ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 全部申立て 登録を維持 W091214 審判 全部申立て 登録を維持 W091214 審判 全部申立て 登録を維持 W091214 |
---|---|
管理番号 | 1323758 |
異議申立番号 | 異議2016-900195 |
総通号数 | 206 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標決定公報 |
発行日 | 2017-02-24 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2016-07-22 |
確定日 | 2017-01-19 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 登録第5842107号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 登録第5842107号商標の商標登録を維持する。 |
理由 |
第1 本件商標 本件登録第5842107号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成からなり、平成27年6月26日に登録出願、同28年1月27日に登録査定、第9類「電気通信機械器具,コンピュータ周辺機器,マウス(コンピュータ周辺機器),コンピュータ用メモリー,電子出版物,携帯電話機,トランシーバー,ヘッドホーン,写真機器用ケース,救命用具,眼鏡」、第12類「自動車並びに自動車の部品及び付属品,タイヤ又はチューブの修繕用ゴムはり付け片並びにその部品及び附属品,調理用自動車,バス,自動車・二輪自動車用推進装置,乗物用座席,オートバイ,自転車用スタンド,自転車用空気ポンプ,乳母車,航空機・自動車・二輪自動車・自転車用タイヤ,チューブ修理用具」及び第14類「貴金属,身飾品,宝石及びその原石ならびに宝石の模造品,貴金属製宝石箱,ブレスレット,鎖用宝飾品,貴金属製造形品,ネックレス,宝飾品,貴金属製箱,腕時計,時計」を指定商品として、同年4月15日に設定登録されたものである。 第2 登録異議の申立ての理由 本件登録異議申立人(以下「申立人」という。)は、本件商標は商標法第4条第1項第1号、同第7号及び同第16号に該当するから、同法第43条の2第1号により、その登録は取り消されるべきであると申立て、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第16号証を提出した。 1 申立人について 申立人は、1982年にスイス時計製造業者の連盟とスイス時計商工会議所が合併し、現在の組織となり、現在に至るまで150年近くにわたり、スイス国の時計産業全体及び会員の利益保護を促進するために活動している。申立人である協会には、腕時計、構成部品等の生産および販売に従事するスイス企業の90%以上、約500社が会員として加入している。 申立人は、スイス国のビエンヌに本部を置き、東京、香港、ラテンアメリカに情報センターを有している。東京センターは日本において、スイス国の時計産業に関する広報活動、スイス法令についての啓蒙活動等を行っている(甲2)。 申立人は、スイス法である「商標及び原産地表示の保護に関する連邦法(Federal Law on the Protection of Trademarks and Indications of Source)」の第56条に基づき、スイス国の国益を代表して、「Switzerland」及び「Swiss」の表示の違法な使用行為を取り締まることを、その重要な任務とされており、かかる使用行為に対して、訴訟を提起する権限を付与されている。申立人はスイス国より付与された上記任務及び権限に基づき、スイス国の国益を代表して本件異議申立を行うものである。 2 商標第4条第1項第1号について 本件商標は、別掲1のとおりの構成からなるところ、本件商標に接した取引者、消費者は「黒の背景と十字の部分」からスイスの国旗を想起するものである。本件商標は黒白であるが、スイス国旗を想起しない取引者、消費者はいないものと思料する。 商標法第70条において、第25条等における「登録商標」には、登録商標に類似する商標であって、色彩を登録商標と同一にするものとすれば登録商標と同一の商標であると認められるものを含むと規定されている。いわゆる「色違い商標」について商標権の保護が及ぶものである。 本件商標においても「黒の背景と十字の部分」の色違い商標である「赤の背景で白地の十字」にも商標権の保護が及ぶことになる。 実際に本件商標の商標権者(以下「商標権者」という。)は、甲第3号証のような態様で商標を使用している。 商標権者による使用態様からも明らかのように本件商標は、黒の背景は丸みを帯びた下が狭くなる台形ではあるが、隔離的観察を行えば、四角形とほとんど異なるところはなく、スイスの国旗と類似の商標であり、商標法第4条第1項第1号により商標登録を受けることができない商標である。 また、商標権者は本件と同様の態様の登録商標第5867843号において、拒絶理由通知に応じて指定商品を「スイス製」と補正を行っていることからも本件商標の「黒の背景と十字の部分」はスイスの国旗を表わすものであるということができる(甲7)。 以上のとおり、本件商標は、スイス国旗とその外観が類似するものというべきであって、本件商標は商標法第4条第1項第1号に該当するものであることは明らかである。 3 商標第4条第1項第16号について 本件商標は、上記2で述べたようにスイスの国旗を想起するものであり、スイス製以外の指定商品に本件商標が使用された場合、取引者、消費者は指定商品がスイス製であると品質について誤認混同するものである。 特に「時計」について、「スイス製」であることは特別な意味を持つものである。申立人が行った「腕時計に関する消費者意識調査2016」において、「スイスが時計王国であること」の認知度は86.7%と高いものであり、また、スイス製の時計は日本において「高級品」「長い歴史を持つ」「高いブランド力」などの評価を得てきている(甲8)。 このように、時計について「スイス製」であることは、品質の証であって、このようなスイス製時計に対する信頼はスイス国の法令を定めるなどして築かれたものである。 本件商標は「SWISS」の文字こそないが、「黒の背景と十字の部分」がスイス国旗を連想、想起させ、指定商品特に「スイス製以外の時計、スイス法令に準拠しない腕時計」に使用されたとき、取引者、需要者に品質について誤認が生ずるおそれがあるといわざるを得ない。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第16号に違反して登録されたものである。 4 商標第4条第1項第7号について (1)不正競争防止法第16条第1項は外国の国旗等の商業上の使用を禁ずるものである。本件商標は、スイス国旗と類似するものである。 商標権者は、甲第10号証のような態様でも使用をしている。 かかる使用はスイス国旗の商業上の使用に該当するおそれがある。本件商標及びその色違い商標を商業上使用することは不正競争防止法第16条第1項に反するものと思われる。 (2)不当景品類及び不当表示防止法(以下「景品表示法」という。)第4条第1項第3号(不当な表示の禁止)は不当な表示を禁止する規定である。 景品表示法の運用基準において、衣料品の表示に関する運用細則に、国産の衣料品について、不当な表示の該当例が記載されている(甲11)。 本件商標は、景品表示法の「商品の原産国に関する不当な表示」に該当するおそれがある。 (3)指定商品「時計」に本件商標を登録することはスイス国の国益を大きく害するものものであり、国際信義に反し、公序良俗を害するおそれがある。 スイスの時計産業界はスイス製であることをブランドとして維持する努力が古くから行われている(甲12)。 スイス国は、「ウォッチに対して『Switzerland』又は『Swiss』の称呼を適用する基準を規定する法令」(以下「スイス法令」という。)を制定している(甲13)。 このような規定があることは日本の時計産業界においても周知であり、時計についてのウェブサイト等においてかかるスイス法令の条件等が記載されていることからも明らかである(甲14)。 さらに、スイス議会において「Swissness(スイスらしさ)」という用語により、製品又はサービスのより正確な地理的起源を明らかにできるようにする新基準を導入する「商標及び原産地表示の保護に関する連邦法」が改正され、2017年1月1日より施行される(甲15)。 このように「時計」について、スイスでは国を挙げてスイス製の時計のブランドの維持に心血を注いでおり、日本において「スイス製の時計」に対する高い信頼が確立されている。 なお、知的財産高等裁判所において、登録商標が国際信義に反することを理由として商標法第4条第1項第7号該当すると判断した判決がある(甲16:知財高等平成18年9月20日判決、平成17年(行ケ)第10349号)。 以上のとおり、スイス国旗を構成要素とする本件商標は、商標法第4条第1項第7号の商標に該当するものである。 第3 当審の判断 1 商標法第4条第1項第1号該当性について (1)国旗における色彩について 申立人が引用する、スイス国の国旗は、別掲2のとおり、赤色の矩形内に、白十字を配してなるものである。 なお、国旗における、色彩の表示は、例えば、我が国における「国旗及び国家に関する法律」の別記第1の2、「彩色」において、「地 白色」及び「日章 紅色」と規定がされていること。さらに、外国の国旗における三色旗の場合には、色彩の違いにより、別の国の国旗を表すことになることから、国旗における色彩は、国旗を表示する重要な要素というべきである。 (2)本件商標とスイス国の国旗の類似性について 本件商標は、別掲1のとおり、丸みのある下底が短い台形を灰色で配し、その中に、該台形の3分の2程の大きさで、さらに下底の短い台形を黒色で配し、その中に、十字図形を、外側の灰色と同じ色で配した構成からなるものである。 そうすると、特徴のある二つの台形を組み合わせた図形内に、十字図形を、黒色と灰色で表されてなる当該図形は、具体的に何を表したか直ちに認識し得ないものであり、国旗における色彩の重要性をあわせ鑑みれば、これから、スイス国の国旗を連想、想起するものとはいえないものである。 (3)小括 本件商標は、上記(2)のとおり、二つの台形を組み合わせた図形内に、十字図形を配した図形を黒色と灰色で表してなる構成からなり、スイス国の国旗は、赤色の矩形内に、白十字を配した構成からなるものであるから、その構成態様は明らかに異なるものであり、両者は、外観上、相紛れるおそれのないものである。 そうすると、本件商標は、外国の国旗と同一又は類似の商標ということはできない。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第1号に該当しない。 2 商標法第4条第1項第7号該当性について 本件商標は、前記1(2)のとおり、二つの台形を組み合わせた図形内に、十字図形を配した図形を黒色と灰色で表してなる構成からなるところ、これより、スイスの国旗を連想、想起するものとはいえないから、特定の国又は国民を侮蔑する商標とはいえず、国際信義に反しているとはいえないものであって、他に、本件商標の出願の経緯が著しく社会的な妥当性を欠くなどの公序良俗に反するものというべき事情も見いだせない。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当しない。 3 商標法第4条第1項第16号該当性について 本件商標は、前記1(2)のとおり、二つの台形を組み合わせた図形内に、十字図形を配した図形を黒色と灰色で表してなる構成からなるところ、スイスの国旗を連想、想起するものとはいえないものである。 また、本件商標は、その構成中に、スイス国を連想させる「SWISS」、「スイス」等の文字がないことからも、これを本件商標の指定商品に使用しても、その商品がスイス製であるかのごとく、商品の品質の誤認を生じさせるおそれはないものである。 他に、本件商標をその指定商品に使用した場合、その商品の品質について誤認が生じるとする事情は見いだせない。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第16号に該当しない。 4 申立人の主張について (1)申立人は、過去の審査例及び審決例を挙げて、本件商標も同様に商標法第4条第1項第1号及び同第16号に該当する旨、主張する。 しかしながら、申立人が挙げる審査審決例は、商標の構成中に「SWISS」及び「Swiss」の文字を含むものであり、該文字に対して、商品の品質の誤認が生じるおそれがあるとして、商標法第4条第1項第16号に該当すると判断されたものとみるのが相当であるから、該「SWISS」及び「Swiss」の文字を含まない本件商標とは、その事案を異にするものである。 (2)申立人は、スイス国は、スイス法令等を規定するなど、国を挙げて、スイス製時計のブランドの保護を行っており、本件商標を時計に使用した場合には、スイス国の国益を害することになるから、商標法第4条第1項第7号に該当する旨、主張する。 しかしながら、申立人の提出するスイス法令は、「Switzerland」、「Swiss」、「Swiss Product」、「Manufactured in Switzerland」及び「Swiss quality」等の表示、また、「Swiss」、「Switzerland」の文字を含みスイス製であることを意味するような表示並びに「Swiss movement」及び「Swiss」等の文字と「style」、「type」、「form」等の文字との組合せの表示について、規定されたものであり、国旗の使用について規定されているものといえないばかりか、本件商標は、前記2のとおり、二つの台形を組み合わせた図形内に、十字図形を配した図形を黒色と灰色で表してなる構成であって、スイスの国旗を連想、想起するものとはいえないものである。 (3)申立人は、商標第70条において、「登録商標」には、登録商標と類似する商標であって、色彩を登録商標と同一にするものとすれば登録商標と同一の商標であると認められるものを含むと規定されているから、本件商標においても、色違いの「赤の背景で白地の十字」にも商標権の保護が及ぶから本件商標は、スイス国の国旗を表したものと認識される旨、主張する。 しかしながら、商標第70条の規定により、本件商標の効力がいわゆる「色違い商標」にまで及ぶか否かということと、本件商標からスイス国旗を連想、想起するか否かとは、全く別の判断事項であり、該条文を引用して述べる請求人の主張は、失当といわざるを得ない。 以上、申立人の主張は、いずれも採用することはできない。 5 まとめ 以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第1号、同第7号及び同第16号に違反してされたものではないから、同法第43条の3第4項の規定により、その登録を維持すべきである。 よって、結論のとおり決定する。 |
別掲 |
別掲 1 本件商標 2 申立人が引用するスイス国の国旗 |
異議決定日 | 2017-01-10 |
出願番号 | 商願2015-61101(T2015-61101) |
審決分類 |
T
1
651・
272-
Y
(W091214)
T 1 651・ 22- Y (W091214) T 1 651・ 21- Y (W091214) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 石塚 利恵 |
特許庁審判長 |
山田 正樹 |
特許庁審判官 |
大井手 正雄 榎本 政実 |
登録日 | 2016-04-15 |
登録番号 | 商標登録第5842107号(T5842107) |
権利者 | 厦門市斯巴特進出口有限公司 |
代理人 | 橋本 千賀子 |
代理人 | 大谷 寛 |
代理人 | 塚田 美佳子 |