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審決分類 |
審判 全部申立て 登録を維持 W091635 審判 全部申立て 登録を維持 W091635 |
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管理番号 | 1321429 |
異議申立番号 | 異議2016-900038 |
総通号数 | 204 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標決定公報 |
発行日 | 2016-12-22 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2016-02-15 |
確定日 | 2016-10-16 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 登録第5805321号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 登録第5805321号商標の商標登録を維持する。 |
理由 |
第1 本件商標 本件登録第5805321号商標(以下「本件商標」という。)は、「ノブズディスク」の片仮名を標準文字により表してなり、平成27年4月7日に登録出願、第9類「レコード,インターネットを利用して受信し、及び保存することができる音楽ファイル,インターネットを利用して受信し、及び保存することができる画像ファイル,録画済みビデオディスク及びビデオテープ,電子出版物」、第16類「印刷物,紙製包装用容器,プラスチック製包装用袋,紙製のぼり,紙製旗,文房具類,写真,写真立て」及び第35類「楽器及びレコードの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」を指定商品及び指定役務として、同年8月4日に登録査定、同年11月13日に設定登録されたものである。 第2 引用商標 登録異議申立人(以下「申立人」という。)が、本件登録異議の申立ての理由として引用する登録商標は、以下の2件であり、いずれも現に有効に存続しているものである(以下、これらをまとめていうときは「引用商標」という。)。 1 登録第4301358号商標 登録第4301358号商標(以下「引用商標1」という。)は、「NOBU」の欧文字を横書きしてなり、平成8年5月21日に登録出願、第42類「飲食物の提供」を指定役務として、同11年8月6日に設定登録されたものである。 2 登録第4304180号商標 登録第4304180号商標(以下「引用商標2」という。)は、別掲のとおりの構成からなり、平成10年5月8日に登録出願、第42類「飲食物の提供」を指定役務として、同11年8月13日に設定登録されたものである。 第3 登録異議の申立ての理由 申立人は、本件商標は、商標法第4条第1項第8号及び同第15号に該当するから、同法第43条の2第1号により、その登録は取り消されるべきであると申立て、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第59号証を提出した。 1 商標法第4条第1項第8号について 申立人の松久信幸は、1949年に埼玉県で生まれ、1987年にビバリーヒルズでレストラン「MATSUHISA」(マツヒサ)をオープンし、1993年にニューヨークでレストラン「NOBU(NOBU New York City)」を俳優ロバート・デ・ニーロとの共同経営により開店し、現在では世界各国で約40軒のレストランを展開する、日本を代表する料理人である。 本件商標は、申立人の著名な略称「ノブ」を一部に含む商標である。 2 商標法第4条第1項第15号について 引用商標に係る「NOBU」、又は、その片仮名表記である「ノブ」の文字からなる商標は、申立人の商標として広く一般に知られているので(甲7ないし甲59)、これと同一の文字構成に係る「ノブ」の文字を構成中に含む本件商標がその指定商品・役務に使用された場合、商品の出所について混同を生ずるおそれがある。 3 具体的理由 (1)申立人の提供する役務について使用される「NOBU」又は「ノブ」の周知・著名性、並びに、「ノブ」が申立人の愛称(略称)として広く知られている事実について 申立人は、埼玉県で生まれ、東京の寿司屋で修業をした後、24歳で単身ペルーに渡り、寿司屋を経営した。その後、1987年にビバリーヒルズ、ラシエネガ通りにレストラン「MATSUHISA」を開店した。日本料理に、西洋、また南米料理のエッセンスを取り入れたことで注目され、ハリウッドのセレブたちがこぞって来店し、彼らを魅了した。 常連客のアメリカ合衆国の俳優、ロバート・デ・ニーロ氏の誘いに応え、1993年に、同氏との共同経営という形でレストラン「NOBU New York City」をオープンした(甲7ないし甲14)。 2000年10月にはデザイナーのジョルジオ・アルマーニ氏とパートナーシップを組み、イタリア・ミラノに「NOBU Milan」をオープン。さらに、ロンドン・ギリシャ・ダラス・バハマ・オーストラリア・東京・香港・ハワイ・モスクワ・ケープタウン(南アフリカ)、ブタペスト、クアラルンプールと店舗を出店した(甲15ないし甲20)。 我が国においては、1998年、東京・六本木通り沿いの南青山6丁目に「NOBU TOKYO」を開店し(甲21ないし甲23)、2007年1月に新たな店舗「ノブ トウキョウ in 虎ノ門」を東京・虎ノ門にオープンした(甲24)。 また、申立人は、他業種とのコラボレーションも積極的に進めた。 2002年には新潟県の酒造会社と契約し、数々の新聞記事で取り上げられた(甲25ないし甲29)。2015年4月に申立人の推奨する商品の紹介のため、滋賀県を訪れ、滋賀県知事による同県産食材のプロモーションを受けたことも話題となった(甲30及び甲31) さらに、申立人は、同年11月に佐賀県にあるデザイン事務所とともに、有田焼のブランド力強化・プロモーションのため、地元の窯元と共同で、プロの料理人向けの食器シリーズとして「アリタ×ノブ」シリーズを展開した(甲32及び甲33)。 申立人は、俳優ロバート・デ・ニーロ氏と共同で、ホテル事業にも乗り出した。2012年にラスベガスでオープンし(甲34ないし甲36)、2店目はフィリピンのマニラにオープンした(甲37及び甲38)。 申立人は、その人物像が注目を集め、数多くの新聞記事で取り上げられた(甲39ないし甲51)。 また、全米ベストシェフ10人(Food & Wine紙)に選ばれ(甲52)、「グローバルジャパニーズ」として雑誌で紹介された(甲53)。2002年にはアメリカで「最高のシェフ賞」にノミネートされ、功労賞を得た(甲54ないし甲56)。 申立人は、2001年にアメリカの経済紙フォーブスが選ぶ世界著名人番付で100位にランクされ(甲57)、翌年には99位にランクされた(甲58及び甲59)。 以上のとおり、引用商標は、本件商標の出願時である平成27年(2015)4月7日時はもちろんのこと、登録査定時である平成27年(2015)8月4日当時においても、申立人の業務に係る商品を表示するものとして、既に日本国内において周知・著名であったものと確信する。 上記証拠に係る各新聞・雑誌記事、インターネットでは、申立人の経営するレストランにおいて「NOBU」の文字が使用され、これに接する需要者・取引者からもこれらレストランは「NOBU」又は「ノブ」として親しまれている実情にある(甲7ないし甲58)。 また、申立人は世界で著名な日本人の一人であるところ、申立人は「ノブ」の愛称で呼ばれており、例えば、「日本人シェフのノブこと松久信幸氏」(甲16)、「日本食シェフの第一人者ノブ・マツヒサ」(甲28)、「日本人シェフ『ノブ』のホテル」(甲34)、「なぜノブさんのファンになったのですか。」(甲38)、「米国在住のノブ松久さん」(甲39)、「多くの職人がノブさんの店の門をたたき、」(甲40)、「ノブさん(松久信幸さん。)」(甲42)、「世界からNOBUと呼ばれている松久信幸さんとは?」、「NOBU(ノブ)の愛称で世界中のセレブから愛されているシェフ・松久信幸さん」(甲46)、「NOBUこと、松久信幸さん」(甲49)、「シェフの松久信幸(ノブ・マツヒサ)氏」(甲51)、「世界のノブ」(甲55)のような記載が認められる。 以上の証拠より、申立人は、「ノブ」の愛称で呼ばれ、その事実が我が国において広く知られるに至っているものと考えられる。 (2)商標法第4条第1項第8号について 本件商標の構成中には「ノブ」の文字が含まれてなるところ、これは世界的に有名なシェフである申立人の著名な略称(愛称)「ノブ」を指称するものである。 よって、本件商標は商標法第4条第1項第8号に該当する。 (3)商標法第4条第1項第15号について 本件商標の構成中に含まれること明らかな「ノブ」の文字は、申立人の提供する役務を表示するものとして周知・著名な商標「NOBU」又は「ノブ」(甲7ないし甲58)と実質的に同一のものである。 本件商標「ノブズディスク」は一種の造語であるところ、「ノブズ」が「ノブ」と呼ばれる人物の所有格を表し、「ディスク」が円盤を意味するところ、本件商標の指定商品・指定役務との関係では、「レコード・コンパクトディスク・ビデオディスク」の観念が生じるから、例えば、「ノブが選んだコンパクトディスク」「ノブが販売するコンパクトディスク」等の観念が生じるものであり、その意味において構成中の「ノブ」の文字がそれ単体で独立して自他商品・役務の識別標識としての機能を果たすとみられる。 よって、引用商標に係る「NOBU」とは彼此紛れるおそれがあるといわざるを得ない。 申立人は、レストラン業とは他業種である、ホテル業への多角的事業展開を行うとともに(甲34ないし甲38)、酒造業、陶磁器製造業を営む他の会社との協業(コラボレーション)で、各種商品の企画・製造・販売の事業への広がりを見せている(甲25ないし甲33)。よって、申立人による、将来的な多角的事業展開の一環から、本件商標が使用される商品・役務である音楽等の販売事業における新規事業の可能性が全くないとはいい得ないものである。 そして、申立人が世界的に著名な人物であることから、申立人の提供する料理は「ノブ フード」(甲24)、「NOBU スタイル」(甲43及び甲46)と呼ばれ、申立人と他社による前記コラボレーション商品についても「NOBU」、「アリタ×ノブ」などと、あくまでも、「ノブこと松久信幸」がほれ込んだ商品、申立人が商品の企画・開発から関わった商品であることを明示するために「NOBU」又は「ノブ」の文字をその名前に一部に使用しているものである。 このような取引の事情のもと、申立人とは他人で、かつ、何らの経済的・組織的関連を有しない者により、「ノブ」の文字を一部に含む本件商標を、その指定商品・指定役務に使用された場合、あたかも申立人(又はライセンシー)である「ノブ」こと申立人とコラボレーションして企画・開発された商品及び役務、あるいは「『ノブ』こと松久信幸が選んだコンパクトディスク」であるかの如く、あるいは、申立人と何らかの経済的・組織的関連がある者の提供に係る商品であるかの如く、商品の出所について誤認・混同を生じさせるおそれがある。 よって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。 4 むすび 以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第8号及び同第15号に該当するから、同法第43条の2第1号により取り消されるべきものである。 第4 当審の判断 1 申立人の提供する役務及び引用商標の使用状況について 証拠及び申立ての全趣旨によれば以下のことが確認できる。 (1)申立人による米国への日本料理レストランの出店 埼玉県出身の申立人は、1987年に米国カリフォルニア州のビバリーヒルズで、日本料理レストラン「MATSUHISA」を開店したこと。その後、同店の常連客であるアメリカ合衆国の俳優、ロバート・デ・ニーロ氏の誘いに応え、1993年に、同氏との共同経営という形でレストラン「NOBU New York City」をオープンしたこと(甲7ないし甲14)。 (2)世界各都市への出店 申立人は、その後、日本料理レストラン「NOBU」をロンドン、ロサンゼルス、ラスベガス、香港、ハワイ、モスクワ、ケープターン、ブダベスト、クアランプールなど世界の主要21都市に出店していること(なお、申立人は、現在では世界各国で約40軒のレストランを展開との主張もしている。)。 そして、申立人が、日本料理のレストランに使用している商標「NOBU」には、「NOBU」以外に、「ノブ・ワイキキ(Nobu Waikiki)」(甲16)、「NOBUレストラン ケープタウン」(甲18)など、出店した都市名が冠されているものがある(甲15ないし甲20)。 (3)我が国における出店 我が国においては、1998年、東京の南青山6丁目に「NOBU TOKYO」を開店し(甲21ないし甲23)、2007年1月に新たな店舗を東京・虎ノ門にオープンしている(甲24)。 (4)他業種とのコラボレーション等 申立人は、2002年に新潟県の酒造会社と契約して欧米向けの日本酒「NOBU」を商品化し(甲25ないし甲29)、2015年4月には、滋賀県知事による同県産食材のプロモーションを受け(甲30及び甲31)、同年11月に佐賀県にあるデザイン事務所とともに、有田焼のブランド「アリタ×ノブ」シリーズを展開している(甲32及び甲33号証)。 また、申立人は、俳優ロバート・デ・ニーロ氏と共同で、ホテル事業にも乗り出し、2012年にラスベガスでオープンし(甲34ないし甲36)、2店目はフィリピンのマニラにオープンしている(甲37及び甲38)。 2 引用商標の周知著名性について 上記1によれば、引用商標は、米国及びロンドン、香港、モスクワ、ケープターン、ブダベスト、クアランプールなどの世界の主要都市において、役務「飲食物の提供」に使用されて、当該の地域において一定程度知られているといえるとしても、提出された甲各号証に示されている新聞等における記事掲載の回数及び内容によっては、引用商標は、我が国において、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、広く知られている状態に至っているとまではいうことはできないと判断するのが相当である。 また、申立人が東京南青山のレストランで使用していた引用商標や、東京虎ノ門のレストランで使用している引用商標についての、甲各号証で示されている新聞等における記事掲載の回数及び内容によっては、引用商標が、我が国において、使用された結果、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、役務「飲食物の提供」の需要者間において広く知られて周知性を獲得しているということはできないというべきである。 3 申立人の略称について (1)申立人が提出した甲各号証について 申立人は、「松久信幸は『ノブ』の愛称で呼ばれている」として、甲各号証を提出しているところ、申立人が提出した甲各号証(我が国で配信されている新聞・週刊誌。ウェブ記事情報。)からは、以下のことが確認できる。 ア 甲第16号証には、「日本人シェフのノブこと松久信幸氏の新店舗『ノブ・ワイキキ(Nobu Waikiki)』が・・・グランドオープン」との記事が掲載されているところ、ここにおける「ノブ」の語は、申立人の職業である料理のシェフないし同人が営業するレストランとの関連で、同人を「ノブ」と称しているものである。 イ 甲第28号証には、インタビュー記事において、「日本食シェフの第一人者ノブ・マツヒサ」との記事が掲載されているところ、ここにおける「ノブ」の語は、申立人のことを英語風に「ノブ・マツヒサ」と表記して使用しているのであって、申立人が単に「ノブ」と称されていることを示すものではない。 ウ 甲第34号証には、「有名日本人シェフ『ノブ』のホテル、ラスベガスに来年1月オープン」との見出しによる記事が掲載されているところ、ここにおける「ノブ」の語は、申立人の職業である料理のシェフないし同人がオープンする予定のホテルとの関連で、同人を「ノブ」と称しているものである。 エ 甲第38号証には、「デ・ニーロが語るNOBUホテルの魅力」との見出しのもと、記事の最後に、「ミスター・デ・ニーロはなぜノブさんのファンになったのですか。」との編集部の質問に対してデニーロ氏は「28年前にロサンゼルスのマツヒサで出会って、彼の料理のファンになり、ニューヨークで店をやろうと誘ったんだ。・・・彼はすばらしいシェフで、僕にとってベリースペシャルな人だよ。」と答えている。ここにおける「ノブさん」の語は、申立人の職業である料理のシェフないし同人が営業するレストランとの関連で、同人を「ノブさん」と称して質問しているものである。 オ 甲第39号証には、「米国在住のノブ松久さん」との記事が掲載されているところ、ここにおける「ノブ」の語は、レストラン「NOBU」の経営者である申立人のことを英語風に「ノブ松久さん」と表記して使用しているのであって、申立人が単に「ノブ」と称されていることを示すものではない。 カ 甲第40号証には、「多くの職人がノブさんの店の門をたたき、」との記事が掲載されているところ、この記事には「松久氏」との表記はあっても、申立人の正式な氏名である「松久信幸」との文字は表記されてはおらず、ここにおける「ノブさん」の語は、インタビューの相手である、日本レストラン「マツヒサ」のオーナーシェフを「ノブさん」と称しているものであり、申立人が「ノブ」と称されていることを示すものではない。 キ 甲第41号証には、「世界のセレブを魅了する日本人シェフのレストラン『Nobu』、香港進出」との見出しの下、記事中に「ノブ氏」の語が使用されているところ、ここにおける「ノブ氏」の語は、申立人の職業である料理のシェフないし同人が営業するレストランとの関連で、同人を「ノブ氏」と称しているものである。 ク 甲第42号証には、「日本料理を通して、日本文化を世界に」との見出しの下、インタビュー記事中に「ノブさん(松久信幸さん。)」の語が使用されているところ、ここにおける「ノブさん」の語は、インタビューの回答者が、日本料理のオーナーシェフである申立人のことを「ノブさん」と称しているものである。 ケ 甲第46号証には、「世界からNOBUと呼ばれている松久信幸さんとは?」、「NOBU(ノブ)の愛称で世界中のセレブから愛されているシェフ・松久信幸さん」との記事が掲載されているところ、ここにおける「NOBU」、「ノブ」の語は、同号証の記載内容に照らして、申立人の職業である料理のシェフないし同人が営業するレストランとの関連で、同人を「NOBU」、「ノブ」と称しているものである。 コ 甲第49号証には、「世界的人気店『NOBU』苦労の先にあったもの」との見出しの下、インタビュー記事が記載され、「今や、5大陸にまたがる世界的なレストラン・グループのオーナーシェフとして活躍しているNOBUこと、松久信幸さん」との記事が掲載されているところ、ここにおける「NOBU」の語は、申立人の職業である料理のシェフないし同人が営業するレストランとの関連で、同人を「NOBU」と称しているものである。 サ 甲第51号証には、「シェフの松久信幸(ノブ・マツヒサ)氏」との記事が掲載されているところ、ここにおける「ノブ」の語は、申立人のことを英語風に「ノブ・マツヒサ」と表記して使用しているのであって、申立人が単に「ノブ」と称されていることを示すものではない。 シ 甲第55号証には、「世界のノブ初快挙なるか 松久氏、料理界のオスカー候補に」との見出しの下、「世界のノブ」との語が使用された記事が掲載されているところ、ここにおける「ノブ」の語は、申立人が「最高シェフ賞」にノミネートされたことを報じる記事中において、同人を「ノブ」と称しているものである。 (2)「ノブ」の語は申立人の著名な略称といえるかについて 商標法第4条第1項第8号における「他人の著名な略称」に関して、「人の名称等の略称が8号にいう『著名な略称』に該当するか否かを判断するについても,常に,問題とされた商標の指定商品又は指定役務の需要者のみを基準とすることは相当でなく,その略称が本人を指し示すものとして一般に受け入れられているか否かを基準として判断されるべきものということができる。」と解されるものである(最高裁平成16年(行ヒ)第343号平成17年7月22日第二小法廷判決参照)。 しかるところ、前記(1)によれば、申立人は、その職業であるシェフ並びに同人が営業するレストラン及びホテル事業との関係で「ノブ」と称されているといえ、その結果、役務「飲食物の提供」や「宿泊施設の提供」における、米国や我が国における一定程度の取引者・需要者の間において、申立人が「ノブ」と略称されているということができるものであるが、該役務の需要者層は、広範に及ぶものであり、その略称が本人を指し示すものとして一般に受け入れられているということはできないというべきである。 また、提出された前記の甲各号証は、役務「飲食物の提供」や「宿泊施設の提供」に関連する報道記事であり、これらによっては、「ノブ」の語が、上記以外の商品・役務の一般の需要者間において、申立人を指し示すものとして広く受け入れられているということはできないというべきである。 したがって、「ノブ」の語は、商標法第4条第1項第8号にいう申立人の著名な略称に該当するということはできないものである。 4 商標法第4条第1項第8号該当性について 「ノブ」の語が、申立人の著名な略称ということができないことは、前記3(2)で判断したとおりである。 したがって、本件商標は商標法第4条第1項第8号に該当しない。 5 商標法第4条第1項第15号該当性について (1)引用商標の周知著名性の程度について 引用商標は、前記2の記載のとおり、使用された結果、我が国において、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、役務「飲食物の提供」の需要者間において広く知られて周知性を獲得しているということはできないものである。 (2)本件商標と引用商標の類似性の程度について 本件商標は、前記第1のとおり「ノブズディスク」の文字を標準文字により表してなるものであるところ、同書体、同じ大きさで等間隔をもって表されているものであり、その構成は視覚上も一体的に把握できる程度のものであって、ここから生ずる「ノブズディスク」称呼も一連に称呼し得るものである。 そして、本件商標構成中の「ディスク」の文字に「円盤、レコード、コンパクトディスク」の意味があるとしても、本件商標は、一連に書された構成全体をもって一体不可分のものとして認識し把握されるとみるのが自然であって、その構成文字全体に相応して「ノブズディスク」の一連の称呼のみを生じ、特定の観念を生じないものというのが相当である。 他方、引用商標は、前記第2の1及び別掲のとおりの構成からなるところ、その構成文字に相応して「ノブ」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものである。 そして、本件商標と引用商標は、その全体の外観において、構成文字及び態様の相違により相紛れるおそれのないこと明らかである。 そうとすれば、本件商標と引用商標とは、その外観、称呼及び観念のいずれにおいても類似するとはいえないものである。 また、本件商標が、「ディスク」の語を有することから、その指定商品・役務中の第9類「レコード,録画済みビデオディスク」及び第35類「レコードの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」等との関係において、「ディスク」の語が自他商品又は役務の識別機能を果たし得ないと認識されるとしても、その場合には、本件商標は、前半部の「ノブズ」の語をもって取引に資されるというべきであって、ここからさらに、「ノブ」の語が分離抽出されて、この語をもって取引に資されるということはできないものである。 そうすると、本件商標から、仮に、前記した「ノブズ」の称呼が生ずる場合があるとしても、「ノブ」の称呼が生じる引用商標とは、称呼において類似せず、上記同様、本件商標と引用商標とは類似するとはいえないものである。 したがって、本件商標と引用商標の類似性の程度は極めて低いというべきである。 (3)本件商標の指定商品及び指定役務と引用商標の使用役務について 引用商標が使用されている役務は「飲食物の提供」及び「宿泊施設の提供」であり、前記第1の本件商標の指定商品及び指定役務とは、商品及び役務の内容、用途、目的を異にし、需要者の範囲も一致するとはいえないものであり、本件商標の指定商品及び指定役務と引用商標が使用されている役務の関連性は極めて薄いというべきである。 (4)他業種とのコラボレーションについて 申立人は、2002年には新潟県の酒造会社と契約して欧米向けの日本酒「NOBU」を商品化し、2015年4月には滋賀県を訪れ、滋賀県知事による同県産食材のプロモーションを受け、さらに、同年11月に佐賀県にあるデザイン事務所とともに、有田焼のブランド力強化・プロモーションのため、地元の窯元と共同で、プロの料理人向けの食器シリーズとして「アリタ×ノブ」シリーズを展開したと主張し、そのことが報道されたことを示す甲各号証を提出している。 しかしながら、この程度の事業展開や新聞等における記事掲載の回数をもってしては、申立人が、本来の事業のほかに他業種とのコラボレーションを行って、これが、我が国において広く知られているということはできないものである。 (5)出所の混同のおそれ 以上のとおり、引用商標は、我が国において、申立人が行う役務「飲食物の提供」を表示するものとして、本件商標の登録出願時及び査定時において周知性を獲得していたとはいえず、本件商標と引用商標の類似性の程度は低く、また、本件商標の指定商品及び指定役務と引用商標が使用されている役務の関連性も極めて薄く、さらに、同人が異業種とのコラボレーションを行っていることが広く知られているとはいえないものである。 そうとすれば、本件商標をその指定商品及び指定役務について使用しても、引用商標を連想、想起することはなく、これに接する取引者、需要者が、該商品及び役務が申立人又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品又は役務であるかのように、その出所について混同を生ずるおそれはないというべきである。 (6)小括 したがって、本件商標は商標法第4条第1項第15号に該当しない。 6 まとめ 以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第8号及び同第15号に違反してされたものではないから、同法第43条の3第4項に基づき、その登録を維持すべきである。 よって、結論のとおり決定する。 |
別掲 |
別掲(引用商標2) (色彩は原本参照) |
異議決定日 | 2016-10-07 |
出願番号 | 商願2015-38566(T2015-38566) |
審決分類 |
T
1
651・
271-
Y
(W091635)
T 1 651・ 23- Y (W091635) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 高橋 謙司 |
特許庁審判長 |
酒井 福造 |
特許庁審判官 |
平澤 芳行 中束 としえ |
登録日 | 2015-11-13 |
登録番号 | 商標登録第5805321号(T5805321) |
権利者 | 堀口 信行 |
商標の称呼 | ノブズディスク、ノブズ |
代理人 | 石田 昌彦 |
代理人 | 右馬埜 大地 |
代理人 | 田中 克郎 |
代理人 | 稲葉 良幸 |