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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W28
審判 全部申立て  登録を維持 W28
審判 全部申立て  登録を維持 W28
審判 全部申立て  登録を維持 W28
管理番号 1318250 
異議申立番号 異議2015-900025 
総通号数 201 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2016-09-30 
種別 異議の決定 
異議申立日 2015-01-22 
確定日 2016-08-04 
異議申立件数
事件の表示 登録第5712946号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第5712946号商標の商標登録を維持する。
理由 第1 本件商標
本件登録第5712946号商標(以下、「本件商標」という。)は、「GREEN MONSTER」の欧文字と「グリーンモンスター」の片仮名とを二段に横書きしてなり、平成26年6月5日に登録出願され、第28類「おもちゃ,人形,ゴルフ用具,運動用具」を指定商品として、同年9月25日に登録査定、同年10月24日に設定登録されたものである。

第2 登録異議申立1の理由の要点
登録異議申立人「モンスター エナジー カンパニー」(以下「申立人1」という。)は、本件商標は,商標法第4条第1項第15号及び同項第7号に該当し、商標登録を受けることができないものであるから、本件商標は同法第43条の2第1号の規定により取り消されるべきである旨申立て、その理由を要旨、以下のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第232号証(枝番号を含む。)を提出している(注:申立人1の提出に係る甲第1号証を「甲1(A)」と表し、以下、各号証を順次同様に表記する。)。 1 引用商標
本件登録異議の申立てにおいて引用する、申立人1のいう「MONSTER」ファミリー商標は、以下のとおりの38件の商標である。
そして、以下の商標のうち、文字からなる商標は、いずれも標準文字によるものである。
なお、以下の(1)ないし(38)に係る商標は、商標登録原簿記載のとおりの商品(役務)を指定商品(指定役務)として、設定登録され、現に有効に存続しているものである(これらの商標については、以下「(1)国際登録第1048069号商標」を「引用商標1」、「(2)登録第5788675号商標」を「引用商標2」のように、引用商標の後にかっこ内の数字を付けて表示し、これらの商標をまとめていうときは、「引用商標A」という場合がある。)。
(1)国際登録第1048069号商標は、別掲1のとおりの構成よりなり、2010(平成22年)年6月28日に国際商標登録出願され、第9類「Sports helmets.」、第16類「Stickers; decals.」、第18類「All purpose sports bags; all-purpose carrying bags; backpacks; duffle bags.」及び第25類「Clothing, namely, t-shirts, hooded shirts and hooded sweatshirts, sweat shirts, jackets, pants, bandanas, sweat bands and gloves; headgear, namely, hats and beanies.」を指定商品とし、平成23年5月31日に登録査定、同年7月29日に我が国において設定登録されたものである。
(2)登録第5788675号商標:別掲2のとおり
(3)登録第5788676号商標:「MONSTER ENERGY」
(4)登録第5689430号商標:別掲3のとおり
(5)登録第5730813号商標:別掲4のとおり
(6)登録第5393681号商標:「MONSTER ENERGY」
(7)登録第5057229号商標:別掲5のとおり
(8)登録第5010968号商標:「M MONSTER ENERGY」
(9)登録第5394526号商標:別掲6のとおり
(10)登録第5442171号商標:「MONSTER ENERGY PINK」
(11)登録第5417815号商標:「MONSTER ENERGY AGENT ORANGE」
(12)登録第5379390号商標:「MONSTER」
(13)登録第5527566号商標:「MONSTER DETOX」
(14)登録第5476620号商標:「MONSTER REHAB」
(15)登録第5490798号商標:「MONSTER RECOVERY」
(16)登録第5497766号商標:「MONSTER UNLEADED」
(17)登録第5451361号商標:「MONSTER PUMPED」
(18)登録第5480373号商標:「MONSTER BIOACTIVATED」
(19)登録第5527567号商標:「MONSTER REHABITUATE」
(20)登録第5495941号商標:「MONSTER KHAOS ENERGY + JUICE」
(21)登録第5417769号商標:「MONSTER REDUCED CARB」
(22)登録第5417770号商標:「MONSTER LO-CARB」
(23)登録第5375090号商標:「PROTEIN MONSTER」
(24)登録第5327467号商標:「MUSCLE MONSTER」
(25)登録第5409580号商標:「MONSTER RIPPER」
(26)登録第5409582号商標:「MONSTER BLACK」
(27)登録第5419507号商標:「MONSTER DOUBLE BLACK」
(28)登録第5409583号商標:「MONSTER GIRL」
(29)登録第5542584号商標:「MONSTER CUBA-LIMA」
(30)登録第5043703号商標:「JAVA MONSTER」
(31)登録第5431412号商標:「JAVA MONSTER」
(32)登録第5562023号商標:「JAVA MONSTER GREEN BEANS」
(33)登録第5423080号商標:「LOCA MOCA JAVA MONSTER」
(34)登録第5630446号商標:「KONA CAPPUCCINO M JAVA MONSTER」
(35)登録第5389881号商標:「X-PRESSO MONSTER」
(36)登録第5844119号商標:「MONSTER ENERGY」
(37)登録第5714891号商標:「MONSTER ENERGY GREENLIGT」
(38)登録第5727127号商標:「MONSTER ENERGY ULTRA GREEN」
2 「MONSTER」ファミリー商標の著名性
(1)会社沿革及び取り扱い商品
申立人1は、1930年代に創業した米国の飲料メーカーであり、アルコールを含有しない飲料等の企画、開発、製造、マーケティング、販売の事業に従事している(甲2(A)、甲58(A)の宣誓供述書の段落3)。
(2)「MONSTER ENERGY」ブランド創設と「MONSTER」ファミリー商標
申立人1は2002年(平成14年)にエナジードリンクの新ブランド「MONSTER ENERGY」(引用商標3、引用商標6、引用商標36)を創設し、米国で同年3月から広告宣伝を開始し、同年4月から製造販売を開始した(甲4(A)、甲7(A)、甲18(A)、甲58(A)の宣誓供述書の段落8?12、同証拠物件RCS-2)。
この「MONSTER ENERGY」のオリジナル版のエナジードリンク製品は、従来の清涼飲料製品の容器とは異なる黒色ベースのボトル缶にモンスターの爪痕を象った「M」のロゴマーク(引用商標2に示す態様)と「MONSTER」の文字を太字で目立つように表示した野性味あふれる独特な雰囲気が経済・ビジネス界でも注目を浴び(甲56(A)、甲57(A)、甲58(A)の宣誓供述書の証拠物件RCS-2)、男性若者層を中心にたちまち人気商品となった。
申立人1の「MONSTER ENERGY」ブランド(以下「MEブランド」という。)の各種エナジードリンク(以下「申立人1商品」という。)には、2002年(平成14年)の発売開始以降、現在まで継続して、「MONSTER ENERGY」をはじめ、構成中に「MONSTER」の文字を包含してなる構成を共通点とする多数の商標(以下、これらを総称して「MONSTER」ファミリー商標という。)が個別商品名として使用されており(甲58の宣誓供述書の段落11)、そのボトル缶には、「MONSTER」の文字が特徴的な書体の太字で大きく顕著に表示されている(甲11(A)?甲16(A)、甲58(A)の宣誓供述書の証拠物件RCS-2及び3)。
(3)広告・マーケティング・販売促進活動
申立人1は、2002年(平成14年)から現在まで、全世界におけるMEブランドの申立人1商品に関する広告、マーケティング及び販売促進活動費として総額21億米ドルを超える費用を支出した(甲58(A)の宣誓供述書の段落24)。その販売促進活動の主な内容は、世界の有名アスリート・レーシングチーム及び競技会、アマチュア選手、音楽祭及びミュージシャン、並びに米国ラスベガスの公共機関モノレールに対する支援活動(スポンサー提供)、並びに販売店用什器及び備品の供給である。
上記スポンサー提供活動においては、スポーツ競技会などのイベント会場施設の看板、旗、垂れ幕、ブース、什器類、移動車、スタッフの衣装やユニフォーム、スポンサー契約アスリートやレーシングチームが着用するユニフォーム・ヘルメット・帽子・手袋・スポーツ用具・車体等に、「MONSTER」の文字部分を顕著に表示した、「MONSTER ENERGY」の文字、「MONSTER」の文字、モンスターの爪痕を象徴する「M」のロゴマーク(引用商標2の態様)、あるいは「M」のロゴと「MONSTER」の文字と「ENERGY」の文字からなる「M MONSTER ENERGY」のロゴマーク(例えば、引用商標1、4、5、7の態様)の商標が表示されている(以下、これらの商標の複数または全部についていうときは「MONSTERブランドマーク」という。)(甲34(A)?甲45(A)、甲52(A)、甲53(A)、甲56(A)、甲57(A))。
(4)国内における販売及び販売促進活動
日本国内ではMEブランドの申立人1商品の販売は、アサヒ飲料株式会社(以下「アサヒ飲料」という。)を通じて行われている。2012年(平成24年)3月15日付のニューズリリースでアサヒ飲料が国内独占販売権取得を公表し、2種類の申立人1商品「MONSTER ENERGY」及び「MONSTER KHAOS」の発売を発表、同年5月8日から実際の販売が開始した(甲5(A)?甲7(A))。当該商品は、発売後、日本国内でもたちまち人気となり、同年9月時点で既に年間売上目標の100万箱を突破し(甲8(A))、その後も好調に売上を伸ばして157万箱の売上を記録した(甲9(A))。
さらに、2013年(平成25年)5月7日からは同ブランドの新製品として糖質ゼロ・カロリーゼロの申立人1商品「MONSTER ABSOLUTELY ZERO」も発売されている(甲10(A))。
これら3種のMEブランドの申立人1商品は、日本全国のコンビニエンスストア、自動販売機、キオスク、スーパーマーケット、列車の売店、会員制スーパー、店舗、ゲームセンター、ドラッグストア及びホームセンター等の販売小売店のほか(甲58(A)の宣誓供述書の段落18)、アサヒ飲料の通販サイトからも直接購入可能である(甲11(A)?甲17(A))。また、大手ネットショッピングサイトのアマゾンジャパンなどでは日本未発売の輸入品販売も取り扱われている(甲33(A))。
また、2012年(平成24年)5月の国内発売直後から、継続的にテレビコマーシャル放映、日本開催の多数のスポーツイベント等へのスポンサー提供、サンプル配布など含む大々的な広告・販売促進活動が実施されている(甲58(A)の宣誓供述書の段落22、23、30?34、同証拠物件RCS-5?8)。
(5)全世界の販売国・地域及び販売額
申立人1は、現在までに全世界100以上の国及び地域で、1種類以上の「MONSTER」ファミリー商標を使用してMEブランドの申立人1商品を販売し、又は販売中である(甲58(A)宣誓供述書の段落14)。
販売額は、2002年(平成14年)に米国で販売開始以来、90億缶以上販売し、世界中で毎年15億缶以上を売上げ、世界中で合計170億米ドルを超える収益を上げており、全世界における小売販売額は毎年40億米ドルを超える。2012年度(12月31日締め)の申立人1の年間総販売額は23.7億米ドルで、2011年度(12月31日締め)の19.5億米ドル及び2010年度(12月31日締め)の14.89億米ドルから増加している。「MONSTER ENERGY」の申立人1商品の販売は、当該売上額の90%以上をしめる。
(6)アパレル製品、ビデオゲーム製品等の販売
申立人1は、2002年(平成14年)から現在まで、MONSTERブランドマークを付したアパレル製品等の製造販売をライセンスしており、多数のライセンシーを通じて現在、日本及びアジア全域、オーストラリア、米国、カナダ、中央アメリカ、南米、ヨーロッパ、アイスランド、スカンジナビア及びメキシコを含む世界各地で販売中である(甲58(A)の宣誓供述書の段落126?128、同証拠物件RCS-36)。
また、MONSTERブランドマークのステッカーや転写シールも製造販売されており、モンスターアーミー(申立人1が支援育成するアマチュア選手)の登録会員、スポンサー提供するアスリートやイベントの観客・ファンに配布されている(甲58(A)の宣誓供述書の段落129、130)。
このようなMONSTERブランドマークが付された被服、運動用特殊衣服、運動用ヘルメット、ステッカー、リュックサック等は、インターネットの通信販売業者により、日本国内でも輸入販売されており(甲47(A)、甲48(A))、一般消費者の人気も高い。
また、申立人1は、ビデオゲーム制作販売会社とも提携し、申立人1がスポンサーを努めるカーレーサー等がMONSTERブランドマークを付したウェア等を着用し、レーシングカーを使用して登場する複数のビデオゲーム製品なども商品化しており、日本でも購入可能である(甲58(A)の宣誓供述書の段落139、140、同証拠物件RCS-46)。
(7)ウェブサイト・ソーシャルメディアによる情報発信及びアクセス数等
申立人1のMEブランドの申立人1商品の商品情報、スポンサー契約アスリート・チーム及びスポーツ等のイベントに関する情報、アスリート等の大会成績や記録情報、「MONSTER ENERGY」のアパレル及びアクセサリー類に関する商品情報や販売などが、申立人1が開設運営する複数のウェブサイト及びソーシャルメディアサイトを介して日本を含む全世界の需要者に対して発信されており、日本を含む多数の需要者からのアクセス数がある(甲58(A)の宣誓供述書の段落120?125、同証拠物件RCS-32?35)。
(8)経済界等からの表彰等
MEブランドの申立人1商品の開発、導入の成功に急成長を遂げた申立人1の業績は、本件商標が登録出願される以前から、経済界でも高く評価され、数々の表彰を受けている(甲58(A)の宣誓供述書の段落3、131、同証拠物件RCS-37)。
(9)国内外における商標登録によるブランド保護
申立人1のMEブランドの申立人1商品、並びにアパレル製品、運動用特殊衣服、運動用具、録画済み記録媒体、携帯型電子機器用アクセサリー、バック類、ブレスレットその他の関連グッズには、「MONSTER ENERGY」の文字、MONSTERブランドマーク、並びに「MONSTER」と他の語や文字を結合した様々な結合商標が使用されており、これら全体で「MONSTER」ファミリー商標を形成している。「MONSTER」ファミリー商標は、世界100以上の国及び地域で商標登録・出願済みである(甲58(A)の宣誓供述書の段落7)。
(10)国内における申立人1アパレル製品等の人気と模倣品の水際取締り
申立人1のライセンシーの製造販売に係るMEブランドマークを付した帽子、Tシャツ、スウェットシャツ、レーシングジャケット、手袋等のアパレル製品、オートバイ、車、サーフボード、スノーボードなどに貼付することができるステッカー(シール)などは、日本の国内でも、輸入販売されており、モトクロス、F1その他の自動車レース、スノーボード、サーフィン、エックススポーツ等のスポーツ愛好家を含む一般消費者の間で人気の高い商品となっている。
そのような国内市場におけるMONSTERブランドマークの人気、周知性の高まりに便乗して、申立人1の商標権を侵害するアパレル製品、ステッカー等の模倣品が海外で製造され、申立人1の商標権侵害物品として、日本の税関で輸入が差止められる案件も増加している(甲59(A)?甲74(A)、甲108(A)?甲123(A)、甲143(A)?甲156(A))。
(11)2013年(平成25年)以降に申立人1が主に国内で主催又は協賛したスポーツイベント等及びプロモーションキャンペーンの概要
申立人1は、申立人1の主催又は協賛による国内開催のスポーツイベント等及び関連のプロモーションキャンペーンに、緑色(GREEN)で表示した申立人1の「M」のロゴマークを包含したMONSTERブランドマークを使用している(甲157(A)?甲175(A))。
(12)申立人1ライセンシーの製造販売に係る関連グッズの販売状況
緑色(GREEN)で表示した申立人1の「M」のロゴマークを包含したMONSTERブランドマークを付したアパレル製品(ジャケット、帽子、Tシャツ、バックパック、ランニングシャツ)、サーフボード、ヘルメット、時計、傘、ステッカー等のライセンス製品(甲176(A)?甲184(A))が販売されている。
以上の事実に照らせば、申立人1の「MONSTER」ファミリー商標は、本件商標の登録出願日前より、申立人1の業務に係る商品を表示するものとして、米国をはじめとする外国で広く認識されていただけにとどまらず、本件商標の登録出願時及び登録査定時には、日本国内の需要者の間においても、申立人1の業務に係る商品を表示するものとして広く認識されていたことが明らかである。
3 本件商標が商標法第4条第1項第15号に該当する理由
本件商標の指定商品(以下、これらを総称して「本件指定商品」という。)は、引用商標1ないし引用商標4及び引用商標36に係る指定商品又は指定役務と同一又は類似の商品を含んでいる。
また、本件指定商品は、申立人1の商標ライセンシーの製造販売に係るサーフボード、運動用ヘルメット、モータースポーツ用レーシングスーツ等のスポーツ用品と類似し、Tシャツ、帽子、スウェットシャツ等のアパレル製品、ステッカー、時計、傘等の商品(甲165(A)?甲184(A))、ビデオゲーム製品(甲58(A)の宣誓供述書の段落139、140)とも、製造部門、販売部門、使用目的、需要者の範囲等が一致ないし重複する。
本件商標の構成文字「GREEN MONSTER」及び「グリーンモンスター」において、「MONSTER」及び「モンスター」は、外来語の「モンスター(monster)」として一般に広く親しまれている一方、「GREEN」及び「グリーン」は、「緑色」を意味する外来語「グリーン(green)」として一般的に使用されており、本件指定商品に使用される場合には、単に当該商品の色彩を記述するものとして認識されうる。
そうすると、本件商標は、構成文字全体が常に一体不可分の出所識別標識として認識理解、機能するとはいえず、構成中、自他商品出所識別標識として強く支配的な「MONSTER」及び「モンスター」の文字部分に需要者の注意、関心が強く惹きつけられるものと容易に推認される。よって、本件商標は、構成文字中に「MONSTER」及び「モンスター」を包含し、「モンスター」の観念を直感させる点において、申立人1の「MONSTER」の構成と一致する。
さらに、本件構成中の「GREEN」及び「グリーン」の文字が直感させる「緑色、グリーン」の色彩は、申立人1のコーポレートカラーであり、2002年以降今日まで継続して、グリーンの色彩と「MONSTER」の文字及び「モンスター」の観念を結びつけて申立人1の業務に係る商品及び役務に使用している。
したがって、「GREEN」(グリーン)と「MONSTER」(モンスター)の文字の結合及びこれより生じる「グリーンモンスター」「緑色のモンスター」の観念は、申立人1あるいは申立人1の業務に係る商品及び役務を直ちに想起連想させるものとして取引者、需要者に記憶され、認識されている。
以上より、本件商標が本件指定商品に使用された場合、これに接した需要者は、本件商標の構成文字中の「MONSTER」及び「モンスター」の文字部分に注目して、「モンスター」の観念を直感し、申立人1の「MONSTER」ファミリー商標を想起連想するにとどまらず、本件商標の構成文字全体及びこれより生ずる「グリーンモンスター」「緑色のモンスター」の観念から、コーポレートカラーのグリーン(GREEN)を用いて多数の「MONSTER」ファミリー商標を使用している申立人1あるいは申立人1の業務に係る商品及び役務を直感し、これにより、本件商標を申立人1の使用に係る「MONSTER」ファミリー商標のひとつであると誤信し、あるいはまた、本件商標を付した本件指定商品が、申立人1又は同人と経済的又は組織的関係を有する者の取り扱いに係る商品であると誤信し、その出所について混同を生じるおそれが高い。
また、商標法第4条第1項第15号の規定は、出所の混同防止のみならず、著名商標の顧客吸引力へのフリーライド、その出所表示力のダイリューションを防止する趣旨も含むものであると解される。本件商標が本件指定商品に使用された場合は、グリーンのコーポレートカラー及び「モンスター」の観念と結合して申立人1の商品の出所識別標識として広く認識されるに至ったMONSTERブランドマーク及び「MONSTER」ファミリー商標の強力な出所表示力が希釈化することが明らかである。また、被申立人による本件商標の使用は申立人1がこれらの商標について獲得した信用力、顧客吸引力にフリーライドする行為といわざるを得ない。
したがって、本件商標は商標法第4条第1項第15号に該当する。
4 本件商標が商標法第4条第1項第7号に該当する理由
本件商標は、構成中に「MONSTER」及び「モンスター」の文字を含み、「モンスター」の観念を直感させるから、その登録出願時に申立人1の業務に係る商品及び役務を表示するものとして日本国内及び米国その他の外国で広く認識されていた「MONSTER」ファミリー商標の特徴と一致する。それのみならず、本件商標の構成文字全体が、GREEN(緑色、グリーン)をコーポレートカラーとして採用し、「MONSTER」ファミリー商標を長年継続使用している申立人1及びその取り扱い商品を直ちに想起連想させる。
本件指定商品は、申立人1又はその商標ライセンシーの業務に係る商品及び役務と同一又は類似のもの、あるいはこれらと密接な関連性を有する商品を多く含むものである。
したがって、本件商標の使用は、コーポレートカラーのグリーンを用いて長年継続的に使用されている申立人1のMONSTERブランドマーク及び「MONSTER」ファミリー商標について獲得した信用力、顧客吸引力にフリーライドするものといわざるを得ず、申立人1に経済的および精神的損害を与える。
よって、本件商標は、社会一般道徳及び公正な取引秩序の維持を旨とする商標法の精神並びに国際信義に反するものであり、公の秩序を害するおそれがあるから、商標法第4条第1項第7号に該当する。

第3 登録異議申立2の理由の要点
登録異議申立人「メージャー リーグ ベースボール プロパティーズ インコーポレーテッド」(以下「申立人2」という。)は、本件商標は、商標法第4条第1項第7号、同項第10号、同項第15号、同項第19号に該当し、商標登録を受けることができないものであるから、本件商標は同法第43条の2第1号の規定により取り消されるべきである旨申立て、その理由を要旨、以下のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第21号証を提出している。(注:申立人2の提出に係る甲第1号証を「甲1(B)」と表し、以下、各号証を順次同様に表記する。)
1 申立人2及び引用商標について
申立人2は、米国メージャーリーグベースボール(以下「メージャー・リーグ」という。)の商標権その他の権利を管理する法人である。
メージャー・リーグの歴史は、1876年にナショナル・リーグが発足したことから始まる。野球は、米国では最も人気のあるスポーツであるが、我が国においても、老若男女を問わず多くのファンが存在する。さらに、特別なファンではなくても、我が国では、メージャー・リーグに関して、ベーブ・ルース、ハンク・アーロン等の有名選手の名前とともに多くの球団名、ニューヨーク・ヤンキース、サンフランシスコ・ジャイアンツ、シアトル・マリナーズ、デトロイト・タイガース、ボストン・レッドソックス等が一般的に知られている。
特に、2004年からは電通がメージャー・リーグの試合の日本向け放映権を獲得し、NHK、TBS、フジテレビジョン及びSKY PerfecTV!で放映するようになったこと、昨今では、日本人選手がメージャー・リーグで活躍するようになったことから(甲3(B)?甲7(B))、日本国内でメージャー・リーグ(大リーグ)の名称及び主要球団の名称は日本の一般的な需要者の間でよく知られるものとなっている。
そのようなメージャー・リーグの球団中、ボストン・レッドソックスは、1893年に誕生した名門チームである(甲12(B))。当該球団は1914年にはベーブ・ルースを獲得し、1915年、1916年、1918年にワールドシリーズ制覇を成し遂げた。
当該球団の現在の本拠地は、1912年に開場したフェンウェイ・パークであり、この球場の左中間は、高さ約11.3メートルの巨大なフェンスが設置された。このフェンスは、1947年にグリーンに塗られて以来、GREEN MONSTER(グリーン・モンスター)と呼ばれている(甲13(B)?甲15(B))。
遅くとも2008年から日本の新聞紙上において、この巨大なフェンス「グリーンモンスター」に関する記載が度々見られる(甲16(B))。さらに、福岡ドームの外野フェンスは、その高さから「日本のグリーン・モンスター」と呼ばれており、このようなことからも、「GREEN MONSTER」(以下「引用商標B」という。)が日本でよく知られていることは明らかである(甲17(B))。
よって、本件商標の出願日には引用商標Bが日本において周知であったことは明らかである。
2 商標法第4条第1項第7号該当性について
本件商標は、その登録出願時において、現に申立人2に係る引用商標Bの存在を知悉する立場にあったと優に推認し得る権利者が、我が国において当該商標の登録がないことを奇貨とし、申立人2に係る引用商標Bと混同を生ずるおそれがある本件商標を登録出願し、商標登録したものであるから、申立人2に先回りして不正競争の目的あるいは不正な目的をもって登録出願したものである。
したがって、本件商標は、商標登録に至る登録出願の経緯に著しく社会的相当性を欠くものがあり、その登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして容認し得ないものといわざるを得ず、「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれのある商標」に該当する。
よって、本件商標は商標法第4条第1項第7号に該当する。
3 商標法第4条第1項第10号該当性について
引用商標Bは日本の需要者の間によく知られており、引用商標Bを付した商品「おもちゃ,人形」が日本で販売されている(甲20(B))。
また、メージャー・リーグは日本の多くの企業にライセンスを付与している(甲21(B))。
かかる状況において、引用商標Bをみる需要者・取引者は、そこからメージャー・リーグという出所を認識することができる。そして、引用商標Bと本件商標とは社会通念上同一である。
よって、本件商標は商標法第4条第1項第10号に該当する。
4 商標法第4条第1項第15号該当性について
引用商標Bは、メージャー・リーグ所属のボストン・レッドソックスのマーク及びボストン・レッドソックスのマスコットキャラクターの名称として需要者・取引者の間で周知著名なものである(甲12(B)?甲17(B))。
したがって、引用商標Bと社会通念上同一である本件商標を目にする需要者、取引者はそれがメージャー・リーグに関連するものであると誤認する可能性がきわめて高い。
特に、本件指定商品は、引用商標Bを付した商品「おもちゃ,人形」がすでに日本で販売されており(甲20(B))、また、「運動用具」の分野においてメージャー・リーグ関連商品は多数販売されていることから、本件商標が使用された場合に、その商品がメージャー・リーグ関連商品であるとして出所を誤って認識されることは想像に難くない。
よって、本件商標は商標法第4条第1項第15号に該当する。
5 商標法第4条第1項第19号該当性について
引用商標Bはメージャー・リーグ所属のボストン・レッドソックスの本拠地であるフェンウェイ・パークのレフトスタンドの名称及びボストン・レッドソックスのマスコットキャラクターの名称として米国において周知著名なものである(甲12(B)?甲17(B))。
引用商標Bは造語であり、本件商標と引用商標Bとは社会通念上同一であることから、他人の周知な商標を不正の目的をもって使用するものと推認される。
本件商標がその指定商品に使用された場合、申立人2の周知な引用商標Bの出所表示機能が稀釈化されることは必至である。そのような行為は申立人2の重要な財産である知的財産の価値を減ずるものであり、到底許されるものではない。
よって本件商標は商標法第4条第1項第19号に該当する。

第4 当審の判断
1 引用商標Aの著名性
申立人1は、上記第2記載の引用商標Aを引用して、これらの商標を「MONSTER」ファミリー商標と称し、その著名性を主張した上で、本件商標は、「MONSTER」及び「モンスター」の文字を有するから、これをその指定商品について使用するときは、商品の出所につき混同を生じ、公の秩序を害するおそれがある旨主張する。
しかしながら、申立人1の提出した証拠によれば、我が国において、2012年(平成24年)5月8日に発売が開始された申立人1商品は、その容器(主として缶)全体を黒く塗り、缶の側面の正面に当たる部分に、図案化し、緑色を施した「m」の文字(以下「『m』図形」という。飲料の種類により色が変化する。)を大きく表示し、その下に、図案化した「MONSTER」の文字を白抜きで横書きし、さらにその下に、「ENERGY」の文字を、「MONSTER」の文字に比べ、かなり小さく横書きしてなる構成の商標(以下「使用商標」という。)を使用している例が圧倒的に多く、上記第2に示す38件の引用商標Aが全て使用されているというものではない。
以上によれば、申立人1の「MONSTER」ファミリー商標(引用商標A)すべてが著名であるとはいえないから、この点において、申立人1の主張は、採用することができない。
2 使用商標の著名性
次に、申立人1商品に係る使用商標は、別掲1、3及び5のとおりの構成よりなる引用商標1、4及び7と、色彩の点を除けば、実質的に同一の構成よりなるものであるが、本件商標の登録出願日(平成26年6月5日)前より、我が国の取引者、需要者の間に広く認識されていた商標であるか否かについて検討する。
(1)申立人1の提出した証拠によれば、以下の事実を認めることができる(なお、インターネット情報や雑誌等において、掲載日又は発行日の明らかでないもの、訳文の提出がなく我が国で掲載又は発行されたものとは認められないもの、本件商標の登録出願日以降に掲載又は発行されたものと認められるもの又は写真や文字が不鮮明なものについては除く。)。
ア 申立人1商品は、米国において、2002年に販売が開始されて以降、900億缶以上販売し、世界中で合計170億米ドルを超える収益を上げた。また、我が国において、2012年(平成24年)5月8日に発売され(甲7(A)、甲8(A))、その容器(缶)には、主として使用商標が表示されている(甲5(A)?甲8(A)、甲14(A)、甲15(A))ところ、申立人1商品は、その発売から同年9月までに、年間売上げ目標の100万箱(個数にして何缶かは不明である。)を突破し、157万箱の販売数となった(甲9(A))。その後、2013年(平成25年)5月7日に、使用商標を付した新製品が発売された(甲10(A))。
イ 甲第58号証は申立人1の最高責任者の宣誓陳述書であるところ、申立人1商品について、我が国での申立人1商品の販売直後である2012年(平成24年)5月17日から2か月間にわたり、50万缶のサンプルを路上配布したほか、同年6月2日及び3日に、渋谷において路上発表会で4万缶のサンプル配布をし、同年7月に、晴海フェリーターミナルにおいてパンクロックフェスティバルで5500缶のサンプル配布をし、さらに、2013年(平成25年)7月に、ライブ演奏会場で3500缶のサンプル配布、その他サーフィン大会の会場やロックコンサートの会場等においてサンプル配布を行ったと陳述した(なお、配布された申立人1商品の缶数を裏付ける証拠の提出はない。)。
ウ 申立人1が、米国のレーシングチームのスポンサーとなったインターネット記事が日本にも報道され、その記事には、選手のユニフォームや車体等に、使用商標や緑色の「m」図形を表示した写真が掲載された(甲42の1(A)等)。また、申立人1は、日本のオートバイメーカーのカワサキのレーシングチームのスポンサーとなり、これがインターネット記事として報道された。当該記事には、選手のユニフォームや車体等に、使用商標や緑色の「m」図形を表示した写真が掲載された(甲44(A))。さらに、申立人1は、主として外国のアスリートのスポンサーとなっていることをインターネット上に掲載している(甲45(A))。
エ 申立人1は、使用商標や緑色の「m」図形を付した被服やステッカーなどの販売について、業者とライセンス契約を締結し、これら商品は、2011年(平成23年)1月頃から我が国においても、インターネット上等で販売されている(甲47(A)、甲48(A)、甲184(A))。
オ 申立人1は、日本で開催されたスノーボード、モータースポーツイベント及びオートバイレースを主催又は協賛しており、一部のイベントにおいては、申立人1商品の試飲が実施されている(甲157(A)?甲164(A))。
カ 申立人1は、使用商標が表示された申立人1商品の写真とともに、「東京ゲームショウ 2013」に、ブースを出展しプレゼントキャンペーン(2013年(平成25年)9月9日ないし30日)を実施する旨の情報をインターネット上に掲載している(甲171(A))。
(2)上記(1)で認定した事実によれば、申立人1は、2002年に米国でMEブランドの申立人1商品を販売開始以来、合計170億米ドルを超える収益をあげ、また、主として米国において、レーシングチームやアスリート等のスポンサーになるなどして、選手のユニフォームや車体等に使用商標を表示したこともあり、使用商標は、米国の取引者、需要者の間においては、申立人1商品を表示するものとして知られていた商標であると推測し得るところである。また、我が国においては、申立人1商品の発売直後に、東京を中心に、比較的若い世代が集まる繁華な場所やイベント会場等において、申立人1商品のサンプル配布が行われたこと、申立人1が主催又は協賛したスポーツイベント等においても出場選手のユニフォーム等に使用商標の表示が認められ、使用商標は、その構成中の「m」図形が独特なデザインをもって、容器等に大きく表示されており、これがその取引者、需要者に強く印象付けられることもあいまって、本件商標の登録出願日(平成26年6月5日)前までには、「モンスターエナジー」との称呼をもって、申立人1商品であるエナジードリンク(エネルギー補給飲料)を取り扱う分野の取引者及び若い世代を中心とした一般の消費者の間では、ある程度知られていたものと認めることができる。
しかし、申立人1商品の我が国での発売直後に、そのサンプル配布が行われたとしても、その配布は、比較的若い世代が集まる繁華な場所やロックコンサート等のイベント会場において、当該場所に居合わせた人たちに配布されたにすぎず(上記認定のとおり、配布された本数を裏付ける証拠の提出はない。)、これをもって、使用商標の著名性を直ちに基礎付けることはできない。また、申立人1が我が国のスポーツ選手等のスポンサーになったといっても、その数はごくわずかである。さらに、申立人1商品の日本での発売日である2012年(平成24年)5月8日から本件商標の登録出願日である平成26年6月5日までの間に、申立人1が、我が国において、申立人1商品に関するニュースリリース(甲7(A)?甲10(A))を行ったこと以外に、継続して使用商標を付した申立人1商品の広告等を積極的に行ったという事実を明らかにする証拠の提出はない。その他、使用商標ないしその構成中の「MONSTER」の文字部分が独立して、申立人1商品を表示するものとして、本件商標の登録出願日(平成26年6月5日)及び登録査定日(平成26年9月25日)の時点において、我が国の取引者、需要者の間に広く認識されていたと認めるに足りる証拠の提出もない。
以上を総合勘案すると、使用商標は、申立人1商品を表示するものとして、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、我が国の取引者、需要者の間に広く認識されるに至っていたとまでは認めることができない。
3 引用商標Bの著名性
申立人2は、「GREEN MONSTER」の文字からなる引用商標Bを引用して、引用商標Bは、メージャー・リーグに所属する球団ボストン・レッドソックスの本拠地であるフェンウェイ・パークのレフトスタンドの名称及び同球団のマスコットキャラクターの名称として日本の需要者の間に周知であると主張した上で、本件商標は引用商標Bと社会通念上同一であるから、本願商標を、その指定商品について使用するときは、商品の出所につき混同を生じ、公の秩序を害するおそれがあり、不正の目的をもって使用するものと推認する旨主張する。
そこで、引用商標Bについて検討するに、申立人2の主張及び提出された証拠によれば、申立人2は米国の野球団体であるメージャー・リーグの商標権その他の権利を管理する法人である。
そして、メージャー・リーグは、1876年に発足して以来、米国において人気を博しており、同団体にはニューヨーク・ヤンキース、サンフランシスコ・ジャイアンツ、シアトル・マリナーズ、デトロイト・タイガース、ボストン・レッドソックス等の球団が属していること。我が国においては、2004年からメージャー・リーグの試合の日本向け放映が始まったこと、昨今、日本人選手がメージャー・リーグで活躍するようになっていること(甲3(B)?甲7(B))。また、メージャー・リーグの球団中、ボストン・レッドソックスの本拠地は、1912年に開場したフェンウェイ・パークであり、この球場の左中間に、高さ約11.3メートルの巨大なフェンスが設置され、このフェンスは、1947年にグリーンに塗られて以来、「GREEN MONSTER(グリーン・モンスター)」と通称され(甲13(B)?甲15(B))、我が国の新聞等にも紹介された。
引用商標2は、上記フェンウェイ・パーク球場のフェンスの通称の英語表記と同一綴りよりなるものである。
そして、引用商標Bは、ボストン・レッドソックスのマスコットキャラクターの名称の一部にも使用され、当該キャラクターをモチーフとした人形は「MBL レッドソックス ウォーリー・ザ・グリーンモンスター」の名称で我が国でも販売されている(甲20(B))ことが認められる。
しかしながら、我が国において引用商標Bが紹介されたとして提出されたウェブサイトは5件、新聞記事は2008年6月から2013年10月までの間の10回の掲載であり、そのほとんどがボストン・レッドソックスあるいはフェンウェイ・パーク球場に関連する記事において、同球場における建造物の通称として掲載されたにすぎない。さらに、ボストン・レッドソックスのマスコットキャラクターについても、その名称の一部に引用商標Bを含むにすぎず、当該キャラクターの人形の米国及び我が国における販売実績について、その販売時期、販売期間、販売量、広告の有無等を示す資料の提出もない。
そうとすれば、我が国においてメージャー・リーグは、米国の野球団体及びその名称として「大リーグ」と同旨の認識と共に一般的に広く知られていることは認め得るものの、引用商標Bについては、米国及び我が国においても、メージャー・リーグに属する球団が本拠地とする球場における一構造物の通称としての認識にとどまり、申立人2の業務に係る商品及び役務の識別標識としての認識には至らず、その周知性も野球、特にメージャー・リーグに興味を有する者の範囲に限られるというのが相当である。
また、引用商標2をその名称中に含むボストン・レッドソックスのマスコットキャラクター及び当該キャラクターの人形についても、当該キャラクターの名称が引用商標2と称され、米国及び我が国において広く知られていると認めるに足りる証拠の提出もない。
以上を総合勘案すると、引用商標Bは、申立人2の業務に係る商品又は役務を表示するものとして、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、米国及び我が国の取引者、需要者の間に広く認識されるに至っていたとまでは認めることができない。
4 商標法第4条第1項第15号の該当性について
(1)本件商標について
本件商標は、前記第1のとおり、「GREEN MONSTER」の欧文字と「グリーンモンスター」の片仮名とを二段に横書きしてなるものである。
そして、本件商標を構成する、「GREEN」、「グリーン」、「MONSTER」及び「モンスター」の各文字は、それぞれが「緑色」及び「怪物」を意味する英語又は外来語として、いずれも一般に親しまれたものであり、本件指定商品との関係では、自他商品の出所識別標識としての機能において軽重の差も認められない。
そうすると、本件商標は、上記のとおり,まとまりよく一体的な構成であること及びその構成文字のいずれかが強く支配的な印象を有するとすべき特段の事情も見いだせないことから,一連一体の商標として認識,把握されるものであって、その構成文字全体から生ずる「グリーンモンスター」の称呼も、格別冗長ではなく一気に称呼し得るものである。
したがって、本件商標は、その構成文字全体に相応して、「グリーンモンスター」とのみ称呼されるものであって,「緑色の怪物」程の意味合いの観念を生ずるというべきである。
なお、申立人1は、「本件商標の構成中、『GREEN』及び『グリーン』は、『緑色』を意味する語として一般的に使用されており、単に当該指定商品の色彩を記述するものとして認識されうるから、構成中、自他商品出所識別標識として強く支配的な『MONSTER』及び『モンスター』の文字部分に需要者の注意、関心が強く惹きつけられるものと容易に推認される。」旨述べている。
しかしながら、本件商標は、上記したとおり、それぞれの文字が軽重の差なく全体にまとまりよく結合しているものであって、その構成の一体性からみれば、構成文字全体をもって不可分一体の商標として、認識し把握されるものである。
したがって、本件商標は、「緑色の怪物」程の観念と、「グリーンモンスター」の一連の称呼のみを生ずるものである。
その他、本件商標について、その構成中「MONSTER」及び「モンスター」の文字部分が、取引者、需要者に対し商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものとみるべき事情は見いだせない。
(2)本件商標と引用商標Aの類否について
引用商標Aは、「MONSTER」の文字のみからなるもの及び「MONSTER」の文字と「DETOX」、「REHAB」、「RECOVERY」、「GIRL」等の文字とを結合してなるものであって、「MONSTER」の文字のみからなるものからは「モンスター」の称呼が生じ、他の文字と結合してなるものからは、結合する各文字に相応して「モンスターデトックス」、「モンスターリハブ」、「モンスターリカバリー」、「モンスターガール」等の称呼を生ずるものである。
他方、本件商標は、その外観、称呼及び観念は上記(1)のとおりである。
そうすると、本件商標と引用商標Aとは、外観、称呼及び観念のいずれの点においても、相紛れるおそれのない非類似の商標といえる。
(3)本件商標と使用商標との類似性について
本件商標は、上記(1)のとおり、一体不可分の商標として認識されるものであるから、「グリーンモンスター」の称呼及び「緑色の怪物」の観念を生じるものである。
一方、使用商標は、上記2のとおり、色彩の点を除けば、別掲1、3及び5と実質的に同一の構成であるところ、「m」図形を配し、その下方に、やや図案化した欧文字で「MONSTER」(「O」に該当する部分は縦線が加えられているが、「O」を表したとみて不自然なものとはいえない。)を表し、さらに、その下段に、前記文字に比して小さい「ENERGY」の文字を配した構成の標章からなるものである。
そして、上記図形部分と文字部分とは、それぞれが独立して自他商品の識別標識としての機能を果たし得ると認められるものであるが、上部の図形部分からは、特定の称呼や観念は生じないものである。他方、下部の欧文字は上下二段に横書きして表されているものの、上段の「MONSTER」の文字部分と下段の「ENERGY」の文字部分の間隔は極めて近接しており、かつ、上下段の各文字部分の横方向中央を同じ位置にそろえ、構成文字全体がまとまりよく配置されているものである。そして、構成文字全体から生ずる「モンスターエナジー」の称呼もよどみなく一連に称呼し得るものであり、また、文字全体から「怪物のエネルギー」程の観念が生ずるものである。
そこで、本件商標と使用商標とを比較すると、両商標は、それぞれ全体の構成に照らし、外観上判然と区別し得る差異を有するものである。
次に、本件商標から生じる「グリーンモンスター」の称呼と、使用商標から生じる「モンスターエナジー」の称呼とを対比すると、両者は、本件商標の前半部の「グリーン」と、使用商標の後半部の「エナジー」の音の差異という顕著な差異により、それぞれを一連に称呼するときは、全体の音感、音調が著しく相違し、容易に区別することができるものである。
また、本件商標からは「緑色の怪物」の観念が生じ、また、使用商標からは「怪物のエネルギー」の観念が生ずるところ、これらの観念間の相違は明確であって、観念上相紛れるおそれはない。
したがって、本件商標と使用商標とは、外観、称呼及び観念のいずれの点からみても何ら相紛れるおそれのない非類似の商標である。
(4)出所の混同について
上記1ないし3のとおり、引用商標A,使用商標及び引用商標Bは、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人1及び2の業務に係る商品を表示するものとして、我が国の取引者、需要者の間に広く認識されていたとはいえないものである。さらに、引用商標A及び使用商標については、上記(2)及び(3)のとおり本件商標とは相紛れるおそれない非類似の商標である。
してみれば、本件商標は、商標権者がこれをその指定商品に使用しても、これに接する取引者、需要者が引用商標A,使用商標又は引用商標Bを連想又は想起するものとは認められず、その商品が申立人1及び2又は同人と経済的、組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのごとく、その商品の出所について混同を生じさせるおそれはないものといわなければならない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものではない。
5 商標法第4条第1項第7号の該当性について
本件商標は、上記4(3)のとおり、商標権者がこれをその指定商品に使用しても、これに接する取引者、需要者が引用商標A、使用商標又は引用商標Bを連想又は想起するようなことはないものである。
そうとすれば、本件商標は引用商標A、使用商標又は引用商標Bの信用力又は顧客吸引力にフリーライドするものとはいえないばかりでなく、本件商標をその指定商品に使用することが社会一般の道徳観念に反し、公正な取引秩序を乱すものとはいえないし、国際信義に反するものともいえない。
もとより、本件商標は、その構成自体がきょう激、卑わい、差別的若しくは他人に不快な印象を与えるような文字又は図形ではないし、他の法律によってその使用等が禁止されているものでもない。
したがって、本件商標は、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標とはいえないから、商標法第4条第1項第7号に違反して登録されたものではない。
6 商標法第4条第1項第10号及び同項第19号の該当性について
引用商標Bは、上記3のとおり、我が国及び外国において周知性を獲得していたとは認められないものである。
そうすると、引用商標Bは、他人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されているものとは認められないものであるから、商標法第4条第1項第10号及び同項第19号の要件を欠くものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号及び同項第19号に違反して登録されたものではない。
6 むすび
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第7号、同項第10号、同項第15号及び同項第19号のいずれの規定にも違反して登録されたものではないから、同法第43条の3第4項の規定に基づき、その登録を維持すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
別掲 別掲1 引用商標1


別掲2 引用商標2



別掲3 引用商標4



別掲4 引用商標5



別掲5 引用商標7



別掲6 引用商標9



異議決定日 2016-07-25 
出願番号 商願2014-46239(T2014-46239) 
審決分類 T 1 651・ 271- Y (W28)
T 1 651・ 25- Y (W28)
T 1 651・ 222- Y (W28)
T 1 651・ 22- Y (W28)
最終処分 維持  
前審関与審査官 小松 孝 
特許庁審判長 今田 三男
特許庁審判官 小松 里美
田中 幸一
登録日 2014-10-24 
登録番号 商標登録第5712946号(T5712946) 
権利者 株式会社太鳳
商標の称呼 グリーンモンスター、モンスター 
代理人 長谷 玲子 
代理人 平野 泰弘 
代理人 中熊 眞由美 
代理人 佐久間 剛 
代理人 橋本 千賀子 
代理人 塚田 美佳子 
代理人 柳田 征史 

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