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審決分類 審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) X03
管理番号 1327963 
審判番号 取消2016-300433 
総通号数 210 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2017-06-30 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2016-06-20 
確定日 2017-04-12 
事件の表示 上記当事者間の登録第5458668号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第5458668号商標の指定商品中、第3類「化粧品」については、その登録は取り消す。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5458668号商標(以下「本件商標」という。)は、「シークレットチャーム」の片仮名と「Secretcharm」の欧文字とを上下二段に横書きしてなり、平成23年6月27日に登録出願、第3類「化粧品,つけまつ毛」及び第21類「化粧用具(「電気式歯ブラシを除く。」)」を指定商品として、同年12月16日に設定登録されたものである。
そして、本件審判の予告登録は、平成28年7月5日にされたものである。

第2 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由及び被請求人の答弁に対する弁駁の理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証及び甲第2号証を提出した。
1 請求の理由
本件商標は、その指定商品中、第3類「化粧品」について、継続して3年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実が存在しない。
よって、本件商標の登録は、商標法第50条第1項の規定に基づき、取り消されるべきである。
2 答弁に対する弁駁の理由
(1)本件商標は、第3類に関し「化粧品,つけまつ毛」の二つの商品を指定している。
被請求人は、その答弁書においては、本件商標を「つけまつ毛」に使用していることは示すものの、もう一方の「化粧品」に使用していることは全く示していない。
本件審判において、請求人が取消しを求めているのは「化粧品」であり、「つけまつ毛」ではない。
そうとすれば、被請求人は、本件審判の取消請求の対象となっている商品に関して、本件商標の使用を立証していないから、「化粧品」について商標登録の取消しは免れない。
(2)答弁書における被請求人の主張は、要するに「つけまつ毛」という商品は「化粧品」にも該当するという点に尽きる。そして、その法的根拠として、裁判例(東京高裁昭和60年5月14日判タ567号257頁)を挙げ、当該裁判例で示した基準に基づき、種々の検討を行い、論理を展開させている。
しかしながら、本件審判において上記裁判例を論拠とするのは、そもそも誤りである。すなわち、当該裁判例は、「今まで存在していなかった商品がどの商品類別に該当するのかが不明な場合における判断基準を示したもの」である。この点に関し、原告も自ら「この種商品は旧商標法施行当時に全く知られていなかった」と主張し、裁判所も「本件商品は、(略)旧商標法施行の時代には存在しなかったタイプのものであり、その製造、販売開始の昭和四一年当時でも、同種の商品はほとんどなく、先駆的なものであった」ということを認めたうえで、当該商品がどの商品類別に属するのかを検討している。
一方で、被請求人が登録商標を使用している「つけまつ毛」は、「商品の類似群(商品類別)そのもの」である。「つけまつ毛」は、「先駆的」な商品でもなんでもなく、数十年も前から類似商品・役務審査基準で認められてきた商品である(甲2)。
被請求人の主張はすなわち、「類似商品・役務審査基準自体に誤りがある」という主張であり、もしくは「類似商品・役務審査基準の類似群ごとに使用の有無を判断するという現行の仕組み自体に誤りがある」とする主張である。
そうとすれば、被請求人の主張は、「先駆的な商品」に関する類別の基準を示した上記裁判例とは「次元の異なる議論」であり、当該裁判例を論拠とすることはできない。
したがって、被請求人の主張は、法的根拠のない独自の主張にすぎず、失当である。
(3)なお、「化粧品」に関して本件商標の登録が取り消されたとしても、被請求人が実際に使用している商品そのものである「つけまつ毛」に関しては商標登録は維持される。したがって、「化粧品」について本件商標の登録が取り消されても、被請求人に実質的な不利益はない。
一方、類似商品・役務審査基準で定める類似群を無視して、合理的な根拠もなく「つけまつ毛」は「化粧品」にも該当するものとすれば、使用調査などを行い、また少なからぬ投資を行い、慎重に商標の選択を行ってきた請求人の利益や、事業計画を著しく害するものであり、許されるべきではない。
以上述べたように、被請求人によって提出された証拠によっては、「化粧品」に関する本件商標の使用事実は何ら証明されていないから、本件商標の登録は「化粧品」に関して取り消されるべきである。

第3 被請求人の主張
被請求人は、本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第8号証(枝番号を含む。以下、枝番号の全てを引用するときは、枝番号を省略して記載する。)を提出した。
1 本件商標の商標権者について
本件商標の商標権者は、化粧品(つけまつ毛、ネイルケア・アート用品、ハンドケア・ボディケア用品等)及びヘアアクセサリー用品の製造及び販売、SP(セールスプロモーション)事業、モデル育成等を事業内容とする会社であり、同社ウェブサイトには同社が取り扱う商品(つけまつ毛、つけまつ毛用接着剤、マスカラ、ハンド&ネイルケア用品、ネイルアート用品、ボディケア用品等)が掲載されている(乙1)。
2 本件商標の使用の事実について
被請求人は、以下の各証拠にて示すとおり、本件商標と社会通念上同一の商標を付した商品(つけまつ毛)(以下「本件商品」という。)を、本件審判請求の登録の前3年以内(以下「要証期間」という場合がある。)に日本国内において販売した。
(1)商品写真(乙2)
被請求人が製造及び販売する本件商品は、使用者の希望する目元の印象にあわせ、色(ブラック又はダークブラウン)、ニュアンス(モアエレガント、ナチュラルキュート、ヌードクラシックその他)、用途(上まつ毛用・下まつ毛用)ごとに、全14種類のラインナップが存在する(乙3)。
このうち、乙第2号証-1は、本件商品のうちブラックシリーズ・上まつ毛用の商品の一部(商品記号:EA-01 モアエレガント)(以下「本件商品EA-01」という。)の写真であり、その包装の表面の上部三分の一程度の白地スペースに、左側は商品(つけまつ毛)を装着したモデルの顔写真が配置され、その右側に「Secret\Charm」の欧文字が焦茶色の太文字の二段書きにて目立つように記されており、中間部においては商品であるつけまつ毛が透明のパッケージ越しに外部から認識可能となっており、最下部には「EA-01」(商品記号)及び「モアエレガント」\(よりエレガントになりたい人)」(ニュアンス名及びその説明)との記載がある。また、裏面にも表面と同一の字体で「Secret\Charm」の欧文字が太文字の二段書きにて、表面のものよりやや縮小されたサイズで記されており、当該欧文字の下に、黒枠内に白文字の「シークレットチャーム」との片仮名表記が添えられている。その他、裏面にはつけまつ毛を装着したモデルの目元のアップ写真のほか、「秘密の魔法をかける」、「女性らしく品のあるまるで自まつ毛のようなNEWタイプのアイラッシュシリーズ」との記載、その他商品内容や接着剤材質、注意事項、価格、発売元(被請求人)等の記載がある。なお、被請求人のその他の本件商品のブラックシリーズ(商品記号:EA-02ないし05)の包装についても、上記本件商品EA-01とほぼ同様の構成となっている。
乙第2号証-2は、本件商品のうちダークブラウンシリーズ・上まつ毛用の商品の一部(商品記号:EA-06 リアルシークレット)(以下「本件商品EA-06」という)の写真であり、その包装は上記本件商品EA-01のものとデザインがやや異なるもののほぼ同様となっている。すなわち、表面の上部三分の一程度のスペースに、左側は商品(つけまつ毛)を装着したモデルの顔写真が配置され、その右側に「Secret\Charm」の欧文字が焦茶色の太文字の二段書きにて目立つように記されており、中間部においては商品であるつけまつ毛が透明のパッケージ越しに外部から認識可能となっており、最下部には「EA-06 リアルシークレット」(商品記号及びニュアンス名)との記載がある。また、裏面にも表面と同一の字体で「Secret\Charm」の欧文字が太文字の二段書きにてやや縮小されたサイズで記されている。その他、裏面にはつけまつ毛をつけた際の目元の変化の様子を示す写真(Before-After)のほか、「秘密の魔法をかけるつけまつげ」、「今から始めるHAPPYつけまLIFE」等の記載、その他商品内容や接着剤材質、注意事項、価格、発売元(被請求人)等の記載がある。また、表面及び裏面に記された「Secret\Charm」の欧文字の周囲を、外側は太い波線、内側は細いシンプルな線で構成された二重の線が楕円状に囲んでいるほか、当該楕円状の線で囲まれた部分の地の色を、本件商品EA-06の包装の背景の色ないし柄(表面:ベージュ地に淡い色で描かれた花柄、裏面:ミントグリーン)と比較して一際目立つように白色とするなどの工夫が施されている。なお、「Secret」と「Charm」の間に、これらの欧文字の四分の一以下の大きさの細文字にて「Dark Brown」との記載が添えられているが、これは本件商品EA-06の色がダークブラウンであるとの、商品の特徴を示すための記載にすぎない。また、当該「Dark Brown」の記載は上記のとおり「Secret」と「Charm」の四分の一以下の大きさで、かつ細文字で記載されているため、太文字で大きく記載された「Secret」及び「Charm」と比較して非常に目立たない態様となっている(本件商品を遠目から(50センチメートル程離れて)見た場合には一見気付かないほどである)。
なお、被請求人のその他の本件商品のダークブランシリーズ(商品記号:EA-07ないし14)の包装についても、上記本件商品EA-06とほぼ同様の構成となっている。
以上を総合考慮した場合、本件商品(商品記号:EA-01ないし14)において商品の出所表示機能を担っているのは、商品の包装に太文字かつ目立つよう記載ないし配置された上記「Secret\Charm」の部分というべきであり、同部分が本件商品に付された商標(別掲、以下「本件使用商標」という。)と解すべきである(なお、本件商品において用いられている「Secret\Charm」の欧文字は、本件商標における欧文字と書体において若干相違し、また、本件商標において欧文字の上段に二段書きされている片仮名表記を伴わないものの、本件商標との関係において本件使用商標は、商標法第50条第1項及び2項の規定でいうところの「社会通念上同一の商標」にあたることはいうまでもない。)。
(2)商品カタログ(乙3)
乙第3号証は、被請求人が製造及び販売する本件商品が掲載された商品カタログであり、本件商品の卸売先等に配布するために作成され、現在も営業活動時等において配布されているものである。
同カタログには、その表紙部分(1頁目)に大きく本件使用商標が記載されているほか、2頁目ないし7頁目及び9頁目に全14シリーズ(商品記号:EA-01?14)の本件商品の写真が、また、10頁目には本件商品の店頭での展示用の什器や、販促用のPOP、リーフレットの写真が掲載されており、これら商品や什器、POP、リーフレットにはいずれも本件使用商標が付されている。
同カタログには発行日の記載がないが、リニューアル後のパッケージの商品(上記アと同種のもの)が掲載されていること、及び、パッケージのリニューアルに係る説明を目的とする付属のA4サイズ1枚のチラシ(乙3最終頁)と一体となって構成されており、本件商品に係るカタログの発注記録(乙4)に照らした場合、同カタログは平成25年4月11日に発注され、同月17日に印刷元より被請求人に対し出荷されたものであることがわかる。
(3)納品書(乙5)
乙第5号証は、被請求人が本件商品を第三者に販売した事実及びその時期を示す納品書のごく一部である。
このうち、乙第5号証-1の品名欄にはその上段に「EA-11/イノセントチャーム」及び「4511696615110」との記載が、下段に「EA-14/リッチフェミニン」及び「4511696615141」との記載があり、上下段とも上代価格は「1,200」となっている。ここで、本件商品のカタログ(乙3)を参照すると、これらの記載と、本件商品のうち商品記号「EA-11 イノセントチャーム」(JANコード:4511696615110、本体価格1,200円)及び商品記号「EA-14 リッチフェミニン」(JANコード:4511696615141、本体価格1,200円)(乙3の7頁目及び11頁目)に係る記載がいずれも符合していることがわかる。
すなわち、乙第5号証-1は本件商品(商品記号:EA-11 イノセントチャーム及びEA-14 リッチフェミニン)が要証期間内である平成25年8月26日に被請求人より審判外第三者株式会社エーアンドティーに対して販売(納品)された事実を示している。
このほか、乙第5号証-2ないし乙第5号証-5についても上記と同様に、本件商品が要証期間内に被請求人より審判外第三者に対して販売(納品)された事実を示すものである。
(4)まとめ
上記(1)ないし(3)により、被請求人が要証期間内に本件商標と社会通念上同一の商標を、本件商品(つけまつ毛)に使用していた事実が裏付けられる。
3 本件商品が本件商標の指定商品中の第3類「化粧品」に該当することについて
(1)指定商品該当性の判断について
本件商標は、第3類「化粧品,つけまつげ」及び第21類「化粧用具(「電気式歯ブラシを除く。」)を指定商品とするものであるところ、請求人がこのうち第3類「化粧品」について本件審判を提起した趣旨は、被請求人が本件商標と社会通念上同一の商標を付して製造販売した本件商品は本件商標の指定商品中第3類「化粧品」に該当せず、よって被請求人による本件使用商標の使用が、第3類「化粧品」についての使用ではないと解釈していることに基づくものと思料される。
被請求人は、本件商品が指定商品「つけまつげ」に該当すること自体を争うものではないが、本件商品は「化粧品」にも該当し、よって、被請求人は本件商標と社会通念上同一の商標を「化粧品」についても使用したと認定されるべきである。
この点、不使用取消審判の請求の対象となっている登録商標を現実に使用している商品が当該登録商標の指定商品に該当するか否かは、「単にその名称、表示等の形式のみによって判断すべきではなく、当該商品の取引者及び需要者の判断を基準として実質的に判断すべきである」との裁判例(東京高判昭和60年5月14日判タ567号257頁)(以下「本件裁判例」という。)が示されており、本件についても本件裁判例の考慮要素、判断過程を参考に指定商品該当性について検討すべきものと思料する。
本件裁判例においては、ポリチューブに入ったクリーム状の洗顔料が指定商品「他類ニ属セサル化粧品」に該当するか否かが争われたものであるが、裁判所は、当該商品の先駆的性格、成分、効用、当該商品及びこれと同種の同業他社の商品についての流通市場における認識、同業他社の認識、薬事法上の扱いに照らし、当該商品は「石鹸」であるが同時に「化粧品」でもある商品、ないしは石鹸(原料としての石鹸)成分を含有する「化粧品」というべきものであり、したがって、「他類ニ属セサル化粧品」に該当するとの判断を示した。
さらに、「もともと、旧商標法における商品類別ないし現行商標法における商品区分は、市場で流通する膨大な種類の商品を、商標登録出願に際しての出願人の便宜及び審査の便宜を図るという行政的見地から分類したものであり、もとより、いずれの分類に属するか判断の極めて困難な商品も存する(中略)のみならず、時代の推移とともに右分類のなされた当時には存在しなかった種類の商品が出現することは見易い道理であり、右分類自体、現実の流通市場の実態に合わせるべく改定されてきたところであること等に鑑みれば、右分類のいずれか一つに属するとは決し難い商品が出現した場合、不使用取消審判の場で、商品は常にいずれか一つの分類に属すべきものであって、二つの分類に属することはありえないとするのは相当でなく、登録商標の使用されている当該商品の実質に則して、それが真に二つの分類に属する二面性を有する商品であれば、当該二つの分類に属する商品について登録商標が使用されているものと扱って差し支えないというべきであり、このように解しても、前記のような商品類別ないし商品区分の趣旨に反することにならない」としている。
以上を踏まえ、本件商品についての具体的検討を以下にて行う。
(2)本件商品についての検討
ア 本件商品の用法、用途(性格、成分、効用)
本件商品(つけまつ毛)は、まつ毛を強調するために人工のまつ毛を専用のグルー(糊)を用いて瞼に貼り付けて使用するもので、魅力的な目元を演出するための化粧(メイクアップ)に用いられる。
本件商品と同様の機能を有するものとして、マスカラ(まつ毛を濃く、長く、カールしているように見せるためにまつ毛に塗って使用するもの)やまつ毛エクステ(まつ毛を強調するために人工のまつ毛をグルーを用いて自まつ毛に装着して使用するもの)がある。このうちマスカラについては、特許庁の類似商品・役務審査基準上では「化粧品」に分類されているが、上記したとおりその用途は本件商品と同様、まつ毛を強調する化粧のために用いられるものであり、需要者層も本件商品と共通する。よって、本件商品についてもその用途の面から、指定商品「化粧品」であるマスカラと同様に取り扱うことに何ら不合理な点はなく、よって指定商品「化粧品」としての性質も有していると解すべきである。
イ 流通市場における認識
上記アのとおり、本件商品は化粧(メイクアップ)に用いられるものであり、一般的に百貨店や雑貨店、ドラッグストア等の化粧品を取り扱う店舗において販売され、またこれら店舗において他の化粧品、特に顔に施す化粧(メイクアップ)に用いられる商品(以下「メイク用品」という。)の一つとして、他のメイク用品とともに展示販売されている。
乙第6号証は、被請求人が製造及び販売する本件商品の店頭での販売状況を示す写真のごく一部である。これら写真はいずれも被請求人の従業員が、本件商品を取り扱う店舗においてその販売状況を確認し記録するために撮影したものであり、本件商品がいずれも、雑貨店、ドラッグストア等の化粧品(メイク用品)コーナーにて展示販売されていることがわかる。
加えて、乙第7号証にて示すとおり、本件商品は数多くの女性向けファッション誌(このなかにはメイクや美容に特化した雑誌も当然含まれている。)において度々取り上げられ、より強調した目元のメイクを可能とする方法として、アイシャドウやアイライナー等の商品とともに本件商品が紹介されている。なお、これらアイシャドウやアイライナー等も上記アのマスカラと同様、特許庁の類似商品・役務審査基準上では「化粧品」に分類されている。
以上のとおり、化粧品を取り扱う流通市場においても、本件商品が「化粧品」として認識されていることは明らかであり、よって、この点からも本件商品は指定商品「化粧品」にも該当すると解すべきである。
ウ 薬事法上の扱い
薬事法第2条第3項では、「化粧品」とは「人の身体を清潔にし、美化し、魅力を増し、容貌を変え、又は皮膚若しくは毛髪を健やかに保つために、身体に塗擦、散布その他これらに類似する方法で使用されることが目的とされている物で、人体に対する作用が緩和なものをいう。」と定義されているところ、本件商品(つけまつ毛)は上記のとおりまつ毛を強調し、魅力的な目元を演出するために用いるものであり(人の身体を美化し、魅力を増し、容貌を変え)、グルーを用いて瞼に貼り付けて使用し(身体に塗擦、散布その他これらに類似する方法で使用されることが目的とされている物)、当該グルーは目元に刺激やかぶれが生じない、人体に安全な成分が用いられており、つけまつ毛を装着することで身体に悪影響が及ぶことはない(人体に対する作用が緩和なもの)ことから、本件商品は薬事法上の「化粧品」に該当することは明らかである。
よって、この点からも本件商品は指定商品「化粧品」にも該当すると解すべきである。
エ その他(「化粧品」の一般的な意味)
「化粧品」という語の一般的な意味に沿った場合、つけまつ毛は「化粧」すなわち「紅・白粉などをつけて顔をよそおい飾ること」(乙8)を目的として用いる「化粧品」そのものといえる。
よって、本件商品はこの意味においても指定商品「化粧品」にも該当するものと解すべきである。
オ まとめ
上記アないしエを踏まえた場合、本件商品はその取引者及び需要者の判断を基準として実質的に判断した場合に、指定商品「つけまつげ」であると同時に「化粧品」でもある、真に二つの分類に属する商品というべきであり、よって、本件使用商標は当該二つの分類に属する商品について使用されたものと扱われるべきである。
4 小括
上記のとおり、本件商品は指定商品「化粧品」に属する商品であるから、被請求人が本件使用商標の付された本件商品を販売したことをもって、本件商標と社会通念上同一の商標がその指定商品第3類「化粧品」について使用されたと認められるべきである。
5 結論
以上より、本件商標は、商標法第50条第1項の規定に基づいてその登録を取り消されるべきものではなく、請求人による本件審判請求は理由がない。

第4 当審の判断
1 本件商標の使用について
(1)被請求人の提出した乙各号証及び被請求人の主張によれば、以下の事実を認めることができる。
ア 乙第3号証は、被請求人の発行する「つけまつ毛」の商品カタログの写しであり、全14シリーズ(商品記号 EA-01?EA-14)の商品(つけまつ毛)が掲載されており、当該各商品の包装に本件使用商標が表示されている。
イ 乙第5号証-1は、被請求人発行の「株式会社 エーアンドティー」宛ての平成25年8月26日付け納品書の写しであり、「品名」欄の「1」に「EA-11」、「4511696615110」及び「EA-011/イノセントチャーム」の記載があり、同「2」に「EA-14」、「4511696615141」及び「EA-14/リッチフェミニン」等の記載がある。
ウ 乙第5号証-2は、被請求人発行の「株式会社マスダ増」宛ての平成26年4月22日付け納品書の写しであり、「品名」欄の「4」に「EA-02」、「4511696615028」及び「EA-02/ナチュラルキュート」の記載があり、「5」に「EA-05」、「4511696615059」及び「EA-05/ピュアキャット」等の記載がある。
エ 上記アの「商品カタログ」(乙3)と上記イ及びウの「納品書」(乙5-1、乙5-2)における、それぞれの商品記号(「EA-11」、「EA-14」、「EA-02」及び「EA-05」等)、商品識別番号(JANコード:「4511696615110」、「4511696615141」、「4511696615028」、「4511696615059」等)等の記載は、いずれも符合している。
(2)上記事実によれば、以下のとおり判断できる。
本件使用商標は、別掲のとおり「Secret」の欧文字と「Charm」の欧文字とを上下二段に筆記体で表してなるものであるところ、これは、上記第1のとおりの構成からなる本件商標の欧文字部分と構成文字を同じくし、生じる称呼及び観念も本件商標から生じる称呼及び観念と同一のものであるから、本件使用商標は、本件商標と社会通念上同一と認められる商標といえる。
そして、本件商標の商標権者は、要証期間内(平成25年7月5日ないし同28年7月4日)に、「株式会社エーアンドティー」及び「株式会社マスダ増」等に対して、乙第3号証の商品カタログに掲載された「EA-11」、「EA-02」、「EA-14」及び「EA-05」等の商品記号で特定される本件商品「つけまつ毛」について、当該商品の包装に、本件使用商標を付したものを納品したと推認できる。これは、商標法第2条第3項第2号に該当する行為である。
2 本件商品「つけまつ毛」が、本件取消請求に係る商品「化粧品」に属するものであるか否かについて(以下に示す商標法、同法施行令、同法施行規則及び同法施行規則別表は、いずれも本件商標の登録出願時に適用されたものである。)
(1)商標法第6条第1項で「商標登録出願は、商標の使用をする一又は二以上の商品又は役務を指定して、商標ごとにしなければならない。」と規定され、同条第2項で「前項の指定は、政令で定める商品及び役務の区分に従ってしなければならない。」と規定されており、商標法施行令第1条で「商標法第6条第2項の政令で定める商品及び役務の区分は、別表のとおりとし、各区分に属する商品又は役務は、(略)ニース協定第1条に規定する国際分類に即して、経済産業省令で定める。」と規定されている。
さらに、商標法施行規則第6条で「商標法施行令(略)第1条の規定による商品及び役務の区分(略)に属する商品又は役務は、別表のとおりとする。」と規定されている。
(2)本件商標の登録出願時に適用された商標法施行規則別表の第3類に属する商品に関する掲載表示は、次のとおりである(下線は、合議体が付した)。

一 せっけん類
(略)
三 化粧品
(一) おしろい
(略)
(二) 化粧水
(略)
(三) クリーム
(略)
(四) 紅
(略)
(五) 頭髪用化粧品
(略)
(六) 香水類
(略)
(七) その他の化粧品
アイシャドウ あぶらとり紙 脱毛剤 タルカムパウダー ネイルエナメル ネイルエナメル除去液 バスオイル バスソルト パック用化粧料 ベビーオイル ベビーパウダー マスカラ まゆ墨 毛髪脱色剤
四 かつら装着用接着剤 つけづめ つけまつ毛 つけまつ毛用接着剤
五 歯磨き
(以下、略)

(3)上記(2)によれば、「つけまつ毛」は、「三 化粧品」に含まれる商品である「(一)おしろい」ないし「(七)その他の化粧品」に記載がなく、「四 かつら装着用接着剤 つけづめ つけまつ毛 つけまつ毛用接着剤」に記載がある。
そうすると、「つけまつ毛」は、第3類の「化粧品」に含まれる商品ではないというのが相当である。
3 小括
上記1及び2のとおり、被請求人は、要証期間内に本件商標と社会通念上同一と認められる商標を「つけまつ毛」に使用したことが認められるものの、「つけまつ毛」は、本件審判の請求に係る指定商品「化粧品」に含まれる商品とは認められない。
その他、本件審判の請求に係る指定商品「化粧品」について、本件商標の使用をしていることを認め得る証左は見いだせない。
4 まとめ
以上のとおりであるから、被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかがその請求に係る指定商品「化粧品」についての本件商標(社会通念上同一と認められる商標を含む。)の使用をしていることを証明したということはできない。
また、被請求人は、請求に係る指定商品について本件商標の使用をしていないことについて正当な理由があることも明らかにしていない。
したがって、本件商標の登録は、その指定商品中、第3類「化粧品」について、商標法第50条の規定により、取り消すべきである。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲(本件使用商標)


審理終結日 2017-02-07 
結審通知日 2017-02-09 
審決日 2017-03-03 
出願番号 商願2011-44448(T2011-44448) 
審決分類 T 1 32・ 1- Z (X03)
最終処分 成立  
前審関与審査官 鈴木 斎白鳥 幹周 
特許庁審判長 大森 健司
特許庁審判官 松浦 裕紀子
原田 信彦
登録日 2011-12-16 
登録番号 商標登録第5458668号(T5458668) 
商標の称呼 シークレットチャーム 
代理人 佐藤 泰和 
代理人 高田 泰彦 
代理人 本宮 照久 
代理人 永井 浩之 
代理人 達野 大輔 
代理人 中村 行孝 
代理人 砂山 麗 
代理人 柏 延之 
代理人 栃木 順子 
代理人 吉武 賢次 
代理人 竹中 陽輔 
代理人 中山 真理子 
代理人 宮嶋 学 
代理人 朝倉 悟 

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