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審決分類 審判 全部取消 商50条不使用による取り消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Y03
管理番号 1329267 
審判番号 取消2016-300260 
総通号数 211 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2017-07-28 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2016-04-18 
確定日 2017-05-29 
事件の表示 上記当事者間の登録第4914646号商標の登録取消審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 登録第4914646号商標の商標登録は取り消す。 審判費用は,被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4914646号商標(以下「本件商標」という。)は,「アルティイ」の文字を標準文字で表してなり,平成17年1月18日に登録出願,第3類「化粧品,香料類,歯磨き」を指定商品として,同17年12月9日に設定登録されたものである。
なお,本件審判の予告登録は,平成28年5月6日である。

第2 請求人の主張
請求人は,結論同旨の審決を求め,審判請求書,審判事件弁駁書において,その理由を要旨次のように述べ,甲第1号証ないし甲第6号証を提出した。
1 請求の理由
本件商標は,その指定商品について,継続して3年以上日本国内において,商標権者,専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実が存しないから,その登録は,商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきものである。
2 答弁に対する弁駁
(1)立証趣旨のずれ
本件商標は,標準文字商標の「アルティイ」である。
一方,被請求人が「商標使用の証拠」として主に提出している登録商標は,標準文字の「Arati」である。
乙第1号証ないし乙第9号証のうち,乙第1号証ないし乙第4号証,乙第6号証は,いずれも「Arati」のみの使用を立証しようとしている。
乙第7号証ないし乙第9号証は,事業紹介のみで,上記のいずれの商標の使用証拠にすら成り得ていない。
かろうじて乙第5号証のみが,「アルティイ」の使用を立証しようと試みていることが伺えるが,これについては疑念を生じさせる要因がある。
(2)被請求人の答弁の趣旨
被請求人の主張は,「アルティイ」と「Arati」が,同一の称呼を生ずる商標であるため,「Arati」の使用は,「アルティイ」を使用したことと同じとみなされるという趣旨である。
(3)「アルティイ」と「Arati」は,同一称呼であるかについて
ア 乙第3号証によれば,「Ara ti」の称呼が,社会通念上,「アラティ」又は「アラチ」であると認識されていることが明らかである。
イ 世の中で,「Arati」という商標を使用している各業界の業者は,ほとんどが称呼を「アラティ」と表現していることが確認できる(甲2)。
ウ 世の中で多く見られる甲第2号証の称呼は,特許庁で登録されている称呼とも一致しているため,やはり「Arati」の称呼は,「アラティ」であると認識される。
エ したがって,「Arati」の称呼は,「アルティイ」と同一であるとはいい難いものである。
よって,被請求人が提出した乙第5号証以外の証拠は,全て,本件商標の使用の証拠にならないことは明らかである。
(4)ヒンズー語(ヒンディー語)のAratiについて
ア ヒンズー語(ヒンディー語)は,インドで使用される言語であり,公用語である。そして,その「字体」は,本来,特殊な字体である(甲3)。
イ 「Arati」と表現されている文字は,ヒンズー語ではアルファベットで表記されず,あくまで,ヒンズー語における発音をわかりやすくアルファベットで表現しただけである。
ウ 被請求人が,答弁書の中で「Arati」を「アルティイ」と同一表現しているのは,社会通念として一般に同一であると認識されているのではなく,単に,ごく限られた一部の人が解釈して(つまり被請求人が),そう表現しているだけである。
(5)被請求人も述べていること
被請求人は,答弁書の3頁の下から7行目より述べている,「(2)乙第3号証商標と本件商標との関係について」の中で,「ヒンズー語を理解できる日本人は極めて少数であることから,被請求人は,乙第3号証商標『Arati』(省略)需要者が正しく発音でき,商品を特定できるように」と述べて,本件商標「アルティイ」を出願した理由を述べている。
被請求人による上記の主張は,「Arati」が,乙第1号証のように単独で使用されただけでは,日本人にとって,それが「アルティイ」と同一商標(同一称呼)だとは認識されにくいことを,被請求人も認めているものである。
(6)乙第5号証について
ア 乙第5号証は,本件の審判請求がなされた後にでも,いつでも故意に作成できるようなレベルの内容の書面であり,この書面が真実であるという客観的な証拠が存在しない。
イ 乙第5号証は,頒布会のご案内であるが,本文中に「Arati (アルティイ)頒布会を開催いたします」と記載されているにもかかわらず,「いつ」,「どこで」開催されるのかが全く記載されていない。
また,「事務局・○までお問い合わせください」と書かれているにもかかわらず,その連絡先が明記されていない。
ウ 一方,本件商標が使用されていない乙第4号証のスペシャルセミナーの案内では,「いつ」,「どこで」開催されるかが記載されている。
エ 答弁書の4頁の「(4)乙第5号証について」によれば,乙第5号証の頒布会の案内状が,まずは最初に,乙第4号証の配布よりも早い時期の2016年初に郵送されたと述べられている。そうであるならば,会員たちは,乙第4号証の事実を知らないうちに,乙第5号証を先に受け取っていることになるため,乙第5号証に「いつ」,「どこで」開催されるのか全く記載されていないのは,不自然である。
なお,乙第4号証は,冒頭の文章に「2016年を迎え,早くもひと月がたとうとしております」と記載されているため,この乙第4号証が発行されたのが,2016年1月終わりころであろうことは,容易に理解できる。
オ 乙第4号証や乙第6号証は,「auraG」,「Arati」,「GIAME」の3つのブランドが案内されているにもかかわらず,乙第5号証だけが,「Arati」のみ案内されており,不自然である。
カ 以上のように,乙第5号証は,不自然で信憑性が非常に低いものと推察される。
(7)被請求人の主張の矛盾
被請求人は,答弁書の中で,「『Arati』と『アルティイ』は一体不可分な関係にあり,被請求人は,自己のビジネスにおいて両商標を併用して使用している」と述べている。
しかしながら,被請求人は,平成28年1月26日に,商願2016-7975を出願しており,この出願商標は,「ALTY」と「アルティイ」が一体不可分な関係であるように出願されている(甲4)。
つまり,被請求人が答弁書で述べていることと,被請求人が出願している結合商標は,矛盾する内容である。

第3 被請求人の主張
被請求人は,本件審判の請求は成り立たない,審判費用は請求人の負担とする,との審決を求める,と答弁し,審判事件答弁書及び平成28年12月22日付けの上申書において,その理由を要旨次のように述べ,証拠方法として,乙第1号証ないし乙第9号証を提出した。
1 答弁の理由
(1)乙第1号証及び乙第2号証について
乙第1号証は,被請求人が実際に販売している香水商品のボトル写真であり,乙第2号証は,平成28年2月22日付けの香水ボトルに関する納品書及び請求書である。
乙第1号証に掲載したボトルは数種類あるが,これはお客様の要望に応じて,ボトルを選択できるようになっているからである。
被請求人は,会員制のヒーリングサロンを経営しており,当該香水は一般市販品ではなく,各会員のニーズに応じた製品として調合し,かつ各会員の好みに応じたボトルに充填して販売している。なお,被請求人のビジネスモデル等の内容は,乙第7号証ないし乙第9号証を参照されたい。
記載されているイベント,セミナー,パーティ等において,被請求人が販売する主要な香水ブランドである,auraG,Arati,GIAMEの紹介,販売が行われている。
乙第1号証及び乙第2号証に記載されたボトルには,商品名として「Arati」という文字が描かれているが,当該「Arati」は,乙第3号証に示すとおり,被請求人が正当に所有する登録商標第4895035号である。
(2)「Arati」と本件商標との関係について
「Arati」とは,ヒンズー語で「聖なる光」という意味であり,その称呼(発音)をカタカナ表記すれば「アルティイ」又は「アルティー」となる。
ヒンズー語を理解できる日本人は極めて少数であることから,被請求人は,商標「Arati」の商品説明,広告,取引書類等において,需要者が正しく発音でき,商品を特定できるように,その称呼である「アルティイ」を商標登録出願した。
それが本件商標である。
すなわち,「Arati」と本件商標とは一体不可分な関係にあり,被請求人は,自己のビジネスにおいて両商標を併用して使用している。
(3)乙第4号証について
乙第4号証は,本年3月13日,被請求人が所有する麻布台サロンにて開催したセミナーの案内資料であり,被請求人が販売する主要な香水ブランドである,auraG,Arati,GIAMEの3つを紹介している。
当該セミナーには,21名の会員が参加した。
(4)乙第5号証について
乙第5号証は,被請求人が開催するArati(アルティイ)頒布会の案内状であり,2016年初に会員向けに郵送するとともに,上記乙第4号証のセミナー開催通知に際しても同封して配布したものである。
当該案内状では,商標「Arati」と本件商標とを併記する形で表記している。
乙第4号証のセミナー終了後において,当日参加した21名の会員中,6名の方から6個の「Arati」の受注があった。
(5)乙第6号証について
乙第6号証は実際の販売形態を示す資料であり,被請求人が会員に対して「Arati」(前記auraG,Arati,GIAMEを含む)を調合して販売する流れを記載しており,会員希望者に説明するための資料である。
先に記載したとおり,Arati(アルティイ)は,一般市販商品ではなく,オーダーメイド商品である。
(6)結論
以上のとおり,被請求人が販売している香水の商品上には「Arati」を付し,宣伝広告や案内書類等においては,その称呼である「アルティイ」と発音し,かつ頒布しており,乙第3号証の商標と本件商標とは,被請求人のビジネスにおいて一体不可分な関係にあり,両商標を併用して使用しているので,本件商標は,商標法第2条第3項第8号にいう広告,取引書類に付して頒布しているものであって,商標法で規定する「使用」に該当する。
2 上申書(平成28年12月22日付け)
(1)「Arati」商標を付している香水は,被請求人による会員制クラブでの販売商品(注文販売商品)であり,一般市販品ではない。
当該香水の販売は事実であるが,それを証明する「客観性のある証拠」について問われた場合,答弁書で提出した資料以上のものは存在しない。
(2)本件取消審判の請求については,客観的使用証拠を保存・保管していなかった被請求人にも若干の落ち度はあるとはいえ,民法上の不法行為疑義のある請求人の請求であって,この点について考慮されるべきである。

第4 当審の判断
1 商標登録の取消しの審判について
商標法第50条第2項は,同条第1項の審判の請求があった場合は,その審判の請求の登録前3年以内(本件の場合は,平成25年5月6日ないし同28年5月5日。以下「要証期間」という。)に日本国内において商標権者,専用使用権者又は通常使用権者のいずれかがその請求に係る指定商品又は指定役務のいずれかについての登録商標の使用をしていることを被請求人が証明するか,または,その登録商標の使用をしていないことについて正当な理由があることを被請求人が明らかにしない限り,商標権者は,その商標登録の取消しを免れない旨定めている。
2 本件商標の使用について,被請求人が提出した証拠によれば以下のとおりである。
(1)乙第1号証は,被請求人が販売している香水商品のボトルとする3枚の写真であり,これには,形や色が異なる6種の容器に,「Arati(「i」の部分の「・」は,やや大きく表されている。)」の表示がある。
そして,乙第2号証は,香水ボトルに関する納品書及び請求書とするものであり,その上段の,静岡県在の「ななっと」の名称の者が平成28年2月22日に発行した「納品書」には,「品名」の欄に「化粧ビン (図形)バラ Arati」の記載,「数量」の欄に「1」,「単価」の欄に「1800」の記載がある。
また,その下段は,上段の「納品書」に記載された商品についての「請求書」である。
しかしながら,乙第1号証及び乙第2号証からは,要証期間に含まれる平成28年2月22日に,「Arati」と表示された容器が1(本又は箱),「ななっと」との名称の者からいずれかの者に納品されたこと及びその代金が請求されたことを示すにすぎない。
(2)乙第4号証は,スペシャルセミナーのご案内とする書面であり,「?21世紀のMeuseたちへ? 金山叶佳 香りのスペシャルセミナーのご案内」の表題の下,2016年3月半ばに「21世紀のMeuseたちへ」をテーマに香りのセミナーを開催すること,「『21世紀のMeuseたちへ』講義とauraG Arati GIAMEを使った実技」の表題の下,「・・・。当日はお持ちのauraG Arati GIAMEをご持参いただき,その場でご自分のアムリタを使っていただきながら香りのセミナーを行ってまいります。」の記載があり,日時と場所が記載されている。
しかしながら,該証拠は,金山氏が開催する香りのスペシャルセミナーの開催案内にすぎず,セミナーが開催された事実,及びセミナーにおいて,実際に,「Arati」と表示された商品「香水」が販売されたことは証明されていない。
(3)乙第5号証は,2016年Arati(アルティイ)頒布会のご案内とする書面であり,かかる表題の下,「・・・ご参加お申し込み後,カウンセリングシートをご提出いただいてからカウンセリングの内容に伴った“2016年スペシャルArati(アルティイ)”のお渡しとなります。」の記載がある。
しかしながら,該証拠は,Arati(アルティイ)の頒布会の開催案内であるものの,開催の日時や場所についての記述はなく,また,かかる頒布会が開催された事実,及び頒布会において,実際に,「Arati(アルティイ)」と表示された商品「香水」が販売されたことは証明されていない。
(4)乙第6号証は,「セッションの流れ」と表示された書面であり,auraG, Arati,GIAME等の製品の販売の流れを示すにすぎず,乙第7号証ないし乙第9号証は,被請求人の事業を紹介する資料であるから,いずれも本件商標の使用の事実を証するものということができない。
(5)まとめ
以上からすれば,被請求人が提出した証拠からは,本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において,本件商標権者,通常使用権者又は専用使用権者のいずれかが,本件指定商品のいずれかについて,本件商標を使用していることを被請求人が証明したものということができず,かつ,本件指定商品について,本件商標を使用していないことについて正当な理由があることも明らかでない。
3 その他の被請求人の主張について
被請求人は,「本件取消審判の請求については,(中略),民法上の不法行為疑義のある請求人の請求であって,この点について考慮されるべきである」旨主張している。
参考資料として提出された書簡をみるに,その1葉目には,平成28年1月21日付けの請求人から本件商標権者にあてた,本件商標について相談をしたいことが,2葉目には,請求人が,登録第5485498号商標「ALTY」(第21類)を登録した事実が,3葉目及び4葉目には,請求人が「ALTY」ブランドの美容液(基礎化粧品)を生産・販売をするにあたり,本件商標権者が権利を有する本件商標について承諾を得たい旨が記載され,さらに,5葉目には,承諾を得たい理由について,第3類には本件商標が登録されているためこれと称呼が類似する「ALTY」を登録できないこと等が記載されている。
上記によれば,請求人は,本件審判を請求するに先立ち,本件商標権者が権利を有する本件商標について使用許諾を得たい旨の意思を示し,本件商標権者に協力を求めたものといえる。
しかしながら,これらの請求人の行為が,いかなる理由で本件商標権者に対する不法行為に相当するかについて具体的な主張,立証がなされていないから,請求人の本件審判の請求に民法上の不法行為疑義があるということはできない。
また,商標法第50条に基づく商標登録の取消しの審判は,何人も請求することができるものであって,本件商標の使用については,前記2に記載のとおりである。
4 むすび
したがって,本件商標の登録は,商標法第50条第1項の規定により,取り消すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
審理終結日 2017-03-29 
結審通知日 2017-04-03 
審決日 2017-04-17 
出願番号 商願2005-2917(T2005-2917) 
審決分類 T 1 31・ 1- Z (Y03)
最終処分 成立  
特許庁審判長 青木 博文
特許庁審判官 小松 里美
田中 亨子
登録日 2005-12-09 
登録番号 商標登録第4914646号(T4914646) 
商標の称呼 アルティイ、アルティー 
代理人 日高 賢治 

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