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審判番号(事件番号) | データベース | 権利 |
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無効2015890034 | 審決 | 商標 |
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審決分類 |
審判 全部無効 観念類似 無効としない X11 審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効としない X11 審判 全部無効 商4条1項8号 他人の肖像、氏名、著名な芸名など 無効としない X11 審判 全部無効 称呼類似 無効としない X11 審判 全部無効 外観類似 無効としない X11 |
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管理番号 | 1314398 |
審判番号 | 無効2015-890039 |
総通号数 | 198 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標審決公報 |
発行日 | 2016-06-24 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2015-05-01 |
確定日 | 2016-04-15 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第5342653号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 |
理由 |
第1 本件商標 本件登録第5342653号商標(以下「本件商標」という。)は、「eco-CAT」の欧文字を標準文字により表してなり、平成21年9月16日に登録出願、第11類「業務用室内空気湿度調整機,業務用除湿機,その他の暖冷房装置,家庭用室内空気湿度調整機,家庭用除湿機,その他の家庭用暖冷房装置,乾燥装置」を指定商品として、同22年6月11日に登録査定、同年8月6日に設定登録されたものである。 第2 引用商標 1 商標法第4条第1項第11号の無効理由における引用商標 請求人が、本件商標の登録の無効の理由において、本件商標が商標法第4条第1項第11号に該当するとして引用する商標は、以下の4件の登録商標(以下、これらをまとめて「引用登録商標」という。)であり、いずれも現に有効に存続しているものである。 (1)登録第401687号商標(以下「引用登録商標1」という。)は、「CAT」の欧文字を横書きしてなり、昭和25年11月22日に登録出願、第69類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同26年8月9日に設定登録、その後、平成12年2月9日に、商標登録の一部取消しの審判(平成10年審判第31363号)により、その指定商品中「電気加熱式触媒コンバータ用監視,制御機器」についての登録を取り消す旨の審判の確定登録(審決確定日:平成11年12月28日)がされ、さらに、平成14年7月24日に、指定商品を第7類「発電機,電動機(陸上の乗物用のもの(その部品を除く。)を除く。)」、第9類「回転変流機,整流機,周波数変換機,電信機,電話機,変圧機,開閉機,電流制限機,電流制御機,抵抗器,電気炉電極,電鈴,真空管,X線管,電気測定器,電池,蓄電器,被覆電線」及び第12類「陸上の乗物用の電動機(その部品を除く。)」とする指定商品の書換登録がされたものである。 (2)登録第1551140号商標(以下「引用登録商標2」という。)は、「CAT」の欧文字を横書きしてなり、昭和48年4月23日に登録出願、第9類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同57年11月26日に設定登録、その後、平成12年7月26日に、商標登録の一部取消しの審判(平成10年審判第31365号)により、その指定商品中「電気加熱式触媒コンバータ用監視,制御機器」についての登録を取り消す旨の審判の確定登録(審決確定日:同12年5月25日)がされ、同じく、同年12月13日に、商標登録の一部取消しの審判(平成10年審判第30822号)により、その指定商品中「触媒コンバータ,電気加熱可能な高温ガス変換機器とその部品,高温ガス用コンバータ,高温ガス用電気加熱可能なコンバータ」についての登録を取り消す旨の審判の確定登録(審決確定日:同12年10月31日)がされ、さらに、平成16年9月22日に、指定商品を第7類「整地機械,掘削機械,荷役機械器具,エンジン、その他の動力機械器具(陸上の乗物用のものを除く。)(電気加熱式コンバータ用監視・制御機器,触媒コンバータ,電気加熱可能な高温ガス変換機器とその部品,高温ガス用コンバータ,高温ガス陽電気加熱可能なコンバータを除く。),陸上の乗物用の動力機械の部品(電気加熱式コンバータ用監視・制御機器,触媒コンバータ,電気加熱可能な高温ガス変換機器とその部品,高温ガス用コンバータ,高温ガス陽電気加熱可能なコンバータを除く。),トランスミッション、その他の動力伝導装置(機械要素)(陸上の乗物用のものを除く。),機械要素(陸上の乗物用のものを除く。),金属加工機械器具,鉱山機械器具,土木機械器具,漁業用機械器具,化学機械器具,繊維機械器具,食料加工用又は飲料加工用の機械器具,製材用・木工用又は合板用の機械器具,パルプ製造用・製紙用又は紙工用の機械器具,印刷用又は製本用の機械器具,ミシン,農業用機械器具,靴製造機械,製革機械,たばこ製造機械,ガラス器製造機械,塗装機械器具,包装用機械器具,陶工用ろくろ,プラスチック加工機械器具,半導体製造装置,ゴム製品製造機械器具,石材加工機械器具,風水力機械器具,業務用電気洗濯機,業務用攪はん混合機,業務用皮むき機,業務用食器洗浄機,業務用切さい機,業務用電気式ワックス磨き機,業務用電気掃除機,修繕用機械器具,機械式駐車装置,乗物用洗浄機,芝刈機,電動式カーテン引き装置,廃棄物圧縮装置,廃棄物破砕装置」、第8類「組ひも機(手持ち工具に当たるものに限る。),くわ,鋤,レーキ(手持ち工具に当たるものに限る。),靴製造用靴型(手持ち工具に当たるものに限る。)」及び第12類「荷役用索道,カーダンパー,カープッシャー,カープラー,牽引車,陸上の乗物用の動力機械(その部品を除く。),陸上の乗物用の機械要素,落下傘,乗物用盗難警報器」とする指定商品の書換登録がされたものである。 (3)登録第2476927号商標(以下「引用登録商標3」という。)は、別掲1のとおりの構成からなり、昭和64年1月5日に登録出願、第9類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、平成4年11月30日に設定登録、その後、同16年2月25日に、指定商品を第7類「金属加工機械器具,鉱山機械器具,土木機械器具,荷役機械器具,漁業用機械器具,化学機械器具,繊維機械器具,食料加工用又は飲料加工用の機械器具,製材用・木工用又は合板用の機械器具,パルプ製造用・製紙用又は紙工用の機械器具,印刷用又は製本用の機械器具,ミシン,農業用機械器具,靴製造機械,製革機械,たばこ製造機械,ガラス器製造機械,塗装機械器具,包装用機械器具,陶工用ろくろ,プラスチック加工機械器具,半導体製造装置,ゴム製品製造機械器具,石材加工機械器具,動力機械器具(陸上の乗物用のものを除く。),陸上の乗物用の動力機械の部品,風水力機械器具,機械式の接着テープディスペンサー,自動スタンプ打ち器,業務用電気洗濯機,業務用攪はん混合機,業務用皮むき機,業務用食器洗浄機,業務用切さい機,業務用電気式ワックス磨き機,業務用電気掃除機,修繕用機械器具,機械式駐車装置,乗物用洗浄機,芝刈機,電動式カーテン引き装置,廃棄物圧縮装置,廃棄物破砕装置,機械要素(陸上の乗物用のものを除く。)」、第8類「組ひも機(手持ち工具に当たるものに限る。),くわ,鋤,レーキ(手持ち工具に当たるものに限る。),靴製造用靴型(手持ち工具に当たるものに限る。)」及び第12類「荷役用索道,カーダンパー,カープッシャー,カープラー,牽引車,陸上の乗物用の動力機械(その部品を除く。),落下傘,乗物用盗難警報器,陸上の乗物用の機械要素」とする指定商品の書換登録がされたものである。 (4)登録第4138519号商標(以下「引用登録商標4」という。)は、別掲1のとおりの構成からなり、昭和64年1月5日に登録出願、第11類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、平成10年4月24日に設定登録、その後、同15年4月2日に、商標登録の一部取消しの審判(2002-30420号)により、その指定商品中「排気ガス浄化用触媒コンバータ用の電子制御装置」についての登録を取り消す旨の審判の確定登録(審決確定日:同年2月27日)がされ、さらに、同20年9月3日に、指定商品を第9類「配電用又は制御用の機械器具,回転変流機,調相機,電池,電気磁気測定器,電線及びケーブル,電気アイロン,電気式ヘアカーラー,電気ブザー,電気通信機械器具,電子応用機械器具及びその部品(排気ガス浄化用触媒コンバータ用の電子制御装置を除く),磁心,抵抗線,電極」とする指定商品の書換登録がされたものである。 2 商標法第4条第1項第15号の無効理由における引用商標 請求人が、本件商標の登録の無効の理由において、本件商標が商標法第4条第1項第15号に該当するとして引用する商標は、「CAT」の欧文字を横書きしてなる商標(以下「請求人使用商標1」という。)、別掲1のとおりの構成からなる商標(以下「請求人使用商標2」という。)及び別掲2のとおりの構成からなる商標(以下「請求人使用商標3」という。)の3件の商標(以下、これらをまとめて「請求人使用商標」という。)であり、いずれも、請求人が商品「建設機械、鉱業設備機器、ディーゼル及び天然ガス・エンジン、産業用ガス・タービン及び乗り物用エアコンディショナー」について使用しているとするものである。 第3 請求人の主張 請求人は、本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とするとの審決を求め、本件商標が商標法第4条第1項第11号、同項第15号及び同項第8号に違反して登録されたものであるとして、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第69号証(枝番を含む。)を提出した。 1 請求人について 本件審判請求人であるキャタピラー インコーポレイテッド(Caterpiliar Inc.)(以下「キャタピラー社」という。)は、1925年に設立されたアメリカ合衆国イリノイ州に本拠を置く企業であり(甲第3号証)、一貫して継続的に油圧ショベル、ブルドーザ、ホイールローダー等幅広い範囲で建設機械の製造を行ってきており、90年近い長期にわたって、建設機械、鉱業設備機器、ディーゼル及び天然ガス・エンジン、産業用ガス・タービンなどの製造技術において世界をリードし(甲第4号証)、日本を含む世界各国において、これらの製品の開発、生産、販売を行っている。 キャタピラー社の業績について述べると、2008年から2012年までの全世界におけるキャタピラー社の売上高(単位:米ドル)は、2008年 513億2,400万、2009年 323億9,600万、2010年 425億8,800万、2011年 601億3,800万、2012年 658億7,500万である。 そして、キャタピラー社は、建設機械・鉱山機械等の事業分野において世界大手であることから、その事業業績については、我が国の新聞・雑誌・インターネット等の各種メディアにおいて日常的に記事が掲載されている(甲第9号証ないし甲第17号証)。 なお、日本においては、1963年に三菱重工業との合弁会社としてキャタピラー三菱株式会社を設立し、1987年には三菱重工業明石製作所の後継会社と合併して新キャタピラー三菱株式会社を発足した。日本における2004年から2007年までの年間売上高(単位:米ドル)は、2004年度(2004年4月?2005年3月)1億2,410万、2005年度(2005年4月?2006年3月)1億3,194万、2006年度(2006年4月?2007年3月)1億4,704万、2007年度(2007年4月?2008年3月)1億4,451万である。 その後、2008年に社名をキャタピラージャパン株式会社(以下「キャタピラージャパン」という。)に変更して現在に至っている(甲第18号証)。 2 請求人の商標「CAT」とその周知・著名性について (1)請求人使用商標は、請求人が独自に創造し採択した商標である。そして、請求人は、以下に詳述するとおり、自社の名称の略称又はその一部を表示するマークとして、また、いわゆるハウスマークとして、さらにはその業務に係る商品・役務を示す商標として、同社の商品・サービスその他の事業全般について、約90年に及ぶ長期にわたり、一貫して継続的に使用してきた結果、請求人使用商標は日本を含む世界中で周知・著名な商標と認められるに至っている。 (2)請求人使用商標の使用 請求人は、日本を含む世界各国で建設機械や鉱山機械等の製造・販売等を行ってきた。実際、請求人製品は、世界約200か国以上で販売され、同社系列の販売会社及びディーラーを通じて商品・サービスが提供されており(甲第4号証)、提供するほぼすべての製品に請求人使用商標を付して販売し、また自らのウェブサイトにも請求人使用商標を明示してきた(甲第19号証ないし甲第24号証)。 日本国内においても、請求人の日本子会社であるキャタピラージャパン発行の商品カタログ及び日本語ウェブサイトを一見して明らかなとおり、現に販売されているダンプトラック・油圧ショベル・ミニ油圧ショベル・ブルドーザ・ホイールローダ・運搬機械・道路機械等、ほぼ全ての製品に請求人使用商標を付して販売し、それらの製品の多くで機種名としても「CAT」の文字を用いている(甲第19号証、甲第21号証及び甲第25ないし甲第30号証)。 また、近時における著名商標主の各種商品化事業の例に漏れず、請求人は、そのウェブサイト(甲第31号証)に示すとおり、商標「CAT」を用いて、広く一般消費者向けに、ヘルメット・グローブ・ナイフ等の作業用具やパーカ・シャツ・キャップ・靴等のアパレル製品、サングラス・バッグ・アクセサリー類・ゴルフボール・時計・おもちゃ・トランプ・折り畳み椅子・カレンダー・マグカップ・傘など多岐にわたる商品を製造し販売している。 このように、請求人はきわめて多岐にわたる分野の事業において日本国内外で請求人使用商標を使用し続けてきた。 日本においても、長年にわたり、エンジン・発電機等を始めとする商品は請求人使用商標を付して販売されてきており、また、多額の費用をかけて請求人使用商標を付した商品の宣伝広告活動が行われてきた。 宣伝広告の媒体としては、新聞及び雑誌の他、ラジオ・テレビ・交通広告等多岐にわたる(甲第29号証ないし甲第42号証の4)。 また、1949年以来、請求人は商標「CAT」を、単なる商標の枠を超え、トレードドレス(自他商品・役務識別力を有するデザイン・イメージ)として、請求人の業務に係る商品・役務について使用してきた(甲第43号証)。 (3)ドメイン名についての「cat」の使用 請求人は、ドメイン名も「cat.com」として登録し(甲第44号証)、現に英語ウェブサイトのURLに使用している(甲第23号証)。 (4)ティッカーシンボルとしての「CAT」の使用 請求人が上場しているニューヨーク証券取引所において、請求人を識別するために付される記号であるティッカーシンボルが「CAT」であることは周知の事実である(甲第45号証)。 (5)世界各国における請求人使用商標の周知・著名性の認定 世界各国において、請求人使用商標は、請求人の業務に係る商品・役務を示すものとして周知・著名なものと認定されている(甲第46号証ないし甲第51号証の2)。 (6)日本における請求人使用商標を付した商品・役務の宣伝広告 日本国内についてみると、キャタピラージャパンにより、主に建設機械や鉱山機械等の販売がなされているところ、その製品や広告には請求人使用商標が付され、カタログ・ウェブサイトにも請求人使用商標が明確に表示されている(甲第4号証、甲第18号証及び甲第19号証、甲第21号証、甲第25ないし甲第30号証)。 請求人は、本件商標の出願日である平成21年9月16日よりはるか以前から、キャタピラージャパン及びその前身会社を通じ、請求人使用商標を、一貫して継続的に使用して日本における製品の販売・サービスの提供及び広告宣伝活動を行ってきた。そして、各種書籍、雑誌、新聞、テレビ、交通広告など各種メディア・宣伝媒体において請求人使用商標を付した製品・サービスが紹介されてきている(甲第32号証ないし甲第42号証の4及び甲第52号証ないし甲第58号証)。 日本における販売促進活動の年間支出額及び広告宣伝の年間支出額とその合計額は、2007年度が15億4,219万円及び5億600万円で合計20億4,819万円、2008年度が14億3,896万円及び10億3,952万円で合計24億7,849万円、2009年度が5億7,081万円及び3億9,067万円で合計9億6,148万円、2010年度が4億6,576万円及び3億552万円で合計7億7,128万円、2011年度が4億4,296万円及び2億5,352万円で合計6億9,648万円となっている。 (7)請求人の日本における事業活動 キャタピラージャパンは、一般社団法人日本機械土工協会(甲第59号証、第6頁)、一般社団法人日本砕石協会(甲第60号証)、一般社団法人林業機械化協会(甲第61号証、第3頁)、公益社団法人全国解体工事業団体連合会(甲第62号証、第8頁)、一般社団法人日本農業機械化協会(甲第63号証)の賛助会員として、幅広く事業活動を展開している。 (8)小括 以上詳述したように、請求人使用商標は、請求人及びその日本子会社によって長期間にわたり一貫して継続的に使用されてきた結果、広く社会一般において、「CAT」といえば請求人の業務に係る商品・役務を容易に想起させるものとして、全国的に知られた商標となっていることは客観的に明らかである。かかる事実からすれば、請求人使用商標は、請求人の業務に係る商品・役務について、本件商標の登録出願時(平成21年9月16日)より前から、取引者・需要者間において周知・著名となっており、その状態が本件商標の登録査定時においても継続していたことは疑いない。 3 商標法第4条第1項第11号の該当性 (1)本件商標と引用登録商標との類似性 本件商標は、以下に述べるとおり、引用登録商標と類似するものであって、それらの商標に係る指定商品と同一又は類似の商品に使用するものであるから、商標法第4条第1項第11号に該当する。 ア 商標の類似 (ア)外観における類似性 本件商標は、欧文字の小文字「eco」と大文字「CAT」とをハイフン記号「-」で結合してなるところ、かかる記号の存在により、視覚上自ずと「eco」と「CAT」とに分離して看取され得る態様である。また両文字が、小文字と大文字とで異なる字体で表されていることからしても、構成全体として不離に融合したものではなく、取引者・需要者において、「eco」と「CAT」との組合せからなるものと容易に看取される。このように、本件商標は、異種の文字が入り混じったものであるから、視覚上、全体として一体不可分的に捉えられるものとはいい難く、これに接する取引者・需要者は、「eco」と「CAT」とを分離して認識し、とりわけ、大文字で表された「CAT」の文字部分により強い注意を払うと解するのが自然である。 一方、引用登録商標1及び2は、欧文字「CAT」からなる。そして、引用登録商標3及び4は、その構成文字の中央下部に三角形が配されロゴ化された構成とはいえ、その文字は、容易に欧文字「CAT」を表示したものと認識し得る態様である。 しかして、本件商標中の「CAT」と、引用登録商標を構成する「CAT」とは同一である。したがって、本件商標と引用登録商標とは、外観上近似した印象を与える類似する商標である。 (イ)称呼における類似性 本件商標は、構成文字全体より「エコキャット」の称呼のほか、上記のとおり、本件商標の構成においては、大文字で表され看者の注意をより強く惹く「CAT」の文字が分離して看取されるから、同部分から生じる「キャット」又は「シイエイティ」の称呼をもって取引に資される可能性が高い。 この点に関し、本件商標の構成中「eco(エコ)」の語は、広辞苑(第六版)によれば「(エコロジーの略)環境に配慮すること。『生態』『環境』『環境保護』を意味する接頭語。」の意味を有する単語であり(甲第64号証)、わが国の需要者・取引者において広く親しまれている言葉である。実際に、現代用語の基礎知識2015(2015年1月1日発行)では「エコステーション(eco-station)」、「エコタウン(eco-town)」、「エコドライブ(eco-drive)」、「エコバッグ(eco-bag)」等、多数の用例が挙げられている(甲第65号証)。近時わが国でも、環境問題に対する意識の高まりから「エコビジネス(eco-business)」と称し、経済効率だけでなく、環境への負荷の軽減に資する商品・サービスや、様々な社会経済活動を環境保全型のものに変革させるのに役立つ技術・システムを提供するようなビジネスが注目されている。かかる状況下において、とりわけ本件商標に係る第11類の指定商品の分野では、インターネットの検索エンジンを用いて調べた結果(甲第66号証ないし甲第68号証)から明らかなとおり、「ecoモード」、「エコ暖房」及び「エコ家電」等のように、「eco(エコ)」の語が、省エネルギー或いは環境への負荷の軽減に資する製品を表すものとして普通に用いられていることが見受けられる。 本件について考えるに、本件商標がその指定商品について使用される場合、その構成中の「eco」の文字に接する取引者・需要者は、単に商品の品質又は用途を表示するものと認識・理解すると考えるのが自然である。つまり、本件商標の構成中「eco」の文字は、本件指定商品との関係で、自他商品識別標識としての機能を有さない言葉というべきである。 さらに、上記2で述べたとおり、「CAT」の文字からなる引用登録商標が請求人の業務に係る商品を表示するものとしてわが国の取引者・需要者の間に広く認識されていることも相俟って、本件商標が、その指定商品に使用されるときは、これに接する取引者・需要者が、その構成中の「CAT」の文字部分から引用登録商標を連想・想起し、恰も請求人の業務に係る「CAT」シリーズの商品であるかのように商品の出所について混同を生じさせるおそれがあるというべきである。 そうすると、本件商標に接する者は、構成文字全体より生じる「エコキャット」の称呼ではなく、むしろその構成中、「CAT」の文字に着目し、専ら同部分から生じる「キャット」又は「シイエイテイ」の称呼をもって取引する可能性の方が優に高い。 一方、引用登録商標1及び引用登録商標2は、欧文字「CAT」から「キャット」又は「シイエイティ」の称呼が自然に生じ、引用登録商標3及び引用登録商標4は、図案化されたロゴマークとして認識されるとしても、それらの構成中の「CAT」の欧文字に照応して「キャット」又は「シイエイティ」の称呼が生じる。 したがって、本件商標と引用登録商標とは、「キャット」又は「シイエイティ」の称呼を共通にする類似の商標であることが明らかである。 (ウ)他人の周知・著名な登録商標と結合した商標 商標審査基準において、他人の周知・著名な登録商標と他の文字とが結合した商標は、原則として、周知・著名な登録商標と類似するものと取り扱われるとされている。この点、本件商標の出願日以前から「CAT」が請求人の商標として周知・著名であったことは既述のとおりであり(甲第4号証、甲第18号証、甲第19号証、甲第21号証、甲第25ないし甲第30号証、甲32号証ないし甲第42号証の4及び甲第52号証ないし甲第58号証)、また、請求人が保有する引用登録商標は有効に存続している。本件商標「eco-CAT」が、請求人の周知・著名な登録商標「CAT」と「eco」の文字とを結合してなることは、本件商標の構成から明らかである。すなわち、本件商標は、欧文字の小文字「eco」と欧文字の大文字「CAT」とをハイフン記号「-」で結合してなることから、かかる記号の存在により、自ずと「eco」と「CAT」とを容易に別のものと認識することができるうえ、そのうち大文字の「CAT」の部分は引用登録商標を構成する文字列と完全に一致する。 したがって、本件商標は、引用登録商標と類似する商標である。 (エ)以上のことから、本件商標と引用登録商標とは、外観及び称呼において類似する商標である。 イ 商品の類似性 本件商標に係る第11類の指定商品「家庭用室内空気湿度調整機,家庭用除湿機,その他の家庭用暖冷房装置,乾燥装置」が、引用登録商標の指定商品に類似するものであることは、類似商品・役務審査基準に照らして明らかである。 (2)小括 以上のとおり、本件商標と引用登録商標とは、称呼及び外観において相紛らわしい類似する商標であり、かつ、本件商標の指定商品は引用登録商標の指定商品と類似するから、本件商標は商標法第4条第1項第11号に該当する。 4 商標法第4条第1項第15号の該当性 本件商標は、以下のとおり、請求人の業務に係る商品と混同を生じるおそれがある商標であるから、商標法第4条第1項第15号に該当する。 (1)請求人使用商標の著名性 請求人使用商標は、請求人が独自に創造し採択した商標であって、約90年に及ぶ長期間にわたり、日本においては遅くとも1981年から30年以上の間、自社の名称の略称又はその一部を表示するマークとして、また、いわゆるハウスマークとして、さらにはその業務に係る商品・役務を示す商標として、自社の商品・サービスその他の事業全般について、一貫して継続的に使用されてきた(甲第4号証、甲第18号証、甲第19号証、甲第21号証、甲第25ないし甲第30号証、甲32号証ないし甲第42号証の4及び甲第52号証ないし甲第58号証)。その結果、わが国の取引者・需要者の間で、「CAT」、「CAT(及び図形)」のマークといえば、請求人の業務に係る商品・役務を容易に想起させるものとして広く知られた商標となっていることは客観的に明白であり、本件商標の出願日(平成21年9月16日)より前から請求人使用商標は広くわが国の取引者・需要者間において周知・著名となっており、その状態が本件商標の登録査定時にも継続していたことは明らかであったというべきである。 (2)本件商標と請求人使用商標との類似性 ア 外観における類似性 本件商標中の「CAT」と、請求人使用商標を構成する「CAT」とは同一である。したがって、本件商標と請求人使用商標とは、外観上近似している。 イ 称呼における類似性 本件商標は、本件商標に接する取引者・需要者は、構成文字全体より生じる「エコキャット」の称呼ではなく、むしろその構成中、「CAT」の部分から生じる「キャット」又は「シイエイティ」の称呼をもって取引する可能性が高い。 一方、請求人使用商標1は、欧文字「CAT」から「キャット」又は「シイエイティ」の称呼が自然に生じ、請求人使用商標2及び請求人使用商標3は、図案化されたロゴマークとして認識されるとしても、それらの構成中の「CAT」の欧文字に照応して「キャット」又は「シイエイティ」の称呼が生じる。 したがって、本件商標と請求人使用商標とは、「キャット」又は「シイエイティ」の称呼を共通にしている。 ウ 以上のように、本件商標と請求人使用商標とは外観において近似し、また称呼において共通していることから、両者に接する取引者・需要者は、本件商標と請求人使用商標とを相紛らわしく認識するおそれがあるというべきである。 (3)混同を生じるおそれ ア 請求人使用商標は、請求人が長年にわたりその業務に係る商品・役務を示すものとして使用してきたものであり、それ故、本件商標の出願日である平成21年9月16日より以前から、国内外で取引者・需要者間に広く知られており、その状態が本件商標の登録査定時にも継続していたことは明らかである(甲第4号証、甲第18号証、甲第19号証、甲第21号証、甲第25号証ないし甲第30号証、甲32号証ないし甲第42号証の4及び甲第52号証ないし甲第58号証)。 イ 請求人使用商標は、請求人が創造した商標である。また、請求人が提供する商品・役務との関係において、請求人使用商標は特段記述的なものでもないから、そもそも請求人使用商標の独自性・独創性は極めて高く、したがって、請求人使用商標は識別力が強いというべきである。 このように識別力の強い商標が周知・著名である場合において、請求人使用商標と近似する本件商標が他人により使用された場合には、建設機械、鉱業設備機器、ディーゼル及び天然ガス・エンジン、産業用ガス・タービン等を始めとする請求人の業務に係る多くの商品・役務について混同が生じるおそれがある。 ウ 本件商標と請求人使用商標が近似していることは述べたが、とりわけ、本件商標の出願日前から請求人使用商標がわが国及び世界各国において周知・著名であったことは既述のとおり明白であるところ、本件商標はかかる著名商標と同一の文字列を含むものである。すなわち、本件商標「eco-CAT」は、欧文字の小文字「eco」と欧文字の大文字「CAT」とをハイフン記号「-」で結合してなるところ、かかる記号の存在により、小文字部分と大文字部分を容易に別のものと認識することができるうえ、そのうち大文字の「CAT」の部分は請求人各商標を構成する文字列と同一である。そうすると、本件商標は、請求人の周知・著名商標を一部に有していると認識され、請求人の周知・著名商標のシリーズ商標の一つと誤認される可能性が高い。 したがって、本件商標をその指定商品に使用した場合には、請求人の業務に係る商品・役務との混同が生じるおそれがあるといわざるをえない。 エ また、請求人使用商標は、特定の商品のみに使用されるようなペットネームではなく、営業主体であるキャタピラー社の名称の略称又はその一部を表示するいわゆるハウスマークであって、建設機械等の業界のみならず、広く一般社会において現実の取引で使用されてきた結果、請求人を指標するものとして、強い出所表示力を発揮するものとなっている。したがって、その混同を生じる範囲は広いものとして考慮されるべきである。 オ 請求人は、既に述べたとおり、建設機械、鉱業設備機器、ディーゼル及び天然ガス・エンジン、産業用ガス・タービンの製造販売、及び、ヘルメット・グローブ・ナイフ等の作業用具やパーカ・シャツ・キャップ・靴等のアパレル製品やサングラス・バッグ・アクセサリー類・ゴルフボール・時計・おもちゃ・トランプ・折り畳み椅子・カレンダー・マグカップ・傘など実に多岐にわたる商品・役務の製造・販売・提供を行っている。すなわち、請求人は現に国内外において多角的経営を行っている企業である。 カ 商品の関連性 請求人は、本件商標の指定商品と関連の強い「乗物用エアコンディショナー」を、請求人の主要な取扱商品である建設機械に設置するものとして製造販売している(甲第69号証)から、本件商標の指定商品の取引者層・需要者層と請求人の業務に係る商品の取引者層・需要者層は共通する可能性がある。したがって、本件商標の使用により混同を生じる範囲は広いものとして考慮されるべきである。 キ 請求人使用商標に化体した信用を害されるおそれ 請求人は請求人使用商標のブランドイメージを維持し、より一層発展させるため、世界各国の市場において徹底したブランド管理を行っている。つまり、請求人使用商標は、請求人の業務に係る商品・役務を表示するものとして、日本はもとより世界中で一般の取引者・需要者の間に広く認識されている著名商標であり、請求人の提供する商品・役務に係る絶大な信用が化体した重要な財産である。 そして、現に請求人は、日本でも様々な指定商品・役務について「CAT」の文字を構成に含む登録商標を多数保有している。 したがって、万が一、本件商標の登録が維持されると、請求人と何ら関係のない者により、請求人の意図とは無関係に、請求人が現にその商標を付して使用している商品・役務とその取引者層・需要者層を共通にする商品・役務について、請求人の使用商標と類似する商標、すなわち、本件商標が自由に使用されてしまうことになる。その結果として、請求人使用商標の希釈化か生じ得るおそれがあることは否定できない。 このような事態が生じた場合、請求人が永年にわたり多大な努力を費やして培ってきたブランドイメージは著しく毀損され、請求人が多大な損害を被ることは明白である。 したがって、かかる見地からも本件商標の登録は維持されるべきではない。 ク 小括 以上述べたとおり、本件商標の登録査定時はもとより出願時において、本件商標がその指定商品について使用された場合にそれが恰も請求人の業務に係る商品であるかのごとく認識され、あるいは請求人と経済的又は組織的・人的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのごとく誤認され、その出所について混同を生じるおそれがあったことは明らかである。また、本件商標の商標権者と請求人は無関係であるにも関わらず、請求人の子会社、系列会社、資本又は業務提携をしている会社等(経済的又は組織的に請求人と何等かの関係がある者)が、単に省エネルギー或いは環境への負荷の軽減に資する製品を意味する欧文字の小文字「eco-」を、請求人使用商標に付加した商標として使用し提供した商品と誤認されるおそれもある。 (4)まとめ したがって、本件商標がその指定商品に使用された場合、本件商標に接する取引者・需要者が、請求人又はこれに関連する者の業務に係る商品であるかの如く、その出所について混同する可能性は非常に高い。 よって、本件商標は商標法第4条第1項第15号にも該当する。 5 商標法第4条第1項第8号の該当性 「CAT」は、既に述べたとおり、請求人の英語ウェブサイトのドメイン名として使用されており、また、ニューヨーク証券取引所における請求人のティッカーシンボルが「CAT」であることも周知の事実である。また、「CAT」がキャタピラー社の名称の略称として容易に理解されることは既に述べたとおりであるから、「CAT」が、本件商標の出願日である平成21年9月16日以前から現在に至るまで、わが国においても請求人の名称の著名な略称を示すものとして広く知られ、著名性を獲得していたことは客観的に明らかである。しかして、本件商標は、その請求人の名称の著名な略称を含む「eco-CAT」の文字よりなるものであり、かつ、本件商標の商標権者は本件商標の出願にあたり請求人の承諾を得たものではない。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第8号に該当する。 6 むすび 以上述べた理由により、本件商標は、商標法第4条第1項第11号、同項第15号及び同項第8号に該当し、その登録は、同法第46条第1項の規定により無効とされるべきである。 第4 被請求人の答弁 被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第4号証(枝番を含む。)を提出した。 1 商標法第4条第1項第11号について (1)本件商標と引用登録商標とは、外観において、明らかに相違する。 また、本件商標からは「エコキャット」の称呼を生じるのに対し、引用登録商標からは「キャット」の称呼を生じるものであって、両者は、その音構成及び構成音数に明らかな差異が認められ、これらを一連に称呼した場合であっても、十分に聴別し得る。 (2)そうであれば、本件商標と引用登録商標とは、その外観及び称呼のいずれにおいても、互いに紛れるおそれのない非類似の商標である。 (3)これに対して、請求人は、「本件商標からは『CAT』の文字が分離して認識・看取されるから、引用登録商標と外観及び称呼において類似する」旨の主張をしている。 (4)しかしながら、請求人の上記主張は以下の理由で失当である。 ア 本件商標は「eco」と「CAT」を「-(ハイフン)」で結合しているとともに、「eco」は、請求人提出の甲第64号証にあるように「接頭語」として用いられるものであるため、「eco-CAT」として一体的に認識される。 イ 仮に「eco」の文字が「環境に配慮すること。」等の意味を有する語であるとしても、これに続く語が「CAT」であることから、当該文字部分が商品の品質等を具体的に表示するものとして直ちに認識されるものではなく(接頭語のecoには「環境保護」だけでなく、「生態」の意味もある。:甲第64号証)、「eco」の部分を捨象して「CAT」の部分のみが自他商品識別機能を発揮するものではない。 ウ 本件商標は、外観上まとまりよく一体的に表されており、また、その構成全体から生じる「エコキャット」の称呼も、よどみなく一連に称呼し得るものであって、本件商標を外観上「eco-CAT」、称呼上「エコキャット」と認識することは、取引者・需要者にとって何ら不自然なことではない。 (5)また、請求人は、本件商標を他人の周知・著名な登録商標と結合した商標であるとして、引用登録商標と類似する商標であると主張している。 これは、「CAT」が本件商標の登録出願以前から請求人の商標として周知・著名であるとの前提によるものであるが、そもそも我が国で「CAT」の語は「猫」を意味するものとして、請求人の商標よりも認知(周知)されていることは明らかである。特に、本件商標に係る指定商品において、請求人の商標「CAT」が「猫」を意味する「CAT」を凌駕するほど周知・著名であることの証明がなされない以上、上記請求人の主張は失当であると言わざるを得ない。 (6)さらに、請求人は、本件商標に係る指定商品が引用登録商標に係る指定商品に類似すると主張している。 しかし、本件商標に係る指定商品のいずれが、引用登録商標に係る指定商品のいずれのものと類似するのか甚だ不明確である。類似商品・役務審査基準はあくまでも商品の類似を「推定」したものであるから、当該基準のみをもって商品の類似性を主張することは、失当であると考える。 (7)したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当するものではない。 2 商標法第4条第1項第15号について (1)本件商標と請求人使用商標とは、上記1と同様、互いに紛れるおそれのない非類似の商標である。 (2)また、請求人が請求人使用商標の周知・著名性を証明するために提出した各証拠(甲第4号証、甲第18号証、甲第19号証、甲第21号証、甲第25号証ないし甲第30号証、甲第32号証ないし甲第42号証の4及び甲第52号証ないし甲第58号証)を総合してみても、本件商標の登録出願時において、請求人使用商標を構成する又はその構成中の「CAT」の文字自体をもって請求人に係る取引指標たり得るほどに著名なものとまではいうことはできないものである。上記1で述べたように、そもそも我が国では「CAT」の語は「猫」を意味するものとして広く一般に知られており、本件商標が引用登録商標3及び4並びに請求人使用商標2及び3のような図形的なものであるならいざ知らず、標準文字として出願されている以上、「猫」を意味する「CAT」として認識されるのが自然な解釈であると思料する。 (3)なお、請求人は「混同を生じるおそれ」の理由として、「請求人使用商標は、請求人が創造した商標である。また、請求人が提供する商品・役務との関係において、請求人使用商標は特段記述的なものでもないから、そもそも請求人使用商標の独自性・独創性は極めて高く、したがって、請求人使用商標は識別力が強いというべきである。このように識別力の強い商標が周知・著名である場合において、請求人使用商標と近似する本件商標が他人により使用された場合には、建設機械、鉱業設備機器、ディーゼル及び天然ガス・エンジン、産業用ガス・タービン等を始めとする請求人の業務に係る多くの商品・役務について混同を生じるおそれがある。」と主張している。 (4)確かに、請求人使用商標は、請求人が創造した商標かもしれない。しかしながら、「CAT」は「猫」の意味の他に「晴天乱流(clear air turbulence)」や「コンピューター化体軸断層写真。CTスキャン。(computerized axial tomography)」の略語としても使用されている(乙第1号証)。また、コンピューターによる自動製品検査(computer-aided testing)やクレジットカードの信用情報照会端末機(credit authorization terminal)の略語も「CAT」と表記されている(乙第2号証)。さらに、我が国ではシティエアターミナル(City Air terminal)を「CAT」の略語で表記している(乙第3号証)。このように、「CAT」の語は請求人のみが創造したものではなく、「猫」という普通名詞の他に、略語としても数多く使用されている現状では、「請求人使用商標は識別力が強い」という請求人の主張は明らかに失当である。そして、「猫」という普通名詞の他に様々な場面で略語として使用されている「CAT」の語は、請求人の業務に係る商品・役務以外で使用された場合には、むしろ混同のおそれは生じ得ないと言わざるを得ない。 (5)また、請求人は「混同を生じるおそれ」の理由として、「商品の関連性 請求人は、本件商標の指定商品と関連の強い『乗物用エアコンディショナー』を、請求人の主要な取扱商品である建設機械に設置するものとして製造販売している(甲第69号証)から、本件商標の指定商品の取引者層・需要者層と請求人の業務に係る商品の取引者層・需要者層は共通する可能性がある。したがって、本件商標の使用により混同を生じる範囲は広いものとして考慮されるべきである。」と主張している。 (6)しかし、請求人が製造販売していると主張する「乗物用エアコンディショナー」が我が国においてどの程度・どのように製造販売されているのか、甲第69号証では全く理解できない。また、指定商品「乗物用エアコンディショナー」は第11類に属するところ(乙第4号証)、産業財産権の管理を徹底している請求人において、請求人使用商標に関して当該指定商品を含む商標権を有していないことに強い違和感を感じる(少なくとも、引用登録商標には当該指定商品は含まれていない)。そもそも、請求人が主要な取扱商品であると主張する建設機械等であるならいざ知らず、それと全く関連性のない本件商標に係る指定商品に「CAT」の文字を使用しても、請求人との関連性を想起することは皆無であると思料する。 (7)そうであるならば、本件商標をその指定商品について使用しても、請求人又は請求人と経済的、組織的に何らかの関係のある者の業務に係る商品であるかのように、商品の出所について混同を生じるおそれはない。 (8)したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当するものではない。 3 商標法第4条第1項第8号について (1)請求人は、「CAT」が請求人の英語ウェブサイトのドメイン名であり、また、ニューヨーク証券取引所における請求人のティッカーシンボルが「CAT」となっていることなどから、「CAT」はわが国においても請求人の名称の著名な略称であり、本件商標は請求人の著名な略称を含むものである旨主張している。 (2)しかし、引用登録商標1及び2並びに請求人使用商標1は、容易に「キャット」の読み及び「猫」の意味を有する英語を認識させるものであるところ、請求人の提出する各証拠を総合してみても、遅くとも本件商標の登録出願時において、「CAT」の欧文字が、その認識(キャット=猫)を超えて、請求人の略称として取引者、需要者間において広く認識されるに至っているとはいい難く、また、引用登録商標3及び4並びに請求人使用商標2及び3は、「CAT」の欧文字のみからなるものではないことからすれば、これが請求人のいうドメイン名又はニューヨーク証券取引所における略称と一致するものとは到底考え難く、請求人の提出する各証拠によっては、その証左を見いだすこともできない。そうであれば、本件商標は、他人の著名な略称を含むものとはいえない。 (3)したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第8号に該当するものではない。 第5 当審の判断 1 本件商標について 本件商標は、上記第1のとおり、「eco-CAT」の欧文字よりなり、「eco」が小文字で、「CAT」が大文字で表されているものの、標準文字による同じ書体で一連に表されているといえるものである。 そして、その構成中の「-」(ハイフン)は、英文などで前後の文字を結合するために使用される符号であることから、本件商標は外観上まとまりよく一体のものとして看取されるとみるのが自然である。 そして、本件商標から生じる「エコキャット」の称呼も、よどみなく一連に称呼し得るものである。 そうであれば、本件商標は、その構成中の「eco」の欧文字が「ecology」(生態、自然環境、環境保護等の意味を有する語)の省略形であり、「eco」の文字が「環境に配慮すること」の意味を有する語として使用されているとしても、一体的に構成されている本件商標においては、この「eco」の語が本件商標の指定商品の品質等を表示するものとして直ちに認識されるとまではいい難く、それゆえ、本件商標の構成中の「eco」の文字部分を捨象し、「CAT」の文字部分のみをもって取引に資されるということはできないものである。 そして、上記「eco」の欧文字の意味に、「CAT」の欧文字の「猫」の意味を繋ぎあわせると、本件商標から、「環境に配慮する猫」のごとき意味合いが看取されるとしても、そのような意味合いの語が日常一般に使用されているとはいえないから、本件商標からは、取引に資される特定の観念は生じないというのが相当である。 してみれば、本件商標は、その構成全体をもって把握され、その構成文字に相応して「エコキャット」の一連の称呼のみを生じ、特定の語義を有することのない一種の造語として認識されるものというべきである。 2 引用商標について (1)引用登録商標について 引用登録商標1及び2は、それぞれ、上記第2の1(1)及び(2)のとおり、「CAT」の欧文字よりなるものであり、「キャット」の称呼及び「猫」の観念が生じるといえるものである。 また、引用登録商標3及び4は、それぞれ、上記したように、別掲1に示す構成のものであって、黒色の太線で表された「CAT」の欧文字の下部に、欧文字「A」の横線部分を頂点とする三角形状の切り欠きを設け、この部分に、わずかな隙間を空けて、「C」及び「T」の両欧文字の下端部に合わせて黒色の二等辺三角形を配した構成のものである。 そして、引用登録商標3及び4は、その構成態様に照らし、視覚上、まとまりある一体的なものとして看取、把握される構成のものといえ、この両引用登録商標は、その構成中の「CAT」の欧文字に相応して「キャット」の称呼を生じ、「猫」の観念が生じるものである。 (2)請求人使用商標について 請求人使用商標は、それぞれ上記第2の2のとおりの構成のものであるところ、請求人使用商標1は、「CAT」の文字よりなるものであるから、「キャット」の称呼及び「猫」の観念が生じるといえるものである。 請求人使用商標2は、上記した引用登録商標3と同一の構成のものであるから、請求人使用商標2は、視覚上、まとまりある一体的なものとして看取、把握される構成のものといえ、その構成中の「CAT」の欧文字に相応して「キャット」の称呼を生じ、「猫」の観念が生じるものである。 請求人使用商標3は、請求人使用商標2の二等辺三角形の色彩を黄色としたものであり、請求人使用商標3は、視覚上、まとまりある一体的なものとして看取、把握される構成のものといえ、その構成中の「CAT」の欧文字に相応して「キャット」の称呼を生じ、「猫」の観念が生じるものである。 3 請求人使用商標の周知・著名性について 請求人は、請求人使用商標について、「請求人の使用商標は、請求人が独自に創造し採択した商標であって、日本においては遅くとも1981年から30年以上の間、その業務に係る商品・役務を示す商標として、継続的に使用されてきた結果、わが国の取引者・需要者の間で、『CAT』、『CAT(及び図形)』のマークといえば、請求人の業務に係る商品・役務を容易に想起させるものとして広く知られた商標となっており、本件商標の登録出願時(平成21年9月16日)より前から請求人使用商標は広くわが国の取引者・需要者間において周知・著名となっており、その状態が本件商標の登録査定時にも継続していたことは明らかである。」旨主張している。 (1)事実認定等 ア 請求人が提出した甲各号証によれば、以下の事実が確認ないし推認できるものである。 (ア)請求人やその日本法人(キャタピラー三菱株式会社及びキャタピラージャパン)についての会社概要が説明され、取扱商品及び役務やその売上高の概要等が報道されていること(請求の趣旨及び甲第3号証ないし甲第5号証、甲第9号証ないし甲第18号証)。 (イ)2011年11月にキャタピラージャパンが発行した「用途別商品カタログ」に請求人使用商標2及び請求人使用商標3(主に請求人使用商標3)が使用された商品、油圧ショベルその他の土木機械器具が掲載され(甲第19号証)、請求人の日本版ウェブサイトに請求人使用商標3が使用された建設機械とその部品が掲載され(甲第21号証)、2012年10月にキャタピラージャパン株式会社が発行した「取扱製品のご案内」に請求人使用商標2及び請求人使用商標3が使用された商品、油圧ショベルその他の土木機械器具が掲載され(甲第25号証)、キャタピラージャパンのウェブサイトに使用商標3が使用された商品、ダンプトラック、油圧ショベル、ブルドーザ及びホイルローダその他の土木機械が掲載され(甲第26号証)、1981年12月にキャタピラー三菱株式会社が発行した超大形ブルドーザの商品カタログに請求人使用商標1が使用され(甲第27号証)、1987年にキャタピラー三菱が発行した雑誌「CATくらぶ」に請求人使用商標1が使用されている商品、油圧ショベル、その他の土木機械器具が掲載され(甲第55号証の1)、2012年6月にキャタピラージャパンが発行した「会社案内」に請求人使用商標3が使用された商品、油圧ショベルその他の土木機械器具が掲載され(甲第28号証)、2012年ないし2014年にキャタピラージャパンが発行した雑誌「CATくらぶ」に請求人使用商標1及び請求人使用商標3が使用された商品、油圧ショベル、ブルドーザその他の土木機械器具が掲載されていることが認められること(甲第29号証、甲第30号証、甲第55号証の2ないし6)。 なお、これらのカタログ類がどのような範囲に、どの程度の部数配布されていたのかを把握しうる証拠は提出されていない。 (ウ)2012年6月19日付の「日本経済新聞」において請求人使用商標3を使用した請求人商品、発電機、油圧ショベル及びブルドーザが宣伝広告されていること(甲第32号証)、2012年6月19日付の「日本経済新聞」において請求人使用商標3を使用した請求人商品、発電機が宣伝広告されていること(甲第33号証)、2012年11月22日付の「建設通信新聞」において請求人使用商標2、請求人使用商標3及び商標「Cat」を使用した請求人の商品、油圧ショベルが宣伝広告されていること(甲第34号証)、2013年2月15日付の「読売新聞」において請求人使用商標3を使用して請求人の日本法人の宣伝広告がされていること(甲第35号証)、2013年5月13日付の「週刊循環経済新聞」において請求人使用商標3を使用してキャタピラージャパンが「2013NEW環境展/地球温暖化防止展」に出展する旨の告知がされていること(甲第36号証)、2014年7月31日付の「日経産業新聞」において請求人使用商標3及び商標「Cat」を使用した請求人商品、油圧ショベルが宣伝広告されていること(甲第37号証)、2008年8月1日付の「日本経済新聞」及び2009年8月3日付の「朝日新聞」において請求人使用商標2と思しき商標を使用した請求人商品、油圧ショベル及びブルドーザが宣伝広告されていること(甲第42号証の3)。 (エ)2013年新年号の社団法人日本採石協会発行の雑誌「採石」に請求人使用商標1及び請求人使用商標2を使用した請求人商品、油圧ショベルが宣伝広告されていること(甲第57号証)、2014年7月1日付の雑誌「建設機械」において請求人使用商標3を使用した請求人商品、ブルドーザが宣伝広告されていること(甲第38号証)、2013年3月1日付、2014年8月1日付、同年11月1日付及び同年12月1日付の雑誌「建設機械」において請求人使用商標1及び請求人使用商標3を使用した請求人商品、油圧ショベルが宣伝広告されていること(甲第39号証ないし甲第41号証、甲第58号証)。 (オ)2008年8月から2011年(2008年8月(17日間)、2009年(放映日不詳)、2010年10月ないし12月の間の8日間、2011年(放映日不詳))にかけて、主に請求人使用商品3を使用した請求人の土木機械器具のテレビコマーシャルが放映されたと推認できること(甲第42号証の1及び2)。 (カ)2011年12月に首都圏及び大阪府圏のJR及び私鉄駅、電車内ポスター、ドア上ビジョンにおいて請求人使用商標3を使用した請求人の土木機械器具の宣伝広告がされたと推認できること(甲第42号証の1の3枚目、甲第42号証の4)。 イ 上記アのほか、請求人は、請求人のウェブサイトを始めとしたインターネット情報(甲第22号証ないし甲第24号証、甲第43号証ないし甲第45号証)を提出しているが、これらは外国語によるものであり、我が国に向けた宣伝、広告であるとはいい難い。また、請求人は、ブルドーザー等の土木機械が掲載された絵本(甲第52号証、甲第54号証)も提出しているが、請求人使用商標が明確に確認できないばかりでなく、これら絵本の読者が本件商標の指定商品や請求人の取扱商品の取引者、需要者とは考え難い。さらに、請求人は、社団法人日本建設機械化協会発行の「日本建設機械要覧 1989」(甲第53号証)を提出しているところ、新キャタピラー三菱株式会社の土木機械の概要等が記載されてはいるが、請求人使用商標1の「CAT」の文字は説明文(図を含む。)の中に記載され、その説明文の中に埋没してしまっているものであり、また、請求人使用商標2及び請求人使用商標3は確認できないものである。 (2)請求人使用商標の周知・著名性についての判断 上記(1)の認定によれば、請求人が取り扱う商品は、掘削、整地、土砂の運搬、動力の発生や発電といった特定の用途や目的を有する機械器具類であることから、商品カタログ等の配布範囲や配布部数は限定され、その取引者や需要者層も限られているものといえ、また、テレビコマーシャルは、上記した期間及び回数という散発的なものであり、新聞・雑誌類における宣伝広告は限られた種類の新聞・雑誌類、期間のものにとどまり、鉄道における宣伝広告も限られた範囲、期間のものというべきである。 してみれば、請求人使用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、その使用商品の取引者、需要者間において一定程度知られていたということができるものの、同商標が使用されている商品以外の取引者、需要者層にまで相当程度知られていたとまでいうことはできない。 したがって、提出された甲各号証によっては、請求人使用商標が、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、本件商標の指定商品の取引者、需要者の間で広く認識されていたと認めることはできないというべきである。 なお、請求人は、請求人使用商標の周知・著名性は諸外国の官庁等においても認められているとして、その決定や判決等(甲第46号証ないし甲第51号証)を提出しているが、商標の周知・著名性は国によって異なるものであるから、諸外国の官庁等が当該国における請求人使用商標の周知・著名性を認める決定や判決等があったとしても、それをもって、請求人使用商標が我が国において周知・著名であるということはできない。 4 商標法第4条第1項第11号について (1)本件商標と引用登録商標との類否について ア 外観について 本件商標の外観は,「eco-CAT」の欧文字を標準文字により表してなるものであって、上記1のとおり、これが一体不可分のものとして看取され、認識されるものである。 これに対して、引用登録商標は、それぞれ上記2(1)のとおりの構成からなるものであるから、本件商標と引用登録商標とは外観において相紛れるおそれのない非類似の商標というべきである。 イ 称呼について 本件商標からは、上記1のとおり、その構成に相応して「エコキャット」の一連の称呼のみが生じるものである。 これに対して、引用登録商標からは、上記2(1)のとおり、「キャット」の称呼が生じるものであるから、本件商標と引用登録商標とは、その称呼においても相紛れることのない非類似の商標というべきである。 ウ 観念について 本件商標は、上記1のとおり、一種の造語よりなるものであるから、取引に資すべき特定の観念は生じないものである。 これに対して、引用登録商標からは、上記2(1)のとおり、「猫」の観念が生じるというのが自然であるから、本件商標と引用登録商標とは、その観念においても類似するということはできないものである。 エ 類否判断について 以上によれば、本件商標と引用登録商標とは、その外観、称呼及び観念のいずれにおいても、類似する商標ということはできないものである。 (2)小活 したがって、本件商標と引用登録商標とは類似する商標ということはできないから、たとえ、その指定商品が同一又は類似の商品であったとしても、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。 5 商標法第4条第1項第15号について 請求人使用商標は、上記3のとおり、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、本件商標の指定商品の取引者、需要者の間で広く認識されていたと認めることはできないものである。 そして、本件商標と請求人使用商標とは、上記4と同様に、互いに類似しない別異の商標というべきである。 また、請求人は、「商標『CAT』を用いて、広く一般消費者向けに、ヘルメット・グローブ・ナイフ等の作業用具やパーカ・シャツ・キャップ・靴等のアパレル製品、サングラス・バッグ・アクセサリー類。ゴルフボール・時計・おもちゃ・トランプ・折り畳み椅子・カレンダー・マグカップ・傘など多岐にわたる商品を製造し販売している。」と主張して、甲第31号証を提出している。しかしながら、同号証は英語によるものであり、価格もドル表示であり、日本人向けの広告等であるとはいい難いものであるから、同号証をもって、請求人がこれらの商品を我が国で取り扱っているとは、にわかに認めることはできないものである。 さらに、請求人が、本件商標の指定商品と関連性が強く取引者層・需要者層が共通する可能性があると主張する「乗り物用エアコンディショナー」については、その使用の実情について甲第69号証が示されているにすぎず、上記と同様に、この英語の製品カタログによっては、同商品が我が国において取り扱われている事実すら明らかではないといわざるを得ないものである。 してみれば、本件商標は、その指定商品に使用しても、これに接する取引者、需要者が、該商品が請求人又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように連想、想起することはなく、その出所について混同を生じるおそれはないというべきである。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。 6 商標法第4条第1項第8号について 請求人は、「『CAT』の文字は、本件商標の出願日である平成21年9月16日以前から現在に至るまで、わが国において請求人の名称の著名な略称を示すものとして広く知られ、著名性を獲得していた。」旨主張している。 しかして、商標法第4条第1項第8号の「他人の著名な略称を含む商標」に関して、「8号が,他人の肖像又は他人の氏名,名称,著名な略称等を含む商標は,その他人の承諾を得ているものを除き,商標登録を受けることができないと規定した趣旨は,人(法人等の団体を含む。以下同じ。)の肖像,氏名,名称等に対する人格的利益を保護することにあると解される。(中略)そうすると,人の名称等の略称が8号にいう『著名な略称』に該当するか否かを判断するについても,常に,問題とされた商標の指定商品又は指定役務の需要者のみを基準とすることは相当でなく,その略称が本人を指し示すものとして一般に受け入れられているか否かを基準として判断されるべきものということができる。」との判示をした最高裁判所の判決(最高裁判所第二小法廷 平成16年8月31日判決 平成16年(行ヒ)第343号 最高裁ホームページ参照)がある。 これを本件についてみるに、「CAT」の文字が、申立人の略称として使用され、また、ニューヨーク州のティッカーシンボル(欧米の証券取引所(金融商品取引所)などで、上場銘柄ごとに付けられたアルファベット1字から4字のコード(インターネット辞書「コトバンク」より)。)であるとしても、これらの実情が、我が国の「ブルドーザ、油圧ショベルなどの建設機械、鉱業設備機器、ディーゼル及び天然ガス・エンジン」の取引者、需要者の範囲を超えて広く知られているとは、提出された証拠によっては認められないから、「CAT」の文字が、請求人を指し示す略称として一般に受け入れられているとはいえないというべきである。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第8号に該当しない。 7 むすび 以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号、同項第15号及び同項第8号に違反してされたものではないから、同法第46条第1項により、その登録を無効とすることはできない。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
別掲1 引用登録商標3、引用登録商標4及び請求人使用商標2 別掲2 請求人使用商標3(色彩は原本を参照されたい。) |
審理終結日 | 2015-11-16 |
結審通知日 | 2015-11-18 |
審決日 | 2015-12-09 |
出願番号 | 商願2009-71066(T2009-71066) |
審決分類 |
T
1
11・
262-
Y
(X11)
T 1 11・ 263- Y (X11) T 1 11・ 23- Y (X11) T 1 11・ 261- Y (X11) T 1 11・ 271- Y (X11) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 林田 悠子 |
特許庁審判長 |
大森 健司 |
特許庁審判官 |
中束 としえ 林 栄二 |
登録日 | 2010-08-06 |
登録番号 | 商標登録第5342653号(T5342653) |
商標の称呼 | エコキャット、エコ、イイシイオオ、キャット、シイエイテイ |
代理人 | 竹中 陽輔 |
代理人 | 栃木 順子 |
代理人 | 岩田 敏 |
代理人 | 達野 大輔 |