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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W3043
審判 全部申立て  登録を維持 W3043
管理番号 1322485 
異議申立番号 異議2015-900096 
総通号数 205 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2017-01-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2015-03-24 
確定日 2016-10-31 
異議申立件数
事件の表示 登録第5729436号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第5729436号商標の商標登録を維持する。
理由 第1 本件商標
本件登録第5729436号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成からなるものであって、平成24年11月26日に登録出願、第30類「天然又は人工の氷,アイスクリーム,飲食物冷却用氷,シャーベット,フローズンヨーグルト,氷菓,かき氷,カキ氷菓子,氷柱(ミルクかき氷,台湾かき氷),フルーツを使った氷菓子,ミルク入り氷菓,練乳を使用した氷菓,果汁を加えた乳酸菌飲料を主材とする氷菓,氷砂糖,氷菓子」及び第43類「バーにおける飲食物の提供,喫茶店における飲食物の提供,カフェテリアにおける飲食物の提供,レストランにおける飲食物の提供,セルフサービス式レストランにおける飲食物の提供,軽食堂における飲食物の提供」を指定商品及び指定役務として、同26年11月10日に登録査定、同年12月26日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が本件登録異議の申立てに引用する商標は、以下のとおりの38件の商標である(なお、申立人は、これらを「『MONSTER』ファミリー商標」と称している。)。
そして、以下の1ないし38に係る商標は、商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、設定登録されたものであり、現に有効に存続しているものである(これらの商標については、以下、「1 登録第5393681号商標」を「引用商標1」、「2 登録第5057229号商標」を「引用商標2」のように、引用商標の後に数字を付けて表示し、これらの商標をまとめていうときは、「引用商標」という場合がある。)。
また、以下の商標のうち、文字のみからなる商標は、いずれも標準文字からなるものである。
1 登録第5393681号商標:「MONSTER ENERGY」
2 登録第5057229号商標:別掲2のとおり
3 国際登録第1048069号商標:別掲3のとおり
4 登録第5010968号商標:「M MONSTER ENERGY」5 登録第5394526号商標:別掲4のとおり
6 登録第5442171号商標:「MONSTER ENERGY PINK」
7 登録第5417815号商標:「MONSTER ENERGY AGENT ORANGE」
8 登録第5379390号商標:「MONSTER」
9 登録第5527566号商標:「MONSTER DETOX」
10 登録第5476620号商標:「MONSTER REHAB」
11 登録第5490798号商標:「MONSTER RECOVERY」
12 登録第5497766号商標:「MONSTER UNLEADED」
13 登録第5451361号商標:「MONSTER PUMPED」
14 登録第5480373号商標:「MONSTER BIOACTIVATED」
15 登録第5527567号商標:「MONSTER REHABITUATE」
16 登録第5495941号商標:「MONSTER KHAOS ENERGY + JUICE」
17 登録第5417769号商標:「MONSTER REDUCED CARB」
18 登録第5417770号商標:「MONSTER LO-CARB」19 登録第5375090号商標:「PROTEIN MONSTER」20 登録第5327467号商標:「MUSCLE MONSTER」
21 登録第5409580号商標:「MONSTER RIPPER」
22 登録第5409582号商標:「MONSTER BLACK」
23 登録第5419507号商標:「MONSTER DOUBLE BLACK」
24 登録第5409583号商標:「MONSTER GIRL」
25 登録第5542584号商標:「MONSTER CUBA-LIMA」
26 登録第5043703号商標:「JAVA MONSTER」
27 登録第5431412号商標:「JAVA MONSTER」
28 登録第5562023号商標:「JAVA MONSTER GREEN BEANS」
29 登録第5423080号商標:「LOCA MOCA JAVA MONSTER」
30 登録第5630446号商標:「KONA CAPPUCCINO M JAVA MONSTER」
31 登録第5389881号商標:「X-PRESSO MONSTER」
32 登録第5590215号商標:「JUICE MONSTER」
33 登録第5730813号商標:別掲5のとおり
34 登録第5689430号商標:別掲6のとおり
35 登録第5613400号商標:「MONSTER THRILLER」
36 登録第5644852号商標:「KONA CAPPUCCINO M JAVA MONSTER」
37 登録第5644854号商標:「MONSTER SUPERNATURAL」
38 登録第5757485号商標:「COFFEE MONSTER」

第3 登録異議の申立て理由
申立人は、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第15号及び同第7号に違反してされたものであるから、同法第43条の2第1号により、取り消されるべきであると申し立て、その理由を要旨次のように述べ、その証拠方法として、甲第1号証ないし甲第214号証(枝番を含む。)を提出した。
1 「MONSTER」ファミリー商標の著名性
(1)会社沿革及び取り扱い商品
申立人は、1930年代に創業した米国の飲料メーカーであり、アルコールを含有しない飲料等の企画、開発、製造、マーケティング、販売の事業に従事している(甲2、甲58の宣誓供述書の段落3)。
(2)「MONSTER ENERGY」ブランド創設と「MONSTER」ファミリー商標
申立人は、2002年(平成14年)にエナジードリンクの新ブランド「MONSTER ENERGY」(引用商標1)を創設し、米国で同年3月から広告宣伝を開始し、同年4月から製造販売を開始した(甲4、甲7、甲18、甲58の宣誓供述書の段落8?12、同証拠物件RCS-2)。
この「MONSTER ENERGY」のオリジナル版のエナジードリンク製品は、従来の清涼飲料製品の容器とは異なる黒色ベースのボトル缶にモンスターの爪痕を象った「M」のロゴマークと「MONSTER」の文字を太字で目立つように表示した野性味あふれる独特な雰囲気が経済・ビジネス界でも注目を浴び(甲56、甲57、甲58の宣誓供述書の証拠物件RCS-2)、男性若者層を中心に、たちまち人気商品となった。
申立人の「MONSTER ENERGY」ブランドの各種エナジードリンク(以下「申立人商品」という。)には、2002年(平成14年)の発売開始以降、現在まで継続して、「MONSTER ENERGY」をはじめ、「MONSTER」と他の語又は文字を組み合わせてなる構成を共通点とする多数の「MONSTER」ファミリー商標が個別商品名として使用されており(甲58の宣誓供述書の段落11)、そのボトル缶には、「MONSTER」の文字が太字で顕著に表示されている(甲11?甲16、甲58の宣誓供述書のRCS-2及び3)。
(3)広告・マーケティング・販売促進活動
申立人は、2002年(平成14年)から現在まで、全世界における申立人商品に関する広告、マーケティング及び販売促進活動費として総額21億米ドルを超える費用を支出した(甲58の宣誓供述書の段落24)。その販売促進活動の主な内容は、世界の有名アスリート・レーシングチーム及び競技会、アマチュア選手、音楽祭及びミュージシャン、並びに米国ラスベガスの公共機関モノレールに対する支援活動(スポンサー提供)、並びに販売店用什器及び備品の供給である(甲34?甲45、甲52、甲53、甲56、甲57、甲58の宣誓供述書の段落25?119、135?138、同証拠物件RCS-9?31、38?45)。
上記スポンサー提供活動においては、スポーツ競技会などのイベント会場施設の看板、旗、垂れ幕、ブース、什器類、移動車、スタッフの衣装やユニフォーム、スポンサー契約アスリートやレーシングチームが着用するユニフォーム・ヘルメット・帽子・手袋・スポーツ用具・車体等、申立人がイベント関連ニュースを配信するニューズレター、ビデオクリップ、ラスベガスのモノレールの車体や関連広告物などに、「MONSTER ENERGY」の名称、特徴的なレタリング文字で表示した「MONSTER」の文字、モンスターの爪痕を象徴する「M」のロゴマーク、あるいは「MONSTER ENERGY」の文字と「M」のロゴを一体的に表した「M MONSTER ENERGY」のブランドロゴ(例えば、引用商標2、3、33及び34の態様)の商標が表示されている(以下、これらの商標の複数または全部について言及する場合は「MONSTERブランドマーク」という。)。
(4)国内における販売及び販売促進活動
日本国内では申立人商品の販売は、アサヒ飲料株式会社を通じて行われている。2012年(平成24年)3月15日付のニュースリリースでアサヒ飲料株式会社が国内独占販売権取得を公表し、2種類の申立人商品「MONSTER ENERGY」及び「MONSTER KHAOS」の発売を発表、同年5月8日から実際の販売が開始している(甲5?甲7)。当該商品は、2012年(平成24年)5月8日の発売後、日本国内でもたちまち人気となり、同年9月時点で既に年間売上目標の100万箱を突破し(甲8)、その後も好調に売上を伸ばして157万箱の売上を記録した(甲9)。さらに、2013年(平成25年)5月7日からは同ブランドの新製品として糖質ゼロ・カロリーゼロの申立人商品「MONSTER ABSOLUTELY ZERO」も発売されている(甲10)。
これら3種の申立人商品は、日本全国のコンビニエンスストア、自動販売機、キオスク、スーパーマーケット、列車の売店、会員制スーパー、店舗、ゲームセンター、ドラッグストア及びホームセンター等の販売小売店のほか(甲58の宣誓供述書の段落18)、アサヒ飲料の通販サイトからも直接購入可能である(甲11?甲17)。また、大手ネットショッピングサイトのアマゾンジャパンなどでは日本未発売の輸入品販売も取り扱われている(甲33)。
また、2012年(平成24年)5月の国内発売直後から、継続的にテレビコマーシャル放映、日本開催の多数のスポーツイベント等へのスポンサー提供、サンプル配布などを含む大々的な広告・販売促進活動が実施されている(甲58の宣誓供述書の段落22、23、30?34、同RCS-4?8)。
(5)全世界の販売国・地域及び販売額
申立人は、現在までに全世界100以上の国及び地域で、1種類以上の申立人商品を販売し、又は販売中である。販売額は、2002年(平成14年)に米国で販売開始以来、90億缶以上販売し、世界中で毎年15億缶以上を売上げ、世界中で合計170億米ドルを超える収益を上げており、全世界での小売販売額は毎年40億米ドルを超える(甲58の宣誓供述書の段落14及び15)。
日本における申立人商品の販売数量は、2012年4月の販売開始から2013年3月までの約2年間の期間において、約5,500万缶を売り上げ、総販売額は4,900万米ドル以上、日本円で40億円以上にのぼる。(甲58の宣誓供述書の段落18)
(6)アパレル製品、ビデオ製品等の販売
申立人は、2002年から現在まで、MONSTERブランドマークを付したアパレル製品等の製造販売をライセンスしており、多数のライセンシーを通じて現在、日本及びアジア全域、オーストラリア、米国、カナダ、中央アメリカ、南米、ヨーロッパ、アイスランド、スカンジナビア及びメキシコを含む世界各地で販売中である。また、MONSTERブランドマークのステッカーや転写シールも製造販売されており、モンスターアーミー(申立人が支援育成するアマチュア選手)の登録会員、スポンサー提供するアスリートやイベントの観客・ファンに配布されている。(甲58の宣誓供述書の段落126?130)。
このようなMONSTERブランドマークが付された被服、運動用特殊衣服、運動用ヘルメット、ステッカー、リュックサック等はインターネットの通信販売業者により、日本国内でも輸入販売されており(甲47及び甲48)、一般消費者の人気も高い。
また、申立人は、ビデオゲーム制作販売会社とも提携し、申立人がスポンサーを務めるカーレーサー等がMONSTERブランドマークを付したウエア等を着用し、レーシングカーを使用して登場する複数のビデオゲーム製品なども商品化しており、日本でも購入可能である(甲58の宣誓供述書の段落139、140、同証拠物件RCS-46)。
(7)ウェブサイト・ソーシャルメディアによる情報発信及びアクセス数等
申立人商品の商品情報、スポンサー契約アスリート・チーム及びスポーツ等のイベントに関する情報、アスリート等の大会成績や記録情報、「MONSTER ENERGY」のアパレル及びアクセサリー類に関する商品情報や販売などが、申立人が開設運営する複数のウェブサイト及びソーシャルメディアサイトを介して日本を含む全世界の需要者に対して発信されており、日本を含む多数の需要者からのアクセス数がある(甲58の宣誓供述書の段落120?125、同証拠物件RCS-32?35)。
(8)経済界等からの表彰等
申立人商品の開発、導入の成功に急成長を遂げた申立人会社の業績は、本件商標が登録出願される遙か以前から、経済界でも高く評価され、数々の表彰を受けている(甲58の宣誓供述書の段落3、131、同証拠物件RCS-37)。
(9)国内外における商標登録によるブランド保護
申立人商品、並びにアパレル製品、アクセサリー類、その他の関連グッズには、モンスターの爪痕を象った「M」の文字のロゴマーク、並びに「MONSTER ENERGY」の文字(引用商標1)、「MONSTER」の文字(引用商標8)、「M」のロゴマークと「MONSTER ENERGY」の文字を一体化した「M MONSTER ENERGY」のロゴマーク(引用商標2、3、33、34)が使用されているほか、「MONSTER」と他の語や文字を結合した様々な結合商標(引用商標4?7、9?32、35?38)が使用されており、これら全体で「MONSTER」ファミリー商標を形成している。「MONSTER」ファミリー商標は、世界100以上の国及び地域で商標登録・出願済みである。(甲58の宣誓供述書の段落7)
(10)国内における申立人アパレル製品等の人気と模倣品の水際取締り
申立人のライセンシーの製造販売に係るMONSTERブランドマークを付した帽子、Tシャツ、スウェットシャツ、レーシングジャケット、手袋等のアパレル製品、オートバイ、車、サーフボード、スノーボードなどに貼付することができるステッカー(シール)などは、日本の国内でも、輸入販売されており、モトクロス、F1その他の自動車レース、スノーボード、サーフィン、エックススポーツ等のスポーツ愛好家を含む一般消費者の間で人気の高い商品となっている。
このような国内市場におけるMONSTERブランドマークの人気、周知性の高まりに便乗して、申立人の商標権を侵害するアパレル製品、ステッカー等の模倣品が海外で製造され、申立人の商標権侵害物品として、日本の税関で輸入が差止められる案件が増加している(甲59?甲74、甲108?甲123、甲143?甲156)。
(11)国内スポーツイベント等の開催と広告宣伝活動の概要
申立人は、申立人の主催又は協賛による国内開催のスポーツイベント等及び関連のプロモーションキャンペーン(甲157?甲164)、国内向けホームページ掲載のスポーツイベント情報(甲165?甲170)、プロモーションキャンペーン(甲171?甲175)にMONSTERブランドマークを使用している。
(12)申立人ライセンシーの製造販売に係る関連グッズの販売状況
申立人の「M」のロゴマーク又はこれを包含した「M MONSTER ENERGY」のロゴマークを付したアパレル製品(ジャケット、帽子、Tシャツ、バックパック、ランニングシャツ)、サーフボード、ヘルメット、時計、傘、ステッカー等のライセンス製品(甲176?甲184)が販売されている。
以上の事実に照らせば、申立人の「MONSTER」ファミリー商標は、本件商標の登録出願日の遙か以前より、申立人の業務に係る商品を表示するものとして、米国をはじめとする外国で広く認識されていただけにとどまらず、本件商標の登録出願時及び登録査定時には、日本国内の需要者の間でも申立人の業務に係る商品を表示するものとして広く認識されていたことが明らかである。
2 本件商標が商標法第4条第1項第15号に該当する理由
本件商標の指定商品は、一般に、おやつ、食後のデザート、ティータイムのお茶うけ菓子等として日常で消費される飲食料品であり、申立人が、「MONSTER」ファミリー商標を使用しているエナジードリンク製品、並びに引用商標1、引用商標2、引用商標4?引用商標32、及び引用商標35?引用商標38の指定商品に係る飲料製品と製造業者、販売場所、原材料、用途、効能、需要者の範囲が一致ないし重複する類似の商品というべきものである。
本件商標の指定役務は、飲食物の提供として把握される役務であり、飲料製品の提供を含む。当該役務が、申立人商品等の飲料製品の製造販売業者と同一の事業者によって提供されることは一般的であり、当該役務と当該商品の用途、その提供場所と販売場所、並びに需要者の範囲も一致するから、本件商標の指定役務は申立人が取り扱う飲料製品と類似する。
本件商標は、黒塗りの四角形の中に太字の英文字で横書きした「ICE」の文字を白抜きで表示した図形を左に配置し、当該英文字と異なる書体の太字の英文字で横書きした「MONSTER」の文字を中央に配置し、細い輪郭線で描かれた立方体風の図形に目、鼻、口髭、口、両手、両足及び3本の毛髪と思しきものを付した図柄を右に配置してなるものである。当該構成全体が常に一体的な識別標識として認識理解されるものとはいえず、また、「ICE」の文字部分は本件商標の指定商品及び指定役務の品質(質)を記述するものにすぎず識別力を欠くから、「MONSTER」の文字部分が独立して出所識別標識として取引に資される。
よって、本件商標からは、「MONSTER」の文字部分に基づき、商品及び役務の出所識別標識としての「モンスター」の称呼及び「モンスター」の観念が生じる。
また、本件商標は、構成中に「MONSTER」の文字を包含し、「モンスター」の観念を直観させる点において、「MONSTER ENERGY」をはじめとする構成中に「MONSTER」の文字を有してなる申立人の「MONSTER」ファミリー商標の特長を備えている。
本件商標の登録出願時には、申立人の使用に係る「MONSTER」ファミリー商標は、日本国内及び米国を含む多くの外国において申立人の業務に係る商品を表示するものとして本件商標の指定商品及び指定役務の分野の需要者の間で広く認識されていた。
したがって、本件商標がその指定商品及び指定役務に使用された場合は、これに接した需要者は、本件商標の構成中の「MONSTER」の文字部分に着目して、「モンスター」の観念を直観し、申立人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間で広く認識されている「MONSTER」ファミリー商標を想起連想することにより、本件商標を当該「MONSTER」ファミリー商標のひとつであると誤信し、あるいはまた、本件商標を使用した商品及び役務が、申立人又は申立人と経済的又は組織的関係を有する者(例えば、「MONSTER」ファミリー商標の使用許諾を受けたライセンシー)の取り扱いに係るものであると誤信し、その出所について混同を生じるおそれが高いことが明らかである。
そして、本件商標がその指定商品及び指定役務に使用された場合は、2002年(平成14年)から現在に至る申立人による継続的使用と営業努力によって申立人の商品出所識別標識として広く認識されるに至ったMONSTERブランドマークを含む「MONSTER」ファミリー商標の強力な出所表示力が希釈化することが明らかである。また、本件商標権者による本件商標の使用は、申立人が「MONSTER」ファミリー商標について獲得した信用力、顧客吸引力にフリーライドする行為といわざるを得ない。
したがって、本件商標は商標法第4条第1項第15号に該当する。
3 本件商標が商標法第4条第1項7号に該当する理由
本件商標は、「MONSTER」と他の文字等を結合させた構成からなり、「モンスター」の観念を直観させる点において、その登録出願時に申立人の業務に係る商品を表示するものとして日本国内及び米国その他の外国で広く認識されている「MONSTER ENERGY」をはじめとする「MONSTER」ファミリー商標の構成と一致する。また、本件商標の指定商品及び指定役務は、申立人が「MONSTER」ファミリー商標を付して製造販売している申立人商品と類似のものである。
本件商標の使用は、「MONSTER」ファミリー商標が獲得した信用力、顧客吸引力にフリーライドするものといわざるを得ず、申立人に経済的及び精神的損害を与える。
したがって、本件商標は、社会一般道徳及び公正な取引秩序の維持を旨とする商標法の精神並びに国際信義に反するものであり、公の秩序を害するおそれがあるから、商標法第4条第1項第7号に該当する。

第4 当審の判断
1 引用商標の周知性について
(1)申立人は、2002年(平成14年)に、米国において、申立人商品の販売を開始した(甲7、甲8、甲10等)。
また、上記申立人商品には、別掲2、3及び6のとおりの構成からなる引用商標2、引用商標3及び引用商標34と、色彩の点を除けば実質的に同一の構成からなる、例えば、甲第12号証のように、容器(主として缶)全体を黒く塗り、缶の側面の正面に当たる部分に、図案化し、緑色を施した「m」の文字を基調としたと思しき図形(以下「『m』図形」という。飲料の種類により色が相違する。)を大きく表示し、その下に、図案化した「MONSTER」の文字を白抜きで横書きし、さらにその下に、「ENERGY」の文字を、「MONSTER」の文字に比べ、かなり小さく横書きしてなる構成の商標(以下「使用商標」という。)を表示しており、その使用商標に加えて、あるいは、使用商標の構成中の「ENERGY」の文字部分に代えて、「KHAOS」、「JAVA」、「ABSOLUTELY ZERO」、「SUPER DRY」、「EXTRA STRENGTH」、「ANTI GRAVITY」、「BLACK ICE」、「Rehab」、「Baller’s Blend」、「Mad Dog」、「MUSCLE」、「M-80」等の文字を表示したものもある(甲6?甲8、甲10、甲11、甲13?甲17、甲19?甲33、甲58の証拠物件RCS-3)。
(2)申立人は、2002年(平成14年)から現在まで、使用商標を使用した申立人商品に関し、全世界での広告、マーケティング及び販売促進活動費として、総額21億米ドル以上を支出している。販売促進活動の主な内容は、様々なスポーツ分野で活動する世界の有名アスリート・レーシングチーム及び競技会、アマチュア選手、音楽祭及びミュージシャン、並びに米国ラスベガスの公共機関モノレール等に対する支援活動(スポンサー提供)、販売店用什器・備品の供給等であり、スポーツ分野では、モトクロスライダー、スケートボーダー、オートバイライダー、カーレーサー、カワサキオートバイのレーシングチーム等に対する支援活動(スポンサー提供)がある。
上記支援活動は、スポンサー提供を受けるアスリートのホームページやブログ、経済ビジネス誌、報道ニュース、スポーツファンのホームページ等を通じて、日本国内の一般消費者にも発信され紹介されている(甲34?甲45、甲49、甲51?甲53、甲56、甲57号、甲58の宣誓供述書の段落25?117、同証拠物件RCS-9?31)。
また、ラスベガスの公共交通機関モノレール支援活動では、車両にMONSTERブランドマークを付したモンスター列車が走行し、多くの人々が乗車したことがマスメディア等で報道された(甲49、甲50、甲第58の宣誓供述書の段落135?137、同証拠物件RCS-37?40)。
さらに、申立人は、使用商標等を付したアパレル製品の製造販売をライセンスしており、多数のライセンシーを通じて、現在、日本及びアジア全域、オーストラリア、米国、カナダ、中央アメリカ、南米、ヨーロッパ、アイスランド、スカンジナビア及びメキシコを含む世界各地で販売しており、インターネットの通信販売業者により日本国内でも輸入販売されている(甲47、甲48、甲58の宣誓供述書の段落126?128、同証拠物件RCS-36)。
しかしながら、上記スポンサー提供を受けるアスリートやチームが着用又は使用するウェア、レーシングスーツ、帽子、レーシングヘルメット、レーシングカー、オートバイ、サーフボード等及びアパレル製品には、使用商標や「m」図形が表示されているが、「MONSTER」の文字のみからなる標章はほとんど見当たらない。
(3)申立人商品の開発・導入の成功により急成長を遂げた申立人の業績は、経済界でも注目され、本件商標の登録出願前には、既に「Forbes」、「FORTUNE」、「BusinessWeek」、「Newsweek」、「TIME」、「BeverageWorld」等の経済ビジネス誌において紹介されている(甲49、甲51?甲57)。
しかしながら、これらの雑誌は、全て英文によるものであり、かつ、米国において発行されたものであって、これら雑誌に掲載された記事内容が我が国において紹介されたのかは明らかにされていない。しかも、掲載記事では、「Monster Energy」と一連で表記されているものがほとんどである。
(4)日本国内では、アサヒ飲料株式会社が申立人商品の独占販売権を取得し、同社は、2012年(平成24年)5月8日から2種類の申立人商品(「MONSTER ENERGY」及び「MONSTER KHAOS」)を発売、その販売は、同年の9月には年間売上目標の100万箱を突破し、販売目標を120万箱に上方修正したことが発表された(甲7、甲8)。その後も売上を伸ばして157万箱の売上を記録した(甲9)。さらに、2013年(平成25年)5月7日には、「MONSTER ENERGY ABSOLUTELY ZERO」、2014(平成26年)年8月19日には「MONSTER ENERGY M3」及び同年10月7日には「COFFEE MONSTER」も新発売され、上記5種類のエナジードリンクが、アサヒ飲料株式会社の通販サイト、ネットショッピングのアマゾンで購入することができる(甲10?甲17、甲33、甲124?甲127、甲137)。
申立人は、2012年4月の販売開始から2013年3月までの期間、日本国内で約5,500万缶、40億円以上の申立人商品を販売した(甲58の宣誓供述書の段落18)。
申立人は、申立人商品の国内販売の開始直後から本件商標の登録出願の前まで、発売を記念するイベントを行ったほか、各種イベントのスポンサー提供を介して広告宣伝を行った。例えば、2012年(平成24年)5月17日から2ヶ月間にわたり50万缶のサンプルを路上配布した(甲58の宣誓供述書の段落22)ほか、同年6月2日及び3日には渋谷における路上発表会で4万缶のサンプルを配布、同年7月には晴海フェリーターミナルにおけるパンクロックフェスティバルで5,500缶のサンプルの配布、同月に愛知県田原海岸におけるサーフィン大会で4,500缶のサンプルの配布、同年10月18日から28日まで各地で行われたスケートボード競技会のスポンサー提供などを行った(甲58の宣誓供述書の段落30、31、34b?34e)。
しかしながら、上記イベントの参加者やサンプルの配布の対象者は、一部の若者が中心であるばかりでなく、証拠物件RCS-4ないし8に示す写真によれば、使用商標や「m」図形が使用されているものの、そのほかに、「MONSTER」の文字のみからなる標章は見当たらず、写真の撮影時期は必ずしも明らかでない。
他に、本件商標の登録出願前に、使用商標を使用した申立人商品について、新聞、雑誌、テレビ等のマスメディアにおいて宣伝広告された事実を示す証拠はない。
(5)上記(1)?(4)を総合勘案すると、本件商標の登録出願時及び登録査定時には、使用商標が、申立人の業務に係る商品「エナジードリンク」(エネルギー補給飲料)を表示する商標として、米国における取引者、需要者の間に広く認識されていたといえるとしても、我が国においては、市場参入から本件商標の出願日までは日が浅く、また、宣伝広告も限られた範囲のものである。さらに、申立人は、「国内で約5,500万缶の『MONSTER ENERGY』ブランドのエナジードリンクを販売した。上記期間の販売総額は、4,900万米ドル以上、日本円で40億円以上である。」旨述べるが、それを証する書面の提出がないばかりか、販売シェアについて、確認することができない。
そして、色彩の点を除けば実質的に使用商標と同一の構成からなる引用商標(引用商標2、引用商標3及び引用商標34)以外の引用商標についての使用例は、ほとんど見当たらない。
また、使用商標等を付した申立人のアパレル製品が、インターネットを通じた通信販売により取引されている事実があるとしても、その販売の開始時期・売上数・販売額を述べるのみで、販売シェア等を示す証拠等の提出がないものである。
さらに、使用商標は、「m」図形と「MONSTER ENERGY」の文字を一体に表した商標、一連の「MONSTER ENERGY」、あるいは、「m」図形として認識されているというべきであり、「MONSTER」の文字のみをもって、申立人又は申立人の業務に係る商品を表すものとして広く知られていたと認めるに足りる証拠の提出はない。
以上のことから、引用商標及び使用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時に、申立人商品を表示する商標として、我が国の取引者、需要者の間に広く認識されていたとまでいうことはできない。
2 商標法第4条第1項第15号該当性について
(1)本件商標と使用商標の類否について
ア 本件商標は、別掲1に示したとおり、黒塗りの矩形に「ICE」の欧文字を白抜きで表示し、その右側に「MONSTER」の欧文字を横書きし、さらにその右側に、直方体を擬人化した図形を配したものである。そして、その構成中の「ICE」及び「MONSTER」の文字部分は、「ICE」の文字部分が白抜きで、「MONSTER」の文字部分が黒色で書されていることから、「ICE」と「MONSTER」の2語より構成されるものと認識されるとしても、これらの文字は、同じ書体、同じ大きさで、まとまりよく一体的に表されているばかりでなく、構成文字全体から生じる「アイスモンスター」の称呼も無理なく一連に称呼し得るものである。さらに、本件商標は、その構成中の「ICE」の文字が、「氷」の意味を有する語であり、また、「MONTER」の文字が、「怪物、モンスター」の意味を有する語であって、いずれも我が国において親しまれている平易な英語であるから、「氷の怪物」程の意味合いを容易に理解させるものである。
そうすると、本件商標の文字部分は、外観上、構成文字全体を一体のものとして看取され、しかも、「アイスモンスター」の一連の称呼と「氷の怪物」という一連の観念のみを生じるものというべきであって、殊更に「MONSTER」の文字部分のみを分離抽出して観察すべき格別の理由はないものといわなければならない。
イ 使用商標は、別掲2、3及び6のとおりの構成からなる引用商標2、引用商標3及び引用商標34と、色彩の点を除けば実質的に同一の構成からなり、「m」図形を大きく表示し、その下に、図案化した「MONSTER」の文字を白抜きで横書きし、さらにその下に、「ENERGY」の文字を、「MONSTER」の文字に比べ、かなり小さく横書きしてなるものである。
そして、使用商標は、その構成及び態様に徴すれば、中央上方に大きく顕
著に描かれた「m」図形と、その下部に表された図案化した「MONSTER」及び「ENERGY」の文字部分とは、常に不可分一体のものとして認識されるとみるべき格別な事情は見当たらず、その図形部分と文字部分がそれぞれ独立して、その商品の出所の識別標識として認識される場合もあるとみるのが自然といえる。そして、使用商標は、読み易い文字部分を捉え、該文字部分より生じる称呼及び観念をもって取引に資される場合が少なくないというべきである。
そうすると、使用商標からは、「モンスターエナジー」及び「モンスター」の称呼が生じるとみるのが相当であり、「怪物のエネルギー」及び「怪物」の観念が生じるものである。
ウ そこで、本件商標と使用商標とを比較すると、外観においては、上記構成からなる本件商標と使用商標は、それぞれ全体の構成に照らし、判然と区別し得る差異を有するものである。
次に、称呼においては、本件商標から生じる「アイスモンスター」の称呼と、使用商標から生じる「モンスターエナジー」及び「モンスター」の称呼は、構成音数や、構成音に明らかな差異があり、それぞれを一連に称呼するときは、全体の音感、音調が著しく相違し、容易に聴別し得るものである。
さらに、観念においては、本件商標から生じる「氷の怪物」と、使用商標から生じる「怪物のエネルギー」及び「怪物」の観念とは、相紛れるおそれがないこと明らかである。
してみれば、本件商標と使用商標とは、外観、称呼及び観念のいずれの点においても、相紛れるおそれのない非類似の商標であって、取引者、需要者が誤認するおそれがあるということはできないものである。
(2)本件商標と引用商標との類否について
本件商標は、その外観、称呼及び観念は上記(1)アのとおりである。
他方、引用商標は、「MONSTER」の文字と「KHAOS」、「ABSOLUTELY ZERO」、「JAVA」、「Rehab」等の文字とを結合してなるものであって、それぞれ「モンスター」の称呼のほか、結合する各文字に相応した「モンスターカオス」、「モンスターアブソリュートリーゼロ」、「モンスタージャバ」、「モンスターリハブ」等の称呼を生じるものであり、それぞれの文字に相応した観念を生じるか又は、特定の観念を生じないものである。
そして、本件商標と引用商標を比較してみるに、観念においては比較できない場合があるとしても、外観においては、本件商標と引用商標とは、それぞれ全体の構成に照らし、判然と区別し得る差異を有するものであり、称呼においては、構成音数や、構成音に明らかな差異があり、容易に聴別し得るものである。
そうすると、本件商標と引用商標とは、その外観、称呼及び観念のいずれの点においても、類似するものとはいえず、相紛れるおそれのない非類似の商標とみるのが相当である。
(3)商品の出所の混同のおそれについて
上記1のとおり、引用商標及び使用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る商品を表示するものとして、我が国の取引者、需要者の間に広く認識されていたとはいえないものであり、また、上記(1)及び(2)のとおり本件商標は、使用商標及び引用商標とは相紛れるおそれない非類似の商標である。
そうすると、本件商標は、その指定商品に使用した場合、これに接する取引者、需要者が、使用商標及び引用商標や申立人を連想、想起するとは考え難く、該商品が申立人又は同人と経済的、組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかの如く、その商品の出所について混同を生じるおそれがあるということはできない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
3 本件商標の商標法第4条第1項第7号該当性について
本件商標は、上記2(1)及び(2)のとおり、使用商標及び引用商標とは、非類似の商標であり、取引者、需要者が、使用商標及び引用商標や申立人を連想、想起するとはいえないものである。
そして、申立人は、本件商標が、使用商標及び引用商標の顧客吸引力にフリーライドするものであるとか、使用商標及び引用商標を剽窃したものであるなどといった社会的妥当性を欠く事情を具体的に明らかにするところはない。
そうすると、本件商標の登録出願の経緯に著しく社会的妥当性を欠くというべき事情があるものと認めることはできない。
また、本件商標は、上記2(1)アのとおりの構成よりなるものであるから、その構成が、きょう激、卑わい、差別的若しくは他人に不快な印象を与えるような文字よりなるということもできない。
その他、本件商標が、「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標標」とみるべき理由があると認めるに足りる証拠の提出はない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当しない。
4 むすび
以上のとおり、本件商標は、本件登録異議の申立てに係る指定商品及び指定役務について、商標法第4条第1項第15号及び同第7号のいずれにも違反して登録されたものではないから、同法第43条の3第4項の規定に基づき、その登録を維持すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
別掲 別掲1(本件商標)



別掲2(引用商標2)



別掲3(引用商標3)



別掲4(引用商標5)



別掲5(引用商標33)



別掲6(引用商標34)



異議決定日 2016-10-21 
出願番号 商願2012-95538(T2012-95538) 
審決分類 T 1 651・ 271- Y (W3043)
T 1 651・ 22- Y (W3043)
最終処分 維持  
前審関与審査官 齋藤 貴博清川 恵子北口 雄基大澤 恒介 
特許庁審判長 山田 正樹
特許庁審判官 大井手 正雄
中束 としえ
登録日 2014-12-26 
登録番号 商標登録第5729436号(T5729436) 
権利者 ロー,クンーホア
商標の称呼 アイスモンスター、モンスター 
代理人 中熊 眞由美 
代理人 佐久間 剛 
代理人 柳田 征史 
代理人 三浦 光康 

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