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審決分類 |
審判 一部申立て 登録を維持 W09 審判 一部申立て 登録を維持 W09 審判 一部申立て 登録を維持 W09 |
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管理番号 | 1331498 |
異議申立番号 | 異議2017-900113 |
総通号数 | 213 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標決定公報 |
発行日 | 2017-09-29 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2017-04-07 |
確定日 | 2017-08-24 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 登録第5910801号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 登録第5910801号商標の商標登録を維持する。 |
理由 |
第1 本件商標 本件登録第5910801号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成からなり、平成28年6月27日に登録出願され、第9類「トランシーバー,トランシーバーの付属品,無線機用スピーカー付きマイクロホン,無線機用マイクロホン,無線機用充電器,無線機用キャリングケース,電気通信機械器具,無線機器,マイクロフォン,イヤホン,ドライブレコーダー,防犯警報装置,防犯監視装置,防犯監視カメラ,防犯用機械器具,自動車電話機用ヘッドセット装置,車載用モニター付き監視装置」を指定商品として、同年12月12日に登録査定、平成29年1月6日に設定登録されたものである。 第2 引用商標 登録異議申立人(以下「申立人」という。)が登録異議の申立ての理由として引用する国際登録第1000389号商標(以下「引用商標」という。)は、別掲2のとおりの構成からなり、2008年(平成20年)2月20日にGermanyにおいてした商標登録出願に基づいてパリ条約第4条による優先権を主張し、同年8月18日に国際商標登録出願、第9類「Sound measurement devices, sound amplifiers; empty casings for the storage of sound, image and data carriers; storage boxes (adapted) for sound, image and data carriers; recording discs; data carriers for the storage of information, data, images and sound, insofar as these are contained in this class; portable stereos; DVD and CD players and recorders; headphones, loudspeakers, loudspeaker boxes, megaphones for loudspeakers, monitors, video screens; telephone apparatus, mobile telephones, telephone receivers; transmitters for electronic signals; sound registering devices; bags for laptop computers.」を含む第9類、第15類、第16類、第18類、第25類、第35類、第38類、第39類、第41類、第42類及び第45類に属する国際登録に基づく商標権に係る商標登録原簿に記載のとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務として、平成23年2月18日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。 第3 登録異議の申立ての理由(要旨) 申立人は、本件商標の指定商品中、第9類「トランシーバー,トランシーバーの付属品,無線機用スピーカー付きマイクロホン,無線機用マイクロホン,無線機用充電器,無線機用キャリングケース,電気通信機械器具,無線機器,マイクロフォン,イヤホン,ドライブレコーダー,防犯監視装置,防犯監視カメラ,自動車電話機用ヘッドセット装置,車載用モニター付き監視装置」についての登録は、商標法第43条の2第1号により取り消されるべきであると申し立て、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第9号証を提出した。 1 商標法第4条第1項第11号について (1)申立人に関する取引の実情 申立人は、1999年にドイツにおいて設立された法人であり、2001年に、MacintoshとWindows用のループベースのミュージックシーケンサーソフトウェアである「Ableton Live」をリリースし、以後、世界各国のミュージシャン、サウンド・デザイナー、アーティスト・コミュニティに使用されているものである(甲3)。 申立人は、世界28力国、200名を超えるスタッフを有し、かかるスタッフは、ベルリン本社とロサンゼルス支社に分かれて業務に従事しているが、そのほとんどは、ミュージシャン、プロデューサー、又は、ディスクジョッキーとしても活動している。 我が国における申立人の代理店は、株式会社ハイ・リゾリューションであり、そのホームページにおいて、申立人の商品が真っ先に紹介されている(甲4)。また、その製品プライスリスト及びオンラインストアにおいて、申立人の製造販売に係る商品が掲載されている(甲5、甲6)ほか、日本の著名なDJ、音楽プロデューサーであるTaku Takahashiが「Ableton LiveとPushを使う理由」と題されたビデオを公開している(甲4)。なお、かかる商品は、日本全国の21店舗で取り扱われている(甲7)。 このように、申立人の製造販売に係る商品の需要者は、音楽専門家であって、極めて限定的であるが、かえって需要者が限定的であるがゆえに、その需要者にとって、引用商標は、周知な商標となっている。 (2)商標権者に関する取引の実情 他方、本件商標の商標権者は、1991年10月に設立された日本法人であって、ドライブレコーダー、防犯カメラ、トランシーバー、アウトドア用品、及び、スーツケースの製造販売を業とするものであり(甲8)、本件商標は「Bluetooth対応ワイヤレスイヤホンマイク」について使用されているものである(甲9)。 (3)商標法第4条第1項第11号について 商標の類否判断に際しては、商標法第27条第1項の規定に基づき、願書に記載した商標に基づいて判断されるべきであるが、登録商標が多少変更して使用されることがあり得ることは経験則上明らかであり、パリ条約第6条の5C(2)の規定もそのことを前提としている。また、商標の類否判断は、時と処を異にする離隔的観察方法によるべきであって、直接対比観察によるべきではない。したがって、商標の外観上の類否判断に際しては、その書体の特徴等の観点から判断されるべきではなく、専ら、その構成文字列を中心に判断されるべきである。 そこで、本件商標と引用商標を比較すると、本件商標は、欧文字「ABLEON」を書してなるものであるのに対し、引用商標は、欧文字「ableton」を書してなるものであり、構成文字中、冒頭の「ABLE」の4文字、及び、末尾の「ON」を共通にしており、構成文字の相違は、大文字、小文字の差こそあれ、中間に位置する欧文字「T」の有無でしかなく、外観上、相紛れるおそれのあるものである。 次に、本件商標に対し付与された称呼は、ローマ字読み風の「アブレオン」であるが、それのみならず、本件商標を構成する欧文字が「可能な、有能な」等を意味する「ABLE」と、「の上に」等を意味する「ON」であるから、そこから「エイブルオン」の称呼をも生ずるものである。因みに、本件商標の商標権者は、本件商標から生ずる称呼を何等特定せずに使用しており、かかる称呼が発生し得ることは客観的に明らかである。他方、引用商標は、申立人の名称からもわかるように「エイブルトン」である。かかる「エイブルオン」と「エイブルトン」を比較すると、6音の称呼音数中、5音を共通にしており、相違するのは5音目の「オ」と「ト」である。しかも、かかる相違音は、称呼識別上、さほど強い印象を与えしめない中間に位置しており、かつ、母音「オ」が共通する。さらに、両称呼の強めアクセントは、語頭の「エ」に存し、明瞭に撥音、聴取される「ブル」の音が続く。したがって、称呼上、相紛れ聞かれるおそれのあるものである。 さらに、観念については、形式的、杓子定規的な認定からすると、両商標とも特定の観念を生じない造語と判断されるところであるが、本件商標の需要者、取引者の受ける印象、連想等を総合して考慮するならば、本件商標は、上記したとおり、「可能な、できる」を意味する英単語「ABLE」と「の上に」を意味する英単語「ON」からなるものであるから、その全体構成からは、「何かの上にできる」等の印象を与えるものであり、また少なくとも冒頭の「ABLE」から「可能な、できる」等に由来する印象を与えるものである。実際、本件商標を付した商品は、充電器の上にイヤホンマイクが装着できる構成であり、「(充電器)の上に(装着)できる」という発想に基づくものであるが容易に想起できる。 他方、引用商標は、「可能な、できる」等を意味する英単語「able」と、「重量の単位」である「ton」を組み合わせたものであることを容易に認識、理解されるものであって、その全体から「大量にできる」等の印象を与えるものであり、両者は「(何かが)できる」という印象を与える点で共通する。 したがって、両商標は、外観、称呼、及び、観念の点について、少なくとも、類似しないとは断定することができないものであって、その印象、連想、記憶を総合して考察するときには、相紛れるおそれのある類似のものである、と言わざるを得ない。 そして、本件商標の指定商品中、「防犯警報装置」及び「防犯用機械器具」を除く指定商品は、引用商標に係る指定商品及び指定役務中、少なくとも「sound measurement devices, sound amplifiers; empty casings for the storage of sound, image and data carriers; storage boxes (adapted) for sound, image and data carriers; recording discs; data carriers for the storage of information, data, images and sound, insofar as these are contained in this class; portable stereos; DVD and CD players and recorders; headphones, loudspeakers, loudspeaker boxes, megaphones for loudspeakers, monitors, video screens; telephone apparatus, mobile telephones, telephone receivers; transmitters for electronic signals; sound registering devices.」に類似する。 2 結び 以上のとおり、本件商標は、引用商標に類似するにもかかわらず、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものである。 第4 当審の判断 1 本件商標について 本件商標は、前記第1のとおり、「ABLEON」の欧文字を書してなるところ、該文字は、英語を始めとする辞書類に掲載されておらず、既成の語とはいえないものであるから、特定の意味や観念を有しない一種の造語と認められる。また、これよりは、構成文字に相応してローマ字風又は英語風に「アブレオン」及び「エイブルオン」の称呼が生ずるものと認められる。 2 引用商標について 引用商標は、前記第2のとおり、「ableton」の欧文字を書してなるところ、該文字は、英語を始めとする辞書類に掲載されておらず、既成の語とはいえないものであるから、特定の意味や観念を有しない一種の造語と認められる。また、これよりは、構成文字に相応してローマ字風又は英語風に「アブレトン」及び「エイブルトン」の称呼が生ずるものと認められる。 3 本件商標と引用商標の類否について (1)外観について 本件商標と引用商標を比較するに、それぞれの文字構成は上記のとおり「ABLEON」及び「ableton」であり、全体として大文字と小文字の違いがあり、5文字目以降においても「ON」と「ton」の差異を有していることから、かかる差異によって外観上区別できるものである。 (2)称呼について 本件商標からは「アブレオン」及び「エイブルオン」の称呼が、引用商標からは「アブレトン」及び「エイブルトン」の称呼が生ずるところ、「アブレオン」と「アブレトン」の称呼を比較するに、第4音において「オ」と「ト」という違いを有するところ、「オ」が舌の後ろの方で響きを作る有声の開放音で、はっきりと澄んだ音であるのに対し、「ト」は上歯茎に舌を付けてから離すときに生ずる強く響く破裂音であることから、共に5音という比較的短い音構成においては,該差異音が称呼全体に与える影響は少なくなく,両称呼をそれぞれ称呼したときは,全体の音調,音感が相違し,十分に聴別し得るものである。 また、「エイブルオン」と「エイブルトン」の称呼の比較においても、第5音における「オ」と「ト」という違いは、全体音数で5音と6音という前述の比較とは全体で1音の相違はあるものの、前述の判断と同様に該差異音が称呼全体に与える影響は少なくなく,両称呼をそれぞれ称呼したときは,全体の音調,音感が相違し,十分に聴別し得るものである。 そして、「アブレオン」と「エイブルトン」、「エイブルオン」と「アブレトン」のそれぞれの称呼の比較においては、構成音、音数において明確な差異を有するものであるから、それぞれを一連に称呼しても、称呼において相紛れるおそれはないものである。 (3)観念について 観念においても、本件商標と引用商標とは、いずれも特定の観念を生じることのないものであるから、観念において相紛れるおそれはないものである。 (4)類否判断 以上によれば、本件商標と引用商標とは、外観、称呼及び観念のいずれの点においても相紛れるおそれのない非類似の商標というべきである。 その他、本件商標と引用商標とを類似するものとすべき理由は見いだせない。 4 まとめ 以上のとおり、本件商標の登録は、登録異議の申立てに係る指定商品について、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものではないから、同法第43条の3第4号により、維持すべきものである。 よって、結論のとおり決定する。 |
別掲 |
別掲1(本件商標) 別掲2(引用商標) |
異議決定日 | 2017-08-14 |
出願番号 | 商願2016-69186(T2016-69186) |
審決分類 |
T
1
652・
263-
Y
(W09)
T 1 652・ 261- Y (W09) T 1 652・ 262- Y (W09) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 池田 光治 |
特許庁審判長 |
酒井 福造 |
特許庁審判官 |
今田 三男 大森 友子 |
登録日 | 2017-01-06 |
登録番号 | 商標登録第5910801号(T5910801) |
権利者 | 株式会社エフ・アール・シー |
商標の称呼 | アブレオン |
代理人 | 中井 潤 |
代理人 | 古関 宏 |