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審決分類 審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない X2425
管理番号 1326012 
審判番号 取消2015-300239 
総通号数 208 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2017-04-28 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2015-04-01 
確定日 2017-02-27 
事件の表示 上記当事者間の登録第5212048号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5212048号商標(以下「本件商標」という。)は、「クライマドライ」及び「CLIMADRY」の文字を二段に書してなるものであり、平成19年11月16日に登録出願、第24類「織物(「畳べり地」を除く。),メリヤス生地,フェルト及び不織布,布製身の回り品,敷布,布団,布団カバー,布団側,まくらカバー,毛布,織物製テーブルナプキン,ふきん,織物製いすカバー,織物製壁掛け,カーテン,テーブル掛け」、第25類「被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト」及び第40類に属する商標登録原簿に記載のとおりの役務を指定役務として、平成21年3月6日に設定登録されたものである。

第2 請求人の主張
請求人は、本件商標の登録を取り消す、審判費用は被請求人の負担とするとの審決を求め、その理由を要旨以下のように述べた。
1 請求の理由
本件商標は、その指定商品及び指定役務中、第24類「全指定商品」及び第25類「全指定商品」について、継続して3年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権のいずれも使用した事実がないから、その登録は、商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきものである。
2 答弁に対する弁駁
被請求人の主張及び提出した証拠方法によっては、以下のとおり、本件取消審判の予告登録前3年以内(以下「本件要証期間内」という。)に商標権者及び通常使用権者のいずれの者が本件商標をその指定商品に使用していることを立証していない。
(1)被請求人は本件商標を使用していない。
被請求人は「吸湿性・放湿性・吸水性・速乾性を有することを特徴とするポリエステル地の織物」(以下「本件製品」という。)に本件商標を使用していると主張する。
しかしながら、同人は本件製品の生機の状態のものを東レきもの販売株式会社(以下「東レきもの」という。)へ販売しているとのことであるが、この生機に本件商標を使用した旨の主張はされておらず、また、提出された証拠方法からも本件商標を使用した事実は立証されていない。
被請求人は野橋株式会社(以下「野橋」という。)から東レきものを通じての依頼に応じて製品タグを供給しているが、製品タグの供給は、本件製品との関係では、商標の使用とはなり得ない。
したがって、被請求人は本件商標を使用していないことは明らかである。
(2)東レきものは通常使用権者ではない。
被請求人は、東レきものがその子会社であるから黙示の通常使用権者であると主張するが、通常使用権者となるには本来契約書等による明示の使用許諾が必要とされるにもかかわらず、単に子会社であることのみをもって、黙示の使用許諾があったとはいえない。しかも、使用している状況に鑑みて黙示の使用許諾があったか否かが判断されるべきであり、以下に述べるように商標の使用をしていない東レきものに対して黙示の使用許諾をすることは理論上あり得ない。
したがって、東レきものは、本件商標の通常使用権者ではない。
また、被請求人は、東レきものが野橋への販売にあたり、その本件製品に製品タグを付していないと主張していることから、同社は本件商標を使用していないことは明らかである。
(3)野橋は通常使用権者ではない。
被請求人は、野橋と東レきものを介在して取引関係にあり、これをもって黙示の通常使用権を許諾されていると主張するが、野橋は東レきものからその製造に係る商品を購入しているに過ぎず、しかも、野橋は被請求人とは直接的な取引関係にはない。そして、被請求人は、野橋に使用許諾をした旨を客観的に立証する証拠方法は何ら提出していない。
したがって、野橋は、本件商標の通常使用権者ではない。
なお、被請求人は、乙第9号証の1ないし6の野橋の発注メモに「クライマドライ」の表示があることをもって野橋による商標法第2条第3項第8号の使用があったとされているが、その趣旨が広告における使用も商標の使用とするものであることからすれば、上記表示があることをもって同法第2条第3項第8号の使用がされたとはいえない。
(4)小括
以上のとおり、東レきもの及び野橋は、本件商標の通常使用権者ではない。
(5)被請求人の主張の矛盾
「商品添付物出荷依頼書」(乙11)においては、野橋は「襦袢」に製品タグを使用する旨が述べられている一方で、野橋の製品の写真(乙12の1ないし3)には「ちりめん」とおぼしきものが写っている。また、被請求人は本件製品が「吸湿性・放湿性・吸水性・速乾性を有することを特徴とするポリエステル地の織物」であると主張している。この点で、被請求人の主張並びに証拠方法から認定される事実は矛盾しており、その結果、本件商標が本件審判請求に係る指定商品に使用されているか不明といわざるを得ない。
(6)証拠方法の検討
被請求人が提出した証拠方法において本件商標の記述があるのは、乙第7号証、乙第9号証、乙第10号証ないし乙第12号証であるところ、乙第7号証は長襦袢の素材を表わすものとして記述されているので、商標としての使用ではない。上述したように、乙第9号証及び乙第11号証は本件商標の使用を立証するものではない。乙第10号証は製品タグであるが、これをもって本件商標の使用を立証できるものではなく、しかも、これが本件要証期間内のものであることも不明である。乙第12号証は通常使用権者と主張されている野橋の商品であるか不明であり、しかも、本件要証期間内のものであることも不明である。
したがって、被請求人が提出した証拠方法は、本件商標が「吸湿性・放湿性・吸水性・速乾性を有することを特徴とするポリエステル地の織物」に使用されていることを何ら立証していない。
(7)まとめ
以上のとおり、被請求人は、その主張及び提出した証拠方法により、本件要証期間内に商標権者及び通常使用権者によって本件商標が指定商品に使用されたことを何ら立証していない。

第3 被請求人の答弁
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第27号証(枝番号を含む。)を提出している。
(1)本件商標の使用の概要
商標権者及び通常使用権者である東レきもの並びに野橋(以下「本件通常使用権者ら」という。)は、日本国内において、本件要証期間内に、本件審判請求に係る指定商品中の「織物(「畳べり地」を除く。)」(以下「本件指定商品」とする。)に該当する「吸湿性・放湿性・吸水性・速乾性を有することを特徴とするポリエステル地の織物」(本件製品)について、本件商標を使用している。
(2)商標権者と本件通常使用権者らについて
商標権者である東レ株式会社は、大正15年に創業された合成繊維・合成樹脂を始めとする化学製品や情報関連素材を取り扱う総合化学メーカーとして広く知られている。
東レきものは、商標権者の子会社として昭和59年10月に創業されたものであり、主な事業分野は和装用織編物の仕入・販売、並びに、和装製品の企画・仕入・製造・販売であって(乙3、乙4)、両社は親子会社の関係にあるから、被請求人は、東レきものに対して、本件商標を本件製品に使用することについて、本件商標権に基づく通常使用権を黙示的に許諾している。
したがって、東レきものは、本件通常使用権者らの一人として認められるものである。
また、野橋は、昭和27年4月に創業された呉服関係の卸売りを業とするものであり(乙6)、被請求人とは、東レきものを介在して取引関係にある。これに伴って、野橋は、本件製品の一連の取引について商標権者から、本件商標を本件製品に使用することについて、本件商標権に基づく通常使用権を黙示的に許諾されているものといい得る。
したがって、野橋についても、本件通常使用権者らの一人として認められるものである。
(3)本件製品について
本件製品は、「吸湿性・放湿性・吸水性・速乾性を有することを特徴とするポリエステル地の織物」であり、主に和服用の下着として着用される長襦袢又は半襦袢用の生地(織物)として用いられる。本件製品は、きもの専門誌においても「長襦袢地」として紹介されている(乙7)。そのため、本件製品に接する需要者又は取引者は、本件製品を「長襦袢に用いられる織物」として認識、理解し得るものである。
(4)本件製品の流通について
本件製品は、まず始めに商標権者によって、「生機」として製造され、本件通常使用権者である東レきものへ流通し、東レきものが、その生機を生地加工する織物が本件製品であり、「クライマドライ」が完成する。
野橋は、東レきものに対して、本件製品を発注する(乙9)。乙第9号証の左上部「品名」欄には「クライマドライ」の文字が表示されているから、本件通常使用権者である野橋は、東レきものに対する取引書類において本件商標を使用(商標法第2条第1項第8号)している。
東レきものは、この発注に基づいて、野橋に本件製品を販売する時点においては、東レきものは本件製品に製品タグ(以下「本件タグ」とする。乙10)を付していないものの、本件製品自体は完成し、東レきものは、それを野橋へ販売しているものである。そうすると、東レきものは、実質的に本件製品に本件タグを付しその本件製品を販売していることから、東レきものは本件商標を使用しているといい得る。
さらに、東レきものは、商標権者に対して、野橋が使用するための本件タグの発注を依頼するための「商品添付物出荷依頼書」(乙11)を送付し、商標権者から野橋に本件タグが送付される。
野橋は、東レきものにより販売された本件製品に独自の柄を施し(以下「野橋オリジナル製品」とする。)、この包装には、「ゆめかんざし」なる野橋ブランドが付されており(乙12の1ないし3)、本件タグは、出荷される前に、野橋によって、野橋オリジナル製品に添付されることとなり、野橋が本件商標を使用している。
(5)口頭審理陳述要領書の内容
ア 乙第12号証が野橋の業務に係る製品であること
被請求人は、乙第12号証の4として、乙第12号証の2において表面が撮影されている本件タグの裏面の写真を提出する。
イ 野橋と被請求人との間に本件タグに関する確約書が存在していること及び本件タグの流通プロセスについて
被請求人は、乙第15号証として、被請求人と野橋との間の商品ラベルに関する取り決めを表す「商品添付物使用に関する確約書」(以下「確約書」という。)を提出する。確約書の本文中、「貴社ラベル」とは「本件タグ」を指称するものである。なお、日付は本件要証期間外である「平成16年5月10日」であるが、基本的には確約書の取り決めに則って、被請求人と野橋との取引が継続的に行われている。
さらに、この本件タグに関しては、被請求人が、印刷業者(株式会社プラン・ドウ)を介して、野橋に出荷、納品され(乙16、乙17)、最終的に、野橋が野橋オリジナル製品に付すことになる。
ウ 「商品添付物出荷依頼書」(乙11)が、野橋オリジナル製品(乙12)に係る取引書類であること
着物(襦袢を含む。)を扱う小売店舗においては、購入者が生地を選択した上で、各自のサイズに合わせて仕立て上げた上で購入者へ納品する形式の商取引が一般的であり、前記小売店舗においては、形式的には生地の状態にあっても、着物(襦袢を含む。)という商品と同一に取り扱われているのが取引の実態であるから、乙第11号証の「襦袢」の記載は、より正確に表記するとすれば「襦袢用の反物」と解釈するのが、着物取引における当事者の合理的意思に適うものである。
エ 本件商標の使用に関する新たな証拠について
(ア)野橋オリジナル製品の納品書
被請求人は、乙第18号証として、「納品書(控)」を提出するところ、野橋オリジナル製品を野橋から装いの道株式会社に納品した際の取引書類の控えであり、これらの日付はいずれも本件要証期間内である。また、「東レクライマドライ絹ちりめん」と記載されていることから、被請求人のクライマドライを使用した絽ちりめん、すなわち、野橋オリジナル製品(ゆめかんざし)に関する納品書であることがわかる。
ここで、野橋オリジナル製品は本件タグを付した状態で流通している等の取引の実態に鑑みれば、本件取引の流通過程においては、本件商標の諸機能が発揮されているものといえる。
したがって、本件通常使用権者である野橋は、本件要証期間内に、本件指定商品について本件商標を使用しているものといわなければならない。
(イ)雑誌等広告
被請求人は、乙第22号証として、月刊茶道誌「淡交」平成26年7月号における本件製品の広告の写しを提出する。乙第22号証の雑誌には本件商標が一見して確認可能であり、また、「・・・夏に重宝する新素材「クライマドライ」が登場しました。・・・」の箇所を併せて読めば、本件製品に関する広告と理解することは容易である。
また、平成20年5月28日に開催された本件製品のイベントに係る開催概要(乙24)、その資料(乙25)及び資料の展示写真(乙26)に示すとおり、被請求人は、当該イベントの開催当時から取引先や消費者に対して、本件製品の特性や利点などを広く知らしめるべく、当時から懸命な広告宣伝活動を継続的に行っている。
したがって、被請求人は、本件要証期間内に、本件指定商品について本件商標を使用するものである。
(ウ)染加工指図書
被請求人は、乙第23号証として、「染加工指図書」を提出する。乙第23号証は、被請求人より納品された生機を生地加工(染加工)するべく、染加工を行う工場に発注する際にその内容を指示するための取引書類であり、東レきものから小松精練株式会社根上第3工場に頒布したものである。
ここで、乙第23号証は、いずれも、本件要証期間内であるところ、その中で上段の「品番」欄には「7646CD」、中段の「品番」欄には「7646R」とあり、これはいずれも本件製品の品番である(なお、「CD」は加工仕上がり後の品番、「R」は生機(加工仕上がり前)の品番をそれぞれ意味する。)。また、下段には「クライマドライ加工」と本件商標が付されている。
このように、被請求人により製造された生機(半製品)は、東レきもの(小松精練株式会社根上第3工場)による染加工を経て生地が完成し、本件製品となる。そのため、本件通常使用権者である東レきものは、本件要証期間内に、乙第23号証「染加工指図書」を頒布していることから、「商品に関する取引書類に標章を付して頒布する行為」を行うものといえる。
したがって、被請求人は、要証期間内に、本件指定商品について本件商標を使用(商標法第2条第3項第8号)するものである。
(エ)小括
本件タグの表示は、結果として被請求人の業務に係る本件製品及び野橋の業務に係る野橋オリジナル製品の出所及び品質に関する宣伝広告として機能している。
したがって、被請求人は、本件要証期間内に、本件指定商品について本件商標を使用するものである。
(6)結論
本件商標が商標権者並びに本件通常使用権者らによって、本件要証期間内に、第24類「織物(「畳べり地」を除く。)」に該当する本件製品について、日本国内で継続して使用されているものであることが容易に理解できる。そのため、本件商標は、商標法第50条第1項の規定に基づいて、その登録を取り消されるべきものではなく、請求人による審判請求は理由がない。
したがって、本件商標は、商標権者及び本件通常使用権者らによって、日本国内で要証期間内において、本件製品について使用されているものである。

第4 当審の判断
1 被請求人の提出に係る証拠及びその主張によれば、以下の事実が認められる。
(1)商標権者は、合成繊維・合成樹脂等を取り扱う総合化学メーカーであり(答弁書3頁)、東レきものは、商標権者の国内関係会社として和装用織編物の仕入れ、販売を行っている(乙4)。
(2)平成26年夏に発行された雑誌「美しいきもの」(乙7)、平成26年7月1日発行の月刊茶道誌「淡交」(乙22)及び平成20年6月に開催された「2009年春夏 東レ ウィメンズ&メンズ マテリアル展」資料(乙25)によれば、商標権者は、「CLIMADRY」及び(又は)「クライマドライ」の文字を、商標権者の長襦袢地の素材を表すものとして使用している。
(3)野橋は、繊維製品の販売業者であり(乙6)、平成16年5月10日付け確約書において、商標権者の商標を表示したラベルを許諾された製品に使用すること、その使用の制限等及び当該確約書は1年ごとに延長されることを商標権者との間で確認している(乙15)。
(4)野橋は、平成24年5月9日から平成27年1月15日までに6回にわたり、東レきものに長襦袢用の「(品名)クライマドライ(品番7646)」製品を注文したことが認められるものであり(乙9)、東レきものは、上記製品を小松精練株式会社根上第3工場による染加工を経て本件製品を、野橋に納品したものと認めることができる(乙23)。
(5)そして、上記(4)の注文品名及び品番に符合する表示が認められる「商品添付物出荷依頼書」(以下「依頼書」という。)により、平成24年6月6日から平成27年3月3日までに11回にわたり、東レきものから商標権者に「(添付物の商標)クライマドライ(ラベル管理NO)0-2511」とするラベルの出荷が依頼され(乙11)、平成24年4月13日から平成27年3月11日までに13回にわたり、商標権者は、「クライマドライ(裏面修正版)ラベル 野橋株式会社 1PGB 0-2511」とするラベルを、野橋に納品したことを認めることができる(乙16、乙17)。
(6)乙第12号証の4により提出されたラベルは、その表面に「CLIMADRY」、裏面には「クライマドライ」「この製品は東レのせんいを使用しています」及び「製造・販売元」として「野橋株式会社」及び「0-2511」の表示があり(以下「本件使用ラベル」という。)、これらの表示は、上記(5)の依頼書に記載された「使用者」と「ラベル管理NO」に符合する記載が認められことから、本件使用ラベルは、上記(4)に係る野橋が使用するラベルとみることができる。
(7)野橋は、平成24年4月2日から平成27年2月26日において、「東レクライマドライ」に係る長襦袢用の反物を販売したことが認められるところ(乙18)、これらには、上記(2)のとおり、商標権者の長襦袢地の素材を表す商標と認められる「東レクライマドライ」の表示のほかに、野橋オリジナル製品を表す「ゆめかんざし」(乙13)の文字が表示されていることが認められる(以下「使用商品」という。)。
(8)以上を総合すると、使用商品は、東レきものを経由して商標権者の「クライマドライ(CLIMADRY)」に係る繊維製品を加工したものであり、また、商標権者から野橋に本件ラベルが納品されていることからすると、使用商品は、確約書における「商標権者の商標を表示したラベルを許諾された製品」に該当するといえるものであり、使用商品には、商標権者からの許諾による本件使用ラベルが付されて、平成24年4月2日から平成27年2月26日に野橋が販売したものと認めることができる。
2 判断
(1)以上の事実からすると、野橋は、本件要証期間内である平成24年4月2日から平成27年2月26日に、使用商品を販売したことが認められる。
そして、使用商品には、確約書に基づく、商標権者からの許諾された本件使用ラベルが付されているものであるところ、本件使用ラベルには、表面に「CLIMADRY」の文字が表示されているものであり、裏面に「クライマドライ」の文字が表示されているものであって、これらの表示は当該商品の取引時に同時に確認し得るものである。そうすると、本件商標は、「CLIMADRY」及び「クライマドライ」の文字を二段に書してなるものであるから、本件使用ラベルに表示された「CLIMADRY」及び「クライマドライ」の文字(以下「使用商標」という。)は、本件商標と社会通念上同一の商標と認められる。
また、本件使用ラベルを付した使用商品は「長襦袢用反物」であり、これは、本件審判請求の取消に係る指定商品中、第24類「織物(「畳べり地」を除く。)」の範疇に属する商品である。
(2)商標権者が作成し野橋に納品した本件使用ラベルは、平成16年5月10日付けの「確約書」に基づき、商標権者の商標を表示することが許諾された製品であって、野橋が販売する反物に継続して、少なくとも平成24年4月2日から平成27年2月26日まで使用されてきたものと認めることができる。
してみると、確約書等に本件商標の使用に関する定めが明示されていないとしても、商標権者は、野橋が、「商標権者の長襦袢の素材「CLIMADRY(クライマドライ)」を使用した野崎のオリジナル反物」を表示するものとして、使用商標を使用することについて黙示の許諾を与えていたものとみるのが相当であるから、野橋は、本件商標の通常使用権者であると認められる。
(3)したがって、本件商標の通常使用権者である野橋は、本件要証期間内に、本件商標と社会通念上同一と認められる商標を本件審判請求に係る指定商品中の「織物(「畳べり地」を除く。)」の範疇に属する「長襦袢用反物」に使用したものと認められる。
(4)請求人の主張
請求人は、東レきものが商標権者に本件使用ラベルを発注した「商品添付物出荷依頼書」(乙11)には、野橋は「襦袢」に製品タグを使用すると述べる一方で、野橋の製品の写真(乙12)は「ちりめん」とおぼしきものであり、また、被請求人は本件製品が「吸湿性・放湿性・吸水性・速乾性を有することを特徴とするポリエステル地の織物」であると述べているから、これらには矛盾があり、本件使用ラベルにより、本件商標が、本件審判請求に係る指定商品に使用されたとはいえないと主張するが、上述のとおり、野橋は、本件要証期間内に本件使用ラベルを付して、長襦袢用反物を販売したことを認めることができるところ、本件使用ラベルは、確約書により商標権者の本件商標に係る素材(長襦袢地)を加工した製品(反物)に付されたものである。そして、使用商品には、野橋の出所を表す「はなかんざし」の表示とともに「東レクライマドライ」の表示がされ、本件使用ラベルには、「CLIMADRY」及び「クライマドライ」の表示に加えて「この製品は東レのせんいを使用しています」及び「製造・販売元」として「野橋株式会社」と表示されていることから、本件商標は、「東レの長襦袢地の素材「CLIMADRY(クライマドライ)」を使用した野橋の反物(はなかんざし)」というように、通常使用権者である野橋のオリジナル製品の出所及び品質等を表示するものとして使用されていたものと理解することができる。
また、着物(襦袢を含む。)を扱う小売店の取引における実情から、「商品添付物出荷依頼書」に記載された「襦袢」の記載は、長襦袢地の仕立て品を表したものとみるのが相当であり、また、使用商品は、商標権者の織物の素材を東レきものが加工し、更に野橋がそのオリジナル製品として加工し、「長襦袢用反物」として販売していることからみても、「襦袢」の表示は、野橋の業務に係る長襦袢用反物を記載したものといえる。
よって、請求人の主張は採用できない。
(5)まとめ
以上のとおり、被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において,通常使用権者が本件請求に係る指定商品中「織物(「畳べり地」を除く。)」について、本件商標の使用をしていたことを証明したものである。
したがって、本件商標の登録は、本件審判の請求に係る指定商品について、商標法第50条の規定により、取り消すことができない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2016-09-27 
結審通知日 2016-09-30 
審決日 2016-10-20 
出願番号 商願2007-116056(T2007-116056) 
審決分類 T 1 32・ 1- Y (X2425)
最終処分 不成立  
特許庁審判長 今田 三男
特許庁審判官 堀内 仁子
酒井 福造
登録日 2009-03-06 
登録番号 商標登録第5212048号(T5212048) 
商標の称呼 クライマドライ、クリマドライ、クライマ、クリマ 
代理人 青木 篤 
代理人 佐藤 大輔 
代理人 藤本 正紀 
代理人 田島 壽 
代理人 橘 哲男 

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