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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W3032
審判 全部申立て  登録を維持 W3032
審判 全部申立て  登録を維持 W3032
審判 全部申立て  登録を維持 W3032
審判 全部申立て  登録を維持 W3032
管理番号 1319353 
異議申立番号 異議2016-900054 
総通号数 202 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2016-10-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2016-03-03 
確定日 2016-09-01 
異議申立件数
事件の表示 登録第5809722号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第5809722号商標の商標登録を維持する。
理由 第1 本件商標
本件登録第5809722号商標(以下「本件商標」という。)は、「モンスターハンタークロス」の片仮名を標準文字で表してなり、平成27年7月7日に登録出願、第30類「茶,コーヒー,ココア,コーヒー豆」及び第32類「清涼飲料,果実飲料,飲料用野菜ジュース」を指定商品として、同年10月21日に登録査定され、同年11月27日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が引用する商標は、次の45件(以下、それらを項番1から順次「引用商標1」「引用商標2」のようにいい、全部をまとめて「引用商標」という。)であり、それらの指定商品及び指定役務、登録出願日並びに設定登録日は商標登録原簿又は国際登録に基づく商標権に係る商標登録原簿に記載のとおりであって、いずれの商標権も現に有効に存続しているものである。
商標登録番号 : 商標の態様
1 登録第5379390号商標:MONSTER
2 登録第5057229号商標:別掲1のとおり
3 国際登録第1048069号商標:別掲1のとおり
4 登録第5689430号商標:別掲1のとおり
5 登録第5730813号商標:別掲2のとおり
6 登録第5010968号商標:M MONSTER ENERGY
7 登録第5431413号商標:別掲3のとおり
8 登録第5788675号商標:別掲3のとおり
9 登録第5393681号商標:MONSTER ENERGY
10 登録第5788676号商標:MONSTER ENERGY
11 登録第5844119号商標:MONSTER ENERGY
12 登録第5495941号商標:MONSTER KHAOS ENERGY + JUICE
13 登録第5769176号商標:MONSTER ENERGY ABSOLUTELY ZERO
14 登録第5419513号商標:別掲4のとおり
15 登録第5757485号商標:COFFEE MONSTER
16 登録第5715016号商標:MONSTER ENERGY ULTRA
17 登録第5844163号商標:別掲5のとおり
18 登録第5394526号商標:別掲6のとおり
19 登録第5442171号商標:MONSTER ENERGY PINK
20 登録第5417815号商標:MONSTER ENERGY AGENT ORANGE
21 登録第5527566号商標:MONSTER DETOX
22 登録第5476620号商標:MONSTER REHAB
23 登録第5490798号商標:MONSTER RECOVERY
24 登録第5497766号商標:MONSTER UNLEADED
25 登録第5451361号商標:MONSTER PUMPED
26 登録第5480373号商標:MONSTER BIOACTIVATED
27 登録第5527567号商標:MONSTER REHABITUATE
28 登録第5417770号商標:MONSTER LO-CARB
29 登録第5375090号商標:PROTEIN MONSTER
30 登録第5327467号商標:MUSCLE MONSTER
31 登録第5409580号商標:MONSTER RIPPER
32 登録第5409582号商標:MONSTER BLACK
33 登録第5419507号商標:MONSTER DOUBLE BLACK
34 登録第5409583号商標:MONSTER GIRL
35 登録第5542584号商標:MONSTER CUBA-LIMA
36 登録第5043703号商標:JAVA MONSTER
37 登録第5431412号商標:JAVA MONSTER
38 登録第5741128号商標:JAVA MONSTER
39 登録第5644854号商標:MONSTER SUPERNATURAL
40 登録第5423080号商標:LOCA MOCA JAVA MONSTER
41 登録第5389881号商標:X-PRESSO MONSTER
42 登録第5657923号商標:MONSTER ENERGY ULTRA RED
43 登録第5562023号商標:JAVA MONSTER GREEN BEANS
44 登録第5613400号商標:MONSTER THRILLER
45 登録第5644852号商標:KONA CAPPUCCINO M JAVA MONSTER

第3 登録異議申立ての理由
申立人は、本件商標の登録は商標法第4条第1項第11号、同項第15号及び同第7号に違反してなされたものであるから同法第43条の2第1号により取り消されるべきであるとして、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第270号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 申立人の使用に係る商標「MONSTER」の著名性
(1)会社沿革及び取り扱い商品
申立人は、1930年代に創業した米国の飲料メーカーであり、アルコールを含有しない飲料等の企画、開発、製造、マーケティング、販売の事業に従事していたが、2015年6月からはエナジードリンクに注力している(甲2、甲58)。
(2)「MONSTER ENERGY」ブランド創設と「MONSTER」ファミリー商標
申立人は2002年にエナジードリンクの新ブランド「MONSTER ENERGY」(引用商標9?11)を創設し、米国で同年3月から広告宣伝を開始し、同年4月から製造販売を開始した(甲4、甲7、甲18、甲58)。
この「MONSTER ENERGY」のオリジナル版のエナジードリンク製品は、従来の清涼飲料製品の容器とは異なる黒色ベースのボトル缶にモンスターの爪痕をかたどった「M」のロゴマーク(引用商標7、8)と「MONSTER」の文字(引用商標1)を太字で目立つように表示した野性味あふれる独特な雰囲気が経済・ビジネス界でも注目を浴び(甲56?甲58)、男性若者層を中心にたちまち人気商品となった。
申立人の「MONSTER ENERGY」ブランドの各種エナジードリンク(以下「申立人商品」という。)には、2002年の発売開始以降、現在まで継続して、「MONSTER ENERGY」をはじめ、構成中に「MONSTER」の文字を包含してなる構成を共通点とする多数の商標(以下、これらを総称して「MONSTERファミリー商標」という。)が個別商品名として使用されており(甲58)、そのボトル缶には「MONSTER」の文字が特徴的な書体の太字で大きく顕著に表示されている(甲11?甲16、甲58)。
(3)広告・マーケティング・販売促進活動
申立人は、2002年から現在まで、全世界における申立人商品に関する広告、マーケティング及び販売促進活動費として総額30億米ドルを超える費用を支出した(甲58)。その販売促進活動の主な内容は、世界の有名アスリート・レーシングチーム及び競技会、アマチュア選手、音楽祭及びミュージシャン、並びに米国ラスベガスの公共機関モノレールに対する支援活動(スポンサー提供)、並びに販売店用什器及び備品の供給である。
上記スポンサー提供活動においては、スポーツ競技会などイベント会場施設の看板、旗、垂れ幕、ブース、什器類、移動車、スタッフの衣装やユニフォーム、スポンサー契約アスリートやレーシングチームが着用するユニフォーム・ヘルメット・帽子・手袋・スポーツ用具・車体等、ニューズレター、ビデオクリップ、モノレールの車体や関連広告物などに、「MONSTER」の文字部分を顕著に表示した「MONSTER ENERGY」の文字、「MONSTER」の文字、モンスターの爪痕を象徴する「M」のロゴマーク(引用商標7、8)、あるいは「M MONSTER ENERGY」のロゴマーク(例えば、引用商標2?5)の商標が表示されている(以下、これらの複数又は全部をいうときは「MONSTERブランドマーク」という。)(甲34?甲45、甲52、甲53、甲56?甲58)。
(4)国内における販売及び販売促進活動
日本国内では申立人商品の販売は、アサヒ飲料株式会社(以下「アサヒ飲料」という。)を通じて行われている。2012年3月15日付のニュースリリースでアサヒ飲料が国内独占販売権取得を公表し、2種類のエナジードリンク「MONSTER ENERGY」及び「MONSTER KHAOS」の発売を発表、同年5月8日から実際の販売が開始した(甲5?甲7、甲12、甲14、甲58)。当該商品は発売後、日本国内でもたちまち人気となり、同年9月時点で既に年間売上目標の100万箱を突破し(甲8)、その後も好調に売上を伸ばして157万箱の売上を記録した(甲9、甲97?甲99)。
さらに、2013年5月7日からは新製品として糖質ゼロ・カロリーゼロのエナジードリンク「MONSTER ABSOLUTELY ZERO」が発売され(甲10、甲13、甲15)、2014年8月19日からは濃縮飲みきりサイズの「MONSTER ENERGY M3」が発売され(甲91、甲93)、2014年10月7日からはエナジーブレンド入りコーヒー飲料の「MONSTER COFFEE」が発売され(甲92、甲94)、2015年7月21日からは白いパッケージと甘すぎないすっきりした味わいが特長の「MONSTER ENERGY ULTRA」が発売されており(甲147?甲149、甲164)、現在まで6種の申立人商品が国内で流通している。なお、「MONSTER ENERGY M3」及び「MONSTER KHAOS」は2016年4月及び5月に新パッケージでリニューアルされ、リニューアル記念キャンペーンも実施された(甲183?甲187)。
これら6種の申立人商品は、日本全国のコンビニエンスストア、自動販売機、キオスク、スーパーマーケット、列車の売店、会員制スーパー、店舗、ゲームセンター、ドラッグストア及びホームセンター等の販売小売店のほか(甲58)、アサヒ飲料の通販サイトからも直接購入可能である(甲11?甲17)。また、大手ネットショッピングサイトのアマゾンジャパンなどでは日本未発売の輸入品販売も取り扱われている(甲33、甲172)。2012年5月の販売開始から2015年6月30日までに申立人は、国内で約2億3,600万缶の申立人商品を販売した。上記期間の販売総額は、1億7,500万米ドル以上、日本円で170億円以上である(甲58)。
また、2012年5月の国内発売直後から、継続的にテレビコマーシャル放映、日本開催の多数のスポーツイベント等へのスポンサー提供、サンプル配布など含む大々的な広告・販売促進活動が実施されている(甲58)。
(5)全世界の販売国・地域及び販売額
申立人は、現在までに全世界100以上の国及び地域で申立人商品を販売し、又は販売中である。2002年に米国で販売開始以来、130億缶以上販売し、世界中で毎年30億缶以上を売上げ、合計240億米ドルを超える収益を上げており、全世界における小売販売額は毎年60億米ドルを超える。2014年度(12月31日締め)の申立人の年間総販売額は、2013年度の25.9億米ドル及び2012年度の23.7億米ドルから、28.3億米ドルに増加した(甲58)。
(6)アパレル製品、ビデオゲーム製品等の販売
2002年から現在まで申立人は、MONSTERブランドマークを付したアパレル製品等の製造販売をライセンスしており、多数のライセンシーを通じて現在、日本及びアジア全域、オーストラリア、米国、カナダ、中央アメリカ、南米、ヨーロッパ、アイスランド、スカンジナビア及びメキシコを含む世界各地で販売中である(甲58)。また、MONSTERブランドマークのステッカーや転写シールも製造販売されており、モンスターアーミー(申立人が支援育成するアマチュア選手)の登録会員、スポンサー提供するアスリートやイベントの観客・ファンに配布されている(甲58)。
このようなMONSTERブランドマークが付された被服、運動用特殊衣服、運動用ヘルメット、ステッカー、リュックサック等は、インターネットの通信販売業者により日本国内でも輸入販売されており(甲47、甲48)、一般消費者の人気も高い。
また、申立人は、ビデオゲーム制作販売会社とも提携し、申立人がスポンサーを努めるカーレーサー等がMONSTERブランドマークを付したウェア等を着用し、レーシングカーを使用して登場する複数のビデオゲーム製品なども商品化しており、これらは日本でも購入可能である(甲58)。
(7)ウェブサイト・ソーシャルメディアによる情報発信及びアクセス数等
申立人商品の商品情報、スポンサー契約アスリート・チーム及びスポーツ等のイベントに関する情報、アスリート等の大会成績や記録情報、「MONSTER ENERGY」のアパレル及びアクセサリー類に関する商品情報や販売などが、申立人が開設運営する複数のウェブサイト及びソーシャルメディアサイトを介して日本を含む全世界の需要者に対して発信されており、日本を含む多数の需要者からのアクセス数がある(甲58)。
(8)経済界等からの表彰等
申立人商品の開発、導入の成功に急成長を遂げた申立人の業績は、本件商標が登録出願される以前から、経済界でも高く評価され、1999年ないし2014年に数々の表彰等を受けている(甲49?甲58)。
(9)国内外における商標登録によるブランド保護
申立人商品、及びアパレル製品、アクセサリー類・その他の関連グッズには、MONSTERブランドマーク、及び「MONSTER」と他の語や文字を結合した様々な結合商標が使用されており、これら全体でMONSTERファミリー商標を形成している。MONSTERファミリー商標は、世界115以上の国及び地域で商標登録・出願済みである(甲58、甲233?甲270)。
(10)国内における申立人のアパレル製品等の人気と模倣品の水際取締り
申立人のライセンシーの製造販売に係るMONSTERブランドマークを付した帽子、Tシャツ、スウェットシャツ、レーシングジャケット、手袋等のアパレル製品、オートバイ、車、サーフボード、スノーボードなどに貼付することができるステッカー(シール)などは、日本の国内でも、輸入販売されており、モトクロス、F1その他の自動車レース、スノーボード、サーフィン、エックススポーツ等のスポーツ愛好家を含む一般消費者の間で非常に人気の高い商品となっている。
そのような国内市場におけるMONSTERブランドマークの人気、周知性の高まりに便乗して、申立人の商標権を侵害するアパレル製品、ステッカー等の模倣品が海外で製造され、申立人の商標権侵害物品として、日本の税関で輸入が差止められる案件も増加している(甲59?甲90、甲105?甲118、甲173?甲182)。
(11)2013年以降に申立人が主に国内で主催又は協賛したスポーツイベント等及びプロモーションキャンペーンの概要
申立人は、申立人が主催又は協賛したスポーツイベント等及び関連のプロモーションキャンペーンにおいて、MONSTERブランドマークを使用している(甲119?甲137、甲147?甲157、甲159、甲161?甲171、甲184、甲186)。
(12)申立人ライセンシーの製造販売に係る関連グッズの販売状況
MONSTERブランドマークを付したアパレル製品、サーフボード、ヘルメット、時計、傘、ステッカー等のライセンス製品が販売されている(甲138?甲146)。
(13)まとめ
以上の事実に照らせば、申立人の使用にかかる「MONSTER」の文字は、本件商標の登録出願日以前より、申立人の業務に係る商品を表示するものとして、米国をはじめとする外国で広く認識されていただけにとどまらず、本件商標の登録出願時及び登録査定時には、日本国内の需要者の間でも申立人の業務に係る商品を表示するものとして広く認識されていたことが明らかである。
2 本件商標が商標法第4条第1項第11号に該当する理由
(1)本件商標の指定商品(以下「本件指定商品」という。)中、第30類「茶,コーヒー,ココア」及び第32類「清涼飲料,果実飲料,飲料用野菜ジュース」は、引用商標1、引用商標2、引用商標6、引用商標7、引用商標9、引用商標11ないし引用商標45の指定商品又は指定役務と同一又は類似の商品である。
加えて、本件指定商品は、一般消費者を対象として販売される飲料製品及びその原料(コーヒー豆)として把握されるものであるから、申立人が「MONSTER」の文字を使用して製造販売し、国内外で広く認識されているエナジードリンク製品と製造部門、販売部門が一致し、需要者が同種の目的、用途で購入するものであって、これらと極めて密接な関連性を有する商品であることが明らかである。
(2)本件商標の構成文字「モンスターハンタークロス」は、外観及び称呼の双方において冗長であることに加えて、辞書等に掲載されている既成語ではなく、観念的にも不可分一体のものでないことが明らかであるから、看者の注意、関心を最も強くひきつける語頭の「モンスター」の文字部分が商品識別標識として強く支配的な印象を与える。したがって、簡易迅速を尊ぶ商取引の場面では、語頭の「モンスター」の文字部分が独立の出所識別標識として機能し得るものである。よって、本件商標からは、「モンスター」の文字部分に基づいて「モンスター」の称呼及び観念が生じる。
引用商標1は、「MONSTER」の標準文字からなり、「モンスター」の称呼及び観念が生じる。
引用商標2は、別掲1のとおりの構成からなるロゴマークであり、構成中の「MONSTER」の文字部分が独立の出所識別標識として認識、理解され得るものであるから、「MONSTER」の文字部分に基づいて「モンスター」の称呼及び観念が生じる。
引用商標15は、「COFFEE MONSTER」の標準文字からなり、その指定商品との関係において「COFFEE」の文字部分は商品がコーヒーと関連するものであることを示す品質等表示として理解されるから、「MONSTER」の文字部分が独立の商品出所識別標識として認識、理解される。よって、引用商標15からもまた、「MONSTER」の文字部分に基づいて、「モンスター」の称呼及び観念が生じる。
(3)したがって、本件商標は、引用商標1、引用商標2及び引用商標15と「モンスター」の称呼及び観念を共通にする類似のものであって、当該引用商標の指定商品と同一又は類似の商品に使用されるものである。引用商標1、引用商標2及び引用商標15は、本件商標よりも先に登録出願されたものである。
よって、本件商標は商標法第4条第1項第11号に該当する。
3 本件商標が商標法第4条第1項第15号に該当する理由
(1)申立人は、2002年から現在に至るまでの過去14年間の長期間に亘り、製品名に常に「MONSTER」の文字を用いた数々のエナジードリンクを定期的、継続的に発売しており、日本国内でも2012年から現在までに、2012年5月8日発売の「MONSTER ENERGY」(甲5、甲7、甲12)及び同「MONSTER KHAOS」(甲6、甲7、甲14)、2013年5月7日発売の「MONSTER ABSOLUTELY ZERO」(甲10、甲13、甲15)、2014年8月19日発売の「MONSTER ENERGY M3」(甲91、甲93)、2014年10月7日発売の「MONSTER COFFEE」(甲92、甲94)、2015年7月21日発売の「MONSTER ENERGY ULTRA」(甲147?甲149、甲164)、2016年4月12日リニューアル発売の「MONSTER ENERGY M3」(甲183、甲185、甲187)、2016年5月17日リニューアル発売の「MONSTER KHAOS」(甲184、甲186)の全6種の異なる味わいのエナジードリンクを販売中であり、これらの製品名のすべてに「MONSTER」の文字が用いられている。
本件商標の登録出願時には、MONSTERブランドマーク、「MONSTER」及びその音訳のカナ文字表記「モンスター」の文字は、日本国内及び米国を含む多数の外国において申立人の業務に係る商品及び役務を表示するものとして、エナジードリンクを含む本件指定商品の取引者、需要者の間で広く認識されていた。また、「MONSTER」及び「モンスター」は申立人の商号の主要部を構成する文字であるから、エナジードリンクと同一又は類似の商品に使用される「MONSTER」及び「モンスター」の文字は、申立人及びその業務に係る商品を強く想起連想させる。
(2)本件商標は、「モンスター」の文字を他の文字と結合させて構成され、かつ、エナジードリンクと同一又は類似の商品に使用されるものであるから、申立人がエナジードリンクの製品名として使用中の「MONSTER ENERGY」、「MONSTER KHAOS」などといったMONSTERファミリー商標と出所識別標識として同じ印象を需要者に与える。
エナジードリンク製品の分野で、「MONSTER」又は「モンスター」の文字を用いた製品名が申立人以外の者の業務に係る商品出所識別標識として使用され、取引者及び需要者で広く認識されているといった事情は存在しない。本件商標がエナジードリンクを含む本件指定商品に使用されて当該分野の取引者、需要者の間で、被申立人の業務に係る商品を表示するものとして広く認識されているとは到底認められない。
こうした事情の下で、本件商標がエナジードリンク又はこれに類似する商品に使用されたときには、これに接した取引者、需要者は、申立人の使用に係るMONSTERファミリー商標と申立人を直ちに想起連想し、当該商品が申立人の製造販売に係るエナジードリンクのシリーズ製品、あるいは申立人と共同開発によって誕生した新製品などのように、申立人又は申立人と経済的又は組織的関係を有する者の取り扱いに係る商品であると誤信し、その出所について混同を生じるおそれが高いことが明らかである。
(3)本号は、出所の混同防止のみならず、著名商標の顧客吸引力へのフリーライド、その出所表示力のダイリューションを防止する趣旨も含むものであると解される(東京高裁判決 平成16年(行ケ)第85号)。
申立人と何ら経済的又は組織的な関係を有しない被申立人によって本件商標がエナジードリンク又はこれに類似する商品に使用されたときには、2002年から現在に至る申立人による継続的使用と営業努力によって申立人の商品役務出所識別標識として広く認識されるに至った「MONSTER」の文字、MONSTERブランドマーク及びMONSTERファミリー商標の強力な出所表示力が希釈化することが明らかである。また、被申立人による本件商標の使用は申立人がこれらの商標について獲得した信用力、顧客吸引力にフリーライドする行為といわざるを得ない。
よって、本件商標は商標法第4条第1項第15号に該当する。
4 本件商標が商標法第4条第1項第7号に該当する理由
本件商標が使用された場合、申立人の商品及び役務の出所識別標識として広く認識されている「MONSTER」の文字、MONSTERブランドマーク及びMONSTERファミリー商標の出所表示力が希釈されるおそれが極めて高いものであり、本件商標の使用は、申立人がこれらの商標について獲得した信用力、顧客吸引力にフリーライドするものといわざるを得ず、申立人に経済的及び精神的損害を与える。
したがって、本件商標は、社会一般道徳及び公正な取引秩序の維持を旨とする商標法の精神並びに国際信義に反するものであり、公の秩序を害するおそれがあるものといわざるを得ない。
よって、本件商標は商標法第4条第1項第7号に該当する。

第4 当審の判断
1 引用商標等の周知性
(1)申立人提出の甲各号証及び同人の主張によれば、次の事実を認めることができる(なお、インターネット情報や雑誌等において、掲載日又は発行日の明らかでないもの、訳文の提出がなく我が国で掲載又は発行されたものとは認められないもの、本件商標の登録出願日以降に掲載又は発行されたものと認められるもの又は写真や文字が不鮮明なものについては除く。)。
ア 申立人は、米国の飲料メーカーであって、2002年に米国でエナジードリンク「MONSTER ENERGY」の販売を開始し、現在まで多種のエナジードリンクを継続して販売している(甲7 ほか)。
イ 申立人は、我が国において、アサヒ飲料株式会社(アサヒ飲料)を通じて2012年(平成24年)5月にエナジードリンク「モンスターエナジー」及び「モンスターカオス」の販売を開始し、同年9月には累計100万箱超、12月には累計157万箱を販売し(甲7?甲9、甲11、甲12)、現在も継続して販売している(甲187)。
ウ 申立人は、同様に2013年5月に「モンスター アブソリュートリー ゼロ」(甲10、甲11、甲13)、2014年8月に「モンスターエナジー M3」(甲91)、2014年10月に「モンスターコーヒー」(甲92)、2015年7月に「モンスター ウルトラ」(甲147)の販売を開始し、現在も継続して販売している(甲185?甲187)。
エ 上記イ及びウの計6種の商品(以下、これらをまとめて「申立人販売商品」という。)の容器や包装には、別掲1ないし別掲5のとおりの商標(色彩が異なるものを含む。以下、これらをまとめて「申立人使用商標」という。)が表示されている(甲7?甲17、甲91?甲94、甲134、甲147、甲148、甲183?甲187)。
オ 申立人は、我が国で開催される各種スポーツ競技会、イベントにおいて、看板、ユニフォーム、車体、ニューズレターなど多種多様なものに申立人使用商標を表示している(甲119?甲126 ほか)。
カ 我が国において、申立人使用商標を付したヘルメット、衣類、ステッカーが販売されている(甲144、甲146)。
キ 平成25年7月以降、税関において、引用商標3などに係る商標権を侵害する疑いがある貨物(帽子、ショートパンツ、Tシャツなど)が多数発見されている(甲59?甲90 ほか)。
ク 甲第58号証は申立人の最高責任者の宣誓陳述書であるところ、申立人商品について、我が国での申立人商品の販売直後である2012年(平成24年)5月17日から2か月間にわたり、50万缶のサンプルを路上配布したほか、同年6月2日及び3日に、渋谷において路上発表会で4万缶のサンプル配布をし、同年7月に、晴海フェリーターミナルにおいてパンクロックフェスティバルで5500缶のサンプル配布をし、さらに、2013年(平成25年)7月に、ライブ演奏会場で3500缶のサンプル配布、その他サーフィン大会の会場やロックコンサートの会場等においてサンプル配布を行ったと陳述した(なお、配布された申立人商品の缶数を裏付ける証拠の提出はない。)。
(2)上記(1)の事実からすれば、申立人は、米国で2002年に申立人商品の販売を開始し、我が国においては、アサヒ飲料を通じて2012年(平成24年)5月からエナジードリンク「モンスターエナジー」及び「モンスターカオス」の販売を開始し、その後現在まで、計6種の申立人販売商品を販売するとともに、各種スポーツ競技会、イベント及びキャンペーンなどにおいて、申立人販売商品などの広告宣伝を行っていたことが認められることから、申立人販売商品は我が国の需要者の間である程度知られているものと推認できる。
しかしながら、申立人販売商品の販売実績として確認できるのは、2012年(平成24年)5月ないし12月における157万箱であり、この数量は、アサヒ飲料が販売する他の飲料の2012年の販売実績、「ワンダ」4,048万箱、「三ツ矢」3,908万箱、「十六茶」2,010万箱(甲9)と比べ、販売期間が異なることや2013年の申立人販売商品の年間販売目標240万箱(甲10)を考慮しても、その差は極めて大きく、数量自体も申立人販売商品の周知性を基礎付けるほどのものとはいえないものである。
そうとすれば、申立人販売商品に使用されている申立人使用商標は、申立人の業務に係る商品(エナジードリンク)を表示するものとして我が国の需要者の間に広く認識されている商標と認めることはできない。
また、他に申立人使用商標、引用商標、「MONSTER」及び「モンスター」の文字並びに申立人のいう「(MONSTERの文字を含む)MONSTERファミリー商標」(以下、これらをまとめて「申立人使用商標等」という。)が、本件商標の登録出願の日及び登録査定日において、申立人の業務に係る商品及び役務を表示するものとして、我が国の取引者、需要者の間に広く認識されていると認めるに足りる証拠は見いだせない。
してみれば、申立人使用商標等は、いずれも本件商標の登録出願の日及び登録査定日において、我が国の需要者の間に広く認識されている商標と認めることはできない。
2 商標法第4条第1項第11号の該当性について
(1)本件商標
ア 本件商標は、上記第1のとおり、「モンスターハンタークロス」の片仮名を標準文字で表してなり、その構成文字は、同書、同大、等間隔で、まとまりよく一体に表され、これから生じる「モンスターハンタークロス」の称呼も、やや冗長であるものの、よどみなく一連に称呼し得るものである。
そして、本件商標は、その構成中「モンスター」の文字部分が取引者、需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるもの、又は、それ以外の部分から出所識別標識としての称呼、観念が生じないと認めるに足りる事情は見いだせない。
そうすると、本件商標は、その構成文字全体をもって、「モンスターハンタークロス」の称呼のみを生じ、特定の観念を生じない一体不可分のものとして認識、把握されるものといわなければならない。
イ なお、申立人は、本件商標の外観、称呼が冗長である、「MONSTER」及び「モンスター」の文字が申立人の業務に係る商品及び役務を表示するものとして取引者、需要者の間に広く認識されている、あるいは同文字が申立人の商号の主要部であるなどとして、本件商標はその構成中「モンスター」の文字部分が独立して出所識別標識として機能し得る旨主張している。
しかしながら、上記のアのとおり本件商標は一体不可分のものとして認識、把握されるものであるし、また、上記1のとおり「MONSTER」及び「モンスター」の文字は申立人の業務に係る商品及び役務を表示するものとして取引者、需要者の間に広く認識されているものと認められないものであり、さらに、申立人が「MONSTER」又は「モンスター」と省略されているなど「MONSTER」又は「モンスター」が申立人の商号の主要部であると認め得る事情も見いだせないから、申立人のかかる主張は採用できない。
(2)申立人が商標法第4条第1項第11号について引用する商標
申立人が、本件商標が本号に該当するとして引用する商標は、引用商標1、引用商標2及び引用商標15である(以下、これらをまとめて「11号引用商標」という。)。
ア 引用商標1は、上記第2 1のとおり「MONSTER」の文字を標準文字で表してなり、該文字に相応し、「モンスター」の称呼、「怪物」の観念を生じるものである。
イ 引用商標2は、別掲1のとおりの構成からなり、その構成中のデザイン化され二段に表された「MONSTER」及び「ENERGY」の文字に相応し、「モンスターエナジー」の称呼を生じ、「怪物のエネルギー」の意味合い(観念)を生じるものである。
ウ 引用商標15は、上記第2 15のとおり「COFFEE MONSTER」の文字を標準文字で表してなり、該文字に相応し、「コーヒーモンスター」の称呼を生じ、「コーヒーの怪物」の意味合い(観念)を生じるものである。
(3)本件商標と11号引用商標の類否
そこで、本件商標と11号引用商標の類否を検討すると、両者は、それらの構成態様に明らかな差異を有するから、外観において相紛れるおそれのないものである。
次に、本件商標から生じる「モンスターハンタークロス」と11号引用商標から生じる「モンスター」、「モンスターエナジー」及び「コーヒーモンスター」の称呼とを比較すると、両者は構成音数及び語調語感の差異により容易に聴別し得るものである。
さらに、観念においては、本件商標は特定の観念を生じないものであるから、「怪物」、「怪物のエネルギー」及び「コーヒーの怪物」程の意味合いを生じる11号引用商標と、観念において相紛れるおそれのないものである。
そうすると、本件商標と11号引用商標とは、外観、称呼及び観念のいずれの点からみても相紛れるおそれのない非類似の商標であって、別異の商標というべきものである。
その他、両商標が類似するというべき事情は見いだせない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当するものといえない。
3 商標法第4条第1項第15号の該当性について
(1)申立人使用商標等の周知性
上記1のとおり、申立人使用商標等は、いずれも本件商標の登録出願の日及び登録査定日において、我が国の需要者の間に広く認識されているものと認められないものである。
(2)本件商標と申立人使用商標等との類否
申立人使用商標は、上記1(1)エのとおり、別掲1ないし別掲5のとおりの構成からなるものであり、これらのうち別掲1、別掲2及び別掲5のとおりの商標と本件商標とは、上記2の本件商標と引用商標2との類否と同様の理由で、両者は非類似の商標であって、別異の商標ということができる。
そして、本件商標と別掲3及び別掲4のとおりの商標とは、前者が「モンスターハンタークロス」の文字からなり、「モンスターハンタークロス」の称呼のみを生じ、特定の観念を生じないものであるのに対し、後者は別掲3及び別掲4のとおりの構成であり、いずれも特定の称呼、観念を生じないものとみるのが相当であるから、両者は非類似の商標であって、別異の商標というべきものである。
また、本件商標と「MONSTER」又は「モンスター」の文字からなる標章とは、上記2の本件商標と引用商標1との類否と同様の理由で、両者は非類似のものであって、別異のものということができる。
そうすると、本件商標と申立人使用商標及び「MONSTER」又は「モンスター」の文字からなる標章とは、非類似のものであって、別異のものといえる。
さらに、他に本件商標が申立人使用商標等と類似する、あるいは申立人使用商標等と関連性を有するものと認識させるというべき事情は見いだせない。
(3)出所の混同のおそれ
上記(1)のとおり申立人使用商標等は、いずれも本件商標の登録出願の日及び登録査定日において、我が国の需要者の間に広く認識されているものと認められないものである。
また、上記(2)のとおり、本件商標と申立人使用商標等とは、非類似のものであって、別異のものといえるものである。
そうすると、本件商標は、これに接する取引者、需要者が申立人使用商標等を連想又は想起するものということはできない。
してみれば、本件商標は、商標権者がこれをその指定商品について使用しても、取引者、需要者をして申立人使用商標等を連想又は想起させることはなく、その商品が申立人あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その商品の出所について混同を生ずるおそれはないものというべきである。
他に、本件商標が商品の出所の混同を生ずるおそれがあるというべき事情は見いだせない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当するものといえない。
4 商標法第4条第1項第7号の該当性について
本件商標は、上記3のとおり、商標権者がこれをその指定商品について使用しても、取引者、需要者をして申立人使用商標等を連想又は想起させることのないものである。
そうとすれば、本件商標は申立人使用商標等の信用力及び顧客吸引力にフリーライドするものとはいえず、また、他に商標権者が本件商標をその指定商品に使用することが社会一般の道徳に反し公正な取引秩序を乱す、あるいは国際信義に反するなど、公序良俗に反するものというべき事情も見いだせない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当するものといえない。
5 むすび
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第7号、同第11号及び同第15号のいずれにも違反してされたものとはいえないから、同法第43条の3第4項の規定により、維持すべきである。
よって、結論のとおり決定する。
別掲 別掲1(引用商標2、3、4)



別掲2(引用商標5)



別掲3(引用商標7、8)



別掲4(引用商標14)



別掲5(引用商標17)
(色彩は原本参照。)



別掲6(引用商標18)






異議決定日 2016-08-22 
出願番号 商願2015-64474(T2015-64474) 
審決分類 T 1 651・ 263- Y (W3032)
T 1 651・ 271- Y (W3032)
T 1 651・ 261- Y (W3032)
T 1 651・ 22- Y (W3032)
T 1 651・ 262- Y (W3032)
最終処分 維持  
前審関与審査官 大島 康浩 
特許庁審判長 田中 幸一
特許庁審判官 今田 三男
小松 里美
登録日 2015-11-27 
登録番号 商標登録第5809722号(T5809722) 
権利者 株式会社カプコン
商標の称呼 モンスターハンタークロス、モンスターハンター、クロス 
代理人 中熊 眞由美 
代理人 佐久間 剛 
代理人 柳田 征史 

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