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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W293032
審判 全部申立て  登録を維持 W293032
審判 全部申立て  登録を維持 W293032
審判 全部申立て  登録を維持 W293032
審判 全部申立て  登録を維持 W293032
管理番号 1336378 
異議申立番号 異議2017-900203 
総通号数 218 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2018-02-23 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-06-20 
確定日 2018-01-10 
異議申立件数
事件の表示 登録第5934987号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第5934987号商標の商標登録を維持する。
理由 1 本件商標
本件登録第5934987号商標(以下「本件商標」という。)は、「グレースヘルシーフード」の文字を標準文字で表してなり、平成28年9月13日に登録出願、第29類「カレー・シチュー又はスープのもと,調理済みスープ,レトルトパウチ入りのスープ,リゾットソース,リゾットのもと,豆腐,油揚げ,凍り豆腐,こんにゃく,豆乳,納豆」、第30類「菓子,カステラ,団子菓子,ケーキ,アイスクリーム,アイスキャンデー,肉まんじゅう,パン,蒸しパン,グリッシーニ,サンドイッチ,中華まんじゅう,ハンバーガー,ピザ,ホットドッグ,ミートパイ,穀物の加工品,うどんの麺,スパゲッティの麺,そうめんの麺,そばの麺,中華そばの麺,ニョッキ,餅,揚げ餅,ぎょうざの皮,ワンタンの皮,しゅうまいの皮,リゾット,ぎょうざ,調理済みのニョッキ,調理済みの焼きそば,しゅうまい,すし,たこ焼き,弁当,ラビオリ,グラタン,ドリア,ラザニア,パエリア,チャーハン,調理済みの麺類,パスタソース」及び第32類「ビール,清涼飲料,果実飲料,飲料用野菜ジュース,ビール製造用ホップエキス,乳清飲料」を指定商品として、同29年2月24日に登録査定、同年3月24日に設定登録されたものである。

2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が本件登録異議の申立てに引用する登録商標は、次の(1)から(3)までのとおりであり、その商標権は現に有効に存続しているものである。
(1)登録第4310035号商標(以下「引用商標1」という。)は、別掲1のとおりの構成からなり、平成8年7月19日に登録出願、第29類「食肉,食用魚介類(生きているものを除く。),肉製品,加工水産物,豆,加工野菜及び加工果実,卵,加工卵,食用油脂,カレー・シチュー又はスープのもと,なめ物,お茶漬けのり,ふりかけ,油揚げ,凍り豆腐,こんにゃく,豆乳,豆腐,納豆,食用たんぱく」を指定商品として、同11年8月27日に設定登録されたものである。
(2)登録第4943828号商標(以下「引用商標2」という。)は、別掲2のとおりの構成からなり、平成16年7月17日に登録出願、第30類「香辛料,あさつき・ハーブなどを含むシーズニング(角砂糖・果糖・氷砂糖・砂糖・麦芽糖・はちみつ・ぶどう糖・粉末あめ・水あめ及びこれらの類似商品を除く。),ペッパーソース」を指定商品として、同18年4月14日に設定登録されたものである。
(3)登録第5856179号商標(以下「引用商標3」という。)は、別掲3のとおりの構成からなり、平成26年8月12日に登録出願、第29類「食肉,食用魚介類(生きているものを除く。),冷凍野菜,冷凍果実,肉製品,加工水産物,加工野菜及び加工果実,ココナッツミルク,クリーム状のココナッツ,乾燥スープのもと,乾燥えんどう豆,乾燥豆,ジャム,卵,食用油脂,食用たんぱく」及び第30類「ペストリー生地,米,穀物の加工品,脱穀済みのえん麦,脱穀済みの大麦,食用粉類,ひき割りとうもろこし,調味料(「ごま塩・食塩・すりごま・セロリーソルト・角砂糖・果糖・氷砂糖・砂糖・麦芽糖・はちみつ・ぶどう糖・粉末あめ・水あめ」を除く。),香辛料,マヨネーズソース,ソース(調味料),ブラウンソース,ペッパーソース,ホットソース,フルーツクーリ,チャツネ,ケチャップソース」を指定商品として、同28年6月10日に設定登録されたものである。
以下、上記(1)から(3)までをまとめていうときは、「引用商標」という。

3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標は、商標法第4条第1項第11号、同項第15号及び同項第19号に該当するから、その登録は同法第43条の2第1項の規定により取り消されるべきであるとして、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証から甲第17号証まで(枝番号を含む。以下、枝番号の全てを引用するときは、枝番号を省略して記載する。)を提出した。
(1)引用商標の周知・著名性について
ア 申立人について
申立人は、1922年にジャマイカで設立された、グレースケネディーリミテッドの子会社にあたる。グレースケネディーリミテッドは、カリブ海諸国を始め、北米、中米、英国などに約60の子会社又は関連会社を持ち、その事業は申立人が属する食品部門を始め、流通、金融、保険など様々な分野に及ぶ(甲5、甲6)。
イ 引用商標の使用開始時期、使用期間及び使用対象商品
引用商標は、1922年以来、現在に至るまで、約95年間にわたり継続して飲食料品に使用されている。
申立人は、主にカリブ海諸国の飲食料品を取り扱うところ、ジャマイカの他、英国、カナダ、ベリーズ及び米国にその子会社又は関連会社を有し、これらの国で引用商標を飲食料品に使用するとともに、ウェブサイトを通じて世界各国へこれらの商標が付された商品を販売している(甲7)。申立人が引用商標を付して販売する飲食料品の種類は、非常に多岐にわたる(甲8)。
ウ 引用商標の海外における商標登録と商標の使用
申立人は、世界中の国々において、引用商標又は「GRACE」の文字を含む商標の商標登録を、飲食料品等の商品について、日本を除く64力国に合計168件所有しており、これらは現在も有効に存続している(甲9)。
そして、引用商標は、世界各国で、飲食料品等について広く使用されている。
また、申立人は、引用商標を使用した商品の販売促進のため、イベントの開催及び協賛並びにスポンサー活動などによる宣伝活動に力を入れている(甲10)。
さらに、申立人は、自身のホームページ等において、引用商標を付した商品を使用したレシピを公開するなどの宣伝活動を行っている(甲11)。
そして、申立人が飲食料品に係る数々の賞を受賞していることは、引用商標又は「GRACE」の文字を含む商標の著名性を裏付けるものである(甲12)。
エ 引用商標の世界における使用及び売上規模
申立人の子会社又は関連会社による引用商標を付した飲食料品の2014年から2017年までの販売金額(卸値)は、次のとおりである(甲13)。
2014年:189,125,365米ドル
2015年:219,248,139米ドル
2016年:219,599,822米ドル
2017年:152,289,080米ドル
オ 引用商標の日本における使用及び売上規模
1996年に、申立人の総代理店である株式会社現代実業が引用商標を付した食品を日本へ輸入し(甲14)、その後も、引用商標を付した食品が様々な記事で紹介された(甲15)。株式会社現代実業は、その後名称を有限会社スパイスロードに変更し、引き続き申立人の製品を輸入、販売している(甲16)。
そして、引用商標又は「GRACE」の文字を含む商標を使用した商品の日本への販売数量及び販売金額(卸値)は、株式会社現代実業又はスパイスロードへ販売した商品のうち、全てのインボイスは確認できないものの、インボイスが存在するものだけでも次のとおりである(甲17)。
1995年:25,365米ドル
2000年:14,783米ドル
2001年:121,667米ドル
2002年:36,908米ドル
2003年:208,757米ドル
2004年:102,125米ドル
2006年:102,603米ドル
2007年:58,151米ドル
2008年:81,277米ドル
2009年:76,305米ドル
2011年:25,017米ドル
2012年:76,110米ドル
2013年:57,928米ドル
2014年:57,542米ドル
2015年:14,160米ドル
2016年:62,403米ドル
2017年:21,135米ドル
カ 以上より、引用商標は、飲食料品について、日本も含めた世界各国において使用されている商標であることは明らかであり、申立人の業務に係る飲食料品を表示するものとして、需要者、取引者の間に広く認識されている商標である。
(2)本件商標と引用商標1及び引用商標3との類否について
ア 本件商標
本件商標は、上記1のとおり、「グレースヘルシーフード」の文字を標準文字で表してなるところ、その構成中、「ヘルシー」の文字は、「健康に良い、健康的な」の意味を有する語であり、本件商標の指定商品との関係において、品質を表示するものであり、「フード」の文字は、本件商標の指定商品の普通名称にあたるから、本件商標のうち「ヘルシーフード」の文字部分は、本件商標の指定商品との関係において、自他商品識別力を有しない語である。
よって、本件商標の構成文字中、「グレース」の文字部分のみが自他商品識別力を発揮する商標の要部として認識され、当該文字部分から、「グレース」の称呼を生じ、「優雅さ、上品さ」、又は、「グレースさん」などの観念を生じる。
イ 引用商標1及び引用商標3
引用商標1及び引用商標3は、それぞれ、別掲1及び別掲3のとおりの構成からなるところ、それらの構成中、王冠の図形部分は、商標全体に占める割合が小さく、「Grace」の文字部分が大きく目立つ。
そうすると、引用商標1及び引用商標3は、いずれも「Grace」の文字部分が商標の要部として認識されるから、当該文字部分から、「グレース」の称呼を生じ、「優雅さ、上品さ」、又は、「グレースさん」などの観念を生じる。
ウ 本件商標と引用商標1及び引用商標3との類否
本件商標のような結合商標類否判断に係る商標審査基準に鑑みれば、本件商標と引用商標1及び引用商標3とは、称呼及び観念を共通とする、類似する商標というのが妥当である。
(3)商標法第4条第1項第11号について
上記(2)のとおり、本件商標と引用商標1及び引用商標3とは、類似する商標である。
また、本件商標の指定商品中、第29類の指定商品及び第30類の「パスタソース」は、引用商標1の指定商品と同一又は類似する商品であり、本件商標の指定商品中、第29類「カレー・シチュー又はスープのもと,調理済みスープ,レトルトパウチ入りのスープ,リゾットソース,リゾットのもと」、第30類「穀物の加工品,うどんの麺,スパゲッティの麺,そうめんの麺,そばの麺,中華そばの麺,ニョッキ,餅,揚げ餅,ぎょうざの皮,ワンタンの皮,しゅうまいの皮,パスタソース」及び第32類「乳清飲料」は、引用商標3の指定商品と同一又は類似する商品である。
以上のとおり、本件商標と引用商標1及び引用商標3とは、類似する商標であり、本件商標の指定商品は引用商標1及び引用商標3の指定商品と同一又は類似するから、本件商標は、引用商標1及び引用商標3との関係において、商標法第4条第1項第11号に該当する。
(4)商標法第4条第1項第15号について
引用商標は、申立人の事業に係る表示、すなわち調味料を始めとする飲食料品の商標として、広く一般に知られている商標である。
一方、本件商標は、カタカナの標準文字をもって「グレースヘルシーフード」と横書きで表示した構成態様からなるところ、本件商標の要部である「グレース」の文字部分は、申立人の商品の出所標識として広く認識されている「Grace」に類似するものであるから、引用商標の構成中の「Grace」の著名性及びその出所表示機能の強さに照らせば、本件商標に接した需要者、取引者は、本件商標から申立人を連想し、また、周知・著名な引用商標を連想する。
そして、本件商標の指定商品には、特許庁における審査基準に照らせば、引用商標が使用されている商品とは、同一又は類似の商品には該当しない商品が含まれるものの、本件商標の指定商品は全て飲食料品であって、世界各国で引用商標を付した飲食料品を製造、販売している申立人の商品と極めて密接な関係性を有しているものである。
そうすると、本件商標をその指定商品に使用したときには、当該商品が申立人の商品に係るものであると誤信されるおそれがあるのみならず、当該商品が申立人との間にいわゆる親子会社や系列会社等の緊密な営業上の関係等にある者の業務に係る商品であると誤信されるおそれ(いわゆる「広義の混同を生ずるおそれ」)がある。
本件商標と引用商標との類似性の程度、引用商標の周知・著名性の程度、本件商標の指定商品と申立人の業務に係る商品との関連性の程度に照らし、本件商標の指定商品の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準として総合的に判断すれば、本件商標が申立人の業務に係る商品と混同を生じるおそれがあることは明白である。
してみると、本件商標は、その登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る商品と混同を生ずるおそれがある。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。
(5)商標法第4条第1項第19号について
本件商標は、引用商標の構成中の「Grace」の文字部分と同一の称呼が生じる「グレース」の文字の語尾に「ヘルシーフード」の語を付け加えたものであるところ、当該「ヘルシーフード」の文字部分は、本件商標の指定商品の分野で使用された場合には、自他商品識別力を有しない語であることに鑑みれば、本件商標権者が本件商標を自ら考案し、引用商標に偶然一致したとは想定し難い。
そして、申立人が提供する商品と同一又は類似若しくは密接な関連性を有する指定商品を取り扱う本件商標権者が、本件商標の登録出願時に、申立人の業務に係る飲食料品の名称として世界的に広く知られている引用商標について不知であったとは到底考えられない。むしろ、引用商標に依拠し、まるで、引用商標を使用する製品のラインナップの1つとして、取引者・需要者が混同することを意図して採択されたものと推認せざるを得ないものである。
そうすると、本件商標は、引用商標に化体した信用にただ乗りして採択されたものと考えられ、本件商標の使用により引用商標の出所表示機能を希釈化しその名声を毀損させるおそれがある、すなわち、不正の目的があると推認し得るものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当する。

4 当審の判断
(1)引用商標の周知性について
ア 申立人提出の甲各号証及び同人の主張によれば、以下の事実が認められる。
(ア)日本の新聞及び雑誌に、ジャマイカ所在のグレース社の総代理店である株式会社現代実業が、ジャークと呼ばれるジャマイカの伝統的調味料を発売し、輸入食品店や百貨店の輸入食品売場等で販売しているとの記事とともに、商品の写真が掲載された(甲14)。申立人の主張によれば、当該新聞の発行日は1996年(平成8年)6月10日であり、当該雑誌は、同年9月号のものである。
(イ)上記(ア)の雑誌に掲載された商品の包装容器には、引用商標1が表示されたラベルが貼付されている(甲14)。
(ウ)1996年(平成8年)9月9日付け「日食外食レストラン新聞」に「ジャークシーズニング」及び「ホットペッパーソース」と称する商品の広告が掲載された。その発売元については、「グレース発売元 日本総代理店 株式会社現代実業」との表示があり、また、当該広告に掲載された商品の包装容器には、引用商標1が表示されたラベルが貼付されている。(甲15の4)。
(エ)有限会社スパイスロードは、2004年(平成16年)2月29日時点で、食材の輸入及び卸業を営んでおり、主な輸入先は、ジャマイカ所在の「Grace, Kennedy Export Trading Ltd.」、主な輸入商品は、「グレースホットペッパーソース(Grace Hot Pepper Souce)」、「グレースジャークパウダー(Grace Jerk Powder)」等であった(甲16)。
(オ)雑誌「王国」の2007年(平成19年)11月号の「キラー調味料を探せ!【海外気分な調味料篇】」と題するページで、ジャマイカの調味料として「グレイス ジャーク・シーズニング」が写真付きで他人の商品とともに紹介され、商品の問合せ先として、「スパイスロード」及びそのホームページアドレスが掲載された。当該商品の包装容器には、引用商標3が表示されたラベルが貼付されていた(甲15の2)。
(カ)雑誌「湘南スタイル」の2008年(平成20年)8月号の「Spicy Cooking 夏はスパイシー料理で乗り切る!」と題するページで、「ジャークチキンを手軽につくれるジャークシーズニング」として、包装容器に引用商標3とおぼしき標章が表示されたラベルが貼付された商品の写真が掲載された(甲15の3)。
(キ)雑誌(雑誌名は明らかにされていない。)の「2009 SUMMER BOY」と題するページに、ジャマイカの調味料として「ジャークシーズニング」が写真付きで他人の商品(水筒やサンダル、楽器等)とともに紹介され、商品の問合せ先として、「スパイスロード」及びそのホームページアドレスが掲載された。当該商品の包装容器には、引用商標3が表示されたラベルが貼付されていた(甲15の5)。
(ク)ジャマイカ所在の「GRACE, KENNEDY EXPORT TRADING LTD」、「GRACE FOODS INTERNATIONAL LTD.」、「GK FOODS & SERVICES LIMITED GRACE FOODS INTERNATIONAL DIVISION」又は「ENCO PRODUCTS LIMITED」を送り主とし、東京又は神奈川所在の「GENDAI JITSUGYO COMPANY LTD.」又は東京所在の「SPICE ROAD CO. LTD.」を荷受人(請求先)とする1995年(平成7年)及び2000年(平成12年)から2017年(平成29年)までのインボイス(甲17)が存在し、申立人の主張によれば、これらのインボイスによる商品の販売金額(卸値)の合計は、上記3(1)オに記載のとおりである(提出されたインボイスには不鮮明で内容が判読できないものが含まれており、その合計金額が、申立人の主張する金額と一致するものであるかは確認することができない)。
(ケ)申立人は、自身のホームページ(英文)において、「OUR COMPANIES」、「PRODUCT CATEGORIES」及び「GRACE FOODS RECIPES」と題するページに、引用商標3を表示している(甲7、甲8、甲11)。
(コ)甲第10号証は、外国で開催されたイベントに係るホームページ画面、イベント会場の様子の写真、告知チラシ等とおぼしき画像を集めてなるものであり、これらの画像の一部には、引用商標3が表示されている。
イ 上記アで認定した事実によれば、以下のとおりである。
申立人の引用商標1及び引用商標3が付されたジャマイカの調味料が、1996年頃から、代理店を通して我が国に輸入され、販売されていたことがうかがえる。
しかしながら、当該商品は、販売場所や用途が限定的で、飲食料品のうちの調味料の分野に限ったとしても、極めて狭い範囲の商品といえ、その需要者の範囲も限られているものである。
そうすると、当該商品に付された申立人の引用商標に対する需要者の認識の程度は、およそ限られた範囲の需要者の間におけるものにとどまるものであり、さほど高いものとはいえないから、引用商標が本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る商品を表示するものとして、我が国の需要者の間に広く認識されていたものということはできない。
また、仮にジャマイカで引用商標が申立人の業務に係るジャマイカの伝統的調味料を表示するものとして一定程度認知されていたとしても、申立人の業務に係る商品を表示するものとして外国の需要者の間に広く認識されていたものとまで認めるに足りる証拠は提出されていない。
ウ 申立人の主張について
(ア)申立人は、申立人の子会社又は関連会社による世界における引用商標を付した飲食料品の2014年(平成26年)から2017年(平成29年)までの販売金額(卸値)は、上記3(1)エに記載のとおりであると主張する。
しかしながら、それらの各数値を裏付ける資料の提示はなく、かかる商品の外国における市場規模がどの程度のものであるのか、上記の販売金額がどの程度のシェアを占めるものとなるのか等、その数値の多少を推し量り評価すべき根拠となる数値は示されていない。加えて、取引された商品がどのような商品であったか、当該商品に引用商標が付されていたかも不明である。
(イ)申立人は、外国において、イベントの開催、協賛及びスポンサー活動等を通じた、引用商標を用いた宣伝活動を行ったと主張する。
しかしながら、イベントの開催場所、規模、宣伝の方法等、その詳細が不明である。その他、自身のホームページに引用商標3を表示していることを除き、申立人が外国において引用商標を使用した飲食料品について宣伝広告を積極的に行ったことを示す証拠の提出はない。
(2)本件商標と引用商標との類否について
ア 本件商標について
本件商標は、上記1のとおり、「グレースヘルシーフード」の文字を標準文字で表してなるところ、その構成文字は、同じ書体、同じ大きさをもって、まとまりよく一体的に表されているものである。
また、本件商標の構成文字全体から生じる「グレースヘルシーフード」の称呼も、無理なく一連に称呼し得るものである。
さらに、本件商標の構成中、「グレース」の文字は「優雅、上品」の意味を、「ヘルシー」の文字は「健康的なさま」の意味を、「フード」の文字は「食品」の意味を有する語として、いずれも一般に慣れ親しまれているものであるから、本件商標は、全体から「上品な健康食品」ほどの意味合いを認識させるものである。
そうすると、本件商標の上記構成、称呼及び観念を併せ考慮すれば、これに接する取引者、需要者は、本件商標を「グレースヘルシーフード」の文字全体をもって、認識、把握するというのが相当であるから、本件商標は、「グレースヘルシーフード」の称呼及び「上品な健康食品」の観念を生じるものである。
イ 引用商標について
引用商標は、別掲1から別掲3までのとおりの構成からなり、いずれも「Grace」の文字を含むものであるから、当該文字部分から、「グレース」の称呼及び「優雅、上品」の観念を生じるものである。
ウ 類否について
本件商標と引用商標との類否を検討すると、本件商標と引用商標1及び引用商標3とは、外観において、図形の有無という明らかな差異を有し、本件商標と引用商標の「Grace」の文字部分とを比較しても、文字種及び文字数が異なるものであるから、外観上、相紛れるおそれはないものである。
つぎに、本件商標から生じる「グレースヘルシーフード」の称呼と引用商標から生じる「グレース」の称呼とは、「ヘルシーフード」の音の有無という明らかな差異を有するものであるから、本願商標と引用商標とは、称呼上、相紛れるおそれはないものである。
さらに、本件商標からは、「上品な健康食品」の観念が生じるのに対し、引用商標からは、「優雅、上品」の観念が生じるから、本件商標と引用商標とは、観念上、相紛れるおそれはないものである。
したがって、本件商標は、外観、称呼及び観念のいずれにおいても相紛れるおそれのない非類似の商標であって、別異の商標というべきものである。
(3)商標法第4条第1項第11号該当性について
上記(2)のとおり、本件商標と引用商標1及び引用商標3とは、非類似の商標であるから、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。
(4)商標法第4条第1項第15号該当性について
上記(1)のとおり、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る商品を表示するものとして我が国の需要者の間に広く認識されていたものと認められないものであり、上記(2)のとおり、本件商標と引用商標とは、外観、称呼及び観念のいずれにおいても相紛れるおそれのない非類似の商標であって、別異の商標というべきものである。
そうすると、本件商標は、本件商標権者がこれをその指定商品について使用しても、需要者をして引用商標を連想又は想起させることはなく、その商品が申立人あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように、その商品の出所について混同を生じるおそれはないものというべきである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
(5)商標法第4条第1項第19号該当性について
上記(1)のとおり、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る商品を表示するものとして我が国及び外国の需要者の間に広く認識されていたものと認められないものであり、また、上記(2)のとおり、本件商標と引用商標とは、外観、称呼及び観念のいずれにおいても相紛れるおそれのない非類似の商標である。
そして、申立人が提出した甲各号証を総合してみても、本件商標の商標権者が、引用商標の名声や信用についてフリーライドする又は稀釈化するなど、不正の目的をもって本件商標の使用をするものと認めるに足る事実を見いだすことができない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当しない。
(6)むすび
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号、同項第15号及び同項第19号のいずれにも違反してされたものではないから、同法第43条の3第4項の規定により、維持すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
別掲 別掲1 引用商標1(登録第4310035号商標)

別掲2 引用商標2(登録第4943828号商標)

別掲3 引用商標3(登録第5856179号商標)

異議決定日 2017-12-27 
出願番号 商願2016-100062(T2016-100062) 
審決分類 T 1 651・ 263- Y (W293032)
T 1 651・ 222- Y (W293032)
T 1 651・ 271- Y (W293032)
T 1 651・ 262- Y (W293032)
T 1 651・ 261- Y (W293032)
最終処分 維持  
前審関与審査官 菅沼 結香子 
特許庁審判長 青木 博文
特許庁審判官 小松 里美
松浦 裕紀子
登録日 2017-03-24 
登録番号 商標登録第5934987号(T5934987) 
権利者 有楽調理食品株式会社
商標の称呼 グレースヘルシーフード、グレースヘルシー、グレース、ヘルシーフード、ヘルシー 
代理人 伊藤 孝太郎 
代理人 中村 知公 
代理人 前田 大輔 
代理人 朝倉 美知 

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