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審決分類 |
審判 全部取消 商50条不使用による取り消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) X32 |
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管理番号 | 1330198 |
審判番号 | 取消2016-300148 |
総通号数 | 212 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標審決公報 |
発行日 | 2017-08-25 |
種別 | 商標取消の審決 |
審判請求日 | 2016-03-04 |
確定日 | 2017-06-12 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第5103475号商標の登録取消審判事件について,次のとおり審決する。 |
結論 | 登録第5103475号商標の商標登録は取り消す。 審判費用は,被請求人の負担とする。 |
理由 |
第1 本件商標 本件登録第5103475号商標(以下「本件商標」という。)は,「水素習慣」の文字を横書きしてなり,平成19年7月4日に登録出願,第32類「清涼飲料,果実飲料,飲料用野菜ジュース,乳清飲料」を指定商品として,同20年1月11日に設定登録されたものである。 なお,本件審判の予告登録は,平成28年3月22日である。 第2 請求人の主張 請求人は,結論同旨の審決を求め,審判請求書,審判事件弁駁書等において,その理由を要旨次のように述べ,甲第1号証から甲第13号証を提出した。 1 請求の理由 本件商標は,その指定商品について,継続して3年以上日本国内において,商標権者,専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実が存しないから,その登録は,商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきものである。 2 答弁に対する弁駁 (1)使用時期について 被請求人は,乙第1号証に記載された商品(以下「本件商品」という。)を使用に係る商品であるとしているが,乙第1号証には年月日が示されておらず,本件審判の請求の登録前3年以内(以下「要証期間」という。)において,これらの商品が製造・販売等された事実が確認できない。 (2)商標の使用者について 被請求人は,本件商品をエステティックサロンであるベルフルール代官山において提供しているとしている。 乙第1号証の写真は,やや不鮮明ではあるものの,その下段の写真には,「水素習慣」なる漢字を表示したシールラベルのようなものを,給水機及び透明PET容器に貼付した様が示されている。 しかし,乙第1号証からは,本件商品が本件商標権者,専用使用権者又は通常使用権者のいずれかによるものであるという事実が確認できない。 なお,甲第1号証の記載からは,本件商標権につき専用使用権者又は通常使用権者が存在するという事実も確認できない。 (3)役務としての商標の使用であることについて 被請求人の主張及び乙第1号証の下段の写真からは,エステティックサロンであるベルフルール代官山において給水機により供される液体を容器詰めして提供するものであるから,商標法第2条第1項第2項の「業として役務を提供し,又は証明する者がその役務について使用をするもの」に該当するものである。 これに対して,本件商標権は,甲第1号証が示すとおり,商品商標として使用するものである。 したがって,乙第1号証で示す商標の使用は,本件商標権に該当しないことは明らかである。 また,本件商品が乙第1号証に記載の店舗以外で流通していないとすれば,甲第2号証(大阪地判昭和59年(ワ)5703号)において判示されるように,商標法上の「商品」に該当しない。 3 口頭審理陳述要領書(平成28年10月14日付け) (1)要証期間に日本国内において使用された事実が見受けられないこと 被請求人が提出した乙第1号証の写真は,「今回取り消し請求があったために証拠が必要とのことでしたので撮影したもの」であると被請求人自身が認めているとおり,本件審判の請求がされたことを被請求人が認識した後に撮影されたものであるから,要証期間における本件商標の使用を証明するものでないことは明らかである。 (2)本件商標権者,専用使用権者又は通常使用権者のいずれかによる使用であることが確認できないこと ア I氏の使用権の存否(乙2) 「商標の専用実施権に関する契約書」(乙2)は,本件商標権者が,I氏に対して平成22年4月1日付で専用使用権を設定することを約した書面であると見受けられる。 ここで,専用使用権の設定は,登録しなければその効力を生じない(商標法第30条第4項で準用する特許法第98条第1項第2号)。 乙第2号証の第1条第3号によれば,平成22年4月1日が本契約書の効力発生日であると認められるが,本件商標に係る平成28年10月3日付の登録原簿を確認しても,要証期間に本件商標権者からI氏に対して専用使用権が設定された形跡は見受けられない(甲3)。 専用使用権が設定登録されていない以上,I氏は,専用使用権者には該当しない。 イ 株式会社ビューティ工房の使用権の存否(乙3) 「商標使用に関する契約書」(乙3)は,I氏が株式会社ビューティ工房(以下「ビューティ工房社」という。)に対して,平成25年9月1日付で自己が有する専用使用権に基づき通常使用権を再許諾する旨を約した書面であると見受けられる。 しかしながら,乙第2号証について上述したとおり,I氏は専用使用権者には該当しないため,無権原のI氏とビューティ工房社の使用権許諾契約の有効性については疑わしい。 ウ 乙第1号証の使用主体の不明確性について 仮に,ビューティ工房社が通常使用権者であると解するとしても,乙第1号証に表示された「水素習慣」の文字を印刷した紙が貼付されたペットボトル等の製造者,販売者が依然として不明であり,その者と本件商標権者との関係も不明である。 エ 使用に係る商品について(乙1) (ア)「商品」該当性 被請求人は,本件商標を「水素水」に使用していると述べているが,乙第1号証を見ても,単に「水素習慣」の文字を印刷した紙が貼付されたウォーターサーバ及びペットボトルが表示されているにすぎず,商取引の目的物として流通性を有する「商品」としての「水素水」に本件商標が使用されていると認めることはできない。 (イ)本件審判の請求に係る指定商品との関係 仮に被請求人の主張する「水素水」が「商品」に該当するとしても,被請求人が本件審判の請求に係るいずれの指定商品について使用していると主張しているか不明である。 (ウ)取引の実体 仮に被請求人の主張する「水素水」が「商品」に該当するとしても,乙第1号証に掲載された「水素習慣」のラベルが貼付されたペットボトルの商品としての取引の実体が全く明らかでない。 また,エステティックサロン「ベルフルール代官山」の職員と見られるN氏が以前開設していたブログによると,「水素水」とされる液体が入ったペットボトルには何らの表示がされていないことが確認できる(甲4から甲7)。なお,現在,当該ページは閲覧できない。 このような事実を考慮すると,乙第1号証に掲載された「水素習慣」のラベルが貼付された「水素水」は,実在しない商品であると推認される。 (エ)被請求人の主張及び証拠の信用力について 乙第2号証には,「(使用料)」について,「年間60万円として算定し,10年間分の600万円分を支払う。」,「支払日は,本契約締結後,5営業日以内に現金にて支払う。」の記載がある。 I氏は,被請求人企業の社員とされているが,一個人である社員が勤め先企業に対して「600万円」もの大金を,しかも「5営業日以内に現金にて支払う」との契約内容は不自然である。 乙第3号証には,「(使用料)」について,「年間100万円として算定し,10年間分の1,000万円分を支払う。」,「支払日は,本契約締結後,速やかに支払う。」の記載がある。 「零細企業」とされるビューティ工房社が,1,000万円もの使用料を速やかに支払うとの契約内容は不自然である。 4 上申書(平成28年12月2日付け) (1)ビューティ工房社及びエステサロン・ベルフルール代官山は,本件商標権についての「通常使用権者」に該当しないこと 被請求人は,ビューティ工房社及び同社が経営するエステサロン・ベルフルール代官山が,同社及び同サロンを訪問した顧客等に対し,本件商標を付した「水素水」を提供していた旨主張する。 しかしながら,そもそも専用使用権について設定登録された事実がないI氏が専用使用権者に該当しないことは,形式上及び実体上明らかである。 そして,再許諾権を有しないI氏から使用許諾を受けたとするビューティ工房社の通常使用権は,発生していない。 (2)本件審判の請求に係る商品の使用が立証されていないこと 被請求人が提出した上申書において,「ペットボトルに入っていたものは,水素水」,「水素水『水素習慣』は,ベルフルール代官山店内で水素水サーバを使って製造していた」,「水素水サーバに入っているのは,水素水で,水道水を引き込み,サーバ内で水素水が生成されていた。」,「『水素習慣という名称で水素水』を販売することを決めた」と記載されているところ,被請求人のいう「水素水」が,本件審判の請求に係る「清涼飲料,果実飲料,飲料用野菜ジュース,乳清飲料」のいずれに該当する商品なのかが不明である。 (3)本件商標が,「水素水」に付されたことが立証されていないこと 被請求人は,上申書において,水素水の入ったペットボトルに「水素習慣」の記載があるラベルを貼付したこと,水素水サーバに「水素習慣」の名称ラベルを貼付したことなどを主張するが,要証期間に「水素習慣」と記載されたラベルなどが,「水素水」に付されたことを示す事実は確認できない。 (4)本件商標の使用の事実が客観的に把握できないこと 乙第4号証(なお,「乙第1号証」として提出されているが,「乙第4号証」と振り替える。以降同様。)は,ビューティ工房社の代表取締役が,自身の顧客に「水素水」を販売したことなどを陳述した書面である。乙第5号証から乙第7号証は,ビューティ工房社又はエステサロン・ベルフルール代官山の元従業員又は顧客による陳述書と見受けられる。 ここで,使用証拠として陳述書が提出された過去の不使用取消審判事件の審決があり(甲9),また,取引相手からの購入証明書が提出された不使用取消審判事件の審決がある(甲10)。 本件についてみると,乙第4号証,乙第5号証,乙第7号証は,陳述者が任意に記載することが可能な陳述書であり,本件審判の請求に係る商品が市場において実際に取引されたなどの本件商標の使用の事実を客観的に証明するものとはいい難い。 また,乙第6号証は,ビューティ工房社の取引先である株式会社イーハウスが,ビューティ工房社より「水素習慣」なる名称の商品を購入した旨の陳述書及び領収証であるが,これに添付された領収書は,いかなる商品に対して発行された領収書であるのかが不明である。 (5)商取引の実体が不明確であること 被請求人の主張によれば,「水素水」は,エステサロン・ベルフルール代官山店内に設置された株式会社LTC製の水素水サーバにて生成され,ビューティ工房社のオフィス内及びエステサロン・ベルフルール代官山店内にて,ペットボトルに入れられた状態で,来店客に対し無料であるいは販売価格100円又は150円にて販売されたとのことである。 しかしながら,被請求人により提出された乙第4号証から乙第7号証は,被請求人の意図に応じて陳述者が任意に記載内容を変更できるものであり,本件商標の使用の事実を裏付けるに足りる資料(たとえば,納品書,領収書,商標権者等による製品カタログ等の頒布での広告,宣伝の事実等)の提出がなされていない以上,被請求人の主張する上記商取引の実体を客観的に把握することは不可能である。 (6)乙第6号証について 乙第6号証は,ビューティ工房社が,株式会社イーハウス宛に発行した領収書と見受けられるが,ビューティ工房社がその領収書の控え又は記録をなぜ自社で保管しておらず,審理も終盤となった今になってわざわざ領収書の原本を提出するのか不自然であるといわざるを得ない。 (7)むすび 被請求人によるこれまでの主張及び同人が提出した証拠によっては,本件商標が,本件商標権者等によって要証期間に請求に係る指定商品のいずれかについて使用された事実は認められない。 第3 被請求人の主張 被請求人は,本件審判の請求は成り立たない,審判費用は請求人の負担とする,との審決を求める,と答弁し,審判事件答弁書,口頭審理陳述要領書等において,その理由を次のように述べ,証拠方法として,乙第1号証から乙第7号証(枝番号を含む。)を提出した。 1 答弁の理由 現在,エステサロンで提供している水素水にその商標を使用している。 2 証拠説明書(平成28年9月4日付け(同月8日差出)) (1)審理事項通知書について 本件商標権者は,現在,零細企業に本件商標の使用を許諾しており,今回の件で本件商標を許諾している企業へ確認したところ,公共的な広告宣伝もできず認知も低い状況ではあるが,来店客には少しずつ認知いただき,水素水を習慣的に飲んでいただく啓蒙活動はできてきていると考えているとのことであった。 また,水素水を販売することと並行し広く水素水を習慣づけて飲んでいただくために,来店客にお試しで飲んでいただくことや意見要望を伺いながら新たな商品の開発も進めているとのことであった。 今回,本件商標が取り消される事態になると,本件商標権者としては商標の使用権契約に違反することになり新たな問題が発生する。 (2)今日までの経緯について ア 本件商標については,商標を取得していた会社から本件商標権者が譲渡を受け取得したものである。 イ 平成22年4月1日付で,本件商標権者の社員であるI氏が別におこなっている事業に活用するため専用実施権を与える契約を締結した(乙2)。 ウ 平成25年9月1日付で,I氏からビューティ工房社が運営するエステティックサロンで使用したい旨の打診を受け使用の再許諾について承諾した(乙3)。 使用用途については,ビューティ工房社で経営するエステティックサロン「ベルフルール代官山」にて水素水サーバを購入し,そこで来店客へ水素水を習慣的に飲料してもらうために「水素習慣」の名称で試飲,販売している。 エ 平成28年5月からは,エアーサクセスジャパン株式会社で製造される水素水スティックのOEM商品として「水素習慣」の商品化を進めており,12月頃を目途にビューティ工房社から販売される。 3 口頭審理陳述要領書(平成28年9月20日付け(同月23日差出)) (1)審理事項通知書の合議体の暫定的な見解について ア 通常使用権者であるビューティ工房社が運営するベルフルール代官山のエステティックサロンで販売方法並びに提供方法が不明とのことだが,ビューティ工房社のような小さく事業をしているところはお店で細々と使用しているところも多い。 たとえ,細々でも来店客からお金をいただいて飲んでいただいている,また,試しに無償で飲んでいただいていた事実については,来店客並びに従業員から聞き取っていただければ使用していた事実確認はできるので,今後,証拠書面が必要であれば従業員並びに来店客からその事実書面をいただくことも可能である。 イ 撮影日が不明との指摘について,今回取消し請求があったために証拠が必要とのことで撮影したものである。 残念ながら,本件商標が今回のような事態になるとは想定しておらず,使用事実をわざわざ何月何日使用していると常に写真を撮らないと証明されないという事実も知らなかった。 (2)本件商標については,手続きを経て,現在,ビューティ工房社が使用している。今回の件でそのビューティ工房社と取り交わした契約を不履行し迷惑をかけたくないこと,今回の取消しによって当社の収益にも大きく影響するから,請求人が本件商標を使用したいのであれば,現在のビューティ工房社を交え話合いも可能である。 また,証拠書類が不足していた部分については,同時に証拠書類も提出している。 4 上申書(平成28年11月18日付け) (1)合議体からの質問事項への回答について ア ペットボトルに貼布されたラベルの記載内容は,「水素習慣」と下部に「Bellefleur」が記載されている。 イ ペットボトルに入っていたものは,水素水である。 ウ 水素水「水素習慣」は,ベルフルール代官山店内で水素水サーバを使って製造していた。 エ 提供場所は,ベルフルールのサロン内やサロンの隣のビューティ工房社のオフィスで,無料サービスや販売していた。 オ 販売する場所は,主にベルフルールサロンとビューティ工房社のオフィスであり,販売価格は,一般定価を150円としているが,知人とかは,大口割引として100円が主流であった。 カ 水素水サーバにも認知を上げるため「水素習慣」の名称ラベルを貼付していた。 キ 水素水サーバに入っているのは水素水で,水道水を引き込みサーバ内で水素水が生成されていた。 ク 水素サーバは,株式会社LTCから購入したものでメーカー等の商標や保証がある。 (2)上申内容と追加の証拠書類の提出 本件商標を使用して水素水を販売することを決め,水素水サーバを自ら購入し,ビューティ工房社が運営するエステティックサロン「ベルフルール代官山店」に貸与し販売してきた。 また,利用実態について,貸与した当時は水素水自体の認知も低く社会にほとんど出回っていなかった。そんな中で,ビューティ工房社にラベル入りのペットボトルを制作し積極的なPRや販売をお願いしたが,現段階では費用がかけられない状況でやむを得ず今日までの取組みで承諾していた。 昨年後半頃から水素水自体の有効性が認知され,様々な場所で活用されるようになったこともあり,ビューティ工房社の他,水素スティック等水素水商品ラインナップを増やし販売を拡大する企画を考えていたところである。 証拠書類の提出は,11月18日の期限だったため証言の協力をお願いする時間が少なく,多くの証拠が提出できなかったが,集まったものを提出する。 また,この証拠書類でも異議が出るようであれば引き続き証拠書類を集める予定である。 5 上申書(平成29年3月10日付け) (1)専用使用権について,それ自体存在しないと否定されているが,当社弁護士等からの見解をもらう中で,そもそも口頭でも双方が合意していれば契約は有効とあり双方のどちらかが不服を申し立てた場合を考え契約書面を取り交わす行為を行うのが通例となっているといわれている。 今回については,本件商標を有しているものとの間で使用権を認めているものであり問題ないと考える。 (2)清涼飲料,果実飲料,飲料用野菜ジュース等々のどれに限定して「水素習慣」は使っているかとの指摘について,本件商標を使用する際,それらを定義しなければ商標を使ったとはいえないのか?そもそも広義に「水素習慣」の名称を使用しビジネスをしたいだけである。 (3)「水素習慣」と記載したことを示す事実が確認できないとの指摘については,平成28年11月28日に提出した証拠書面の中に利害関係者とは全く関係ない第三者からの証言があるので,それが最大の事実である。 (4)新聞雑誌等へ広告宣伝ができる規模の会社ばかりではない現実は請求人もご理解されているのではないか。地道に商品を世に出そうとされている中小零細企業はたくさんあり,小さな会社では広告媒体側も扱ってはもらえない現実も合わせてご理解願いたい。 さらに,納品伝票や仕入伝票の提出がなされるべきとのことは,事情を細かく説明していない中でさすがにそこまで先方にお願いしてはいなかった。 これらを提出できれば請求人は本件から手を引いていただけるのであれば,再度お願いしてみる。ただ,いたずらに長く引っ張っても仕方ないと考えているので,その時はそれで本件審判の請求は取り下げていただきたい。 (5)開発した商品を世に出すまでには,少ない資金の中で商品開発からパッケージ化までのプロダクト作業からそれらを認知してもらうためのマーケティング行動にどれだけの苦労をしているかをご理解願いたい。 中小規模の会社では,まず近場の身内や知人の口コミやパソコンで作った簡易チラシを使った販促を行いながら少しずつ認知向上により売上拡大につなげ,その利益の中から少しずつ予算を捻出し事業を拡大していくしかない。 (6)水素水サーバから充填した水素水の特性上,濃度が低下することについては請求人からも指摘されているので,どの位で濃度が低下するかは検証されたと思料するが,客には実験した結果を説明し実際にどの位有効濃度が保てるのか実際に確認したい客には水素測定器をお貸ししてご理解いただいた上で販売している。 また,販売すること自体の衛生上問題は認識していなかったが,別途厚生労働省の指導が入れば改善したいと考えている。 (7)主張の信憑性の疑いについては,実際に双方の合意契約書が存在し実際にその会社のサロンで販売され,それを実際に販売した人それを実際に購入した人がいる事実がある。 それら全てに主張に信憑性がないとのことは,名誉を傷つける大変失礼なご意見で驚愕している。 また,特許庁に出向いた際も,なぜ「水素習慣」をこのような形でしかビジネスを行わなければならなかったかも経緯も含め説明している。 使用権の対価の支払いについても,I氏を介してビューティ工房社で運営するサロンを活用して少しずつでも商品の認知が上がり売れていけばと考え,支払いを猶予していた。 また,証拠の提出が終盤になったとの指摘については,初めてのことで不慣れだったこと,資金的な面で弁理士並びに弁護士に相談できなかったこともあり,事前に何を用意してよいかも解らず,まず手元にある証拠から提出した。やり取りが進む中でそれらの提出を求められたので提出しただけである。 (8)むすび 本件商標権者は,本件商標を持つ一中小企業である。 残念ながら細々と本件商標を使って商いをすることしかできず,また,本件商標は,貸付資金が回収できない対価として得たものでこれを取り上げられると回収の目途も立たない。 請求人は,大企業でもあり,「水素習慣」よりももっと広く親しまれる商標が考えられると思うので,本件商標については諦めていただけることを切に願っている。 中小企業でも,その商標を公の場での大々的な認知行動ができなくても,細々であっても使用している事実があればそのまま使用させていただけるよう取計らい願いたい。 そして,もし今回この権利が守られるのであれば,今回の行動について反省し,今後,今回の様な取消請求を受けるようなビジネス行動を改善したいと考えている。 具体的には,現在,取消請求を受けたため中断していた新商品の開発をスタートさせ,1年以内に新たな商品として綺麗にパッケージ化も行い,広告宣伝は派手にできない代わりにエステティックサロンのみならず一般の方々が手に取ってもらえる場所(スーパー,ドラックストア等)で販売することをお約束する。また,もし1年後,それが実行されていなかった場合は,即日,取消請求を受けてもそれに従う。 第4 当審の判断 1 商標登録の取消しの審判について 商標法第50条第2項は,同条第1項の審判の請求があった場合は,その審判の請求の登録前3年以内(要証期間。本件の場合は,平成25年3月22日ないし同28年3月21日)に日本国内において商標権者,専用使用権者又は通常使用権者のいずれかがその請求に係る指定商品又は指定役務のいずれかについての登録商標の使用をしていることを被請求人が証明するか,または,その登録商標の使用をしていないことについて正当な理由があることを被請求人が明らかにしない限り,商標権者は,その商標登録の取消しを免れない旨定めている。 2 被請求人の主張及び同人が提出した証拠によれば,以下のとおりである。 (1)通常使用権者について ア 乙第2号証は,本件商標権者(甲)と,I氏(乙)との間の平成22年4月1日付け「商標の専用実施権に関する契約書」であり,その内容は,本件商標(登録第5103475号)をその指定商品について,使用許諾される地域は「全国」,使用期間は,「契約締結後から使用できる事とし,使用期間は原則10年とするが,・・・延長できる」旨である。 イ 乙第3号証は,I氏(甲)とビューティ工房社(乙)との間の平成25年9月1日付け「商標の使用に関する契約書」であり,その内容は,本件商標(登録第5103475号)をその指定商品について,使用許諾される地域は「全国」,使用期間は,「締結後は即日使用できる事とし,使用期間は原則10年とするが,・・・延長できる」旨である。 ウ 上記証拠からすれば,ビューティ工房社は,本件商標の使用について,本件商標権者及び同人から許諾を受けたI氏から許諾がなされているものと推認できるから,要証期間における本件商標の通常使用権者とみて差し支えない。 (2)本件商標の使用について ア 乙第1号証について (ア)乙第1号証は,ラベル実物と使用している写真とするものであり,その上部の写真には,室内が写され,下段の左の写真には,何らかの機器のやや上部に明瞭ではないものの「水素習慣」の文字が表示されたラベルが貼付され,また,その右の写真には,3本のペットボトルに同じく「水素習慣」の文字が表示されたラベルが貼付されている。 (イ)乙第1号証のペットボトルに表示された「水素習慣」の文字は,本件商標と社会通念上同一のものと認められる。 しかしながら,乙第1号証は,被請求人の主張によれば,「ベルフルール代官山のエステティックサロン」の写真であるとしても,その撮影日が証明されていないから,要証期間のものということができない。 イ 乙第6号証について (ア)乙第6号証は,2016年(平成28年)11月16日付けの株式会社イーハウスの代表取締役からビューティ工房社の社長に宛てた書面であり,その記載内容は,以前,ビューティ工房社に伺った際,社員分を含めペットボトル10本を7日間分購入したこと,継続購入はできなかったが,代官山に訪問した際,100円でペットボトル1本を個人として購入した旨を陳述したものである。 そして,ビューティ工房社から株式会社イーハウスに宛てた「領収書」には,「¥7,560」,「水素習慣@100×10本×7日間」及び「2015年3月10日」の記載がある。 (イ)上記「領収書」によれば,要証期間である2015年(平成27年)3月10日に,通常使用権者と推認できるビューティ工房社から株式会社イーハウスに,「水素習慣」が,単価100円で70本,販売されたものということができる。 しかしながら,上記商品が「飲料用水素水」であること及びその商品に「水素習慣」の商標が表示されていたものであるかを確認することができない。 (3)その他の証拠について ア 乙第4号証は,2016年(平成28年)11月11日付けのビューティ工房社の代表取締役名の書面であり,その内容は,2014年春に代官山にサロンを移転した頃から少しずつ水素水自体の認知が高まり少しずつ売れていった,水素水を毎日10本×7日間購入した会社から領収書を借りるお願いをした,何名かの客に飲んだことを証言していただくよう手配した旨を陳述したものである。 イ 乙第5号証は,2016年(平成28年)11月10日付けの元ベルフルール店長である個人名の書面であり,その内容は,オープン当時から「水素習慣」名で客にサービス提供したり150円で販売していた,購入したペットボトルに,その都度サロンで作成したオリジナルラベルを貼りつけて提供していた旨を陳述したものである。 ウ 乙第7号証の1は,個人名の書面であり,その内容は,水素習慣を購入したのは,昨年の11月頃である,代官山ベルフルールのサロンで150円で2本購入した旨を陳述したものである。 同号証の2は,個人からベルフルール代官山のM氏に宛てた2016年11月17日付けの書面であり,その内容は,ベルフルール代官山店にて,何度か水素習慣を買い飲んでいた旨を陳述したものである。 同号証の3は,2016年(平成28年)11月14日付けの個人名の書面であり,その内容は,購入日時は覚えていないが,昨年の春頃,水素習慣を100円くらいで購入した旨を陳述したものである。 エ 上記アからウは,2014年春に代官山にサロンを移転した頃から少しずつ売れていったこと(乙4),オープン当時から「水素習慣」名で客に150円で販売していたこと,購入したペットボトルにサロンで作成したオリジナルラベルを貼りつけたこと(乙5)及び代官山ベルフルールのサロンで水素習慣を購入した(乙7)旨をそれぞれ陳述するにすぎず,要証期間に通常使用権者が,「飲料用水素水」に「水素習慣」の文字を表示して譲渡した具体的事実は示されていない。 (4)その他,本件商標が,本件商標権者等によって,その指定商品について,商標法第2条第3項にいう使用をされた事実を示す証拠はない。 なお,平成29年2月27日付け審尋において,被請求人に対し,本件商標を付した水素水(水素水からなる清涼飲料)の販売等に関する追加の主張・証拠等の提出を求めたが,被請求人は,前記第3の5のとおり述べるのみで,具体的な証拠の提出はなかった。 3 むすび 以上のとおり,被請求人が提出した証拠からは,本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において,本件商標権者,通常使用権者又は専用使用権者のいずれかが,その請求に係る指定商品のいずれかについて,本件商標を使用していることを被請求人が証明したものということができず,かつ,本件商標を使用していないことについて正当な理由があることも明らかにしていない。 したがって,本件商標の登録は,商標法第50条第1項の規定により,取り消すべきものである。 よって,結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2017-04-12 |
結審通知日 | 2017-04-17 |
審決日 | 2017-05-01 |
出願番号 | 商願2007-75232(T2007-75232) |
審決分類 |
T
1
31・
1-
Z
(X32)
|
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 田中 幸一 |
特許庁審判長 |
青木 博文 |
特許庁審判官 |
田中 亨子 小松 里美 |
登録日 | 2008-01-11 |
登録番号 | 商標登録第5103475号(T5103475) |
商標の称呼 | スイソシューカン |
代理人 | 宮田 佳代子 |
代理人 | 小西 達也 |
代理人 | 花崎 健一 |
代理人 | 宮城 和浩 |
代理人 | 特許業務法人RIN IP Partners |