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審決分類 審判 全部申立て  登録を取消(申立全部取消) X31
審判 全部申立て  登録を取消(申立全部取消) X31
審判 全部申立て  登録を取消(申立全部取消) X31
審判 全部申立て  登録を取消(申立全部取消) X31
管理番号 1327178 
異議申立番号 異議2014-900023 
総通号数 209 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2017-05-26 
種別 異議の決定 
異議申立日 2014-01-21 
確定日 2017-04-27 
異議申立件数
事件の表示 登録第5634509号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第5634509号商標の商標登録を取り消す。
理由 第1 本件商標
本件登録第5634509号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおり、上段部分には、左側に「桜」の漢字、右側に図形(角が丸まった三角形状の輪郭を抱えた渦巻状の線から4本の短い線が放射状に配されてなる図形)を、下段部分には、左側から「桃苺」の漢字を書してなる構成からなるものであり、平成21年11月24日に登録出願、第31類「いちご」を指定商品として、同25年10月9日に登録査定、同年12月6日に設定登録されたものである。

第2 登録異議の申立ての理由の要旨
登録異議申立人(以下「申立人」という。)は、本件商標について、商標法第4条第1項第7号、同項第10号、同項第11号及び同項第15号に該当するものであるから、同法第43条の2第1号により、その登録は取り消されるべきであると申し立て、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第71号証(枝番号を含む。)を提出した。
なお、申立人は、平成26年8月11日差出で上申書を提出し、本件商標の登録出願について平成22年5月29日付けをもって提出された刊行物等提出書を甲第71号証として追加提出しているところ、本件の決定においては、該刊行物等提出書の刊行物1ないし刊行物140を甲第71号証の1ないし140として扱うこととする。
1 商標法第4条第1項第10号について
(1)申立人は、徳島市農業協同組合(以下「JA徳島市」という。)の佐那河内支所(徳島県名東郡佐那河内村)の組合員であり、引用商標の商標権者である。申立人は、「ももいちご部会」の部会員であり、JA徳島市の他の組合員(以下、申立人を含めた組合員を「申立人ら」ということがある。)とともに、「ももいちご」と名付けた特定のイチゴ(以下「申立人ら商品1」という。)を生産し、これに平仮名の「ももいちご」からなる商標(以下「引用商標1」という。)を付して、平成5年より販売を開始している。さらに、平成20年頃からは、申立人ら商品1の姉妹品として、平仮名の「さくらももいちご」からなる商標(以下「引用商標2」という。)で新たなイチゴ(以下「申立人ら商品2」という。)の販売も開始し、現在では、申立人ら商品1を上回る出荷高を誇っている(なお、以下、引用商標1及び引用商標2を総称して「引用商標」と、申立人ら商品1及び申立人ら商品2を総称して「申立人ら商品」という場合がある。)。
(2)本件商標は、申立人らのイチゴを示す商標として周知な引用商標1を含んでおり、これと類似することから、商標法第4条第1項第10号に該当する。引用商標1と本件商標との類否について検討すると、本件商標は、「桜」の漢字と「桃苺」の漢字とは、改行とロゴとによって二重に分断されており、「桜」の漢字からは「サクラ」の称呼、「桃苺」の漢字からは「モモイチゴ」の称呼がそれぞれ生じ、周知な引用商標1から生じる「モモイチゴ」の称呼が一致するから、周知商標である引用商標1と類似することは明らかである。
仮に、本件商標から「サクラモモイチゴ」の称呼が生じるとしても、引用商標1のみならず、引用商標2も、申立人らの生産、販売するイチゴを示すものとして、本件商標の登録出願時において、既に全国的に周知又は著名となっていたから、引用商標2と称呼を共通にする本件商標は、商標法第4条第1項第10号に違反して登録されたものであり、登録を取り消されるべきである。
2 商標法第4条第1項第11号について
本件商標は、申立人の所有する登録第4323578号商標と類似する。登録第4323578号商標からは「モモイチゴ」の称呼が生じるので、上記1(2)の引用商標1の場合と同様の理由によって、本件商標と称呼が一致し、相紛れるおそれがあるから、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。
なお、登録第4323578号商標は、「ももいちご」の文字と「百壱五」の文字を2段に書してなり、平成10年4月10日に登録出願、第31類「いちご」を指定商品として、同11年10月8日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。
3 商標法第4条第1項第7号について
商標権者は、申立人らの「ももいちご」単独での商標が未登録であることを奇貨として、桃苺の標準文字とロゴによる出願とで冒認を試みている。そして申立人らが、該「ももいちご」に続く姉妹品として「さくらももいちご」を新たに開発し、平成20年冬より販売開始した後、平成21年11月24日に商標権者により本件商標の登録出願が行われている。このようなことが偶然で起こるはずがなく、明らかに商標権者は申立人らの築き上げた信用に便乗しようとし、さらに商標を冒認しようとしている。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当する。
4 商標法第4条第1項第15号について
申立人らの引用商標1は、申立人ら商品1のブランドとして、全国的に著名となっているところ、本件商標は、その引用商標1の「ももいちご」を含むものである。また、申立人らの引用商標2も、申立人ら商品1以上の品質によって得られた高い評価と、申立人ら商品1の姉妹品としての知名度とも相侯って、既に著名となっている。
そして、引用商標1を含む本件商標、または、著名商標の引用商標2と同一の称呼である本件商標を付した商品に触れた需要者は、申立人ら商品の出所と何らかの関係を有するものと考えるところ、商標権者は、申立人ら商品の生産、販売等に関して何ら関与する者でなく、また、申立人らとも無関係である。
したがって、本件商標は、他人の業務に係る商品と出所の混同を生じるおそれがあり、商標法第4条第1項第15号に該当する。

第3 取消理由通知の要旨
当審においては、平成27年9月30日付けをもって、本件商標の登録について、取消理由の通知を行ったところ、その取消理由の要旨は、以下のとおりである。
1 引用商標
申立人は、JA徳島市の佐那河内支所(徳島県名東郡佐那河内村)の組合員であるところ、申立人らは、大阪中央卸売市場大阪中央青果(以下「大阪中央青果」という。)の協力の下、新たないちごの開発に成功、平成4年にその生産を開始し、平成5年頃より当該いちごの販売を開始している。
そして、この取消理由通知において引用するのは、申立人らが当該いちご(申立人ら商品1)に使用している引用商標1、さらに、平成20年頃より申立人らが生産、販売を開始している当該いちごの姉妹品(申立人ら商品2)に使用している引用商標2である。
2 引用商標の周知性
引用商標は、上記1のとおり、引用商標1が平成5年頃より、また、引用商標2が平成20年頃より使用されているところ、申立人の主張及び甲各号証並びに職権による調査によれば、以下の(1)及び(2)とおりの事実を認めることができる。
(1)引用商標1及び申立人ら商品1について
ア テレビCM・ラジオCM等
(ア)JA徳島市は、大阪中央青果と協力して、申立人ら商品1について、テレビのスポットCMで、平成11年に36本、平成12年に50本、平成13年に20本、平成14年に25本、平成15本に35本、平成16年に50本、平成17年に25本放送するなどし、当該7年間の総額は1120万円に至っている(甲71の135及び136)。
(イ)JA徳島市は、大阪中央青果と協力して、申立人ら商品1について、平成17年から平成21年にかけて、主に関西地方における複数局でのラジオCM、街頭モニタによるCM、映画館におけるCMを行った(甲71の137)。
具体的には、朝日放送ラジオにおいて、平成17年1月10日から同年2月25日にかけて20秒スポットCMを37本、同年12月21日から同18年2月28日にかけて20秒スポットCMを15本、同21年1月10日から同年1月15日にかけて20秒スポットCMを32本放送し、また、ラジオ大阪において、平成17年12月21日から同18年2月28日にかけて20秒スポットCMを50本放送した。
さらに、阪急梅田駅ターミナルビジョンにおいて、平成19年12月24日から同20年1月23日にかけて15秒CMを1520回放送したほか、映画劇場「ナビオTOHO」、「梅田ピカデリー」、「アポロシネマ」及び「TOHOシネマズ高槻・八尾」の各劇場において、同18年11月25日から同19年1月12日にかけて放送した。
(ウ)JA徳島市等は、申立人ら商品1について、電車の中吊り広告を行った。
具体的には、大阪市営地下鉄全線にて、平成17年12月20日から同年同月21日にかけて車内吊り広告1450枚、北大阪急行線「千里中央駅」から大阪市営地下鉄御堂筋線「なかもず駅」の間にて、平成17年12月22日から同年同月25日にかけて車内吊り広告880枚(甲71の137)、さらに、平成16年には、JR西日本の網干駅から長浜駅までの間、京橋駅から関西空港駅までの間、和歌山駅から奈良駅までの間、JRなんば駅から奈良駅までの間などにおいて、快速電車の車内ポスター5500枚(甲71の135)で広告した。
イ テレビ番組等における紹介
平成22年2月28日にテレビ朝日系列の全国ネットで放送された「にっぽん菜発見 そうだ、自然に帰ろう」(甲71の6ないし7)、平成21年1月19日にテレビ朝日系列の全国ネットで放送された「スーパーJチャンネル」(甲71の11ないし14)、平成20年12月12日にNHK系列の全国ネットで放送された「おはよう日本」(甲71の15)、平成15年1月27日にテレビ東京系列の全国ネットで放送された「ワールドビジネスサテライト」(甲71の16)、平成17年3月25日に関西のABCテレビで放送された「おはよう朝日です」(甲71の18)、平成19年2月28日に日本テレビ系列の全国ネットで放送された「午後は○○おもいッきりテレビ」(甲71の19ないし21)、平成22年1月23日に関西のABCテレビで放送された「おはよう朝日 土曜日です」(甲71の23ないし25)、平成20年2月14日にフジテレビ系列の全国ネットで放送された「VVV6 東京Vシュラン2」(甲71の26ないし27)、平成15年2月6日に広島ホームテレビで放送された「げっきんLIVE」(甲71の28)、平成15年2月17日に中京テレビで放送された「プラスワン」(甲71の29)、平成22年1月13日にフジテレビ系列の全国ネットで放送された「MEZAMASHI NEWS(めざにゅ?)」(甲71の33ないし36)、平成17年10月11日から平成20年9月9日までフジテレビ系列で放送されていた「タモリのジャポニカロゴス」(甲71の110)において、申立人らが栽培したいちごとして、引用商標1とともに、申立人ら商品1が紹介された。
ウ 雑誌
JAグループの家の光協会刊「家の光 4月号(平成17年4月1日発行)」(甲71の50)、NTT西日本が発行する季刊誌「Wit Solution journal vol.21(2005(平成17年)6月27日発行)」(甲71の138)において、申立人らが栽培したいちごとして、引用商標1とともに、申立人ら商品1が紹介された。
エ 新聞
(ア)平成21年1月17日付け日本経済新聞「日経PLUS1」における「徳島・イチゴ 甘くて大粒 みずみずしく」の見出しの記事(甲71の54)に、平成16年1月6日付け読売新聞における「四国食紀行 甘?い果汁たっぷり ももいちご 徳島県佐那河内村」の見出しの記事(甲71の55ないし56)に、平成16年12月3日付け徳島新聞における「『甘い宝石』色づく ももいちご収穫始まる 佐那河内」の見出しの記事(甲71の62)に、平成22年5月20日付け徳島新聞における「品質と味守り続ける ももいちご」の見出しの記事(甲71の134)に、申立人らが栽培したいちごとして、引用商標1とともに、申立人ら商品1が紹介された。
(イ)平成20年12月3日付け徳島新聞Webにおける「『ももいちご』ふっくら 佐那河内村で出荷始まる」の見出しの記事(甲71の94)に、平成21年1月1日付け徳島新聞Webにおける「『ももいちご食べ初めを』 佐那河内、産直市で特別販売」の見出しの記事(甲71の96)に、平成22年1月1日付け徳島新聞Webにおける「初春ももいちご味わって JA徳島市佐那河内選果場で販売」の見出しの記事(甲71の98)に、申立人らが栽培したいちごとして、引用商標1とともに、申立人ら商品1が紹介された。
オ インターネット
小僧comのウェブサイトにおける「第23回 幻のいちご『ももいちご』」の見出しの情報(甲71の72)に、株式会社ともだのウェブサイトにおける「Super Premium Fruit 徳島県佐那河内のももいちご」の見出しの情報(甲71の73)に、大阪本場青果協同組合のウェブサイトにおける「目指せ ベジフルさん」の見出しの情報(甲71の74)に、Digital New Dealのウェブサイトにおける「志本主義のススメ」の見出しの情報(甲71の76)に、新鮮なっ!とくしま通信のウェブサイトにおける「ももいちご」の見出しの情報(甲71の77)に、徳島県のウェブサイトにおける「新鮮とくしまブランド戦略の成果について(平成16年度から平成18年度)」の「オンリーワン産地の育成」の見出しの情報(甲71の78)に、徳島の特産品のウェブサイトにおける「ももいちご」の見出しの情報(甲71の79)に、とくしま応援プロジェクトのウェブサイトにおける「第1回『ももいちご』」の見出しの情報(甲71の80)に、ANAお取寄せグルメ倶楽部のウェブサイトにおける「甘熟いちご市場」の見出しの情報(甲71の81)に、Woman excite オークションのウェブサイトにおける「伝説のももいちご ご予約承ります」の見出しの情報(甲71の82)に、biddersのウェブサイトにおける「顔はブサイク!味はべっぴん!お手頃『ももいちご』」の見出しの情報(甲71の83)に、Yahoo!ショッピングの「南松商店」のウェブサイトにおける「大阪中央市場にしか流通しない希少ないちご ももいちご 近年人気急上昇!」の見出しの情報(甲71の121)に、株式会社日の出楼のウェブサイトにおける「日の出楼のももいちご大福」の見出しの情報(甲71の122、4及び5)に、申立人らが栽培したいちごとして、引用商標1とともに、申立人ら商品1が紹介された。
(2)引用商標2及び申立人ら商品2について
ア テレビ番組等における紹介
平成22年3月3日にフジテレビ系列の全国ネットで放送された「めざましテレビ」の「NIPPON ○んだFOOD」(甲23ないし25、甲71の30ないし32)、平成22年4月3日に日本テレビ系列の全国ネットで放送された「満天☆青空レストラン」(甲28ないし30、甲71の43ないし45)において、申立人らが栽培した申立人ら商品1の姉妹品のいちご等として、引用商標2とともに、申立人ら商品2が紹介された。
イ 雑誌
株式会社光文社刊「女性自身 2月17日号(平成21年2月17日発行)」(甲31、甲71の48)、全日本空輸株式会社刊「ANA SKYSHOP Vol.131/2010(平成22年1月1日発行)」(甲33、甲71の51)において、申立人らが栽培した申立人ら商品1の姉妹品のいちご等として、引用商標2とともに、申立人ら商品2が紹介された。
ウ 新聞
(ア)平成20年12月27日付け徳島新聞(朝刊)における「『ももいちご』に姉妹品」の見出しの記事(甲71の57)に、平成21年1月9日付け徳島新聞(夕刊)における「ももいちご 妹分“さくら”デビュー」の見出しの記事(甲64、甲71の58)に、平成21年1月15日付け徳島新聞(朝刊)における「四国の力」、「ももいちご JA徳島市佐那河内支所ももいちご部会(佐那河内村)」及び「村を代表する産物に」の見出しの記事(甲65、甲71の59)に、平成21年12月2日付け徳島新聞(朝刊)における「ももいちご ふっくら 佐那河内で出荷始まる」の見出しの記事(甲66、甲71の60)に、平成21年12月17日付け徳島新聞(朝刊)における「高級ブランド『ももいちご』 少量販売で手軽に」及び「ミニ化粧箱入り好評JA徳島市佐那河内支所」の見出しの記事(甲67、甲71の61)に、平成21年1月4日付け朝日新聞(朝刊)における「(新・四国のちから:3)農業 果物、こだわりで勝負 /徳島県」の見出しの記事(別掲2(1))に、平成23年1月23日付け大阪読売新聞(朝刊)における「[行ってみんで]『ももいちご』佐那河内村 極上の甘味 秘訣は愛情=徳島」の見出しの記事(別掲2(2))に、平成23年1月24日付け日経MJ(流通新聞)における「ももいちご?栽培に工夫、1粒1000円も(地域ブランドAtoZ)」の見出しの記事(別掲2(3))に、平成23年2月12日付け大阪読売新聞(夕刊)における「[ONタイム・仕事師たち]ももいちご 日当たりの悪さ逆手」の見出しの記事(別掲2(4))に、平成23年2月15日付け朝日新聞(夕刊)における「(デパ地下ツアー)阪急うめだ本店 春待つ間に・・・真冬の果実 【大阪】」の見出しの記事(別掲2(5))に、平成23年12月13日付け朝日新聞(朝刊)における「(週刊まちぶら:231)大川原高原の風力発電 風切る15基、一躍脚光/徳島県」の見出しの記事(別掲2(6))に、平成24年3月13日付け大阪読売新聞(朝刊)における「とくしま特選ブランド 需要拡大 全国へPR=徳島」の見出しの記事(別掲2(7))に、平成25年1月18日付け日本経済新聞(地方経済面)における「徳島・佐那河内の『ももいちご』?『小粒化』克服へ甘み磨く(地宝創造)」の見出しの記事(別掲2(8))に、申立人らが栽培した申立人ら商品1の姉妹品のいちご等として、引用商標2とともに、申立人ら商品2が紹介された。
(イ)農業共済新聞の2010年2月3週号における「『さくらももいちご』・新たなブランドへ【徳島支局・2010年2月3週号】」の見出しの記事(甲37、甲71の85)に、2009年2月10日付け京橋経済新聞における「最高級イチゴ『さくらももいちご』のスイーツ-ニューオータニで限定提供」の見出しの記事(甲40、甲71の88)に、平成20年12月28日付け徳島新聞Webにおける「『ももいちご』年末年始も販売 佐那河内村、帰省客にPR」の見出しの記事(甲68、甲71の95)に、平成21年12月2日付け徳島新聞Webにおける「『ももいちご』ふっくら 佐那河内で出荷始まる」の見出しの記事(甲69、甲71の97)に、申立人らが栽培した申立人ら商品1の姉妹品のいちご等として、引用商標2とともに、申立人ら商品2が紹介された。
エ インターネット
うめだ阪急Blogのウェブサイトにおける「『おとりよせ』のええ話」として2009年1月14日付けの「いちご・イチゴ・苺!」の見出しの情報(甲50、甲71の104)に、同じく2010年1月25日付けで「【送料込み】徳島 さくらももいちご」の見出しの情報(甲71の106)に、ぐるなび食市場のウェブサイトにおける「さくらももいちご あの『ももいちご』のさらに上を行く、超2プレミアム苺!!が新登場!!」の見出しの情報(甲57、甲71の111)に、楽天市場のウェブサイトにおける「“徳島県 佐那河内村産”初登場!“さくらももいちご” 甘い香り!ジューシー!!」の見出しの情報(甲62、甲71の116)に、申立人らが栽培した申立人ら商品1の姉妹品のいちご等として、引用商標2とともに、申立人ら商品2が紹介された。
(3)小括
上記(1)及び(2)の事実からすれば、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時には、既に、JA徳島市の佐那河内支所の特定の組合員が栽培したいちごを表示するものとして、我が国の取引者、需要者に広く知られるに至っていたものということができる。
3 本件商標の商標法第4条第1項第10号該当性について
(1)本件商標
本件商標は、上記第1のとおり、上段部分には、左側に「桜」の漢字、右側に図形を、下段部分には、左側から「桃苺」の漢字を書してなる構成からなるものであり、その構成中の図形部分は、角が丸まった三角形状の輪郭を抱えた渦巻状の線から4本の短い線が放射状に配されてなるものであるが、これが何を表した図形であるのかは直ちに理解し得ないものである。
そうすると、本件商標に接する取引者、需要者は、何を表した図形であるのかが直ちに理解し得ない図形部分を捨象して、「桜」及び「桃苺」の漢字部分に注目して、漢字部分を本件商標の要部の一つとして、商品の出所を識別することも少なくないといえるところ、複数行にわたる横書きの文字が一般に上段の左側から右側の順に読んでいくのが普通であることを踏まえるならば、「桜」及び「桃苺」の漢字部分に相応して、「サクラモモイチゴ」の称呼を生じ、さらに、「桜」が「バラ科サクラ属の落葉高木または低木の一部の総称」として、また、「桃」と「苺」が果実の名称として、それぞれ親しまれたものであり、該漢字部分全体をもって「桜と桃と苺」程度の意味合いを想起させるものといえるから、「桜と桃と苺」の観念を生じるものといえる。
また、本件商標は、複数行にわたる横書きの文字が一般に上段の左側から右側の順に読んでいくのが普通であることを踏まえるならば、「桜」と「桃苺」の漢字の間に図形が介在し、「桜」と「桃苺」の漢字が分離し、「桃苺」の漢字部分だけが下段部に表示されているともいえる態様のものであるところ、引用商標1の周知性をも踏まえ、本件商標に接する取引者、需要者が該「桃苺」の漢字部分を本件商標の要部の一つとして把握、理解した場合には、下段部の「桃苺」の漢字部分に相応して、「モモイチゴ」の称呼をも生じ、さらに、「桃」と「苺」が果実の名称として親しまれたものであり、該漢字部分をもって「桃と苺」程度の意味合いを想起させるものといえるから、「桃と苺」の観念を生じるものといえる。
(2)引用商標
引用商標は、上記第2の1(1)のとおり、本件商標の登録出願時及び登録査定時には、既に、JA徳島市の佐那河内支所の特定の組合員が栽培したいちごを表示するものとして、我が国の取引者、需要者に広く知られるに至っていたものである。
そして、そのうちの引用商標1は、上記第2の1(1)のとおり、「ももいちご」の平仮名からなるものであり、その構成文字に相応して「モモイチゴ」の称呼を生じ、さらに、「もも」と「いちご」が果実の「桃」と「苺」を平仮名で表したものとして親しまれ、「桃と苺」程度の意味合いを想起させるものといえるから、「桃と苺」の観念を生じるものといえる。
また、引用商標2は、上記第2の1(1)のとおり、「さくらももいちご」の平仮名からなるものであり、その構成文字に相応して「サクラモモイチゴ」の称呼を生じ、さらに、「さくら」が「バラ科サクラ属の落葉高木または低木の一部の総称」である「桜」を平仮名で表したものとして、また、「もも」と「いちご」が果実の「桃」と「苺」を平仮名で表したものとして、それぞれ親しまれ、「桜と桃と苺」程度の意味合いを想起させるものといえるから、「桜と桃と苺」の観念を生じるものといえる。
(3)本件商標と引用商標の類否等
ア 本件商標と引用商標1について
本件商標は、上記(1)のとおり、「桃苺」の漢字部分が要部の一つといえるところ、本件商標の要部の一つといえる「桃苺」の漢字部分と引用商標1の「ももいちご」の平仮名とを比較するに、外観においては、両者は漢字と平仮名の差異を有するものであるが、その差異は「桃苺」を漢字で表したか平仮名で表したかの差異にすぎないものであるから、その外観上の差異が両商標の全体の類否に与える影響は大きくないといえる。
そして、本件商標の要部の一つといえる「桃苺」の漢字部分と引用商標1は、称呼及び観念においては、「モモイチゴ」の称呼及び「桃と苺」の観念を共通にするものであるから、称呼及び観念においては相紛れるおそれがあるものといえる。
そうすると、本件商標と引用商標1とは、外観、称呼及び観念を総合的に考察すると、相紛れるおそれがある類似の商標ということができる。
イ 本件商標と引用商標2について
本件商標は、上記(1)のとおり、「桜」及び「桃苺」の漢字部分が要部の一つといえるところ、本件商標の要部の一つといえる「桜」及び「桃苺」の漢字部分と引用商標2の「さくらももいちご」の平仮名とを比較するに、外観においては、両者は漢字と平仮名の差異を有するものであるが、その差異は「桜」及び「桃苺」を漢字で表したか平仮名で表したかの差異にすぎないものであるから、その外観上の差異が両商標の全体の類否に与える影響は大きくないといえる。
そして、本件商標の要部の一つといえる「桜」及び「桃苺」の漢字部分と引用商標2は、称呼及び観念においては、「サクラモモイチゴ」の称呼及び「桜と桃と苺」の観念を共通にするものであるから、称呼及び観念においては相紛れるおそれがあるものといえる。
そうすると、本件商標と引用商標2とは、外観、称呼及び観念を総合的に考察すると、相紛れるおそれがある類似の商標ということができる。
ウ 本件商標の指定商品と申立人ら商品について
本件商標の指定商品は、上記第1のとおり、第31類「いちご」であり、また、申立人ら商品も、上記第2の1(1)のとおり、「いちご」であるから、本件商標の指定商品と申立人ら商品は、ともに「いちご」であって、同一の商品である。
(4)小活
上記2のとおり、引用商標1は、JA徳島市の佐那河内支所の特定の組合員が栽培した申立人ら商品1を表示するものとして、さらに、引用商標2は、引用商標1が使用された申立人ら商品1の姉妹品である申立人ら商品2を表示するものとして、それぞれ我が国の取引者、需要者に広く知られているところ、このような引用商標の周知性をも勘案するならば、本件商標と引用商標とは、相紛れるおそれがある類似の商標ということができる。
そして、本件商標の指定商品は、引用商標が使用される申立人ら商品と、同一の商品である。
したがって、本件商標は、我が国の取引者、需要者に広く知られている引用商標と類似の商標であり、しかも、その指定商品は、引用商標が使用されている商品と同一のものであるから、商標法第4条第1項第10号に該当する。
4 まとめ
以上のとおりであるから、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に違反して登録されたものといえる。

第4 商標権者の意見
商標権者は、上記第3の取消理由に対して、平成27年10月29日差出の意見書をもって、要旨以下のとおり意見を述べ、その証拠方法として、乙第1号証ないし乙第15号証(決定注:商標権者は、甲第1号証ないし甲第15号証として提出しているが、申立人提出の証拠方法と区別するために、本決定においては、乙第1号証ないし乙第15号証とする。)を提出した。
1 引用商標について
(1)引用商標1について
申立人と商願2010-33790号商標の出願人が同一人物であること、引用商標1も商願2010-33790号商標もその対象商品(指定商品)が苺であること、取消理由通知書にある内容から引用商標1が標準文字であり、商願2010-33790号商標も標準文字であることが認められること、かつ、その標準文字は共に平仮名「ももいちご」からなり、称呼も同じ「モモイチゴ」であることから、引用商標1が、商願2010-33790号商標であることは明らかである。
本件商標の登録出願日は、平成21年11月24日、引用商標1(商願2010-33790号商標)の登録出願日は、平成22年4月27日である。
してみれば、取消理由は、商標法の基本原則である先願主義に則っておらず、商標法第8条第1項に違反しているので、許されない。そもそも、引用商標は、登録商標ですらなく、商標権が発生しているものでもない。
(2)引用商標2について
申立人と登録第5643415号商標の商標権者が同一人物であること、引用商標2も登録第5643415号商標もその対象商品(指定商品)が苺であること、取消理由通知書にある内容から引用商標2が標準文字であり、登録第5643415号商標も標準文字であることから認められ、かつ、その標準文字は共に平仮名「さくらももいちご」からなり、称呼も同じ「サクラモモイチゴ」であることから、引用商標2が、登録第5643415号商標であることは明らかである。
本件商標の登録出願日は、平成21年11月24日、引用商標2(登録第5643415号商標)の登録出願日は、平成22年5月21日である。
してみれば、取消理由は、商標法の基本原則である先願主義に則っておらず、商標法第8条第1項に違反しているので、許されない。なお、引用商標2(登録第5643415号商標)の登録自体も違法である。
(3)小括
本件商標は、上記(1)及び(2)のとおり、商標法第8条第1項の規定により登録が維持されるべきである。
本件登録異議申立ては、同規定に違反して、自分の登録出願商標(引用商標1)を登録するため、さらに、誤って登録された商標(引用商標2)の登録査定の維持の為にしたことであることは明らかであり、そもそも違法である。
本件商標は、引用商標との関係において、商標法第8条第1項を適正に判断し、登録査定されたものである。引用商標には、原則を無視し、法をねじ曲げてまで、登録すべき特段の理由はなく、速やかに、本件登録異議申立てについては、却下若しくは棄却すべきである。
2 本件商標について
本件商標は、「桜」、「桃」及び「苺」の3文字の漢字と図形によりなるところ、その図形は、渦巻き模様、4本の集中線、角の丸まった細い三角状の図形の組み合わせによってなり、その大きさは、渦巻き模様がもっとも大きく、4本の集中線、角の丸まった細い三角の順となっている。
上段に「桜」の文字と図形が配置され、下段に「桃」及び「苺」の文字が配置されているところ、指定商品が苺であるから、「桜桃苺」の文字部分により、本件商標に接した取引者、需要者には、「桜桃(さくらんぼ)」の観念が生じる。苺に、「○○苺」と商標を付しても、「苺」の部分は出所識別標識として機能しないので、商標の類似性等を判断する場合には「苺」の部分は無視できる。また、図形の部分からは、渦巻き模様が最も大きく、一般の需要者にも馴染みのある模様であることを考慮すると、渦巻きの観念が生じる。
そして、本件商標の文字部分からは、「オウトウイチゴ」、「オートーイチゴ」の称呼が一般的に生じる。また、一般的ではなく、誤読であるが、「桜桃」の漢字は「サクラモモ」とも一応読めることから、「サクラモモイチゴ」の称呼も生じる。図形部分からは、「ウズマキ」、「ウズマキモヨウ」、「ウズ」、「グルグル」といった称呼が生じる。図形部分は、文字ではなく図なので、称呼は一定ではない。図の2番目に大きい構成要素である四本の集中線も一般の需要者には馴染みのあるものであり、渦巻き模様と同様に、「集中線」、「放射状の線」、「四本(の)線」といった概念及び「シューチューセン」、「ホーシャ(ジョーノ)セン」、「ヨンホンセン」といった称呼が生じる。小さい三角も同様である。よって、渦巻き模様等の図の部分も出所識別標識として機能するものであり、取消理由通知において、図の部分が自他識別性(出所識別性)が無いとした判断は誤りである。
3 「ももいちご」について
「ももいちご」は、苺の一種類(苺品種「あかねっ娘」)を表す一般名称(普通名称)であり、このことは、次の(1)ないし(4)の事実より認められる。
(1)辞書(乙1及び2)
Yahoo!JAPAN辞書の「ももいちご」の検索結果(乙1)及びデジタル大辞泉プラスの「ももいちご」の解説(乙2)には、「ももいちご」は、いちごの普通名称(品種)として掲載されている。
(2)一般名称(普通名称)であることを裏付ける使用態様
ア 苺品種「あかねっ娘」について、京都府のスーパーでは「奈良産モモイチゴ」の値札をつけて販売されており、「大和桃苺」で販売されていた(甲71の74及び75、乙3)。他にも多数「ももいちご」で販売されています(甲71の2、5、11他)。
生鮮食品表示基準(乙4)は、品質に関し、「名称、原産地を表示すること」、「名称はその内容を表す一般的な名称を記載すること」と定めており(3条4条)、加工食品品質表示基準(乙5)は、品質に関し、「名称、原材料名、内容量、賞味期限、保存方法」を記載すること、そのうち名称については「その内容を表す一般的な名称を記載する」と定めている(3条4条)。生鮮食品表示基準や加工食品品質表示基準に照らしても、「ももいちご」が品質に関する一般的な名称であること、取引者、需要者が「ももいちご」を苺品種「あかねっ娘」の普通名称として認識していることは明瞭である。
イ さらに、「ももいちごアイス」(乙6)、「ももいちご大福」(乙7)、「ももいちごロール」(乙8、徳島新聞)、「ももいちごパイ」(乙9)、和菓子ハンターの「品名 日の出桜のももいちご大福」、「原材料ももいちご」の表示(乙10)、新聞記事「ももいちご」の収穫記事等(別掲2)、甲第71号証であかねっ娘がももいちごと呼ばれていることが確認できる。「ももいちごソルベ」(乙11)、「ももいちご餅」(乙12)のインターネット記事も、「ももいちご」が苺の品種「あかねっ娘」の普通名称として用いられていることを示している。
ウ いちご品種図鑑(乙13)も、「ももいちご」が「あかねっ娘」の別名であることを示している。
(3)申立人が受け取った拒絶理由
平成18年9月14日に平仮名「ももいちご」による商標登録願(乙14)について、同19年5月29日に「この商標登録出願に係る商標は、イチゴの一種類と認められる『ももいちご』の文字を普通に用いられる方法で表してなるものでありますから、本願商標をその指定商品に使用した場合、本願商標に接する取引者・需要者は、単に、イチゴの一種類であるものいちごを認識するに止まり、単に、商品の品質を表示するにすぎないものと認められます」として「商標法第3条第1項第3号に該当」するとの拒絶理由が通知されている(乙14)。その時、申立人は、意見書等を提出せず、拒絶理由を容認している。
(4)並存登録
「ももいちご」が苺の一種類の一般名称であることは、「日の出楼のももいちご大福」(登録第5167767号商標)、「ももいちごの里」(登録第5342644号商標)、「ももいちご大福\uSuNAGA」(登録第5493284号商標)が商品区分第30類「菓子類」(30A01)について、苺品種「あかねっ娘(ももいちご)」を用いた加工商品を対象として、それぞれ申立人とは別の権利者によって並存登録されていることからも明らかである。
これらは、商標法第26条第1項第2号に従い登録されたものと推認される。最初に登録された「日の出楼のももいちご大福」(登録第5167767号商標)の「ももいちご」部分が普通名称と認められ、商標権の効力が、他の商標(他の商標の一部となっているものを含む。)には及ばないからこそ、その後の「ももいちごの里」(登録第5342644号商標)、「ももいちご大福\uSuNAGA」(登録第5493284号商標)が登録されたものである。
4 本件商標と引用商標1の関係について
上記3のとおりであるから、「ももいちご」が苺品種「あかねっ娘」を表す普通名称であることは明らかである。してみれば、「ももいちご」は、品種名であるから、これを苺に付して販売した場合、他人の業務に係る商品を表示するものとはいえない。
仮に、他人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標であるとするなら、それは、甲第71号証の2にみられる地域名称と普通名称の組み合わせである「佐那河内のももいちご」という地域団体商標(ただし、非登録)であって、「ももいちご」ではない。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号には該当しない。
なお、「ももいちご」が「あかねっ娘」の別称(苺の一種類の一般名称)であることを知らない需要者にとっても、引用商標1の「もも」と本件商標の「桜桃(オウトウ)」で外観、観念、称呼が相違することは明らかである。
5 「さくらももいちご」について
一般的に「桜桃」の読みは「オウトウ」であり、「サクラモモ」とは読まないが、植物の一種類に「桜桃」と書いて「さくらもも」と読む品種が存在すれば読めることになる。現時点では、乙第15号証のとおり、苺の一種類として存在するので、「サクラモモ」と読めることになる。
苺品種「桜桃壱号(読み:サクラモモイチゴウ)」(品種登録第24423号)は、「桜桃」の文字と「壱号」の順番を表す文字によりなる。登録されている読みから「サクラモモイチゴー」の称呼及び「桜と桃」の観念を生じる。「壱号」は、単に順番を表すにすぎないので、商標における出所識別標識としては弱い印象しか需要者に与えない。海外に苺品種を輸出する際のUPOV条約及び国際栽培植物命名規約上の正式品種名称はFragaria L.“Sakuramomoichigo”となる。Fragaria L.は苺の学名である。
商標法第2条第3項2号により輸出も商標の使用とみなされる。苺品種「桜桃壱号」が輸出される場合は、「Sakuramomoichigo」と商標(若しくは品種名)が付されることは、十分予測される。国内では「桜桃壱号」という苺であるから「桜桃苺」、「さくらももいちご」として販売されることも当然である。
してみれば、引用商標2と登録第24423号苺品種は、共に「サクラモモ」、「サクラモモイチゴ」の称呼及び「桜と桃」の観念を生じることは明らかであるから、称呼及び観念において同一である。加えて、引用商標2の対象商品と品種登録第24423号の植物の種類は、共に苺である。
本件商標の商標権者の一人である星野光浩は、「桜桃壱号」の育成権者の一人である。
商標審査基準に従うならば、本件商標のような結合商標の場合、「桜桃壱号(桜桃苺)」について、「桜桃苺」の文字と渦巻き模様等の図が付されているのであるから、他の渦巻き模様が類似している商標が存在する場合のみ、その商標と類似と判断されることになる。
6 本件商標と引用商標2の関係について
種苗法も商標法も先願主義による。苺品種「桜桃壱号」(品種登録第24423号)の登録出願は、平成21年1月28日である(乙15)。
取消理由通知における新聞記事(別掲2(1))によると、「今季から、ももいちごより糖度の高い姉妹品『さくらももいちご』の販売も本格化させた」とあるので、申立人らが「さくらももいちご」の販売を本格的に始めたのは、平成20年12月中旬か下旬頃からであると分かる。甲第71号証の111に「『さくらももいちご』の農家さんは“6分の1”!僅か6軒(08年度)だけ!」とある。
してみれば、なんらかの苺品種を6件の農家が勝手に「さくらももいちご」と称して販売し始めたのが、平成20年度からであることが分かる。平成20年度の段階では、たったの6件での販売であるから、「さくらももいちご」は、周知商標というには程遠いものであったことが分かる。
本件商標の商標権者が、「桜桃壱号」の品種を登録出願した時点(平成20年度)では、申立人らが本格販売し始めて1ヶ月程度しか経っていない。
本件商標の登録出願時点(平成21年11月24日)においても、僅か6件の農家が1期程度(平成20年12月?平成21年4月)販売したにすぎないから、「さくらももいちご」は、周知商標というには程遠いものであったことが認められる。
以上のとおりであるから、「さくらももいちご」は苺の一種類(桜桃壱号)の普通名称であり、その名称を苺商品に付しても、自己の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に認識されることはない。また、本件商標の登録出願時点では、「さくらももいちご」が需要者の間に広く認識されていることもないので、商標法第4条第1項第10号には該当しない。
なお、「桜桃壱号」の育成権者らである本件商標の商標権者らが本件商標を苺商品(苺品種「桜桃壱号」)に付して販売した場合は、上記2のとおりであるから、図の部分が出所識別標識として機能を発揮し、有効なものとなる。
7 最高裁判例について
「複数の構成部分を組み合わせた結合商標と解されるものについて,商標の構成部分の一部を抽出し,この部分だけを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断することは,その部分が取引者,需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる場合や,それ以外の部分から出所識別標識としての称呼,観念が生じないと認められる場合などを除き,許されないというべきである」(最高裁平成19年(行ヒ)第223号、同20年9月8日第二小法廷判決・裁判集民事228号561頁参照)。
取消理由では、複数の構成部分を組み合わせた結合商標と解されるもの(=本件商標)について、商標の構成部分の一部(=「桜」、「桃」、「苺」の部分)を抽出し、この部分だけを他人の商標(=引用商標1、2)と比較して商標そのものの類否を判断している。
一般の需要者にとっては、「桃苺」の場合は、苺品種「あかねっ娘」の一般名称や、桃色の苺といった意味にとらえられる苺を表す慣用的な語であり、「桜桃苺」も、同様に苺品種の一種類を表す語であるから、「その部分が取引者、需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる場合」には相当せず、出所識別標識としては弱い印象でしかないのであって、本件商標の図部分が出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものである。
また、「それ以外の部分から出所識別標識としての称呼、観念が生じないと認められる場合」にも該当しない。
してみれば、取消理由は、近年の最高裁判例と比べても大きく逸脱しており、許されないものといわざるを得ない。
8 まとめ
以上のとおりであるから、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当しないものである。

第5 当審の判断
1 本件商標の商標法第4条第1項第10号該当性について
本件商標が商標法第4条第1項第10号に該当するとした上記第3の取消理由は、妥当なものと認められる。
そして、商標権者は、上記第4のとおり意見を述べているが、その意見は、下記2のとおり、いずれも採用することができないものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当するものといえる。
2 商標権者の意見について
(1)商標法第8条第1項に関する意見について
商標権者は、上記第4の1のとおり、引用商標1が商願2010-33790号商標と、引用商標2が登録5643415号商標と同一であり、それら商標が本件商標の登録出願より後願であるとして、取消理由が商標法第8条第1項に違反しているものであるから、本件商標の登録は維持されるべきであると主張している。
しかしながら、取消理由に係る同法第4条第1項第10号は、「他人の業務に係る商品若しくは役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標又はこれに類似する商標であつて、その商品若しくは役務又はこれらに類似する商品若しくは役務について使用をするもの」は商標登録を受けることができないとするものであり、同号において引用し得る商標は「他人の業務に係る商品若しくは役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標」でなければならないが、先に登録出願された商標でなければならないとはされてはいない。
そして、上記第3のとおり、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時には、既に、JA徳島市の佐那河内支所の特定の組合員が栽培したいちごを表示するものとして、我が国の取引者、需要者に広く知られるに至っていたものであり、本件商標は同法第4条第1項第10号に該当するといえるものである。
したがって、商標権者の上記主張は採用することができない。
(2)「ももいちご」に関する意見について
商標権者は、上記第4の3及び4のとおり、「ももいちご」は苺の一種類である「あかねっ娘」を表す普通名称であると主張し、乙第1号証ないし乙第13号証を提出している。
しかしながら、「ももいちご」について商標権者が提出した乙各号証をみるに、乙第1号証及び乙第2号証には「徳島県で生産されるイチゴ。佐那河内(さなごうち)地区の特産品・・・」と、乙第6号証には「福島県佐那河内村産使用」及び「『ももいちご』・・・徳島県名東郡佐那河内村でしか生産されない“幻のいちご”が原料です」と、乙第7号証には「実が大きく果汁が多いももいちごは徳島県の佐那河内村で限定生産される地域ブランド」と、乙第8号証には「佐那河内村特産のイチゴ『ももいちご』のロールケーキ」及び「ももいちごを使った商品開発をJA徳島市佐那河内村支所から依頼を受けて開発した。」と、乙第9号証には「『ももいちごの里』は、徳島県佐那河内村特産桃苺(ももいちご)のミックスジャムを使ったパイ(焼菓子)です。」と、乙第10号証には「日の出楼ももいちご大福の原材料。『ももいちご』という徳島県佐那河内村というところで採れる高級イチゴ『ももいちご』を使っているのがポイント。」と、乙第11号証には「幻のブランド苺『ももいちご』を贅沢に使ったソルベです」及び「【ももいちご】・・・『ももいちご』は徳島県佐那河内村で25軒のももいちご栽培農家だけで生産されているイチゴです。今から20年前、徳島県名東郡佐那河内村で、この高級いちご『ももいちご』は生まれました。」と、乙第13号証には「(ももいちご)品種は『あかねっ娘』だが徳島県が『ももいちご』で商標登録している。漢字は『桃苺』ではなく『百壱五』で登録している。徳島の佐那河内地区(さなごうち)だけで作られている特産品 6ヘクタール、36戸の農家で年間140トン作られ、大阪中央青果に限定出荷されている。栽培方法として、1株に4?5個の実を順次つけるように摘花(てきか)し管理。農家同士の勉強会や連携による品質管理。農家が定植時期をずらしながら地域の出荷期間を確保。などの努力がみられる。」と記載されており、これらの記載に徴すれば、これら乙各号証は、むしろ、取消理由において述べたとおり、引用商標1がJA徳島市の佐那河内支所の特定の組合員が栽培したいちごを表示するものとして我が国の取引者、需要者に広く知られるに至っていることを証するものというべきである。もちろん、商標権者が挙げる取消理由において引用した甲号証も、引用商標1を申立人らの商品として紹介しているものである。そして、商標権者は、これらの証拠をもって「ももいちご」が苺の普通名称といえるとする具体的理由を明らかにしているわけでもない。
また、商標権者は、申立人が「ももいちご」の商標の登録出願に対する商標法第3条第1項第3号の拒絶理由通知を容認していたとも主張し、該拒絶理由通知書の写しを乙第14号証として提出しているが、拒絶理由通知に対して意見書を提出しなかったとしても、それをもって、「ももいちご」が苺の普通名称であることを申立人が認めたとまではいうことができないし、そのほかに、申立人が「ももいちご」を苺の普通名称と認めているとする証拠も提出されていない。
さらに、商標権者は、「ももいちご」の文字を含む商標が併存登録されているとも主張しているが、これら商標権者が提示する登録商標は、引用商標が使用されている「いちご」とは異なる商品を指定商品とする登録商標であり、これら登録商標が併存して登録されていることをもって、「ももいちご」が苺の普通名称であるとすべき理由はない。
したがって、引用商標1である「ももいちご」は、苺の普通名称ということはできないものであり、上記第3のとおり、JA徳島市の佐那河内支所の特定の組合員が栽培したいちごを表示するものとして、我が国の取引者、需要者に広く知られるに至っているものであるから、商標権者の上記主張は採用することができない。
(3)「さくらももいちご」に関する意見について
商標権者は、上記第4の5及び6のとおり、種苗法による農林水産植物の品種登録第24423号において、商標権者の一人が育成権者として、「桜桃壱号(さくらももいちごう)」が苺品種(Fragaria L.)として品種登録されており、国内では「桜桃苺」や「さくらももいちご」として販売されることが当然であり、また、輸出される場合には「sakuramomoichigo」と商標(若しくは品種名)が付されることが十分に予測されるとして、「さくらももいちご」は苺の種類(桜桃壱号)の普通名称であって、申立人らの業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に認識されることはないと主張し、乙第15号証を提出している。
しかしながら、乙第15号証によれば、品種登録されているのは「桜桃壱号(さくらももいちごう)」であって、該登録をもって、漢字や読みが異なる「桜桃苺」、「さくらももいちご」や「sakuramomoichigo」までが「いちご」(果実)の普通名称として使用することが認められるとすべき理由は見いだし得ない。
また、商標権者は、当該品種登録の出願時には、申立人ら商品2の販売が本格化して間もなく、周知商標というには程遠いとも主張しているが、本件商標が商標法第4条第1項第10号に該当するか否かの判断の基準時は、当該品種登録の出願時ではなく、その登録出願時及び登録査定時であり、また、需要者の間に広く認識されているか否かは、販売数量のみで判断するものではなく、広告、宣伝など、マスコミにおいて取り上げられた状況等によっても大きく影響を受けるものである。そして、引用商標2を使用する申立人ら商品2は、「ももいちご」(申立人ら商品1)の姉妹品とされるものであり、申立人ら商品1の販売が平成5年より行われ既に周知となっていることから、需要者も、容易に引用商標2を申立人らの業務に係る商品を表示するものとして把握、認識し得るとみるのが相当である。
そうすると、引用商標2は、これらの事情をも勘案するならば、上記第3のとおり、本件商標の登録出願時及び登録査定時には、既に、JA徳島市の佐那河内支所の特定の組合員が栽培したいちごを表示するものとして、我が国の取引者、需要者に広く知られるに至っていたということができる。
したがって、商標権者の上記主張は採用することができない。
(4)本件商標に関する意見について
商標権者は、上記第4の7のとおり、最高裁平成19年(行ヒ)第223号(平成20年9月8日第二小法廷)を提示して、本件商標について、「桃苺」の漢字部分、さらに、「桜」及び「桃苺」の漢字部分を要部として引用商標と類似するとした取消理由が該判例を逸脱しているものであると主張している。
しかしながら、同判例も、商標の構成中の一部を抽出し、この部分だけを他人の商標と比較して類否判断することが一切許容されないとしているわけではない。商標権者を原告とする平成27年(行ケ)第10079号の判決においても、該判例を含めたいくつかの判例を提示して、「・・・取引の実際においては,商標の各構成部分がそれを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものと認められない商標は,必ずしも常に構成部分全体によって称呼,観念されるとは限らず,その構成部分の一部だけによって称呼,観念されることがあることに鑑みると,商標の構成部分の一部が取引者,需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる場合や,それ以外の部分から出所識別標識としての称呼,観念が生じないと認められる場合などには,商標の構成部分の一部を要部として取り出し,これと他人の商標とを比較して商標そのものの類否を判断することも,許されると解するのが相当である(最高裁昭和37年(オ)第953号同38年12月5日第一小法廷判決・民集17巻12号1621頁,最高裁平成3年(行ツ)第103号同5年9月10日第二小法廷判決・民集47巻7号5009頁,最高裁平成19年(行ヒ)第223号同20年9月8日第二小法廷判決・裁判集民事228号561頁参照)。」として、商標の構成部分の一部を要部として取り出し、他人の商標と類似すると判示している。
そして、本件の取消理由は、上記判例の趣旨を踏まえ、本件商標について、上記第3の3のとおり、「桃苺」の漢字部分、さらに、「桜」及び「桃苺」の漢字部分を要部とし、引用商標と類似すると判断したものである。
また、商標権者は、上記第4の2のとおり、取消理由において、本件商標の構成中の図形部分に自他商品の識別性がないと判断した点を誤りとも主張しているが、取消理由は、本件商標の構成中の図形部分を自他商品の識別性がないとはしていない。ただし、本件商標の図形部分は、上記第3の3のとおり、何を表した図形であるのか直ちに理解し得ないものであり、一見して特定の物の形状を表しているものと認識することは困難であるから、それ自体から特定の称呼や観念を生じるものとはいい難いものである。このため、本件商標は、その図形部分からは、出所識別標識としての称呼又は観念は生じないのである。
したがって、商標権者の上記主張は採用することができない。
3 むすび
以上のとおりであるから、商標法第4条第1項第7号、同項第11号及び同項第15号について論じるまでもなく、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第10号に違反してされたものであるから、同法第43条の3第2項の規定により取り消すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
別掲 別掲1(本件商標)


別掲2(職権調査により発見した新聞記事)
(1)平成21年1月4日付け朝日新聞(朝刊)に「(新・四国のちから:3)農業 果物、こだわりで勝負 /徳島県」の見出しの下に、「大阪・キタの阪神百貨店。08年12月初め、地下1階の果物売り場に徳島県佐那河内村特産の『ももいちご』が並んだ。化粧箱入りで高価にもかかわらず、計4箱は即日完売した。人口約3千人の同村で、生産農家は28戸。11月下旬から3月下旬までに100トン程度しか市場に出回らず、イチゴの平均単価の2、3倍の値が付く。売り上げは2億円超。『赤いルビー』『幻のイチゴ』といわれるゆえんだ。青果卸売会社『大阪中央青果』(大阪市)が、取引先のJA徳島市佐那河内支所に苗を持ち込んで、92年に共同開発した。通常のイチゴよりも5?10日ほど長く育て、1本の苗でできる実を5個程度にして栄養分を集中させ、粒を大きくする。化粧箱に詰めたのはつぶれにくくするのと、高級感を出すためだ。同支所のももいちご部会長、中河要さん(69)は『村の名前も売れ、農業もやっていけとる』と喜ぶ。今季から、ももいちごより糖度の高い姉妹品『さくらももいちご』の販売も本格化させた。同百貨店の売り場には、ほかの四国産フルーツも並ぶ。『香川産キウイ』『愛媛産ミカン』『高知産水晶文旦(ぶんたん)』など約15品目。全体の15%ほどだが、売り上げは3、4割を占める。」と記載されている。
(2)平成23年1月23日付け大阪読売新聞(朝刊)に「[行ってみんで]『ももいちご』佐那河内村 極上の甘味 秘訣は愛情=徳島」の見出しの下に、「まるで赤い宝石?。佐那河内村特産の『ももいちご』の収穫が最盛期を迎えた。大粒の実を一口食べると、一般のイチゴの倍近い糖度13度以上ある甘みが口に広がり、みずみずしい果汁に思わず顔がほころぶ。ももいちごは、同村の中央を流れる園瀬川周辺に連なる大小のビニールハウスで育てられる。・・・ももいちご作りは夏に苗を育てる作業から始まる。白く小さな花が数十個出てくると、養分を集中させるために摘花する。実が付き始めると、周りの古い葉を取り除いて日光が当たるようにし、赤く色付いていく。」及び「JA徳島市佐那河内支所と大阪中央青果(大阪市)が1994年、共同開発したブランドイチゴ。佐那河内村内のイチゴ栽培面積4.4ヘクタールの6割で作られ、農家28軒が生産している。一般のイチゴより丸く、大きな実が特徴で、軟らかく、果汁が多い。山間地の昼夜の寒暖差が、13度以上の高い糖度を生み出す。流通しているのは大阪のみで、京阪神の百貨店では、一箱(20個入り)1万500円で販売されている。姉妹品に『さくらももいちご』がある。」と記載されている。
(3)平成23年1月24日付け日経MJ(流通新聞)に「ももいちご?栽培に工夫、1粒1000円も(地域ブランドAtoZ)」の見出しの下に、「徳島県佐那河内村でつくられている大粒でジューシーで香りがよく、1粒1000円以上の値がつく高級イチゴ。1992年にJA徳島市佐那河内支所と、大阪中央青果との共同プロジェクトとして開発された。同村の約30軒の農家のみで栽培され、年間約140トンが生産されている。同村は県中東部の山間に囲まれた盆地状の狭い地域で、平野部よりも日照時間が短く、昼夜の温度差が大きい。実が赤く色づくまでに日数を要する条件が幸いし、大きなイチゴを育てられる。1株に4?5個の実を順次つけるよう摘花し、地面に着かないようスノコの上で育てるなど栽培方法にも工夫を凝らしている。地元徳島県と大阪中央青果でのみ販売しているが、特に高級果物店や百貨店、インターネット通販等で人気が高い。果肉が赤くて甘みの強い新品種『さくらももいちご』は8軒の農家が栽培しており、稀少性が高く、さらに人気が高い。」と記載されている。
(4)平成23年2月12日付け大阪読売新聞(夕刊)に「[ONタイム・仕事師たち]ももいちご 日当たりの悪さ逆手」の見出しの下に、「◇徳島県佐那河内村、大阪中央青果 ◆日当たりの悪さ逆手 じっくり育て甘み増す 高級イチゴとして評価が確立した『ももいちご』。徳島市の南西、徳島県佐那河内(さなごうち)村にある全28軒のイチゴ農家だけが作る。卸売業者とイチゴ農家の共同開発という珍しい形で栽培法を工夫し、ブランド化に成功した。」、「消費者に名が知られ始めると、偽『ももいちご』が出現した。上田は秦や弁護士を交え、対策に奔走した。『農協もいろいろやってくれるが、ここまで面倒を見てくれる人は、他にいない』と秦は言う。今では大阪市中央卸売市場で他のイチゴの2倍の価格で取引される。だが、一度味が落ちると評価が下がるため、気は抜けない。出荷前の審査は全量が対象で、審査員の秦は、糖度が低いと『しばらく出荷せんように』と告げる。『ももいちご』を独自に出荷することや、苗の村外への譲渡は禁止。各農家はこれらを取り決めた誓約書に署名し、違反すると部会から除名される。佐那河内では、ももいちごに続き、2008年に別品種『さくらももいちご』の出荷を始めた。きれいな紡錘形で、先端はももいちごより甘い。次は、佐那河内で新品種を開発する。」及び「農水省によると、2009年産イチゴの全国出荷量(推計)は16万8100トン。佐那河内産は『ももいちご』と『さくらももいちご』を合わせ、100トンだ。関西で出回るイチゴには、熊本や長崎など九州産が多い。『ももいちご』と『さくらももいちご』は、地元消費分を除き、全量、大阪市中央卸売市場に出荷され、主に京阪神の百貨店、スーパーの店頭に並ぶ。価格は『ももいちご』で贈答用の20個化粧箱入りが1万500円、『さくらももいちご』は24個化粧箱入りが8400円、家庭用の200グラム入りパックが1260円(阪神百貨店梅田本店調べ)。」と記載されている。
(5)平成23年2月15日付け朝日新聞(夕刊)に「(デパ地下ツアー)阪急うめだ本店 春待つ間に・・・真冬の果実 【大阪】」の見出しの下に、「乾いた冬にはもう飽きた。みずみずしい春を求めて、1階『キムラフルーツ』へ。1個売りのイチゴ(紅ほっぺ525円)や、徳島県佐那河内村(さなごうちそん)の農家約30軒と大阪中央青果の共同企画の品種『さくらももいちご』(3粒525円)の宝石のような輝きに足が止まる。口いっぱいに広がる味と香りは、それぞれ微妙に違ってウットリ楽しめる。」と記載されている。
(6)平成23年12月13日付け朝日新聞(朝刊)に「(週刊まちぶら:231)大川原高原の風力発電 風切る15基、一躍脚光/徳島県」の見出しの下に、「●高級いちご24戸で生産 まるい実にかぶりつくと、甘い汁があふれてくる。大阪の百貨店で20個入りが1万5千円にもなる『ももいちご』は、佐那河内村のわずか24戸の農家が生産している。JA徳島市佐那河内支所ももいちご青年部の部長、栗坂政史さん(37)は農家をついで12年目。計21アールでももいちごと姉妹品の『さくらももいちご』を作っている。ハウスの温度調節、花の間引き、病気の予防。手間はかかっても『大きい実に育つとうれしい』。出荷はクリスマスに向けて最盛期を迎える。『さらに品質を磨いて、東京にも販路を広げたい』」と記載されている。
(7)平成24年3月13日付け大阪読売新聞(朝刊)に「とくしま特選ブランド 需要拡大 全国へPR=徳島」の見出しの下に、「県産の農林水産物の需要拡大を目指し、県は『ももいちご』や『すだち牛』など特に品質が良いと認めた11商品を『とくしま特選ブランド』商品として登録した。県庁で登録証交付式が行われた。・・・イチゴ『ももいちご』と姉妹品『さくらももいちご』が登録された徳島市農協佐那河内支所ももいちご部会の中河要部会長は『登録は生産者にとって大きな励みになる。名に恥じぬよう生産に磨きをかけたい』と話した。」と記載されている。
(8)平成25年1月18日付け日本経済新聞(地方経済面)に「徳島・佐那河内の『ももいちご』?『小粒化』克服へ甘み磨く(地宝創造)」の見出しの下に、「徳島県産の農産物の代表的なブランドの一つである『ももいちご』。JA徳島市佐那河内支所と大阪中央青果(大阪市)が共同開発したブランドで、桃のような大粒の実と、爽やかな甘みを売り物にこの20年間で全国的な知名度を獲得した。ただ、近年は品質の維持・向上や高齢化が進む生産者の後継者確保が課題となっており、関係者は課題解決に向けて新品種の投入などに取り組んでいる。徳島市内から車で約30分の佐那河内村。12月から3月にかけてJA徳島市佐那河内支所の産地直売所にももいちごのパックが並ぶと午前中には徳島の和菓子メーカーなどがまとめ買いして売り切れてしまう。ももいちごはほとんどが関西地区に集荷されてしまうため、県内でもまとまった量が手に入るのはこの販売所のみだからだ。人気商品に育ったももいちごが登場したのは約20年前。大阪中央青果が愛知県の品種を佐那河内村に持ち込み、産地形成を狙ったのがきっかけだ。山あいで寒暖の差が大きい気候と適合し、生育に日数がかかるものの、大粒化させることに成功した。生育途中で実を間引いて大粒にする栽培技術も確立した。・・・ももいちごは昨年2月、贈答品需要の見込める特産品として徳島県が認定する『とくしま特選ブランド』の第1号となった。だが、5年ほど前から小粒化が目立つようになった。連作の影響とみられるが原因がはっきりせず、関係者の悩みの種となっている。そこで、ももいちごを補完するため5年前から投入したのが新しい品種によるブランド『さくらももいちご』。『大粒という違いを維持しながらより甘みを求める消費者ニーズにも対応した』(JA徳島市佐那河内支所の里昭男営農経済課係長)。村内の総作付面積も、ももいちごの225アールに対し、さくらももいちごは167アールまで拡大した。」と記載されている。


異議決定日 2015-12-08 
出願番号 商願2009-92480(T2009-92480) 
審決分類 T 1 651・ 253- Z (X31)
T 1 651・ 251- Z (X31)
T 1 651・ 252- Z (X31)
T 1 651・ 255- Z (X31)
最終処分 取消  
前審関与審査官 真鍋 恵美目黒 潤小田 明馬場 秀敏 
特許庁審判長 大森 健司
特許庁審判官 林 栄二
中束 としえ
登録日 2013-12-06 
登録番号 商標登録第5634509号(T5634509) 
権利者 星野 博子 星野 光浩
商標の称呼 オートーイチゴ、オートー、サクラモモイチゴ、サクラ、モモイチゴ、モモ 
代理人 豊栖 康司 
代理人 豊栖 康弘 

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