考えるのが妥当であり,本件商標が「市場調査」に関する自他役務識別標識として使用されていると客観的に認識され得ると考えることはできない。 (3)乙第4号証について ア 乙第4号証は,被請求人が提供する「ロゴ・イラスト入りQRコード『ロゴQ』を作成できるクラウド型サービス」である「ロゴQコードマーケティング/LogoQ Code Marketing」なる名称のサービスの内容を説明する被請求人のWebサイトを示すものである。 そうとすると,乙第4号証により証明され得るものは,被請求人により提供されるサービスに関する広告,すなわち,自社サービスに関する広告における商標の使用と考えるのが相当である。 乙第4号証中には,本件商標が記載されるとともに,「2015年05月27日ロゴ・イラスト入りQRコード『ロゴQ』を作成できるグラウト型サービスをソフトバンクコマース&サービスの『Marketing Bank』から提供開始!!」「はじめてご利用される方は,Marketing Bankの本サービスページにある【お見積り・お問い合わせ】からお申し込み下さい」といった表示があるが,これら表示は,被請求人が提供する上記サービスの内容説明の一つとして,被請求人による上記サービスがソフトバンクコマース&サービス株式会社(以下「ソフトバンクコマース&サービス」という。)により運営されるプラットフォーム型ポータルサイト「Marketing Bank」を通じて提供されていることを示しているにすぎないから,本件商標が他社サービスに関する「広告」について自他役務識別標識として使用されていると客観的に認識され得ると考えることはできない。 また,乙第4号証中に記載されている本件商標は,すべて2次元コードの名称を示すために記述的に使用されているから,このような使用態様により,本件商標が「広告」等の自他役務識別標識として使用されていると客観的に認識され得ると考えることもできない。 イ 乙第4号証には,当該Webサイトが保存又は印刷された日付が記載されていないから,これにより,要証期間における本件商標の使用の事実は証明され得ない。 なお,乙第4号証の1頁中程に位置する「INFO」部分に記載された内容は,あくまでも2015年5月27日に「ロゴQ」を作成できる自社サービスの提供が開始されたことを示しているにすぎないから,上記表示により,要証期間における第35類「広告」に関する本件商標の使用の事実が証明され得ないことも明らかである。 (4)乙第5号証について ア 乙第5号証は,被請求人の総合的な商品・サービス紹介パンフレット(以下,単に「パンフレット」という場合がある。)というよりは,むしろ被請求人オリジナルのフルカラー2次元コードである「LogoQ/ロゴQ」の内容及び活用方法を紹介するパンフレットである。 パンフレットの7頁において,本件商標が表示されているが,本件商標の表示は前後の文脈と関係なくやや唐突に表示されているといい得るものである。また,7頁下部には被請求人の「事業内容]の一部として「ダイレクトマーケティング」の記載があるが,これらは単に被請求人の事業内容の紹介として,たまたま同じ頁に記載されているにすぎず,本件商標との直接的な関連性を把握・理解することは困難といわざるを得ず,本件商標が当該サービスの自他役務識別標識として使用されていると客観的に認識され得ると考えることはできない。 イ 乙第5号証のパンフレット発行日と本件商標に係る商標権の被請求人への移転登録受付日が同じ2015年6月15日であることを考慮すると, パンフレット右下に記載された「20150615」の発行日の信憑性についても疑問を感じざるをえない。 ウ 被請求人は,平成27年6月15日付で前商標権者より本件商標を譲り受け,同日より「LogoQ」をはじめとする被請求人オリジナルのフルカラー2次元コードを通じたサービス全体の総称として,本件商標の使用を開始し現在に至ると述べている。しかし,本件商標が被請求人オリジナルのフルカラー2次元コードを通じたサービス全体の総称として使用された事実を示す証拠は被請求人により提出されていない。 また,乙第5号証の3頁には,「文字/図形+QRコード(文字キューアールコード)」を商品名とする2次元コードが紹介されている。しかし,仮に当該記載において本件商標が識別標識として使用されていると考えたしても,当該記載の構成態様からすれば,本件商標は,第35類の役務ではなく,2次元コードが属する第9類の商品の自他商品識別標識として使用されていると考えるのが相当である。 さらに,乙第5号証の8頁には本件商標を表示するとともに,「2015年6月左記QRコードの商標を取得しました。」との記載があるが,上記本件商標の表示は被請求人の社歴紹介のーつとして記載されているにすぎないから,本件商標の自他商品役務識別標識としての使用として考えるべきものでない。 (5)被請求人は,答弁書において,被請求人に対し何ら事前の交渉もなく,全く使用する意思のない区分にまで及ぶ大量の不使用取消処分を求める請求人の行為は,本来の制度趣旨から逸脱し,専ら被請求人を害する目的で行われているため,本件審判請求も権利の乱用として認められるべきではない,と主張している。 しかし,「QRコード」は,大容量でありながら他のコードより10倍以上のスピードで読み取ることができる2次元コードとして請求人により開発され,1994年に発表されたものである。「QRコード」という名称は,「Quick Response/クイック・レスポンス」に由来し,高速読み取りにこだわり抜いた開発のコンセプトが込められた請求人の創作に係る造語である。請求人の長年に渡る普及活動の結果,「QRコード」は,自動車部品業界,食品業界,薬品業界及びコンタクトレンズ業界等において商品管理等様々な用途に使用され,かつ,JIS規格やISO規格を取得することにより,現在,「QRコード」は国内・海外の各分野の企業活動において不可欠な存在となった。これは,我が国の取引者及び需要者において広く知られている事実である。請求人は,「QRコード」の歴史や請求人による「QRコード」の普及活動を説明するための資料の一部として甲第3号証ないし甲第14号証の証拠方法を提出する。 上記の経緯によれば,誤認混同を防止する意味において,「QRコード」に係る商標は,そもそもの開発者であり,また,商標の創作者でもある請求人に帰属されるべきものである。また,請求人以外の企業による「QRコード」を利用した事業が円滑に進められるためにも,複数の区分に属する商品及び役務を指定する「QRコード」の文字を含む本件商標が請求人以外の者により維持されているのは決して望ましい状況とはいえない。 請求人は,「QRコード」の開発当初から,「より多くの人にQRコードを使ってもらいたい」という考えに基づき,第三者による規格化されたQRコードの使用について積極的に権利行使は行わないとのポリシーで普及活動を行ってきた。かかるポリシーの下,本件商標については登録後も実際の使用が長年行われていなかったことから,2015年7月29日の存続期間満了による権利消滅を待っていた。しかし,当該存続期間満了日直前の2015年6月に本件商標は被請求人に譲渡されていたため,本件不使用取消審判を請求するに至った。 以上の事実に鑑みれば,本件審判請求が本来の制度趣旨から逸脱するものでなく,また,専ら被請求人を害する目的で行われているものでもないことは明らかである。 (6)被請求人は,答弁書において,本来的に1件の不使用取消審判で足りるものを敢えて区分毎,さらには指定商品及び指定役務毎に分けてほぼ同時に複数の不使用取消審判を請求することは,権利の乱用であって不適法なものである,と主張している。 しかし,不使用取消審判については,商標法第50条第1項において,取消の対象となる登録商標の指定商品及び指定役務毎に請求し得ることが担保されている。また,同第2項においては,被請求人は,請求に係る指定商品及び指定役務のいずれかについての当該登録商標の使用を証明すれば登録の取消を免れることができると規定されている。このような,我が国の不使用取消審判制度の内容を考慮すれば,商品及び役務を広く指定する登録商標に対して不使用取消審判請求を行う場合において,一定の範囲の指定商品及び指定役務を一つのまとまりとして複数の審判に分けて請求することは,一般的に採用され得る手段であることはいうまでもない。 したがって,本件審判請求を含めた本件商標に対する計9件に渡る請求人よる不使用取消審判請求が権利の乱用とはいえず,また,不適法なものでないことは明らかである。 (7)以上のとおり,被請求人が提出した証拠方法からは,要証期間に取消の対象とされている第35類の使用役務及びその他の指定役務について本件商標と同一又は社会通念上の同一の商標を日本国内で使用した事実を客観的に認めることはできない。また,本件審判請求は,請求人が被請求人を害する目的で行われたものとはいえず,また,権利の乱用として認められるべきものでもない。 3 口頭審理陳述要領書(平成28年6月29日付け) (1)「審判請求行為の濫用について」に対する意見 ア 被請求人は,本来1件の審判で足りるものを敢えて9件もの審判に分けてほぼ同時にした本件審判を含む請求人による審判請求は,専ら被請求人を害することを目的としてなされたものであることは明らかであるから,審判請求権の濫用(民法第1条第3項,民事訴訟法第2条)であって不適法なものであると主張している。 しかし,以下の理由により,本件商標に対する計9件に渡る請求人による審判請求は,不使用取消審判制度の趣旨や商標法の目的を阻害するものでは決してなく,また,審判請求権の濫用にも該当しない適法なものである。 (ア)不使用取消審判については,商標法第50条第1項において,取消の対象となる登録商標の指定商品及び指定役務毎に請求し得ると規定されているから,本件商標に対する計9件に渡る不使用取消審判請求は適法である。 (イ)本件商標は,第16類,第35類,第36類,第38類,第39類,第41類,第42類,第45類の計8区分という広い範囲に属する商品及び役務を指定しており,請求人は上記8区分に含まれる全ての指定商品及び指定役務に係る登録の取消を希望している。仮に,上記8区分に含まれる全ての指定商品及び指定役務を取消対象とする不使用取消審判を一件のみ請求した場合,商標法第50条第2項の下では,取消請求に係る指定商品及び指定役務のいずれかについて使用の事実を証明すれば,全ての指定商品及び指定役務についての登録の取消を免れることができる。すなわち,本件商標に対して不使用取消審判を一件のみ請求するだけでは,使用されていない指定商品及び指定役務についての登録が維持されてしまう可能性があり,これでは,むしろ,業務上の信用が化体していないか又は業務上の信用がすでに消滅している不使用商標の整理という不使用取消審判制度の趣旨を没却する結果となってしまうおそれがある。 イ 「QRコード」は,膨大な労力・時間及び費用を要した請求人の普及宣伝活動により著名化されたわけであるから,著名商標「QRコード」に化体したグッドウィルヘのただ乗りは許されるものではない。また,請求人が商標「QRコード」を保有する目的は,模倣や悪用を防止し,ユーザの保護並びにユーザの「QRコード」に対する信頼・安心を確保するためである。 (2)「弁駁書及び審理事項通知書に対する反論」に対する意見 ア 「ダイレクトマーケティングサービス」が「市場調査」に該当するとしても,被請求人が当該サービスを実際に行っていることを証明するために提出した乙第8号証(統計情報の例及び請求書)並びに乙第9号証(キャンペーンの登録画面,統計情報,請求書)には,本件商標が表示されていないから,これら乙各号証から,「市場調査」に関する本件商標の使用を確認することはできない。 イ 乙第3号証の写真中には本件商標が表示された看板が確認できるが,本件商標に接する取引者・需要者は,本件商標中の上段の部分からも「QRコード」という言葉を極めて容易かつ直接的に把握・認識し得ると考えるのが自然である。 そうとすると,仮に,乙第3号証中の看板に示されるアンケート調査に被請求人オリジナルの2次元コードが使用される場合でも,当該看板に接する取引者・需要者により,本件商標が単に当該2次元コードの名称を示すために使用されていると認識されることはあり得るが,当該調査サービスに関する自他役務識別標識として使用されていると客観的に認識され得ると考えることはできない。むしろ,当該調査サービスに関する自他役務識別標識として認識され得るのは,当該看板中に本件商標よりもはるかに大きく太い文字で目立つように表示されている「LogoQ Code(ロゴ)/Marketing」であると考えるのが極めて自然かつ妥当である。 ウ 乙第4号証において,本件商標に接する取引者・需要者は,本件商標中の上段の部分からも「QRコード」という言葉を極めて容易かつ直接的に把握・認識し得ると考えるの自然であるから,乙第4号証中に記載されている本件商標は,すべて2次元コードの名称を示すために記述的かつ説明的に使用されていると考えるのが妥当である。 よって,このような使用態様により,本件商標が「広告」等の自他役務識別標識として使用されていると客観的に認識され得ると考えることはできない。 エ 被請求人は,本来答弁書提出時に提出すべきであった「2015年6月24日付Webサイトの写し」を,乙第10号証として今回あらためて提出しているが,単に日付が挿入されたにすぎないとも思われる乙第10号証の信憑性については疑問を感じざるをえない。 オ 被請求人は,乙第5号証のパンフレットに関し,グループ企業である朝日プロセス株式会社(以下「朝日プロセス社」という。)との間におけるに制作依頼書写し(乙11の1)及び納品書写し(乙11の2)により,当該パンフレットの発注及び納品の事実を証明しようとしている。 しかし,乙第11号証の1及び2からは,パンフレットが展示及び頒布等された事実を一切確認することができない。 また,被請求人は,乙第11号証の3に基づいて,2015年7月22日に飯田橋にてソフトバンクコマース&サービスが主催した「ターゲットメディアフォーラム2015」において,パンフレットを頒布した事実があると主張しているが,上記証拠方法からは,パンフレットが当該フォーラムにおいて展示及び頒布等された事実を一切確認することができない。 4 上申書(平成28年8月31日付) (1)「請求人による審判請求行為の濫用について」に対する意見 被請求人は,乙第12号証において,請求人と被請求人の間の過去の経緯を述べるとともに,本件商標に対する計9件に渡る審判請求が権利の濫用であると主張しているが,それらの主張は事実誤認に基くものであり,妥当とはいえない。 (2)「商標の使用について」に対する意見 乙第13号証は,被請求人が保有する内部的な記録に基き,被請求人自身により作成されたものであるから,著しく客観性に欠けるといわざるをえない。 よって,乙第13号証により,本件審判の要証期間内に乙第5号証の「パンフレット」が実際に頒布された事実を認めることは妥当とはいえない。 そして,乙第13号証には,2015年4月1日から2015年9月30日までの期間における「パンフレット」の頒布状況が示されているところ,被請求人によれば,本件商標が「パンフレット」に表示されたのは2015年6月15日からである。しかし,乙第13号証からは,頒布されたパンフレットの種類や内容までを確認することができないから,仮に「パンフレット」が実際に頒布されていたとしても,2015年6月15日以降も本件商標が記載されていない従前の「パンフレット」がそのまま頒布されていた可能性を否定できない。 また,乙第13号証によれば,本件商標が「パンフレット」に表示された2015年6月15日から本件審判請求の登録日である2015年8月24日までの間に頒布された「パンフレット」の部数はわずか70部?80部程度であるから,この程度の部数の頒布では,要証期間において,本件商標はごく形式的に使用されていたにすぎないと考えるのが相当である。 さらに,乙第13号証中の「打合せ主旨」の項目には,概ね「ロゴQ提案」や「ロゴQコードマーケティング紹介」と記載されており,該記載は,乙第5号証が被請求人の総合的な商品・サービス紹介パンフレットというよりは,むしろ被請求人オリジナルのフルカラー2次元コードである「LogoQ/ロゴQ」に関する商品及びサービスの内容や活用方法を紹介するパンフレットであることを間接的に裏付けているということができる。 そうすると,被請求人の業務に係る自他商品役務識別標識は,「LogoQ/ロゴQ」又は「LogoQ Code Marketing/ロゴQコードマーケティング」であるといわざるを得ず,本件商標が自他役務識別標識として使用されていないということを客観的に示すものと思料する。 (3)今回新たに提出されたものを含め,被請求人が提出した証拠からは,要証期間に本件審判の取消対象とされている各指定役務について本件商標と社会通念上同一の商標を日本国内で使用した事実を客観的に認めることはできない。 第3 被請求人の主張 被請求人は,本件審判の請求は成り立たない,審判費用は請求人の負担とする,との審決を求める,と答弁し,その理由を,答弁書,口頭審理陳述要領書及び上申書において,要旨以下のように述べ,証拠方法として乙第1号証ないし乙第13号証(枝番を含む。)を提出した。 1 答弁の理由 被請求人は,要証期間に,取消の対象とされている指定役務中,第35類の使用役務について,本件商標と同一又は社会通念上同一と認められる商標を付して日本国内においてその役務を提供してきた事実があり,これは商標法第2条第3項各号のいずれかに規定する行為であり,商標の使用に該当する。 (1)被請求人の事業概要 被請求人は,各種商品やサービスに関するマーケティングの実施・助言や宣伝広告業を行なう法人であり,主力事業の1つとして,「LogoQ」をはじめとするさまざまな独自開発のフルカラー2次元コードの提供を通じたマーケティングコンサルティング,商品の販売促進及び役務の提供促進をサポートする事業を行なっている(乙1)。 (2)本件商標の使用について 被請求人は,平成27年6月15日付けで,前商標権者より本件商標を譲り受け,特許庁へ移転登録申請手続を行ない,本件商標の商標権者となった。そして,同日より,上記の「LogoQ」をはじめとする被請求人オリジナルのフルカラー2次元コードを通じたサービス全体の総称として「図形+QRコード」の使用を開始し現在に至るものである。 (3)第35類の指定役務に関する本件商標の使用について ア 2015年9月11日から16日まで東京ビッグサイトにおいて開催されたIGAS展(乙2)において,複数のブースにて被請求人の「図形+QRコード」サービスが利用された実績がある。 IGAS展のコダック社のブースにおいて,同社の業務用カラー高性能プリンタのノベルティーに関する看板に,オリジナルフルカラー2次元コードを表示した事実がある。当該2次元コードの下部に「このQRコードは,LogoQ Code Marketingで作られています 協力:A・Tコミュニケーションズ株式会社」と記載がされ,本件商標が表示されており,その証拠として2015年9月11日に被請求人の従業員が撮影した展示ブースの写真(乙3)を提出する。 この看板に表示されたフルカラー2次元コード内には「アンケート」と表示されており,スマートフォン等のカメラにより当該2次元コードを読み取ると,コダック社のプリンタを使用した印刷に関するオンラインのアンケート画面となる。当該アンケートにより入手されたデータはコダック社等へ提供され,コダック社は自社製品に対する需用者の反応をデータとして入手することができ,今後の製品開発等に役立てることが可能となる。これら一連のサービスは,被請求人が他社のために「市場調査」を行なう行為といえる。 なお,当該展示イベントの開催日は2015年9月11日から16日であり,本件審判の予告登録日である9月4日より後に開催されたイベントではあるものの,出展内容・出展機材・出展資料等についてイベント実施の数週間あるいは数ヶ月前から準備を行なうのは当然のことであるから,当該展示イベントの1週間程度前にすぎない本件審判の予告登録日9月4日の前から,出展のための相当の準備がすでになされていたと考えるのが自然であり,IGAS展に関する資料は9月11日付けのものであるが,予告登録日の前から商標の使用又は使用の具体的準備を行なっていた証拠となるのは明らかである。 したがって,乙第3号証により本件商標が指定役務「市場調査」に使用されたことは明らかである。 イ 被請求人は,2015年5月27日より,利用者自らがオンライン上の(グラウド上の)プログラムを使用し,利用者オリジナルの画像・イラストを含んだフルカラー2次元コードを自由に制作することを可能とするサービスの提供を開始したが,当該サービスは,ソフトバンク コマース&サービスが運営するマーケティングツール販売サイト「Marketing Bank」を通じて提供されているところ,この「Marketing Bank」についての広告を,遅くとも2015年6月24日時点から現在まで自社Webサイトに表示している(乙4)。 具体的には,Webサイト内に本件商標と社会通念上同一の商標を表示するとともに,その下部に「2015年5月27日 ロゴ・イラスト入りQRコード『ロゴQ』を作成できるクラウド型サービスをソフトバンクコマース&サービスの『Marketing Bank』から提供開始!!」の文言があり,さらにその下には「ご利用について」,「はじめてご利用される方は,Marketing Bankの本サービスページにある【お見積り・お問い合わせから】からお申し込みください。」という表示がされている。 これらの表示は,被請求人自身のサービスについての広告であると同時に,被請求人のフルカラー2次元コード作成サービスに関心をもつ需要者は,本件Webサイト内の上記文言によりソフトバンク コマース&サービスの「Marketing Bank」の存在を知ることとなりアクセスすることになり得ることから,他社であるソフトバンク コマース&サービスの「Marketing Bank」サービスについての広告ということができる。 したがって,当該Webサイトの表示は,他社サービスに関する広告に該当し,その表示内で本件商標と社会通念上同一の商標が表示されていることから,本件商標を第35類指定役務「広告」について使用しているということができる。 ウ 被請求人のパンフレットにおいて,7頁に本件商標と同一の商標が表示されており,同頁下部には被請求人の「事業内容」として,「ダイレクトマーケティング」の記載がされているところ,この表示は,本件商標を第35類の指定役務「市場調査」について使用していることに該当する(乙5)。 したがって,乙第2号証ないし乙第5号証が示すとおり,被請求人が,要証期間において,指定役務「広告」及び「市場調査」について,本件商標と同一又は社会通念上同一の商標を日本国内で使用した事実があることは明白である。 なお,乙第4号証及び乙第5号証の日付は,被請求人が商標権の譲渡を受けてから直後の日付であるが,これは,被請求人が本件商標権の譲渡交渉段階から,譲渡後の本件商標使用の準備も同時に進行しており,移転登録申請手続後直ちに本件商標の使用を開始したためである。 したがって,被請求人が譲渡後直ちに本件商標を使用開始できていることについては全く不自然な点はない。 (4)請求人による本件審判請求行為について ア 請求人は,被請求人の本件商標の全区分について,1区分毎に(第42類については2つに分けて)不使用取消審判を請求し,あわせると実に9件にもなる審判請求をほぼ同時に行なっている。これらの取消審判事件の対象区分は,第16類,第35類,第36類,第38類,第39類,第41類,第42類及び第45類に渡るものであるが,請求人による「QRコード」関連の商標権取得実績を確認すると,それらのほとんどが第9類及び第42類のみに限られているものである。また,近年出願された商願2014-071942号「QR Code」及び商願2014-071943号「QR コード」もやはり第9類,第35類及び第42類の3区分のみに限られており,その他の区分については全く出願の事実を確認できない(乙6)。 すなわち,これらのことから請求人のQRコード関連業務と関係性のある指定商品及び役務は第9類,第35類及び第42類の3つの区分に属す商品及び役務に限られていることが明白であり,本件商標権の第16類,第36類,第38類,第39類,第41類及び第45類は,請求人のQRコード関連業務とは全く関係のない区分であり,これらの区分に属する商品及び役務については商標権を取得する意思すら持ちあわせていないと容易に推認できる。 したがって,請求人がこのような広範囲にわたって,しかも各区分に分け,9件もの不使用取消審判を請求し,本件商標の登録の取消を求める合理的な理由もメリットも全くないはずである。 さらに,本件商標の前商標権者が本件商標の登録を受けたのは2005年7月29日であるが,この登録日から被請求人が本件商標譲り受ける2015年6月15日までのおよそ10年間,請求人が本件商標に対し不使用取消審判請求や譲渡交渉を行なうなど,本件商標に対する積極的な行動をとった事実を1つも発見することができない。すなわち,請求人の本件商標に対する関心の程度は長期間に渡って極めて低かったのであり,長らく本件商標の存在を容認し放置し続けていたにもかかわらず,被請求人が本件商標を譲り受け商標権者になるやいなや,事前の譲渡交渉や話し合いによる解決の申出もなく,突然に全区分に及ぶ不使用取消審判を大量に請求するという行為に及んだのである。 このような状況を総合すれば,被請求人が商標権者となった途端に,請求人が全区分について,しかも区分毎に分けて,9件もの不使用取消審判を同時に請求する目的は,商標権取得や自己の商標使用を安全にするなどの純粋な商標法上の考えに基づくものでなく,専ら被請求人を取消審判請求の対応に追い込み,本来の業務を妨害することにあると考えざるを得ない。 そして,商標法第50条の不使用取消審判の制度趣旨を鑑みれば,前商標権者に相当の対価を支払い,適式な商標権移転登録申請手続を行い,正当に商標権を取得し,直ちに本件商標の使用を開始している被請求人に対し,何ら事前の交渉もなく,全く商標を使用する意思のない区分にまで及ぶ大量の不使用取消処分を求める請求人の行為は,不使用取消審判の制度趣旨及び商標法上の立法趣旨に著しく反する行為といわざるを得ない。 さらに,請求人は,被請求人を害するための1つの手段として何人にも認められている不使用取消審判制度を利用しているのであり,特許庁自体を加害手段の1つとして利用・悪用しているというべきである。 したがって,このような本来の制度趣旨から逸脱し,専ら被請求人を害する目的で行なわれている本件審判請求は,権利の濫用として認められるべきではないことを強く主張する。 イ 商標法第50条第2項の趣旨に鑑みれば,請求人は,被請求人の本件商標の全ての指定商品及び役務を取り消したいのであれば,本件商標の全ての指定商品及び指定役務を取消対象とする1件の不使用取消審判を請求すれば足り,また,法も当然にそれを予定している。 そして,本来的に1件の不使用取消審判で足りるものを敢えて区分毎,さらには指定商品及び指定役務毎に分けて,ほぼ同時に複数の不使用取消審判を請求することは,被請求人に対し法が全く予定していない甚大な負担を課すとともに,審判の迅速な処理を著しく阻害するものであって,商標法第50条第2項の趣旨に反し,ひいては商標制度そのものの根幹を揺るがしかねないものであるから,権利の濫用であって,不適法なものである。 ウ まとめ 上記で主張及び立証したとおり,被請求人は本件商標と同一又は社会通念上同一と認められる商標を,第35類の使用役務について,日本国内において要証期間に使用してきた事実が存在し,これらは商標法第2条第3項各号により商標の使用に該当する。 また,本件審判請求は,審判請求人が被請求人を害する目的で行なわれたことが明らかであるから,このような請求は権利の濫用として認められるべきではない。 2 口頭審理陳述要領書(平成28年6月8日付け) (1)請求人による審判請求行為の濫用について ア 請求人は,弁駁書において,「・・・本件審判請求を含めた本件商標に対する計9件に渡る請求人よる不使用取消審判請求が権利の乱用とはいえず,また,不適法なものでないことはいうまでもない。」と主張する。 しかしながら,上記請求人の主張は誤りである。 商標法第50条第2項は,被請求人に挙証責任を負担させる一方で「取消請求に係る指定商品又は指定役務のいずれかについての使用の事実を証明すれば足りることを明らかにし」,請求人には「自分で必要とする指定商品(役務)だけについて取消請求をするべき」ことを求めることによって,不使用商標を排除する一方で,請求人による審判請求権の濫用(民法第1条第3項,民事訴訟法第2条)を可及的に防止することを,その趣旨とするものである。 この点に関し,請求人は,「商品及び役務を広く指定する登録商標に対して不使用取消審判請求を行う場合において,一定の範囲の指定商品及び指定役務を一つのまとまりとして複数の審判に分けて請求することは,一般的に採用され得る手段である。」と主張するが,本件商標の全ての指定商品及び指定役務に係る商標登録を取り消したいのであれば,1件の審判で足り,敢えて9件もの審判に分けて請求する必要性及び合理性は何等存在せず,また,「一般的に採用され得る手段」ではなく,極めて異常な請求であることはいう他ない。 したがって,本来1件の審判で足りるものを敢えて9件もの審判に分けて,ほぼ同時にした本件審判を含む請求人による審判請求は,専ら被請求人を害することを目的としてなされたものであることは明らかであって,商標法第50条第2項の趣旨に著しく反するのみならず,商標法の目的(商標法第1条)を阻害し,我が国の商標制度そのものの根幹を揺るがしかねないものであることから,審判請求権の濫用であって,不適法なものである。 イ 請求人は,「請求人は,『QRコード』の開発当初から,『より多くの人にQRコードを使ってもらいたい』という考えに基づき,第三者による規格化されたQRコードの使用について積極的に権利行使は行わないとのポリシーで普及活動を行ってきた。かかるポリシーの下,本件商標については登録後も実際の使用が長年行われていなかったことから,2015年7月29日の存続期間満了による権利消滅を待っていた。しかし,当該存続期間満了日直前の2015年6月に本件商標は被請求人に譲渡されていたため,本件不使用取消審判を請求に至った次第である。以上の事実に鑑みれば,本件審判請求が本来の制度趣旨から逸脱するものでなく,また,専ら被請求人を害する目的で行われているものでもないことは明らかであると思料する。」と主張する。 しかしながら,上記請求人の主張は,誤りである。 請求人は,「2015年7月29日の存続期間満了による権利消滅を待つ」ことなく,直ちに本件商標に対し不使用取消審判請求や譲渡交渉を行なうなど,本件商標に対する積極的な行動をとるべきである。 ところが,実際には,請求人は,本件商標に対する積極的な行動をとることなく,長らく本件商標の存在を容認し放置し続けていた。このような状況に照らせば,請求人の本件商標に対する関心は,長期間に渡って極めて低かったと考えざるを得ない。にもかかわらず,被請求人が本件商標を譲り受け商標権者になるやいなや,事前の譲渡交渉や話し合いによる解決の申出もなく,突然,本件商標の全ての指定商品及び指定役務について,区分毎に(第42類については,さらに2つに分けて),ほぼ同時に9件の不使用取消審判を請求するという行為に及んだのである。 このような状況を総合すれば,被請求人が商標権者となった途端に,請求人が本件商標の全ての指定商品及び指定役務について,区分毎に,ほぼ同時に9件の不使用取消審判を請求する目的は,請求人の身勝手な論理に基づく制裁ないし見せしめとして,専ら被請求人を取消審判請求の対応に追い込み,本来の業務を妨害することにあると考えざるを得ない。 (2)審理事項通知書及び請求人提出の弁駁書に対する反論について ア 被請求人の事業「ダイレクトマーケティング」が本件商標の指定役務「市場調査」に該当する旨の主張 ダイレクトマーケティングとは,ある商品・サービスの需要見込者等を直接ターゲットとし,その見込者の商品・サービスに対する印象・反応等を直接得ることにより,商品の販売促進・役務の提供促進に役立てる調査手法と理解する。被請求人は,例えば,2009年10月から遅くとも要証期間内である2015年5月まで,「2次元バーコードサービス」なる「ダイレクトマーケティングサービス」をNTTタウンページ社及び株式会社シーエス日本に以下のように提供してきた。 (ア)NTTタウンページ社が提供するWebサービスである「iタウンページ」の広告掲載契約者は,契約の特典としてNTTタウンページ社が広告掲載契約者に提供する営業支援ツール「Bizメイト」を利用できる。この「Bizメイト」に含まれるツールの一つとして,被請求人が広告掲載契約者へ提供しているサービスが「2次元バーコードサービス」である。 当該サービスでは,広告掲載契約者が,iタウンページ内の契約者自身のWebサイトへ誘導するために,任意のデザインからなる2次元バーコードを作成でき,ホームページや名刺等に表示し,契約者自身のPRや商品の促進等に活用できる。 被請求人は,「2次元バーコードサービス」を利用している契約者に関する統計情報を毎月月末にまとめ,翌月初日にNTTタウンページ社に提供している。乙第8号証の1は,平成27年6月1日付でNTTタウンページ社に提供した統計情報の例である。日別生成数,デザイン別の生成数,URL種類別の生成数等をレポート形式にまとめて統計情報としてNTTタウンページ社に提供している。 そして,「2次元バーコードサービス」の利用に関する費用は,NTTタウンページ社へ毎月一定の金額を請求しているところ,要証期間における実際の請求先は,被請求人とNTTタウンページ社との間を媒介する株式会社デンソーウェーブに対し行われていた(乙8の2)。 (イ)被請求人は,日本テレビがテレビアニメ番組の宣伝広告として行っている「見て!貯めて!ゲット!名探偵コナン ポイントプレゼントキャンペーン」について,「図形+QRコード」の一種であるロゴQを用いて,キャンペーン参加者に関する統計情報を日本テレビのグループ会社に提供している。 乙第9号証の1は,当該キャンペーンの初回登録時のWebサイト画面写しであり,本件画面には「本キャンペーンの個人情報の管理については,A・Tコミュニケーションズ株式会社に委託してあります。」と表示されている。 乙第9号証の2は,2015年5月18日時点の統計時報であり,年齢,その他のアクセス情報がデータとして記録されている。このような利用者に関するさまざまな情報を2次元コードを通じて被請求人が取得し,顧客(本件では日本テレビのグループ会社である株式会社シーエス日本(当時の名称))に提供しており,要証期間内である2015年(平成27年)5月31日付けの請求書写しを提出する(乙9の3)。 ダイレクトマーケティングでは,いかに多くの者からのアクセスを獲得するかが重要であるところ,被請求人は顧客の要望やコンテンツに応じて様々なオリジナル2次元コードを作成する技術を有するため,印象的な2次元コードを表示することでより多くのアクセス獲得を可能としており,より価値のある統計時報を顧客に提供できている。 以上の説明から明らかなとおり,乙第5号証のパンフレットに被請求人の事業内容とし記載された「ダイレクトマーケティング」は,まさに指定役務「市場調査」に該当するものである。 したがって,被請求人が業として指定役務「市場調査」を行っていることは明らかである。 よって,「図形+QRコード」の表示及びそれと同ページに「ダイレクトマーケティング」と記載された当該パンフレットを頒布する行為は,商標法第2条第3項第8号に規定する商標の使用に該当する。 イ 乙第2号証及び乙第3号証について (ア)乙第3号証の日付について 乙第3号証に記載されているとおり,当該写真が2015年9月11日にIGAS展のコダック社のブースにおいて撮影されたのは紛れもない事実である。乙第2号証に示されたIGAS展の開催期間(2015年9月11日から9月16日)とも整合する。また,当該写真の撮影者は被請求人の従業員であることも明確に主張している。このように,写真の撮影場所,撮影日及び撮影者を明確にした上で提出しているのであるから,乙第3号証の撮影日について疑念をもたれる理由は一切ない。 (イ)乙第3号証における本件商標の使用について 請求人は,本件商標が看板に表示されていることを認めている。 本件商標が表示された看板において,その中央に大きく表示された被請求人オリジナルの2次元コードは,専らアンケート調査の回答のために利用されるものである。乙第3号証に示すアンケート調査は,アンケートという形式で需要者の反応を様々なデータとして入手し,取引先のコダック社に統計データとして提供するために行う調査であるから,他人のために行う指定役務「市場調査」そのものであり,被請求人オリジナルの2次元コードはその「市場調査」という役務を提供するために専ら利用されるものである。 役務「市場調査」においてその役務の提供のためにもっぱら利用される被請求人オリジナルの2次元コードに近接して本件商標を付す行為は,指定役務「市場調査」についての本件商標の使用(商標法第2条第3項第3号)に該当する。 さらに被請求人が当該指定役務「市場調査」を提供する行為は,商標法第2条第3項第4号に規定する商標の使用に該当する。 したがって,乙第3号証は,指定役務「市場調査」の提供に当たりその提供を受ける者の利用に供する物に標章を付する行為として商標法第2条第3項第3号の使用に該当し,さらに当該役務を提供する行為は商標法第2条第3項第4号の使用に該当する。 ウ 乙第4号証について (ア)乙第4号証が他社サービスの広告に該当するか否かについて 乙第4号証には,大きく目立つように「お待たせしました! ほしいものはココにある! SoftBank C&Sからデビュー!オリジナルデザイン「図形+QRコード(R)作成サービス」と表示されており,「Marketing Bank」サービスの提供主体であるソフトバンクコマース&サービスを表す「SoftBank C&S」の表示が大きく示されている。その上で,INFOの欄において「ロゴ・イラスト入りQRコード『ロゴQ』を作成できるクラウド型サービスをソフトバンクコマース&サービスの『Marketing Bank』より提供開始!」と一行目に記載している。ここまでで表示されている主な名称は「SoftBank C&S」,本件商標「図形+QRコード」及び『Marketing Bnak』であり,専ら目立つように表示されているのは「SoftBank C&S」及び本件商標「図形+QRコード」である。 被請求人が提供するオリジナル2次元コード作成に興味をもち,乙第4号証のWebサイトを訪れた需要者は,このページに目立って表示されている本件商標を認識しつつ,「SoftBank C&S」が提供する「Marketing Bank」というサービスの存在を確実に認識するのである。 被請求人オリジナルの2次元コードプログラムを利用するにあたっては,乙第4号証のWebサイトから,少なくとも一度は「Marketing Bank」へ訪れる必要があるから,必ず「Marketing Bank」サービスの存在を認識するのである。そして,「Marketing Bank」を訪れた需要者は,オリジナルフルカラー2次元コード以外のさまざまなマーケティングWebツールが「Marketing Bank」内に存在することを知ることとなり,「Marketing Bank」が提供するサービス内容についても把握することになるのである。 よって,乙第4号証に大きく目立つように表示された本件商標は,必然的に「Marketing Bank」サービスの宣伝広告の役割を十分に果たしていることとなる。 乙第4号証に大きく目立つように表示されているのは,「SoftBank C&S」及び本件商標であり,被請求人の会社名や「ロゴQコードマーケティング」なる表示は全く目立って表示されていない。 したがって,被請求人の自社サービスに関する広告とはいえないことは明らかである。 被請求人が提供するオリジナルの2次元コード作成サービスを利用するためには,乙第4号証下部にあるボタンをクリックし,このボタンにリンクされた「Marketing Bank」を訪れ初期登録を行う必要がある。 したがって,乙第4号証は,単に「Marketing Bank」の文字が表示されているのではなく,「Marketing Bank」サービス利用への最初の入り口を需要者に提供するという重要な機能を持ち合わせているWebサイトであるから,「Marketing Bank」の文字が単に説明的に表示されているとはいえない。 少なくとも本件商標は外観において明らかに図形と認識できる要素(図形要素)を含む商標であるところ,当該図形要素は人の顔を想起させるにとどまり,具体的な意味合いを認識できない部分である。 したがって,このような具体的意味合いを全く認識することができない部分を含む本件商標をどのような箇所に表示しても,具体的な意味合いが認識できる文章や語句として成立することはあり得ない。 請求人が本件商標の図形要素を除外して意味合いを把握しようとしたならば,本件商標の重要な識別機能発揮部分を無視したこととなるので重大な誤りである。 したがって,図形要素を含む本件商標は,乙第4号証にはロゴ商標として表示しているのであり,記述的に使用しているのではない。 したがって,乙第4号証において本件商標を表示する行為は,商標法第2条第3項第7号に規定する「電磁的方法により行う映像面を介した役務『広告』の提供に当たりその映像面に標章を表示して役務『広告』を提供する行為」に該当し,指定役務「広告」についての使用ということができる(商標法第2条第3項第7号)。 (イ)乙第4号証の日付について 乙第4号証には保存又は印刷の日付がなされていないが,これは証拠提出の準備段階で,本来提出すべき書類(Webサイトを直接印刷したもの)ではなく,当該書類のコピーを印刷してしまったため,当該書類のコピーデータの格納場所の情報が記載されてしまったことにより生じた問題である。 乙第4号証が2015年6月24日時点でWebサイト上に公開されていたことを示すものとして,本来提出すべき書類(Webサイトを直接印刷したもの)を証拠として提出する(乙10)。 これにより本件商標のもとで,他社サービス「Marketing Bank」の広告が行われていた時期が遅くとも2015年6月24日であることが明らかになった。 エ 乙第5号証について (ア)乙第5号証における本件商標の表示について 請求人は,弁駁書において,パンフレットに本件商標が表示されていることを認めた上で,その表示はやや唐突に表示されており,また,事業概要の一つとして記載された「ダイレクトマーケティング」と本件商標との直接的な関連性を把握・理解することは困難であるから,本件商標が当該サービスの自他役務識別標識として使用されているとはいえない,と主張するが妥当ではない。 まず,「唐突に」の意味合いが不明であるが,少なくとも本件商標は図形要素を含んだロゴ商標であるので,任意の目立つ場所に自由に表示させても,十分に自他役務識別機能を果たし得ると考えられる。「任意の目立つ場所に自由に表示」することを「唐突に」と表現するのであれば,他の一般的なロゴ商標も「唐突に」出てくることに変わりないはずである。ロゴ商標はもっぱらその外観により需要者取引社にインパクトを与えることが重要な役割であるから,むしろ街中の看板や商品・サービスのパンフレット及びWebサイトには,ロゴ商標は常に唐突に表示されているものばかりである。 したがって,「唐突に」表示されていること自体には何の問題もないと考え,自他役務識別機能にも全く影響しないと考える。 また,請求人は,パンフレットには,被請求人の事業内容の一部として「ダイレクトマーケティング」の記載と本件商標とが表示されているものの,たまたま同じ頁に記載されているにすぎないため,本件商標が「ダイレクトマーケティング」サービスの自他役務識別標識として使用されているとはいえないと主張するが,本件商標はロゴ商標であるから,任意の目立つ場所に自由に表示させることで,十分に自他役務識別機能を果たし得るものである。本件商標を大きく目立つように表示し,さらにその同一頁に被請求人が「ダイレクトマーケティング」を業務として行っていることを理解させる表示がされていることをもって,本件商標が「ダイレクトマーケティング」サービスの識別標識として機能しているということは十分いえると考える。 (イ)乙第5号証の発行日について 乙第5号証のパンフレットは,被請求人の商品・サービスを総合的に紹介するものであり,その内容が広範囲に及んでいるため,頻繁に更新する必要が生じる。そのため,一度に印刷する部数を10部から30部程度とし,古い内容のものを廃棄することを最小限にとどめ,印刷コストと廃棄物を低減するように工夫している。記載内容のデータ更新は被請求人自らがパソコンで行い,印刷についてはグループ企業である朝日プロセス社に依頼している。被請求人が朝日プロセス社ヘパンフレットの印刷依頼を行った依頼書の写しを提出する(乙11の1)。 1ページ目 左上は2015年5月14日に15部,右上は2015年6月12日に10部,左下は2015年6月15日に10部,右下は2015年6月18日に10部,2ページ目 左上は2015年6月23日に10部,右上は2015年7月28日に15部,左下は2015年8月24日に10部,の印刷を依頼したものである。 上記依頼を受け,朝日プロセス社から被請求人へ以下の納品書が発行された(乙11の2)。 2015年5月20日付で5月14日依頼の15部,2015年6月20日付で6月12日,15日,18日依頼のそれぞれ10部,2015年7月17日付で6月23日依頼の10部,2015年9月20日付で7月28日依頼の30部と8月24日付10部。 なお,7月28日のみ依頼が15部で納品が30部であり一致しないが,これは依頼書発行後に被請求人が口頭指示により依頼部数が増加した事実があったためである。 上記は要証期間内のなるべく最近のものを例としたが,毎月10部から30部程度を印刷している事実があり,1年間で考えれば120部から360部程度を印刷・頒布していることが明らかである。 請求人は,本件商標の移転登録受付日と同日の6月15日発行のパンフレットに本件商標が表示されていることから,乙第5号証の発行日に疑義があると主張するが,譲渡交渉の段階からパンフレットに本件商標を表示させる変更を予め行っておき,移転登録申請手続日と同日の6月15日にさっそく変更を反映したパンフレットを10部印刷したのである。そして乙第5号証としてその写しを提出したにすぎない。また,6月18日,23日にも追加の印刷依頼を行っていることから,6月15日付印刷のパンフレットは数日で頒布を終えたということも容易に理解できるはずである。当然に6月15日以降から現在まで,パンフレットには本件商標が引き続き表示されている。 パンフレットは,取引先との個別の商談や展示イベントへの出展の際に,被請求人の「図形+QRコード」サービスを紹介するために頒布してきた事実があるので説明する。要証期間内の展示イベントとしては,例えば,2015年7月22日に飯田橋にてソフトバンクコマース&サービスが主催した「ターゲットメディアフォーラム2015」においてパンフレットを頒布した事実がある。出展した事実を証明するものとして,ソフトバンクコマース&サービス社宛ての参加申込書及び発注書写しを提出する(乙11の3)。 (4)まとめ 以上より,請求人による本件審判請求行為は,専ら被請求人を害することを目的としてなされたものであることは明らかであるから,審判請求権の濫用であって,不適法なものであり認められるべきではない。 また,被請求人提出の証拠方法により,本件審判の請求の登録前3年以内に少なくとも第35類「広告」及び「市場調査」について本件商標を日本国内で使用した事実は明らかである。 3 上申書(平成28年8月10日付) (1)請求人による審判請求行為の濫用について ア 請求人は,口頭審理陳述要領書において,請求人による審判請求行為が不使用取消審判制度の趣旨や商標法の目的を阻害するものでなく,審判請求権の濫用に該当しないと主張するが,妥当ではない。 請求人は,「QRコード」の開発経緯やユーザの保護・安心の確保を踏まえれば,「QRコード」に係る商標は全て請求人が所有又は管理できる状態であるべきであり,よって,「QRコード」の文字を含む本件商標が複数の区分に渡って請求人以外の者により維持されていることは,望ましい状況でないと主張している。 しかしながら,請求人は「QRコード」関連の商標を自己の業務に直接的に関係する区分である第9類,第35類及び第42類について登録するのみで,自己の業務に直接的に関係しないその他の区分については出願すらしていないというのが実態であるから,請求人は,自己の商標使用の安全性を確保することのみを目的として商標登録を行っているのであって,ユーザの保護・安心を確保するという目的など最初から有していないことが明らかである。 イ 被請求人が,本件商標の権利について前商標権者から譲渡を受けた目的は,本件商標が2015年7月29日に権利の存続期間満了日を迎えるところ,そのまま消滅させてしまうとすれば,悪意のある第三者が幅広く本件商標に類似する商標を取得できてしまう可能性が生じ,それでは被請求人を含む多くの「QRコード」ユーザに甚大な支障が生じてしまう恐れがあり,それを防止するというのが目的であり,本件商標を被請求人が独占して使用するという趣旨でなく,悪意のある第三者による登録を防止するのが目的である。 これは,本来,ユーザの保護・安心を標榜する請求人自身が行うべき措置であったはずである。ユーザ保護を重視すれば,本件商標が出願される前から請求人自身により広い区分に渡って「QRコード」に係る商標の出願を先に完了してあったはずであり,本件商標が他人に登録されることもなかったのである。 ウ 被請求人を設立し,現在は被請求人取締役会長である豊泉氏が,7月20日の口頭審理において発言した内容のまとめを提出する(乙12)。 (2)本件商標の使用について ア 「パンフレット」の頒布状況の詳細について 「パンフレット」には,本件商標を大きくロゴ商標として表示しつつ,被請求人の業務内容も一緒に表示させることで,被請求人の業務と他社の業務とを識別するロゴ商標として周知に努めてきた事実がある。 本件商標を「パンフレット」に表示した日付は,前商標権者から本件商標の譲渡を受けた直後の2015年6月15日からであるが,パンフレット自体はそれ以前から継続して頒布しており現在も頒布継続中である。その一部の期間を例にとり,平成27年(2015年)4月1日から9月30日までの6ヶ月間の頒布状況を一覧表としてまとめたものを証拠として提出する(乙13)。 また,表の項目は,一番左側から,「日付,時間,場所,社員名,配布数,頒布先,打合せ主旨,先方担当者」である。 イ 被請求人は先方との打ち合わせやイベント出展の都度「パンフレット」を頒布し,上記6ヶ月間で,客観的に立証できるものに限っても少なくとも計59回の打ち合わせ・イベント出展において109部の「パンフレット」を頒布した事実がある。本件商標の表示を開始した2015年6月15日から予告登録日までの3ヶ月間程度の期間に限定しても,様々な打ち合わせやイベント展示において数十部を頒布しており,本件パンフレットが小冊子ともいえる頁数と内容を誇るものであることを踏まえれば,これは決して少なくない頒布数である。 このように,「パンフレット」は,請求人が有するサービスや技術を相手方に効果的に伝えるための主要な手段として用いられてきたものであり,打ち合わせやイベントにおける継続した「パンフレット」の頒布により,本件商標が被請求人の業務と他社の業務とを識別する標識として需要者,取引者に認識されるのは極めて自然なことである。 (3)請求人による口頭審理陳述書に対する反論 ア 請求人は,乙第11号証の1ないし3からでは,「パンフレット」が展示及び頒布等された事実を一切確認することができないと主張する。 この点については,上記(2)における主張により,多くの「パンフレット」が頒布された事実が明らかになったものと考える。 イ 乙第3号証の看板には,はっきりと本件商標の図案化された部分が表示されており,この図案化された部分は具体的な意味を把握・認識できない部分である。仮に図案化された部分から「QRコード」の文字を想起し得るとしても,あくまで本件商標は図案化された状態のものであり,「QRコード」という文字のみの構成とは全く異なるものである。実際,図案化されている本件商標が2次元コードの名称を示すものとして一般に使用されている事実もない。 本件商標の図形部分は「Q」の文字に黒点を2つ挿入するというシンプルな手法により創作されたものであるが,人の顔を想起させるということは,そこに名前や愛称が生まれたり,何らかの人格や性格が結びつけられたり,あるいは様々なストーリーや物語の設定が付け加えられたりなど,1人の人物としての描写が成立するほどの印象深い図形である。それが「Q」に黒点を2つ挿入するだけという極めてシンプルな手法であったとしても,その結果生ずる図形が「人の顔を想起させる」時点で,すでにその図形要素は「Qに黒点2つ挿入された図形」でなく,「オバキュー」や「キューちゃん」と呼ばれるような,見る人それぞれがさまざまな特別な印象や愛着を抱く「人格(キャラクター)」である。 本件商標の図形部分は,もはや人格を備えた1人のキャラクターといえるほどの,特別な印象深い図形要素であり,インパクトのある本件商標の最大の特徴である。 したがって,本件商標が「QRコード」という言葉を把握・認識するにすぎず,2次元コードの名称を示すにすぎないとの主張は,このようなシンプルだが極めて印象的で特徴的な本件商標の「人格」部分を意図的に無視した,恣意的な主張である。 さらに,本件商標は印象的で特徴的な図形要素を有するロゴ商標であるから,名称がどのようなものであろうとも,本件商標がその名称とは無関係の独立したロゴ商標として独自の自他役務識別標識として認識されるのは明らかである。 一つのサービスや商品について,文字商標とロゴ商標が同時に表示されたり,商号商標と商品商標が同時に表示されるのは通常のことであり,どちらのケースでも2つ同時に商標として認識されるというのは自然なことである。一方,請求人の主張は「LogoQCode\Marketing」なる名称が表示されている以上,それ以外の表示は商標として認識され得ないと主張しているに等しく,一般的な商標の把握・認識方法とかけ離れた,極めて不自然な考え方といわざるを得ない。 したがって,乙第3号証は,指定役務「市場調査」の提供に当たりその提供を受ける者の利用に供する者に標章を付する行為として商標法第2条第3項第3号の使用に該当し,さらに当該役務を提供する行為は商標法第2条第3項第4号の使用に該当する。 (4)請求人は,被請求人が提出した乙第10号証はURLの記載が改ざんされたものであり信憑性について疑問である旨を主張している。 しかしながら,乙第4号証は本来提出すべきであったファイルとは別のファイルを印刷し提出してしまったものであり,請求人からの指摘を受け,乙第10号証として本来提出すべきであったファイルを印刷して提出したにすぎない。 第4 当審の判断 1 被請求人の提出した証拠について (1)乙第1号証は,被請求人の会社情報に関するウェブサイトである。 1頁には,「商号」の項目に,「A・Tコミニュケーションズ株式会社」,「事業内容」の項目に,「文字QRコードの企画・制作・販売,ロゴQメーカー(ロゴQ自動生成エンジン)の提供」の記載があり,2頁には,「関連会社」の項目に,「朝日プロセス株式会社」の記載がある。 (2)乙第2号証は,IGAS展のホームページであり,2015年9月11日ないし9月16日の期間の来場者数が記載されている。 また,乙第3号証は,IGAS展のコダック社ブースにおける「広告」表示の写真とされるものであり,「アンケートにご回答ください」の文字の下に,2次元コードが表示され,その下部には「▲Q▼Rコード(「Q」の欧文字の中に2つの点が書され,全体で人の顔のように見える図形と「Rコード」の文字を結合したもの。以下同じ)/QRコードは/LogoQCode Marketing/で作られています。」の記載があり,さらに,最下部には,「協力:A・Tコミュニケーションズ株式会社」の表示がある。 (3)乙第4号証は,被請求人のウェブサイトとされるものであるところ,その1葉目には,「INFO」の項に「2015年05月27日 ロゴ・イラスト入りQRコード『ロゴQ』を作成できるクラウド型サービスをソフトバンク コマース&サービスの『Marketing Bank』から,提供開始!!/お好きなロゴやイラストでQRコードが作成できる『ロゴQコードマーケティング』サービスの提供を開始いたしました。」の記載があり,2葉目には,「ロゴQはユニバーサルデザインの▲Q▼Rコード/QRコードです」の項目の下,「誰にでも分かるコードを作れます」の記載及び事例として表示された2次元コードとともに,本件商標と同一の商標が表示されている。 しかしながら,乙第4号証には,その作成者,作成日の表示がない。 (4)乙第5号証は,被請求人が,2015年(平成27年)6月15日に作成した商品・サービス紹介の「次世代の電子情報化のインフラコード」に係る「パンフレット」である。 そして,3頁には,「文字」の文字が大きく表示され,その右には,別掲2のとおり,上段に「Q」の欧文字の中に2つの点が書され,全体で人の顔のように見える図形と「Rコード」の文字を結合して表された部分と下段には,「QRコード」の文字が書された二段の構成からなる商標(以下「使用商標」という。)が表示されている。また,その使用商標の下に,「文字とQRコードを掛け合わせ,更に色を加味した,誰もが見てもサイトの内容がわかりやすいコードが『文字QRコード』です。」の記載がある。 さらに,7頁の「膨大かつ多様なビックデータ時代の革命ツール」の項に,「A・Tコミュニケーションズが提案するセキュリティを兼ね備えたフルカラーQRコード『ロゴQコード』は,ビックデータの収集を促進すると共にオムニチャンネルの新時代の革命ツールであると確信しております。」の下に,使用商標が表示されている。 そして,その下部には,「事業内容」として,「●フルカラーQRコード及びロゴQシリーズの企画・制作・販売」,「●ロゴQメーカー(QRコード及びロゴQコード自動生成エンジン)の提供」の記載及び「●ダイレクトマーケティング」の記載がある。 加えて,8頁の「A・Tコミュニケーションズの創立」の項に,「2015年6月『使用商標(別掲2)』左記QRコードの商標を取得しました。」の記載と,「会社概要」として「●社名(呼称):A・Tコミュニケーションズ株式会社」の記載があり,「お問い合せ」の項に,「A・T COMMUNICATIONS」の文字と「A・Tコミュニケーションズ株式会社」の記載がある。 (5)乙第8号証の1は,被請求人がNTTタウンページ社に提供した統計情報の例(以下「NTT統計情報」という。)とされるものであるところ,NTT統計情報には,「ロゴQASPシステム 2009年10月?2015年5月 月別比較データ」の見出しの下,デザイン別のダウンロード数,サイズ別ダウンロード数などが記載されている。 また,乙第8号証の2は,被請求人が作成したNTT統計情報についての「御見積書」であるところ,品名欄には,「NTTタウンページ樣 ロゴQASPシステム利用料(2015年5月)の件」,「ロゴQ利用料(16パターン うち6パターンは無償)」及び「ロゴQ自動生成システム利用料 ロゴQ自動生成費用(固定)」の記載がある。 (6)乙第9号証の1は,日本テレビがテレビアニメ番組の宣伝広告として行っているウェブページにおけるポイントプレゼントキャンペーン(以下「プレゼントキャンペーン」という。)の初回登録画面であり,その2頁の下部には,「本キャンペーンの個人情報の管理については,A・Tコミュニケーションズ株式会社に委託しております。」の記載がある。 また,乙第9号証の2は,該プレゼントキャンペーンの2015年5月18日時点の集計情報であり,乙9号証の3は,被請求人が作成した該プレゼントキャンペーンの「請求書」であるところ,品名欄には,「『名探偵コナン』視聴ポイントプレゼントキャンペーンサーバ費/運営作業(5月)の件」及び「サーバ費用/システムサポート/サイト更新運営/ロゴQ制作・集計/発送業務 2015年5月分」の記載がある。 (7)乙第10号証は,印刷日を2015年6月24日とする,被請求人のウェブサイトであるところ,その1頁には,「INFO」の項に「2015年05月27日 ロゴ・イラスト入りQRコード『ロゴQ』を作成できるクラウド型サービスをソフトバンク コマース&サービス」の『Marketing Bank』から,提供開始!!/お好きなロゴやイラストでQRコードが作成できる『ロゴQコードマーケティング』サービスの提供を開始いたしました。」の記載があり,2頁には,「誰にでも分かるコードを作れます」の記載及び事例として表示された2次元コードとともに,本件商標と同一の商標が表示されており,各頁の下部には「https://logoqcodeemarketing.jp/」の表示がある。 (8)乙第11号証の1は,被請求人が朝日プロセス社に対して発行したパンフレットの「制作依頼書」である。 そして,合計7枚のそれぞれの「制作依頼書」には,2015年(平成27年)5月14日(木),同年6月12日(金),同月15日(月),同月18日(木),同月23日(火),同年7月28日(火),同年8月24日(月)の日付がある。また,すべてのものは,左上に,「朝日プロセス株式会社様」,その右に,「A・Tコミュニケーションズ株式会社」の記載があり,「品名」の項目に「AT パンフ」,「内容」の項目に「■AT パンフ」,「1 サイズ:A3 8ページ」,「2 色数:4C/4C(○中面3P クリアトナー使用)」(なお,5月14日のみ「4C/4C(○中面3P クリア」の記載。)の記載があり,また,「3 数量」には,「10部」又は「15部」の記載がある。 (9)乙第11号証の2は,朝日プロセス社が被請求人に対して発行したパンフレットの「納品書」である。 そして,合計4日間のそれぞれの「納品書」には,納品日として2015年(平成27年)5月20日,同年6月20日,同年7月17日,同年9月20日の日付がある。また,すべてのものは,左上に,「〒110-0014/台東区北上野1-9-10/A・Tコミュニケーションズ(株)御中」,その右に「朝日プロセス株式会社」,住所及び連絡先の記載があり,その下に,「内容:〈デジタル印刷〉」とあり,それぞれの日付の「納品書」に日付順に「5/14ATパンフ8p15部 中綴じ(8頁) 30部」,「6/12パンフ8p 中綴じ(8頁) 10部」,「6/15パンフ8p 中綴じ(8頁) 10部」,「6/23パンフ8p4/4+CL 中綴じ(8頁) 10部」,「7/28ATパンフ8p 中綴じ(8頁) 30部」及び「8/24ATパンフ10部 中綴じ(8頁) 10部」の記載がある。 (10)乙第13号証は,被請求人が作成した「パンフレット」の頒布状況を示す一覧表である。 これには,上部に「被請求人『パンフレット』配布状況(担当者別,2015年4月1日?2015年9月30日)※IGAS展示会(2015年9月開催)除く」の記載があり,その下に,表の項目として「日付」,「時間」,「場所」「社員名」,「配布数」,「頒布先」,「打合せ主旨」及び「先方担当者」の記載があり,担当者別に,いつ,どこで,どこの企業の誰に,何のためにパンフレットを何部配布したかが記載されている。 2 上記1によれば,以下のとおり判断できる。 (1)本件商標の使用者について 乙第5号証の「総合的な商品・サービス紹介のパンフレット」によれば,被請求人は,文字又は図形を含む2次元コードの企画・制作・販売,ロゴなどの絵柄を加味したロゴQコードと称する2次元コードの自動生成エンジンの提供を業とするものであり,乙第5号証の「パンフレット」の内容からすれば,これは,被請求人が2015年6月15日作成した,商品・サービス紹介のパンフレットであると理解できるものであるから,別掲2の使用商標についての使用者は,被請求人(商標権者)であると認めることができる。 (2)使用商標について 本件商標は,別掲1のとおり,上段に,「Q」の欧文字の中に2つの点が書され,全体で人の顔のように見える図形と「Rコード」の文字を結合して表し,下段に,「QRコード」の文字を書した二段の構成からなるものである。 そして,上記(1)の「パンフレット」の3頁,7頁及び8頁に表示された使用商標(別掲2)の構成及び態様は,本件商標とほぼ同じであるから,本件商標と使用商標は,社会通念上同一の商標と認められる。 (3)本件商標の使用時期について 本件商標が使用された時期を検討するに,被請求人のパンフレット(乙5)は,2015年6月15日に作成されたものであるところ,被請求人が,本件商標権を前商標権者から移転登録した2015年(平成27年)6月12日以降に,朝日プロセス社に対してパンフレットの作成依頼を同日から同年8月24日の期間に数回行い(乙11の1)同期間にその納品が行われ(乙11の2),さらに,上記期間を含む配布日,配布場所,配布先及び配布先等のパンフレットの配布状況を説明する一覧表(乙13)があることからすれば,被請求人(商標権者)は,パンフレットを要証期間内に作成し,頒布したものと推認することができる。 (4)本件商標の使用役務について 被請求人の商品・サービスのパンフレット(乙5)の3頁,7頁及び8頁には,本件商標と社会通念上同一の商標が表示されている。 そして,パンフレットには,被請求人に係る2次元コードに関する内容等が紹介されているものであり,また,7頁には,被請求人の「事業概要」として「ダイレクトマーケティング」の記載がある。 しかしながら,このパンフレットによっては,被請求人が,上記「ダイレクトマーケティング」を含め,本件審判請求に係る指定役務である第35類の役務について,その役務を提供している内容の記載を見いだすことができないものであって,かつ,本件商標をその指定役務について使用していると認められる事実を見いだすこともできない。 その他,提出されている証拠においては,本件商標を本件審判の請求に係る役務について使用している事実は見いだせない。 以上によれば,本件審判の請求に係る指定役務について,要証期間における被請求人による本件商標の使用は,証明されていない。 (5)小括 以上のとおり,被請求人が提出した全証拠によれば,本件商標権者,専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが,要証期間内にその請求に係る指定役務について,本件商標を使用していた事実は認められない。 3 被請求人の主張について (1)本件商標の使用について ア 被請求人は,IGAS展(乙2)において,本件商標を「市場調査」に使用した旨を主張しているが,該IGAS展が開催された2015年9月11日から16日の期間,及びコダック社のブース内の展示写真(乙3)の撮影日である2015年9月11日は,要証期間外であり,また,該展示写真の看板ににおいて,2次元コードが表示され,その上部に「アンケートにご回答ください」と表示され,また,下部に「この▲Q▼Rコード QRコードは・・・」と表示されているとしても,該表示は,看板に表示された2次元コードが,被請求人の業務に係る2次元コード作成用のコンピュータプログラムを利用して作成されたものであることを理解させるにすぎないものである。 イ 被請求人は,本件商標をウェブサイト(乙4及び乙10)においてソフトバンク&コマースの広告に使用した旨を主張しているが,これらはいずれも,被請求人の提供する2次元コード作成サービスの内容を説明するものであり,これらをもって,被請求人が業として広告を行ったとはいえないものである。 ウ 被請求人は,パンフレットの7頁において,本件商標と同一の商標が表示され,その下部の「事業内容」として,市場調査に該当する「ダイレクトマーケティング」が記載されていることから,本件商標を市場調査に使用している旨主張し,その証拠として乙第8号証の1及び2並びに乙第9号証の1ないし3を提出している。 しかしながら,該頁には,「事業概要」が記載されている以外は,被請求人が目標とするビジネス構想と被請求人の主な取引先が掲載されているのみで,本件商標を使用していると主張する第35類の上記役務について,被請求人自身が,本件商標を使用している事実を見いだすことができない。 また,パンフレット全体からも被請求人自身が,これらの役務に関する業務を行っている事情も認められず,また,その業務によって提供される役務について,本件商標を使用している事実を証明する記載はどこにも見当たらない。 さらに,上記乙第8号証の1及び2並びに乙第9号証の1ないし3おいて,本件商標(社会通念上同一のものを含む)を見いだすこともできない。 エ したがって,被請求人の上記主張は,いずれも採用することができない。 (2)請求人による本件審判請求行為について 被請求人は,「請求人は本件商標の全区分について,1区分毎に9件もの(第42類については2つに分けて)不使用取消審判を請求し,しかも,被請求人に対し何ら事前の交渉もなく,全く商標を使用する意思のない区分にまで及ぶものであるから,本件審判請求は,不使用取消審判の制度趣旨及び商標法上の立法趣旨に著しく反するものであって,権利の濫用として認められるべきではない。」旨を主張している。 しかしながら,本件審判請求は,請求人が本件商標の指定商品及び指定役務における一部の指定役務について不使用取消審判を請求したものであるところ,商標法第50条第1項は,「各指定商品又は指定役務についての登録商標の使用をしていないときは,何人も,その指定商品又は指定役務に係る商標登録を取り消すことについて審判を請求することができる。」と規定しており,登録商標に係る指定商品又は指定役務が複数存在するときは,使用をしていない指定商品又は指定役務ごとに,その取消審判の請求ができることとしているものであり,上記「各指定商品又は指定役務」の単位は,当該登録商標に係る指定商品又指定役務の範囲で,一部の商品又は役務のいずれも可能であり,さらに,請求人については,「何人も」とされていて,当該登録商標を使用する意思を要する規定もなく,商標法上,これを制限する規定はない。 したがって,本件商標について,請求人が商標法第50条第1項の規定により9件の審判請求を行っていることによって,本件審判請求を排斥し,その登録の取消を免れることにはならないと解するのが相当である。 また,登録商標の不使用による取消審判の請求が,専ら被請求人を害することを目的としていると認められる場合などの特段の事情がない限り,当該請求が権利の濫用となることはないと解するのが相当であるところ,被請求人の主張する当該審判の請求が被請求人を害することを目的とするものである理由について,本件審判請求に係る全証拠からみても,権利の濫用とすべき事情を認めることができないから,本件審判請求は,請求人の権利濫用にあたるということはできない。 よって,被請求人の上記主張は,採用することができない。 4 むすび 以上のとおり被請求人は,本件審判の請求の登録前3年以内に,日本国内において,本件商標権者,専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが,その請求に係る指定役務について,本件商標を使用していることを証明したものということができない。 また,被請求人は,その請求に係る指定役務について,本件商標を使用していないことについて正当な理由があることも明らかにしていない。 さらに,本件審判請求は,請求人の権利濫用にあたるということもできない。 したがって,本件商標の登録は,その指定商品及び指定役務中の「結論掲記の指定役務」について,商標法第50条の規定により,取り消すべきものとする。 よって,結論のとおり審決する。 |
別掲 |
別掲1 本件商標 別掲2 使用商標(乙第5号証を参照) |
審理終結日 | 2016-10-19 |
結審通知日 | 2016-10-21 |
審決日 | 2016-12-09 |
出願番号 | 商願2004-86034(T2004-86034) |
審決分類 |
T
1
32・
1-
Z
(Y35)
|
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 榎本 政実 |
特許庁審判長 |
井出 英一郎 |
特許庁審判官 |
榎本 政実 中束 としえ |
登録日 | 2005-07-29 |
登録番号 | 商標登録第4882830号(T4882830) |
商標の称呼 | キュウアアルコード、コード |
代理人 | 雨宮 康仁 |
代理人 | 青木 篤 |
代理人 | 外川 奈美 |
代理人 | 磯田 一真 |
代理人 | 田島 壽 |
代理人 | 大橋 啓輔 |