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審決分類 審判 判定 その他 属さない(申立て不成立) Y31
管理番号 1336387 
判定請求番号 判定2017-600029 
総通号数 218 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標判定公報 
発行日 2018-02-23 
種別 判定 
2017-08-02 
確定日 2017-12-22 
事件の表示 上記当事者間の登録第2710002号商標の判定請求事件について、次のとおり判定する。 
結論 商品「西洋梨」に使用するイ号標章は、登録第2710002号商標の商標権の効力の範囲に属しない。
理由 1 本件商標
本件登録第2710002号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおり、「貴婦人」の文字を横書きしてなり、昭和62年10月6日に登録出願され、第32類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、平成7年9月29日に設定登録され、その後、同17年11月30日に指定商品を第31類「果実」とする指定商品の書換登録がされ、現に有効に存続しているものである。

2 イ号標章
被請求人が商品「西洋梨」について使用する標章は、別掲2のとおり、「西洋梨の貴婦人」の文字を横書きしてなるもの(以下「イ号標章」という。)である。

3 請求人の主張
請求人は、被請求人が商品「西洋梨」について使用するイ号標章は、本件商標の商標権の効力の範囲に属する、との判定を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第5号証(枝番号を含む。)を提出した。
(1)判定請求の必要性
請求人は、本件商標の商標権者である。
被請求人が現在販売しているイ号標章に係る「西洋梨の貴婦人」は、本件商標の商標権を侵害するものであるので、請求人は、平成29年5月19日付けでその旨の警告状(甲4)を被請求人に送付した。これに対して、被請求人は、「イ号商標は、本件商標の商標権の効力の範囲に属さない」旨主張するので(甲5)、特許庁による判定を求める。
(2)イ号標章の説明
被請求人は、そのウェブサイトにて、同人が販売している西洋梨のル・レクチエやその専用箱の画像とともに「西洋梨の貴婦人『ル レクチエ』」の文字を用いており、また、他のホームページでも、同人が販売している西洋梨のル・レクチエやその専用箱の画像とともに「西洋梨の貴婦人『ル レクチエ』を産地直送でお客様の元に!」の文字を用いている(甲2の1、2)。
イ号標章は、インターネット等で、西洋梨の商品名「ル・レクチエ」の別名として「西洋梨の貴婦人」と使用されている。
(3)イ号標章が商標権の効力の範囲に属するとの説明
イ号標章は、その使用に係る商品が西洋梨のル・レクチエであるので、その構成中の「西洋梨」の部分は、単に商品の名称を説明しているにすぎず、識別力がないから、イ号標章の要部は、「貴婦人」である。
そうすると、イ号標章と本件商標とは、「貴婦人」の文字を共通にするものであって、「キフジン」の称呼及び「高貴な身分の婦人」の観念を生じるものであり、「果実」にこの商標を用いることで、「上品で優れた果実」の観念となる。
また、イ号標章の使用商品「西洋梨」は、本件商標の指定商品である第31類「果実」の概念の下位に属する類似のものである。
したがって、本件商標とイ号標章とは、類似するものである。
そして、被請求人が自己のホームページで西洋梨の広告のためにイ号標章を用いることは、商標法第2条第3項第8号に規定する「使用」に該当するものである。
(4)むすび
以上のとおり、被請求人が商品「西洋梨」について使用するイ号標章は、本件商標と類似するものであり、本件商標の指定商品と類似する商品「西洋梨」の広告のために使用されるものであるから、本件商標の商標権の効力の範囲に属するものである。

4 被請求人の答弁
被請求人は、結論同旨の判定を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第12号証を提出した。
(1)答弁の理由
ア イ号標章は、需要者が何人かの業務に係る商品等であることを認識することができる態様により使用されていない。
商標法第26条第1項第6号によれば、「需要者が何人かの業務に係る商品等であることを認識することができる態様により使用されていない商標」には商標権の効力が及ばないことが規定されている。
イ号標章「西洋梨の貴婦人」については、西洋梨「ル レクチエ」を紹介するために農林水産省北陸農政局のホームページ(乙1)、新潟県のホームページ(乙2)、新潟県発行の「にいがたフード・ブランド ル レクチエ パンフレット」(乙3)、新潟県発行の「にいがたフード・ブランド品目総合ガイド」(乙4)、新潟県発行の「にいがたフード・ブランド品目リーフレット」(乙5)、アサヒビールのホームページ(乙6、乙7)、「アサヒ旬果搾り プレミアムセレクション ル レクチエ」(乙8)に使用されており、また、Google検索を用いて「西洋梨の貴婦人」の語を検索すると、西洋梨「ル レクチエ」に関連した多数のホームページが検索される(乙9)。
このように、イ号標章「西洋梨の貴婦人」は、西洋梨「ル レクチエ」の別名として一般に広く用いられているものであり、これを使用しても需要者が何人かの業務に係る西洋梨であることを認識することはできない。
さらに、被請求人によるイ号標章の使用の態様は、「西洋梨の貴婦人『ル レクチエ』を産地直送でお客様の元に!」(甲2の1)、「『西洋梨の貴婦人』ル レクチエ」(甲2の2)のように、「ル レクチエ」と常に一体に使用されているものであり、この使用の態様からも、イ号標章「西洋梨の貴婦人」が西洋梨「ル レクチエ」の別名として使用されていることは明らかである。
したがって、イ号標章「西洋梨の貴婦人」は、需要者が何人かの業務に係る商品等であることを認識することができる態様により使用されていない。
イ イ号標章は本件商標に類似しない
(ア)称呼上の比較
イ号標章は、その文字構成により、「セイヨウナシノキフジン」の称呼が生じるのに対し、本件商標は、その文字構成により、「キフジン」の称呼が生じるから、両者は、「セイヨウナシノ」の有無に相違が認められる。
ここで、イ号標章は、上述のとおり、西洋梨「ル レクチエ」の別名として一般に広く用いられているものであるから、常に「セイヨウナシノキフジン」と称呼される。また、「キフジン」と称呼されたのでは、西洋梨「ル レクチエ」の別名を表すことにならず、意味をなさないため、イ号標章は、「キフジン」と称呼されることはない。
したがって、イ号標章は、「セイヨウナシノキフジン」と称呼されるものであり、「キフジン」と称呼される本件商標とは、称呼上、明らかに類似しない。
(イ)外観上の比較
イ号標章と本件商標とは、外観上においても、「西洋梨の」の文字の有無による相違により、明らかに類似しない。
(ウ)観念上の比較
イ号標章からは、文字どおり、「西洋梨の貴婦人」という観念が想起されるほか、「高級な西洋梨」、「洗練された味の西洋梨」といった独特の観念が想起される。また、イ号標章は、上述のとおり、西洋梨「ル レクチエ」の別名として一般に広く用いられているものであるから、西洋梨「ル レクチエ」が想起される。
他方、本件商標からは、文字どおり、「貴婦人」という観念や、「身分の高い女性」、「洗練された女性」といった観念が想起されるにすぎない。
したがって、イ号標章と本件商標とは、観念上においても、明らかに類似しない。
(エ)併存登録例について
例えば、第30類「米」を共通の指定商品として、登録第5136431号「米の貴婦人」(乙10)と登録第4426727号「貴婦人」(乙11)とが併存登録されている。
また、第31類「果実」を共通の指定商品として、登録第5627492号「軽井沢貴婦人」(乙12)と本件商標とが併存登録されている。
上記の併存登録例は、単独では識別力がないとされる「商品の普通名称」又は「商品の産地」を「貴婦人」と結合すれば、「貴婦人」とは誤認混同のおそれのない非類似の商標となることを示している。
ウ まとめ
以上のように、イ号標章と本件商標とは、称呼、外観、観念のいずれも類似しない。また、併存登録例からも、両者は、類似しないと判断するのが相当である。
したがって、イ号標章「西洋梨の貴婦人」は、本件商標に類似しない。
(2)結論
以上のように、イ号標章は、西洋梨「ル レクチエ」の別名として一般に広く用いられているものであり、需要者が何人かの業務に係る商品等であることを認識することができる態様により使用されていないため、イ号標章に本件商標の商標権の効力は及ばない(商標法第26条第1項第6号)。
また、イ号標章は、本件商標に類似しないため、本件商標の商標権の効力は及ばない(商標法第25条及び第37条)。
したがって、イ号標章は、本件商標の商標権の効力の範囲に属さない。

5 当審の判断
(1)本件商標について
本件商標は、上記1のとおり、第31類「果実」を指定商品とし、「貴婦人」の文字を横書きしてなるところ、当該文字は、「身分の高い女性」(広辞苑第六版)を意味する一般に親しまれた語であるから、その構成文字に相応し、「キフジン」の称呼及び「貴婦人(身分の高い女性)」の観念を生じるものである。
(2)イ号標章について
イ号標章は、上記2のとおり、「西洋梨」を使用商品とし、「西洋梨の貴婦人」の文字を横書きしてなるところ、その構成各文字は、同じ大きさ、同じ書体をもって、視覚上、まとまりよく一体的に表されているものであり、その構成中、「西洋梨」の文字部分は、その使用商品の普通名称を表すものであり、また、「貴婦人」の文字部分は、「身分の高い女性」を意味する語であるとしても、同格の関係であることを示す格助詞の「の」を介して「西洋梨の貴婦人」と一連一体に表した構成においては、全体として一体不可分のものと認識されるものとみるのが自然である。
また、イ号標章から生じる「セイヨウナシノキフジン」の称呼も格別冗長ではなく、他に、「貴婦人」の文字部分のみが分離、抽出され、取引に資されるとみるべき格別の理由は見いだせない。
そうすると、イ号標章は、その構成全体をもって一体不可分の語として認識、把握されるものであり、その構成文字に相応して、「セイヨウナシノキフジン」の称呼のみを生じ、「西洋梨の貴婦人(身分の高い女性)」の観念を生じるものである。
(3)本件商標とイ号標章の類否について
本件商標とイ号標章の外観を対比すると、両者は、構成文字が明らかに異なることから、外観上、相紛れるおそれはないものである。
また、本件商標から生じる称呼「キフジン」とイ号標章から生じる称呼「セイヨウナシノキフジン」の称呼について比較すると、両者は、構成音及び音数が明らかに異なることから、称呼上、相紛れるおそれはないものである。
さらに、本件商標は「貴婦人(身分の高い女性)」の観念を生じるのに対し、イ号標章は「西洋梨の貴婦人(身分の高い女性)」の観念を生じるものであるから、両者は、観念上、相紛れるおそれはないものである。
そうすると、本件商標の指定商品とイ号標章の使用商品が類似のものであるとしても、本件商標とイ号標章とは、その外観、称呼及び観念のいずれにおいても相紛れるおそれのない非類似のものといわざるを得ない。
(4)まとめ
以上のとおり、イ号標章の商標法第26条第1項第6号該当性について判断するまでもなく、本件商標とイ号標章とは、非類似のものであるから、イ号標章は、本件商標の効力の範囲に属しないものである。
よって、結論のとおり判定する。
別掲 別掲
1 本件商標


2 イ号標章(色彩については原本参照のこと。)

判定日 2017-12-14 
出願番号 商願昭62-111563 
審決分類 T 1 2・ 9- ZB (Y31)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 半田 正人 
特許庁審判長 大森 健司
特許庁審判官 田中 敬規
小松 里美
登録日 1995-09-29 
登録番号 商標登録第2710002号(T2710002) 
商標の称呼 キフジン 
代理人 高橋 知之 
代理人 新保 斉 
代理人 加藤 裕介 
代理人 牛木 護 

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