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審決分類 |
審判 全部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない Y10 |
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管理番号 | 1329219 |
審判番号 | 取消2013-300865 |
総通号数 | 211 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標審決公報 |
発行日 | 2017-07-28 |
種別 | 商標取消の審決 |
審判請求日 | 2013-10-10 |
確定日 | 2017-01-04 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第2368849号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 |
理由 |
第1 本件商標 本件登録第2368849号商標(以下「本件商標」という。)は、「マーメイド」の片仮名及び「MERMAID」の欧文字を二段に横書きしてなり、昭和63年3月7日に登録出願、第10類「写真機械器具、その他本類に属する商品」を指定商品として平成4年1月31日に設定登録され、その後、平成19年11月14日に指定商品を第10類「血糖分析用の分析機械器具,X線写真(医療用標本),医療器具ケース,医療器具収納かばん,医療検査用スポイト,医療用のX線装置用防護被服,医療用の放射線透写スクリーン,医療用の放射線防護装置,医療用遠隔画像診断装置,医療用画像記録装置,医療用画像処理装置,医療用口腔撮像器,医療用のMRI環境装置,その他の医療用機械器具」のほか、第1類、第5類、第6類、第8類、第9類、第11類、第12類及び第16類に属する商品とする書換登録がされ、更新登録は第10類に属する商品についてのみされ、現に有効に存続しているものである。 そして、本件審判の請求の登録日は、平成25年10月29日である。 第2 請求人の主張 請求人は、本件商標の登録を取り消す、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由、被請求人の答弁に対する弁駁の内容、口頭審理陳述要領書における陳述及び上申書における陳述を以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第6号証を提出した。 1 請求の理由 本件商標は、その指定商品について、継続して3年以上日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれもが使用していないから、商標法第50条第1項の規定に基づき、その登録を取り消すべきものである。 2 弁駁の内容 被請求人は、乙第1号証ないし乙第13号証を提出し、「型式:MGU-100Bの『乳房X線撮影装置』(商標:Mermaidが付された)が平成23年2月28日頃及び平成23年3月9日頃にコニカミノルタエムジー株式会社が、コニカミノルタヘルスケア株式会社を介して国立大学法人に納品されている」ことをもって、本件審判の請求の登録前3年以内(以下「要証期間内」という場合がある。)に日本国内において本件商標と社会通念上同一と認められる商標の使用をしていると主張する。 しかしながら、被請求人の提出に係る全証拠を総合しても、要証期間内に本件商標と社会通念上同一と認められる商標を使用した事実があるとはいえない。以下、その理由を述べる。 (1)国立大学法人N大学への販売 被請求人は、乙第7号証ないし乙第10号証を提出し、型式:MGU-100Bの「乳房X線撮影装置」(商標:Mermaidが付された)が国立大学法人N大学に納品されたと主張する。 ア 見積書(乙7)について 被請求人は、「コニカミノルタヘルスケア株式会社による平成22年12月15日発行の国立大学法人N大学宛の見積書写し(乙7)の品名に『マンモ撮影システム PCM一式』(構成:乳房X線撮影装置 MGU-100B)と記載され、乙第4号証の型式と一致していることから商標『Mermaid』が付された乳房撮影装置であることが理解できる。」と主張する。 しかしながら、乙第7号証ないし乙第10号証において、取引の対象となっている商品は、「マンモ撮影システム PCM 一式」であり、乙第7号証に「(構 成)」と記載されているように、「乳房撮影装置 MGU-100B」が上記システムを構成する要素にすぎないことは明らかである。 仮に、「乳房撮影装置 MGU-100B」が独立して商取引の対象であったとしても、乙第7号証に基づいて、当該装置について本件商標の使用をしていると主張することはできない。以下に、その理由を述べる。 第1に、乙第7号証には、本件商標も、これと社会通念上同一と認められる商標も、表示されていない。 第2に、「MGU-100B」が乙第4号証(PCM systemのパンフレット)の型式と一致しているからといって、「乳房X線撮影装置」に商標「Mermaid」が付されているとはいえない。被請求人によると、乙第4号証は、見積書の日付から5年以上も前の、2005年3月(平成17年3月)に発行されたものである。当時のパンフレットに掲載されている装置が、たとえ型式が同じであったとしても、平成22年に同一の商標を付して独立して販売されているとは限らない。また、乙第7号証に記載された、システムの「構成」には、「乳房撮影装置 MGU-100B」の他に「REGIUS Vsatge MODEL 190システム」及び「DRYPRO Vstage MODEL 793」が含まれるが、後二者には、型式とは別に、標章「REGIUS」及び「DRYPRO」が表示されている。「MGU-100B」に個別の商標が使用されているというのであれば、見積書に明示しないのは不自然である。むしろ、見積書の発行時には、型式「MGU-100B」の乳房撮影装置に商標は使用されていなかったというのが相当である。 第3に、被請求人が答弁書第5頁において自認するとおり、型式「MGU-100B」の乳房X線撮影装置は、コニカミノルタエムジー株式会社の他に、少なくとも東芝メディカルシステムズ株式会社が販売していた。メーカーが他社製品を販売することは通常行われているから、型式「MGU-100B」が乙第4号証に記載された商品を示すとは限らない。 第4に、乙第7号証が顧客に送付された取引書類であるにもかかわらず、社判はおろか、担当者の押印もないのは、きわめて不自然である。 なお、後述のとおり、乙第11号証ないし乙第13号証の内容に徴しても、乙第7号証に記載された「乳房撮影装置 MGU-100B」が商標「Mermaid」を付して取引された商品であるということはできない。 イ 受注票・商品仕入依頼書(乙8)、売上伝票(乙9)及び売掛元帳(乙10)について 被請求人は、当該商品が平成23年2月末頃に納品された証拠として、国立大学法人N大学宛の「受注票・商品仕入依頼書」写し(乙8)、国立大学法人N大学宛の「売上伝票」写し(乙9)及び国立大学法人N大学宛の「売掛元帳」写し(乙10)を挙げている。 しかしながら、乙第8号証には、発行日も発行会社も記載されていないから、証明力がまったくない。また、被請求人が同じ時期に国立大学法人T大学保健学科宛に発行したと主張する「受注票・商品仕入依頼書」(乙12)がプリンタで印字されているのに、同種の取引に係る乙第8号証が手書きであるのは、きわめて不自然である。 乙第9号証については、発行会社が不明であるし、右上に「再発行画面」の表示があり、後日、任意の内容を作成できることがうかがわれる。 そして、乙第8号証ないし乙第10号証のいずれの書類にも、「原価単価」又は「原価金額」の欄に「400000」と記入されているが、製品原価がわかるような書類を買主あてに発行することは考えられない。すなわち、これらの書類は、いずれも被請求人が作成した社内文書にすぎず、証明力に乏しいものである。 (2)国立大学法人T大学への販売 ア 請求書(乙11)について 被請求人は、「PCM・X線撮影装置『MERMAID一式』に関して、製造又は卸元であるコニカミノルタエムジー株式会社から国内販売会社であるコニカミノルタヘルスケア株式会社宛に2011年(平成23年)3月3日付けで請求書(乙11)が発行されている。」と主張する。 しかしながら、当該請求書に表示されている商標は、「MARMID」である。本件商標「MERMAID」の、わずか7文字という短い構成中、第2字の「A」が「E」、第5字の「I」が「AI」と、異なる文字で表示されているものであって、構成文字及び文字数の差異により、本件商標とは、外観においても称呼においても別異のものである。そして、本件商標がよく知られた既成語よりなるのに対し、「MARMID」は何らの意味も有しない造語であることからも、本件商標とは社会通念上同一と認められない。両商標は、まったく別異の商標である。 被請求人は、上記の商標の相違について、「コニカミノルタエムジー株式会社から製造されている商品は『MERMAID』だけであり、単なる誤記にすぎない。」と主張する。 しかしながら、「コニカミノルタエムジー株式会社から製造されている商品は『MERMAID』だけ」という被請求人の主張には何ら根拠がないばかりか、受注票・商品仕入依頼書の写し(乙12の1)及び売上伝票の写し(乙13)の1行目にも「PCMX線撮影装置MARMID一式」の記載があり、これらの書類は、別々の者が発行し承認している。商標の使用は、商標権者が登録商標の管理の一環として入念に配慮すべきところ、何人もの社員が同じ誤記をし、これを看過することは考えられず、当該装置は、本件商標ではなく、「MARMID」という商標の下で販売されていたものといえる。 したがって、乙第11号証は、本件商標の使用を証明するものではない。 イ 受注票・商品仕入依頼書(乙12)及び売上伝票(乙13)について 被請求人は、「受注票・商品仕入依頼書」写し(乙12)、売上伝票写し(乙13)のいずれもが「国立大学法人T大学保健学科宛」であるというが、これらの書類が買主あてに発行されることは考えられないのは上記のとおりである。 そもそも、乙第13号証は、全体的に不鮮明であり、特に発行日が判読困難であり、証明力に乏しい。 本件取引について被請求人が提出した証拠は、すべて被請求人又はその関連会社の社内文書であり、国立大学法人に交付され又はそこから受領した文書は皆無であることをもあわせ考えると、本件商標を使用した事実を認めるに足りる証拠はない。 (3)国立大学法人N大学への販売と、国立大学法人T大学への販売の関係 被請求人は、商標「Mermaid」が付された、型式:MGU-100Bの「乳房X線撮影装置」を、国立大学法人N大学及び国立大学法人T大学に販売したと主張する。 国立大学法人N大学に販売したとされる「乳房撮影装置 MGU-100B」に使用された商標についての直接証拠はないが、国立大学法人T大学に販売したとされる「PCM X線撮影装置」に商標「MARMID」が使用されていたことは、乙第11号証ないし乙第13号証によって明らかである。 そして、乙第11号証ないし乙第13号証の中には、「MGU-100B」という型式は一切表示されていないから、「MARMID」という商標の下、国立大学法人T大学に販売したとされる「PCM X線撮影装置」は、「乳房撮影装置 MGU-100B」とは異なる商品であると考えるのが自然であるが、被請求人の主張によると、これらは同一の商品ということになる。 そうとすると、ほぼ同じ時期に同一の商品について異なる商標が使用されていたことになり、これは通常あり得ないことである。 このように、乙第11号証ないし乙第13号証の内容に徴しても、乙第7号証に記載された「乳房撮影装置 MGU-100B」に商標「Mermaid」が付されていたかどうか不明である。 (4)なお、乙第6号証(日本医学放射線学会の仕様基準を満たした乳房X線撮影装置の一覧表)は、これが作成された時点で、列挙された装置が医療機関に設置されていることを推認させるものではあっても、商標法第2条第3項に規定する、商標の使用の事実(例えば、商品に標章を付したものの譲渡)を証明するものではない。 (5)以上のとおり、被請求人は、平成23年2月28日頃及び同年3月9日頃に、乳房X線撮影装置が、現実に第三者に納品されたのか、当該装置について本件商標が使用されていたのか証明していない。 したがって、本件審判の請求の登録前3年以内に、本件商標と社会通念上同一と認められる商標をその取消請求に係る商品について使用した事実があるとはいえない。 3 口頭審理陳述要領書における陳述 (1)意見の趣旨 ア 被請求人は、N大学及びT大学に販売した商品が「乳房X線撮影装置」であり、その販売したという事実を、購入者本人のもので証明するとして、「受入伝票 受領書」(乙19、乙21?乙24)を提出したが、実際にN大学及びT大学に販売されたことを証する書類として認めることはできない。 イ 被請求人は、発行元が異なる乙第11号証ないし乙第13号証の取引伝票に、いずれも「MARMID」と記載されているのは、データベースの訂正を避けるためであると主張するが、単なる誤記とはいえない。 ウ 被請求人が提出した新たな証拠は、いずれも、商標法第50条第2項に規定する証明をしたものと認めることはできない。 (2)意見の内容 ア 被請求人が販売したと主張する「乳房X線撮影装置」について 被請求人は、平成17年(2005年)3月発行のパンフレット(乙4)で、製造業者:東芝メディカル製造株式会社及び販売業者:東芝メディカルシステムズ株式会社で承認をとった、MGU-100B形と同じ承認番号を付しているから、販売に係る商品が「乳房X線撮影装置」あることは明らかであり、パンフレットに付された商標が「Mermaid」であることから、本件商標が平成23年(2011年)2月・3月頃に使用されたと主張する。 しかしながら、パンフレット記載の、商標「Mermaid」が付された装置が、「MGU-100B」と同一の商品であり、この装置が平成17年(2005年)ごろ販売されていたとしても、パンフレットの発行から6年も経過した平成23年(2011年)に、コニカミノルタエムジー株式会社が販売した、型番「MGU-100B」の乳房X線撮影装置のすべてに、商標「Mermaid」が付されていたとは限らない。 また、被請求人が販売した「PCMsystem」の構成装置のうち、CR画像用読取装置には「REGIUS」、画像読取装置には「DRYPRO」の商品名が使用されており、これらは、いずれもコニカミノルタエムジー株式会社の登録商標である(甲2、甲3)。そして、N大学に対して発行された見積書(乙7)及びN大学教授との覚書(乙17)の中で、CR画像用読取装置及び画像読取装置については、それぞれ商標「REGIUS」、「DRYPRO」の記載がある。しかしながら、「乳房撮影装置 MGU-100B」については、本件商標が存在するにもかかわらず、「Mermaid」の記載がない。 したがって、平成23年(2011年)にコニカミノルタエムジー株式会社が販売したと主張する「乳房撮影装置MGU-100B」については、商標「Mermaid」は使用されていなかったと、強く推認できるものである。 イ N大学における取引を証明する書面について 被請求人は、コニカミノルタエムジー株式会社がN大学教授に平成20年(2008年)4月1日に無償貸与する旨の覚書(乙17)が締結され、該覚書は平成22年(2010年)12月31日をもって終了し、その後、同教授がコニカミノルタエムジー株式会社から「貸与機器」を有償にて譲り受ける旨の覚書(乙18)が締結され、これに伴い乙第7号証ないし乙第11号証の書類が発行されたと主張する。 しかしながら、「貸与機器」のうち、「乳房撮影装置 MGU-100B」に商標「Mermaid」が使用されていたとはいえないのは、上記のとおりであるし、乙第11号証は、商標権者側の作成によるものであり、乙第7号証ないし乙第11号証、乙第17号証及び乙第18号証のいずれにも、商標「Mermaid」の記載はない。 また、N大学との取引に関する見積書(乙7)、売掛元帳(乙10)及び「売上伝票受領書」(乙19)は、すべてコニカミノルタへルスケア株式会社が発行しているから、これらの書類に係る商品は、N大学教授がコニカミノルタエムジー株式会社から譲り受けたとされる「貸与機器」とは別のものである。 また、被請求人は、N大学教授の指導の下で作成された平成25年度学位申請論文(乙20)に、「PCM装置(コニカミノルタ社 Mermaid)で拡大撮影を行った」と記載されていることから、平成23年(2011年)2月28日にPCMのマンモ撮影システムの「Mermaid」がN大学に納品され、当該装置を用いてN大学の学生が平成25年に学位論文を発表しており、PCMのマンモ撮影システムの「Mermaid」が現実に販売され、利用されていることが明らかであると主張する。 しかしながら、上記のとおり、N大学の教授に貸与された装置は、平成23年(2011年)2月28日に納入された装置とは別のものであり、当該装置がN大学内に設置されているかどうかも不明である。そもそも、教授及び学生による装置の利用は、商標の使用に該当しない。 また、仮に、被請求人が主張するように、コニカミノルタエムジー株式会社がN大学教授に、商標「Mermaid」が表示された乳房撮影装置を貸与し、その後に貸与機器を譲渡したとすれば、同装置の納品、すなわち引渡しは、平成23年(2011年)2月28日ではなく、覚書(乙17)の発効時である平成20年(2008年)4月1日ということになる。すなわち、商標法2条3項2号にいう、商品に標章を付したものの引渡しは、要証期間外の平成20年(2008年)4月1日に行われ、その後、当該商品を譲渡したとしても、何ら商標の機能を発揮させる行為はないから、本件商標の使用をしたとはいえない。 さらに、被請求人は、N大学のA氏の捺印に係る「売上伝票 受領書」(乙19)を提出し、購入者本人の証明であると主張する。 乙第19号証のフォームは、コニカミノルタヘルスケア株式会社が作成し、受領日も同社が印字し、「A氏」の印鑑が捺されているものである。高額の医療機械器具の納品に際し、受領者の公印も捺されず、役職名の記載もないのは、不自然であり、このような書類は、フォームと三文判があれば作成できる、証明力に乏しいものである。そして、乙第19号証には、商標「Mermaid」も、被請求人が同一のものと主張する装置の型番「MGU-100B」も、表示されていない。 以上のとおり、被請求人が提出した新たな証拠も、本件商標を使用した事実を認めるに足りるものではない。 ウ T大学における取引を証明する書面について 被請求人は、T大学のB教授の捺印に係る「売上伝票 受領書」(乙21?乙24)を提出し、購入者本人の証明であると主張するが、上記のとおり、証明力に乏しいものである。そして、いずれの書類にも、商標「Mermaid」も、被請求人が同一のものと主張する装置の型番「MGU-100B」も、表示されていない。 また、被請求人は、納品された「マンモ撮影装置 PCMシステム」は、乙第26号証の放射線診断科のウェブぺージにて「コニカミノルタ社 PCMシステムMermaid」として紹介されており、納品された商品(Mermaid)は、まだ利用されている状況にあると主張する。 しかしながら、乙第26号証は、本件審判の請求後の2014年9月11日に印刷されたものであり、証明力に乏しいものである。そして、写真の「Mermaid」の文字も読み取れないから、この装置が平成23年(2011年)3月に納入された装置と同一である証拠にはならない。なお、病院内の装置の利用、上記ウェブページの表示は、商標の使用に該当しない。 以上のとおり、被請求人が提出した新たな証拠も、本件商標を使用した事実を認めるに足りるものではない。 エ T大学宛ての取引書頻で、「MARMID」と誤記したままとなった事由 被請求人は、コニカミノルタエムジー株式会社の発行の段階で「MARMID」と付して発行されてしまい、これをベースにコニカミノルタヘルスケア株式会社は、受注伝票・商品仕入伝票及び売上伝票とデータベース処理化を行ったと主張する。 しかしながら、「データベース処理化」といっても、社員がデータベ一スに入力し、伝票を発行するものである。コニカミノルタヘルスケア株式会社、コニカミノルタエムジー株式会社という異なる発行元が、それぞれの取引伝票に「MARMID」と記載した事実に変わりはない。 また、乙第12号証の1及び乙第13号証に「6055 PCM X線撮影装置MARMID一式」と記載されており、当該商品コードの商品名を修正することによって、データベースは、一度に容易に訂正することができる。 さらに、「Mermaid」は、「人魚」を意味する、中学生程度でも理解できる英語であって、たとえ綴りがわからず、「MARMEID」とロ-マ字風に誤記することはあっても、「MARMID」と誤記することはありえない。むしろ、「MARMID」は、その構成文字に対応して「マーミッド」の称呼を生じる、語呂のよい造語であるから、これを商標として使用することに何ら不自然なところはない。 以上のとおり、被請求人の主張は、発行元の異なる取引伝票に記載された「MARMID」が、いずれも単なる誤記であることを合理的に説明するものではない。 オ 商標「Mermaid」が付された乳房X線撮影装置の取引形態について 被請求人は、コニカミノルタが販売した「PCMsystem」の主たる構成である「乳房X線撮影装置」は、製造業者:東芝メディカル製造株式会社及び販売業者:東芝メディカルシステムズ株式会社であるが、東芝メディカル製造株式会社との差別化をはかるべくパンフレット及び「乳房X線撮影装置」の商品に「Mermaid」の商標を付していると主張する。これは、製品の製造を他社に委託し自社製品として市場に出荷する、いわゆるOEM(相手先ブランド名製造、納入先商標による受託製造)にほかならない。 乳房X線撮影装置のような医療用具については、従来、その製造及び輸入を規制し、これらの行為を業として営もうとする者は、業の許可を取得することとし、医療用具そのものについては承認を得ることとしていた。しかし、OEM製造等、企業活動形態が多様化し、市販後の国民の安全を図ることを目的として、薬事法の大改正がされ、平成17年(2005年)4月1日に施行された。 改正薬事法の下では、製造段階の規制(医療用具の製造承諾)を大転換し、製造販売、つまり市場出荷(上市)を規制することとした。薬事法での「製造販売」とは、その製造等(他に委託して製造をする場合を含み、他から委託を受けて製造をする場合を含まない。)をし、又は輸入をした医療機器を販売し、賃貸し、又は授与すること、いわゆる元売りをいう(2条12項)。改正後は、製造販売業について許可を必要とし、医療機器そのものについては、性能、安全性等の面で問題がないことの承認や認証を求めることとした。製造業は、製造のみを行う業態に特化させ、市場出荷を行う製造販売業と分離した。これを模式的に示したものが、甲4の4ページ下の図である。 そして、本件におけるコニカミノルタエムジー株式会社のように、製品の製造を他社に委託し自社製品として市場に出荷する業者は、薬事法改正後は、製造販売業の許可を得なければならず(甲4の5ぺージ上の図)、現に、同社は第二種医療機器製造販売業者である(甲5)。製造販売業者(本件でのコニカミノルタエムジー株式会社)は、製品を直接、医療機関やエンドユーザーに販売することはできず、常に販売業者(本件でのコニカミノルタエムジー株式会社(審決注:「コニカミノルタヘルスケア株式会社」の誤記と認める。)を経由することになる(甲4の5ページ下の「製品の流れ」図)。 したがって、コニカミノルタエムジー株式会社がN大学教授に平成20年(2008年)4月1日に無償貸与した装置を、あらためて平成23年(2011年)に譲渡したということはありえない。 医療機器の各品目についてみると、従来は、製造について厚生労働大臣の承認を要したが、薬事法改正後は、製造段階での承認は不要とし、製造販売業者が承認又は認証を得ることを市場出荷するためめ要件とした(甲4の8ページ、9ぺージ上の図)。薬事法14条1項によると、医療機器の製造販売をしようとする者は、品目ごとにその製造販売についての厚生労働大臣の承認を受けなければならない。そして、乳房X線撮影装置は、厚生労働大臣が基準を定めて指定する管理医療機器であって、その販売をしようとする者は、登録認証機関の認証を受けなければならず(薬事法23条の2第1項、厚生労働省告示112号)、多額の認証費用がかかる。 このように、改正薬事法が施行された平成17年(2005年)4月1日以後は、商標「Mermaid」を付していない乳房X線撮影装置MGU-100Bについては、市場出荷した東芝メデイカルシステムズ株式式会社が製造販売業者として同装置の認証を得ていれば、これを購入したコニカミノルタエムジー株式会社が販売することに問題はないが、商標「Mermaid」を付した装置は、コニカミノルタエムジー株式会社が元売りとして市場出荷するので、同社が製造販売業者となり、自ら認証を得る必要がある。 ところで、薬事法第63条の2によって、医療機器には、使用上の注意、保守点検に関する事項等を記載した添付文書を作成し添付することが義務付けられている。 したがって、平成23年(2011年)に「Mermaid」の商標を付した乳房X線撮影装置を販売したというのであれば、2012年12月7日改訂の「デジタル式乳房用X線診断装置」の添付文書(甲6)のように、薬事法改正後の認証を取得し、末尾に「製造販売業者:コニカミノルタエムジー株式会社」、「製造業者:東芝メディカル製造株式会社」、「販売業者:コニカミノルタヘルスケア株式会社」と記載されているものが作成されたはずであって、被請求人は、これを提出するのが自然である。 しかるに、被請求人が提出した添付文書(乙14)は、左上に「2005年1月18日」と記されていることから、旧薬事法の下での製造承認に基づいたものである。 以上のことから、商標「Mermaid」が付された乳房X線撮影装置については、改正薬事法の下での添付文書が作成されていなかったと、強く推認されるものである。 そうとすれば、薬事法改正後の同装置の販売はありえないから、本件商標の使用もなかったといわざるをえない。 以上のとおり、被請求人は、平成23年(2011年)2月28日頃及び平成23年(2011年)3月9日頃に、乳房X線撮影装置が、現実に第三者に納品されたのか、当該装置について本件商標が使用されていたのか証明していない。 したがって、本件審判の請求の登録前3年以内に、本件商標と社会通念上同一と認められる商標をその取消請求に係る商品について使用した事実があるとはいえない。 4 平成26年11月25日付け上申書における陳述 被請求人は、乙第31号証ないし乙第39号証を追加提出し、「型式:MGU-100Bの『乳房X線撮影装置』(商標:Mermaidが付された)が平成23年2月28日頃及び平成23年3月9日頃にコニカミノルタエムジー株式会社が、コニカミノルタヘルスケア株式会社を介して国立大学法人に納品されている」ことをもって、要証期間内に日本国内において本件商標と社会通念上同一と認められる商標の使用をしていると主張する。 しかしながら、被請求人の提出に係る全証拠を総合しても、要証期間内に本件商標と社会通念上同一と認められる商標を使用した事実があるとはいえない。以下、その理由を述べる。 (1)国立大学法人N大学及びT大学への無償貸与 被請求人が、第1回口頭審理において陳述したとおり、N大学への「乳房X線撮影装置」の無償貸与の日付けは、2008年(平成20年)4月1日以降である。 また、被請求人が、平成26年11月11日付け上申書において述べたとおり、T大学への「乳房X線撮影装置」の無償貸与の日付けは不明である。 以上のことから、要証期間内に商標「Mermaid」を付した「乳房X線撮影装置」が貸与されたことは、何ら証明されていない。 そして、被請求人は、N大学にもT大学にも、装置の無償貸与の後、有償譲渡したと主張する。これによると、商標法第2条第3項第2号にいう、商品に標章を付したものの引渡しは、装置の納品時すなわち貸与時にされたことになる。引渡し(物のうえの現実の支配の移転)をした商品を、同一人にさらに譲度(所有権の移転)した場合、数ある商品の中から当該商品を選択する余地はなく、譲渡時には、自他商品の識別標識である商標の機能は何ら発揮されていないから、商標の使用をしたとはいえない。 したがって、要証期間内に、商標「Mermaid」を付した「乳房X線撮影装置」が貸与されたことが証明できない以上、仮に、その後、譲渡があったとしても、本件商標の使用をしたとはいえない。 (2)コニカミノルタエムジー株式会社の「Mermaid」(MGU-100B)がマンモグラフィを示すものとして業界内で周知であった事実 被請求人は、乙第31号証(特定非営利法人日本乳がん検診精度管理中央機構のウェブページ)を提出し、平成26年4月現在、「Mermaid(MGU-100B)」が紹介されていることをもって、被請求人の商品名「Mermaid」の商品が放射線学会の仕様基準を満たす乳房X線撮影装置として、需要者及び取引者間において周知であると主張する。 しかしながら、乙第31号証は、本件審判の請求後に印刷されたものであり、要証期間内の本件商標の使用とは関係がない。また、乙第31号証の記述は、技術情報の提供にすぎず、仮に平成26年4月現在、「Mermaid」が周知であったとしても、被請求人が要証期間内に販売したと主張する乳房X線撮影装置に「Mermaid」が付されていたかどうかとは関係がない。 また、被請求人は、乙第32号証ないし乙第39号証を提出し、「Mermaid」が付された乳房X線撮影装置は、N大学、T大学だけでなく多数の病院に販売され、マンモグラフイの取引業界において「Mermaid」といえばコニカミノルタ、コニカミノルタのマンモグラフィといえば「Mermaid」というように知られていたと主張する。 しかしながら、乙第32号証及び乙第39号証には、「コニカミノルタ」の記載はなく、乙第39号証には、「東芝製乳房X線撮影装置」と記載されている。需要者の中には、「Mermaid」をコニカミノルタではなく、東芝の製品と認識する者もいることがうかがわれる。 以上のとおり、上記の病院のウェブページによっては、「Mermaid」といえばコニカミノルタ、コニカミノルタのマンモグラフィといえば「Mermaid」というように知られていたとはいえない。仮に現在、「Mermaid」が周知であったとしても、被請求人が要証期間内に販売したと主張する乳房X線撮影装置に「Mermaid」が付されていたかどうかとは関係がない。 (3)乳房X線撮影装置への商標「Mermaid」の使用について 請求人が、コニカミノルタエムジー株式会社が販売した、型番「MGU-100B」の乳房X線撮影装置のすべてに、商標「Mermaid」が付されていたとは限らないと主張したのに対し、被請求人は、平成26年10月21日付けの口頭審理陳述要領書(2)において、乙第27号証(本装置の供給に関する覚書)を提出し、本装置の販売に際し、コニカミノルタエムジー株式会社が指定する商標を東芝メディカル製造株式会社又は東芝メディカルシステムズ株式会社と合意の上で本装置に付すことを売買契約及び販売条件に盛り込むことが取り決められていると主張する。 しかしながら、本覚書は、前文に規定されているとおり、「甲(東芝メディカル製造株式会社)が乙(コニカミノルタエムジー株式会社)から提供される仕様に基づいて製造される乳房用X線撮影装置」についてのものであって、コニカミノルタエムジー株式会社の仕様によらない、東芝メディカル製造株式会社のオリジナル製品を、コニカミノルタエムジー株式会社に供給する可能性を排除していない。また、本覚書の締結日は、被請求人が本件商標を使用したと主張する、平成23年(2011年)より7年も前であって、このときまで有効に存続していたか疑問である。 また、被請求人は、「Mermaid」が付されていた乳房X線撮影装置については、東芝メディカルシステムズ株式会社が製造販売業者であって、被請求人及びその関連会社は、同社から供給される販売業者にすぎないと主張する。そうとすれば、遅くとも、被請求人が「Mermaid」が付されていた乳房X線撮影装置をN大学及びT大学に譲渡したと主張する、平成23年(2011年)2月ないし3月までには、口頭審理陳述要領書(2)3頁21行目に記載されたとおり、当該装置の製造販売業者である東芝メディカルシステムズ株式会社が薬事法の認証を受け、添付文書を作成しているはずである。そして、販売業者である被請求人及びその関連会社は、2005年1月18日に作成された「乳房X線撮影装置 MGU-100B形」の添付文書(乙14)ですら保管しているのであるから、それよりも新しいものを提出することに格別の困難が伴うとも考えられない。平成23年(2011年)2月ないし3月の時点で、「Mermaid」が付されていた乳房X線撮影装置がどのように販売されていたかについては、このときに販売された乳房X線撮影装置の添付文書をみるのが効果的と思われるが、被請求人は、このような提出容易な証拠を提出していない。 (4)商品名「Mermaid(MGU-100B)」について 乙第6号証(マンモグラフィ検診精度管理中央委員会のウェブページ)及び乙第31号証(特定非営利法人日本乳がん検診精度管理中央機構のウェブページ)によると、東芝メディカルシステムズ株式会社の装置は、「MGU-100B」、コニカミノルタエムジー株式会社の装置は、「MGU-100B(Mermaid)」と表記されている。 したがって、東芝メディカルシステムズ株式会社が販売する装置は「MGU-100B」、コニカミノルタエムジー株式会社が販売する装置は「MGU-100B(Mermaid)」として流通していることがわかる。 そして、被請求人が販売した「PCMsystem」の構成装置のうち、CR画像用読取装置には「REGIUS」、画像読取装置には[DRYPRO]の商品名が使用されており、これらは、いずれもコニカミノルタエムジー株式会社の登録商標である(甲1、甲2)。また、N大学に対して発行された見積書(乙7)及びN大学教授との覚書(乙17)の中で、CR画像用読取装置及び画像読取装置については、それぞれ商標「REGIUS」、「DRYPRO」の記載がある。しかしながら、「乳房撮影装置 MGU-100B」については、本件商標が存在するにもかかわらず、「Mermaid」の記載がない。 以上のことから、平成23年(2011年)にコニカミノルタエムジー株式会社が販売したと主張する乳房撮影装置は、「MGU-100B(Mermaid)」ではなく、コニカミノルタエムジー株式会社の仕様によらない「MGU-100B」であって、商標「Mermaid」は使用されていなかったと、強く推認できるものである。 (5)以上のとおり、被請求人は、「Mermaid」が付されていた乳房X線撮影装置を、要証期間内にN大学又はT大学に無償貸与したという証拠を何ら提出していない。 また、無償貸与後の有償譲渡にしても、要証期間内に本件商標と社会通念上同一と認められる商標を使用したことの直接証拠を何ら提出していない。さらに、間接事実として、平成23年(2011年)2月ないし3月にN大学及びT大学に乳房X線撮影装置を納入したと主張するが、商標権者の関係者以外の者が作成に関わった、唯一の取引書類である「売上伝票 受領書」(乙19、乙21?乙24)は、フォームと三文判があれば作成できる、証明力に乏しいものである。そして、これらの書類には、商標「Mermaid」も、被請求人が同一のものと主張する装置の型番「MGU-100B」も、表示されていない。 このように被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に、本件商標と社会通念上同一と認められる商標をその取消請求に係る商品について使用したことを証明しているとはいえない。 第3 被請求人の答弁 被請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を答弁書、口頭審理陳述要領書、口頭審理陳述要領書(2)及び上申書において以下のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第39号証(枝番を含む。)を提出した。 なお、以下、枝番のすべてを引用するときは、枝番の記載を省略する。 審決注:被請求人は、平成26年11月11日付け上申書において証拠方法として、乙第27号証ないし乙第35号証(枝番を含む。)を提出したが、口頭審理陳述要領書(2)において乙第27号証ないし乙第30号証の証拠番号は、既に使用されていたので、上申書に付された証拠番号を順次繰り下げて、乙第31号証ないし乙第39号証(枝番を含む。)と置き換えて取り扱う。 1 答弁書における主張 (1)本件商標の経緯 ア 本件商標は、登録原簿(乙1)にあるようにコニカ株式会社の名義で平成4年1月31日に旧第10類の指定商品「写真機械器具、その他本類に属する商品」を指定し、設定登録された。 イ 本件商標は、登録原簿(乙1)にあるように平成14年1月22日に更新登録されたが、その後第1類、第5類、第6類、第8類、第9類、第10類、第11類、第12類、第16類に書換登録申請が行われ、平成19年11月14日に書換登録された。 ウ 平成14年10月1日に「医薬品及び医薬部外品の製造及び販売」等を目的とするコニカミノルタエムジー株式会社が設立され、平成15年10月にコニカ株式会社及びミノルタ株式会社の事業の一部が連結子会社(100%)であるコニカミノルタエムジー株式会社に移譲された。 エ 本商標権の移転についは、平成18年8月24日に一般承継による商標権移転登録申請がされ、同年9月6日に登録された。 オ 平成19年4月1日にコニカミノルタ株式会社の「有価証券報告書」(乙2)の第5頁に記載されるように「コニカミノルタエムジー株式会社(連結子会社)の医療用製品の国内販売子会社であるコニカミノルタメディカル株式会社、医療用機器の技術サービス子会社であるコニカミノルタエムジーテクノサポート株式会社及びコニカミノルタエムジー株式会社の医療用製品国内販売部門が統合、コニカミノルタヘルスケア株式会社(連結子会社)が発足。」と記載されているように医療機器の販売は、平成19年4月1日よりコニカミノルタヘルスケア株式会社となった。コニカミノルタエムジー株式会社は、医療用製品の国内製造者としての地位は残った。 カ 平成24年1月24日に第10類の指定商品のみを残して更新登録された。 キ 平成25年4月1日に、乙第2号証のコニカミノルタ株式会社の「有価証券報告書」の第5頁に記載されるようにコニカミノルタエムジー株式会社は、コニカミノルタ株式会社に吸収合併された。 そこで、100%子会社であるコニカミノルタエムジー株式会社を吸収合併した存続会社のコニカミノルタ株式会社が答弁するものである。 (2)使用立証に係る商品 ア その当時商標権者であったコニカミノルタエムジー株式会社及びその国内販売子会社であるコニカミノルタヘルスケア株式会社(連結子会社)は、2004年11月(平成16年11月)コニカミノルタエムジー株式会社発行の「PCM system」のリーフレット(乙3)に示されるように「薬事承認番号:21000BZZ00717000」のデジタルマンモグラフィ装置Mermaid(マーメイド)に、別掲のとおりの商標「Mermaid」(以下「使用商標」という。)を付して販売をしている。 また、2005年3月(平成17年3月)コニカミノルタエムジー株式会社発行の「PCM system」のパンフレット(乙4)に示されるように「薬事承認番号:21000BZZ00717000」で、型式:MGU-100B型の「乳房X線撮影装置」Mermaid(マーメイド)が配布されている。 さらに、2009年2月(平成21年2月)コニカミノルタヘルスケア株式会社発行の「コニカミノルタ/PCMシステムの/臨床的な有用性」と題したデジタルマンモグラフィ装置Mermaid(マーメイド)に関する研究論文のパンフレット(乙5)が配布されている。 これは、平成19年4月1日からコニカミノルタヘルスケア株式会社が国内販売会社となった関係からコニカミノルタヘルスケア株式会社名義で発行されたもので、型式:MGU-100B型の「乳房X線撮影装置」は、従前どおりコニカミノルタエムジー株式会社から納品されている。 イ 型式:MGU-100B型の「乳房X線撮影装置」が医療機械器具か否かについて 前述したように型式:MGU-100B型の「乳房X線撮影装置」は、「薬事承認番号:21000BZZ00717000」が付記されていることから、平成10年に厚生大臣の承認を受けた医療用具であることが分かる。 すなわち、(a)数字3桁:平成10年、(b)数字2桁:厚生大臣承認、(c)欧文3字:BZZ→医療用具、(d)数字5桁:717→承認番号である。 ウ 型式:MGU-100Bのメーカー名について 日本医学放射線学会の仕様基準を満たした乳房X線撮影装置の一覧表(2012年9月現在)がマンモグラフィ検診精度管理中央委員会のホームページ(乙6)に記載されているように、東芝メディカルシステムズ株式会社の「MGU-100B」とコニカミノルタエムジー株式会社の「MGU-100B(Mermaid)」が掲載されている。 これらの事実は、平成24年9月現在、型式:MGU-100Bの医療用具は、仕様基準を満たした商品として認定されていることを示唆する。 以上の事実から、型式:MGU-100B型の「乳房X線撮影装置」は第10類の医療機械器具の概念に含まれる商品であることが分かる。 (3)使用の時期と不使用取消審判における立証期間及び使用立証 本件審判は、平成25年10月10日に請求されたが、登録原簿(乙1)への予告登録が平成25年10月29日であることから、平成22年10月29日から平成25年10月28日までに使用されていた事実が立証されなければならないことになる。 そこで、被請求人は、型式:MGU-100Bの「乳房X線撮影装置」(商標:Mermaidが付された)が平成23年2月28日頃及び同年3月9日頃にコニカミノルタエムジー株式会社が、コニカミノルタヘルスケア株式会社を介して国立大学法人に納品されていることを証明する。 ア 国立大学法人N大学への販売 (ア)コニカミノルタヘルスケア株式会社による平成22年12月15日発行の国立大学法人N大学宛の見積書写し(乙7)の品名に「マンモ撮影システム PCM一式」(構成:乳房撮影装置 MGU-100B)と記載され、乙第4号証の型式と一致していることから商標「Mermaid」が付された乳房撮影装置であることが理解できる。 (イ)この商品は、国立大学法人N大学宛の「受入票・商品仕入依頼書」写し(乙8)、平成23年2月28日発行の国立大学法人N大学宛の「売上伝票」写し(乙9)及びコニカミノルタヘルスケア株式会社による平成23年2月28日発行の国立大学法人N大学宛の「売掛元帳」写し(乙10)より平成23年2月末頃に納品されたことが分かる。 イ 国立大学法人T大学への販売 (ア)PCM・X線撮影装置「MERMAID一式」に関して、製造又は卸元であるコニカミノルタエムジー株式会社から国内販売会社であるコニカミノルタヘルスケア株式会社宛に2011年(平成23年)3月3日付けで請求書(乙11)が発行されている。PCM・X線撮影装置「MARMID」と記載されているが、コニカミノルタエムジー株式会社から製造されている商品は「MERMAID」だけであり、単なる誤記にすぎない。 (イ)この商品は、国立大学法人T大学保健学科宛の平成23年3月9日発行の「受入票・商品仕入依頼書」写し(乙12)、平成23年3月9日発行の国立大学法人T大学保健学科宛宛の売上伝票写し(乙13)に「PCM X線撮影装置」、「乳房X線撮影装置移設作業費」と記載されている。 (4)本件商標と使用商標の同一性について 本件商標は、片仮名「マーメイド」と欧文字「MERMAID」とを二段に併記したものであり、使用商標は、欧文字「Mermaid」を横一連に書したもので構成されている。 本件商標の上段の片仮名「マーメイド」と下段の欧文字「MERMAID」とは、称呼において「マーメイド」と共通することから、片仮名「マーメイド」から連想される観念及び英単語「MERMAID」から連想される観念においても「人魚」ということで共通している。 また、商標法第50条第1項の規定中の「平仮名、片仮名及びローマ字の文字の表示を相互に変更するものであって同一の称呼及び観念を生ずる商標」であることから、乙第3号証ないし乙第5号証で示される使用商標「Mermaid」と本件商標の欧文字「MERMAID」とは書体及び大文字・小文字の組合せにおいて若干異なるが、社会通念上同一と認められる範ちゅうに属するものであり、本件商標の使用に該当するものである。 (5)まとめ 以上述べたように、商標権者であるコニカミノルタ株式会社(吸収合併する前の法人コニカミノルタエムジー株式会社)は、本件審判の請求の登録前3年以内である平成23年3月頃に、日本国内で指定商品である「医療用機械器具」に含まれる商品「乳房X線撮影装置」に関して、本件商標と社会通念上同一と認められる欧文字の商標「Mermaid」を使用(販売)したことが明らかである 2 口頭審理陳述要領書における陳述 (1)答弁の趣旨 被請求人が、N大学及びT大学に販売した商品が「乳房X線撮影装置」であり、その販売したという事実の証明をグループ会社ではなく、購入者本人のもので証明する。 また、取引書類の段階で商標「MERMAID」とすべきところを、「MARMID」と書いてしまい誤記のままで書類が発行され続けたことについて弁明する。 さらに、被請求人が販売した「乳房X線撮影装置」が「MERMAID」であるという事実を、学位申請論文に記載された事実に基づき間接的に証明する。 (2)答弁の理由 ア PCM systemについて (ア)乳房X線撮影装置について 2004年11月発行のリーフレット(乙3)及び2005年3月発行のパンフレット(乙4)にPCM撮影装置(型式:MGU-100B形)が掲載されている。 これは、乙第14号証に示すように薬事承認番号:21000BZZ00717000の医療機器の添付文書情報に掲載されるように「乳房X線診断装置」といわれる医療機械器具であり、製造業者:東芝メディカル製造株式会社及び販売業者:東芝メディカルシステムズ株式会社で承認をとったものであり、型式としてMGU-100B形と記載されている。 (イ)CR画像読取装置について 2004年11月発行のリーフレット(乙3)及び2005年3月発行のパンフレット(乙4)にCR画像読取装置(商品名:REGIUS MODEL 190)が掲載されている。 これは、乙第15号証に示すように薬事認証番号:21600BZZ00168000の医療機器の添付文書情報に掲載されているように「ダイレクトディジタイザー」といわれる管理医療機器であり、製造業者:コニカミノルタテクノプロダクト株式会社、販売業者:コニカミノルタエムジー株式会社名義で平成16年に認証を受けた商品である。 (ウ)画像記録装置について 2004年11月発行のリーフレット(乙3)及び2005年3月発行のパンフレット(乙4)に画像記録装置(商品名:DRYPRO MODEL 793)が掲載されている。 これは、乙第16号証に示すように許可番号:11BZ0539で示される放射線用フィルムカセッテであり、製造業者:コニカミノルタテクノプロダクト株式会社、販売業者:コニカミノルタエムジー株式会社名義で許可を受けた商品である。 以上のように、コニカミノルタが販売した「PCM system」は、主たる構成である「乳房X線撮影装置」は、製造業者:東芝メディカル製造株式会社であり、販売業者:東芝メディカルシステムズ株式会社であるが、その他の構成である「CR画像読取装置」及び「画像記録装置」は、製造業者:コニカミノルタテクノプロダクト株式会社、販売業者:コニカミノルタエムジー株式会社名義で許可及び認証を得た装置であることから、オリジナリティを持った乳房X線撮影システム(マンモグラフィ)として販売しており、東芝メディカル製造株式会社との差別化をはかるべくパンフレット及び「乳房X線撮影装置」の商品に「Mermaid」の商標が付されている。 医療器具の製造販売の常識において、「MGU-100B」のような型式が同じでありながら異なる医療機械器具を販売することはあり得ず、乙第4号証で同じ承認番号を付していることからも、販売に係る商品が「乳房X線撮影装置」であることは明らかであり、パンフレットに付された商標が「Mermaid」であることから、本件商標が平成23年2月・3月頃に使用されている。 イ N大学における取引を証明する書面について 答弁書において、コニカミノルタグループのコニカミノルタヘルスケア株式会社が、N大学に宛てた平成22年12月15日付け見積書(乙7)、コニカミノルタヘルスケア株式会社による国立大学N大学宛の「受入票・商品仕入依頼書」(乙8)、平成23年2月28日にコニカミノルタヘルスケア株式会社発行の国立大学N大学宛の「売上伝票(写し)」(乙9)、平成23年2月28日にコニカミノルタヘルスケア株式会社発行の国立大学N大学宛の「売掛元帳(写し)」(乙10)、平成23年3月3日付けのコニカミノルタエムジー株式会社から国内販売会社であるコニカミノルタヘルスケア株式会社宛の請求書(乙11)を示したが、第三者による証明とは認められないという趣旨の弁駁が行われた。 そこで、被請求人は、国立大学法人N大学と2008年3月31日に締結したPCMのマンモ撮影システム(乳房撮影装置MGU-100B、REGIUS MODEL 190、DRYPRO MODEL 793)に関する無償貸与覚書(乙17)、国立大学法人N大学と平成22年1月12日に締結した無償貸与契約を平成22年12月31日もって終了する、貸与機器を有償にて譲渡する旨の覚書(乙18)が締結されていたことを証明する。 これに伴い、乙第7号証ないし乙第11号証の書類が発行されたわけであるが、平成23年2月28日付けの国立大学N大学の事務統括課会計掛のA氏の捺印に係る商品受領書(乙19)並びにN大学の教授の指導の下で作成された平成25年度学位申請論文の第43頁、第52頁、第58頁及び第64頁(乙20)で「PCM装置(コニカミノルタ社 Mermaid)を用いて拡大撮影が行われた旨記載されている事実を証明する。 かかる書証から、平成23年2月28日にPCMのマンモ撮影システムの「Mermaid」が国立大学N大学に納品され、当該装置を用いて国立大学Nの学生が平成25年に学位論文を発表しており、PCMのマンモ撮影システムの「Mermaid」が現実に販売され、利用されていることが明らかである。 ウ T大学における取引を証明する書面について 答弁書で被請求人は、コニカミノルタエムジー株式会社によるコニカミノルタヘルスケア株式会社宛の平成23年3月3日発行の請求書(乙11)、コニカミノルタヘルスケア株式会社から国立大学T大学に宛てた平成23年3月9日発行の受注票・商品仕入依頼書(乙12)(CRシステム、マンモ撮影装置、ドライイメージャシステム及びマンモ撮影装置 モニターシステム)及び平成23年3月9日発行の売上伝票(乙13)を示したが、第三者による証明とは認められないという趣旨の弁駁が行われた。 そこで、被請求人は、平成23年3月9日に国立大学法人T大学からコニカミノルタヘルスケア株式会社宛に発行された「マンモ撮影装置 PCMシステム」の受領書(乙21)、「CRシステム」の受領書(乙22)、「ドライイメージャシステム」の受領書(乙23)、及び「マンモ撮影装置 モニターシステム」の受領書(乙24)を示す。捺印した者は乙第25号証のウェブページ写しに掲載されたT大学医学部保健学科画像診断学分野教授のB氏である。また、納品された「マンモ撮影装置 PCMシステム」は乙第26号証のT大学の放射線診断科のウェブページにて「コニカミノルタ社 PCMシステムMermaid」として紹介されており、納品された商品(Mermaid)は、まだ利用されている状況にある。 エ T大学宛ての取引書類で「MARMID」と誤記したままとなった事由 コニカミノルタヘルスケア株式会社が販売した乳房X線撮影装置(医療機械器具)は、「PCMシステム」と記載されているように乙第3号証及び乙第4号証に掲載されたPCM撮影装置、CR装置、画像処理装置及び画像記録装置であり、実際にPCM撮影装置には、欧文字「Mermaid」の商標が付されている。 しかし、コニカミノルタエムジー株式会社の発行の段階で「MARMID」と付して発行されてしまった。これをベースに一度コニカミノルタヘルスケア株式会社は、受注伝票・商品仕入伝票及び売上伝票とデータベース処理化を行ったために、伝票上の文字を訂正することは、その他のデータベースも併せて訂正を余儀なくすることになる。他方で、商品は「PCMシステム」で特定できていることから、あえて伝票の訂正を行わずに済ませたものである。 3 口頭審理陳述要領書(2)における陳述 (1)答弁の趣旨 被請求人は、東芝メディカル製造株式会社が製造する乳房X線撮影装置(以下「本装置」という。)に商標「Mermaid」を付していた事実を、本装置の供給に関する覚書(乙27)により証明する。 本装置について、被請求人は販売業者であり、販売業の許可を得ることで本装置を販売可能であって、製造販売業者としての認証を得る必要はないことについて弁明する。 (2)答弁の理由 ア 乳房X線撮影装置への商標「Mermaid」の使用について 請求人は、コニカミノルタエムジー株式会社が販売した、型番「MGU-100B」の乳房X線撮影装置のすべてに、商標「Mermaid」が付されていたとは限らない、と主張する。 しかしながら、本装置の供給に関して東芝メディカル製造株式会社とコニカミノルタエムジー株式会社との間で平成16年3月24日に締結された本装置の供給に関する覚書(乙27、以下「本覚書」という場合がある。)において、本装置の販売に際し、コニカミノルタエムジー株式会社が指定する商標を東芝メディカル製造株式会社又は東芝メディカルシステムズ株式会社と合意の上で本装置に付すことを売買契約及び販売条件に盛り込むことが取り決められている。 「MGU-100B」については、東芝メディカルシステムズが販売する形態と被請求人が販売する形態の2つの流通形態があり、被請求人が販売する形態では被請求人の商標を付している。そして、本覚書に基づいて本装置に付された商標が「Mermaid」であることは、パンフレット(乙4)から明らかである。 したがって、N大学及びT大学に販売した乳房X線撮影装置についても、被請求人の関係会社であるコニカミノルタヘルスケア株式会社により販売されたものである以上は、本覚書に基づいて「MGU-100B」の乳房X線撮影装置に商標「Mermaid」が付されていたものであることが強く推認される。 イ 乳房X線撮影装置の製造販売業者・販売業者等の取引形態について 請求人は、商標「Mermaid」が付された乳房X線撮影装置について、「製造販売業者:コニカミノルタエムジー株式会社」、「製造業者:東芝メディカル製造株式会社」、「販売業者:コニカミノルタヘルスケア株式会社」と記載された添付文書が作成されるべきであり、このような添付文書が作成されていないのであれば薬事法改正後の本装置の販売はありえない、と主張する。 しかしながら、本主張は、コニカミノルタエムジー株式会社が本装置の製造販売業者であるとの請求人の誤解に基づくものである。本装置を含む「PCMsystem」の構成装置についてみると、CR画像読取装置及び画像記録装置は、コニカミノルタエムジー株式会社及びコニカミノルタ株式会社が製造販売業者であることは乙第15号証及び乙第16号証より明らかである。 一方、本装置の主要部である乳房X線撮影装置に関しては、東芝メディカルシステムズ株式会社が製造販売業者にあたる。甲第3号証によれば、製造販売業者とは、市場に流通する最終製品の品質保証、安全確保に係る一切の責任を負う者とされている。乙第27号証の覚書第2条第2項に東芝メディカル製造株式会社又は東芝メディカルシステムズ株式会社が本装置の保守・サービスに関する業務を実施すると規定されているとおり、本装置の品質や安全について一切の責任を負っているのは東芝メディカルシステムズ株式会社(又は東芝メディカル製造株式会社)であり、被請求人が責任を負うものではない。 したがって、本装置の製造販売業者は、東芝メディカルシステムズ株式会社であり、被請求人及びその関連会社は、本装置の製造販売業者である東芝メディカルシステムズ株式会社から供給される本装置の販売業者にすぎない。 製造販売業者については、その製造販売する製品ごとに薬事法の承認ないし認証を必要とし、添付文書に製造販売業者の記載が求められている。 しかしながら、販売業者については、販売する医療機器の管理区分により、営業所ごとに販売の許可を得る必要があるのみである。 本装置は、特定保守管理医療機器にあたるため、高度管理医療機器等販売業・賃貸業許可を必要とするが(乙28)、N大学及びT大学への販売を行ったコニカミノルタヘルスケア株式会社の名古屋支店及び仙台営業所では本許可を取得している(乙29、乙30)。 したがって、薬事法改正後においても本装置の販売を行うことは可能である。 4 平成26年11月11日付け上申書における陳述 (1)T大学への無償貸与の日付及び有償による譲渡の経緯について 平成18年春頃からT大学とコニカミノルタエムジー株式会社との間で「マンモグラフィ用検出支援システム」の共同研究がスタートした。 したがって、共同研究のため、この時期に機器の無償貸与がされたが、それを証明する契約書等を見つけ出すことはできなかった。 N大学で提出したような有償譲渡の覚書はT大学では作成されなかった。 共同研究終了後にT大学に「Mermaid」を有償譲渡することになったが、T大学との関係上、T大学が要求する種類の書類を準備して提出することが基本となり、社内的には、乙第12号証及び乙第13号証の売上伝票並びに乙第21号証ないし乙第24号証の受領書でT大学に対する有償譲渡については問題なく処理されたものである。乙第21号証ないし乙第23号証の受領書は、T大学が捺印したものであり、第三者証明としての性格を有するものである。 乙第19号証の受領書は、N大学が捺印したものであり、第三者証明としての性格を有するものである。 (2)乙第9号証及び乙第13号証の鮮明な写しの再提出について 乙第9号証及び乙第13号証の鮮明なものを再提出した。 (3)コニカミノルタ株式会社の「Mermaid」(MGU-100B)がマンモグラフィを示すものとして業界内で周知であった事実について 乙第6号証の日本医学放射線学会の仕様基準を満たした乳房X線撮影装置として平成24年9月現在として、コニカミノルタエムジー株式会社の装置名「MGU-100B(Mermaid)」が紹介されているが、特定非営利法人日本乳がん検診精度管理中央機構のウェブページ(乙31)で平成26年4月現在として、コニカミノルタエムジー株式会社の装置名「MGU-100B(Mermaid)」が、紹介されている。 かかる事実から、被請求人の商品名「Mermaid」の商品が放射線学会の仕様基準を満たす乳房X線撮影装置として、需要者及び取引者間において周知であることが理解できる。また、東芝メディカルシステムズ株式会社の装置「MGU-100B」も併せて紹介されている。 また、本件審判の請求の登録前3年以内の販売ではないが、各病院のウェブページの写し(乙32?乙39)に示すように、被請求人は、商品名「Mermaid」、装置名:MGU-100Bとして継続して販売されていたことを立証する。 ア 特定医療法人美杉会 佐藤病院のウェブページでコニカミノルタのマンモグラフィ「PCMマーメイド」が紹介されている(乙32)。 イ 下関さくらクリニックのウェブページでコニカミノルタエムジー社製の「Mermaid(マーメイド)」が紹介されている(乙33)。 ウ 社会医療法人信愛会交野病院のウェブページでコニカミノルタ製の「デジタルマンモグラフィ撮影装置」が紹介されている(乙34)。 エ 沖縄徳洲会 南部徳洲会病院のウェブページでコニカミノルタ社製Mermaidが紹介されている(乙35)。 オ 独立行政法人 地域医療機能推進機構 JCHO 大阪病院のウェブページでコニカミノルタ社製の「Mermaid」が紹介されている(乙36)。 カ 済生会千里病院のウェブページでマンモグラフィとしてMermaid(KONICA MINOLTA medical)が紹介されている(乙37)。 キ 社会医療法人 信愛会 畷生会脳神経外科病院のウェブページで乳房撮影装置としてコニカミノルタ製の「Mermaid」が紹介されている(乙38)。 ク 千早病院のウェブページで平成17年10月、乳房撮影装置を導入として東芝製の乳房X線撮影装置「Mermaid」が紹介されている(乙39)。 以上述べたように、コニカミノルタの乳房X線撮影装置(通称:マンモグラフィ)は、商品名「Mermaid」として販売された事実が紹介されており、乳房X線撮影装置で「Mermaid(マーメイド)」といえば、コニカミノルタ製として知られていた。 5 平成26年12月16日付け上申書における陳述 (1)請求人主張の「貸与が商標法第2条第3項第2号の『引渡し』に該当するか否か」について 結論:「貸与」は、引き渡しの概念に含まれない。 理由:請求人は、平成26年11月25日付けの上申書6.(1)において「装置の貸与」が商標法第2条第3項第2号にいう「商品に標章を付したものの引渡し」に該当する旨主張した。 引渡しとは、「物のうえの現実の支配を移転することである。」(工業所有権法逐条解説)と定義されている。広辞苑によれば「引渡し」について、「動産の占有を移転すること」と記載されているように「動産の占有」を移転することであるから、「貸与」とは異なる行為である。 被請求人がN大学及びT大学に平成20年頃に行った行為は、請求人も認めるように「貸与」である。これは商標法第2条第3項第3号の「役務の提供に当たりその提供を受ける者の利用に供する物に標章を付したものを用いて役務を提供する行為」に該当するものであって、商品商標の使用とは区別されている。 岩波書店「広辞苑」第6版には、「貸し与えること。貸すこと。」と定義されているように、「現実の支配を移転すること」には該当しない。 もし、請求人の主張が正しければ、「医療機械器具の貸与」は、商品商標の使用に該当するものであって、リース業者及び賃貸業者は、第44類の区分に当該役務に関してサービスマークの権利を取得する必要がないことを意味する。 したがって、請求人の主張は誤りである。 さらに請求人は、商標法第2条第3項第2号を引用して、「貸与」ですでに商品の現実の支配が移転されているので、譲渡(所有権の移転)であっても商標の使用には該当しないと主張する。 しかし、乙第18号証の覚書に「?『原覚書』は、2010年12月31日をもって終了する。」と規定され、乙第19号証の「売上伝票 受領書」に記載されているように「マンモ撮影システム PCM 一式」の譲渡の日付は、2011年2月28日であって、貸与終了後2ヶ月経過した後に商標法第2条第3項第2号「商品又は商品の包装に標章を付したものを譲渡し、引渡し」の行為が行われており、これが商標法の商品商標の使用に該当するものである。 請求人は、商標法に規定された「引渡し」を「貸与」を含む行為と誤解している。サービスマーク制度を設けた趣旨からしても「貸与」は「商品の引渡し」には該当しない「役務の提供」行為である。 (2)請求人は、乙第27号証の覚書が有効に存続していたか疑問がある旨主張する。 まず、第2条(2)据付、保守の条項において「甲又は(TMSC)は、本装置の乙への最終出荷から7年間、乙が顧客へ販売した本装置の据付、保守・サービス(補給部品の供給を含む)に関する業務を実施する。」と規定され、第5条(有効期間)で停止条件として「本覚書は、本覚書締結日に発効し、その後1年経過しても第1条第1項に定める購入契約が締結されず又は第2項に定める条件が合意されない場合、当該1年の経過をもって終了する。」と規定されている。 すなわち、平成17年3月24日から平成18年3月24日までの間に1件も購入実績が無い場合に覚書が消滅するのであって、乙第27号証ないし乙第34号証などの購入実績があるからこそ契約は有効に存続したのであり、少なくとも覚書第2条の規定から平成24年3月24日まで乙第27号証の覚書は有効に継続していた。 (3)次に請求人は、型式「MGU-100B」には、商標「Mermaid」が付されていないコニカミノルタエムジー株式会社の仕様によらない「MGU-100B」を販売していたと強く推認できる旨主張する。 かかる主張は根拠のない暴論であって、T大学設置の乳房X線撮影装置に関するウェブサイト写し(乙26)からも商標「Mermaid」が付されていたことが視認できること、また提出した乙第3号証のカタログの存在を無視した主張にすぎない。 (4)以上述べたように被請求人は、審判請求の予告登録前3年以内に日本国内で現実に「医療用機械器具」に関して商標「Mermaid」を使用していたことは明らかである。 第4 当審の判断 1 被請求人は、本件商標と社会通念上同一と認められる商標を要証期間内に、商品「医療用機械器具」に使用していると主張しているところ、提出された証拠及び被請求人の主張によれば、以下の事実が認められる。 (1)乙第2号証について ア 乙第2号証は、被請求人の有価証券報告書であるところ、被請求人の主張及び乙第2号証の記載によれば、コニカミノルタエムジー株式会社は、平成14年(2002年)10月1日に「医薬品及び医薬部外品の製造及び販売」等を目的として設立され、平成15年(2003年)10月にコニカ株式会社及びミノルタ株式会社の事業の一部が連結子会社(100%)であるコニカミノルタエムジー株式会社に移譲された。そして、コニカミノルタエムジー株式会社等に属していた医療用製品国内販売事業部門が統合し、医療機器の販売は、平成19年(2007年)4月1日よりコニカミノルタヘルスケア株式会社となり、コニカミノルタエムジー株式会社は、医療用製品の国内製造者とのしての地位は残った。 イ 平成25年(2013年)4月1日に、コニカミノルタエムジー株式会社は、コニカミノルタ株式会社に吸収合併された。 (2)乙第4号証について ア 乙第4号証は、コニカミノルタエムジー株式会社発行の「PCM system」のパンフレットであるところ、1頁(表紙)右下に大きく表示された薄いピンク色の円内に、白抜きで「Phase Contrast Mammography」、「PCM」及び「system」の文字が3段に表示されている。 イ 2頁には、「PCMシステムは、世界初のテクノロジーを応用し、かつてない最高レベルの画像を実現する革新的な乳房X線撮影システムです。」の記載がある。 ウ 8頁、9頁には、「PCMシステム」を構成する装置である、(a)乳房X線撮影装置 Mermaid(型式:MGU-100B形)、(b)CR画像読取装置 REGIUS Vstage MODEL190」、(c)「REGIUSコンソール CS-3」及び(d)「画像記録装置 DRYPRO MODEL793」のそれぞれの説明とともに、それぞれの機器の写真が表示されている。そして、「乳房X線撮影装置」の側面には、「Mermaid」の文字が表示されている。 エ 上記ウと同一の「乳房X線撮影装置」は、2頁、3頁、5頁ないし7頁に写真が表示され、そのいずれにも、「Mermaid」の文字が表示されている。 オ 10頁には、「乳房X線撮影装置 Mermaid(マーメイド) 型式:MGU-100B形 主な仕様」、「薬事承認番号 21000BZZ00717000」の記載がある。 カ 12頁には、「コニカミノルタエムジー株式会社」とその支店住所などの記載があり、右下には、発行年月(2005年3月)と認められる(この点については、当事者間に争いがない。)「0503」の記載がある。 (3)乙第6号証について 乙第6号証は、マンモグラフィ検診精度管理中央委員会のホームページであるところ、「日本医学放射線学会の仕様基準を満たした乳房X線撮影装置の一覧表」(2012年9月現在)には、メーカー名を「東芝メディカルシステムズ株式会社」として、装置名「MGU-100B」の記載があり、また、メーカー名を「コニカミノルタエムジー株式会社」として、装置名「MGU-100B(Mermaid)」の記載がある。 (4)乙第7号証について 乙第7号証は、被請求人によれば、コニカミノルタヘルスケア株式会社による平成22年12月15日発行の国立大学法人N大学宛ての「御見積書」(写し)であるところ、品名に「マンモ撮影システム PCM 一式」の記載、(構成)として、「乳房撮影装置MGU-100B」、「REGIUS Vsatge MODEL 190システム」、「DRYPRO Vstage MODEL 793」の記載、及び金額に「476,000」の記載がある。 (5)乙第8号証について 乙第8号証は、被請求人によれば、コニカミノルタヘルスケア株式会社による国立大学法人N大学宛ての「受注票・商品仕入依頼書」(写し)であるところ、相手先コード「4877」、担当者コード「1443」、商品コード「6055」、商品名・サイズ・包装単位「マンモ撮影システム PCM 一式」、契約単価「476000」の記載がある。 (6)乙第9号証について 乙第9号証は、被請求人によれば、コニカミノルタヘルスケア株式会社による平成23年2月28日発行の国立大学法人N大学宛ての「売上伝票」(写し)であるところ、相手先「4877」、発行日「230228」、担当者「1443」、伝票No「000771」、コード「6055」、商品名「マンモ撮影システム PCM 一式」、売上単価「476000」の記載がある。 (7)乙第10号証について 乙第10号証は、被請求人によれば、コニカミノルタヘルスケア株式会社による平成23年2月28日発行の国立大学法人N大学宛ての「売掛元帳」(写し)であるところ、「2011年02月28日」、月日「2 28」、伝票番号「000771」、商品名「6055 マンモ撮影システム PCM 一式」、売上金額「476000」の記載がある。 (8)乙第14号証について 乙第14号証は、被請求人によれば、薬事承認番号:21000BZZ00717000の医療機器の添付文書情報(写し)であるところ、「2005年1月18日(新様式第1版)」、「承認番号21000BZZ00717000」、「器具機械9.医療用エックス線装置及び医療用エックス線装置用エックス線管」、「乳房用X線診断装置」、「乳房X線撮影装置」、「MGU-100B形」、「製造業者 東芝メディカル製造株式会社」、「販売業者 東芝メディカルシステムズ株式会社」の記載がある。 (9)乙第19号証について 乙第19号証は、被請求人によれば、国立大学法人N大学のA氏の捺印にかかる商品受領書(写し)であるところ、「売上伝票 受領書」、「コニカミノルタヘルスケア株式会社」、お得意様コード「4877」、発行年月日「2011.2.28」、伝票番号「000771」、担当者「1443」、商品コード「6055」、商品名「マンモ撮影システム PCM 一式」の記載があり、「受領日2011年2月28日」として、A氏の捺印がある。 (10)乙第20号証について 乙第20号証は、被請求人によれば、国立大学法人N大学の教授の指導の下で作成された平成25年度学位申請論文の表紙、第43頁、第52頁、第58頁及び第64頁(写し)であるところ、表紙に、「平成25年度学位申請論文」の記載があり、第43頁、第52頁、第58頁には、「PCM装置(コニカミノルタ社Mermaid)で拡大撮影を行った」の記載があり、第64頁には、「PCM装置(コニカミノルタ社Mermaid)を用いて・・・密着撮影した画像と拡大撮影した画像の2枚を作成した」の記載がある。 (11)乙第27号証について 乙第27号証は、被請求人によれば、本装置の供給に関して東芝メディカル製造株式会社とコニカミノルタエムジー株式会社との間で平成16年3月24日に締結された本装置の供給に関する覚書であるところ、「東芝メディカル製造株式会社(以下、「甲」という)とコニカミノルタエムジー株式会社(以下、「乙」という)とは、甲が乙から提供される仕様に基づいて製造する乳房用X線診断装置(以下、「本装置」という)の乙及び乙の関連会社への供給に関し、以下の通り覚書を締結する。」とあり、第1条(本装置の供給)に、「1.甲は、乙の要求に基づき、本装置を甲の親会社である東芝メディカルシステムズ(株)(以下、「(TMSC)」という)経由乙の別途指定する乙の関係会社(以下、「販売先」という)へ、(TMSC)及び販売先が別途合意する条件にて売買契約を取り交わし販売する。」、第2条(供給条件)に、「(1)商標」として、「本装置の販売に際し、乙が指定する商標を甲又は(TMSC)との合意の上で本装置に付す。」、同じく「(2)据付、保守」として、「甲又は(TMSC)は、本装置の乙への最終出荷から7年間、乙が顧客へ販売した本装置の据付、保守・サービス(補給部品の供給を含む)に関する業務を実施する。」とあり、第5条(有効期間)に、「本覚書は、本覚書締結日に発効し、その後1年経過しても第1条第1項に定める購入契約が締結され・・・ない場合、当該1年の経過を以って終了する。」のほか、「2004年3月24日」の記載がある。 (12)乙第31号証について 乙第31号証は、特定非営利活動法人日本乳がん検診精度管理中央機構のウェブページ(写し)であるところ、「日本医学放射線学会の仕様基準を満たした乳房X線撮影装置の一覧表」(2014年4月現在)には、メーカー名を「東芝メディカルシステムズ株式会社」として、装置名「MGU-100B」の表示があり、また、メーカー名を「コニカミノルタエムジー株式会社」として、装置名「MGU-100B(Mermaid)」の表示がある。 (13)乙第32号証、乙第34号証ないし乙第36号証、乙第38号証について ア 上記乙各号証は、いずれも特定の病院のウェブページ(写し)であるところ、乳房X線撮影装置の側面に「Mermaid」の表示がある(職権により確認済み)。 イ 乙第32号証に示された「マンモグラフィ検診施設画像認定証」の認定期間には、「自 2011年7月1日」、「至 2014年6月30日」の記載がある。 2 判断 (1)被請求人とコニカミノルタエムジー株式会社及びコニカミノルタヘルスケア株式会社との関係について 上記1(1)のとおり、コニカミノルタエムジー株式会社は、平成14年(2002年)10月1日に「医薬品及び医薬部外品の製造及び販売」等を目的として設立され、その後、コニカミノルタエムジー株式会社等に属していた医療用製品国内販売事業部門が統合し、医療機器の販売は、平成19年(2007年)4月1日よりコニカミノルタヘルスケア株式会社となり、コニカミノルタエムジー株式会社は、医療用製品の国内製造者とのしての地位は残った。そして、平成25年(2013年)4月1日に、コニカミノルタエムジー株式会社は、被請求人(コニカミノルタ株式会社)に吸収合併された。 (2)国立大学法人N大学とコニカミノルタヘルスケア株式会社の取引について ア 上記1(4)ないし(7)及び(9)(乙7?乙10、乙19)のとおり、品名「マンモ撮影システムPCM 一式」、金額「476,000」、相手先コード「4877」、担当者コード「1433」、商品コード「6055」、伝票No「000771」を同じくすることからすると、乙第7号証ないし乙第10号証及び乙第19号証は、品名「マンモ撮影システムPCM 一式」に関する、国立大学法人N大学とコニカミノルタヘルスケア株式会社間の一連の取引書類であることが認められ、その納品は、2011年(平成23年)2月28日である。 イ 上記1(4)(乙7)のとおり、品名「マンモ撮影システムPCM 一式」の構成には、「乳房撮影装置MGU-100B」が含まれている。 (3)「乳房撮影装置MGU-100B」について ア 上記1(4)(乙7)のとおり、コニカミノルタヘルスケア株式会社が国立大学法人N大学に納品した機器の構成である「乳房撮影装置MGU-100B」、「REGIUS Vsatge MODEL 190システム」及び「DRYPRO Vstage MODEL 793」は、上記1(2)(乙4)のとおり、「PCM system」のパンフレット掲載中の機器と名称、記号等を共通にするものであるから、「乳房撮影装置MGU-100B」は、該パンフレット掲載中の「乳房X線撮影装置 Mermaid(型式:MGU-100B形)」に相当する装置とみるのが自然であり、その薬事承認番号は、「21000BZZ00717000」である。 イ 「MGU-100B形」、薬事承認番号「21000BZZ00717000」の乳房X線撮影装置は、上記1(8)(乙14)のとおり、製造業者「東芝メディカル製造株式会社」、販売業者「東芝メディカルシステムズ株式会社」とするものである。 ウ 「MGU-100B」の乳房X線撮影装置については、上記1(3)及び(12)(乙6、乙31)のとおり、メーカー「東芝メディカルシステムズ株式会社」の装置名は「MGU-100B」であり、メーカー「コニカミノルタエムジー株式会社」の装置名は「MGU-100B(Mermaid)」である。 (4)使用商品について コニカミノルタヘルスケア株式会社が国立大学法人N大学に納品した商品「乳房撮影装置MGU-100B」(以下「使用商品」という場合がある。)は、「薬事承認番号」として「21000BZZ00717000」で承認を受けたものと認められる(乙14)。 そうすると、使用商品は、本件商標の指定商品中の「医療用機械器具」に含まれる商品である。 (5)使用商標について ア 上記1(2)(乙4)のとおり、コニカミノルタエムジー株式会社の「乳房X線撮影装置MGU-100B」の側面には、「Mermaid」の文字からなる使用商標が表示されている。 イ 上記(3)(乙6、乙31)のとおり、「乳房X線撮影装置」において、装置名「MGU-100B」の装置は、「東芝メディカルシステムズ株式会社」と「コニカミノルタエムジー株式会社」の2社がメーカーとして取り扱っており、「コニカミノルタエムジー株式会社」の「乳房X線撮影装置」の装置名は、「MGU-100B(Mermaid)」である。 ウ 上記1(11)(乙27)のとおり、「東芝メディカル製造株式会社(『東芝メディカルシステムズ株式会社』の親会社)」と「コニカミノルタエムジー株式会社」が締結した「覚書」によれば、本件装置の販売に際し、「コニカミノルタエムジー株式会社」が指定した商標を使用商品に付す旨の取決め(第2条(1))があることから、装置名「MGU-100B」を同じくする、他社製品と同一の装置の販売に際し、自社商標を付さないとは考えがたく、また、第5条(有効期間)の規定により、該覚書が終了したことを証する証拠はない。 エ 上記1(10)(乙20)のとおり、国立大学法人N大学の教授の指導の下で作成された平成25年度学位申請論文(乙20)中に、「コニカミノルタ社Mermaid」の記載がある。 オ 上記1(13)(乙32、乙34?乙36、乙38)のとおり、特定の病院のウェブページに表示された、乳房X線撮影装置の側面に「Mermaid」の表示があり、また、乙第32号証に示された「マンモグラフィ検診施設画像認定証」の認定期間には、「自 2011年7月1日」、「至 2014年6月30日」の記載があり、この期間は、使用商品をコニカミノルタヘルスケア株式会社が国立大学法人N大学に納品した日付け(2011年(平成23年)2月28日)と近接している。 カ 上記アないしオを総合的に考察すれば、「コニカミノルタエムジー株式会社」の使用商品には、使用商標が付されていたであろうことは、容易に推認できる。 キ 使用商標は、「Mermaid」の文字からなるものであり、「マーメイド」の称呼及び「人魚」の観念を生じるものであるから、「マーメイド」の片仮名及び「MERMAID」の欧文字を二段に横書きしてなる本件商標と「マーメイド」の称呼及び「人魚」の観念を同じくする社会通念上同一の商標というのが相当である。 (6)使用商標の使用者について ア 上記(2)のとおり、コニカミノルタヘルスケア株式会社が国立大学法人N大学に使用商品を納品したのは、2011年(平成23年)2月28日であるところ、上記(1)のとおり、この時点における医療機器の販売は、コニカミノルタヘルスケア株式会社が担い、製造は、コニカミノルタエムジー株式会社が担っている。 イ 本件商標の商標登録原簿(乙1)によれば、2011年(平成23年)2月28日時点の商標権者は、コニカミノルタエムジー株式会社である。 ウ 上記ア及びイの事情と上記(1)のとおりのコニカミノルタヘルスケア株式会社がコニカミノルタエムジー株式会社等に属していた医療機器の販売事業部門を統合して設立されたという経緯をあわせてみれば、2011年(平成23年)2月28日時点の商標権者であるコニカミノルタエムジー株式会社は、コニカミノルタヘルスケア株式会社に本件商標を使用することについて黙示の許諾をしていたものといえるから、コニカミノルタヘルスケア株式会社は、本件商標の通常使用権者というのが相当である。 (7)使用商標の使用行為及び使用時期について 上記(2)のとおり、本件商標の通常使用権者であるコニカミノルタヘルスケア株式会社が国立大学法人N大学に使用商品を納品したのは、2011年(平成23年)2月28日であり、これは要証期間内であり、上記(5)のとおり、使用商品には、使用商標が付されていたと推認できる。 そうすると、商品「乳房X線撮影装置」に商標「Mermaid」を付したものを譲渡又は引き渡しする行為(商標法第2条第3項第2号)は、要証期間内の2011年(平成23年)2月28日に行われたといえる。 (8)小括 上記(1)ないし(7)のとおり、本件商標の通常使用権者は、本件商標と社会通念上同一の商標を要証期間内に本件審判の取消請求に係る指定商品中の「医療用機械器具」に含まれる「乳房X線撮影装置」について使用したというのが相当である。 3 むすび 以上のとおりであるから、被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、通常使用権者が取消請求に係る指定商品中の「医療用機械器具」に含まれる「乳房X線撮影装置」について、本件商標(社会通念上同一の商標を含む。)の使用をしていたことを証明したものというべきである。 したがって、本件商標の登録は、商標法第50条の規定に基づき、請求に係る指定商品についての登録を取り消すべき限りではない。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審理終結日 | 2016-07-22 |
結審通知日 | 2016-08-04 |
審決日 | 2016-08-24 |
出願番号 | 商願昭63-25475 |
審決分類 |
T
1
31・
1-
Y
(Y10)
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最終処分 | 不成立 |
特許庁審判長 |
土井 敬子 |
特許庁審判官 |
大森 健司 原田 信彦 |
登録日 | 1992-01-31 |
登録番号 | 商標登録第2368849号(T2368849) |
商標の称呼 | マーメイド |
代理人 | 霜田 亮 |
代理人 | 押本 泰彦 |
代理人 | 岡田 稔 |
代理人 | 曾我 道治 |
代理人 | 坂上 正明 |
代理人 | 鈴木 昇 |