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審決分類 審判 全部無効 商4条1項16号品質の誤認 無効としない Z30
管理番号 1318152 
審判番号 無効2016-890001 
総通号数 201 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2016-09-30 
種別 無効の審決 
審判請求日 2015-12-29 
確定日 2016-07-27 
事件の表示 上記当事者間の登録第4239432号商標の商標登録無効審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 審判費用は,請求人の負担とする。
理由 1 本件商標
本件登録第4239432号商標(以下「本件商標」という。)は,「東京ばな奈」の文字を標準文字で表してなり,平成9年7月30日に登録出願,第30類「菓子及びパン」を指定商品として,同10年12月17日に登録査定,同11年2月12日に設定登録されたものである。

2 請求人の主張
請求人は,「本件商標の登録を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求めると申し立て,その理由を次のように述べ,証拠方法として,甲第1号証及び甲第2号証を提出した。
(1)本件商標を無効とする理由
ア 本件商標は,前段部分の「東京」の文字が商品の産地,販売地を表示したものであり,また,後段部分の「ばな奈」の文字は一種の造語とみるべきであろうが,後段部分の「ばな奈」の文字より生ずる「バナナ」の称呼から受ける観念として食材の「バナナ」を直感させるものである。
したがって,本件商標中の「ばな奈」の文字には,商品の原材料たる「バナナ」が表記されているというべきである。また,本件商標の指定商品は,「菓子及びパン」であるから,「東京で製造されるバナナ入りの菓子及びパン」又は「東京で販売されるバナナ入りの菓子及びパン」を表記したものと認められるものであり,このため,「ばな奈」の文字部分は,自他商品の識別機能を具備していないものである。
本件商標の商標権者(以下「本件商標権者」という。)は,「バナナ」の文字を「ばな奈」と表記することによって商標に自他商品の識別機能を具備させて登録を受けたものであると認められる。
しかし,本件商標中「ばな奈」の「奈」の文字は,「ナ」と称呼されるのが一般的であって他に特別な称呼はないので,上記のように,「ばな奈」の文字は,食材の「バナナ」を直感させるものであり,結局のところ,本件商標は,「東京で製造されるバナナ入りの菓子及びパン」又は「東京で販売されるバナナ入りの菓子及びパン」の意味合いを有しているといえる。
イ 本件商標は,「東京で製造されるバナナ入りの菓子及びパン」又は「東京で販売されるバナナ入りの菓子及びパン」の意味合いを有し,これを「バナナ入りの菓子及びパン」に使用するときは,商品の産地,販売地,原材料を表示するものであるから,商標法第3条第1項第3号に該当する。
また,本件商標は,これを「バナナ入りの菓子及びパン」以外の「菓子及びパン」に使用するときは,商品の品質の誤認を生ずるおそれがあるから,商標法第4条第1項第16号に該当する。
ウ 上記のとおり,本件商標は,商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当するものであるから,その出願は拒絶査定されるべきであったが,審査においてこれが見過されて登録されたのである。
なお,商標法第47条第1項の規定により,同法第3条第1項第3号を無効理由とする審判は,登録の日から5年を経過した後は請求できないとする除斥期間が定められているので,現時点において,同法第3条第1項第3号を無効理由とする審判請求をすることはできないが,同法第4条第1項第16号を無効理由とする審判請求については除斥期間の制約がない。
(2)むすび
以上のとおりであり,本件商標は,商標法第4条第1項第16号に該当するものであるから,同法第46条第1項第1号の規定によりその登録は無効とされるべきである。

3 被請求人の主張
被請求人は,結論同旨の審決を求めると答弁し,その理由を次のように述べ,証拠方法として,乙第1号証ないし乙第11号証を提出した。
(1)本件商標について
本件商標は,青森リンゴ等の地名とその原産品,名産品を組み合わせた名称とは異なる。すなわち,東京はバナナの原産地でもなければバナナが東京の名産品というものでもない。そのため,東京とバナナは,もともと組み合わせて用いられるようなものではなく,本件商標権者が本件商標を使用するまでは,東京とバナナを組み合わせた商標が使用されることはなかった。本件商標権者は,首都で大都市である「東京」を冠しながら,親しみやすさ等の印象を与えるとともに,世代や出身地を問わず誰もが共感できることを意図し,東京とバナナを直接結合させ,可愛らしさを示すためにバナナを「ばな奈」と表記した本件商標を創作したのであって,本件商標は,独創的な商標であり,自他商品識別機能を果たし得るものである。
さらに,我が国における菓子及びパンの商取引の実情を調べても,本件商標が,その指定商品の産地,販売地,原材料,その他の品質等の表示として使用されている事実は一切見当たらないし,本件商標の登録後から本件審判が請求されるまでの間,特定の品質等表示であるとして,商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号を理由に無効審判を請求されたこともなかった。
また,「東京ばな奈」を含む商標は,本件商標以外に,40件以上の商標が菓子,パン等の飲食料品について登録されている(乙1)が,これらの商標が,その指定商品の産地又は販売地を東京に限定せず,かつ,指定商品の原材料をバナナに限定せずに登録されている事実がある。商標の識別力の有無や指定商品の品質誤認のおそれに関する判断は時代や査定時の取引の実情等によって異なる場合があるが,「東京ばな奈」の語については,平成11年に登録された本件商標から同24年に登録された第5546418号に至るまで,菓子やパン等の品質等表示であると判断された事例は1件もなく,また,「東京ばな奈」の語を含む商標が菓子やパン等の品質を誤認させるおそれがあるという理由で登録が拒絶された事例もない。したがって,特許庁の審査実務においては,「東京ばな奈」が品質等表示ではないとの判断が確立されているのである。
さらに,本件商標が周知著名になっている今日においては,本件商標の識別力及び顧客吸引力は一層高まっていると考えるのが自然である。なお,本件商標の周知著名性については不服2011-21869号審決(乙2)において既に認定されており,日本国周知・著名商標として特許情報プラットフォームのデータベースに蓄積されている事実がある(乙3)。
以上より,独創性が高く周知著名な本件商標は強い識別力を有し,その指定商品である「菓子及びパン」の品質等表示として認識されることはなく,したがって品質誤認を生じさせるおそれもないことは明らかである。
(2)請求人の主張について
ア 請求人は,本件商標中の「東京」の文字が商品の産地,販売地を表示したものであり,また,「ばな奈」の文字より生ずる「バナナ」の称呼から受ける観念として食材の「バナナ」を直感させ,商品の原材料「バナナ」が表記されているというべきであるから,本件商標は,「東京で製造されるバナナ入りの菓子及びパン」又は「東京で販売されるバナナ入りの菓子及びパン」を表記したものと認められ,自他商品の識別機能を具備していない旨主張する。
しかしながら,「東京」の文字から直ちに商品の産地,販売地を表示することを認識するものではない。指定商品に菓子及びパンを含みながら産地,販売地に限定することなく「東京クランチ」,「東京珈琲」,「東京かすだーど」等の商標が登録になっていることからも明らかである(乙4?乙6)。
また,「ばな奈」から「バナナ」を観念することができるからといって,「バナナ」の文字から直ちに菓子及びパンの原材料を表示することを認識するものではない。指定商品に菓子及びパンを含みながら原材料に限定することなく「バナナボート」,「バナナハート」,「バナナツリー」等の商標が登録になっていることからも明らかである(乙7?乙9)。
そもそも,本件商標は,上記のとおり,それまで結びつけて使用されることがなかった「東京」と「バナナ」を結合した独創的で自他商品の識別機能を果たし得る商標であるうえ,文字を同じ書体,同じ大きさにより一連に表され,外観上まとまりよく一体的に把握し得るものであり,しかも,全体をもって称呼しても無理なく一連に称呼し得るものである。かかる構成にあっては,商品の特定の品質等を直接的ないし具体的に表示するものとして直ちに理解させるとはいい難く,その構成全体をもって一体的に把握される一種の造語であると認識されるのが自然であり,本件商標の構成から「東京」や「ばな奈」を個別に分離して,それらを特定の品質等の表示として認識するようなものではない。上記判断が正しいことは,菓子及びパンを指定商品とする「大阪プチバナナ」についての異議の決定(乙10)や酒類を指定商品とする「グリーンバナナ/GREEN BANANA」についての拒絶査定不服審判の審決(乙11)において同様の判断がされたことからも明らかである。
さらに,本件商標の周知著名性を踏まえれば,「東京ばな奈」に接した取引者・需要者は,商標全体から本件商標権者の商品ブランドであることを想起する。したがって,請求人の上記主張が理由のないことは明らかである。
イ 請求人は,本件商標は,「東京で製造される又は販売されるバナナ入りの菓子及びパン」の意味合いを有し,これを「バナナ入りの菓子及びパン」に使用するときは,商品の産地,販売地,原材料を表示するものであるから,商標法第3条第1項第3号に該当し,本件商標を「バナナ入りの菓子及びパン」以外の「菓子及びパン」に使用するときは,商品の品質の誤認を生ずるおそれがあるから,同法第4条第1項第16号に該当する旨主張する。
しかし,上記アのとおり,本件商標から「東京」や「ばな奈」を個別に分離して,それを特定の品質等の表示として認識するようなものではなく,請求人が主張するように,本件商標は「東京で製造される又は販売されるバナナ入りの菓子及びパン」の意味合いを有するものではないから,商標法第3条第1項第3号に該当するものでもなければ,本件商標が「バナナ入りの菓子及びパン」以外の「菓子及びパン」に使用された場合に商品の品質の誤認を生ずるおそれもなく同法第4条第1項第16号に該当しないことは明らかであり,請求人の主張は理由のないものである。
(3)むすび
以上のとおり,本件商標は,商標法第4条第1項第16号に該当するものではない。

4 当審の判断
(1)商標法第3条第1項第3号について
商標法第47条第1項は,商標登録が第3条の規定に違反してされたとの理由により,同法第46条第1項に基づき,当該商標登録の無効審判を請求するときは,当該商標登録に係る商標権の設定の登録の日から5年を経過した後は,その請求をすることができない旨規定している。そして,本件審判において,本件商標は,上記1のとおり,平成11年2月12日に設定登録されたものであり,請求人が無効審判を請求した同27年12月29日には,既に設定登録から5年以上が経過していることが明らかであるから,請求人主張のとおり,同法第3条第1項第3号を理由とする無効審判は,除斥期間経過後にされたことになり,請求することができない。
(2)商標法第4条第1項第16号について
請求人は,本件商標中の「ばな奈」の文字は,食材「バナナ」を直感させ,本件商標の指定商品の原材料を表したと認識させるから,本件商標は,これを「バナナ入りの菓子及びパン」以外の「菓子及びパン」に使用するときは,商品の品質の誤認を生ずるおそれがある商標である旨主張する。
本件商標中の「ばな奈」の文字部分は,これより生ずる「バナナ」の称呼からは,我が国において,バショウ科の多年草の果実「バナナ」以外に親しまれた成語が見当たらないから,当該果実「バナナ」を想起させるということができる。そして,本件商標は,同一の書体をもって,同一の大きさ・間隔で外観上一体的にまとまりよく表されているばかりでなく,構成文字全体より生ずると認められる「トーキョーバナナ」の称呼もよどみなく称呼し得るものである。さらに,本件商標中の「東京」の文字部分は,我が国の首都として,あるいは,日本各地の様々な特産品の販売地としてもよく知られている都市であり,また,「ばな奈」の文字部分は,上記のとおり,果実「バナナ」を想起させる場合のある文字であって,いずれの文字(語)も本件商標の指定商品との関係からみると,自他商品の識別機能が強いものとはいえないとみるのが相当であるから,識別力の点からみても,本件商標を構成する「東京」の文字部分と「ばな奈」の文字部分は軽重の差がないものである。加えて,本件商標は,構成全体もって,本件商標権者の業務に係る商品「菓子」を表示するものとして,取引者・需要者の間に広く認識されているものといえる(乙3等)。
そうすると,本件商標は,その取引者・需要者をして,構成全体もって,一体不可分の造語を表したと認識されるとみるのが相当である。
さらに,本件商標の指定商品の分野において,「ばな奈」の構成文字が,果実「バナナ」を表すものとして,普通に使用されているものとはいえない。
してみると,本件商標は,その構成態様,取引の事情等を総合すれば,その構成中の「ばな奈」の文字部分のみを捉えて,これを商品の原材料表示として把握,認識されることはないというべきであるから,これをその指定商品のいずれについて使用しても,商品の品質について誤認を生じさせるおそれがあるものとは認められない。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第16号に該当しない。
(3)むすび
以上のとおり,本件商標の登録は,商標法第4条第1項第16号に違反してされたものと認めることはできないから,同法第46条第1項の規定により,無効とすべきものではない。
よって,結論のとおり審決する。
審理終結日 2016-06-01 
結審通知日 2016-06-06 
審決日 2016-06-17 
出願番号 商願平9-142791 
審決分類 T 1 11・ 272- Y (Z30)
最終処分 不成立  
特許庁審判長 堀内 仁子
特許庁審判官 早川 文宏
田村 正明
登録日 1999-02-12 
登録番号 商標登録第4239432号(T4239432) 
商標の称呼 トーキョーバナナ、バナナ 
代理人 布施 行夫 
代理人 駒崎 健 
代理人 鈴木 正勇 
代理人 池田 眞一郎 
代理人 濱田 真一郎 
代理人 大渕 美千栄 
代理人 中山 清 

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