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審決分類 |
審判 全部無効 観念類似 無効としない W44 審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効としない W44 審判 全部無効 称呼類似 無効としない W44 審判 全部無効 商4条1項16号品質の誤認 無効としない W44 審判 全部無効 外観類似 無効としない W44 |
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管理番号 | 1319319 |
審判番号 | 無効2015-890003 |
総通号数 | 202 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標審決公報 |
発行日 | 2016-10-28 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2015-01-05 |
確定日 | 2016-09-07 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第5677230号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 |
理由 |
第1 本件商標 本件登録第5677230号商標(以下「本件商標」という。)は、「CUPI eyelash」の文字を標準文字で表してなり、第44類「美容,ヘアメイク,ネイルケア美容,ネイルアートを主とする美容,まつ毛及びまゆ毛の美容」を指定役務として、平成25年12月17日に登録出願、平成26年5月19日に登録査定、平成26年6月13日に設定登録されたものである。 第2 引用商標 請求人が本件商標は商標法第4条第1項第11号及び同第15号に該当するとして引用する登録商標は、以下の13件であり、引用商標1ないし引用商標4及び引用商標6ないし引用商標13は、いずれも現に有効に存続しているものであり、引用商標5は、その商標権について、商標法所定の後期分分割登録料未納により、平成27年10月21日に同商標権の登録は抹消されている。(以下、引用商標1ないし同11をまとめて「引用商標A」、引用商標12及び同13をまとめて「引用商標B」という。) 1 商標法第4条第1項第11号に該当するとして引用する登録商標 (1)登録第4293493号(以下「引用商標1」という。) 商標の構成:別掲1のとおり 登録出願日:平成9年11月27日 設定登録日:平成11年7月9日 指定役務 :第42類に属する商標登録原簿に記載の役務 (2)登録第5037203号(以下「引用商標2」という。) 商標の構成:キユーピー(標準文字) 登録出願日:平成18年7月5日 設定登録日:平成19年3月30日 指定役務 :第44類に属する商標登録原簿に記載の役務 (3)登録第4367659号(以下「引用商標3」という。) 商標の構成:別掲2のとおり 登録出願日:平成11年1月22日 設定登録日:平成12年3月10日 指定役務 :第42類に属する商標登録原簿に記載の役務 (4)登録第5037204号(以下「引用商標4」という。) 商標の構成:別掲3のとおり 登録出願日:平成18年7月5日 設定登録日:平成19年3月30日 指定役務 :第44類に属する商標登録原簿に記載の役務 (5)登録第5297819号(以下「引用商標5」という。) 商標の構成:別掲4のとおり 登録出願日:平成21年8月4日 設定登録日:平成22年1月29日 指定役務 :第44類に属する商標登録原簿に記載の役務 (6)登録第5496861号(以下「引用商標6」という。) 商標の構成:別掲5のとおり 登録出願日:平成23年12月28日 設定登録日:平成24年5月25日 指定役務 :第44類に属する商標登録原簿に記載の役務 (7)登録第5594968号(以下「引用商標7」という。) 商標の構成:別掲6のとおり 登録出願日:平成25年2月13日 設定登録日:平成25年6月28日 指定役務 :第44類に属する商標登録原簿に記載の役務 (8)登録第5014002号(以下「引用商標8」という。) 商標の構成:別掲7のとおり 登録出願日:平成18年5月25日 設定登録日:平成18年12月22日 指定役務 :第44類に属する商標登録原簿に記載の役務 (9)登録第4156315号(以下「引用商標9」という。) 商標の構成:別掲8のとおり(立体) 登録出願日:平成9年4月1日 設定登録日:平成10年6月12日 指定役務 :第42類に属する商標登録原簿に記載の役務 (10)登録第4293494号(以下「引用商標10」という。) 商標の構成:別掲9のとおり 登録出願日:平成9年11月27日 設定登録日:平成11年7月9日 指定役務 :第42類に属する商標登録原簿に記載の役務 (11)登録第4772234号(以下「引用商標11」という。) 商標の構成:別掲10のとおり 登録出願日:平成15年8月4日 設定登録日:平成16年5月21日 指定役務 :第35類、第37類、第40類、第44類及び第45類に属する商標登録原簿に記載の役務 2 商標法第4条第1項第15号に該当するとして引用する登録商標 (12)登録第595694号(以下「引用商標12」という。) 商標の構成:別掲9のとおり 登録出願日:昭和35年5月31日 設定登録日:昭和37年8月24日 指定商品 :第30類「調味料,香辛料」 (13)登録第832283号(以下「引用商標13」という。) 商標の構成:別掲1のとおり 登録出願日:昭和41年8月11日 設定登録日:昭和44年9月24日 指定商品 :第30類「調味料,香辛料」 第3 請求人の主張 請求人は、本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第70号証(枝番号を含む。)を提出した。 1 請求の趣旨 本件商標は、商標法第4条第1項第11号、同第15号及び同第16号に該当し、同法第46条第1項第1号により、無効にすべきものである。 2 請求の理由 (1)商標法第4条第1項第11号について 本件商標は、標準文字による欧文字で「CUPI eyelash」と表してなるものであり、「CUPI」及び「eyelash」の2語よりなることは明白であるところ、その構成中の語頭に位置する「CUPI」は、特段の意味のない造語であることから、指定役務に対する強い識別力を有するものであり、英語の読みに倣い、「キューピ(ー)」の称呼が生ずるとするのが妥当である。また、被請求人が、実際の取引において、本件商標の構成中、「CUPI」に対応する表示として「キューピー」のみを使用していることが明らかであるから(甲16?19)、当該部分からは「キューピー」の称呼をも生じる。 そして、本件商標の構成中、「eyelash」の語は、「まつ毛」を意味する平易な英語であるところ(甲26)、本件商標の指定役務の属する美容業界において「eyelash」又は「アイラッシュ」の文字が使用されることは極めて一般的といい得るものであり、「アイラッシュサロン」という使用も数多く認められることから(甲27?40)、これらの文字が、当該美容業界内において「まつ毛」に関する施術を提供することを示すにすぎない実情が認められる。 したがって、本件商標に接する取引者・需要者にあっては、自他役務識別力が認められない「eyelash」を省略し、本件商標の「CUPI」の部分のみに注目して、取引に資すると考えるのが相当であるから、本件商標からは、「キューピー」の略称も生じる。 以上のとおり、本件商標は、「キューピーアイラッシュ」、「クピアイラッシュ」、「キュピアイラッシュ」といった称呼のほかに、「キューピー」の称呼が生じ、引用商標Aのいずれからも「キューピー」の称呼が生じる。 これらのことから、本件商標と引用商標Aは、互いにその称呼を同一とする類似商標であるといえるものであり、本件商標の指定役務は、引用商標Aの指定役務と同一又は類似するものである。 よって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。 (2)商標法第4条第1項第16号について 本件商標の構成中の「eyelash」の文字は、「まつ毛」を意味する文字であるところ、本件商標の指定役務中には「まつ毛」と関係のない美容の役務が含まれているものであり、「eyelash」がまつ毛を意味するものとして、美容業界で一般に広く使用されていることは明らかであるから、「まつ毛以外の美容」に関する指定役務との関係において、役務の質について誤認を生じさせるおそれがある。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第16号に該当する。 (3)商標法第4条第1項第15号について ア 本件商標と引用商標Bとの類似について 本件商標からは、「キューピーアイラッシュ」、「キュピアイラッシュ」、「クピアイラッシュ」といった称呼のほか、「キューピー」の称呼をも生じる。 他方、引用商標12は、別掲9のとおり、頭頂部と思しき部分が尖り、目がパッチリと大きい裸体の幼児の人形(いわゆる「キューピー人形」)を模した図形からなるものであり、ここから「キューピー」の称呼を生ずるものである。 同じく引用商標13は、別掲1のとおり、「キユーピー」の片仮名を横書きしてなるものであり、「キューピー」の称呼を生ずるものである。 したがって、本件商標と引用商標Bとは、「キューピー」という同一の称呼を有する類似の商標である。 イ 引用商標Bの著名性について 請求人は、永年、「キユーピー」の文字及び「キューピー人形」からなる商標をマヨネーズに付して、商標の書体、態様に多少の変更を加えつつも、一貫して使用し続けてきたものであり(甲50)、昭和32年に社名を「キユーピー株式会社」に変更し、以来、今日までその社名を使用し続けてきたものである。 請求人の多種にわたる商品が全国的規模で売れたことから、本件商標出願前には、「キューピー」といえば、直ちにマヨネーズをはじめとする請求人の商品あるいは請求人を指称するほどに広く知られるに至ったものである。 また、「キユーピー」は、食品関連商品についてのみならず、商品分野を限定しない企業全般を対象とした第三者によるアンケート調査において、非常に高い評価結果を得ている(甲54?66)。 したがって、「キユーピー」は、企業ブランドとしても需要者から極めて高い評価を得ているものであり、食品分野の枠を超えた著名性を獲得しているものであるから、引用商標Bは、需要者の間に広く認識されている著名な商標であって、他人が使用することにより混同を生ずるおそれがあるものとして、防護標章の登録が認められているものである。 ウ 請求人及びその関連会社の業務の多様性について 請求人は、調味料事業に加えて、日本の年間生産量の約10%に当たる約25万トンの卵を1年間で取り扱うタマゴ事業等を取り扱う加工食品事業、サラダ・総菜事業、ファインケミカル事業、物流システム事業等、多様な事業を行っている。 さらに、請求人は、ファクトリーオートメーションシステムに関するコンピュータシステム(コンピュータソフトウェア)と、これらのコンピュータシステムを医療分野に応用した医療行為支援システムについては、請求人の関連会社を通じて需要者に提供されている。 また、請求人は、国内だけで20もの関連会社を有し、極めて広い分野の関連会社では、「キユーピー」の文字を商号の一部に用いている。 これらのことから、請求人及びその関連会社の事業が多様な分野に及んでいることは明白であり、更なる経営の多角化の可能性と併せ鑑みれば、引用商標Bは、特定の商品との関係を超えて請求人の「キユーピー」ブランドを想起させる著名性を獲得しているといえる。 エ 本件商標をその指定役務について使用した場合の混同のおそれについて (ア)本件商標と引用商標Bとは、「キューピー」の同一の称呼を有する類似の商標であること。 (イ)引用商標12は、本件商標の指定役務をはじめとする全ての商品・役務について他人が使用した場合、混同を生じさせるおそれがある極めて著名なものであり、同じく引用商標13は、本件商標の指定役務をはじめとする多くの分野の商品・役務について他人が使用した場合、混同を生じさせるおそれがある著名なものであること。 (ウ)請求人及び関連会社の業務が極めて多様な範囲に及んでいること。 上記(ア)ないし(ウ)の事実から、被請求人が、引用商標Bと称呼を同じくする本件商標を、その指定役務について使用する場合には、その役務が請求人又は請求人の関連会社の業務に係る役務であるかの如く混同を生じることは明らかである。 (4)まとめ 以上述べたとおり、本件商標は、請求人又は請求人の関連会社の業務に係る役務と混同を生ずるおそれのある商標であり、商標法第4条第1項第15号に該当する。 第3 被請求人の主張 被請求人は何ら答弁していない。 第4 当審の判断 1 商標法第4条第1項第11号該当性について (1)本件商標 本件商標は、「CUPI eyelash」の文字を標準文字で表してなるところ、その構成中、前半部の「CUPI」の文字部分は、親しまれた意味を有する既成の語を表したものではないことから、造語と認識されるものとみるのが自然であって、このような場合には、我が国で親しまれたローマ字読み又は英語風の読みに倣って称呼されるのが一般的である。そうすると、本件商標構成中の「CUPI」の文字は、「クピ」、「キュピ」の称呼を生じるほか、例えば、「Cupid」が「キューピッド」と読まれていること及び被請求人がその広告において「キューピーアイラッシュ」の表示を使用していること(甲16?19)からすれば、「キューピ」及び「キューピー」の称呼をも生じるとみることができる。 また、その構成中、後半部の「eyelash」の文字部分は、「まつげ」を意味する英語であり、本件商標の指定役務との関係においては、美容が施される身体の部位を理解させるものであるから、自他役務の識別力は弱いものといえる。 そうすると、本件商標は、その構成全体から生じる「クピアイラッシュ」「キュピアイラッシュ」及び「キューピ(ー)アイラッシュ」の称呼のほかに、「CUPI」の文字部分に相応して、「クピ」、「キュピ」及び「キューピ(ー)」の称呼を生じるものであり、特定の観念は生じないものである。 (2)引用商標A 引用商標1及び引用商標2は「キユーピー」の文字を書してなるものであり、引用商標3ないし7は、いわゆるキューピー人形(以下、単に「キューピー人形」という。)の図形の上段若しくは下段に「キユーピー」、「KEWPIE」、「Kewpie」及び「QP」の文字又はその組み合わせからなるものをそれぞれ配した構成からなるものであって、引用商標9ないし11は、キョーピー人形の図形からなるものであるから、引用商標Aは、いずれも、その構成文字又は図形から「キューピー」の称呼及び「キューピー人形」の観念を生じるものといえる。 (3)本件商標と引用商標Aとの対比について 本件商標と引用商標Aとは、上記のとおりの構成態様の相違により、視覚上判然と区別し得る顕著な差異を有するものであるから、両商標は、外観において、相紛れるおそれはない。 次に、本件商標から生ずる「クピアイラッシュ」、「キュピアイラッシュ」、「キューピ(ー)アイラッシュ」、「クピ」及び「キュピ」と引用商標Aから生ずる「キューピー」とは、それらの構成音数び構成音において明らかな差異を有するものであり、それぞれを称呼しても語調、語感が異なり、相紛れることなく明確に区別できるものである。そして、本件商標から生ずる「キューピ(ー)」の称呼と引用商標Aから生ずる「キューピー」の称呼とは、同一又は類似する。 また、本件商標と引用商標Aの観念を対比するに、本件商標は、特定の観念を生じないのに対し、引用商標Aは、いずれも「キューピー人形」の観念を生じるものである。 そして、請求人の提出に係る証拠から、本件商標の指定役務に係る取引において、「CUPI」の文字がキューピー人形を想起させるというべき実情は、認められない。 してみると、本件商標と引用商標Aとは、両者から生じる「キューピー」の称呼において、同一であるとしても、本件商標は何らの観念も生じないものである一方で、引用商標Aはキューピー人形を明確に観念させるものであり、また、本件商標と引用商標Aとは、構成文字の相違又は図形の有無において、外観上も顕著に異なるものであり、それらの違いにより両商標の印象が著しく異なるものであるから、本件商標と引用商標Aを、同一又は類似の役務に使用しても、役務の出所について混同を生じるおそれはないものであり、非類似の商標とみるのが相当である。 なお、請求人は、本件商標と引用商標Aは、互いにその称呼を同一とする類似商標であるから、本件商標は商標法第4条第1項第11号に該当する旨主張するが、「商標の類否は、対比される両商標が同一又は類似の商品に使用された場合に、商品の出所につき誤認混同を生じるおそれがあるか否かによって決すべきであるが、それには、そのような商品に使用された商標が、その外観、観念、称呼等によって取引者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すべきであり、・・・その際、商品の外観、観念又は称呼の類似は、その商標を使用した商品につき出所混同のおそれを推測させる一応の基準にすぎず、したがって、上記三点のうち、その一つにおいて類似するものでも、他の二点において著しく相違することその他取引の実情等によって、何ら商品の出所に誤認混同を生じるおそれが認め難いものについては、これを類似商標と解すべきではない」(最高裁昭和43年2月27日第三小法廷判決)ものであるところ、本件商標と引用商標Aとの類否については、上記のとおり、その外観、観念、称呼等によって取引者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に判断したものであるから、上記請求人の主張は採用できない。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。 2 商標法第4条第1項第16号該当性について 商標法第4条第1項第16号でいう「商品の品質又は役務の質の誤認を生ずるおそれがある商標」とは、指定商品又は指定役務に係る取引の実情の下で、公益性を担保するという観点から、取引者又は需要者において、当該商標が表示していると通常理解される品質又は質と指定商品が有する品質又は指定役務が有する質とが異なるため、商標を付した商品の品質又は役務の質の誤認を生じさせるおそれがある商標を指すものと解される。そして、同号でいう、商品の品質又は役務の質とは、抽象的な内容のものを指すのではなく、取引者又は需要者が当該商標から看取する具体的な商品の品質又は役務の質をいうものとみるのが相当である。 そうすると、「まつげ」を意味する「eyelash」の語は、美容が施される身体の部位を理解させるものであるが、本件商標の指定役務を取り扱う分野において、「アイラッシュ」及び「まつげ」の文字を「アイラッシュサロン」「まつげエクステ専門店」「まつげエクステンションサロン」(甲27?32)等のように使用して、役務の提供の内容や場所を表すものとして使用されているとしても、「eyelash」の文字のみにより役務の具体的な質を表すものとして使用され、認識されるとはいい難いものであり、その他、提出に係る証拠をみても、「eyelash」の文字が、本件商標の指定役務の質を具体的に表すものとして取引上、普通に使用されている事実は見いだせない。 したがって、取引者又は需要者が本件商標に接する場合、その構成中の「eyelash」の文字が、役務の質を具体的に表したものとして認識されることはないというべきであるから、本件商標は、これをその指定役務に使用しても、役務の質の誤認を生じるおそれがあるものとは認められない。 よって、本件商標は、商標法第4条第1項第16号に該当しない。 3 商標法第4条第1項第15号該当性について (1)本件商標と引用商標Bとの類似性及び引用商標Bの著名性について 請求人が、商標法第4条第1項第15号に該当するとして引用する引用商標12は、別掲9のとおりの構成からなり、左右の手を広げて直立している裸のキューピー人形の図形を描いてなるものであり、引用商標13は、別掲1のとおり「キユーピー」の文字からなるものである。 そうすると、引用商標Bは、その構成文字又は図形から「キューピー」の称呼及び「キューピー人形」の観念を生じる。 そして、甲第50号証ないし甲第70号証によれば、引用商標Bは、請求人の業務に係る商品、主に「マヨネーズ、ドレッシング」等に使用され、本件商標の登録出願日前はもとより、登録査定時においても需要者間に広く知られていることが認められる。 しかしながら、本件商標と引用商標Bとは、上記2と同様の理由から、その外観、称呼及び観念を総合的に勘案すると類似しないものであり、明らかに区別し得る別異の商標として認識されるというべきである。 (2)本件商標と引用商標Bに係る商品及び役務の関連性について 本件商標の指定役務である第42類「美容,ヘアメイク,ネイルケア美容,ネイルアートを主とする美容,まつ毛及びまゆ毛の美容」は、主として、容姿・髪型を美しくするために、美容院等で提供される役務である。 これに対して、引用商標Bの指定商品である第30類「調味料,香辛料」は、家庭や飲食店等において一般的に使用される味噌・醤油・砂糖などの調味用の商品であり、食料品店、スーパーマーケット等において一般需要者が日常的に購入し、使用するものであって、両者の用途、提供場所又は販売場所及び需要者は、明らかに異なるものといえる。 したがって、本件商標に係る指定役務と引用商標に係る指定商品との間には、共通性・関連性を有しない。 (3)出所の混同について 上記(1)のとおり、引用商標Bが請求人の業務に係る商品を表示するものとして、本件商標の登録出願日前はもとより、登録査定時においても需要者間に広く知られていることが認められるものである。 しかしながら、上記(1)及び(2)において認定したとおり、本件商標と引用商標Bとは、別異の出所を表す商標として認識されるものであり、互いの商品及び役務も関連性を有しないものというべきものである。 そして、「キューピー」の語は、「キューピー人形」を表すものとして親しまれている既成の語であるから、引用商標Bの独創性は高いものということはできない。 そうとすれば、引用商標Bの著名性の程度、その商標の独創性、本件商標との類似性の程度、商品及び役務間の関連性の程度等を総合勘案してみれば、被請求人が本件商標をその指定役務に使用しても、これに接する取引者、需要者をして引用商標Bを連想又は想起させるものとは認められず、その役務が請求人あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかの如く、その役務の出所について混同を生じさせるおそれはないものというべきである。 なお、請求人は、引用商標Bは、需要者の間に広く認識されている著名な商標であって、他人が使用することにより混同を生ずるおそれがあるものとして、防護標章の登録が認められていること、請求人及び関連会社の業務が極めて多様な範囲に及んでいることから、出所の混同が生じるおそれは極めて高いといわざるを得ない旨、主張している。 しかしながら、たとえ、引用商標Bが役務「美容」等において防護標章登録が認められ、請求人が多角経営を行っているとしても、上記のとおり、本件商標と引用商標Bとは、別異の出所を表す商標として認識されるものであるから、その出所について混同のおそれはない。 よって、上記、請求人の主張は採用できない。 (4)以上を総合すれば、本件商標をその指定役務に使用しても、これに接する取引者、需要者をして、引用商標Bを連想、想記して、請求人又は請求人と何らかの関係のある者の業務に係る役務であるかの如く、その役務の出所について混同を生じさせるおそれがあるということはできないものと判断するのが相当である。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。 4 結論 以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号、同第15号及び同第16号に違反して登録されたものではないから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすべきでない。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
別掲1(引用商標1,引用商標13) 別掲2(引用商標3) 別掲3(引用商標4) 別掲4(引用商標5) 別掲5(引用商標6) 別掲6(引用商標7) 別掲7(引用商標8) 別掲8(引用商標9) 別掲9(引用商標10,引用商標12) 別掲10(引用商標11)(色彩は原本参照) |
審理終結日 | 2016-06-27 |
結審通知日 | 2016-06-30 |
審決日 | 2016-07-28 |
出願番号 | 商願2013-98875(T2013-98875) |
審決分類 |
T
1
11・
263-
Y
(W44)
T 1 11・ 262- Y (W44) T 1 11・ 271- Y (W44) T 1 11・ 272- Y (W44) T 1 11・ 261- Y (W44) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 海老名 友子 |
特許庁審判長 |
今田 三男 |
特許庁審判官 |
田村 正明 堀内 仁子 |
登録日 | 2014-06-13 |
登録番号 | 商標登録第5677230号(T5677230) |
商標の称呼 | キューピーアイラッシュ、キューピー、キュピ |
代理人 | 宇梶 暁貴 |
代理人 | 岩瀬 ひとみ |
代理人 | 藤本 綾子 |