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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W34
審判 全部申立て  登録を維持 W34
審判 全部申立て  登録を維持 W34
審判 全部申立て  登録を維持 W34
審判 全部申立て  登録を維持 W34
管理番号 1319364 
異議申立番号 異議2015-900355 
総通号数 202 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2016-10-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2015-11-09 
確定日 2016-09-08 
異議申立件数
事件の表示 登録第5784639号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて,次のとおり決定する。 
結論 登録第5784639号商標の商標登録を維持する。
理由 第1 本件商標
本件登録第5784639号商標(以下「本件商標」という。)は,別掲のとおりの構成からなり,平成26年12月11日に登録出願,第34類「葉巻たばこ,紙巻たばこ,シガリロ,手巻きたばこ,パイプ用たばこ,かみたばこ,かぎたばこ,その他のたばこ,たばこ用紙で巻いたたばこと切断された丁子から成るフィルター付き或いはフィルター無しの紙巻たばこ,熱処理された湿気或いは半分湿気のある粉末状たばこからなる経口用無煙たばこ製品,熱処理された湿気或いは半分湿気のある粉末状たばこからなる個別包装された経口用無煙たばこ製品,代用たばこ(医療用のものを除く。),電子たばこ,加熱して使用されることを目的とするたばこ製品,たばこを電子的に加熱する手持型喫煙器具,シガレットチューブ,フィルター,たばこ入れの缶,たばこケース及び灰皿,パイプ,たばこ紙巻き器,ライター,その他の喫煙用具,マッチ」を指定商品として,同27年7月27日に登録査定,同年8月7日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が,本件登録異議の申立ての理由として引用する登録商標は,以下の引用商標1ないし3(以下,これらを一括していうときは「引用商標」という。)である。
1 引用商標1
商標の構成 「PRIME」の欧文字と「プライム」の片仮名とを上下二段に横書きした構成からなる商標
登録番号 商標登録第2248881号
登録出願日 昭和62年4月17日
設定登録日 平成2年7月30日
指定商品 第34類「たばこ,喫煙用具,マッチ」
2 引用商標2
商標の構成 「PRIME」の欧文字と「プライム」の片仮名とを上下二段に横書きした構成からなる商標
登録番号 商標登録第4625306号
登録出願日 平成14年3月13日
設定登録日 平成14年11月29日
指定商品 第34類「たばこ,喫煙用具(貴金属製のものを除く。),マッチ」
3 引用商標3
商標の構成 「プライム」の片仮名と「PRIME」の欧文字とを上下二段に横書きした構成からなる商標
登録番号 商標登録第5718655号
登録出願日 平成26年1月17日
設定登録日 平成26年11月14日
指定商品 第34類「たばこ(未加工品又は加工品),スモーキングたばこ,パイプたばこ,手巻きたばこ,かみたばこ,スヌースを含むかぎたばこ,紙巻たばこ,電子たばこ,葉巻たばこ,シガリロ,その他のたばこ,シガレットチューブ,ライター,その他の喫煙用具,マッチ」

第3 登録異議の申立ての理由
申立人は,本件商標は商標法第4条第1項第10号,同項第11号,同項第15号及び同項第19号に違反して登録されたものであるから,同法第43条の2第1号により,その登録は取り消されるべきであると申立て,その理由を要旨以下のように述べ,証拠方法として甲第1号証ないし甲第76号証(枝番を含む。ただし,甲第25号証は欠番である。)を提出した。
1 山型図形を伴う商標「Marlboro」の著名性及び識別性について
本件商標の上段に配置されている山型図形を伴う欧文字「Marlboro」は,本件商標権者が商品「たばこ」等のブランド名称として使用する著名商標である。「Marlboro」ブランドの商品は,1924年から販売が開始されて以来,現在では世界各国において宣伝広告及び販売されているものであり,全世界において周知・著名となっているたばこブランドの代表的なものの一つと考えられる。
したがって,本件商標は,全体として一体不可分と認識されるというより,山型図形を伴う欧文字「Marlboro」部分が最重要部として別格に分離独立して認識されると考えられるから,この山型図形を伴う欧文字「Marlboro」部分は,もはや製造者又は販売者の表示にすぎないのであって,最重要部分ではあったとしても,商標権者が販売する商品の個々の銘柄が有する識別標識自体は,別に存在すると考えるべきである。
2 「prime」の自他識別力について
本件商標を構成する英単語「prime」の用語は,辞書的には第一義的には「主要な,主な,最も重要な,極上の」の意味合いを有する形容詞ではあるが,その他にも,「全盛」,「初期」,「青春」のような名詞的意味合いを有する単語であるとともに,「準備する」「火薬を詰める」のような動詞的意味合いを有する単語でもあり,かつ,たばこ業界においては一般的に品質表示用語として使用されていない事実を鑑みても,直ちに画一的な意味合いを認識させることのない多義語と評価すべき用語である。すなわち,本件商標の「prime」部分は,「Marlboro」の最重要部分とは別に自他商品識別力のある構成要素と評価できる商標的表示になっていると考えられ,また,明らかに多数ある「Marlboro」ブランド下の商品における個別の銘柄相互を区別するための識別標識として使用されている。
現在,たばこの取引業者及び需要者において,多義の語義を有する「PRIME」の文字列からは,唯一特定の意味を直接的に想起されると理解されて使用されている例はほぼ無く,市場一般の評価としては辞書的な指摘はあるものの,商標として評価できることから,「PRIME」単独の文字は商標として十分通用すると評価されているものと考えられる。引用商標が単独で使用される場合,充分に識別力・顕著性を有することは問題とはされないと考えられる。
本件商標の中に使用されている「prime」の文字が,記述的であるか,または商標的な使用に該当するおそれが全くないかについては,商標の構成自体を詳細に検討することにより判断されるべき問題である。
すなわち,一般的に広く周知されている「Marlboro」ブランド下の商品として多数存在する銘柄群の中で,個別にどの種類であるかを識別し,銘柄相互を差別化する為に,「prime」の文字が識別標識として使用されていることは明らかである。この点で「prime」の文字部分は,「Marlboro」ブランド下にある「臭いを抑えた」特徴を有する「prime」という名称の商品銘柄であると識別され,差別化されるのであって,結果として取引者や需要者においても,そのように認識されるものと考えられる。
3 「less smell」の識別力について
本件商標を構成する英単語「less smell」の用語は,平易な英単語で構成される文字要素であり,該部分から“少ない香り,または,臭い抑え目”のような意味合いが生じることになると考えられ,本件商標に接する需要者・取引者は「less smell」を識別標識として抽出することはない。
4 本件商標の分離可能性
本件商標中の「prime」部分は,山型図形を伴う欧文字「Marlboro」部分から少し離れた位置に配置されており,「Marlboro」より小さいながらも異なる書体を用いて,太字でしっかりと書された態様であるため,全体の商標中においても存在感を示している構成要素であり,「prime」は自他商品識別標識としての機能を充分に発揮していると評価できるため,「prime」部分も,分離独立した商標として,需要者・取引者に認識されることになると考えられる。
したがって,本件商標は,最重要部分である山型図形を伴う欧文字「Marlboro」部分のみならず,「prime」部分も個別に独立した商標として認識されることになると考えられるため,本件商標からは,「マールボロプライムレススメル」の称呼のほか,「マールボロ」及び「プライム」の各称呼が独立して生ずることになると考えられる。
5 申立人の商標の使用態様について
申立人は,平成15年から平成22年まで長期に渡り,商品「たばこ」に「PRIME」の用語を使用していた。具体的には,まず「マイルドセブン・プライム・スーパーライト・ボックス」を,平成15年(2003年)11月4日から東京都限定として販売開始し,その後の平成16年3月1日からは,販売エリアが日本全国に拡大,平成22年(2010年)7月の終売を迎えるまでの約7年間という長期にわたり,継続して販売していたという実績がある。また,平成17年(2005年)7月1日から平成19年(2007年)3月までは,「PRIME」商標を需要者・取引者に最重要部分として看取される態様で付したたばこ「マイルドセブン・プライム・スリム・スリー」を,愛知県限定で販売していた。この他にも,「PRIME」が付されたたばこ銘柄としては,「マイルドセブン・プライム・メンソール・ライト・ボックス」(平成16年(2004年)3月1日?平成19年(2007年)3月(東京都⇒平成16年9月1日より全国)),「マイルドセブン・プライム・ライト・ボックス」(平成16年(2004年)7月1日?平成18年(2006年)8月(大阪府⇒平成17年2月1日より大阪・福岡))及び「マイルドセブン・プライム・ボックス」(平成16年(2004年)7月1日?平成17年(2005年)2月(大阪府))の3銘柄を販売した実績がある。
すなわち,これらの実績は,申立人が「PRIME」なる語を商品「たばこ」に付して,「商標」として長期にわたって継続的に使用してきたことの証左なのであって,申立人の保有する商標「PRIME」の識別力とかかる商標の長期的な使用に基づく業務上の信用は,保護されるべきであると考えられる。
甲第11号証には,「MILD SEVEN」の文字が商標として表示されており,その下段に大きく太字で「PRIME」の文字が商標として表示されている。前述のように「PRIME」なる語は多義語であり,商標的表示とみなすべきものであることから,かかる態様において商標「PRIME」を使用した場合は,「PRIME」が本銘柄の出所表示機能及び品質保証機能を発揮していると評価できると考えられる。また,甲第12号証に示したたばこ銘柄に対しては,商標「PRIME」をその他の要素と比して特段に大きくハッキリと表示していたことからしてみても,たばこ業界における需要者・取引者において,「PRIME」なる語は申立人の業務を表示する商標として認識されることが明確であると考える。
さらに申立人は,販売を開始した当時においては革新的な品質・機能を有する商品であった「低臭気たばこ」商品の販売戦略の一環として,「マイルドセブン・プライム・スーパーライト・ボックス」に端を発し,商標「PRIME」を「低臭気たばこ」商品の代表的なブランド名称として,継続的に使用していた。
つまり,商標「PRIME」は,申立人が「低臭気たばこ」商品において使用する商標として,需要者・取引者に認識されるようになったと考えることが妥当であり,現在「マイルドセブン・プライム・スーパーライト・ボックス」等の個別の銘柄の販売自体は終了しているものの,今なお申立人の販売する「低臭気たばこ」商品に表示する商標として,依然高い周知性を有すると評価できると考えられる。
6 商標「PRIME」を付したたばこ商品の広告宣伝活動および販売実績について
申立人は,「PRIME」を付した「低臭気たばこ」の広告宣伝活動を,広範な活動対象及び地域で複数回行っている実績がある。具体的には,まず新聞において,平成15年(2003年)10月から平成17年(2005年)9月まで,延べ137紙に731段分の広告を掲載し,これらの掲載料は,合計約3億8千万円に上っており,更に雑誌においては,平成15年(2003年)11月から平成17年(2005年)9月まで,延べ227誌に490ページ分の広告を掲載し,これらの掲載料としても,約8億円に上っている。これら複数の広告物からは,申立人の販売するたばこのブランド名称であった「MILD SEVEN」の文字とともに,「PRIME」の文字が,太字で目立つ態様で書されていること,また一部の商標「PRIME」をその単独で付した商品においては,「PRIME」の文字が極めて看取しやすい態様で使用されていることが明確に確認できると考えられる。
商標「PRIME」を使用したたばこ商品は,平成15年(2003年)から平成22年(2010年)にわたって販売されたが,上記宣伝広告の結果,その間合計620億円の売上げを誇ったヒット商品である。
そして,申立人が発行する「事業報告書(2003年?2006年分)」においては,商標「PRIME」を付した商品の紹介,販売エリア及び販売状況等が詳細に掲載されており,申立人が長期的かつ継続的に,商標「PRIME」を商品に付して使用してきた事実が確認できる。
さらに,申立人が作成し,たばこの小売販売店等に配布した「たばこカタログ(2003年?2010年分)」においても,商標「PRIME」を付した商品が継続的に掲載されており,商標「PRIME」は,長年にわたって申立人により使用されてきたことが証明されるものと考えられる。
また,2004年7月?11月号として,全国たばこ販売協同組合連合会より発行された業界紙(各月発行)「全国たばこ新聞」の広告欄においても,商標「PRIME」が付されたたばこ銘柄の宣伝広告活動を行っており,ここでも,「PRIME」が「低臭気たばこ」商品の商標的識別標識であることが明確になるような表示をするとともに,商標「PRIME」を付したたばこの宣伝広告をしている。特に,甲第46号証及び甲第47号証では,「PRIME」なる語が独立して目立つように顕著に表示をした広告となっている。
そして,2003年から2005年においては各種の新聞記事や雑誌記事で,申立人が販売するたばこ商品が複数掲載され,紹介されているが,これらの各たばこ銘柄を表す商標として,商標「PRIME」「プライム」が商標「MILD SEVEN」「マイルドセブン」とともに用いられている。
また,申立人は,2004年10月1日から同月29日において,「新作たばこ全12銘柄お試しキャンペーン」なる名称の販売促進活動を展開しており,ここでも商標「PRIME」が付されたたばこ商品の宣伝広告が行われている。さらに,株式会社博報堂の調査によると,これらの広告は,雑誌「週刊SPA!」 (発行部数:64,364部)や「週刊現代」(発行部数:318,769部),「週刊朝日」(発行部数:98,450部)に掲載されており,これらの掲載料の合計だけでも,2億3千万円に上っている。
さらに,申立人は,2003年及び2004年に「マイルドセブン・プライム・シリーズ」に係るキャンペーンを行っており,様々な景品を抽選によって配布している。それらの総当選者数は,合計で1万名を超える大規模なものであり,大きな反響があったことが確認できるものと思料する。
本来,「PRIME」なる語には「低臭気」や「においを抑えた」のような意味合いは一切含まれておらず,商品「たばこ」の品質を直接的に表示する用語として一般的に使用されてきた事実もなく,また複数の意味合いを有する多義語であつたにもかかわらず,申立人が単独又は商標「MILD SEVEN」とともに商標「PRIME」を継続的に使用してきたことによって自他商品識別力のある独立した商標として認識されることとなったと解することが妥当であるのみならず,商標「PRIME」は,申立人による該商標を付したたばこの販売数や宣伝広告量,雑誌・新聞への掲載数を考慮すると,需要者・取引者の間で申立人が販売する「低臭気たばこ」商品に使用される独自の商標として,周知・著名であったものと考えられる。
したがって,「PRIME」なる語は,今なお申立人の販売するたばこ商品を表示する商標として,周知であると評価できると考えられる。
7 商標の周知・著名性の残存について
申立人は,平成22年に「マイルドセブン・プライム・スーパーライト・ボックス」の販売を終了したが,たばこ商品を製造・販売する事業者が限定されていること,「マイルドセブン」自体が極めて著名なたばこのブランド名称であること,また愛煙家が同じ銘柄を継続して選択する傾向が強いと考えられていることなどから,「マイルドセブン」ブランド下において,「PRIME」シリーズという「低臭気たばこ」商品群が存在していたことを記憶している愛煙家は,今なお相当数存在することが考えられる。
このような状況下において,申立人以外のいかなる者が,商品「たばこ」に対して「PRIME」なる語をひとたび用いれば,それがたとえある商標を構成する全体の中では部分的であると主張し得る程度の態様であったとしても,取引者・需要者においては,申立人の保有する商標「PRIME」を自然に想起することになるのは明らかである。
8 使用を中止した商標の使用の再開について
現在多くの業界において,過去に使用していたブランド名称を復活させるべく使用を再開する事例が発見される。
申立人も,「チェリー」をはじめ,「ヒース」「ホープ」「櫻(さくら)」 「憩(いこい)」「PRIME」「PRESTIGE」「SPIRIT」「CAMEL」などのように,過去に使用し,休眠させていた商標について,再度使用を開始したという実績を多数有している。本件に係る商標「PRIME」も,まさに申立人が一度使用を中止し,再開した商標の一つであって,そうした意味では,向後また使用を開始する可能性が充分に考えられるものであるといえる。
したがって,周知・著名であった商標を含む商標は,たとえ現在その商標が休眠中であったとしても,依然として,周知・著名性が残存しており,かつ自他商品識別力を有する商標である場合には,安易に併存登録させるべきではないと考えられる。
9 商標法第4条第1項第11号違反について
本件商標は,山型図形と欧文字「Marlboro」とを結合した態様を上段に大きく配置し,太字の欧文字「prime」を中段に横書きし,細字の欧文字「less smell」を下段に横書きし,その右横に波状の二本線を配置したものであり,第34類「葉巻たばこ」等を指定商品として出願され,商標登録を受けたものであり,前述のように,「prime」部分が分離独立して認識されることから,「プライム」の称呼が生ずることになると考えられる。
一方,引用商標は,その文字構成から「プライム」の称呼が自然と生ずると考えられる。
両商標の外観・称呼及び観念を総合的に考察すると,両商標は類似するものと考えられる。特に,商取引においては,称呼のみをもって取引を行う慣習が依然として強く存在しており,数多の「Marlboro」ブランド下の商品群から,特に〔プライム〕の称呼のみをもって本件商標を付したたばこ銘柄の取引が行われる可能性が充分に考えられることから,本件商標と引用商標との間で出所混同が生ずる可能性が高い。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものである。
10 商標法第4条第1項第10号違反について
本件商標は,申立人が使用する商標「PRIME」と類似する関係にあるといい得るものであり,また,申立人が使用する商標「PRIME」は,本件商標の登録出願時及び登録査定時において日本国内で周知であったと考えられる。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第10号に違反して登録されたものである。
11 商標法第4条第1項第15号違反について
申立人が使用する商標「PRIME」は,前述のように,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,需要者・取引者の間で,少なくとも周知・著名性が残存していたものと考えられる。
本件商標に接する需要者・取引者が,申立人に係る商標又はその表示行為を,想起・連想することになる可能性は否定できないと考えられ,本件商標を商品「たばこ」等に使用すると,「prime」が商標中の山型図形を伴う著名商標「Marlboro」とともに,商標中の別個の要部として認識されると考えられるため,あたかも申立人又はその関連企業の業務に係る商品であるかのように誤認されるおそれがあり,「Marlboro」ブランド下の商品群の中に,申立人の業務に係る商品が存在するのではないかと混同を生じさせるおそれがあることは明らかである。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものである。
12 商標法第4条第1項第19号違反について
申立人が使用する「PRIME」は,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,我が国における需要者・取引者の間では,少なくとも周知・著名性が残存していたものと考えられる。
また,本件商標は,申立人が保有する商標「PRIME」を「MILD SEVEN\PRIME」として長年販売していた実績を充分に承知の上で出願されたものである。近年,「PRIME」を付した商品が存在しないことを奇貨として,「低臭気」機能を有し,かつ「PRIME」なる名称を付したたばこ銘柄を販売するための出願であると解することが容易であることから,申立人が蓄積した「PRIME」商標の著名性にフリーライドする意図をもって出願したものであると考えざるを得ず,本件商標権者の不正の目的が推認される可能性もあるのではないかと考えるものである。特に,「PRIME」を「低臭気たばこ」商品に付する商標として申立人が長期的に使用してきたという事実がある以上,あえてその名称採択に必然性のない「prime」の文字を本件商標中に導入することは,申立人の商標「PRIME」が発揮した業務上の信用に,ただ乗りする意図が内在しているものと客観的にも評価せざるを得ない。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第19号に違反して登録されたものである。
13 結語
以上のとおり,本件商標は,商標法第4条1項第10号,同項第11号,同項第15号及び同項第19号に違反して登録されたものであるから,本件商標の登録は取り消されるべきである。

第4 当審の判断
1 認定事実
証拠及び申立人の主張によれば,以下の事実が認められる。
(1)甲第11号証(枝番を含む。)は,平成15年(2003年)11月4日から東京都限定として販売を開始し,その後,平成16年(2004年)3月1日から日本全国に販売を拡大し,平成22年(2010年)7月に販売を終えた「マイルドセブン・プライム・スーパーライト・ボックス」に係る商品「たばこ」の包装箱であるところ,そこにおける商標の使用態様は,「MILD SEVEN」「PRIME」「SUPER LIGHTS」であり,「PRIME」の商標が単独で使用されているとはいえない態様のものである(甲第11号証の4は,「PRIME」の語が包装箱内の「紙巻たばこ」に表示されていることから,「紙巻たばこ」が包装箱に納められた状態からは,「PRIME」の語の使用態様は確認できない。)。
(2)甲第12号証(枝番を含む。)は,平成17年(2005年)7月1日から平成19年(2007年)3月まで愛知県限定で販売されていた「マイルドセブン・プライム・スリム・スリー」に係る商品「たばこ」の包装箱であるところ,そこにおける商標の使用態様は,「NEW SMOKING WAY PRIME」の文字とともに「PRIME」の文字が表示されているものであり,ここにおいては,「PRIME」の商標が比較的大きく表示されてはいるものの,これが単独で使用されているとはいえない態様のものである(甲第12号証の3は,「PRIME」の語が包装箱内の「紙巻たばこ」に表示されていることから,「紙巻たばこ」が包装箱に納められた状態からは,「PRIME」の語の使用態様は確認できない。)。
(3)甲第13号証(枝番を含む。)は,平成16年(2004年)3月1日から東京都限定として販売を開始し,その後,平成16年(2004年)9月1日から日本全国に販売を拡大し,平成19年(2007年)3月に販売を終えた「マイルドセブン・プライム・メンソール・ライト・ボックス」に係る商品「たばこ」の包装箱であるところ,そこにおける商標の使用態様は,「MILD SEVEV」「PRIME」「MENTHOL LIGHTS」であり,「PRIME」の商標が単独で使用されているとはいえない態様のものである(甲第13号証の4は,「PRIME」の語が包装箱内の「紙巻たばこ」に表示されていることから,「紙巻たばこ」が包装箱に納められた状態からは,「PRIME」の語の使用態様は確認できない。)。
(4)甲第14号証(枝番を含む。)は,平成16年(2004年)7月1日から大阪府限定として販売を開始し,その後,平成17年(2005年)2月1日から福岡にも販売を拡大し,平成18年(2006年)8月に販売を終えた「マイルドセブン・プライム・ライト・ボックス」に係る商品「たばこ」の包装箱であるところ,そこにおける商標の使用態様は,「MILD SEVEN」「PRIME」との表示であり,「PRIME」の商標が単独で使用されているとはいえない態様のものである(甲第14号証の4は,「PRIME」の語が包装箱内の「紙巻たばこ」に表示されていることから,「紙巻たばこ」が包装箱に納められた状態からは,「PRIME」の語の使用態様は確認できない。)。
(5)甲第15号証(枝番を含む。)は,平成16年(2004年)7月1日から平成17年(2005年)2月まで大阪府で販売されていた「マイルドセブン・プライム・ボックス」に係る商品「たばこ」の包装箱であるところ,そこにおける商標の使用態様は,「MILD SEVEN」「PRIME」との表示であり,「PRIME」の商標が単独で使用されているとはいえない態様のものである(甲第15号証の2は,「PRIME」の語が包装箱内の「紙巻たばこ」に表示されていることから,「紙巻たばこ」が包装箱に納められた状態からは,「PRIME」の語の使用態様は確認できない。)。
(6)甲第16号証ないし甲第21号証は,申立人の「JT News Release」(2003年10月6日付ないし2005年6月9日付)であるところ,これらは,「マイルドセブン・プライム・スーパーライト・ボックス」,「マイルドセブン・プライム・ボックス」,「マイルドセブン・プライム・ライト・ボックス」,「マイルドセブン・プライム・メンソール・ライト・ボックス」,「マイルドセブン・プライム・スリム・スリー」などの商品「たばこ」に関する記事であり,「PRIME」の商標が単独で使用されている事実は認められない。
(7)甲第22号証ないし甲第24号証の「マイルドセブン・プライム シリーズ」に係る広告実績によっては,「PRIME」の商標が単独で使用されていることは確認することはできない。
(8)甲第26号証ないし甲第34号証の「日本たばこ産業株式会社事業報告書」(2003年度中間期ないし2006年3月期)には,「MILD SEVEN」「PRIME」の表示を伴ったたばこの包装箱の写真,及び「マイルドセブン・プライム・スーパーライト・ボックス」,「マイルドセブン・プライム・ライト・ボックス」などの商品「たばこ」に関する説明や宣伝がされているが,「PRIME」の商標が単独で使用されている事実は確認することはできない。
(9)甲第35号証ないし甲第44号証の「たばこカタログ」(2003年11月ないし2010年2月)には,「MILD SEVEN」「PRIME」の表示を伴ったたばこの包装箱の写真,及び「マイルドセブン・プライム・スーパーライト・ボックス」,「マイルドセブン・プライム・スリム・スリー」などの商品「たばこ」に関する説明や宣伝がされているが,「PRIME」の商標が単独で使用されている事実は確認することはできない。
(10)甲第45号証ないし甲第49号証の「全国たばこ新聞」(2004年6月25日ないし2004年10月25日)には,「MILD SEVEN」「PRIME」の表示を伴ったたばこの包装箱の写真や「マイルドセブン・プライム・スーパーライト・ボックス」との表示がされているが,「PRIME」の商標が単独で使用されている事実は確認することはできない。
(11)甲第50号証ないし甲第71号証の新聞記事や雑誌記事においても,「MILD SEVEN」「PRIME」の表示を伴ったたばこの包装箱の写真とともに,「マイルドセブン・プライム・スーパーライト・ボックス」,「マイルドセブン・プライム・スリム・スリー」に係る商品「たばこ」に関する紹介・宣伝がされているものの,「PRIME」の商標が単独で紹介や宣伝がされている事実は確認することはできない。
(12)その他の証拠(甲72?76)においても,「PRIME」の商標が単独で紹介や宣伝がされている事実は確認することはできない。
(13)前記(1)ないし(5)のとおり,申立人が商品「たばこ」について標章「PRIME」を使用していたのは,前記(1)の「マイルドセブン・プライム・スーパーライト・ボックス」に係る販売が平成15年11月から平成22年7月までの約7年間であって,その使用開始時期を含めて最長であったが,その後は,本件商標の登録出願時及び登録査定時に至るまで標章「PRIME」ないし「プライム」を使用した事実は認められない。
2 引用商標の周知著名性について
前記1認定の事実によれば,申立人の使用に係る標章「PRIME」ないし「プライム」が単独で,商品「たばこ」についての商標として取引上使用されていた事実は確認できず,甲第12号証(枝番を含む。)のように,「PRIME」の商標が比較的大きく表示されているものがあるとしても,その使用範囲及び期間は愛知県限定で約1年9月と短く,ここにおいても「PRIME」の商標が単独で取引上使用されていた事実は確認できないことからすれば,申立人が提出した証拠によっては,標章「PRIME」ないし「プライム」の語が,商品「たばこ」について取引上使用され,その発売期間中に周知性を獲得し,その後,本件商標の登録出願時及び登録査定時に至るまで,その周知性が継続していたものとは認めることができない。
3 商標法第4条第1項第11号について
本件商標は,別掲に示すとおりの構成からなるところ,その構成中,顕著に表された山型図形を伴う欧文字「Marlboro」部分は,本件商標の登録出願時及び登録査定時において既に,本件商標権者が商品「たばこ」等のブランドとして需要者の間に広く認識されていたものと認められる。他方,その構成中の「prime」の語は,「最も重要な,主要な,主な,第一等の」(小学館ランダムハウイス英和大辞典 第二版)などや,「第一の,優良の,最良の」(研究社新英和大辞典)などの意味を有する親しまれた英語であり,その片仮名表記である「プライム」の語も,「最も重要なさま。最良の。」の意味を有する外来語として,本件商標の登録査定時には既に知られていたといえるものである(広辞苑第六版)。
そうすると,本件商標中における「prime」の語は,当該商品が「最良の」「第一等の」といったことを表示する,商品の品質表示として取引者,需要者に理解されるというべきものであり,本件商標において顕著に表された山型図形を伴う欧文字「Marlboro」部分とは別に,この「prime」部分が独立して自他商品識別標識としての機能し得るものとは認め難い。
したがって,本件商標中の「prime」の文字部分を,その要部とみるのは相当ではなく,本件商標は,この「prime」の語をもって取引に資されるということはできない。
この点に関して申立人は,「prime」の語は,その他にも,「全盛」「初期」「青春」のような名詞的意味合いを有する単語であるとともに,「準備する」「火薬を詰める」のような動詞的意味合いを有する単語でもあり,直ちに画一的な意味合いを認識させることのない多義語と評価すべき用語であると主張している。しかしながら,「prime」の語が申立人の主張するような意味合いで日常的に親しまれて使用されていることを示す証拠及び事情は認められず,申立人の上記主張は採用することはできない。
してみれば,本件商標は,その構成中の「prime」部分が要部として分離して観察されるとはいえず,同部分から出所識別標識としての称呼及び観念は生じないというべきであるから,本件商標は,「PRIME」の欧文字及び「プライム」の片仮名からなる引用商標とは類似しない。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第11号に該当しない。
4 商標法第4条第1項第10号について
前記2のとおり,申立人の使用に係る標章「PRIME」ないし「プライム」は,商品「たばこ」に使用された結果,申立人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間で広く認識されているということはできないものである。
また,前記3のとおり,本件商標は,引用商標とは非類似の商標であるから,申立人の使用に係る標章「PRIME」ないし「プライム」とも非類似の商標である。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第10号に該当しない。
5 商標法第4条第1項第15号について
前記2のとおり,申立人の使用に係る標章「PRIME」ないし「プライム」は,商品「たばこ」に使用された結果,申立人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間で広く認識されているということはできないものである。
そうすると,本件商標をその指定商品に使用しても,これに接する取引者,需要者が,その商品が申立人又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように連想,想起することはなく,その出所について混同を生ずるおそれはないというべきである。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当しない。
6 商標法第4条第1項第19号について
前記2のとおり,申立人の使用に係る標章「PRIME」ないし「プライム」は,商品「たばこ」に使用された結果,申立人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間で広く認識されているということはできないものである。
また,前記3及び4のとおり,本件商標は,申立人の使用に係る標章「PRIME」ないし「プライム」とは非類似の商標である。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第19号該当性の前提を欠くものであり,また,申立人が提出した証拠からは,本件商標が不正の目的で使用をするものというべき事実及び実情は認められない。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第19号に該当しない。
7 まとめ
以上のとおり,本件商標は,商標法第4条第1項第10号,同項第11号,同項第15号及び同項第19号のいずれにも違反して登録されたものとは認められないから,同法第43条の3第4項に基づき,その登録を維持すべきである。
よって,結論のとおり決定する。
別掲 別掲 本件商標




異議決定日 2016-08-30 
出願番号 商願2014-104512(T2014-104512) 
審決分類 T 1 651・ 262- Y (W34)
T 1 651・ 25- Y (W34)
T 1 651・ 271- Y (W34)
T 1 651・ 263- Y (W34)
T 1 651・ 222- Y (W34)
最終処分 維持  
前審関与審査官 吉野 晃弘 
特許庁審判長 早川 文宏
特許庁審判官 田中 幸一
田村 正明
登録日 2015-08-07 
登録番号 商標登録第5784639号(T5784639) 
権利者 フィリップ モリス ブランズ エスエイアールエル
商標の称呼 マールボロプライムレススメル、マルボロプライムレススメル、マールボロ、マルボロ、プライムレススメル、プライム、レススメル 
代理人 秋山 朋子 
代理人 和田 信博 
代理人 広瀬 文彦 
代理人 末岡 秀文 

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