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審決分類 審判 一部無効 商53条2項使用権者の不正使用により取り消された商標の再登録 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) W25
管理番号 1331358 
審判番号 無効2016-890034 
総通号数 213 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2017-09-29 
種別 無効の審決 
審判請求日 2016-05-27 
確定日 2017-07-18 
事件の表示 上記当事者間の登録第5667913号商標の商標登録無効審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 登録第5667913号の指定商品中,第25類「被服」についての登録を無効とする。 審判費用は,被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件商標は,「VANMATE」の文字を,紺色で別掲のとおりに表したものであり,平成25年11月29日に登録出願,同26年4月14日に登録査定,第25類「被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,仮装用衣服,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」を指定商品として,同年5月9日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
登録第869495号商標(以下「引用商標」という。)は,「VANMATE」の欧文字を表したものであり,昭和43年1月16日に登録出願,第17類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品を指定商品として昭和45年8月19日に設定登録されたものである。
その後,4回に亘り,商標権の存続期間の更新登録がなされ,平成22年9月22日に,第25類「洋服,コート,セーター類,ワイシャツ類,寝巻き類,下着,水泳着,水泳帽,和服,エプロン,えり巻き,靴下,ゲートル,毛皮製ストール,ショール,スカーフ,足袋,足袋カバー,手袋,布製幼児用おしめ,ネクタイ,ネッカチーフ,バンダナ,保温用サポーター,マフラー,耳覆い,ずきん,すげがさ,ナイトキャップ,防暑用ヘルメット,帽子」を始め,第5類,第9類,第10類,第16類,第17類,第20類ないし第22類及び第24類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品を指定商品とする指定商品の書換登録がされた。
さらに,平成25年11月21日を審判請求の登録日とする商標法第51条第1項の規定による取消審判(平成25年11月6日に審判の請求,審判番号:2013-300941)により,引用商標の登録を取り消す旨の審決が,平成28年5月9日に確定している。

第3 請求人の主張
請求人は,結論同旨の審決を求め,その理由を要旨次のように述べ,証拠方法として,甲第1号証から甲第8号証(枝番号を含む。)までを提出した。
1 本件商標を無効にすべき具体的理由
(1)本件商標の出願の経緯
本件商標は,被請求人より平成25年11月29日付で出願され,平成26年5月9日付で登録された。本件商標の出願日は,請求人が行った引用商標の不正使用の取消審判の請求の登録日(平成25年11月21日)の直後である。
被請求人は,上記取消審判が請求されたことを知ったか又は取消審判の請求が有り得ることを察し,その場合,引用商標の取消は免れ得ないと考え,引用商標と商標自体が類似し,指定商品においても類似する本件商標を出願したものと推測される。
また,上記不正使用による取消審判は,平成28年3月31日に審決がなされ,引用商標の登録は取り消され,これが確定している。
本来なら,不正使用の取消審判が請求され,当該取消審決が確定したならば,商標権者であったものは当該審決から5年を経過するまでは,取消された商標と同一又は類似する商標であって,同一又は類似の商品を指定商品とする商標登録出願は登録できない。
また,仮に出願し,登録されたとしても,商標法第51条第2項を根拠条文に無効審判の請求されることにより,当該登録は無効となる。
これらの規定は,商標を不正に使用した者に対する制裁規定である。
しかしながら,上記取消審判の審決が確定する前の商標登録出願による商標登録の場合,当該登録を無効にする根拠条文は明確に規定されていない。
このことを奇貨として,被請求人は,上記取消審判の審決が確定する前に,引用商標と類似する商標であって,同?又は類似する商品を指定商品とする本件商標を,上記取消審判の請求の登録直後に出願したものである。
このことは,被請求人の法の規定が欠けていることを巧みに利用する不当な行為である。
また,本件商標の審査においては,本件商標と同一又は類似する登録商標の存在の有無を調べれば,引用商標の存在が分かったものであり,さらに,引用商標の原簿を確認すれば引用商標に取消審判が請求されていることが分かり,審査を中断し,当該取消審判の結果を待って,本件商標の登録を拒絶すべきものであった。
(2)本件商標と引用商標との類否について
本件商標は,欧文字の一部丸字体で「VANMATE」とー連に横書きし,最初の「V」の一字を他の文字「ANMATE」よりやや大きく構成したものである。
一方,引用商標は,欧文字の角ゴシック体で「VANMATE」と各文字同じ大きさで一連に横書きしたものである。
本件商標と引用商標を比べると,両商標の外観においては,語頭の「V」の文字の大きさと書体が異なるが,記載されているアルファベットは完全に同一であり,少なくとも類似であることは明らかである。
また,本件商標と引用商標からは,同一の「ヴァンメイト」又は「バンメイト」の称呼が生じる。
さらに,観念においては,本件商標及び引用商標は,造語であって特定の観念を生じさせるものではないが,これらの商標から観念が生じるとした場合,両商標を構成するアルファベットが完全に同一である以上,これらの商標から生じる観念も同一のものと思われる。
これらのことから,本件商標と引用商標とは,類似することは明らかである。
次に,本件商標の指定商品中の第25類の「被服」と,引用商標の第25類「洋服,コート,セーター類,ワイシャツ類,寝巻き類,下着,水泳着,水泳帽,和服,エプロン,えり巻き,靴下,ゲートル,毛皮製ストール,ショール,スカーフ,足袋,足袋カバー,手袋,布製幼児用おしめ,ネクタイ,ネッカチーフ,バンダナ,保温用サポーター,マフラー,耳覆い,ずきん,すげがさ,ナイトキャップ,ヘルメット,帽子」の指定商品とは,同一又は類似関係にあることは明らかである。
(3)「VANMATE」商標について
請求人は,商標「VAN/・JAC・(但し,『JAC』は『VAN』に比べ小さい文字)」を長年にわたって被服等に使用して周知商標となっている。
一方,被請求人は,引用商標を所有していたものである。
請求人の管理会社であるケントジャパン株式会社(以下「ケントジャパン社」という。)は,平成25年,インターネット上で被請求人が使用する引用商標の着色及び字体の大きさを一部変えた商標を付した商品が販売されているのを発見し,平成25年6月10日,被請求人の担当部長らと面談し,被請求人の行為は不正競争防止法に違反するものであるので販売を中止するよう申し入れ,かつ,損害賠償を請求した。
また,同年6月14日,被請求人の第一販売部長がケントジャパン社を訪れ,「VANMATEブランド展開について」と題する書面を提出し,上記の行為,すなわち,被請求人の引用商標の変形使用についてケントジャパン社に謝罪を行った。
その後,両者の示談交渉がまとまらず,ケントジャパン社は,被請求人を不正競争防止法違反で東京地方裁判所へ提訴し,平成27年7月,被請求人との間で和解が成立した。
その間,請求人は,被請求人が所有する引用商標について,平成25年11月6日付で,商標法第51条第1項に基づく不正使用の取消審判の請求を行い,平成28年3月31日付で取消審決がなされたものである。
以上の一連の経緯を見ると,被請求人は,本件商標の出願前に,所有する引用商標に対し,ケントジャパン社又は請求人が,取消審判を請求する可能性があり,その審判によって登録を取り消される可能性があることを充分認識していたものと思われる。
(4)商標法第4条第1項第7号の該当性
商標法第4条第1項第7号は,「公の秩序又は善良な風俗を害するおそれがある商標」の登録を排除する規定であり,「商標の登録出願が適正な商道徳に反して社会的妥当性を欠き,その商標の登録を認めることが商標法の目的に反することになる場合には,その商標は商標法4条1項7号にいう商標に該当することもあり得ると解される。しかし,同号が『公の秩序又は善良な風俗を害するおそれがある商標』として,商標自体の性質に着目した規定となっていること,商標法の目的に反すると考えられる商標の登録については同法4条1項各号に個別に不登録事由が定められていること,及び,商標法においては,商標選択の自由を前提として最先の出願人に登録を認める先願主義の原則が採用されていることを考慮するならば,商標自体に公序良俗違反のない商標が商標法第4条1項7号に該当するのは,その登録出願の経緯に著しく社会的妥当性を欠くものがあり,登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような場合に限られると言うべきである。」という判断がなされている(東京高裁平成14年(行ケ)第616号)。
本件商標は,被請求人が,自身が所有する引用商標の取消を予想して,取消審決の確定前に出願したものであり,被請求人による法の規定が欠けていることを巧みに利用する不当なもので,まさしく「登録出願の経緯に著しく社会的妥当性を欠くものがあり,登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ない」手続行為である。
そして,このような出願を登録したならば,商標法第51条第2項の規定の趣旨を空文化するものである。
それゆえ,本件商標は,商標法第4条第1項第7号に該当することは明らかである。
2 結語
以上のとおり,本件商標は,引用商標と類似し,引用商標に係る指定商品と類似の商品に使用するものであり,また,商標法第51条第2項の規定の趣旨に反するものであり,公共の秩序及び善良な風俗を害するものであるから,商標法第4条第1項第7号に該当する。

第4 当審における無効理由
審判長は,本件商標権者に対して,「本件商標の登録は,その指定商品中『被服』について,商標法第51条第2項の規定に該当するから,同条項に違反してされたものと認める。」旨の無効理由を平成29年3月27日付け無効理由通知書で通知し,相当の期間を指定して意見書を提出する機会を与えた。

第5 本件商標権者の意見
本件商標権者は,上記第4の無効理由の通知に対し,指定した期間を経過するも何ら意見を述べていない。

第6 当審の判断
1 引用商標と本件商標について
請求人の提出に係る証拠及び職権による調査によれば,引用商標の商標権は,上記第2のとおり,平成25年11月6日に取消審判の請求がされ,同28年5月9日に,商標法51条第1項の規定により,その登録を取り消す旨の審決が確定しているものであり,本件商標は,上記第1のとおり,被請求人により,平成25年11月29日付けで登録出願され,平成26年4月14日に登録査定,同年5月9日に設定登録された。
2 商標法第51条第2項該当性について
商標法第51条第1項の趣旨は,商標権者は,指定商品等について登録商標を使用する専用権を有するが,その専用権の範囲を超えて,当該商標権者が,登録商標と類似の商標を使用し,これにより故意に商品の品質若しくは役務の質の誤認又は他人の業務に係る商品若しくは役務と混同を生ずるおそれがあるものをするのは,商標権者としての商標の正当使用義務に違反するばかりでなく,他人の権利利益を侵害し,一般公衆の利益を害するものであるから,何人も審判によりその登録商標の取消しを求めることができるものとし,商標権の行使を逸脱した商標の不正使用をする者に対して制裁を加えるとともに,第三者の権利利益及び一般公衆の利益を保護しようとするものと解され(東京高等裁判所平成15年(行ケ)第76号),さらに,同条第2項において,「商標権者であった者は,前項の規定により商標登録を取り消すべき旨の審決が確定した日から5年を経過した後でなければ,その商標登録に係る指定商品若しくは指定役務又はこれらに類似する商品若しくは役務について,その登録商標又はこれに類似する商標についての商標登録を受けることができない。」として,本条が制裁規定である趣旨を明確にしている。
そこで,本件商標の登録が商標法第51条第2項に該当するものであったか否かについて,以下,検討する。
(1)「商標権者であった者」について
商標法第51条第1項の規定による取消審判の請求により登録が取消された引用商標は,その権利者を大阪市中央区上町1丁目3番1号に所在の山喜株式会社とするものであった(甲1の1,甲2の1,商標登録原簿(職権調査))。
そして,本件商標は,その権利者を大阪市中央区上町1丁目3番1号に所在の山喜株式会社とするものである。
したがって,本件商標権者は,引用商標の商標権者と同一人と認められるから,商標法第51条第2項にいう「商標権者であった者」に該当する。
(2)「その商標登録に係る指定商品若しくは指定役務又はこれらに類似する商品若しくは役務について,その登録商標又はこれに類似する商標についての商標登録」について
本件商標及び引用商標は,文字の書体を異にするものであるが,いずれも「VANMATE」の欧文字からなるものであるから,両商標は,類似する。
また,本件商標の指定商品中,第25類「被服」は,引用商標の指定商品中,第25類「洋服,コート,セーター類,ワイシャツ類,寝巻き類,下着,水泳着,水泳帽,和服,エプロン,えり巻き,靴下,ゲートル,毛皮製ストール,ショール,スカーフ,足袋,足袋カバー,手袋,ネクタイ,ネッカチーフ,バンダナ,保温用サポーター,マフラー,耳覆い,ずきん,すげがさ,ナイトキャップ,防暑用ヘルメット,帽子」と同一又は類似する商品である。
(3)「前項(商標法第51条第1項)の規定により商標登録を取り消すべき旨の審決が確定した日から5年を経過した後」について
上記第2のとおり,引用商標に係る商標権は,商標法第51条第1項の規定により,その登録を取り消す旨の審決がされ,該審決は,平成28年5月9日に確定した(甲3)。
そして,上記第1のとおり,本件商標は,平成26年4月14日に登録査定,同年5月9日に設定登録された。
そうすると,引用商標に類似する本件商標は,引用商標の商標権について,商標法第51条第2項に規定されている「前項の規定により商標登録を取り消すべき旨の審決が確定した日から5年を経過した後」に登録されたものでないことは明らかである。
(4)小括
以上によれば,本件商標の登録は,その指定商品中「被服」について,商標法第51条第2項の規定に該当するから,同条項に違反してされたものと認める。
3 まとめ
以上のとおり,本件商標は,その指定商品中「被服」についての登録は,商標法第51条第2項の規定に該当するから,同法第46条第1項に基づき,無効とすべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
別掲 別掲(本件商標,色彩の詳細は原本を参照。)





審理終結日 2017-05-23 
結審通知日 2017-05-26 
審決日 2017-06-06 
出願番号 商願2013-93850(T2013-93850) 
審決分類 T 1 12・ 5- Z (W25)
最終処分 成立  
前審関与審査官 藤村 浩二 
特許庁審判長 早川 文宏
特許庁審判官 田中 亨子
平澤 芳行
登録日 2014-05-09 
登録番号 商標登録第5667913号(T5667913) 
商標の称呼 バンメイト 
代理人 藤田 隆 
代理人 藤沢 昭太郎 
代理人 藤沢 則昭 

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