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審決分類 審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない X41
管理番号 1335206 
審判番号 取消2015-300802 
総通号数 217 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2018-01-26 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2015-11-09 
確定日 2017-11-13 
事件の表示 上記当事者間の登録第5199818号商標の登録取消審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 審判費用は,請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5199818号商標(以下「本件商標」という。)は,「らくらく入門」の文字を標準文字で現してなり,平成19年8月31日に登録出願,第41類「技芸・スポーツ及び知識の教授,資格認定試験・資格検定試験・就職試験その他認定・検定試験に関する講座の実施及びそれらの講座に関する情報の提供,資格認定試験・資格検定試験・就職試験その他認定・検定試験及びそれらの模擬試験の実施,資格認定試験・資格検定試験・就職試験その他認定・検定試験及びそれらの模擬試験の取り次ぎ,資格認定試験・資格検定試験・就職試験その他認定・検定試験及びそれらの模擬試験その他教育に関する情報の提供,学力試験・資格適性試験・性格判断試験の実施及びそれらに関する情報の提供,企業における法務・税務・金融研修その他の研修の企画・運営又は開催,実地教育,職業訓練,幼児教育,資格試験受験相談会・セミナーの企画・運営又は開催,講演会の企画・運営または開催,研修会・討論会・シンポジウムの企画・運営又は開催,会議・議会の手配及び運営,海外における教育実習・実務研修・語学研修・留学及び滞在のためのセミナーの企画・運営又は開催,海外における教育実習・実務研修・語学研修・留学及び滞在のためのセミナーの企画・運営又は開催に関する情報の提供,留学のための受け入れ学校に関する情報の提供,図書及び記録の供覧及びそれらに関する情報提供,電子出版物の提供,映画の上映・制作又は配給及びこれらに関する情報の提供,演芸の上演及びこれに関する情報の提供,演劇の演出又は上演及びこれらに関する情報の提供,音楽の演奏及びこれに関する情報の提供,コンピュータネットワークによる音楽・音声・画像・映像の提供(ストリーミング方式により提供するものを含む。),教育・文化・娯楽・スポーツ用ビデオの企画・制作(映画・放送番組・広告用のものを除く。),コンピュータデータを使用した国家資格取得講座及び法務・税務・金融研修その他の講座・研修のための文字・画像・音声を兼ね備えた教材用のビデオテープ・ビデオディスク・CD-ROM・DVDその他の記録媒体の制作(映画・放送番組・広告用のものを除く。),受託による文章の執筆(広告文を除く。),録音済み磁気テープ・録音済み磁気ディスク又は録音済みCDの貸与,録画済み磁気テープ・録画済み磁気ディスク・録画済みCD-ROM・録画済みDVDの貸与」並びに第9類及び第16類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品を指定商品及び指定役務として,同21年1月23日に設定登録されたものである。
なお,本件審判の請求の登録は,平成27年11月24日である(以下,同登録前3年以内の期間を「要証期間」という場合がある。)。

第2 請求人の主張
請求人は,商標法第50条第1項の規定により,本件商標の指定商品及び指定役務中,第41類「全指定役務」についての登録を取り消す,審判費用は被請求人の負担とする,との審決を求め,その理由を要旨次のように述べた。
1 請求の理由
請求人の調査によれば,被請求人は,本件商標を,その指定商品及び指定役務のうち第41類のいずれの指定役務について,少なくとも過去3年に,日本国内において使用をしていない。
また,本件商標について専用使用権者は存在せず,通常使用権者として本件商標を使用している者も存在しない。
したがって,本件商標は,継続して3年以上日本国内において,商標権者,専用使用権者又は通常使用権者のいずれによっても,その第41類の全指定役務につき使用されていないものである。
2 弁駁の理由
(1)結合商標における類否判断
複数の構成要素からなる結合商標については,その特定の要素が強く支配的な印象を与える場合,若しくは,その一部がいわゆる付記的部分で略称できるものでない限り,原則として,全体として一つのまとまった商標として把握されるべきである(最高裁昭和37年(オ)第953号,最高裁平成3年(行ツ)第103号)。
(2)本件商標について
本件商標は,「らくらく入門」であり,「ラクラクニュウモン」の称呼が生じ,「楽に学問・技芸などを学びはじめること」といった一体不可分の観念を生じる。
すなわち,本件商標は,特定の要素が強く支配的な印象を与える場合でもなく,若しくは,その一部がいわゆる付記的部分で略称できるものでないため,全体として一つのまとまった商標として把握できる。
(3)使用商標について
被請求人が提出したすべての証拠を精査する限り,使用されている商標は,以下のオ「らくらく」を除き,以下のように複数の語句からなる,いわゆる結合商標である。
ア 「らくらく入門Web講座1級」(「らくらく」+「入門」+「Web」+「講座」+「1級」:乙2)
称呼:「ラクラクニュウモンウェブコウザイッキュウ」
観念:「楽に学問・技芸などを学びはじめるためのインターネット文書閲覧システムによる講習会の1級」
イ 「らくらく入門Web講座2級」(「らくらく」+「入門」+「Web」+「講座」+「2級」:乙3)
称呼:「ラクラクニュウモンウェブコウザニキュウ」
観念:「楽に学問・技芸などを学びはじめるためのインターネット文書閲覧システムによる講習会の2級」
ウ 「らくらく入門Web講座3級」(「らくらく」+「入門」+「Web」+「講座」+「3級」:乙4)
称呼:「ラクラクニュウモンウェブコウザサンキュウ」
観念:「楽に学問・技芸などを学びはじめるためのインターネット文書閲覧システムによる講習会の3級」
エ 「らくらく入門講座」(「らくらく」+「入門」+「講座」:乙5)
称呼:「ラクラクニュウモンコウザ」
観念:「楽に学問・技芸などを学びはじめるための,講義風に編集・編成した,啓蒙的な出版物・放送番組・講習会」
オ 「らくらく」(乙2?乙5)
カ 「らくらくWeb合格講座」(「らくらく」+「Web」+「合格」+「講座」:乙2?乙5)
称呼:「ラクラクウェブゴウカクコウザ」
観念:「インターネット上で標準的に用いられている,文書の公開・閲覧システムを用いて楽に試験や検定などに及第するための出版物・放送番組・講習会」
(以下,これらを「使用商標」という場合がある。)。
使用商標のうち,上記アないしエ及びカは,それぞれ一体不可分の観念を生じるものであって,特定の要素が強く支配的な印象を与える場合でもなく,若しくは,その一部がいわゆる付記的部分で略称できるものでないため,全体として一つのまとまった商標として把握されるべきである。
(4)本件商標と使用商標との非類似性
ア 本件商標と使用商標のうちの上記(3)アないしエ及びカとの非類似性について
本件商標は,「らくらく入門」であり,「ラクラクニュウモン」の称呼が生じ,「楽に学問・技芸などを学びはじめること」という程の観念を生じる。
一方,使用商標のうちの上記(3)アないしエ及びカについては,それぞれ,上記(3)アないしエ及びカに示したとおりの称呼及び観念を生じ,本件商標の称呼,観念及び外観と異なる。
よって,本件商標と使用商標のうちの上記(3)アないしエ及びカとは,非類似であり,社会通念上同一の商標ではない。
イ 本件商標と,使用商標のうちの上記(3)オ「らくらく」との非類似性について
本件商標は,「らくらく入門」であり,「ラクラクニュウモン」の称呼が生じ,「楽に学問・技芸などを学びはじめること」という程の観念を生じる。
一方,使用商標のうちの上記(3)オ「らくらく」は,「ラクラク」の称呼が生じ,「楽に」,「容易に」といった観念を生じる。
両商標を対比すると,本件商標は「らくらく入門」である一方,使用商標のうちの上記(3)オは「らくらく」であるから,両商標の外観は,明らかに異なる。
また,両商標は,称呼についても音数に大きく差があることから,異なる。
さらに,観念については,本件商標が「楽に学問・技芸などを学びはじめること」というものであるのに対し,使用商標のうちの上記(3)オ「ラクラク」は,単に「楽な」,「容易な」というものであり,両商標は,大きく異なる。
よって,本件商標と使用商標のうちの上記(3)オ「ラクラク」とは,非類似であり,社会通念上同一の商標ではない。
(5)要証期間の使用が立証されていない点について
被請求人は,答弁書の「(5)使用時期」の欄において,「乙第2号証ないし乙第4号証には,それぞれ『販売開始日 2012年8月10日 AM0:00』及び『販売終了日 2013年10月1日 AM0:00』,乙第5号証には『販売開始日 2012年7月18日 AM0:00』及び『販売終了日 2015年12月2日 AM0:00』と明記されている。」と主張する。
ここで,被請求人が提出した証拠資料(乙2?乙4)は,被請求人が答弁書において主張するところによれば,「被請求人(通称LEC)のウェブサイトにおけるオンラインショップ(E学習センター)のページ」であり,また,同じく被請求人が提出した証拠資料(乙5)は,「被請求人のウェブサイトにおけるオンラインショップのページ」である。
これら乙第2号証ないし乙第5号証は,被請求人の役務に係る広告又は価格表に該当すると考えられるところ(商標法第2条第3項第8号),被請求人の本件商標の使用が,同号における使用に該当するためには,「商品若しくは役務に関する広告,価格表若しくは取引書類に標章を付して展示し,若しくは頒布し,又はこれらを内容とする情報に標章を付して電磁的方法により提供する行為」の要件を満たす必要がある。すなわち,要証期間に現実に展示し,若しくは頒布し,又はこれらを内容とする情報に標章を付して電磁的方法により提供されたことが必要である。
しかし,被請求人が提出した上記乙各号証には,確かに日付の記載があるものの,要証期間に,現実にウェブサイト上に表示されていたことは不明である。
また,乙第2号証ないし乙第5号証の各ページの右下には,「2016/02/03」の日付の表示があるが,これは,いずれも要証期間の日付ではない。
すなわち,被請求人提出の上記各号証のいずれによっても,被請求人の役務に係る広告又は価格表が,要証期間に現実に展示され,若しくは頒布され,又はこれらを内容とする情報に標章を付して電磁的方法により提供された事実は何ら立証されていない。
3 口頭審理陳述要領書(平成28年10月19日付け)
(1)使用商標について
使用商標には,その構成中に,本件商標と同じ「らくらく入門」の文字を含んでいるものもある(上記2(3)ア?エ)が,該文字部分は,「らくらく」が「たやすいさま」を,「入門」が「初学者の手引きとして書かれた解説書,師の門に入って弟子になること」(広辞苑)を意味し,そもそも資格試験の学習に関連した商品又は役務との関係では,例えば,「簡単な初心者向けの解説書」程度の意味合いを連想させるものであることを踏まえれば,自他商品又は役務の識別力が極めて弱い部分といえ,取引者,需要者に対し,商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものではないから,かかる観点からも,使用商標のうちの上記2(3)アないしエについて,「らくらく入門」の文字が分離して認識されるとは考え難い。
すなわち,使用商標のうちの上記2(3)アないしエについても,特定の要素が強く支配的な印象を与える場合でもなく,若しくは,その一部がいわゆる付記的部分で略称できるものではないため,全体として一つのまとまった商標として把握されるべきである。
(2)要証期間の使用が立証されていない点について(乙2?乙5)
被請求人は,「乙第2号証ないし乙第5号証の各右下にある日付の表示は,データを紙に印刷した日付を示し,要証期間の日付ではない。被請求人は,現時点において,過去の要証期間の使用の立証を尽くしており,請求人の主張は,『過去の事実の立証』方法において,無理難題を要求するものにすぎない。」旨主張する。
被請求人が認めているとおり,乙第2号証ないし乙第5号証の各右下にある日付の表示は,データを紙に印刷した日付を示し,要証期間の日付ではない。
よって,被請求人は,乙第2号証ないし乙第5号証によっては,要証期間の本件商標の使用を立証していない。
そして,インターネットのウェブサイトにおけるページを証拠として提出する際,その内容は,修正・改変しようと思えばできるものであることを鑑みれば,そのウェブページが実際に要証期間にインターネットに掲載されていた客観的事実の立証を求めるのは当然である。
また,被請求人は,商標法第2条第3項に定義される「使用」をさらに証明することは無理であると認めているのであるから,被請求人が商標法第50条第2項に定める要証期間の本件商標の使用を証明できなかったことは明らかである。
(3)商標の使用をしている役務について
被請求人は,本件審判の請求に係る指定役務中,「技芸・スポーツ及び知識の教授,資格認定試験・資格検定試験・就職試験その他認定・検定試験に関する講座の実施及びそれらの講座に関する情報の提供,資格認定試験・資格検定試験・就職試験その他認定・検定試験及びそれらの模擬試験その他教育に関する情報の提供」について,本件商標の使用をしていると主張している。
しかし,商標法上の役務とは,「他人のために行う労務又は便益であって,独立して商取引の目的たりうべきものをいう。」(「工業所有権法(産業財産権法)逐条解説〔第19版〕」)であるところ,乙各号証をみるに,講座の受講の申込みや料金の記述はあっても,「資格認定試験・資格検定試験・就職試験その他認定・検定試験及びそれらの模擬試験その他教育に関する情報の提供」などの役務の申込みや料金の記述はなされていない。
そして,資格試験の講座においては,講座の実施に当たって,付帯的に受講生に資格試験の情報を提供したり,相談に応じたりするのは普通に行われているといえる。
そうすると,上記請求に係る指定役務中,「資格認定試験・資格検定試験に関する講座の実施」以外の役務にあっては,商標法上の役務として実施していることが乙各号証をもっては証明されていない。
4 上申書(平成28年12月15日付け)
(1)乙第6号証について
被請求人は,「乙第6号証は,『中小企業診断士 資格説明会のご案内』チラシ」であり,これが「2013年8月31日に発行されたものである」と説明する。
しかし,その中身を確認すると,確かに中小企業診断士の資格に関する説明会の案内チラシと思しきものではあるが,これが,要証期間に,実際に頒布等された事実は,立証されていない。
よって,乙第6号証をもってしては,本件商標が要証期間に,本件審判の請求に係る第41類の指定役務について使用(商標法第2条第3項第8号)されたとはいえない。
また,乙第6号証に表示されている商標は,いずれも「らくらく入門Web講座」であり,本件商標と社会通念上同一の商標ではない。
(2)乙第7号証について
被請求人は,「要証期間に,確かに『公認会計士 財務会計論 らくらく入門講座』(乙5)が開設されており,同講座の受講申込みがあった」旨主張し,その主張を裏付ける証拠として乙第7号証を提出して,同号証について「被請求人の保有する社内データベース管理システム(LEX)で検索した結果が表示された画面を印刷したものである」と説明している。
しかし,乙第7号証のようにパソコン画面の表示を印刷したと称されるものは,作成しようと思えば作成が可能なものであり,証拠として信憑性に乏しいといわざるを得ない。
仮に,乙第7号証が,講座の申込み状況を示す受講者名簿であったとしても,実際に要証期間に講座が開設され,受講生が講座を受講した事実は証明されていない。
また,乙第7号証に表示されている商標は,いずれも「らくらく入門講座」であり,本件商標と社会通念上同一の商標ではない。
(3)乙第8号証及び乙第9号証について
被請求人は,乙第8号証は,「『公認会計士 財務会計論 らくらく入門講座』(乙5)初級編での使用テキスト」であり,また,乙第9号証は,「同講座の初級編の講義レジュメ」と説明する。
しかし,これらが,要証期間に,実際に受講生に配布された事実は立証されていない。
よって,乙第8号証及び乙第9号証をもってしては,本件商標が要証期間に,本件審判の請求に係る第41類の指定役務について使用(商標法第2条第3項第3号及び同項4号)されたとはいえない。
また,乙第8号証及び乙第9号証においても,そこに付されている商標は,いずれも「らくらく入門講座」であり,本件商標と社会通念上同一の商標ではない。
5 意見書(平成29年7月14日付け)
(1)乙第10号証ないし乙第16号証について
被請求人は,乙第10号証ないし乙第16号証を提出して,「乙第5号証の『受講形態ほかを選択し,この講座を申し込む』の内容を示す書面である」と主張する。
しかしながら,乙第10号証ないし乙第15号証の証拠に記載された講座は,「公認会計士 2017短答合格スペシャルコース」であって,乙第5号証で示されている「らくらく:公認会計士 財務会計論 らくらく入門講座」ではない。
また,乙第16号証には,受講開始までの流れが記載されているが,欄外の日付の記載によれば,2017年4月14日の要証期間外における内容であって,要証期間において行われていた受講開始までの手続の流れと同じ内容であるとする客観的事実を示す証拠は,何ら提出されていない。
よって,乙第10号証ないし乙第16号証の証拠をもってしても,要証期間において,「受講形態ほかを選択し,この講座を申し込む」の内容を証明したことにはならず,本件商標が,要証期間に,本件商標に係る第41類の指定役務について使用(商標法第2条第3項第8号)されたとはいえない。
(2)乙第17号証ないし乙第19号証について
被請求人は,乙第17号証及び乙第18号証を提出して,受講申込者による受講の申込みがあったことを主張する。
しかしながら,被請求人は,審尋において求められている「受講申込者の受講料を支払った事実」,「受講証が発行されたことを示す事実」及び「会員番号並びに受講に必要なID及びパスワードが発行された事実」について,何ら示していない。
商取引が成立したとするには,受講者からの注文があり,被請求人から請求書が発行され,受講者からの入金が確認された事実を示す必要があるところ,注文があった事実のみでは,商標法第50条第2項に規定する「使用」,すなわち,商標法第2条第3項に規定されている使用を行っているとはいえない。
また,被請求人は,乙第19号証を提出して,受講申込者の学習記録であると主張する。
しかしながら,乙第19号証を確認するに,単にエクセル風の表が掲載されており,表題部分に「公認会計士 財務会計論 らくらく入門講座」と記載されているのみで,被請求人が主張するLEXに登録されている表であることを確認できず,証拠として信憑性に乏しいといわざるを得ない。
また,乙第19号証においては,氏名,ユーザーIDがいずれも黒塗りで記載されており,乙第17号証及び乙第18号証で示されている受講申込者であることの確認もできない。
(3)まとめ
以上述べたとおり,被請求人は,乙第10号証ないし乙第19号証の提出によっても,本件商標を要証期間に,本件審判の請求に係る第41類の指定役務のいずれかについて使用していたことを立証するに至っていない。
(4)被請求人の主張に対して
被請求人は,本件商標は商標登録された以上,一語であると主張し,イントネーションが異なることを根拠に,証拠資料として提出した「らくらく入門Web講座」と「らくらく入門」は,社会通念上同一と主張している。
しかしながら,被請求人が提出した証拠で示されている表示が,本件商標と同一であるかが判断されるべき内容であり,商標登録されているから一語であるとの主張は,使用されている態様との関係において根拠を有しないものであり,イントネーションが異なるため,社会通念上同一になるとの主張自体,失当であるといわざるを得ない。
請求人が,結合商標類否判断基準を示したのは,取引の実情として商標が分離して認識される場合の基準として示された裁判例であって,取引の実情を考慮して一体的に認識される商標が社会通念上分離して認識されることはなく,類似すらしない商標が,社会通念上同一ではないことを示したものである。
そして,被請求人が証拠において示している商標は,いずれも「らくらく入門講座」,「らくらく入門Web講座」であり,本件商標と社会通念上同一の商標ではない。

第3 被請求人の主張
被請求人は,結論同旨の審決を求めると答弁し,その理由を要旨以下のように述べ,証拠方法として,乙第1号証ないし乙第19号証を提出した。
1 答弁の理由
本件商標権者である被請求人は,要証期間に我が国において,本件審判の請求に係る指定役務中,「技芸・スポーツ及び知識の教授,資格認定試験・資格検定試験・就職試験その他認定・検定試験に関する講座の実施及びそれらの講座に関する情報の提供,資格認定試験・資格検定試験・就職試験その他認定・検定試験及びそれらの模擬試験その他教育に関する情報の提供」(以下「使用に係る役務」という場合がある。)について,本件商標を使用している。
(1)本件商標の使用者
被請求人(通称LEC)のウェブサイトにおけるオンラインショップ(E学習センター)のページには,中小企業診断士の第1次試験対策講座として,「1次試験対策 らくらく入門Web講座1級」,「1次試験対策 らくらく入門Web講座2級」及び「1次試験対策 らくらく入門Web講座3級」の各講座が紹介されている(乙2?乙4)。
そして,その紹介内容によれば,各講座は,1回当たり15分の講義が,1級では全120回,2級では全60回,3級では全20回という内容で,いずれもWeb動画を視聴するという受講形態であること,いずれの講座も専任講師が講義を担当していたこと,被請求人によって2012年8月10日から2013年9月30日まで販売され,2013年12月31日まで配信(提供)されたことが分かる。
同様に,被請求人のウェブサイトにおけるオンラインショップのページには,公認会計士の短答式試験の重要科目である「財務会計論」への対策講座として,「公認会計士 財務会計論 らくらく入門講座」が紹介されている(乙5)。
そして,その紹介内容によれば,同講座は,専任講師が講義を担当し,初級コース(3時間×5コマ),中級コース(3時間×11コマ),上級コース(3時間×9コマ)で構成され,コース別申込み・一括申込みのいずれも可能であること,被請求人によって2012年7月18日から2015年12月1日まで販売され,2015年12月31日まで配信(提供)されたことが分かる。
(2)使用に係る役務
被請求人は,中小企業診断士あるいは公認会計士という国家資格の認定試験への合格を目指す受験生に対し,相応の知識を教授する講座を提供する際の講座名として,「らくらく入門」を使用しているものであり,使用に係る役務に本件商標を使用しているといえる。
(3)使用に係る商標
乙第2号証ないし乙第5号証には,本件商標が記載されている。
(4)使用時期
乙第2号証ないし乙第4号証には,それぞれ「販売開始日 2012年8月10日 AM0:00」,「販売終了日 2013年10月1日 AM0:00」,乙第5号証には「販売開始日 2012年7月18日 AM0:00」,「販売終了日 2015年12月2日 AM0:00」と明記されている。
2 口頭審理陳述要領書(平成28年10月5日付け)
(1)商標法第2条第3項(使用)の該当性について
被請求人は,使用に係る役務に関して,被請求人のウェブサイト上のオンラインショップ紹介ページ(乙2?乙5)において,当該役務の内容をなす提供講座として,「1次試験対策 らくらく入門Web講座1級」,「1次試験対策 らくらく入門Web講座2級」及び「1次試験対策 らくらく入門Web講座3級」(以上,中小企業診断士の第1次試験対策講座)並びに「公認会計士 財務会計論 らくらく入門講座」(公認会計士の短答式試験の重要科目である「財務会計論」への対策講座)の各講座の概要を「広告」するとともに講座の受講料を「価格表」で表示し,万人が閲覧できる状態に置いている。
よって,被請求人の行為は,「役務に関する広告,価格表若しくは取引書類に標章を付して展示し,若しくは頒布し,又はこれらを内容とする情報に標章を付して電磁的方法により提供する行為」(商標法第2条第3項第8号)に該当する。
(2)請求人の主張に対する反論
本件商標は,「らくらく入門」であるのに対し,使用に係る商標は,「らくらく入門Web講座1級」,「らくらく入門Web講座2級」,「らくらく入門Web講座3級」及び「らくらく入門講座」であるところ,請求人は,本件商標と使用に係る商標とは,社会通念上同一の商標でない旨主張する。
しかし,本件商標を構成する「らくらく入門」の文字からは,請求人が指摘するように,「楽に学問・技芸などを学び始める」あるいは「楽に学問の初歩を勉強する」という観念が生じる。
そして,上記「らくらく入門」を基本として,これに講座の提供方法を付記すれば,「らくらく入門ビデオ講座」や「らくらく入門Web講座」というように使用できるし,また,内容の難易度を示す単語を付記すれば,「らくらく入門Web講座1級」,「らくらく入門Web講座2級」,「らくらく入門Web講座3級」となるのであり,さらに,受講生に提供する役務の種類をも明示する場合,講師による一方的講義であれば「らくらく入門講座」,講師を囲んだ少人数の討論であれば「らくらく入門ゼミ」又は「らくらく入門演習」,答案練習会であれば「らくらく入門答練」となると考えられ,いずれも本件商標を使用しているといって差し支えない。
登録商標と使用に係る商標の同一性について,請求人の論法によれば,商標権者は,登録商標と寸分違わぬものを使用するのでなければ商標権の保護を受け得なくなることになる。その結果,商標登録の意義は激減し,商標権者は,将来のあらゆる使用の組合せを考えて,何百通り・何千通りもの類似商標を一挙に登録しなければならなくなり,商標登録事務を渋滞させる。
(3)要証期間の使用の立証について
乙第2号証ないし乙第5号証の各右下にある日付の表示は,データを紙に印刷した日付を示し,要証期間の日付ではない。被請求人は,現時点において,過去の要証期間の使用の立証を尽くしており,請求人の主張は,「過去の事実の立証」方法において,無理難題を要求するものにすぎない。
3 上申書(平成28年11月24日付け)
(1)本件商標の使用に関する新たな証拠について
乙第6号証は,「中小企業診断士 資格説明会のご案内」チラシであり,当該チラシは,被請求人の運営する各本校において開催される資格説明会及び無料体験講座の2013年9月分の予定スケジュールを告知するものであって,その最下段に付記されているように,2013年8月31日に発行されたものである(有効期限は同年9月30日)。
そして,上記チラシには,資格説明会参加者特典の1つとして,中小企業診断士の中心科目である「企業経営理論」,「財務・会計」及び「運営管理」の3科目の基礎が学べる「らくらく入門Web講座」を無料進呈する旨が記載されているが,当該講座は,中小企業診断士の1次試験対策である「らくらく入門Web講座3級」(乙4)を意味する。しかも,当該無料進呈の対象は,「講座」であって,書籍やDVDといった個別の「商品」ではない。
したがって,上記チラシ(乙6)は,被請求人において,要証期間に,確かに「らくらく入門Web講座(3級)」が存在・開設されていたこと,そして,「知識の教授」及び「資格試験に関する講座の実施」という指定役務の提供に関して,本件商標が使用されていたことを証するものである。
(2)審尋への回答について
ア 要証期間に受講申込みがあったこと等
被請求人が実施した「公認会計士 財務会計論 らくらく入門講座」(乙5)の受講申込み状況は,乙第7号証のとおりである。
乙第7号証は,被請求人の保有する社内データベース管理システム(LEX)で検索した結果が表示された画面を印刷したものであり(個人情報保護のため,申込者の氏名の一部と電話番号の一部をマスキングしてある),画面右端の「受付地名称」欄中の「WEB営業」とは,ウェブサイトからの申込みを意味する。
そして,上記検索結果によれば,Web動画+音声ダウンロードクラスには6名,DVDクラスには1名,スマホクラスには1名の受講申込みがあったことが分かる。
したがって,要証期間に,確かに「公認会計士 財務会計論 らくらく入門講座」が開設されており,同講座の受講申込みがあったのである。
イ 使用テキスト等
乙第8号証は,「公認会計士 財務会計論 らくらく入門講座」(乙5)の初級編での使用テキストであり,乙第9号証は,同講座の初級編の講義レジュメ(担当講師がパワーポイントを使用して講義をする際のパワーポイントの画面集)である。
上記使用テキスト及び講義レジュメのいずれも,その表紙部分と1ページ目の冒頭部分に,本件商標と社会通念上同一である「らくらく入門講座」という商標が付されている。
(3)使用に係る商標の「らくらく入門講座」について
「らくらく入門講座」は,被請求人が提供する講座の名称である。
すなわち,被請求人は,「らくらく入門講座」を講座という役務を提供する際の標識として使用しているのである。受講生は,あくまで,対価を払って講座を購入しているのが実態であって,テキストやDVDという個々の「商品」を購入しているのではない。テキストやDVDは,同講座において使用される教材の一部をなすにすぎない。
したがって,被請求人が「らくらく入門講座」をテキストやDVDといった「商品」の商標として使用していると請求人が指摘するのであれば,その指摘は当たらない。
以上述べてきたように,被請求人において「らくらく入門講座」が要証期間に確かに存在し,この講座が確かに開設されていたこと,そして,被請求人は,商品ではなくて役務(知識の教授,講座の実施,講座や資格試験に関する情報の提供)に関して「らくらく入門」の商標を使用していたことが分かる。
4 回答書(平成29年5月2日付け)
(1)乙第5号証の4葉目にある「受講形態ほかを選択し,この講座を申し込む」の内容等について
乙第5号証に記載の商品は,既に販売を終了しているため,「×この商品は販売を終了しました」という表示になっており,これより先の画面へ進むことができない。
これに対し,現に販売中の商品の場合は,「選択した内容で買い物かごに入れる」という表示になっており(乙10の1葉目),当該表示をクリックすると「Web(動画)・音声ダウンロード講座動作環境チェックテスト」の画面に進み(乙11),ここで「確認」ボタン(乙11の1葉目)をクリックすると「買い物かご」の画面に切り替わり(乙12),申込者は,この画面を見て自己の購入しようとしている商品,価格,支払合計額等を確認し(乙12の1葉目),その後,1葉目上方に太い右向き矢印で記された流れ(買い物かご⇒申込規定⇒注文情報入力⇒決済方法入力⇒注文情報確認⇒注文完了)に沿って申込手続を誘導される。
具体的な手続の流れは,上記「買い物かご」の画面(乙12)1葉目下方の「次に進む」ボタンをクリックすると,オンラインショップでの商品購入に必要不可欠な「Myページログイン」の画面(乙13)が現れるので,既に「Myページ登録」を済ませている申込者は,そのままMyページIDとパスワードを入力してログインし,商品を購入する。
他方,被請求人のオンラインショップを初めて利用する申込者は,上記「Myページログイン」の画面(乙13)にある「登録する」のボタンをクリックして「Myページ登録(お客様情報検索)」の画面(乙14)が現れた後,その画面にある「こちらからご登録ください」ボタンをクリックして現れる「お客様情報登録」の画面(乙15)において,メールアドレスや氏名等のほか,任意で設定する「MyページID」や「パスワード」を入力し,「マイページ利用規約」を読んだ後に,「上記規約に同意のうえ確認」のボタンをクリックして,自己の「MyページID」や「パスワード」を確定させた上で,当該「MyページID」や「パスワード」を入力し,ログインして,商品を購入する。
また,被請求人の発行する会員番号は有しているものの,そのオンラインショップに係る「Myページ登録」を済ませていない申込者は,上記「Myページ登録(お客様情報検索)」の画面(乙14)において,自己の会員番号及びメールアドレスを入力し,「お客様情報を検索」のボタンをクリックして,自己の氏名や生年月日等の既登録のお客様情報を呼び出した後,上記と同様の手続をして,自己の「MyページID」や「パスワード」を確定,入力及びログインして,商品を購入する。
このように,被請求人のオンラインショップでの申込者は,商品購入の前提条件として,「MyページID」及び「パスワード」を登録することが必須となっており,その登録後に,自己の「MyページID」及び「パスワード」を用いて「Myページ」にログインすることにより,商品の購入,「Online Study SP」を起動させてWeb講座の視聴をする仕組みになっている(乙16)。
(2)乙第7号証に示された受講を申し込んだ者が,クラス名(WEB+DL,DVD又はスマホの受講形態)その他の必要事項を入力して,「受講形態ほかを選択し,この講座を申し込む」を利用して申込みをした事実等について
ア 受講申込者が,「注文情報確認」画面において,「上記を了承のうえ,この内容で決済する」ボタンをクリックすると,注文(申込み)が確定し(乙12の2葉目),ほぼ同時に,申込者の注文内容が,被請求人のオンラインショップ管理システム上に「注文基本情報」として登録され(乙17),その後,被請求人から申込者あてに「注文内容確認メール」が自動的に発信される(乙18)。
イ 上記「注文基本情報」(乙17)の内容が,直後の被請求人の営業時間中に,LEX(被請求人の保有する社内データベース管理システム)へ登録されたものが,乙第7号証である。
ただし,申込者が,支払方法として,コンビニエンスストアでの支払いを選択した場合,LEXへの登録は,その支払完了後となるため,「注文基本情報」(乙17)の注文日時や「注文内容確認メール」(乙18)の送信日時と,LEX(乙7)の受付日とのずれは大きくなる。
ウ 乙第17号証の1葉目の申込者(泰子)を例にとると,当該申込者が,乙第5号証の画面を見て商品を選択し,買い物かごに入れ,申込みの手順を踏んで,注文内容の最終確認を行った上で注文確定ボタンをクリックしたのは,平成27年3月7日18時7分7秒であり,その後,同日18時8分4秒に,被請求人から同人あてに「注文内容確認メール」が発信されたことが分かる(乙18の1葉目)。
なお,乙第17号証は,被請求人の社内文書であるため,申込者の購入した商品名がつまびらかでないが,商品コードや注文番号その他が乙第18号証と完全に一致している。
エ 以上より,乙第7号証に示された申込者が,クラス名(WEB+DL,DVD又はスマホの受講形態)その他の必要事項を入力して,乙第5号証に示されたウェブサイトを介して「公認会計士 財務会計論 らくらく入門講座」の受講を申し込んだことが分かる。
なお,上記講座をWEB又はスマホで受講した者の学習記録(最終視聴日時と総視聴時間)は,乙第19号証のとおりである。
(3)請求人の主張について
請求人は,被請求人の提出した各証拠に表示されている「らくらく入門Web講座」や「らくらく入門講座」が本件商標「らくらく入門」とは異なるものであって,社会通念上同一の商標ではない旨を頻繁に主張している。
しかし,本件商標は,そもそも,各別に帰属する2個の商標の類似性が間題となっているのではない。ある人に帰属する登録商標があって,その人(同一人)が当該登録商標に若干の文字を付加して使用している実績がある場合に,果たして,その使用は社会通念上「登録商標を使用している」といえるか,という問題である。
すなわち,社会通念の問題であって,類否判断の問題ではなく,結局,使用されている標章に接した者が,商標権者を想起するか否か,使用されている標章が商標の機能たる出所識別機能を発揮しているか否かに尽きる。
本件商標「らくらく入門」は,これで商標登録された以上,一語と化しているのであり,そのイントネーションは,「ら」を低く発音し,「くらくにゅ」を高く,しかも同じ高さで発音し,「うもん」を低く発音する。
仮に,「らくらく」と「入門」が分離した別々の語であるとすれば,そのイントネーションは,「ら」を低く,「くらく」を高く発音し,「にゅ」を低く,「うもん」は高く発音するはずであるが,使用に係る商標のうち,少なくとも「らくらく入門Web講座」については,「らくらく入門」の部分のイントネーションが,上記一語としてのイントネーションと軌を一にするものであり,「らくらく入門」の部分が正に,出所として被請求人を想起させるのである。
したがって,被請求人は,少なくとも「らくらく入門Web講座」によって,社会通念上,本件商標を使用しているものといえる。

第4 当審の判断
1 本件商標の使用について,被請求人の主張及び同人が提出した証拠によれば,以下の事実が認められる。
(1)本件商標権者は,中小企業診断士や公認会計士などといった国家資格の認定試験の合格を目指す受験者に対し,相応の知識を教授する講座を提供しており,そのような講座の受講を希望する者は,本件商標権者が開設しているウェブサイト(LEC On-line)を通じて受講を申し込むことができる(乙2?乙5,乙10)。
上記ウェブサイトの画面上には,講座の概要として,講座のねらいやポイントのほか,講義回数,受講方法(Web動画又はDVD),受講価格,申込受付期間(販売開始日及び販売終了日)等が記載されているものであり,受講を希望する者は,それらの記載内容を確認した上で,当該画面上にある「お申込み」の項目中の「選択した内容で買い物かごに入れる」ボタンを押下して,申込みに必要な事項の入力画面へアクセスし,当該必要事項を入力後に申込内容を確定し,受講申込みする(乙10?乙16)。
なお,上記講座の申込みをするにあたっては,予め氏名,メールアドレス,MyページID,パスワード等を入力して,本件商標権者の開設するウェブサイトの利用に係るアカウントを取得(「Myページ登録」)する必要がある(乙15)。
(2)本件商標権者は,上記(1)にいう講座の申込みについて,コンピュータシステムにより,管理している。
具体的には,講座の申込みがあった場合,その申込みに係る注文内容が「注文基本情報」として登録され(乙17),その後,申込者あてに「注文内容確認メール」が自動送信される(乙18)。また,当該「注文基本情報」の内容は,申込みがされた後の本件商標権者の営業時間中に,その保有に係る社内データベース管理システム(LEX)にも登録されるため,当該システムを用いることにより,例えば,特定の講座に係る申込者(受講者)の氏名,会員番号,電話番号,受付日,受付地(受付形態)等を検索して,その結果を表示することなどを行うことができる(乙7)。
なお,本件商標権者が管理するコンピュータシステムでは,申込者がWeb動画による受講をした場合には,その学習記録(最終視聴日時及び総視聴時間)も管理している(乙19)。
(3)本件商標権者は,2012年(平成24年)7月18日から2015年(平成27年)12月1日までの間を販売期間として,自己のウェブサイト上に,公認会計士に関する「らくらく:公認会計士 財務会計論 らくらく入門講座」と称する講座(以下「本件講座」という。)の広告を掲載した(乙5)。
当該講座(講座コード:EB76401)は,初級,中級及び上級の3段階に分かれていて,いずれの講座もWeb動画又はDVDによる受講が可能であり,例えば,Web動画によるもの(Web動画+音声DLクラス)は,初級が2012年(平成24年)8月22日から,中級が同年8月29日から,上級が同年9月19日から,いずれも2015年(平成27年)12月31日までの間,視聴することができる。
なお,上記広告(乙5)は,その内容に係る講座の販売期間経過後の2016年(平成28年)2月3日に紙出力されたものであるため,「お申込み」の項目には,「この商品は販売を終了しました」との表示がされている。
(4)本件講座には,2012年(平成24年)12月25日から2015年(平成27年)9月18日までの間に,初級について2名,中級及び上級について1名,一括(初級から上級までの全て)について4名,それぞれ本件商標権者が開設するウェブサイトを通じて申込み(DVDによる受講を希望する1名を除き,Web動画によるもの(スマホを含む。)。)がされた(乙5,乙17,乙18)。
そして,Web動画によるもの(スマホを含む。)を申し込んだ者は,いずれもその受講(再生)をしている(乙19)。
2 上記1において認定した事実によれば,以下のとおり判断できる。
本件商標権者は,少なくとも2012年(平成24年)12月25日から2015年(平成27年)9月18日までの間,自己のウェブサイト上において,所定の期間,本件講座の受講申込みを受け付け,その講座を提供する旨を内容とする広告(乙5)を掲載したといえる。
また,本件講座については,「らくらく:公認会計士 財務会計論 らくらく入門講座」との名称が付されているところ,当該名称は,全体として,極めて冗長であり,また,「らくらく」と「公認会計士 財務会計論 らくらく入門講座」との間には「:」(コロン)の記号があることから,両者は,視覚上,分離して観察され得るものであり,さらに,後者のうち,「公認会計士」,「財務会計論」及び「講座」の各文字部分は,本件審判の請求に係る指定役務中の「知識の教授,資格認定試験・資格検定試験・就職試験その他認定・検定試験に関する講座の実施及びそれらの講座に関する情報の提供」との関係においては,いずれも役務の質を表すものとして一般に用いられる語といえることからすれば,その構成中の「らくらく入門」の文字部分が自他役務の識別標識としての要部として看取,理解されるものとみるのが相当である。
そして,上記「らくらく入門」の文字は,本件商標と社会通念上同一のものと認められる。
加えて,上記広告に係る本件講座は,本件審判の請求に係る指定役務中の「知識の教授,資格認定試験・資格検定試験・就職試験その他認定・検定試験に関する講座の実施及びそれらの講座に関する情報の提供」に含まれるものと認められる。
してみれば,本件商標権者は,要証期間に,本件審判の請求に係る指定役務中の第41類「知識の教授,資格認定試験・資格検定試験・就職試験その他認定・検定試験に関する講座の実施及びそれらの講座に関する情報の提供」に関する広告に,本件商標と社会通念上同一の商標を付して電磁的方法により提供したということができ,本件商標権者による当該行為は,役務に関する広告を内容とする情報に,標章を付して電磁的方法により提供する行為(商標法第2条第3項第8号)に該当する。
3 まとめ
以上のとおり,被請求人は,本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において,本件商標権者が,その請求に係る第41類「知識の教授,資格認定試験・資格検定試験・就職試験その他認定・検定試験に関する講座の実施及びそれらの講座に関する情報の提供」について,本件商標と同一の商標(社会通念上同一と認められる商標を含む。)を使用していたことを証明したものと認められる。
したがって,本件商標は,その指定商品及び指定役務中,第41類の指定役務について,商標法第50条の規定により,取り消すことができない。
よって,結論のとおり審決する。
審理終結日 2017-09-19 
結審通知日 2017-09-22 
審決日 2017-10-04 
出願番号 商願2007-93265(T2007-93265) 
審決分類 T 1 32・ 1- Y (X41)
最終処分 不成立  
特許庁審判長 青木 博文
特許庁審判官 田中 敬規
田中 亨子
登録日 2009-01-23 
登録番号 商標登録第5199818号(T5199818) 
商標の称呼 ラクラクニューモン、ラクラク、ニューモン 
代理人 東谷 幸浩 
代理人 庄野 功章 
代理人 林 栄二 
代理人 大友 温子 
代理人 三浦 大 
代理人 正林 真之 

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