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審決分類 審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効としない X43
審判 全部無効 商3条1項1号 普通名称 無効としない X43
審判 全部無効 商3条1項3号 産地、販売地、品質、原材料など 無効としない X43
管理番号 1309736 
審判番号 無効2015-890056 
総通号数 194 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2016-02-26 
種別 無効の審決 
審判請求日 2015-06-29 
確定日 2016-01-04 
事件の表示 上記当事者間の登録第5334677号商標の商標登録無効審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 審判費用は,請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5334677号商標(以下「本件商標」という。)は,「東海飯店」の文字を標準文字で表してなり,平成22年1月26日に登録出願,同年5月20日に登録査定,第43類「飲食物の提供,ケータリング(飲食物)」を指定役務として,同年7月2日に設定登録され,現に有効に存続しているものである。

第2 請求人の主張
請求人は,本件商標の登録を無効とする,審判費用は被請求人の負担とする,との審決を求め,その理由を審判請求書及び審判事件弁駁書において要旨次のように述べ,証拠方法として,甲第1号証ないし甲第11号証を提出した。
1 請求の利益について
請求人は,指定役務「中華料理を主とした飲食物の提供」に商標「東海飯店」を使用していたところ,平成26年4月3日に,被請求人から本件商標の商標権を侵害する旨の警告を受けた(甲1)ので,本件審判の請求をするについて利害関係を有する。
2 無効理由について
本件商標は,商標法第3条第1項第1号,3号,同法第4条第1項第15号に該当する。
(1)本件商標の構成は,漢字で「東海飯店」と一連に横書きされた文字商標であり,本件商標を「東海」と「飯店」に分離して判断すると,先ず,「東海」について,広辞苑〔第2版〕の第1561頁によると,東海道,あるいは東海地方の略称であると記載されている(甲2)。
さらに,「東海道」は,わが国八道のーであり,畿内の東,東山道の南で,主として海に沿う地とあり,地理的名称を表すものにすぎないとも記載されている。
そして,その「八道」とは,「八正道」の略であり,律令制で,東海・東山・北陸・山陰・山陽・南海・西海の七道に畿内を加えたものであり,また,明治時代に七道に北海道を加えた称のことであると記載されている。
また,前記「畿内」とは,広辞苑の第541頁によると,わが国では歴代の皇居が置かれた大和・山城・河内・和泉・摂津の五ケ国の意であると記載されており,皇居の所在地に近い国々の意であるとも記載されている。
このように,「東海」,「北陸」,「北海道」,「近畿」は,上記に示すように地理的名称を表すものにすぎないものである。
そして,その事は,過去,貴庁において,「近畿」,「北陸」,そして「北海道」の文字を含む商標について,次の審決,あるいは決定をしている。
ア 商標「デンソーテック近畿」が,「近畿」の文字部分が地理的名称を表すものであることから,単に商品の産地,販売地を表すとされた事例。
イ 商標「北海道魚萬」が,「北海道」が役務の提供場所ないしは北海道の産物を提供するという役務の質,内容を表示したものと認識し理解され,自他役務の識別力がないか極めて弱いものとされた事例。
ウ 商標「北陸チューリップ」が,「北陸」は,富山・石川・福井・新潟県の総称である「北陸地方」を表す地理的名称で,役務の提供の場所(地域)を表すものとして随時採択使用されているから,自他役務識別力がないか極めて弱いとされた事例。
(2)次に,本件商標を構成する「飯店」の部分は,広辞苑の第1840頁によると,旅館,ホテル,中国料理店をいう,と記載されている。
したがって,本件商標の「東海飯店」のうち,「飯店」は,指定役務である「飲食物の提供,ケータリング(飲食物)」に使用しても自他役務の識別力のない商標にすぎないものである。
過去の審査例をみるに,「○○飯店」という構成からなる商標は,○○の部分が,中華料理の本場である中国の地名,ならびに,日本の地名,国名との結合した商標が登録されている(甲3ないし甲9)。
しかしながら,これらの登録商標は,「○○(地名)」+「飯店」との結合商標ではなく,これらを,さらに「図形」を加えて「○○(地名)」+「飯店」+「図形」とした結合することにより登録されているものである。
したがって,本来,「○○(地名)」+「飯店」との結合された商標だけでは特別顕著性を有するものではなく,「図形」が加わることにより商標登録要件が備わったものであると推察される。
(3)また,「○○飯店」という構成からなる商標は,「○○」の部分が,日本の地名との結合した商標である場合であっても,「飯店」を「大飯店」とすることにより特別顕著性を有する商標として商標が登録されている(甲10及び甲11)。
しかしながら,本件商標は,これを商標の指定役務に使用しても自他役務に対して識別力のない商標にすぎない。
このように,商標登録における審査が,2009年までの「○○(地名)」+「飯店」の結合商標,あるいは,「○○(地名)」+「飯店」+「図形」の結合商標は,前述のような判断に基づいて登録されていたと推察されるが,2010年になって,突然,本件商標のように「○○(地名)+飯店」からなる商標が,図形もなく,単に,標準文字で登録されるようになっていることが判明した次第である。
(4)したがって,従来とおりの審査にされるべきであり,本件商標も,「東海」という地理的名称と,「飯店」という中華料理店名との結合商標であり,本件商標は,本来ならば識別力のない商標として,商標法第3条第1項第1号,3号の要件に該当して拒絶となるべき商標である。
また,本件商標が,その構成中の「東海」の文字部分が地理的名称を表すものであるところから,単に役務の産地,販売地を表し,東海地方以外の地域で役務を行なうことにより,役務の混同を生ずるおそれがあることはあきらかであり,本件商標は,商標法第4条第1項第15号により拒絶されるべき商標である。
3 答弁に対する弁駁
被請求人は,本件商標は初代料理長の人名から取ったものであると主張するが,初代料理長の名前に対して,その証拠が示されておらず,不知である。
商標登録要件の判断は登録査定時であり,したがって,それ以降(日付が不明)のパンフレットやメニューは,証拠としては不知である。
被請求人が答弁書に添付した書面のうち,1枚は請求人のメール画面「東海飯店・広島の中国料理のお店。創業50年の老舗です。」の記載がある書面は,請求人のツイッターの画面であり,フォロワーの数を比較したものと思われるが,商標登録要件の判断時は登録査定時であり,不知である。

第3 被請求人の主張
被請求人は,結論同旨の審決を求め,その理由を要旨以下のように述べ,証拠方法として乙第1号証ないし乙第3号証を提出した。
1 請求人は,東海飯店の名称を「東海」「飯店」と分けて,東海地方の略称で東海地方に当社の東海飯店がないことから無効判決を求めているが,当社の東海飯店は初代料理長「東海 鐘弘」の人名から取ったものであり,地名を意識して命名したのではない。人名を店名にしている店舗はたくさんある。
2 飲食業界において,北海道などはある種のブランドのような位置づけがあると思うが,東海地方の東海を使っても北海道という名称に比べても地理的ブランド性がなく,特に中華料理では名称によるプラス効果はない。
3 当社では,東海地方という名称は店舗メニューや販促において一切使用していない。
東海地方の食材を使っている,東海地方出身である,という理由でお店のウリとして営業をしているのであればまだしも,全くそういうことはなく,人名による命名で一生懸命育ててきた「東海飯店」というブランドを地方の略称という理由で無効請求されるのは侵害である。
4 当社の東海飯店は,テレビなどでも度々紹介され,総合グルメサイト「ぐるなび」では全国の中華部門で1位の反響をいただいており,ツイッターも9万人以上のフォロワーがいる。
5 東海飯店という商標の影響力は当社の東海飯店の方が有限会社王のもつ東海飯店より大きいのは明白である。
影響力はなにより,商標権は出願先着順という基本的ルールに基づいても,当社の東海飯店の商標権は守られるべきである。

第4 当審の判断
1 請求の利益について
請求人が本件審判を請求する利害関係を有することについては,当事者間に争いがなく,審判請求書によれば,請求人は,被請求人から,「東海飯店」の使用について通知書を受け取っており,商標法等の違反について争いがある(甲1)ので,請求人は本件審判の請求人適格を有するものと判断し,本案について審理する。
2 商標法第3条第1項第1号及び同項第3号該当性について
本件商標は,「東海飯店」の文字を標準文字で表してなるところ,その構成中「東海」の文字部分は,「東方の海,日本国の異称,東海道の略」等の意味を有する語(甲2)であるが,特定の地名,著名な地理的名称を表示するものではなく,その指定役務との関係において,役務の提供場所を表示するものということができない。
そして,「飯店」の文字部分は,「中国料理店」の意味を有する語(甲2)であるから,本件商標は,「東海飯店」という特定の飲食店名を表したものと取引者,需要者に認識,把握されるとみるのが自然である。
また,当審において調査したところ,「東海飯店」の文字が,本件指定役務の普通名称又は「東海地方の中華料理店」程を表すものとして使用されている事実を発見することができず,取引者,需要者が,役務の提供場所を表示したものと認識するというべき事情も見あたらない。
そうとすれば,本件商標は,これをその指定役務について使用しても,その役務の普通名称及び提供の場所を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標とはいえないものであって,十分に,自他役務の識別標識としての機能を果たし得るものと認められる。
したがって,本件商標は,商標法第3条第1項第1号及び同項第3号に該当しない。
なお,請求人は,「本件商標の構成中の『東海』の文字部分が地理的名称を表すものであるところから,・・・東海地方以外の地域で役務を行なうことにより,役務の混同を生ずるおそれがあることはあきらかである」旨を主張する。
しかしながら,本件商標の構成中の「東海」の文字部分は,上記のとおり,特定の地名,著名な地理的名称を表示するものではないことから,役務の提供の場所を表したものということができない。
そうとすれば,本件商標は,これを東海地方以外の地域でその指定役務について使用をしても,役務の質について誤認を生ずるおそれはないものである。
3 商標法第4条第1項第15号該当性について
請求人は,審判請求書において甲第1号証ないし甲第11号証を提出するが,提出に係る証拠からは,請求人が「中華料理を主とした飲食物の提供」に「東海飯店」を使用した事実は何ら示されていないものであるから,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,「東海飯店」の文字が,請求人の業務に係る役務を表示する商標として広く認識されているものとはいえない。
その他,請求人の主張及び提出に係る甲各号証を総合してみても,本件商標をその指定役務について使用した場合,役務の出所について混同を生ずるものとすべき特段の事情も見いだせない。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当しない。
4 まとめ
以上のとおり,本件商標の登録は,商標法第3条第1項第1号,同項第3号及び同法第4条第1項第15号に違反してされたものとは認められないから,同法第46条第1項の規定により,無効とすることができない。
よって,結論のとおり審決する。
審理終結日 2015-10-30 
結審通知日 2015-11-06 
審決日 2015-11-24 
出願番号 商願2010-4702(T2010-4702) 
審決分類 T 1 11・ 271- Y (X43)
T 1 11・ 11- Y (X43)
T 1 11・ 13- Y (X43)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 日向野 浩志 
特許庁審判長 金子 尚人
特許庁審判官 大井手 正雄
田中 亨子
登録日 2010-07-02 
登録番号 商標登録第5334677号(T5334677) 
商標の称呼 トーカイハンテン 
代理人 三原 靖雄 

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