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審決分類 |
審判 全部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない Y11 |
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管理番号 | 1310882 |
審判番号 | 取消2014-300062 |
総通号数 | 195 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標審決公報 |
発行日 | 2016-03-25 |
種別 | 商標取消の審決 |
審判請求日 | 2014-01-30 |
確定日 | 2015-12-14 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第602699号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 |
理由 |
1 本件商標 本件登録第602699号商標(以下「本件商標」という。)は、「アイライト」の片仮名を横書きしてなり、昭和35年8月3日に登録出願、第11類「電球類及照明器具」を指定商品として、同37年12月21日に設定登録されたものである。 その後、5回にわたり商標権の存続期間の更新登録がされ、また、平成16年4月14日に、指定商品を第11類「電球類及び照明用器具」とする指定商品の書換登録がされたものである。 なお、本件審判の請求の登録は、平成26年2月18日にされている。 2 請求人の主張 請求人は、本件商標の登録を取り消す、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証及び甲第2号証を提出した。 (1)請求の理由 本件商標は、その指定商品について、継続して3年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実が存しないから、商標法第50条第1項により取り消されるべきものである。 (2)答弁に対する弁駁 被請求人は、乙第4号証ないし乙第6号証を根拠に、商標権者(被請求人)が要証期間に、本件商標の指定商品を静岡ミツワ電機株式会社に販売した事実をもって、本件商標の使用を立証しようとするものである。 しかしながら、商標法第50条の登録商標の使用といい得るためには、業としての使用でなければならず、「業として」とは、「一定の目的の下に反復、継続して行う行為として」と解されているところ、これを本件についてみるに、仮に商標権者が2011年10月に水中灯(1個)を静岡ミツワ電機株式会社に販売したことが事実であったとしても、使用に係る商品の取引が3年の間に僅か1回、しかも1個程度の極めて少数の商品数を同一の取引者との間で行ったという上記取引にあっては、それをもって反復、継続してなされた通常の商品取引の形態とみることはできず、したがって、そのことをもって、本件商標をその指定商品に使用していたとはいえない。 3 被請求人の主張 被請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第7号証を提出した。 (1)メタルハライドランプ水中灯「アイライト」について ア 商標権者は、ランプ・照明器具・光応用器具等の製造及び販売をコア事業とする東証一部(1961年上場)の電気機器メーカーであり、2014年8月に設立70周年を迎えるが、設立当初から現在に至るまで、企業の代表的出所標識(企業のブランド\ハウスマーク)として、「アイ」及び「EYE」の商標を使用し、個々の商品に付される商標(個別ブランド\ペットマーク)として、頭に「アイ」の文字を付した「アイ○○○」の商標と、頭に「EYE」の文字を付した「EYE○○○」の商標を数多く採択使用しており、「アイ」は商標権者の愛称ともなっている。 イ 商標権者は、会社設立から間もない1947年に、耐熱性ガラスで造られた集魚灯「アイライト」を発売し、これは、イカ釣り漁業者たちに爆発的に売れるヒット商品となった。その2年後には特殊硬質ガラスで造られた改良型の集魚灯「アイライト」を発売したところ、集魚灯を使用してサンマ漁を行う漁船が急増した結果、「アイライト」の生産量も飛躍的に増加し、商標権者は、1950年代から1960年代にかけて集魚灯トップメーカーとしての地位を築いた。そして、1970年代後半から1980年代にかけては、高出力・高効率の各種HIDランプ(メタルハライドランプ・高圧ナトリウムランプなどの高輝度放電灯)を開発し、当時開発した、HIDランプ集魚灯「アイライト」に関する記事が、1987年当時における最新の漁船用機関・機器を特集した業界雑誌「漁船機関(昭和62年10月特集号)」(社団法人漁船機関技術協会発行)に掲載されている(乙第2号証)。 ウ 上記雑誌に掲載されたHIDランプ集魚灯「アイライト」のうち、水中に沈めて使用する「水中灯」としては、ランプ電力が2000Wのメタルハライドランプ2種類(商品番号「M2000BW-W」及び「M2000BW-G」)と、4000Wのメタルハライドランプ2種類(商品番号「M4000BW-W」及び「M4000BW-G」)と、2000Wの高圧ナトリウムランプ1種類(商品番号「NH2000W」)とがある。 「水中灯」に用いる2種類の2000Wのメタルハライドランプには、共通の商品番号「M2000BW」が付され、その末尾に、ランプの仕様が一部異なること(発光色が異なること)を表す枝番号「-W」及び「-G」が付されていることから、商標権者は、旧来から、ランプ電力が2000Wのメタルハライドランプ水中灯「アイライト」について、「M2000BW」の商品番号を使用している。 エ 1990年代後半になると各地の自治体や漁業協同組合等が、集魚灯の出力等に光力制限を導入し、これに伴って、HIDランプ集魚灯の需要が大幅に減少したため、2006年に、商標権者は、HIDランプ集魚灯「アイライト」の全種類について、見込み生産を中止し、在庫を抱えない受注生産に切り替えた。 また、同時期に、HIDランプに比べて、消費電力が少ない等の利点があるLEDランプを光源とするLEDランプ集魚灯が出現し、2007年から2010年にかけては、その普及・実用化が推進されるようになったため、近年におけるHIDランプ集魚灯「アイライト」の受注量は減少傾向にあるものの、LEDランプ水中集魚灯より照射範囲が広く、集魚能力が優れているメタルハライドランプ水中集魚灯「アイライト」については、現在もその需要がある。 (2)本件商標の使用について ア 乙第3号証は、商標権者が本件商標を使用しているメタルハライドランプ水中灯(以下「使用商品」という。)の写真と、その一部であるランプネック部の拡大写真と、使用商品を包装する個装箱の写真とを示したものであり、ランプネック部の表面には、「M2000BW/V」の文字が付されており、個装箱の表面には、「メタルハライドランプ」、「水中灯」、「アイライト」、「M2000BW-V」及び「岩崎電気株式会社」の各文字が順段に付されている。 イ 使用商品に付された「M2000BW/V」の文字と、使用商品の個装箱に付された「M2000BW-V」の文字は、商標権者が旧来からランプ電力2000Wのメタルハライドランプ水中灯「アイライト」について使用している商品番号「M2000BW」(乙第2号証)の末尾に、従来型の商品とは一部仕様が異なることを表す枝番号「/V」、「-V」を付してなるものである。 ウ 上記ア及びイよりすれば、使用商品は、商品番号「M2000BW/V」のメタルハライドランプ水中灯であり、「メタルハライドランプ」、「水中灯」、「アイライト」、「M2000BW-V」の文字が付された個装箱は、使用商品に用いるものであることは明らかであるから、その個装箱に付された「アイライト」の文字は、使用商品であるメタルハライドランプ水中灯について使用される商標であるといえる。 そして、使用商品の「メタルハライドランプ」ないし「水中灯」は、第11類の「電球類及び照明用器具」であり、使用商品の個装箱に付された「アイライト」の商標は、黄色地に白抜きの文字で構成されているが、本件商標の構成と実質的に同一ないし社会通念上同一であるといえるものであり、その個装箱には、商標権者を表す「岩崎電気株式会社」の文字が付されている。 したがって、商標権者は、本件商標をその指定商品について使用しているといえる。 (3)使用商品の取引について ア 乙第4号証は、商標権者の静岡営業所が、取引先である静岡ミツワ電機株式会社の沼津営業所に対して、商標権者の製品「M2000BW/V 特殊用途HIDランプ」を2011年10月12日付けで納入し、その製品を同日付けで取引先が受領したことを証する商標権者の静岡営業所発行の「物品受領書」(伝票No.195042)である。 そして、上記「M2000BW/V 特殊用途HIDランプ」は、使用商品のメタルハライドランプ水中灯「アイライト」について使用する商品番号「M2000BW/V」ないし「M2000BW-V」と符号一致しており、また、メタルハライドランプは、「HIDランプ」であり、水中灯用のメタルハライドランプは、「特殊用途HIDランプ」に相違ないから、乙第4号証の物品受領書が使用商品の取引書類であることは容易に推認できるといえる。 イ 乙第5号証は、商標権者が2011年10月12日付けで納入した製品「M2000BW/V」(伝票番号195042、注文番号2328707)の代金を取引先に請求する商標権者の静岡営業所発行の2011年10月31日付け「請求書控え」である。 ウ 乙第6号証は、商標権者の静岡営業所が、乙第4号証の物品受領書に記載された製品「M2000BW/V 特殊用途HIDランプ」の納入日である2011年10月12日に、取引先の静岡ミツワ電機株式会社沼津営業所に対して、メタルハライドランプ水中灯「アイライト」(商品番号「M2000BW/V」)を販売したことを取引先会社が証明する「水中灯『アイライト』の取引に関する証明願兼証明書」である。 (4)「業として」の使用について 乙第4号証ないし乙第6号証において立証した使用商品の販売行為は、反復継続的意思をもってする経済行為として行う商取引としてみるのが自然であり、また、商標権者がランプ・照明器具等の製造及び販売をコア事業とする東証一部の電気機器メーカーであることや、メタルハライドランプ水中灯「アイライト」を1980年代から販売していることからも、使用商標を業として販売していることは明らかであるから、商標権者は、要証期間に日本国内において、「業として」、請求に係る指定商品について本件商標を使用していたことを、乙号証により立証しているといえる。 (5)まとめ 以上のとおり、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において商標権者がその請求に係る指定商品について本件商標を使用していることは、乙号証によって立証されているといえる。 4 当審の判断 (1)本件商標の使用について、被請求人の主張及び提出に係る証拠によれば、以下の事実が認められる。 ア 乙第2号証は、社団法人漁船機関技術協会が昭和62年10月10日に発行した雑誌「漁船機関 昭和62年10月特集号」であり、その133頁ないし139頁に、「集魚灯『アイライト』」と題する商標権者の埼玉製作所技術課が執筆した記事の掲載がある。 133頁には、「・・・弊社のアイライトは、照明用HIDランプの技術と経験を基に開発された高効率の集魚灯で、メタルハライドランプと、高圧ナトリウムランプがあります。メタルハライドランプは、船上用及び水中用として、2kWと4kWのものがあり、高圧ナトリウムランプも船上用及び水中用として、2kWのものがあります。光源色は、メタルハライドランプの白色、緑色と高圧ナトリウムランプの暖白色(オレンジ色)の3色があり、使用目的によって多様な品種があります。」の記載がある。 135頁には、「図-4 水中灯(メタルハライドランプ)」として、該商品の全体形状と構成要素を表した線図の記載がある。 136頁には、「表-1 アイライト特性一覧表」として、HIDランプ集魚灯「アイライト」の種類、形式、仕様等が掲載されており、その表中の「ランプの種類」が「水中灯」、「メタルハライドランプ」の欄には、「M2000BW-W」の形式について、発光色として「白色」、ランプ電力(W)として「2,000」の記載があり、また、「M2000BW-G」の形式について、発光色として「緑色」、ランプ電力(W)として「2,000」の記載がある。 よって、商標権者は、昭和62年には、同人の取扱いに係る「アイライト」と称するHIDランプ集魚灯の一種として、形式を「M2000BW-W」及び「M2000BW-G」とする「メタルハライドランプ水中灯」の製造・販売を行っていたことが推認される。 イ 乙第3号証は、使用商品の全体を写した写真、使用商品のランプネック部の拡大写真、使用商品を包装する個装箱の写真であり、使用商品のランプネック部には、「EYE」及び「M2000BW/V」、個装箱には、「メタルハライドランプ」、「水中灯」、「アイライト」、「M2000BW-V」及び「岩崎電気株式会社」の表示があり、該「アイライト」の文字部分(以下「使用商標」という。)は、黄色の横長矩形内に白抜きで表されている。 ウ 乙第4号証は、商標権者の静岡営業所が発行した、静岡ミツワ電機株式会社沼津営業所に納品した製品についての物品受領書であり、納入年月日として「11/10/12」、伝票NO.として「195042」の記載があり、その表には、製品名として「M2000BW/V 特殊用途HIDランプ」、数量として「1」の記載があり、平成23年(2011年)10月12日付けの受領印が押印されている。 エ 乙第5号証は、商標権者の静岡営業所が静岡ミツワ電機株式会社沼津営業所に宛てた2011年10月31日付けの請求書控えであり、その表の「11年\月日」の欄の「10.12」の項には、伝票番号として「195042」、製品名として「M2000BW/V」、数量として「1」、単価及び金額(合計)として「28,000」の記載がある。 オ 乙第6号証は、平成26年3月13日付け「水中灯『アイライト』の取引に関する証明願兼証明書」であり、別紙として使用商品の全体とその個装箱が写された写真が添付され、静岡ミツワ電機株式会社沼津営業所が商標権者の静岡営業所から、添付写真の商品と同型のメタルハライドランプ水中灯「アイライト」(商品番号:M2000BW-V)を2011年10月12日に購入したことについて証明している。 その添付写真の個装箱には、「メタルハライドランプ」、「水中灯」、「アイライト」(使用商標)、「M2000BW-V」及び「岩崎電気株式会社」の表示がある。 よって、商標権者は、使用商標が付された個装箱で包装した使用商品を、2011年(平成23年)10月12日に静岡ミツワ電機株式会社沼津営業所に納品し、その請求を同月31日付けで行ったことが推認される。 カ 使用商標は、「アイライト」の片仮名を白抜きで表してなるものであるから、本件商標と社会通念上同一の商標ということができる。 (2)前記(1)で認定した事実からすれば、商標権者が、2011年(平成23年)10月12日付けで使用商標が付された個装箱で包装した使用商品を納品した行為は、本件審判の請求の登録(平成26年2月18日)前3年以内に日本国内において、商標権者が本件商標の指定商品「電球類及び照明用器具」に含まれる「集魚灯」について、本件商標を使用したものといえる。 (3)なお、請求人は、乙第4号証ないし乙第6号証のみでは、それをもって反復、継続してなされた通常の商品取引の形態とみることはできず、商標法第50条の登録商標の使用といい得ない旨主張する。 しかしながら、前記(1)アのとおり、商標権者は、遅くとも昭和62年(1987年)から、本件商標を付して使用商品を取り扱っており、また、2006年以降は受注生産を行っているものであることをも踏まえれば、2011年10月12日に商標権者が使用商品を納品した上記行為が、業として本件商標を使用していないとはいえない。 (4)以上のとおり、被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、商標権者によって、その請求に係る指定商品について、本件商標と社会通念上同一といえる商標を使用していたことを証明したものと認めることができる。 したがって、本件商標の登録は、商標法第50条の規定により、取り消すことはできない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2014-09-08 |
結審通知日 | 2014-09-10 |
審決日 | 2014-09-24 |
出願番号 | 商願昭35-31202 |
審決分類 |
T
1
31・
1-
Y
(Y11)
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最終処分 | 不成立 |
特許庁審判長 |
関根 文昭 |
特許庁審判官 |
根岸 克弘 浦辺 淑絵 |
登録日 | 1962-12-21 |
登録番号 | 商標登録第602699号(T602699) |
商標の称呼 | アイライト、アイ |
代理人 | 澤野 勝文 |
代理人 | 白坂 一 |
代理人 | 川尻 明 |