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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W25
審判 全部申立て  登録を維持 W25
審判 全部申立て  登録を維持 W25
管理番号 1320422 
異議申立番号 異議2016-900016 
総通号数 203 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2016-11-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 2016-01-19 
確定日 2016-10-14 
異議申立件数
事件の表示 登録第5800810号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第5800810号商標の商標登録を維持する。
理由 第1 本件商標
本件登録第5800810号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1に示すとおりの構成からなり、平成26年12月15日に登録出願、第25類「被服,メリヤス下着,メリヤス靴下,履物,バスケットボール用靴,バスケットボール用スニーカー,スリッパ,ティーシャツ,ワイシャツ類及びシャツ,ポロシャツ,スウェットシャツ,スウェットパンツ,ズボン及びパンツ,タンクトップ,ジャージー製被服,ショートパンツ,パジャマ,スポーツシャツ,ラグビー競技用シャツ,セーター,ベルト,ネクタイ,ナイトシャツ,帽子,バイザー,ウォームアップスーツ,ウォームアップパンツ,ウォームアップトップス,射撃用シャツ,ジャケット,防風用ジャケット,パーカ,コート,よだれ掛け又は胸当て(紙製のものを除く。),ヘッドバンド,リストバンド(被服用のもの),エプロン,下着,ボクサーショーツ,スラックス,耳覆い,手袋,ミトン,スカーフ,綿製のニットシャツ,ジャージー製ドレス,ドレス,チアリーディング用ドレス及びユニフォーム,水泳着,ビキニ型水泳着,タンキニ,水泳用トランクス,ボードショーツ,ウィンドサーフィン用ウェットスーツ,サーフィン用ウェットスーツ,水上スポーツ用ウェットスーツ,ビーチコート,水着用上着,水着用のはおり用布,サンダル,ビーチサンダル,ビーチハット,サンバイザー,水泳帽,かつらが取り付けられた目新しい帽子,スポーツ観戦・パーティーなどで用いる頭飾用帽子,その他の被服及び履物,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,運動用特殊衣服,運動用特殊靴,仮装用衣服」を指定商品として、同27年7月7日に登録査定、同年10月23日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が、本件登録異議の申立ての理由として引用する商標は、以下の11件であり、いずれも登録商標として現に有効に存続しているものである(以下、これらをまとめていうときは「引用商標」という。)。
1 登録第5788675号商標(以下「引用商標1」という。)は、別掲2に示すとおりの構成からなり、平成26年12月25日に登録出願、第9類、第16類、第18類及び第25類に属する商標登録原簿に記載された商品を指定商品として、同27年8月28日に設定登録されたものである。
2 国際登録第1048069号商標(以下「引用商標2」という。)は、別掲3に示すとおりの構成からなり、2010年8(平成22年)6月28日に国際商標登録出願、第9類、第16類、第18類及び第25類に属する国際登録に基づく商標権に係る商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、平成23年7月29日に設定登録されたものである。
3 登録第5689430号(以下「引用商標3」という。)は、別掲3に示すとおりの構成からなり、平成26年3月11日に登録出願、第16類及び第25類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同年7月25日に設定登録されたものである。
4 登録第5044896号商標(以下「引用商標4」という。)は、別掲2に示すとおりの構成からなり、平成18年6月9日に登録出願、第32類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同19年5月11日に設定登録されたものである。
5 登録第5431413号商標(以下「引用商標5」という。)は、別掲2に示すとおりの構成からなり、平成22年10月27日に登録出願、第5類、第29類、第30類、第32類及び第33類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同23年8月12日に設定登録されたものである。
6 登録第5057229号商標(以下「引用商標6」という。)は、別掲3に示すとおりの構成からなり、平成18年6月9日に登録出願、第32類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同19年6月22日に設定登録されたものである。
7 登録第5730813号商標(以下「引用商標7」という。)は、別掲4に示すとおりの構成からなり、2012年10月5日にアメリカ合衆国においてした商標登録出願に基づきパリ条約第4条による優先権を主張し、平成24年11月5日に登録出願、第14類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同27年1月9日に設定登録されたものである。
8 登録第5419513号商標(以下「引用商標8」という。)は、別掲5に示すとおりの構成からなり、2010年7月27日にアメリカ合衆国においてした商標登録出願に基づきパリ条約第4条による優先権を主張し、平成23年1月27日に登録出願、第32類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同年6月17日に設定登録されたものである。
9 登録第5427070号商標(以下「引用商標9」という。)は、別掲6に示すとおりの構成からなり、平成23年1月5日に登録出願、第5類及び第32類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同年7月22日に設定登録されたものである。
10 登録第5844163号(商願2015-77265)商標(以下「引用商標10」という。)は、別掲7に示すとおりの構成からなり、平成27年8月11日に登録出願、第32類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同28年4月22日に設定登録にされたものである。
11 登録第5868986号(商願2016-12306)商標(以下「引用商標11」という。)は、別掲8に示すとおりの構成からなり、平成28年2月4日に登録出願、第33類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同年7月22日に設定登録にされたものである。

第3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標は商標法第4条第1項第11号、同第15号及び同第7号に該当するから、その登録は取り消されるべきであると申立て、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第246号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 申立人の使用に係る「M」のロゴマークの著名性
(1)会社沿革及び取り扱い商品
申立人のモンスターエナジーカンパニー(Monster Energy Company)は、1930年代に創業した米国の飲料メーカーであり、2015年6月からはエナジードリンクに注力している(甲2、甲58)。
(2)「MONSTER ENERGY」ブランド創設と「M」のロゴマークの使用
申立人は、2002年にエナジードリンクの新ブランド「MONSTER ENERGY」を創設し、米国で同年3月から広告宣伝を開始し、同年4月から製造販売を開始した(甲4、甲7、甲18、甲58等)。
申立人の「MONSTER ENERGY」ブランドの各種エナジードリンク製品には、従来の清涼飲料製品の容器とは異なる黒色ベースのボトル缶にモンスター(Monster)の爪痕を象ったロゴマーク(引用商標1、4、5及び11に示すもの)(以下『「M」のロゴマーク』という。)を大きく目立つ態様で表示した野性味あふれる独特な雰囲気が経済・ビジネス界でも注目を浴び(甲56?甲58)、男性若者層を中心にたちまち人気商品となった。
申立人の「MONSTER ENERGY」ブランドの各種エナジードリンクには、2002年の発売開始以降、現在までの長年にわたり継続して、常に「M」のロゴマークが大きく目立つ態様で表示されている。
(3)広告・マーケティング・販売促進活動
申立人は、2002年から現在まで、全世界における「MONSTER ENERGY」ブランドのエナジードリンクに関する広告、マーケティング及び販売促進活動費として総額30億米ドルを超える費用を支出した(甲58)。
こうした販売促進活動の主な内容は、世界の有名アスリート・レーシングチーム及び競技会、アマチュア選手、音楽祭及びミュージシャン、並びに米国ラスベガスの公共機関モノレールに対する支援活動(スポンサー提供)、並びに販売店用什器及び備品の供給である(甲58等)。
このような「M」のロゴマーク及び「M MONSTER ENERGY」のロゴマークを用いた世界の著名アスリート及びチームに対するスポンサー活動は、申立人自らが発信する情報のみならず、スポンサー提供を受けるアスリートたちが運営するホームページやブログ、有名経済ビジネス誌、一般の報道ニュース、スポーツファンのホームページなどを通じて、日本国内の一般消費者にも発信、紹介されている(甲34?甲45、甲52、甲53、甲56、甲57)。
申立人が支援するアスリート及びチームが着用・使用するスポーツウェア等、並びに競技会場で用いられる旗、スポーツサーキット移動車両等、競技会場で販売されるアパレル製品やアクセサリー類には、「M」のロゴマーク、又は「M MONSTER ENERGY」のロゴマークが付されており、全世界のエナジードリンクの需要者のみならずスポーツファンを中心とする一般消費者の間に「M」のロゴマークを広く浸透させることに大きな効果を発揮している。
申立人はまた2003年に米国の観光都市ラスベガスを走行する公共交通機関のモノレールと1千万米ドルのスポンサー契約を締結し、モノレールの車両に「M」のロゴマークを付した「モンスター列車」がカジノを結ぶラスベガスの通りを走行することになった(甲58号等)。
(4)国内における販売及び販売促進活動
日本国内では「MONSTER ENERGY」ブランドのエナジードリンクの販売は、アサヒ飲料株式会社を通じて行われている。2012年3月15日付のニューズリリースでアサヒ飲料株式会社が国内独占販売権取得を公表し、2種類のエナジードリンク「MONSTER ENERGY」及び「MONSTER KHAOS」の発売を発表、同年5月8日から実際の販売が開始した(甲5?甲7、甲12、甲14、甲58)。当該商品は、2012年5月8日の発売後、日本国内でもたちまち人気となり、同年9月時点で既に年間売上目標の100万箱を突破し(甲8)、その後も好調に売上を伸ばして157万箱の売上を記録した(甲9)。
さらに、2013年5月7日から、同ブランドの新製品が発売され、現在まで「M」のロゴマークを付した6種の異なるエナジードリンクが国内で流通している。
2012年5月の販売開始から2015年6月30日までに、申立人は国内で約2億3,600万缶の「MONSTER ENERGY」ブランドのエナジードリンクを販売した。上記期間の総販売額は1億7,500万米ドル以上、日本円で170億円以上である(甲58)。
また、2012年5月の国内発売直後から継続的にテレビコマーシャル放映、日本開催の多数のスポーツイベント等へのスポンサー提供、サンプル配布など含む大々的な広告・販売促進活動が実施されている(甲58)。
(5)全世界の販売国・地域及び販売額
申立人は、現在までに全世界100以上の国及び地域で1種類以上の「MONSTER」ファミリー商標を使用して「MONSTER ENERGY」ブランドのエナジードリンクを販売し、又は販売中である(甲58)。
(6)アパレル製品、ビデオ製品等の販売
2002年から現在まで、申立人は「M」のロゴマーク及び「M MONSTER ENERGY」のロゴマークを付したアパレル製品等の製造販売をライセンスしており、多数のライセンシーを通じて現在、日本及びアジア全域、オーストラリア、米国、カナダを含む世界各地で販売中である(甲58等)。また、これらのロゴマークのステッカーや転写シールも製造販売されており、モンスターアーミー(申立人が支援育成するアマチュア選手)の登録会員、スポンサー提供するアスリートやイベントの観客・ファンに配布されている(甲58)。
「M」のロゴマーク及び「M MONSTER ENERGY」のロゴマークが付された被服、運動用特殊衣服、運動用ヘルメット、ステッカー、リュックサック等はインターネットの通信販売業者により日本国内でも輸入販売されており(甲47、甲48)、一般消費者の人気も高い。
また、ビデオゲーム制作販売会社とも提携し、申立人がスポンサーを務めるカーレーサー等が「M」のロゴマークを付したウェアなどを着用し、レーシングカーを使用して登場する複数のビデオゲーム製品なども商品化されており、日本でも購入可能である(甲58)。
(7)ウェブサイト・ソーシャルメディアによる情報発信及びアクセス数等
申立人の「MONSTER ENERGY」のエナジードリンクの商品情報、スポンサー契約アスリート・チーム及びスポーツ等のイベントに関する情報、アスリート等の大会成績や記録情報、「MONSTER ENERGY」のアパレル及びアクセサリー類に関する商品情報や販売などが申立人が開設運営する複数のウェブサイト及びソーシャルメディアサイトを介して日本を含む全世界の需要者に対して発信されており、日本を含む多数の需要者からのアクセスがあることが認められる(甲58)。
(8)経済界等からの表彰等
「MONSTER ENERGY」ブランドのエナジードリンクの開発、導入の成功に急成長を遂げた申立人会社の業績は、本件商標が登録出願される遥か以前から、経済界でも高く評価され、数々の表彰を受けている(甲58等)。
(9)国内外における商標登録によるブランド保護
「M」のロゴマーク及び「M MONSTER ENERGY」のロゴマークは、申立人の製造販売に係る「MONSTER ENERGY」ブランドのエナジードリンク製品、並びにアパレル製品、スポーツ用品、文房具類、アクセサリー類、その他様々なライセンス商品に使用されている(甲5?甲17、甲19?甲32)。
また、「M」のロゴマーク及び「M MONSTER ENERGY」のロゴマークを付した申立人の取り扱いに係るアパレル製品、ステッカー、スポーツ用品、バッグ類等が国内でも販売されている(甲47、甲48、甲138、甲144、甲146)。
(10)国内における申立人のアパレル製品等の人気と模倣品の水際取締り
国内市場における申立人のロゴマークの人気、周知性の高まりに便乗して、申立人の商標権を侵害するアパレル製品、ステッカー等の模倣品が海外で製造され、申立人の商標権侵害物品として日本の税関で輸入が差止められる案件も増加している(甲59?甲90、甲105?甲118、甲173?甲182)。
(11)2013年以降、申立人は国内で主催又は協賛したスポーツイベント等及びプロモーションキャンペーンを実施した(甲119?甲122等)。
(12)以上の事実に照らせば、「M」のロゴマークは、申立人の代表的商品出所識別標識として、本件商標の登録出願日前より、申立人の業務に係る商品を表示するものとして、本国米国をはじめとする外国で広く認識されていただけにとどまらず、本件商標の登録出願時及び査定時には、日本国内の需要者の間でも申立人の業務に係る商品を表示するものとして広く認識されていたことが明らかである。
2 本件商標が商標法第4条第1項第11号及び同15号に該当する理由
本件商標の指定商品は、前記第1のとおりであり、引用商標1、2及び3の指定商品と同一又は類似のものである。また、本件商標の指定商品は、申立人がそのライセンシーを通じて、引用商標の構成中に包含される「M」のロゴマークを付して国内外で販売されているTシャツ、帽子、スウェットシャツ等のアパレル製品、運動用ヘルメット、サーフボード、レーシングスーツ、かばん類、ステッカー、時計、傘、ビデオゲーム製品などのライセンス商品(甲138?甲146)と同一又は類似のものである。
本件商標は、黒塗りの円形図形において右側約3分の1程度の面積に経線様の縦線1本とこれに交差する横線3本を白抜きで描いたものと、左側約3分の2の面積に左端から右上方向に向かい徐々に幅が狭く細く収斂して尖った先端部を有する輪郭が不規則な凸凹状の帯様図形3本を概ね互いに並行に均等間隔で配置した図形を白抜きで描いたもの(以下「3本の帯様図形」という。)から構成され、当該3本の帯様図形の先端部が横線3本の左端と繋がっているものであり、上記構成においては、3本の帯様図形が独立の商品出所表示識別標識として認識理解され得る。
これに対して、引用商標は、「M」のロゴマーク又はこれを基調とする構成からなるものであり、当該「M」のロゴマークは、左端が尖った上端部から下方向に向かい徐々に幅が狭く細く収斂して尖った先端部を有する輪郭が不規則な凸凹状の帯様図形3本を概ね互いに並行に均等間隔で配置した図形から構成されるものであり、上記各構成においては、「M」のロゴマークの部分が独立の出所識別標識として認識理解され得る。
本件商標の構成中の3本の帯様図形は、引用商標の構成中の「M」のロゴマークと構成の軌跡を一にすることが明らかであるから、本件商標と引用商標は、図形全体の外観印象が紛らわしい類似のものである。
したがって、本件商標は、引用商標2及び引用商標3(決定注:引用商標1ないし3の誤記と思われる。)と類似し、かつ、当該引用商標の指定商品と同一又は類似の商品に使用するものであって、これらの引用商標は本件商標よりも先に登録出願されたものである。
よって、本件商標が商標法第4条第1項第11号に該当することは明らかである。
さらに、引用商標の構成中の「M」のロゴマークは、2002年から現在まで継続して使用されているMONSTERブランド及び申立人会社を直観させる申立人の代表的商品識別標識であり、本件商標の登録出願時には、日本国内及び米国を含む多数の外国において申立人の業務に係る商品を表示する代表的出所識別標識として需要者の間で広く認識されていた(甲2?甲246)。殊に、本件商標の指定商品と同一又は類似の商品に該当する被服等のアパレル・ファッション関連製品、運動用特殊衣服、運動用ヘルメットなどのスポーツ用品については、「M」のロゴマーク、並びに「M」のロゴマークに「MONSTER」及び「ENERGY」の文字を付した「M MONSTER ENERGY」のロゴマークと同一又は類似の商標を付した模倣品が税関の水際取締りで申立人の商標権侵害物品と認定され輸入が差止められる事案が多発する程度まで、日本国内の当該分野の需要者の間で広く知られている非常に人気の高い商品となっている(甲59?甲90、甲105?甲118、甲173?甲182等)。
したがって、申立人の「M」のロゴマークと類似する本件商標がその指定商品に使用された場合は、これに接した需要者は申立人の「M」のロゴマーク及びMONSTERブランドを直観し、当該指定商品を申立人又は申立人と経済的又は組織的関係を有する者の取り扱いに係る商品であると誤信することにより、商品の出所について混同を生じるおそれが高いことが明らかである。
また、商標法第4条第1項第15号の規定は、出所の混同防止のみならず、著名商標の顧客吸引力へのフリーライド、その出所表示力のダイリューションを防止する趣旨も含むものであると解されるものである[平成16年(行ケ)第85号審決取消請求事件、平成16年10月20日東京高裁判決]。
本件商標がその指定商品に使用された場合は、2002年から現在に至る申立人による継続的使用と営業努力によって申立人の商品及び役務の出所識別標識として広く認識されるに至っている「M」のロゴマークの出所表示力が希釈化することが明らかである。また、被申立人による本件商標の使用は、申立人がこれらの商標について獲得した信用力、顧客吸引力にフリーライドする行為といわざるを得ない。
よって、本件商標が商標法第4条第1項第15号に該当することは明らかである。
3 本件商標が商標法第4条第1項第7号に該当する理由
本件商標は、その登録出願時に申立人の業務に係る商品を表示するものとして日本国内及び米国その他の外国で広く認識されていた「M」のロゴマークと構成の軌跡を一にするものである。また、本件商標の指定商品は、申立人が実際に「M」のロゴマークを使用中のアパレル製品及び運動用ヘルメット等のスポーツ用具と同一又は類似の商品を多く含むものである。
本件商標がその指定商品に使用された場合には、申立人の上記ロゴマークの強力な出所表示力を希釈化するおそれが極めて高く、また、本件商標の使用は、申立人が当該ロゴマークについて獲得した信用力、顧客吸引力にフリーライドするものといわざるを得ず、申立人に経済的および精神的損害を与える。
したがって、本件商標は、社会一般道徳及び公正な取引秩序の維持を旨とする商標法の精神並びに国際信義に反するものであるから、公の秩序を害するおそれがある。
よって、本件商標は商標法第4条第1項第7号に該当することが明らかである。

第4 当審の判断
1 商標法第4条第1項第11号該当性について
(1)本件商標について
本件商標は、その構成を別掲1に示すものであるところ、その全体の輪郭がほぼ円形を呈するように、いずれも黒塗りで、それぞれ形の異なる八個の図形を組み合わせてなるものである。
そして、まず、右側上部には、上部先端が左方向に湾曲した略三角形状図形を描き、その下部にやや間隔を空けて、各辺を湾曲させた略四角形状の図形を描き、その下部にもやや間隔を空けて、上部の図形とは各辺の湾曲の程度がやや異なる略四角形状の図形を描き、さらにその下部にやや間隔を空けて、下部先端が左方向に湾曲した略三角形状図形を描いてなるものである。そして、これらの四つの図形は全体として三日月状の外観を呈するように配置されており、各図形間の上下の間隔は均一に保たれているものである。
次いで、これらの四つの図形の左側には、全体として円弧状にやや間隔を空け、かつ、これらの四つの各図形の左側部分の長さに、それぞれの右辺部分を相応させた図形を四つ配置し、その一番上には、上部を円弧状とし下部を不規則な輪郭とした略三日月形状の図形を描き、次いでその下部に、左右を円弧状に上下を不規則な輪郭とした横長の略四角形状図形を描き、その下部に、右端を円弧状とし他の三辺の輪郭を不規則な形状とした横長の図形を描き、さらにその下部に、右下方を円弧状とし左上方を不規則な輪郭とした略三日月形状の図形を配置してなるものである。
そして、これらの八個の図形を組み合わせてなる本件商標は、その全体の輪郭がほぼ円形を呈していることから、全体が一体のものとして把握できるといえるものである。
しかるに、申立人は、本件商標の構成について、本件商標は黒塗りの円形図形において右側約3分の1程度の面積に経線様の縦線1本とこれに交差する横線3本を白抜きで描いたものと、左側約3分の2の面積に左端から右上方向に向かい徐々に幅が狭く細く収斂して尖った先端部を有する輪郭が不規則な凸凹状の帯様図形3本を概ね互いに並行に均等間隔で配置した図形を白抜きで描いたものから構成され、当該3本の帯様図形の先端部が横線3本の左端と繋がっているものであると主張している。
ところで、本件商標は、平成26年12月15日に登録出願されたものであり、この時点で適用される商標法(平成26年法律第36号(平成27年4月1日施行)による改正前のもの)第5条第4項は「商標登録を受けようとする商標を記載した部分のうち商標登録を受けようとする商標を記載する欄の色彩と同一の色彩である部分は、その商標の一部でないものとみなす。ただし、色彩を付すべき範囲を明らかにしてその欄の色彩と同一の色彩を付すべき旨を表示した部分については、この限りでない。」とされ、本件商標には同項ただし書に対応する表示はされてはいなから、本件商標を構成する黒塗り図形以外の部分は「商標の一部でないもの」とみなされることとなる。
してみれば、上記の申立人の主張は、本件商標を構成しない部分を対象にしたものであり、それ自体、失当というべきである。
(2)引用商標について
ア 引用商標10及び引用商標11について
申立人が、本件商標が商標法第4条第1項第11号に該当すると主張している引用商標のうち、引用商標10の登録出願日は平成27年8月11日であり、引用商標11の登録出願日は平成28年2月4日である。他方、本件商標の登録出願日は平成26年12月15日であり、この両引用商標は、本件商標の後願であるから、本件商標が商標法第4条第1項第11号に該当するということはできないものである。
イ 引用商標1ないし引用商標9について
引用商標1ないし引用商標9は、いずれも、その構成中に、先端が左向きに細く尖った図形の右端から下向きに幅が徐々に細くなる不規則な凹凸状の輪郭を有する鉤の手状の図形を3本縦方向に平行に配置してなり、このうち中央のそれは、左右のそれよりやや長めに描かれている図形を有してなるものである。そして、引用商標1ないし引用商標9は、この3本の縦長図形部分が、その要部として自他商品の識別機能を果たすといえるものである。
(3)本件商標と引用商標1ないし引用商標9との類否について
本件商標は、前記(1)で述べた構成のものであり、外観上、全体が一体のものとして把握できる構成のものである。
他方、引用商標1ないし引用商標9は、前記(2)イで述べた、引用商標1ないし引用商標9が共通して有する3本の縦長の図形は、外観上一体のものとして把握することができるといえるものである。
そして、本件商標と引用商標1ないし引用商標9とは、それぞれ上記した構成のものであるから、両者は互いに、その構成態様を全く異にする別異の商標というべきであり、両者が類似するということはできないものである。
そして、両商標の類否についての申立人の主張は、前記したように失当であって、採用することはできない。
(4)小括
以上のとおり、本件商標と引用商標1ないし引用商標9とは商標において互いに類似せず、引用商標10及び引用商標11は商標法第4条第1項第11号の該当要件を満たさないから、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。
2 商標法第4条第1項第15号該当性について
申立人の主張と提出された証拠方法によれば、引用商標(申立人のいう「M」のロゴマーク)は、我が国において、申立人のいう「エナジードリンク」(申立人は、当該商品の内容が把握できる説明をしていないが、申立ての趣旨によれば、これは、「栄養補給成分を含む清涼飲料」と推認される。)、被服、オートバイ用ヘルメット、帽子、スニーカーなどに使用されていといえるところである。
しかしながら、上記1(3)のとおり、本件商標と引用商標(「M」のロゴマーク)は、互いに、混同するおそれのない別異の商標であるから、引用商標の周知著名性についての当審の判断を述べるまでもなく、本件商標をその指定商品について使用しても、これに接する取引者、需要者が、該商品が申立人又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品又は役務であるかのように誤認することはなく、その出所について混同を生ずるおそれはないというべきである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
3 商標法第4条第1項第7号について
本件商標と引用商標とは、上記1(3)のとおり、互いに別異の商標であるから、本件商標は、引用商標の出所表示力を希釈化するおそれはなく、その有する信用力、顧客吸引力にフリーライドするともいえないものである。
また、本件商標は、これを、その指定商品に使用することが社会公共の利益に反し、社会の一般的道徳観念に反し、国際信義に反し、その登録出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあるとすべき証拠及び事情もない。
したがって、本件商標は商標法第4条第1項第7号に該当しない。
4 まとめ
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号、同第15号及び同第7号に違反してされたものではないから、同法第43条の3第4項に基づき、その登録を維持すべきである。
よって、結論のとおり決定する。
別掲 別掲1(本件商標)



別掲2(引用商標1、引用商標4、引用商標5)



別掲3(引用商標2、引用商標3、引用商標6)



別掲4(引用商標7)



別掲5(引用商標8)



別掲6(引用商標9)



別掲7(引用商標10)(色彩については原本参照)



別掲8(引用商標11)(色彩については原本参照)


異議決定日 2016-10-03 
出願番号 商願2014-105901(T2014-105901) 
審決分類 T 1 651・ 271- Y (W25)
T 1 651・ 22- Y (W25)
T 1 651・ 261- Y (W25)
最終処分 維持  
前審関与審査官 小松 里美 
特許庁審判長 酒井 福造
特許庁審判官 中束 としえ
平澤 芳行
登録日 2015-10-23 
登録番号 商標登録第5800810号(T5800810) 
権利者 エヌ ビー エイ プロパティーズ インコーポレーテッド
代理人 特許業務法人 松原・村木国際特許事務所 
代理人 佐久間 剛 
代理人 中熊 眞由美 
代理人 柳田 征史 

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