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審決分類 審判 査定不服 商3条2項 使用による自他商品の識別力 登録しない W10
審判 査定不服 商3条1項3号 産地、販売地、品質、原材料など 登録しない W10
管理番号 1321317 
審判番号 不服2015-20647 
総通号数 204 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2016-12-22 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-11-19 
確定日 2016-10-14 
事件の表示 商願2014-51948拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。
理由 1 本願商標
本願商標は、別掲1のとおりの構成からなり、第10類「温灸具」を指定商品として、平成26年6月23日に立体商標として登録出願されたものである。

2 原査定の拒絶の理由の要点
原査定は、「本願商標は、指定商品との関係からすれば、『温灸具』の形状の一形態を認識させる立体的形状よりなるものの範疇と認識されるものであって、同種の商品の形状として採用し得る立体的形状の範囲を超えているとは認められないから、これをその指定商品に使用しても単に商品の形状を表示するにすぎないものと認める。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。また、出願人は、本願商標が出願人の製造販売に係る『温灸具』を示すものとして、需要者に広く知られるに至っている旨主張しているが、提出された資料及び職権調査によっては、需要者が出願人の業務に係る商品であることを認識することができるものとは認められない。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

3 当審においてした証拠調べ
当審において、本願商標が商標法第3条第1項第3号に該当するか否かについて、職権に基づく証拠調べをした結果、別掲2に示す事実を発見したので、同法第56条第1項で準用する特許法第150条第5項の規定に基づき、請求人に対して、平成28年5月31日付け証拠調べ通知書によってこれを開示し、期間を指定して、これに対する意見を述べる機会を与えた。

4 請求人の意見
前記3の証拠調べに対し、請求人は何ら意見を述べていない。

5 当審の判断
(1)商標法第3条第1項第3号について
立体商標における商品の形状に係る判示
商品の形状は、多くの場合、商品に期待される機能をより効果的に発揮させたり、商品の美感をより優れたものとするなどの目的で選択されるものであって、商品の出所を表示し、自他商品を識別する標識として用いられるものは少ないといえる。このように、商品の製造者、供給者の観点からすれば、商品の形状は、多くの場合、それ自体において出所表示機能ないし自他商品識別機能を有するもの、すなわち、商標としての機能を有するものとして採用するものではないといえる。また、商品の形状を見る需要者の観点からしても、商品の形状は、文字、図形、記号等により平面的に表示される標章とは異なり、商品の機能や美感を際立たせるために選択されたものと認識し、出所表示識別のために選択されたものとは認識しない場合が多いといえる。
そうすると、商品の形状は、多くの場合に、商品の機能又は美感に資することを目的として採用されるものであり、客観的に見て、そのような目的のために採用されたと認められる形状は、特段の事情のない限り、商品の形状を普通に用いられる方法で使用する標章のみからなる商標として、商標法第3条第1項第3号に該当すると解するのが相当である。
また、商品の具体的形状は、商品の機能又は美感に資することを目的として採用されるが、一方で、当該商品の用途、性質等に基づく制約の下で、通常は、ある程度の選択の幅があるといえる。しかし、同種の商品について、機能又は美感上の理由による形状の選択と予測し得る範囲のものであれば、当該形状が特徴を有していたとしても、商品の機能又は美感に資することを目的とする形状として、商標法第3条第1項第3号に該当するものというべきである。その理由は、商品の機能又は美感に資することを目的とする形状は、同種の商品に関与する者が当該形状を使用することを欲するものであるから、先に商標出願したことのみを理由として当該形状を特定の者に独占させることは、公益上の観点から必ずしも適切でないことにある。
さらに、商品に、需要者において予測し得ないような斬新な形状が用いられた場合であっても、当該形状が専ら商品の機能向上の観点から選択されたものであるときには、商標法第4条第1項第18号の趣旨を勘案すれば、商標法第3条第1項第3号に該当するというべきである。その理由として、商品が同種の商品に見られない独特の形状を有する場合に、商品の機能の観点からは発明ないし考案として、商品の美感の観点からは意匠として、それぞれ特許法・実用新案法ないし意匠法の定める要件を備えれば、その限りにおいて独占権が付与されることがあり得るが、これらの法の保護の対象になり得る形状について、商標権によって保護を与えることは、商標権は存続期間の更新を繰り返すことにより半永久的に保有することができる点を踏まえると、特許法、意匠法等による権利の存続期間を超えて半永久的に特定の者に独占権を認める結果を生じさせることになり、自由競争の不当な制限に当たり公益に反することが挙げられる(知的財産高等裁判所 平成18年(行ケ)第10555号判決、平成19年(行ケ)第10215号判決、平成22年(行ケ)第10253号判決)。
イ 本願商標の商標法第3条第1項第3号該当性
本願商標は、別掲1のとおり、底面中心部に小円を有する、直径が長く高さの低い円柱の中心部に、直径が短く高い円柱を立てた立体的形状からなるものである。
そして、本願商標の指定商品である「温灸具」は、灸を施術するための商品であって、灸が、火を点けたもぐさを肌にのせ、その熱気によって病を治療するためのものであるところ、別掲2のとおり、「温灸具」中、「台座付き温灸具」に用いられる形状は、もぐさを直接肌に触れないようにするための円形又は多角形の台座の上に、細い円柱状に成形したもぐさを立て、もぐさの熱を肌へ伝えるために、台座の中央に小さな穴を空けたものが多く、このような形状の商品が広く販売されている事実がある。
そうすると、本願商標に係る立体的形状中の上部の円柱部分は、細く成形したもぐさからなる部分と理解するのが自然であり、また、下部の円柱部分は、細い上部の円柱部分を安定的に立たせるための台座で、その底面に有する小円は、上部の円柱部分に成形されたもぐさからの熱気を肌に伝える穴として採択されたものと理解できるものであるから、本願商標の指定商品の機能をより効果的に発揮させるために採択された形状というのが相当である。
してみれば、本願商標の立体的形状は、その指定商品との関係において、その商品の機能又は美感に資することを目的として採用されるものと認められ、また、「温灸具」について、需要者において予測可能な範囲内のものというべきである。
したがって、本願商標は、商品の形状を普通に用いられる方法で使用する標章のみからなる商標であることから、商標法第3条第1項第3号に該当する。
(2)請求人の主張について
請求人は、本願商標の立体的形状からなる「台座付き温灸具」は、昭和51年頃に請求人の創業者により完成され、請求人又は関連会社が特許を複数取得し、請求人が、長期に亘って、該商品の製造販売を事実上独占している上、請求人による積極的な宣伝広告活動の結果、昭和51年の発売開始から平成23年までに累計700億個が販売されて、本願商標に係る立体的形状は、現在では「せんねん灸タイプ」と称されるまでに至っていることからすれば、本願商標は、請求人の製造販売に係るものとして取引者、需要者に広く知られているに至っており、自他商品識別標識としての機能を果たし得るものであるから、商標法第3条第1項第3項に該当するものではない旨主張し、甲第1号証ないし10号証を提出している。
請求人は、本願商標が使用による識別力、いわゆる商標法第3条第2項の要件を具備していることを主張しているものと解されるので、以下、検討する。
商標登録出願された商標が、商標法第3条第2項の要件を具備し、登録が認められるか否かは、使用に係る商標及び商品、使用開始時期及び使用期間、使用地域、当該商品の販売数量等並びに広告宣伝の方法及び回数等を総合考慮して、出願商標が使用された結果、判断時である審決時において、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるものと認められるか否かによって決すべきものであり、商標法第3条第2項の要件を具備するためには、使用商標は、出願に係る商標と同一であることを要するものというべきである(知財高裁平成21年(行ケ)第10388号平成22年6月29日判決参照)。
そこで、これを本件についてみるに、提出された証拠によれば、請求人は、「台座付き温灸具」について、本願商標に係る立体的形状を昭和51年頃から使用していることや(甲1)、請求人がテレビ及びラジオの提供番組を有していること(甲2)が認められる。
しかしながら、テレビにおいて放送されたCMの回数、頻度、放送範囲、視聴率については何ら証明されておらず、ラジオにおいては商品の形状は確認できないものであって、請求人が主張する「台座付き温灸具」の販売数量(昭和51年の発売開始から平成23年までに累計700億個)についても、甲第4号証にその旨の記載が認められるものの、該証拠は請求人について放送されたテレビ番組の内容を記述したものにすぎず、その事実を証明する書類及び売上額、市場占有率等に関する客観的証拠も提出されていない。
また、本願商標に係る立体的形状からなる温灸具が、「せんねん灸タイプ」と称される場合があることが認められるが(甲3、5?8)、このうち請求人と関連のない者の使用は、個人の鍼灸院のウェブページ4件のみであり、この証拠をもって、本願商標が需要者の間で広く認識されているものであると判断する証拠とみることはできない。
上記を踏まえると、本願商標が請求人の業務に係る商品に使用された結果、その指定商品について、需要者が請求人の業務に係る商品であることを認識するに至っていると認めるに足る事実を見いだすことはできない。
したがって、本願商標は、これが使用された結果、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるに至っていたと認めることができない。
よって、請求人の主張も採用することができない。
(3)まとめ
以上のとおり、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当するものするものであって、かつ、同法第3条第2項の要件を具備するものではないから、登録することができない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲1(本願商標)
第1図


第2図


別掲2(当審においてした証拠調べ通知)
(1)「お灸の故郷,伊吹もぐさ 亀屋佐京商店」のウェブサイトにおいて、「もぐさ・お灸」の項目中に、「お灸:台紙付きお灸広重180壮」の見出しの下、円形の台座の上中央に円柱状のもぐさを配置した温灸具の写真及びその使用風景の動画が掲載されている。また、「お灸の種類」の「間接灸」の項目中に、「台座灸」の説明として、「隔物灸の一種で、台座となる台紙の上でお灸をする方法です。」との記載がある。
(http://www.ibukimoxa.jp/moxa/hirosige.html)

(2)「ECO-GREEN」のウェブサイトにおいて、「台座灸 和(なごみ)200個入 〔村上〕」の見出しの下、円形の台座の上中央に円柱状のもぐさを配置した温灸具の写真が掲載されている。
(http://ecogreen1.sakura.ne.jp/5_4.html)

(3)「手技療法専門通販トワテック」のウェブサイトにおいて、「台座灸」の項目中に、「カナ灸 雅」の見出しの下、円形の台座の上中央に円柱状のもぐさを配置した温灸具の写真が掲載されている。
(https://www.towatech.net/products/shinkyu/okyu-mogusa/base/35970/)
(https://www.towatech.net/images/product_images/011-0648A_02.jpg)

また、同項目中に、「ユニコらくらく灸」の見出しの下、四角形及び円形の台座の上中央に円柱状のもぐさを配置した温灸具の写真が掲載されている。
(https://www.towatech.net/products/shinkyu/okyu-mogusa/base/35461/)

(4)「YAHOO!JAPANショッピング」の「ひだまり日和 Yahoo!ショップ」のウェブサイトにおいて、「★ネット限定特別価格★目にも出来るやさしい遠赤外線お灸『ひだまり温灸』ソフトタイプ・20壮入★」の見出しの下、四角形及び円形の台座の上中央に円柱状のもぐさを配置した温灸具の写真が掲載されている。
(http://store.shopping.yahoo.co.jp/hidamari-biyori/neckm4n343.html)

(5)「株式会社ファロス」のウェブサイトにおいて、「富士山灸」の見出しの下、「艾が倒れにくい台座灸・・・・台座の中央に小さな穴が開いているので、皮膚との間に空洞ができており、艾の燃えた熱が空洞の空気を温め皮膚に伝わる為に、火傷しにくい構造になっています。」及び「お灸の持続効果 ・点火と同時に台座中央の穴から、艾の温熱効果が浸透していき火が消えても台座が冷めるまで効果が続きます。」との記載があり、六角形の台座の上中央に円柱状のもぐさを配置した温灸具の写真が掲載されている。
がある。
(http://www.pharos-jp.com/fujiyama/fujiyama.html)
(http://www.pharos-jp.com/fujiyama/img/fujiyamakyu/kyo4.jpg)

(6)「ほっこり本舗」のウェブサイトにおいて、「お灸」の項目中に、「長生灸シリーズ」の見出しの下、「『長生灸(ちょうせいきゅう)』シリーズは台座灸(だいざきゅう)と呼ばれるタイプのお灸で、紙でくるまれた『もぐさ』がのりの付いた小さな台座にセットされています。台座のおかげでもぐさとお肌の間に空間ができるので、熱すぎないながらもしっかりとした温熱が味わうことができます。また、燃えているもぐさが直接お肌に触れることがありませんので、痕(あと)も残らず水疱ややけどもしづらいよう工夫されています。」との記載があり、六角形の台座の上に紙に巻かれたもぐさを配置した温灸具の正面及び中央に穴を有するその底部の写真並びに「[横から見たところ]」と題した温灸具の構造図が掲載されている。
(http://hokkori-honpo.com/?pid=30182892)

(7)「KOBAYASHI-ROUHO」のウェブサイトにおいて、「台座灸」の項目中に、「しん灸ソフト」、「ビワタイプ しん灸ソフト」及び「温熱ハードタイプ しん灸ハード」の見出しの下、六角形の台座の上中央に円柱状のもぐさを配置した温灸具が掲載されている。
(http://www.kobayashi-rouho.com/product/list04/index.html)

(8)「DAIWAKAN」のウェブサイトにおいて、「市販用/お灸」の項目中に、「やわら(柔)」の見出しの下、円形の台座の上に紙に巻かれたもぐさを配置した温灸具の写真が掲載され、その「形状・構造の特徴」として、「通気孔が小さく、ピンポイントで灸の熱がツボに働きかけます。」及び「通気孔が約3mmで、ご使用になる方が既にツボを限定されている場合に、ピンポイントで施灸して頂けます。」との記載があり、温灸具の構造が説明された写真が掲載されている。
(http://www.daiwakan.co.jp/jp/gen_kyu.html)

また、同ウェブサイトにおいて、「【治療院様用製品】-お灸」の項目中に、「極(きわみ)」の見出しの下、六角形の台座の上に紙に巻かれたもぐさを配置した温灸具の写真が掲載され、「『柔』のモグサの太さや台座の厚さは変えずに温感等まったく同じで、台座形状を丸から六角形に変更するなどの生産工程を見直したことでコストダウンに成功しました。」との記載がある。
(http://www.daiwakan.co.jp/jp/bus_kyu.html)

(9)「東京 銀座針灸院」のウェブサイトにおいて、「お知らせ」の項目中に、「お知らせ お灸のいろいろな種類をご紹介します。」の見出しの下、「【新脳灸】前田中国医学研究院 オリジナルです。特別受注の伊吹もぐさを使用し、深部から温まりとても気持ちがいいですよ。販売もしています。100壮入り 2100円」との記載があり、六角形の台座の上中央に円柱状のもぐさを配置した温灸具の写真が掲載されている。
(http://ginza-shinkyu.com/news/%E3%81%8A%E7%81%B8%E3%81%AE%E3%81%84%E3%82%8D%E3%81%84%E3%82%8D%E3%81%AA%E7%A8%AE%E9%A1%9E%E3%82%92%E3%81%94%E7%B4%B9%E4%BB%8B%E3%81%97%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82/)



審理終結日 2016-08-02 
結審通知日 2016-08-05 
審決日 2016-08-18 
出願番号 商願2014-51948(T2014-51948) 
審決分類 T 1 8・ 13- Z (W10)
T 1 8・ 17- Z (W10)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 豊田 純一矢代 達雄 
特許庁審判長 今田 三男
特許庁審判官 田中 幸一
藤田 和美
代理人 藤吉 繁 

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