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審決分類 審判 全部取消 商50条不使用による取り消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) 003
管理番号 1325031 
審判番号 取消2015-300126 
総通号数 207 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2017-03-31 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2015-02-23 
確定日 2017-02-06 
事件の表示 上記当事者間の登録第4063731号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第4063731号商標の商標登録は取り消す。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4063731号商標(以下「本件商標」という。)は,「ハイ・ベックドライ」の文字を横書きしてなり,平成8年3月14日に登録出願,第3類「せっけん類,洗濯用でん粉のり,洗濯用ふのり,家庭用帯電防止剤,家庭用脱脂剤,さび除去剤,染み抜きベンジン,洗濯用漂白剤,洗濯用助剤」を指定商品として,同9年10月3日に設定登録されたものである。
そして,本件商標の商標権は,商標登録原簿の記載によれば,平成24年2月15日を受付日として,「株式会社サンワード(東京都日野市)」から,「小滝悦子」に,さらに,平成27年3月6日を受付日として,「小滝哲也」に移転されている(以下,「小滝悦子」を「前権利者」,「小滝哲也」を「現権利者」という場合がある)。
そして,本件審判の請求の登録日は,同27年3月9日である。

第2 請求人の主張
請求人は,結論同旨の審決を求め,その理由を,審判事件弁駁書,口頭審理陳述要領書及び平成28年2月19日付け上申書において要旨次のとおり述べ,甲第1号証ないし甲第13号証を提出した。
1 請求の理由
本件商標は,その指定商品について,継続して3年以上日本国内において本件商標権者,専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実が存しないから,商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきものである。また,本件商標は,平成24年2月15日に前権利者に移転登録がなされているが,商標権の譲渡後に新たに不使用期間が起算されるものではないと考えられる(甲3ないし甲5)。
商標法第50条第1項に規定する審判においては,商標権の譲渡及び移転登録があった場合でも,不使用期間については,前商標権者と現商標権者を通しての期間で合算して判断されるべきである。
2 答弁に対する弁駁
(1)本件審判の請求は,取消2013-300131の審判事件(平成27年1月28日付けの審決が確定している。)とは,その審判の請求の登録前3年以内が異なるため一事不再理には該当しない。
(2)被請求人が提出した乙第2号証は,請求人が作成し,使用していたホームページであり,乙第3号証は,請求人が平成20年3月に行った製品リニューアルに係る商品の外観を示す写真であって,いずれも本件商標権者を使用主体とするものではない。
(3)取消2013-300131の審決(乙1)では,「なお,被請求人は『意匠及商標の使用中止を求める通告書』により,要証期間内である平成24年2月22日付けで,請求人に対し,それまで黙示で認めていた本件商標権の使用中止を求めた事実がある旨述べているが,要証期間は平成22年3月7日ないし同25年3月6日であるから,少なくとも該日付以前の要証期間内において,請求人は,本件商標の通常使用権者であったものと認められる。」と記載されており,この点を換言すれば,同審判事件において,請求人と前権利者との関係において「平成24年2月22日」より後の期間については,請求人が通常使用権者に該当しないと判断しているものである。
(4)本件審判においては,現権利者,前権利者及び専用使用権者による本件商標の使用事実は一切提出されていない。
3 口頭審理陳述要領書等における主張
(1)株式会社トーヨーによる商標の使用
ア 本件商標権者による株式会社トーヨーヘの通常使用権の許諾
被請求人は,本件商標権者(前権利者及び現権利者)が,株式会社トーヨー(以下「トーヨー社」という。)に本件商標権についての通常使用権を許諾したと主張している(乙4及び乙5)。
乙第4号証及び乙第5号証の覚書(以下,乙4の「覚書」を「覚書A」,乙5の「覚書」を「覚書B」という場合がある。)には,通常使用権者となる「乙」として,「東京都町田市相原町597番地246」の住所の記載と,「株式会社トーヨー」の会社名称及び代表者氏名が確認され,一方,被請求人が通常使用権者とするトーヨー社による本件商標の使用事実として提出した商品注文書葉書(乙7?乙9)では,その表面にいずれも「東京都八王子市打越町345-2-C-108」なる住所の記載と,「株式会社トーヨー」の会社名称が記載されており,その他は商品注文葉書の商標(審決注:葉書裏面の「ハイ・ベックドライ/S/スペシャル」の表示を指すと思われる。以下同じ。)の使用主体を示すような情報が一切記載されていない。
すなわち,覚書A及びBの住所表記と,商品注文書葉書の住所表記は異なるものとなっており,商品注文書葉書の商標の使用主体である「株式会社トーヨー」が,本件商標の通常使用権者である「株式会社トーヨー」であるか否かが不明であり,被請求人の主張では,主体の同一性について全く示されていない。
したがって,被請求人の主張するトーヨー社が本件商標の通常使用権者であり,通常使用権者が,本件審判の請求の登録前3年以内の間(以下「要証期間」という。)に本件商標を使用したという事実は存在しない。
なお,覚書A及びBについては,要証期間外に日付を遡らせて作成することが可能であり,平成26年9月24日及び同27年3月19日時点の存在が立証されたものではない。さらに,覚書Bが作成された同年3月19日は,本件審判の要証期間外の日付であり,トーヨー社が要証期間の通常使用権者であることを示す証拠にはなり得ない。
イ 本件商標と商品注文書葉書の商標の同一性について
商品注文書葉書には,本件商標と完全に同一の商標の存在を確認することはできない。
商品注文書葉書には,本件商標が一部に含まれる商標として,その裏面に商品名として「ハイ・ベックドライS\スペシャル」なる商標(以下「使用商標2」という。)が存在する。使用商標2は,外観上まとまりよく一体的に表されているということができ,その全体が1個の商標を構成するものと認められ,「ハイベックドライスペシャル」の称呼を生じ,また,特定の具体的観念は生じないと認められるから,本件商標と称呼及び観念において異なるものである。
そうすると,使用商標2は,本件商標と社会通念上同一と認められる商標に該当しない。
(2)現権利者による商標の使用
ア 商標の使用時期について
被請求人は乙第6号証のインターネット広告(以下「インターネット広告」という。)をもって現権利者に本件商標の使用の事実があった旨を主張している。
インターネット広告では,日付を示す情報は,(a)各頁右下の「2015/11/15」なる印刷日を示す記載,(b)被請求人が主張する第2頁目中段の「登録情報(中略)Amazon.co.jpでの取り扱い開始日:2014/11/18」の記載,(c)第3頁目の上段のカスタマーレビューの項目の「投稿者購入者投稿日2015/4/22」の記載のみである。
まず,(a)及び(c)は,いずれも本件審判の要証期間外の日付であり,インターネット広告が要証期間内のものであることを示す情報ではない。
また,(b)は,要証期間内の日付ではあるが,あくまで販売サイトにおける商品の取り扱い開始日を示す日付にすぎず,本件商標が使用されていたか,すなわち,商品の取り扱い開始日から継続的にインターネット広告に同一の内容が掲載されていたかは不明である。
そして,インターネット広告は,印刷日である「2015年11月15日時点」の広告内容であり,要証期間内のものではない。
よって,(b)の記載もインターネット広告が要証期間内のものであることを示す情報ではなく,かつ,インターネット広告は,本件商標の使用が確認できるものではない。
したがって,インターネット広告は,要証期間における使用事実を示すものではない。
イ 本件商標の使用主体について
インターネット広告には,お問い合わせ先の欄に「株式会社サンワード」の会社名称,「東京都八王子市弐分方町102番地8」の住所表記,「お客様相談室」の電話番号の情報があるのみで,本件商標の現権利者の氏名は一切記載されていないから,現権利者が商標の使用主体とは認められない。
さらに,インターネット広告の日付(上記ア(b)2014年11月18日)においての本件商標権者は前権利者であり,現権利者ではないから,インターネット広告の使用主体が現権利者であったと仮定しても,インターネット広告は,本件商標権者による商標の使用には該当しない。
また,被請求人自身が上申書で,「本件商標の現権利者が,本件商標を使用して」と主張していることから,インターネット広告の当該時期に現権利者が本件商標の通常使用権者であったとは考えられない。
したがって,インターネット広告は,要証期間における現権利者が本件商標の使用を行ったとする事実を示すものではない。
ウ 本件商標とインターネット広告の商標の同一性について
インターネット広告には,本件商標と完全に同一の商標の存在を確認することはできない。
インターネット広告には,本件商標が一部に含まれる商標として,第1頁目の上段の商品掲載写真の商品ラベルに,「ハイ・ベックドライ\S\スペシャル」なる商標(以下「使用商標1」という。)が存在する。使用商標1は,外観上まとまりよく一体的に表されているということができ,その全体が1個の商標を構成するものと認められ,「ハイベックドライスペシャル」の称呼を生じ,また特定の具体的観念は生じないと認められるから,本件商標と称呼及び観念において異なるものである。
そうすると,使用商標1は,本件商標と社会通念上同一と認められる商標に該当しない。
エ 小括
以上のとおり,インターネット広告は,要証期間における使用事実でなく,かつ,本件商標権者,専用使用権者及び通常使用権者が商標の使用主体であることを示す使用事実でない。
(3)請求人からのトーヨー社に対する通知書
乙第10号証は,請求人代理人からトーヨー社に対する通知書(以下「通知書」という。)であり,請求人とこれまでに取引のあったトーヨー社が,請求人に無断で,請求人が販売する家庭用洗剤の正規商品の名称と相紛らわしい商品名称やパッケージを用いた商品の販売を開始したために,その販売中止を求めた通知書である。
通知書には,トーヨー社による本件商標の具体的な使用に関する情報は一切なく,かかる通知書の内容をもって,商標法第50条に規定する登録商標の使用の事実であるとすることは論理の飛躍にすぎない。
したがって,通知書は,要証期間における通常使用権者が本件商標の使用を行ったとする事実を示すものではない。
(4)まとめ
以上のとおり,被請求人が本件商標の使用に該当すると主張する使用商標については,いずれも商標法50条における登録商標の使用と認められるものではないと判断されるべきである。

第3 被請求人の主張
被請求人は,本件審判の請求は成り立たない,審判費用は請求人の負担とする,との審決を求め,その理由を審判事件答弁書,同2並びに平成27年5月25日付けの回答書及び同年6月2日付け手続補正書(以下,これらをまとめて「答弁書」という場合がある。),口頭審理陳述要領書並びに平成27年12月1日付け,同28年1月8日付け及び同年2月2日付けの上申書(以下,これらをまとめて「口頭審理陳述要領書等」という場合がある。)により要旨以下のように述べ,証拠方法として乙第1号証ないし乙第14号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 答弁の理由
(1)本件商標ついては,請求人による審判請求(取消2013-300131)がされていたところ,この審判請求に対しては,結論「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決が平成27年1月28日付けにされ,すでに確定している(乙1)。
よって,本件審判の請求は,その請求の理由の意味が不明であり,理由がなく,また,一事不再理の原則にも反しており,職権により却下されるべきである。
(2)本件商標は,要証期間に,本件商標の前権利者の通常使用権者が使用した事実がある。
上記の事実を証明する証拠方法として,乙第2号証及び乙第3号証(上記取消2013-300131において特許庁に提出した証拠方法と同じ内容)を提出する。
2 口頭審理陳述要領書等における主張
(1)本件商標権者(前々権利者,前権利者及び現権利者)は,請求人に本件商標権についての通常使用権を許諾し,同社がこれに基づいて要証期間に本件商標を使用していることは,知的財産高等裁判所判決(乙11)において認められている。
(2)通常使用権者による使用について
本件商標権者(前権利者及び現権利者)は,トーヨー社に本件商標についての通常使用権を許諾しており(乙4,乙5),トーヨー社は,本件商標を,商品「洗濯用洗剤」について,要証期間に使用していた。
ア 乙第4号証は,本件商標について,前権利者が,通常使用権をトーヨー社に許諾したことを証明する「覚書」である。
イ 乙第5号証は,本件商標について,現権利者が,通常使用権をトーヨー社に許諾したことを証明する「覚書」である。
ウ 乙第7号証ないし乙第9号証は,通常使用権者であるトーヨー社による「商品注文書葉書」であって,消印により2014年(平成26年)11月26日付け,同年11月25日付け及び同年12月6日付けで本件商標が使用されている。
(ア)商品注文書葉書(乙7?乙9)は,いずれも,本件商標の通常使用権者であるトーヨー社が作成し,顧客名簿に基づき,顧客に対し,商品説明書及び購入依頼書等の文書とともに封書に入れて発送し,顧客から購入申込書として返送された葉書であって,トーヨー社の商品「洗濯用洗剤」に関する取引書類として郵便に付して頒布されたものである。
(イ)例えば,乙第9号証の葉書の表の上段には宛て名表示としての「株式会社トーヨー」の表示と,その上部の住所表示がある。この住所表示「東京都八王子市打越町345-2-C-108」は,請求人代理人がトーヨー社に宛てた内容証明郵便(乙10)の名宛住所表示と同一である。さらに,この住所表示は,トーヨー社の営業所である(乙12の1)。
乙第9号証の葉書の表の上段左には,「差出有効期間平成26年3月30日まで」の印刷表示があり,かつ,郵便局の受領印「26.12.6 12-18」があり,これは,当該葉書が平成26年12月6日に郵便局に受領されたことを示しており,これらの日付は,要証期間内である。
乙第9号証の葉書の裏の中段には,赤い太文字の片仮名で「ハイ・ベックドライ」と横一列に表示され,この「ハイ・ベックドライ」の表示は,本件商標と社会通念上同一である。上記「ハイ・ベックドライ」の表示の後には,赤い太文字の英大文字で「S」と表示されると共に,その「S」の下部に,赤い細字の片仮名で「スペシャル」の表示が付記されている。このような表示態様からも,上記「S」の表示は,上記「ハイ・ベックドライ」のスペシャル版であることを示す品質表示であって,付記的表示である。
乙第9号証中の上記「ハイ・ベックドライ」の表示の上部には,黒の細字で「ドライマークの洗剤」の商品表示があり,これは,本件商標の指定商品中「せっけん類」の範疇である。さらに,当該葉書の表の中段上部には,「ランドリー[洗濯洗剤]」と使用する商品の記載があり,この記載中「洗濯洗剤」は,本件商標の指定商品中「せっけん類」の範疇である。
(ウ)乙第7号証ないし乙第9号証により,本件商標に係る通常使用権者であるトーヨー社が,その商品「洗濯洗剤」に関する取引書類に,本件商標と社会通念上同一と認められる標章を付して要証期間において頒布していた事実が証明されており,これは,商標法第2条第3項第8号にいう「商標」の使用に該当する。
エ 乙第10号証は,請求人代理人から,通常使用権者であるトーヨー社宛の「通知書」であり,この「通知書」の記載内容からも,トーヨー社が,要証期間に,本件商標を使用していた事実がわかる。
オ トーヨー社の本店所在地は,前代表者の自宅住所と同一であり(乙12の3),同社の営業所は,東京都八王子市打越町345-2京王北野マンションC棟108号室である(乙12の1)。
(3)本件商標権者による使用について
本件商標権者は,本件商標を,商品「洗濯用洗剤」について,要証期間に使用していた。
ア 乙第6号証は,本件商標の現権利者が,本件商標を使用して,インターネットにおいて,その商品「洗濯用洗剤」について広告した広告頁の写しである。
上記広告の1/4ページ下段に「お問い合わせ先(中略)東京都八王子市弐分方町102番地8」とあるが,これは現権利者の住所である。また,上記広告2/4ページ中段に「登録情報(中略)Amazon.co.jpでの取り扱い開始日:2014/11/18」とあるが,これは上記広告が掲載された開始日であって,要証期間内である。
イ 「お問い合わせ先」の「株式会社サンワード」の住所とされているのは,現権利者の住所であって(乙13),これは,現権利者が,該株式会社サンワードの名称で本件商標を自己使用していたものである。
ウ インターネット広告の第1頁上段左には,容器の写真画像が大きく表示され,該容器添付のラベルの中間には,白で縁取られた赤い太文字の片仮名で「ハイ・ベックドライ」と横一列に表示され,この表示は,本件商標と社会通念上同一の商標の表示である。また,該容器添付のラベルの上部には「化粧品基準の原料を主成分とした洗濯洗剤」との記載があり,「洗濯洗剤」は,本件商標の指定商品中「せっけん類」の範疇である。
当該インターネット広告により,現権利者自身が承継する予定の法人名「株式会社サンワード」を名乗って(本件商標は同社から現権利者の妹の前権利者に譲渡されていたものを,さらに現権利者が譲渡を受けていたものである),その商品「洗濯洗剤」についてのインターネット広告に,本件商標と社会通念上同一と認められる標章を付して要証期間に電磁的方法により提供していた事実が証明されており,これは,商標法第2条第3項第8号にいう「商標」の使用に該当する。
エ 現権利者自身による本件商標の上記使用は,本件商標権者としての使用であり,本件商標権が前権利者名義であった期間においては,前権利者が許諾した通常使用権者としての使用である。
現権利者自身による本件商標の上記使用が本件商標権の前権利者が許諾した通常使用権に基づく使用であった事実を疎明する覚書(乙14)を提出する。

第4 審尋
合議体は,平成28年8月23日付けの審尋において,要旨以下のとおりの内容について,被請求人に審尋を送付し,その回答を求めた。
1 乙第6号証はインターネット広告とされるものであり,その問い合わせ先には,「株式会社サンワード」の表示があるところ,被請求人は,該広告は,現権利者によるものであると主張し,また,本件商標の権利者が前権利者であった期間においては,前権利者が現権利者に通常使用権を許諾し,現権利者が継承予定の法人名「株式会社サンワード」を名乗り,本件商標を使用していた旨主張しているが,該株式会社サンワードと現権利者との関係が明らかではないから,乙第6号証の広告が現権利者によるものであること,及び該法人と現権利者との関係を明らかにする書面(例えば,履歴事項全部証明書)を提出されたい。
2 被請求人は,通常使用権者であるトーヨー社が本件商標を使用している旨主張し,乙第7号証及び乙第8号証の「商品注文書葉書」を提出しているところ,これらの裏面には,商品名として「ハイ・ベックドライS」の表示があるが,該商品が,トーヨー社の業務に係るものであるか否かの確認ができない。
そして,乙第7号証及び乙第8号証の葉書には,上部に「キリトリ」の文字が記載されているので,該葉書を含む印刷物全体の内容を確認するために,該葉書部分を切り取る前の状態の印刷物を提出されたい。

第5 上記第4の審尋に対し,被請求人からは,何らの回答もなかった。

第6 当審の判断
1 現権利者による使用について
(1)乙第6号証は,Amazon.co.jpのウェブサイト(印刷日2015年11月15日)であるところ,その1/4頁の上部には,商品の写真が掲載され,その商品には,「ハイ・ベックドライ」の文字と,該文字の末尾の「ラ」と「イ」の下部の中間に「S」の文字を赤色で表示し,さらに,該「S」の文字の下部に,片仮名で「スペシャル」の文字を小さく白抜きした構成からなる商標(使用商標1)が表示されている。
そして,その商品の説明には,「ハイ・ベックドライS(スペシャル)洗剤1,000gは,お家でスーツ・ダウン・コート・カシミア等のドライマークの付いたおしゃれ着が洗える洗剤です。」の記載があり,「お問い合わせ先」として「株式会社サンワード 東京都八王子市弐分方町102番地8」の表示がある。また,その2/4頁には,「登録情報」として,「Amazon.co.jpでの取り扱い開始日:2014/11/18」の表示がある。
(2)乙第14号証は,甲を前権利者,乙を現権利者する,平成24年2月15日付けの「覚書」であるところ,「甲は,乙に対し,平成24年3月23日付けにて本件登録商標の通常使用権を許諾し,乙が本件登録商標の全指定商品について本件登録商標を今後継続して使用することを許諾し,乙はこれに同意します。」「(本件登録商標)商標登録第4063731号」及び「(商標権利者)神奈川県・・・小滝 悦子」の記載がある。
(3)上記(1)及び(2)によれば,東京都八王子市在の株式会社サンワードは,Amazon.co.jpのウェブサイト(乙6)において,取り扱い開始日を要証期間内である2014年11月18日として,使用商標1を表示した洗剤の広告を掲載したものである。
そして,使用商標1の構成中,下段の「S」の文字は,商品の記号,符号等あるいはその下部の「スペシャル」の文字と一体となって看取される場合は,特別な商品であることを理解させるものであるから,使用商標1において自他商品の識別標識として認識されるのは,「ハイ・ベックドライ」の文字部分といえる。
そうすると,使用商標1の要部である「ハイ・ベックドライ」は,「ハイ・ベックドライ」の片仮名からなる本件商標とその構成文字を同じくするものであるから,使用商標1は,本件商標と社会通念上同一の商標といえる。
被請求人は,現権利者自身による本件商標の上記使用は,本件商標権者としての使用であり,本件商標権が前権利者名義であった期間においては,前権利者が許諾した通常使用権者としての使用である旨主張している。
しかしながら,該ウェブサイトにおいて使用商標1が表示された洗剤の取り扱い開始日から印刷日までの期間において,該ウェブサイトに同じ広告か掲載されていたと推認し得るとしても,また,該ウェブサイトの取り扱い開始日時点において,現権利者が本件商標の通常使用権者であったことが認められるとしても,該株式会社サンワードと現権利者との関係が明らかでなく,合議体からの該法人と同氏との関係を明らかにする書面の提出を求める審尋に対しても何らの書面の提出もない。
そうすると,上記ウェブサイトによる広告をもって,要証期間に本件商標権者又は通常使用権者が本件商標を洗剤に関する広告に使用したことを証明したものということができない。
2 トーヨー社による使用について
(1)乙第4号証は,平成26年9月24日付けの甲を前権利者,乙をトーヨー社とする覚書であるところ,乙の住所には,「東京都町田市相模原597番地246」の記載がある。
そして,「甲は,乙に対し,平成26年9月24日付けにて本件登録商標の通常使用権を許諾し,乙が本件登録商標の全指定商品について本件登録商標を今後継続して使用することを許諾し,乙はこれに同意します。」,「(本件登録商標)商標登録第4063731号」及び「(商標権利者)神奈川県・・・小滝 悦子」の記載がある。
(2)乙第5号証は,平成27年3月19日付けの甲を現権利者,乙をトーヨー社とする覚書であるところ,乙の住所には,「東京都町田市相模原597番地246」の記載がある。
そして,「甲は,乙に対し,平成27年3月19日付けにて本件登録商標の通常使用権を許諾し,乙が本件登録商標の全指定商品について本件登録商標を今後継続して使用することを許諾し,乙はこれに同意します。」,「(本件登録商標)商標登録第4063731号」及び「(商標権利者)東京都・・・小滝 哲也」の記載がある。
(3)乙第7号証ないし乙第9号証は,商品注文書葉書であるところ,いずれの表書きにも,その宛先として,トーヨー社の名称及びその住所として「東京都八王子市打越町345-2-C-108」の表示があり,それぞれの消印には「14.11.26」,「14.11.25」及び「26.12.6」の表示がある。
そして,その裏面には,それぞれ最上部に「ハイ・ベック 特別会員樣用注文書」(乙7),「ハイ・ベック お得意様用注文書」(乙8)及び「販売店 トリプルホワイト会員様用注文書」(乙9)の表示があり,いずれにも「ハイ・ベックSシリーズ」及び「ドライS」の項目がある。
乙第7号証の「ハイ・ベックSシリーズ」の項には,「商品名」の欄に「ドライマークの洗剤(1,000g)/ハイ・ベックS/スペシャル」及び「高級仕上げ剤 ハードタイプ(1,000g)/ハイ・ベックE/エマルジョン」の表示があり,それぞれ「数量」の欄に「1」の記載があり,「ドライS」の項には「商品名」の欄に「ドライマークの洗剤(1,000g)/ハイ・ベックドライS/スペシャル(「スペシャル」の文字は,「S」の文字の下部に小さく表示されている。以下同じ。)」の表示があり,「数量」の欄に「1」の記載がある。
また,乙第8号証の「ドライS」の項には「商品名」の欄に「ドライマークの洗剤(1,000g)/ハイ・ベックドライS/スペシャル」の表示があり,「数量」の欄に「6」の記載がある。
そして,乙第9号証の「ドライS」の項には「商品名」の欄に「ドライマークの洗剤(1,000g)/ハイ・ベックドライS/スペシャル」の表示があるが,「数量」の欄に数字の記載は無い。
(4)乙第12号証の1は,トーヨー社を借主とする「建物賃貸借契約書」であり,賃貸借の対象物の名称及び所在地には,「京王北野マンション 1階-C棟108号室」,「東京都八王子市打越町345-2」の記載がある。また,その第1条には,使用目的として「・・・販売所及び事務所としてのみ使用し他の用途に使用してはならない。」と記載され,第2条には,賃貸借の期間として「賃貸借契約期間は平成26年2月1日より平成29年1月31日迄の3年間とする。」と記載されている。
乙第12号証の2は,トーヨー社の履歴事項全部証明書であり,本店の住所には「東京都町田市相原町597番地246」の記載がある。
(5)上記(1)ないし(4)からすれば,トーヨー社は,「建物賃貸借契約書」(乙12の1)及び「履歴事項全部証明書」(乙12の2)によれば,上記(1)及び(2)の覚書に記載のトーヨー社の住所は,該法人の本店の住所であり,商品注文書葉書に表示されている住所は,トーヨー社の販売所又は事務所と認められるから,トーヨー社は,本件商標の通常使用権者とみて差し支えないものである。
通常使用権者であるトーヨー社は,「ハイ・ベックSシリーズ」及び「ドライS」の洗剤を取り扱っており(乙7ないし乙9),商品注文書葉書(乙7及び乙8)によれば,トーヨー社に対して,要証期間である2014年(平成26年)11月26日及び同年11月25日に,「ハイ・ベックSシリーズ」及び「ドライS」の洗剤についての注文があったことが認められ,少なくとも,上記日付の前に,当該商品注文書葉書の頒布を推認することができる 。
そして,商品注文書葉書(乙7及び乙8)の裏面には,「ドライS」の「商品名」の欄に「ハイ・ベックドライS/スペシャル」の表示があるところ,これは,「ドライS」の「商品名」の欄に,注文の対象となる商品名を記載したものであって,注文書の個々の商品を特定するための記載といえ,該表示をもって取引書類に標章を付したとはいえないものである。
その他,乙第7号証及び乙第8号証において,本件商標(社会通念上同一と認められる商標を含む。)と認め得る表示は見あたらない。
なお,被請求人は,商品注文書葉書(乙7?乙9)は,いずれも,本件商標の通常使用権者であるトーヨー社が作成し,顧客名簿に基づき,顧客に対し,商品説明書及び購入依頼書等の文書とともに封書に入れて発送し,顧客から購入申込書として返送された葉書であって,トーヨー社の商品「洗濯用洗剤」に関する取引書類として郵便に付して頒布されたものである旨,及び葉書の裏の中段には,赤い太文字の片仮名で「ハイ・ベックドライ」と横一列に表示され,この「ハイ・ベックドライ」の表示は,本件商標と社会通念上同一である旨主張する。
しかしながら,上記商品説明書及び購入依頼書等の文書の提出はなく,本件商標の使用について,さらに確認するための,該葉書部分を切り取る前の状態の印刷物の提出を求める審尋に対して何らの書面の提出もない。
したがって,本件商標の通常使用権者が,要証期間内に本件商標と社会通念上同一の商標を,その請求に係る指定商品に含まれる「洗剤」の取引書類に付して使用したものということができない。
3 その他の使用について
被請求人は,乙第2号証及び乙第3号証を提出し,要証期間に,本件商標の前権利者の通常使用権者が使用した事実がある旨主張している。
しかしながら,乙第2号証は,「株式会社サンワード(熊本県熊本市)」のウェブサイトであって,包装容器に「ハイ・ベック」及び「ドライ」の文字を2段に表示した商品が掲載されているものであり,また,乙第3号証は,包装容器に「ハイ・ベック」及び「ドライ」の文字を2段に表示した乙第2号証の商品と同一の商品と認められる「洗濯用合成洗剤」の写真であるところ,該写真には,「製造元」として「株式会社サンワード(東京都武蔵村山市)」の表示があるが,上記乙第2号証及び乙第3号証の「株式会社サンワード」が,要証期間において本件商標の通常使用権者であったことを証する書面は提出されていない。
4 被請求人の主張について
被請求人は,「本件商標については,本件審判の要証期間内である取消2013-300131号審判の要証期間内において,本件商標の通常使用権者である請求人が使用していた事実が,認定,判断されて確定しており,本件審判の請求は,一事不再理の原則にも反しており,職権により却下される
べきである」旨主張する。
しかしながら,取消2013-300131の審判の請求と本件審判の請求とは,「商標権取消し審判の予告登録」が,それぞれ平成25年3月7日と同27年3月9日であり,商標法第50条第2項が規定する「その審判の請求の登録前三年以内」の対象とすべき期間が異なるものであるから,本件審判の請求は,一事不再理というような事情には該当しない。
よって,被請求人の主張は,採用することができない。
5 まとめ
以上のとおり,被請求人の提出に係る証拠からは,本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において,本件商標権者,専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが,その指定商品のいずれかについて,本件商標を使用していることを証明したものということができない。また,被請求人は,その指定商品について本件商標を使用していないことについて正当な理由があることも明らかにしていない。
したがって,本件商標の登録は,商標法第50条の規定により,取り消すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
審理終結日 2016-12-05 
結審通知日 2016-12-07 
審決日 2016-12-20 
出願番号 商願平8-26940 
審決分類 T 1 31・ 1- Z (003)
最終処分 成立  
前審関与審査官 伊藤 三男大島 勉 
特許庁審判長 土井 敬子
特許庁審判官 中束 としえ
田中 亨子
登録日 1997-10-03 
登録番号 商標登録第4063731号(T4063731) 
商標の称呼 ハイベックドライ、ハイベック、ベックドライ、ベック 
代理人 遠藤 聡子 
代理人 森田 靖之 
代理人 梶原 圭太 
代理人 有吉 修一朗 
代理人 西村 教光 
代理人 笠原 克美 

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