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審決分類 審判 一部無効 商4条1項10号一般周知商標 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) W09
審判 一部無効 商標の周知 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) W09
管理番号 1329169 
審判番号 無効2016-890044 
総通号数 211 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2017-07-28 
種別 無効の審決 
審判請求日 2016-07-20 
確定日 2017-05-10 
事件の表示 上記当事者間の登録第5641093号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第5641093号の指定商品中、第9類「放送用拡声機械器具,無線通信機械器具,放送局用機械器具,全地球位置測位装置,ナビゲーション装置,アンテナ,台架類,トランシーバー,車載用トランシーバー,船舶用通信機械器具,船舶用トランシーバー,VHF航空機用無線通信機,携帯用通信装置,高周波送受信装置,携帯通信機器用ベルトクリップ,携帯通信機器用外装ケース,トランシーバー用外付けマイクロフォン・スピーカー,ヘッドセットマイクロフォン,無線送信器,リモートコントロール装置,無線中継器,混信防止装置,光通信用中継器,レーダー装置,方向探知装置,携帯電話機,無線電話機,音声伝送装置,光通信用モデム,周波数変換器,無線受信機,固定単チャンネルアクセス通信装置,マルチチャンネルアクセス通信装置,赤外線送信機,音声信号送信装置,電子信号送信機,テレビ,ラジオチューナー,ラジオ受信機,ラジオ送信機,液晶ディスプレイ,電気通信用画像データ送信装置,電気通信用画像データ受信装置,ウェブカメラ,電気通信画像用モニター,電気通信用動画データ送信装置,電気通信用動画データ受信装置,画像データ伝送用中継装置,動画データ伝送用中継装置,画像用記録装置,デジタル式ビデオ編集機,動画再生装置,オーディオアンプ,メインアンプ,プリアンプ,プリ・メインアンプ,オーディオスピーカー,オーディオレシーバー,オーディオディスクプレーヤー,コンパクトディスクプレーヤー,レコードプレーヤー,デジタルビデオディスクプレーヤー,オーディオディスクレコーダー,コンパクトディスクレコーダー,ビデオディスクレコーダー,デジタルビデオディスクレコーダー,半導体メモリ再生装置,拡声器,録音装置,音声再生装置,音声周波ミキサー,音声イコライザー,教育用音声周波機械器具,カラオケ装置,ヘッドフォン,イヤフォン,マイクロフォン,コードレスマイクロフォン,充電式ワイヤレスマイクロフォン,映像用プロジェクター,ビデオ再生装置,カラオケ用画像表示装置,ビデオカメラ,デジタル-アナログ変換器,アナログ-デジタル変換器,個人用ステレオ音響機器,携帯型音響機器,ヘッドフォンステレオプレーヤー,ICレコーダー,スピーカースパイク,スピーカースパイク用プロテクター,スピーカースパイク用インシュレーター,教育用視聴覚機械器具」についての商標登録を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5641093号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲(A)のとおりの構成からなり、平成25年3月18日に登録出願され、第9類に属する別掲(B)のとおりの商品を指定商品として、同年12月5日に登録査定、平成26年1月10日に設定登録されたものである。

第2 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第43号証(枝番を含む。)を提出した。
1 無効事由
(1)本件商標は、その指定商品中、「放送用拡声機械器具,無線通信機械器具,放送局用機械器具,全地球位置測位装置,ナビゲーション装置,アンテナ,台架類,トランシーバー,車載用トランシーバー,船舶用通信機械器具,船舶用トランシーバー,VHF航空機用無線通信機,携帯用通信装置,高周波送受信装置,携帯通信機器用ベルトクリップ,携帯通信機器用外装ケース,トランシーバー用外付けマイクロフォン・スピーカー,ヘッドセットマイクロフォン,無線送信器,リモートコントロール装置,無線中継器,混信防止装置,光通信用中継器,レーダー装置,方向探知装置,携帯電話機,無線電話機,音声伝送装置,光通信用モデム,周波数変換器,無線受信機,固定単チャンネルアクセス通信装置,マルチチャンネルアクセス通信装置,赤外線送信機,音声信号送信装置,電子信号送信機,テレビ,ラジオチューナー,ラジオ受信機,ラジオ送信機,液晶ディスプレイ,電気通信用画像データ送信装置,電気通信用画像データ受信装置,ウェブカメラ,電気通信画像用モニター,電気通信用動画データ送信装置,電気通信用動画データ受信装置,画像データ伝送用中継装置,動画データ伝送用中継装置,画像用記録装置,デジタル式ビデオ編集機,動画再生装置,オーディオアンプ,メインアンプ,プリアンプ,プリ・メインアンプ,オーディオスピーカー,オーディオレシーバー,オーディオディスクプレーヤー,コンパクトディスクプレーヤー,レコードプレーヤー,デジタルビデオディスクプレーヤー,オーディオディスクレコーダー,コンパクトディスクレコーダー,ビデオディスクレコーダー,デジタルビデオディスクレコーダー,半導体メモリ再生装置,拡声器,録音装置,音声再生装置,音声周波ミキサー,音声イコライザー,教育用音声周波機械器具,カラオケ装置,ヘッドフォン,イヤフォン,マイクロフォン,コードレスマイクロフォン,充電式ワイヤレスマイクロフォン,映像用プロジェクター,ビデオ再生装置,カラオケ用画像表示装置,ビデオカメラ,デジタル-アナログ変換器,アナログ-デジタル変換器,個人用ステレオ音響機器,携帯型音響機器,ヘッドフォンステレオプレーヤー,ICレコーダー,スピーカースパイク,スピーカースパイク用プロテクター,スピーカースパイク用インシュレーター,教育用視聴覚機械器具」(以下「請求に係る指定商品」という。)について、商標法第4条第1項第10号に該当し、同法第46条第1項第1号により、請求に係る指定商品についての登録は無効にすべきものである。
(2)本件商標は、その指定商品中の請求に係る指定商品について、商標法第4条第1項第15号に該当し、同法第46条第1項第1号により、請求に係る指定商品についての登録は無効にすべきものである。
2 無効原因
(1)本件商標について
本件商標は,前記第1のとおり、登録されたものである(甲1の1・2)。
(2)請求人及び同人が使用する商標等について
請求人は、昭和31年に株式会社ゼネラルテレビサービスとして設立され、その商号は、昭和39年に八重洲無線株式会社となり、その後、平成12年から平成24年までは株式会社バーテックススタンダードと変更され、平成24年に再び八重洲無線株式会社に戻って現在に至っている。
請求人は、設立後間もない昭和33年当時から現在に至るまでアマチュア無線通信機の製造・販売を営んでいるが、昭和53年には事業内容を業務用無線通信機器の製造・販売にも拡張し、さらに平成10年には日本マランツ株式会社から業務用無線通信機事業を買収するとともに、「STANDARD」及び「スタンダード」に関連した商標権(商標登録第0687091号(甲2)、同第0687092号(甲3)及び同第0929795号(甲4))を譲り受けた。
そして、それ以降、請求人は、「STANDARD」の欧文字からなる商標(以下「引用使用商標1」という。)及び「スタンダード」の片仮名からなる商標(以下「引用使用商標2」といい、引用使用商標1及び2を合わせて「引用使用商標」という場合がある。)を自らの製造・販売する業務用無線通信機器等についての商標として高い頻度で継続的に使用してきた。
その結果、後記(3)のとおり、本件商標の出願日である平成25年3月18日以前には、引用使用商標が請求人の販売する業務用無線通信機器等について使用されている商標として強力な自他商品識別力を発揮するとともに極めて高い周知性を確保するに至っており、その周知性はそれ以降も現在まで変わらない。ただし、請求人は、平成10年から平成23年まではSTANDARDブランドの業務用無線通信機器等についての製造・販売元であったが、平成24年1月1日以降はそれまでの業務機開発製造部門がバーテックススタンダードLMR合同会社となって製造元になり、請求人は販売元になっている。
(3)引用使用商標の周知性について
ア 甲第5号証は、社団法人全国陸上無線協会が出展した各年度の簡易無線のATIS(Automatic Transmitter Identification System)発給数の推移を基に、本件請求人等が製造・販売元であるSTANDARDブランドの簡易無線機に発給されたATISの割合を平成19年(2007年)から平成26年(2014年)までの年度ごとに求めた表(ただし、平成25年及び平成26年は推計値に基づく)である。なお、「簡易無線機」とは、所定の周波数帯域(27MHz帯、150MHz帯、400MHz帯、900MHz帯、920MHz帯、950MHz帯及び50GHz帯)を利用し、無線従事者を必要としない無線機であり、業務用無線通信機器等がこれに該当するが、アマチュア無線機は含まれない。
社団法人全国陸上無線協会は、「日本全国において、主として陸上に開設する無線局の申請、運用及び管理に当たり適切な指導、助言及び支援並びに電波利用に係る企画及び調査を行うとともに、無線従事者の指導、育成及び助成を図ることにより電波利用秩序の維持・発展に貢献し、もって公共の福祉に資することを目的」(協会HPより)として設立された社団法人であって、会員数は平成25年3月末時点では1,023名(平成27年5月末時点では993名)で、請求人を含む無線通信機の主要メーカー等13社が特別会員になっており、ATISの発給や機関紙の発行等の業務も行っている。
また、ATISは、無線機の製造元に対して発給される識別番号(ID)であって、個々の無線機に与えられる独自の12桁のコードからなり、前半の6桁でメーカー・周波数帯・機種に係る情報を、後半の6桁でユーザー固有の情報を表し、平成13年(2001年)6月以降はATIS対応の無線機以外を使用できないことになっている。
そして、前記のとおり、ATISは無線機の製造元に発給されるものであるため、平成23年末までは製造・販売元であった請求人に発給され、平成24年以降は製造元となったバーテックススタンダードLMR合同会社に発給されているが、同社の製造する簡易無線機は、すべてが販売元としての請求人に供給されることになっており、STANDARDブランドの簡易無線機は一貫して請求人を通じて卸販売されてきた。請求人が取り扱うSTANDARDブランドの簡易無線機に対するATIS発給数は全体の25?31%に相当しており、そのシェアからみて、同ブランドが簡易無線機についての一大有名ブランドであることは明らかである(甲5)。
イ 甲第6号証の1ないし10は、それぞれ社団法人全国陸上無線協会が発行する機関紙である「RMK会報」(発行部数:1,300部)の表紙と請求人の業務用無線機の広告頁と奥付とを抜粋した資料である。
「RMK会報」には業務用無線通信機器等の主要メーカーが自社製品の広告を掲載することが慣例化しているが、最たる主要メーカーである請求人においても当然に「STANDARD」ブランドの業務用無線通信機器等の広告を掲載するようにしている。
そして、請求人による広告中の業務用無線機の写真に見られるように、業務用無線機の筐体正面には常にブランド名としての商標「STANDARD」が付されている。
また、甲第6号証の1ないし10の各「RMK会報」は、本件商標に係る出願日(平成25年3月18日)の約4年前から同出願日の4ヶ月後までの期間内で適宜選択した発行日のものであるが、請求人は「RMK会報」にはほぼ毎回広告を掲載するようにしている。
前記のATIS発給数に関する請求人のシェアと併せて、これらの「RMK会報」での広告状況からみるに、引用使用商標が本件商標に係る出願日よりはるか前から請求人が取り扱う業務用無線機について使用されている商標として極めて高い周知性を有していることが推察できる。
なお、甲第6号証の1における「STANDARD」ブランドの業務用無線機の広告主は株式会社スタンダードであるが、同社は平成10年6月19日に設立された請求人の販売子会社であり、請求人は平成21年10月1日に同社を吸収合併している。
ウ 甲第7号証の1ないし4は、警備保障タイムズ株式会社が毎月3回発行している「警備保障タイムズ」(発行部数:3,000部)からの抜粋資料である。
「警備保障タイムズ」は、警備業に関わる企業・団体を対象とした業界紙であり、現場を担う警備員のための有益な情報や先端技術の開発者や経営者が戦略を練るのに参考となるマーケット情報を掲載している。
無線機器は警備業務における連絡のために不可欠なものであることから、甲第7号証の1には「STANDARD特定小電力トランシーバー用中継器」の紹介記事が掲載されており、また、甲第7号証の2ないし4に示されるように、請求人はSTANDARDブランドのデジタル簡易無線機についての広告を度々載せている。
なお、甲第7号証の1ないし4の「警備保障タイムズ」の発行日は平成24年6月1日、同年10月11日、平成25年2月21日及び同年9月21日であり、本件商標に係る出願日の前後にわたっている。
エ 甲第8号証の1ないし28は、株式会社電波新聞社(東京都品川区)が週5日発行している「日刊電波新聞」(公称発行部数:298,000部(2014年))及び株式会社電波タイムス社(東京都台東区)が発行している隔日刊紙である「電波タイムス」(公称発行部数:100,000部)の過去の紙面からの抜粋資料である。
「日刊電波新聞」は電機業界の最大の専門紙であり、また「電波タイムス」は放送・通信業界をターゲットにした業界紙的性格が強い新聞であることから、各紙には、請求人の業務用無線通信機器等に係る紹介記事が度々掲載されることがあり、請求人において各紙の広告欄に業務用無線機の広告を掲載することも少なくない。
この甲第8号証の1ないし28は、平成13年から平成26年までの各紙での紹介記事と広告であるが、前記のとおり、平成10年6月19日から平成21年10月1日までは請求人の販売子会社である株式会社スタンダードが販売元になっていたため、甲第8号証の1ないし13(平成13年1月29日?平成21年6月)では同ブランド名がそのまま名称である同社の業務用無線通信機器等が紹介されており、一方、甲第8号証の14ないし28(平成24年6月1日?平成26年9月4日)では請求人の業務用無線通信機器等として紹介され、また広告もなされている。
殊に、紹介記事において“スタンダードの”や“スタンダードブランドの”として商品を包括的に示す記載があることからみて、本件商標の出願日である平成25年3月18日以前において、「スタンダード」が正に本件請求人の業務用無線通信機器等についての一大ブランドであり、その後においても、その名声に変わりがないことが理解できる。
なお、広告中の業務用無線機の写真に見られるように、甲第6号証の場合と同様に、筐体正面にはブランド名「STANDARD」が付されている。
オ 甲第9号証ないし甲第11号証は、他の業界紙に係る表紙と請求人の業務用無線機の広告頁や製品紹介頁を抜粋した資料であり、それら業界における業務の現場では業務用無線通信機器等が利用されることが多く、請求人は時々広告等を掲載させている。
甲第9号証の「日経レストラン」(発行部数:13,500部)は、株式会社日経BPが発行している月刊雑誌であり、飲食店、外食チェーンからホテル・旅館の飲食部門、給食業などのフードビジネス業界の情報を提供するものであるが、請求人は本件商標に係る出願日の4年前に発行された平成21年10月号に広告と製品紹介を掲載させている。
甲第10号証の「ゴルフ場セミナー」(発行部数:16,000部)は、株式会社ゴルフダイジェスト社が発行している月刊雑誌であり、ゴルフ場経営、運営、管理のコンサルティング情報を提供するものであるが、請求人は本件商標に係る出願日の2ヶ月後に発行された平成25年5月号に広告と製品紹介を掲載させている。
甲第11号証の「セキュリティ・タイム」(発行部数:14,000部)は、一般社団法人全国警備業協会が発行する月刊雑誌であり、警備業関係者に向けて警備業界の動向や適正な警備業務の情報を提供するものであるが、請求人は本件商標の登録査定日の直後となる平成25年12月号に広告を掲載させている。
カ 甲第12号証の1は、平成24年12月10日(本件商標に係る出願日の約3ヶ月前)にインターネット上に公開されていた請求人の製品取扱店を紹介するWebサイトのトップ頁である。
請求人は、全国にわたって多数の製品取扱店を有しており、前記トップ頁における各都道府県名の表示部分をクリックすることにより、各都道府県の製品取扱店の名称・住所・電話番号などが表示されるようになっている(甲12の2)。
なお、前記日付の時期では全237店が掲載されており、その中には独自のWebサイトを開設して請求人の業務用無線機などの宣伝広告を行っている店も少なくない。
キ 甲第13号証ないし甲第42号証は、無線通信機の販売店やレンタル店が運営しているWebサイトごとに、本件商標に係る出願日より前の時期と後の時期に表示されていた画像を、インターネット上で運営されている“INTERNET ARCHIVE WAYBACH MACHINE”(以下「IAWM」という。)から収録したものである。ただし、IAWMは離散的な日付でWebサイトの画像を収録して保存してゆくシステムであるが、収録日から期間が経過するにつれて収録画像内に挿入されていたイメージを抜くなどして除々に画像を劣化させてゆく傾向があるため、収録画像が忠実に再現されていない場合がある。また、IAWMでの通常の収録画像には一定の様式で最上段に収録日付が挿入されるようになっているが、収録画像の性質によってはそれが挿入されないようなこともあり、その場合には収録画像における各頁の最下部に印刷されているURL中の日付部分(14桁の数字部分における前8桁)を参照することとした。
(ア)甲第13号証の1ないし3[株式会社エクセリ]には、メーカー欄に他の有名メーカーと共に「スタンダード」があるほか、「スタンダード無線機・トランシーバー」や「出荷台数国内N0.1/信頼のスタンダード業務用無線」の記載がある。
(イ)甲第14号証の1ないし3[有限会社オーテック]には、請求人が製造・販売元である簡易無線機の筐体正面に商標「STANDARD」が付された写真が掲載されており、また各無線機の型式番号に添えて「STANDARD」や「八重洲無線:スタンダードブランド」の記載がなされている。
(ウ)甲第15号証の1ないし3[株式会社オンザウェイ]には、「スタンダード業務用」や「STANDARDスタンダードの業務用無線機」として請求人が製造・卸販売である無線機が紹介されており、無線機の種別や個別の無線機の紹介の欄等においても常に「スタンダード」を冒頭に付した記載になっている。
(エ)甲第16号証の1及び2[株式会社グローバルメディア]には、他の有名メーカーと共に「STANDARD」の表記があり、また「モトローラ・スタンダード・ケンウッド通信機代理店」の記載がある。
(オ)甲第17号証の1ないし3[株式会社サンテレコムジャパン]には、メーカー別一覧や主要取扱メーカー・ブランドの中に、他の有名メーカーと共に「スタンダード Vertex STANDARD」や「STANDARD」の表記があり、またそれらをクリックすることでSTANDARDブランド製品の一覧が開くようになっている。
(カ)甲第18号証の1ないし3[有限会社ジェイシステム]には、本件請求人が製造・販売元である各種無線機が個別画像で紹介されており、それら個別画像の左上部分に黒字白抜き文字で「STANDARD」の表記があり、特定小電力トランシーバー屋内用中継器FTR-400とFTR-500について<スタンダード製>の表記がなされている。
(キ)甲第19号証の1ないし3[株式会社ジャパンエニックス]には、取り扱い無線機の欄に他の有名メーカーと共に「業務用無線機STANDARD」の表記があり、また「簡易・一般業務用無線機STANDARD」の標題欄で詳細解説頁への導入がなされている。その他、特定小電力無線機の欄には「VS STANDARD」として製品の写真が掲載されている。
(ク)甲第20号証の1ないし3[シンエイ商事株式会社]には、「スタンダード、モトローラなどの製品を取り扱っています。」という記載があり、また「PRODUCTSメーカー別製品紹介」の欄に他の有名メーカーと共に「VS STANDARD」の表記がある。
(ケ)甲第21号証の1及び2[株式会社メイエレック]には、取り扱い無線機のメーカー欄に他の有名メーカーと共に「VS STANDARD」があり、簡易無線機の機種欄では型式番号の前に「スタンダード」が付されている。
(コ)甲第22号証の1ないし3[株式会社ヤマトコミュニケーション]には、上段の業務用無線機の写真の上側に「VS STANDARD」が表記されている。
(サ)甲第23号証の1ないし3[株式会社ワンストップコミュニケーション]には、“メーカーから探す”の欄に「スタンダードやモトローラなどの世界的ブランドも数多く取り扱っており、…」との記載があり、スタンダードの無線機の詳細情報へ誘導するセクションには「VS STANDARD」/「スタンダード(STANDARD)」や「『八重洲無線』の業務用無線機ブランド」などの記載がなされている。
(シ)甲第24号証の1ないし3[株式会社沖縄電子]には、取り扱いメーカーとして他の有名メーカーと共に「スタンダード」の表記がある。
(ス)甲第25号証の1及び2[有限会社海遊社]には、国際VHF無線機についての本件請求人の商品紹介で、その製造・販売元が「スタンダード Vertex STANDARD(八重洲無線)」として記載されている。
(セ)甲第26号証の1ないし3[関東電子株式会社]には、取扱いメーカーの中に他の有名メーカーと共に「スタンダード・STANDARD」の表記があり、また製品情報の中のデジタル/アナログデュアルモード簡易無線機「VX-D591 UCAT」の説明欄には「スタンダードのファーストモデル」と記載されている。
(ソ)甲第27号証の1及び2[株式会社熊電総業]には、機種紹介において、他のメーカーの機種が「メーカー名/型式番号」と表記されているのに対して、請求人の機種については常に「スタンダード/型式番号」の表記がなされている。そして、各機種について「詳しくはこちら(メーカーサイト)」の記述があり、クリックすれば請求人の製品紹介Webページが開くようになっている。
(タ)甲第28号証の1ないし3[三和システムサービス株式会社]には、“メーカーから探す”の欄や“キャンペーン”の業務用簡易無線、特定小電力無線の欄等に他の有名メーカーと共にスタンダードの表記があり、また“メーカーから探す”の欄でスタンダードを選択した場合には、「スタンダード商品一覧」が表示されて、「VS STANDARD」の下側に「豊富な実績を誇るスタンダードなら安心です。あなたの身近なところでスタンダードの『特定小電力無線機』『小エリア無線機』『業務用簡易無線機』が使われ、多くの人に愛されています。」との記載があり、その下側に各種個別無線機の紹介欄が表示されている。
(チ)甲第29号証の1ないし4[三和通信機有限会社]には、「全国陸上無線協会会員 各メーカー代理店」として他の有名メーカーと共にスタンダードの無線機を取り扱っていることが示されており、業務用携帯型無線機VX-582の紹介頁には「スタンダード製」や「メーカー スタンダード」の記載がある。
(ツ)甲第30号証の1及び2[株式会社芝浦通信]には、主要取引メーカー・ブランドの欄に他の有名メーカーと共に「VS/STANDARD」の表記があり、また「無線機販売 メーカー別無線機」の欄の「VX-D591」の紹介記事に「スタンダードのファーストモデル」の記載がある。
(テ)甲第31号証の1ないし5[秋葉原ファクトリー(Webサイト運営:田中電気株式会社)]には、他の有名メーカーの商品と共に、スタンダードブランドとして各種製品の紹介記事を掲載しているほか、甲第31号証の4にはバーテックススタンダードから八重洲無線への社名変更の記事もあり、「スタンダードシリーズの製品は八重洲無線が販売を担当しており、アマチュア無線、船舶無線、航空無線などはそのまま開発、製造販売までを行っています。」や「スタンダードブランドは事業再編からも多くの魅力的な製品を発表しており、これからも目が離せないブランドです。」の記事が掲載されている。
(ト)甲第32号証の1ないし3[株式会社昭栄通信機]には、レンタル商品である登録型デジタル無線機として「STANDARD VX-SD291」を紹介しており、また主な取扱無線機メーカーとして「VS/Vertex STANDARD/スタンダード」が挙げられている。
(ナ)甲第33号証の1及び2[株式会社信越無線]には、「PRODUCT NEWS」の欄に「VS STANDARD」の表記があり、製品名として「スタンダード VXD-10」の記載がなされている。
(ニ)甲第34号証の1ないし4[中部電子システム株式会社]には、「業務用無線機 VS STANDARD/スタンダード」の表記あり、甲第34号証の3では「スタンダードが投入するデジタル簡易無線機、ファーストモデル」の記載があるとともに、「こんなところにもスタンダードのこだわりが」として簡易無線機の細かい特徴点が挙げられている。
(ヌ)甲第35号証の1ないし3[株式会社日本電信]には、取扱商品一覧の中に列挙された本件請求人の製造・販売に係る各種無線機の型式番号の前に全て「STANDARD」の表記が付されており、STANDARDブランドの商品であることを示してある。
(ネ)甲第36号証の1ないし3[北星株式会社]には、「スタンダード無線専門販売店」であることの表記があり、「全国No.1のスタンダード無線機の販売代理店を目指しています。」や「無線機に迷ったらスタンダード無線で間違いない。」や「スタンダード(八重洲)に特化した専門販売店です。」などの記載がある。
(ノ)甲第37号証の1ないし3[トランシーバー・インカムナビ(Webサイト運営:ウェッジ株式会社)]には、“メーカーで選ぶ”の欄に他の有名メーカーと共に「スタンダード」の表記があり、「STANDARD(スタンダード)」の表題で商品紹介がなされている。
(ハ)甲第38号証の1ないし3[Wedge(Webサイト運営:ウェッジ株式会社)]には、“メーカーで選ぶ”の画面で“その他のメーカー”を選択した場合に、「STANDARD(スタンダード)」の表題で商品紹介がなされている。
(ヒ)甲第39号証の1ないし3[株式会社ゼック]には、無線機レビューの中で他の有名メーカーの製品と共に「スタンダード VX-582」の製品紹介があり、甲第39号証の2では携帯型デジタルトランシーバーVXD20の広告領域に「STANDARD」の表記がある。
(フ)甲第40号証の1ないし3[有限会社ユニテック]には、特定小電カトランシーバー及び業務用無線機の取扱いブランドとして、他の有名メーカーと共に「VS STANDARD」や「VS STANDARD/スタンダード」の表記がある。
(ヘ)甲第41号証の1及び2[京葉コムネット]には、“無線機販売”のメーカー欄に他の有名メーカーと共に「STANDARD(スタンダード)」があり、各製品は「STANDARD(スタンダード)と型式番号」を表題として説明されている。
(ホ)甲第42号証の1ないし3[株式会社東北SR通信システム]には、スタンダード業務用無線機・各種通信システムの販売代理店としてのWebサイトであり、「VS STANDARD」の標記と「スタンダード業務用無線機のことなら…」の記載がある。
ク 甲第43号証の1ないし246は、請求人が無線通信機の小売販売業務及び/又はレンタル業務を営んでいる会社又はその従業者などから貰った陳述書である。
各陳述書から明らかなように、陳述者には古くから前記業務を営んでいる者が多く、またほぼ全国にわたって散在しており、甲第12号証の2に記載されている請求人の製品取扱店や甲第13号証ないし甲第42号証までに挙げたWebサイトの運営会社の一部も含まれている。
そして、陳述内容は「平成25年3月より前の段階で、『STANDARD』及び『スタンダード』がバーテックススタンダード(バーテックススタンダードLMR合同会社)と請求人が製造・販売元であるハイパワーデジタルトランシーバー又は業務用無線通信機器についての有名ブランドであると認識しており、そのことは、他の無線通信機の小売販売業務及び/又はレンタル業務を営む者やハイパワーデジタルトランシーバー又は業務用無線通信機器のユーザーの間においても同様であると思う」となっており、本件商標の出願日より前には、ハイパワーデジタルトランシーバーや業務用無線通信機器の取引界において、「STANDARD」や「スタンダード」が一大ブランドとしての地位を確保し維持しており、極めて高い周知性を有していたことが理解できる。
(4)商標法第4条第1項第10号について
前記(3)のとおり、引用使用商標は、請求人により自身が製造・販売元である業務用無線通信機器等について長期間にわたり高い頻度で継続的に使用されてきた結果、本件商標の出願日である平成25年3月18日以前において、請求人が製造・販売元又は販売元である業務用無線通信機器等を表示するものとして需要者の間に広く認識され、当然に極めて強力に自他商品識別性を発揮しており、それ以降も現在に至るまでその周知性は変わらない。
一方、本件商標は、ゴシック体の「STANDARD」の文字列とデザイン化された「Lecuo」の文字列を二段書きしたものであり、双方の文字の書体が異なっているために「STANDARD」と「Lecuo」が一連一体不可分とはいい難いが、双方の文字列が同一幅になっているため全体としては一つの文字ブロックを構成した結合商標である。そして、本件商標に係る指定商品中には「電気通信機械器具に相当する商品」が含まれている。
ここで、もし仮に、引用使用商標が請求人の業務用無線通信機器等を表示する周知商標ではなかった場合には、本件商標が結合商標であり、また「STANDARD」や「スタンダード」が「標準」や「規格」のような意味合いを有して自他商品識別性が薄弱な用語であることから、本件商標は引用使用商標に対して非類似とみなされ得る。
しかしながら、引用使用商標が請求人の業務用無線通信機器等を表示する商標として前記のように極めて高い周知性を有している以上、本件商標と引用使用商標とが業務用無線通信機器等について使用された場合には商品の出所の混同を招くおそれがあることは明らかであり、双方は類似するものとみなされるべきである。
実際に、[工藤莞司著、「実例で見る商標審査基準の解説」、第5版、社団法人発明協会、平成18年9月9日、184ページから185ページ]においては、商標法第4条第1項第10号に関して「『需要者の間に広く認識された』他人の未登録商標と他の文字又は図形等とを結合した商標は、その外観構成がまとまりよく一体に表されているもの又は観念上の繋がりがあるものを含め、原則として、その未登録商標と類似するものとする。」とされている。なお、前記審査基準の例外として、「ただし、その未登録商標の部分が既成の語の一部となっているものその他著しく異なった外観、称呼又は観念を生ずることが明らかなものを除く。」とされているが、本件商標と「STANDARD」や「スタンダード」との関係に当てはまらないことは当然である。
したがって、本件商標は、たとえ「Lecuo」の文字列が結合していても、「STANDARD」の文字列を含んでいる以上、その出願日以前から請求人の周知商標であった「STANDARD」又は「スタンダード」と類似し、かつ、その周知商標が使用されている商品(業務用無線通信機器等)と同一又は類似の指定商品(電気通信機械器具に相当する商品)を含んでいることから、「請求に係る指定商品」について商標法第4条第1項第10号に規定されている商標に該当していた。
(5)商標法第4条第1項第15号について
引用使用商標は、本件商標の出願日以前から、簡易無線機のマーケットシェアとして常に25?31%程度を確保している請求人等の業務用無線通信機器等についての一大ブランドを表象する周知商標であるため、「STANDARD」又は「スタンダード」の文字列を含んでいる本件商標が電気通信機械器具に相当する商品について使用されると、前記のように商品の出所の混同を生じるだけでなく、請求人等と経済的又は組織的に何等かの関係がある者の業務に係る商品ではないかと誤認させるおそれがあることから、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に規定されている商標に該当していた。
(6)結び
以上のとおり、本件商標は、その指定商品中の「請求に係る指定商品」について商標法第4条第1項第10号及び同項第15号に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項第1号により、それらの商品についての登録は無効とすべきものである。

第3 被請求人の主張
被請求人は、本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とするとの審決を求め、答弁の理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第17号証(枝番を含む。)を提出している。
1 本件商標について
(1)外観
本件商標の外観は、全体として、英文字の「Lecuo」の5文字を、底部の高さを共通にさせ、かつ、隣接する文字間はほぼ間隙がない状態で、更に、左から右へ直線状に並べてなるものを上段に配置し、英文字で角ゴシック体の中太で各文字サイズが等しい「STANDARD」の8文字を底部高さを共通にさせ、かつ、長手方向の長さが前記英文字列「Lecuo」の長手方向の長さと等しくなるサイズを選択して左から右へ直線状に並べてなるものを下段に配置し、加えて、上段配置の文字列と下段配置の文字列は必要最小限の間隙を置いてほぼ密接の状態であって互いに長手方向にほぼ平行となる姿勢として構成されている。
そして、上段の文字列の「Lecuo」は、各文字の縦方向へ表記する部分では幅が広くかつ横方向に表記する部分では幅が狭く、更に、各文字の縦方向へ表記する部分と横方向に表記する部分の隣接する部分では自然に結合しているようにデフォルムされ、全体的に統一性のある明確にデザイン化された文字列である。また、文字列の「Lecuo」はデザイン化されているが、各文字は幾分丸みを帯び、サイズが互いにほぼ等しくかつ文字「e」、「c」、「u」及び「o」の高さはほぼ同じとなっている。
以上のことから、文字列の「Lecuo」は一体化されていて不可分であると捉えるのが相当である。
他方、上段の文字列の「Lecuo」と下段の文字列の「STANDARD」からなる全体構成は、互いに異なる書体であるが、上段の文字列と下段の文字列の長手方向の寸法が等しくかつ文字が左から右へと平行に配置され、更に、文字列の「Lecuo」と文字列の「STANDARD」は互いに密接な状態で共に水平方向の姿勢で配置されていることから、文字列の「Lecuo」と文字列の「STANDARD」は全体として一体化されていると捉えるべきであって、両文字列をあえて切り離して受け取るべきではないと捉えるのが相当である。
加えて、仮に本件商標が錯誤によって文字列「Lecuo」と文字列「STANDARD」の二つに分離されて捉えられる場合においても、文字列「Lecuo」は文字列「STANDARD」に比して各構成文字が大きく、文字の線が幅広く、文字の書体が特徴的であることから、文字列「Lecuo」が見落とされて文字列「STANDARD」のみが認識されるという場合は生じることがないと受け取るのが相当である。
(2)称呼
本件商標において、上段の文字列の「Lecuo」は元々英文字からなる造語であって見慣れない文字列といえるが、今日の日本人が英文字及び英単語に大変によく慣れ親しんでいる現状を考慮すると、英単語と同様に捉えて[rekuo]と称呼するのが相当である。
他方、下段の文字列の「STANDARD」が、今日の日本では既に普通名詞化されていて標準、規格等の意味を持ち、[sutanda:do]若しくは[sutandaado]と称呼するのが相当である。
本件商標全体の称呼は、8音若しくは長音を2音として数えても高々9音であって十分に多い音とはいえず、かつ、上段の文字列の「Lecuo」と下段の文字列の「STANDARD」は一体化して捉えるのが相当であるから、全体として一息に[rekuosutanda:do]若しくは[rekuosutandaado]と称呼するのが相当である。
(3)観念
本件商標は、造語の「Lecuo」を一体不可分の状態で含んで構成されており、かつ、文字列の「Lecuo」が外観上極めて高い特徴を示しているので、本件商標は特定の観念を持たないと解するのが相当である。
しかしながら、造語部分の「Lecuo」の方が「STANDARD」に比して各文字の線の幅が広く、かつ、各文字自体の横幅が十分に広くて大きく、書体が観る者に対してダイナミックな感じの印象を強く与えていると受け取れるので、あえて文字列「Lecuo」を本件商標の要部と解すとすると、文字列の「Lecuo」そのものが造語であることから特定の観念、特定の意味の類を持つことはなく観念はないと捉えるのが相当である。
さらに、文字列の「Lecuo」と文字列の「STANDARD」が一体化することによって特段の作用が働き、それによって何らかの特定の観念を想起させるか、ということを検討しても、該当する特定の観念や意味を想起することはなく、何らの観念を有しないと捉えるのが相当である。
2 引用使用商標の周知性について
請求人は、甲第5号証?甲第43号証を挙げて、引用使用商標が周知性を有することを主張しているが、その当否は審判官殿にお任せする。
3 本件商標と、引用の登録商標「STANDARD」(登録商標第0687091号)、登録商標「スタンダード」(登録商標第0687092号)及び登録商標「SR(図形)+STANDARD」(登録商標第0929795号)の類否について
(1)本件商標と引用の3商標の外観上の比較は、上述のとおり、全体観察において類似しているとは全く受け取れず、非類似であると受け取るのが相当である。
(2)本件商標と引用の3商標の称呼について比較すると、本件商標は一連で一息に[rekuosutanda:do]若しくは[rekuosutandaado]と称呼する。他方、引用の3商標を称呼した際にはそれぞれ[sutanda:do]若しくは[sutandaado]、[sutanda:do]若しくは[sutandaado]、[esua:rusutanda:do]若しくは[esaarusutandaado]となる。
したがって、本件商標と引用の3商標の称呼比較では、互いに韻の数が異なっており、韻の数が多いが故に幾つかの韻を欠落させて称呼させた場合に同一・類似の称呼となること等は考えられないので、互いに非類似であると受け取るのが相当である。
(3)本件商標の観念は、造語である「Lecuo」を含んで構成され、しかも、「Lecuo」の各文字の書体が特徴的であって、かつ、各文字の大きさが十分に大きいことから「Lecuo」の存在が大きな意味を持つので、商標全体では特定の観念を持たないと解するのが相当である。
他方、引用の3商標のうち、少なくとも登録商標「STANDARD」(登録商標第0687091号)及び登録商標「スタンダード」(登録商標第0687092号)は元々標準、規格等の観念を有している。
しかし、本件商標が特定の観念を有していない以上、引用の3商標と共通の観念を持つことはなく、本件商標と引用の3商標とでは観念は非類似であると解するのが相当である。
(4)以上のとおり、本件商標は、引用の登録商標「STANDARD」(登録商標第0687091号)、登録商標「スタンダード」(登録商標第0687092号)及び登録商標「SR(図形)+STANDARD」(登録商標第0929795号)と外観、称呼及び観念のいずれにおいても非類似であるから、本件商標はこれら引用の3商標と非類似であって識別性を持っていると解するのが相当である。
したがって、請求人は商標法第4条第1項第10号及び同第15号に該当すると述べているが、商標そのものが非類似の関係にあるので、これらに該当するという主張は当を得ていない。
4 「STANDARD」又は「スタンダード」を含んで構成される登録商標と標章「STANDARD」等の非類似性について
(1)本件商標が商標法第4条第1項第10号に該当する要件の一つとして、本件商標が引用使用商標と同一・類似であることが挙げられる。
指定商品として、少なくとも国際分類の第9類に属する電気通信機械器具を含んでいて、かつ、商標に文字列「STANDARD」又は「スタンダード」を含んで構成され、更に、登録商標「STANDARD」及び登録商標「スタンダード」の登録以降に出願・登録がされた登録商標が存在する(乙1?乙17)。
これらの17ケースの商標登録について、その審査経過を説明する。
ア 商標登録第4259993号は、その審査時において商標法第4条第1項第11号で拒絶理由通知書を受けているが、意見書の提出によって最終的には登録査定となっている(乙1)。
商標が「スタンダード フェーダ\Standard Fader」であってかつ指定商品に電気通信機械器具を含んだ商標登録出願は、商標登録第0687091号、第0687092号及び商標登録第0929795号に対して査定時において識別性を持ち、同一・類似の関係になかったと受け取るのが相当である。
イ 商標登録第4406718号は、その審査時において商標法第4条第1項第11号で拒絶理由通知書を受けているが、最終的には登録査定となっている(乙2)。
つまり、査定時において商標登録第0687091号、第0687092号及び商標登録第0929795号に対して識別性を持ち、同一・類似の関係になかったと受け取るのが相当である。
ウ 商標登録第4576953号は、その商標登録に係る審査時において、登録第0687091号、登録第0687092号、登録第0929795号等が引用されて商標法第4条第1項第11号で拒絶理由通知書を受けているが、同商標登録の出願の際の商標に含まれている「DNP」の使用説明を含む意見書の提出によって最終的には登録査定となっている(乙3)。
商標が「スタンダード\DNP STD」であってかつ指定商品に電気通信機械器具を含んだ商標登録出願は、査定時において商標登録第0687091号、第0687092号及び商標登録第0929795号、商標登録第0687091号、第0687092号及び商標登録第0929795号に対して識別性を持ち、同一・類似の関係になかったと受け取るのが相当である。
エ 商標登録第4588150号は、その審査時において、登録第0687091号、登録第0687092号、登録第0929795号等が引用されて商標法第4条第1項第11号で拒絶理由通知書を受けているが、同商標登録の出願の際の商標に含まれている「DNP」の使用説明を含む意見書の提出によって最終的には登録査定となっている(乙4)。
商標が「DNPスタンダード」であってかつ指定商品に電気通信機械器具を含んだ商標登録出願は、商標登録第0687091号、第0687092号及び商標登録第0929795号と同一・類似の関係にないと受け取るのが相当である。
オ 商標登録第4664213号は、同商標登録に係る登録出願は審査時に拒絶理由通知書を受けることなく登録査定となっている(乙5)。
したがって、商標が「STANDARDHASUPPORT\スタンダードエイチエーサポート」であって、かつ、指定商品に電気通信機械器具を含んだ商標登録出願は、商標登録第0687091号、第0687092号及び商標登録第0929795号に対して識別性を有し、同一・類似の関係にないと受け取るのが相当である。
カ 商標登録第4989898号は、審査時において商標法第4条第1項第11号の拒絶理由通知書を受けておらず、登録となっている(乙6)。
したがって、商標が「STANDARD CRICKET」であって、かつ、指定商品に電気通信機械器具を含んだ商標登録出願は、査定時において商標登録第0687091号、第0687092号及び商標登録第0929795号に対して識別性を持ち、同一・類似の関係にないと受け取るのが相当である。
キ 商標登録第5073754号は、その登録出願は審査時に拒絶理由通知書を受けることなく登録査定となっている(乙7)。
したがって、商標が「Journal standard(デザイン文字)」で、かつ、指定商品に電気通信機械器具を含んだ商標登録出願は、査定時において商標登録第0687091号、第0687092号及び商標登録第0929795号に対して識別性を持ち、同一・類似の関係にないと受け取るのが相当である。
ク 商標登録第5073755号は、その登録出願の審査時に拒絶理由通知書を受けることなく登録査定となっている(乙8)。
したがって、商標が「Journal\Standard(デザイン文字)」で、かつ、指定商品に電気通信機械器具を含んだ商標登録出願は、査定時において商標登録第0687091号、第0687092号及び商標登録第0929795号に対して識別性を持ち、同一・類似の関係にないと受け取るのが相当である。
ケ 商標登録第5111139号は、その登録出願の審査時に商標法第4条第1項第11号により拒絶査定となっているが、このケースに係る商標「BABYLONSTANDARD」の中の「BABYLON」についてであって、「STANDARD」についてではない(乙9)。
したがって、商標が「BABYLONSTANDARD」であり、かつ、指定商品に電気通信機械器具を含んだ商標登録出願は、商標登録第0687091号、第0687092号及び商標登録第0929795号に対して識別性を持ち、同一・類似の関係にないと受け取るのが相当である。
コ 商標登録第5414289号は、その登録出願の審査時に拒絶理由通知書を受けてはいるが、商標法第4条第1項第11号によるものではなく、最終的には登録査定となっている(乙10)。
したがって、商標が「SLIM STANDARD」であって、かつ、指定商品に電気通信機械器具を含んだ商標登録出願は、査定時において商標登録第0687091号、第0687092号及び商標登録第0929795号に対して識別性を持ち、同一・類似の関係にないと受け取るのが相当である。
サ 商標登録第5500364号は、その登録出願の審査時に拒絶理由通知書を受け取らずに登録査定となっている(乙11)。
したがって、商標が「XG/Standard」であって、かつ、指定商品に電気通信機械器具を含んだ商標登録出願は、査定時において商標登録第0687091号、第0687092号及び商標登録第0929795号に対して識別性を持ち、同一・類似の関係にないと受け取るのが相当である。
シ 商標登録第5641093号は、その登録出願の審査時に拒絶理由通知書を受けてはいるが、商標法第4条第1項第11号によるものではなく、最終的には登録査定となっている(乙12)。
したがって、商標が「Lecuo/STANDARD」であって、かつ、指定商品に電気通信機械器具を含んだ商標登録出願は、査定時において商標登録第0687091号、第0687092号及び商標登録第0929795号に対して識別性を持ち、同一・類似の関係にないと受け取るのが相当である。
ス 商標登録第5641094号は、その登録出願の審査時に拒絶理由通知書を受けてはいるが、商標法第4条第1項第11号によるものではなく、最終的には登録査定となっている(乙13)。
したがって、商標が「Lecuo/STANDARD」であって、かつ、指定商品に電気通信機械器具を含んだ商標登録出願は、査定時において商標登録第0687091号、第0687092号及び商標登録第0929795号に対して識別性を持ち、同一・類似の関係にないと受け取るのが相当である。
セ 商標登録第5785075号は、その登録出願の審査時に拒絶理由通知書を受けずに、登録査定となっている(乙14)。
したがって、商標が「E STANDARD」であって、かつ、指定商品に電気通信機械器具を含んだ商標登録出願は、商標登録第0687091号、第0687092号及び商標登録第0929795号と同一・類似の関係にないと受け取るのが相当である。
ソ 商標登録第5794246号は、その登録出願の審査時に拒絶理由通知書を受けずに、登録査定となっている(乙15)。
したがって、商標が「EDWIN E STANDARD」であって、かつ、指定商品に電気通信機械器具を含んだ商標登録出願は、査定時において商標登録第0687091号、第0687092号及び商標登録第0929795号に対して識別性を持ち、同一・類似の関係にないと受け取るのが相当である。
タ 商標登録第5875292号は、その登録出願の審査時に商標法第4条第1項第11号によって拒絶査定となっているが、意見書等の提出によって最終的には登録査定となっている(乙16)。
したがって、商標が「journalstandard/Furniture(デザイン文字)」であり、かつ、指定商品に電気通信機械器具を含んだ商標登録出願は、査定時において商標登録第0687091号、第0687092号及び商標登録第0929795号に対して識別性を持ち、同一・類似の関係にないと受け取るのが相当である。
チ 商標登録第5875293号は、その登録出願の審査によって拒絶理由通知書が出ているが、その内容は商標法第4条第1項第11号によるものではない(乙17)。
したがって、商標が「JOURNAL/STANDARD/Furniture(デザイン文字)」であり、かつ、指定商品に電気通信機械器具を含んだ商標登録出願は、査定時において商標登録第0687091号、第0687092号及び商標登録第0929795号に対して識別性を持ち、同一・類似の関係にないと受け取るのが相当である。
(2)前記のとおり、商標が「STANDARD」又はそれに類する文字列を含んで構成され、かつ、指定商品に電気通信機械器具を含んでいても、商標登録第0687091号、第0687092号及び商標登録第0929795号と同一・類似の関係であるとみなされず、むしろ審査時に商標法第4条第1項第11号に該当しないケースの方が多いという審査結果が出ている。
翻って、請求人は、商標法第4条第1項第10号を根拠条文としているが、本件審判請求においては類似・非類似という観点については同様に扱って問題ないので、本件商標は前記で説明したとおりの外観、称呼及び観念の特徴を有し、審査時において商標登録第0687091号、第0687092号及び商標登録第0929795号のそれぞれの商標に対して識別性を有し、非類似とみなされたが故に登録査定になったと受け取るのが相当である。
したがって、請求人が提示された標章がたとえ周知性を得ているとしても非類似の関係にある商標は取消しの対象になることはない。
同様にして、商標法第4条第1項第15号を根拠条文とされた審判請求も、非類似の関係にある商標に対してなされたと受け取れ、取消しの対象にならない。
5 結び
以上のとおり、本件商標のみならず、商標に文字列「STANDARD」又は「スタンダード」を含んで構成され、指定商品として少なくとも国際分類の第9類に属する電気通信機械器具を含んでいて、かつ、登録商標「STANDARD」(登録第0687091号)、登録商標「スタンダード」(登録第0687092号)及び登録商標「SR(図形)+STANDARD」(登録第0929795号)の登録以降に出願・登録がされた登録商標が存在しており、しかも、多くが商標法第4条第1項第11号による拒絶理由通知書を受けずに登録になっている。
つまり、これらの登録商標は文字列「STANDARD」又は「スタンダード」を含んで構成されているから、請求人が引用している前記3商標とは非類似の関係にあるので、本件商標は商標法第4条第1項第10号及び同第15号に該当しない。

第4 当審の判断
1 引用使用商標の周知性について
(1)請求人の提出に係る証拠及び同人の主張によれば、以下の事実が認められる。
ア 請求人は、昭和31年に「株式会社ゼネラルテレビサービス」として設立され、その後、商号を昭和39年に「八重洲無線株式会社」、平成12年に「株式会社バーテックススタンダード」、同24年に「八重洲無線株式会社」とする変更を行い現在に至っている。なお、請求人は、平成21年10月1日に販売子会社である「株式会社スタンダード」を吸収合併している。
請求人は、昭和33年から現在に至るまでアマチュア無線通信機の製造・販売をしており、また、昭和53年には事業内容を業務用無線通信機器の製造・販売にも拡張し、さらに平成10年には日本マランツ株式会社から業務用無線通信機事業を買収するとともに、「STANDARD」及び「スタンダード」の文字からなる標章に関連した商標権(商標登録第0687091号(甲2)、同第0687092号(甲3)及び同第0929795号(甲4))を譲り受けた。
イ 社団法人全国陸上無線協会が発行する機関紙である「RMK会報」において、請求人及びその販売子会社は、「STANDARD」の文字(引用使用商標1)が付されたデジタル簡易無線機の広告を、少なくとも2009年(平成21年)4月から2013年(平成25年)7月まで間に10回(2回は本件商標の出願日以降のもの。)掲載しており、広告中の業務用無線機(写真画像)の筐体正面に引用使用商標1が付されているとともに、広告枠中に引用使用商標1が表示され、また、その説明中に引用使用商標2が表示されている回(2011年4月)もある(甲6の1?10)。
ウ 警備保障タイムズ株式会社が毎月3回発行している「警備保障タイムズ」において、引用使用商標1が付されたデジタル簡易無線機の広告を、少なくとも平成24年10月11日付け、同25年2月21日付け及び同年9月21日付けで掲載している(甲7の2?4)。
エ 同じく「警備保障タイムズ」(平成24年6月1日付け)において、製品紹介として「八重洲無線 エリアと利便性を拡張 トランシーバー中継器」の見出しの下、「八重洲無線・・・は、簡単に設置できて通話エリアと利便性を拡張できるSTADARD特定小電力トランシーバー用中継器『FTR-400』の販売を開始した。」との記事が掲載された(甲7の1)。
オ 株式会社電波新聞社が発行している「日刊電波新聞」において、請求人又はその販売子会社が販売する業務用携帯型無線機に係る製品紹介記事が引用使用商標2の下、少なくとも2001年(平成13年)1月29日から2014年(平成26年)9月4日まで間に14回(4回は本件商標の出願日以降のもの。)掲載されている(甲8の1・3?7・9・11?13・18・21・27・28)。
カ 同じく「日刊電波新聞」において、請求人は、「STANDARD」の文字(引用使用商標1)が付されたデジタル簡易無線機の広告を、少なくとも2013年(平成25年)3月5日から2014年(平成26年)9月4日まで間に4回(3回は本件商標の出願日以降のもの。)掲載しており、広告中の業務用無線機(写真画像)の筐体正面に引用使用商標1が付されている(甲8の19・22・27・28)。
キ 株式会社電波タイムズ社が発行している「電波タイムズ」において、請求人又はその販売子会社が販売する業務用携帯型無線機に係る製品紹介記事が引用使用商標2の下、少なくとも2001年(平成13年)2月9日から2013年(平成25年)11月1日まで間に6回(2回は本件商標の出願日以降のもの。)掲載されている(甲8の2・8・10・16・24・25)。
ク 同じく「電波タイムズ」において、請求人は、「STANDARD」の文字(引用使用商標1)が付されたデジタル簡易無線機の広告を、少なくとも2012年(平成24年)6月1日から2014年(平成26年)1月1日まで間に8回(5回は本件商標の出願日以降のもの。)掲載しており、広告中の業務用無線機(写真画像)の筐体正面に引用使用商標1が付されているとともに、広告枠中に引用使用商標1が表示されている(甲8の14・15・17・20・23?26)。
ケ 株式会社日経BPが2009年10月15日付けで発行した「日経レストラン」(10月増刊号)において、請求人は、「STANDARD」の文字(引用使用商標1)が付されたデジタル簡易無線機の広告及び製品説明を掲載し、広告中の業務用無線機(写真画像)の筐体正面に引用使用商標1が付されている(甲9)。
コ 株式会社ゴルフダイジェスト社が平成25年(2013年)5月1日付けで発行した「ゴルフ場セミナー」において、請求人は、「STANDARD」の文字(引用使用商標1)が付されたデジタル簡易無線機の広告及び製品説明を掲載し、広告中の業務用無線機(写真画像)の筐体正面に引用使用商標1が付されているとともに、広告中に引用使用商標1が表示されている(甲10)。
サ 一般社団法人全国警備業協会が平成25年(2013年)12月25日付けで発行した「セキュリティ・タイム」において、請求人は、「STANDARD」の文字(引用使用商標1)が付されたデジタル簡易無線機の広告を掲載し、広告中の業務用無線機(写真画像)の筐体正面に引用使用商標1が付されているとともに、広告中に引用使用商標1が表示されている(甲11)。
シ 甲第12号証の1は、平成24年12月10日にインターネット上に公開されていた請求人の製品取扱店を紹介するWebサイトのトップページであるところ、「Webサイトでは、販売店所在地を総合通信局の所在するエリア別に表示しています。簡易無線機の免許申請をする場合は、無線機を使用する(常置する)エリアではなく、本社(本店)の所在するエリアの総合通信局に対して行います。」の記載があり、甲第12号証の2には、前記トップページにおける各都道府県名の表示部分をクリックすることにより得られる各都道府県の製品取扱店(237店)の名称・住所・電話番号などが表示されており、トップページを含め各ページの左上方には引用使用商標1が表示されている。
ス 甲第13号証ないし甲第42号証は、無線通信機の販売店やレンタル店が運営しているWebサイト(30社(店))であり、本件商標の出願日前と出願日後から登録査定前のそれぞれの時期において、請求人の製造・販売に係る業務用無線通信機器等が引用使用商標1又は引用使用商標2の下で製品写真画像などとともに紹介されている。
セ 甲第43号証の1ないし246は、請求人が無線通信機の小売販売業務及び/又はレンタル業務を営んでいる会社又はその従業者などから貰った陳述書であるとするものであり、陳述書の表題の下、「遅くとも平成25年3月より前の段階で、『STANDARD』及び『スタンダード』がバーテックススタンダード(バーテックススタンダードLMR合同会社)と八重洲無線株式会社が製造販売元であるハイパワーデジタルトランシーバー又は業務用無線通信機器についての有名ブランドであると認識しており、そのことは、当社のみならず、他の無線通信機器の小売販売業務及び/又はレンタル業務を営む者やハイパワーデジタルトランシーバー又は業務用無線通信機器のユーザーの間においても同様であると思います。」との記載とともに、246枚それぞれに、陳述者として各社の署名、捺印がされている。
(2)前記(1)によれば、請求人は、業務用無線通信機器等について引用使用商標1を付して長年にわたり製造販売を継続しているものであって、それら製品を取り扱うの販売店も全国に及んでいるものであり、また、その広告宣伝も本件商標の登録出願前から長年にわたり相当程度定期的に行われていることなどが認められ、これらを総合勘案すれば、引用使用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において請求人が取り扱う商品「業務用無線通信機器等」を表示するものとして需要者の間に広く認識されていたものと認められる。
2 商標法第4条第1項第10号該当性について
(1)引用使用商標の周知性
引用使用商標が、本件商標の登録出願時及び登録査定時において請求人が取り扱う商品「業務用無線通信機器等」を表示するものとして需要者の間に広く認識されていたものであることは、前記1のとおりである。
(2)本件商標に係る指定商品と引用使用商標に係る使用商品との類否
請求人は業務用無線通信機械器具等に引用使用商標を使用しているものであるところ、本件商標に係る指定商品中の「請求に係る指定商品」は、いずれも、請求人が使用する該商品をも包含する「電気通信機械器具」の範ちゅうの商品であるといえるものであるから、引用使用商標に係る使用商品と同一又は類似する商品であるといえる。なお、被請求人は、前記の両商品の類似を認めた上で、本件商標と引用使用商標との非類似を主張していることからすれば、この点について、当事者間に争いはないといえる。
(3)本件商標と引用使用商標との類否
ア 請求人の使用する引用使用商標は、「STANDARD」の欧文字若しくは「スタンダード」の片仮名からなるものであるところ、「STANDARD」及び「スタンダード」の語は、本来、「基準,標準」などの意味を表す語であって、使用する商品によって自他商品の識別標識としての機能がない又は低いとされるものであるが、前記(1)のとおり、請求人等が「業務用通信機械器具等」に使用して強い自他商品識別力を発揮してきたものであるから、引用使用商標のいずれも「スタンダード」の称呼を生じ、「請求人のブランドである『スタンダード』」の観念を生じるものである。
イ 他方、本件商標は、別掲(A)のとおり、上段に「STANDARD」の欧文字と下段にややデザイン化された「Lecuo」の欧文字とを上下二段に横書きしてなるところ、「Lecuo」の欧文字部分が、第1字の「L」以外が小文字であること、各文字の縦画が横画に比較して太いこと、「o」の文字の上部から発した線が「u」の文字の上部を通過して「c」の文字部分まで至っていることなどの特徴を有する5文字全体としてデザイン化されたものであるのに対し、「STANDARD」の欧文字は一般に使用されるゴシック体でごく普通に表されているものであることから、上段の文字と下段の文字とは、看者に両者の一体性が希薄であるとの印象を与えるものである。そして、「Lecuo」の文字は、特定の意味を有する語として知られているものではなく、特定の意味を有しない造語と認められるものであるのに対し、「STANDARD」の欧文字部分は、請求人の使用する引用使用商標の一つである「STANDARD」の欧文字と同一のつづりからなるものであって、その意味については前記のとおりであるから、上段の文字及び下段の文字から一体的な意味合いが生じるものともいえない。
そうすると、本件商標は、「STANDARD」の欧文字と「Lecuo」の欧文字とが外観、観念における一体性が薄いことに、引用使用商標の使用商品の取扱に係る同一又は類似の商品の分野において、引用使用商標が周知性を得ていることを考慮すれば、その構成中の「STANDARD」の欧文字部分が取引者、需要者に対し商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる。
してみれば、本件商標は、その構成中の「STANDARD」の欧文字を分離、抽出して、該部分から生じる称呼、観念をもって取引に資されるといえるものであり、構成全体から生じる「スタンダードレクオ」の称呼のほかに、「STANDARD」の欧文字に相応して「スタンダード」の称呼が生じるものといえる。また、「STANDARD」の欧文字に相応して、「請求人のブランドである『スタンダード』」の観念を生じるものである。
ウ 本件商標の外観と引用使用商標の外観を対比すると、本件商標と引用使用商標とは「STANDARD」の欧文字を共通にしているから、本件商標と引用使用商標とは、外観上、相紛らわしいものである。
本件商標から生ずる称呼と引用使用商標から生ずる称呼とを比較すると、両者は、「スタンダード」の称呼を共通にするものであるから、称呼上、相紛らわしいものである。
本件商標と引用使用商標とは、いずれも「請求人のブランドである『スタンダード』」の観念を生じるものであるから、観念上、相紛らわしいものである。
そうすると、本件商標と引用使用商標とは、外観、称呼、観念のいずれにおいても相紛らわしいものであるから、類似の商標というべきものである。
(4)小括
以上によれば、本件商標は、その登録出願時及び登録査定時において、他人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されるに至っていた引用使用商標に類似するものであり、かつ、引用使用商標の使用に係る商品に類似する商品について使用をするものであるから、商標法第4条第1項第10号に該当するものである。
3 まとめ
以上のとおり、本件商標の登録は、その指定商品中「結論掲記の指定商品」について、商標法第4条第1項第10号に違反してされたものであるから、その余の請求人の主張について論及するまでもなく、同法第46条第1項の規定により、無効とされるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲
(A)本件商標


(B)本件商標に係る指定商品
第9類「電池,二次電池,太陽電池,電池ケース,充電器,ACアダプター,放送用拡声機械器具,無線通信機械器具,放送局用機械器具,全地球位置測位装置,ナビゲーション装置,アンテナ,台架類,トランシーバー,車載用トランシーバー,船舶用通信機械器具,船舶用トランシーバー,VHF航空機用無線通信機,携帯用通信装置,高周波送受信装置,携帯通信機器用ベルトクリップ,携帯通信機器用外装ケース,トランシーバー用外付けマイクロフォン・スピーカー,ヘッドセットマイクロフォン,無線送信器,リモートコントロール装置,無線中継器,混信防止装置,光通信用中継器,レーダー装置,方向探知装置,携帯電話機,無線電話機,音声伝送装置,光通信用モデム,周波数変換器,無線受信機,固定単チャンネルアクセス通信装置,マルチチャンネルアクセス通信装置,赤外線送信機,音声信号送信装置,電子信号送信機,テレビ,ラジオチューナー,ラジオ受信機,ラジオ送信機,液晶ディスプレイ,電気通信用画像データ送信装置,電気通信用画像データ受信装置,ウェブカメラ,画像データ伝送用ケーブル,電気通信画像用モニター,電気通信用動画データ送信装置,電気通信用動画データ受信装置,画像データ伝送用中継装置,動画データ伝送用中継装置,画像用記録装置,デジタル式ビデオ編集機,動画再生装置,オーディオアンプ,メインアンプ,プリアンプ,プリ・メインアンプ,変圧器,オーディオスピーカー,オーディオレシーバー,オーディオディスクプレーヤー,コンパクトディスクプレーヤー,レコードプレーヤー,デジタルビデオディスクプレーヤー,オーディオディスクレコーダー,コンパクトディスクレコーダー,ビデオディスクレコーダー,デジタルビデオディスクレコーダー,半導体メモリ再生装置,拡声器,録音装置,音声再生装置,音声周波ミキサー,音声イコライザー,教育用音声周波機械器具,カラオケ装置,ヘッドフォン,イヤフォン,マイクロフォン,コードレスマイクロフォン,充電式ワイヤレスマイクロフォン,映像用プロジェクター,ビデオ再生装置,録音済みのコンパクトディスク,カラオケ用画像表示装置,録音済み・録画済み・録音済み及び録画済みのフラッシュメモリー,録画済みのビデオディスク,ビデオカメラ,デジタル-アナログ変換器,アナログ-デジタル変換器,個人用ステレオ音響機器,携帯型音響機器,ヘッドフォンステレオプレーヤー,USBフラッシュメモリー,ICレコーダー,オーディオ機器用ケーブル,電線,電線・ケーブル用コネクター,光ファイバーケーブル,ケーブル用接続スリーブ,スピーカースパイク,スピーカースパイク用プロテクター,スピーカースパイク用インシュレーター,教育用視聴覚機械器具,音楽・映画・画像・アニメーション・文章を記録した光ディスク,音楽・映画・画像・アニメーション・文章を記録したUSBメモリー,音楽・映画・画像・アニメーション・文章を記録したIC記録媒体」

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審理終結日 2017-01-30 
結審通知日 2017-02-08 
審決日 2017-03-31 
出願番号 商願2013-23203(T2013-23203) 
審決分類 T 1 12・ 255- Z (W09)
T 1 12・ 25- Z (W09)
最終処分 成立  
前審関与審査官 小出 浩子 
特許庁審判長 今田 三男
特許庁審判官 小松 里美
酒井 福造
登録日 2014-01-10 
登録番号 商標登録第5641093号(T5641093) 
商標の称呼 スタンダードレクオ、スタンダード、レクオ、レキュオ 
代理人 永井 利和 

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