ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない 030 |
---|---|
管理番号 | 1308408 |
審判番号 | 取消2014-300479 |
総通号数 | 193 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標審決公報 |
発行日 | 2016-01-29 |
種別 | 商標取消の審決 |
審判請求日 | 2014-06-26 |
確定日 | 2015-11-09 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第4174675号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 |
理由 |
第1 本件商標 本件登録第4174675号商標(以下「本件商標」という。)は、「百年」の漢字を横書きしてなり、平成8年5月1日に登録出願、第30類「コーヒー及びココア,コーヒー豆,茶,角砂糖,果糖,氷砂糖,砂糖,麦芽糖,はちみつ,ぶどう糖,粉末あめ,水あめ,ごま塩,食塩,すりごま,セロリーソルト,化学調味料,香辛料,食品香料(精油のものを除く。),米,脱穀済みの大麦,食用粉類,食用グルテン,穀物の加工品,サンドイッチ,すし,ピザ,べんとう,ミートパイ,ラビオリ,菓子及びパン,即席菓子のもと,アイスクリームのもと,シャーベットのもと,アーモンドペースト,イーストパウダー,こうじ,酵母,ベーキングパウダー,氷,アイスクリーム用凝固剤,家庭用食肉軟化剤,ホイップクリーム用安定剤,酒かす」を指定商品として、同10年8月7日に設定登録され、その後、同14年2月13日に、指定商品中の「イーストパウダー,こうじ,酵母,ベーキングパウダー,酒かす」について登録を取り消すべき旨の審判の確定登録がされたものである。 そして、本件審判請求の登録日は、同26年7月16日である。 第2 請求人の主張 請求人は、商標法第50条第1項の規定により、本件商標について、その指定商品中、第30類「サンドイッチ,ピザ,ミートパイ,菓子及びパン」についての登録を取り消す、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を、審判事件弁駁書、口頭審理陳述要領書及び平成27年5月26日付け上申書において要旨次のとおり述べ、甲第1号証ないし甲第6号証を提出した。 1 請求の理由 本件商標は、その指定商品中、上記商品について、継続して3年以上日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれによっても使用した事実がないから、その登録は、取消されるべきものである。 2 答弁に対する弁駁 (1)審判請求の登録前3年以内(以下「要証期間内」という。)の使用について ア 乙第6号証の1について 乙第6号証の1に係るパンフレット(以下「本件パンフレット」という。)には日付が入っていない。また、被請求人は、本件パンフレットを平成26年7月16日より前に取引者に頒布したと主張するが、その証拠は提示されていない。 イ 乙第7号証について 乙第7号証に係るプレゼン資料(以下「本件プレゼン資料」という。)の第1頁の右上部には日付欄が設けられており、そこには「2014.6.16」と記載されている。しかし、被請求人が自ら認めるように、当該部の日付は自由に書き換え可能となっているため、仮に本件プレゼン資料が取引者に対して展示されたものだとしても、自由に書き換え可能な日付欄は、取引者に対して展示された日付を証明するものとはいえない。また、被請求人は、本件プレゼン資料を平成26年6月中に取引者に展示したかのように主張するが、その証拠は提示されていない。 ウ その他の乙各号証について 乙第2号証ないし乙第5号証は、いずれも取引者、需要者に頒布されたものではないため、商標法第2条第3項第8号に該当せず、商標の使用とはいえないものである。 乙第8号証の1ないし5は、商品の包装に商標が付されていることが認められるものの、いつ使用されたものか不明であり、要証期間内に本件商標が使用されていることを証明するものではない。 なお、当該商品が掲載されている本件パンフレットの表紙には、「2014秋製品ご案内」との記載があるため、平成26年秋に流通されたものと考えるのが自然である。 エ 小括 上記アないしウのとおり、乙第2号証ないし乙第8号証(枝番号を含む。)は、要証期間内において、本件商標が使用された事実を何ら証明していない。 (2)本件商標と使用商標の同一性について ア 横書きの「カンロ百年のど飴」の表示について 本件パンフレットの第1頁、第16頁及び第21頁並びに本件プレゼン資料の第12頁の上及び下のスライドに、横書きの「カンロ百年のど飴」(以下「標章A」という)の表示が認められる。 標章Aの構成中「カンロ」の文字部分からは、標章Aが付された商品との関連から、カンロ株式会社(以下「カンロ(株)」という。)の観念が生じる。 矢野経済研究所発行の「日本マーケットシェア事典2013年版」の写し(甲3)によれば、2011年度のカンロ(株)の出荷高は203億円であり、日本のキャンディ・キャラメル市場の12.1%を占め、シェア2位に位置している。また、東洋経済新報社発行の「会社四季報業界地図2014年版」の写し(甲4)によれば、カンロ(株)は、UHA味覚糖と並んであめ菓子業界内でシェアの高い企業として挙げられている。そのため、社名から「株式会社」を除いた「カンロ」の文字部分は、カンロ(株)を表す著名な標識であるといえる。 したがって、「のど飴」に「カンロ」の商標が付された場合、取引者、需要者は商品の出所がカンロ(株)であることを認識する。これに対して、標章Aの構成中の「百年」の文字部分は、取引者、需要者に対して特定の出所を想起させることはなく、標章Aにおいて、最も識別力を発揮する要部は「カンロ」の文字部分であり、「百年」の文字部分ではない。なお、「カンロ」の文字に続いて「百年」の文字が並ぶことによって、取引者、需要者には、カンロ(株)が創業百年であるという観念を想起させるにとどまり、「百年」の文字部分のみが標章Aの要部とはなり得ない。 したがって、通常使用権者が使用したとする標章Aは、本件商標と社会通念上同一の商標ではない。 イ 縦書きの「飴/カンロ/百年のど飴」の表示について 本件パンフレットの第1頁及び第16頁並びに本件プレゼン資料の第12頁の下のスライドに、縦書きの「飴/カンロ/百年のど飴」(以下「標章B」という。)が表示されている。 標章Bは、結合商標であり、その構成は、最上部に、大正時代を想起させる特殊な書体で書かれた「飴」の文字を二重丸で囲んだマークがあり、その下に、横書きの「カンロ」の文字が結合され、そして、その下に、縦書きの「百年のど飴」の文字が結合されているものである。これらの構成要素は全て濃い色の同色であり、隙間なくまとまって縦に直線状に並んでいる。横書きの「カンロ」の横幅と縦書きの「百年のど飴」の横幅はほぼ同一であり、これらに比べて「飴」の文字を二重丸で囲んだマークは、やや幅広である。 被請求人は、使用に係る商標が、「百年のど飴」と構成されているように主張し、このうち「のど飴」の文字部分は商品の普通名称であるから、「百年」の文字部分が要部であると主張している。 しかしながら、標章Bは、「百年のど飴」の文字だけで構成されているのではなく、二重丸に囲まれた「飴」の文字、及び横書きの「カンロ」の文字が結合された結合商標であり、全体として一体にまとまりよく構成されている。そして、最上部に位置する二重丸に囲まれた「飴」の文字は、取引者、需要者の注意を引きやすく、要部を構成する。さらに、「カンロ」の文字部分は商品の出所がカンロ(株)であることを示す著名な商標であるから、「カンロ」の文字は、小さく書かれてはいるものの、標章Bが発揮する識別力に対して最も支配的な要素、すなわち標章Bの要部を構成するものである。 そして、標章Bは、本件商標を一部に含む商標ではあるものの、他の部分と合体して本件商標そのものの独立性が失われているため、もはや本件商標と社会通念上同一とはいえない。 したがって、通常使用権者が使用したとする標章Bは、本件商標と社会通念上同一の商標ではない。 (3)商標的使用について ア 「HYAKUNEN」の商標的使用について 本件パンフレットの第1頁、第16頁及び第21頁並びに本件プレゼン資料の第12頁の上及び下のスライドに、横書きの「HYAKUNEN」(以下「標章C」という。)の表示がある。 標章Bが濃い色で大きく縦に表示されているのに対して、標章Cは、標章Bの下に薄い色で小さく付記的に表示されているにすぎず、この表示が独立して出所表示機能を発揮することはない。すなわち、標章Bの下に小さく表示された標章Cに取引者、需要者が接しても、装飾と認識するのみで、商品の出所を示す標識として認識することはない。 したがって、標章Cは、商標的に使用されているとはいえない。 また、本件パンフレットの第16頁及び本件プレゼン資料の第12頁の下のスライドについては、表示が小さいため、もはや標章Cを視認することはできない。 したがって、視認することができない商標に信用が化体することはないので、仮に表示されているとしても、商標として使用されているとはいえない。 また、標章Cは、乙第8号証の1、3及び5(商品写真)に表示されているが、仮に商品に使用された商標であるとしても、いつ使用されたものか不明であり、要証期間内に本件商標が使用されていることを証明するものではない。 イ 「HYAKUNEN」と「百年」の同一性について 商標法第50条第1項括弧書きには、社会通念上同一と認められる商標が例示されているが、本件商標と標章Cのように、漢字及びローマ字の文字の表示を相互に変更するものは、上記の例示のいずれにも該当しない。 また、被請求人は、「HYAKUNEN」の称呼が「百年」と共通するとして、あたかも「HYAKUNEN」からは「ヒャクネン」の称呼のみが生じるかのように主張している。 しかしながら、日本において最も普及している外国語は英語であり、欧文字の表記に対しては英語式の発音で称呼するのが一般的であるところ、語頭が「HYA」で始まる英単語は見出し語で12単語存在し(甲5)、そのいずれの英単語も語頭の「HYA」の部分の発音は、片仮名で表記すれば「ハイア」となる。なお、「hyacinth」の日本語訳は「ヒヤシンス」であり、「hyaluronic acid」の日本語訳は「ヒアルロン酸」であるが、いずれの単語の語頭「HYA」からも「ヒャ」との称呼は生じていない。 そうすると、日本の取引者、需要者が標章Cに接した場合、最も自然な称呼として「ハイアクネン」が生じ、英単語の日本語訳の連想から「ヒヤクネン」、「ヒアクネン」の称呼が生じ得るのであって、これらの称呼はいずれも、「百年」から生じる「ヒャクネン」の称呼とは相違する。 したがって、標章Cと本件商標とは、称呼が相違する場合の漢字とローマ字の相互間の使用に該当し、社会通念上同一とは認められない。 3 口頭審理陳述要領書における主張 (1)暫定的見解に対する被請求人の意見に対する反論 ア 本件パンフレットについて 被請求人は、本件パンフレットを平成26年6月には配布を開始したと主張しているが、配布時期を示す記載は一切無く、被請求人の主張は根拠を欠く主張である。また、配布時期だけでなく、配布先、配布場所、配布地域等を証明する証拠も提出されていない。 イ 請求書について 被請求人は、本件パンフレットの表題や内容からして、乙第6号証の2の請求書が「2014秋総合パンフレット」を示すことは容易に理解可能である、と主張している。 しかしながら、本件パンフレットが、カンロ(株)が販売する商品を網羅しているのか、それとも商品の一部を抜粋しているのか、同号証からは判断できない。 また、カンロ(株)は、キャンディー業界におけるトップシェアを争う企業であり、年間の売上高は203億円にも上る(甲3及び甲4)ことから、カンロ(株)が取り扱う商品の販路も多岐に渡ると考えられ、販路に応じて複数の種類のパンフレットを用意していると考えるのが自然である。 したがって、被請求人が提出した証拠に基づいても、本件パンフレットが、カンロ(株)が使用する複数のパンフレットのうち、「2014秋総合パンフレット」に該当すると、判断することはできない (2)弁駁書に対する被請求人の主張に対する反論 ア 本件パンフレットについて 被請求人は、本件パンフレットを用いて、商標法第2条第3項各号のいずれの使用を証明しようとしているのか不明である。本件パンフレットに基づいて、同法第2条第3項第1号に規定される使用行為の開始時期を推測するのであれば、平成26年秋と考えるのが自然である。しかし本件パンフレットからは、同法第2条第3項第8号に規定される使用の有無を判断することはできず、また、仮に使用されていたとしても、該パンフレットからその開始時期を判断することもできない。 イ 商標の同一性に関する被請求人の主張について 被請求人が使用したと主張する商標の構成は、標章A(カンロ百年のど飴)及び標章B(飴/カンロ/百年のど飴)と標章C(HYAKUNEN)を結合したもの(以下「標章B’」という。)である。そして、被請求人は、標章A及び標章B’のいずれにおいても、「カンロ」の文字が要部を構成することを認めている。 すなわち、被請求人が使用したと主張する商標は、その要部の「カンロ」の文字から「カンロ」という称呼が生じる。また、その要部の「カンロ」の文字から「カンロ株式会社」の観念が生じる。これに対して、本件商標からは、「カンロ」という称呼は生じ得ない。また、本件商標から「カンロ株式会社」の観念も生じ得ない。すなわち、被請求人が使用したと主張する商標と、本件商標とは、生じる称呼及び観念が相違する。 したがって、被請求人が使用したと主張する商標と、本件商標とは、社会通念上同一の商標ではない。 なお、被請求人は、標章B’は、要部を複数有する商標であると主張しており、そうすると、標章B’は、本件商標と外観が全く異なり、この点からもこれらは社会通念上同一の商標ではない。 ウ 「HYAKUNEN」に関する被請求人の主張について 被請求人は、審決例(乙13)を挙げて、「HYAKUNEN」(標章C)と本件商標とが社会通念上同一の商標であると主張するが、該事例と本件とは、事案が異なり、該審決の結論を本件に適用することはできない。 (3)上申書(1)の被請求人の主張に対する反論 ア 乙第15号証について (ア)印影の明らかな相違 乙第15号証は、請求書(乙6の2)の品名欄に記載された品物が何に該当するのか、及び該請求書に係る品物が納品された時を証明するための書類である。このうち、請求書の品名欄に記載された「2014秋総合パンフレット」がどの冊子に該当するかは、該請求書を作成した者でなければ証明し得ない事項である。 ところで、請求書の作成者を示す印字部分は黒塗りされており読めないが、該請求書の「凸版印刷株式会社」の上に押印された角印と、乙第15号証に押印された角印とを見比べると、これらは印影が明らかに異なる。すなわち、請求書の角印の印影は、「凸版印刷株式会社西日本事業部之印」と読める。これに対して、乙第15号証の角印の印影は、「凸版印刷株式会社中四国事業部之印」と読め、乙第15号証の証明者の欄にも、「凸版印刷株式会社中四国事業部」と印字されている。そうとすれば、請求書の作成者と乙第15号証の証明者とは、異なる事業所に所属していることから、乙第15号証の証明書としての真正が極めて疑わしい。 (イ)納品日及び納品の態様について 乙第15号証において、証明者が証明しようとしている事項の一つが、「凸版印刷株式会社により作製されたパンフレットが、平成26年6月中にカンロ(株)に納品されたこと」である。乙第15号証の証明者の住所はカンロ(株)から遠隔であるから、証明者は、カンロ(株)が本件パンフレットをいつ受領したかを、直接知ることはできない。証明者は乙第15号証に署名及び押印をしているものの、受領した日をどのように知ったのか、何に基づいて「相違ない」といっているのか、明らかではない。また、納品日が具体的な日付ではなく、「6月中」と具体性を欠いていることも不自然であり、1万部の本件パンフレットを、カンロ(株)の一つの事業所に一括して納品したのか、複数の事業所に分散して納品したのかも不明である。 そもそも、1万部にも上るパンフレットの納品日を、納品書や受領書によらず、10ヵ月も経過した後で証明書によって証明しようとするのは不自然である。 (ウ)証明者について 乙第15号証の証明者である白石氏が、証明し得る者であるかどうか、すなわち、この証明者が凸版印刷株式会社中四国事業部において、どのような部署に所属し、どのような立場であり、何を担当しているのか一切不明である。 (エ)まとめ 上述のとおり、乙第15号証に記載されている内容を、証拠として信用することはできない。 したがって、乙第15号証によっても、商標の使用は証明されない。 イ 乙第16号証について (ア)証明者について 乙第16号証は、カンロ(株)が各流通店・小売店等に対して本件商標を使用していることを証明するためのものであり、乙第16号証の証明者は、平成26年6月16日にカンロ(株)の営業担当者が三菱食品株式会社の商品購入担当者に対してプレゼンテーションを行ったことに相違ないとして、署名及び押印している。 しかし、乙第16号証で証明者として署名している仲谷氏が、上記事項を証明し得る者であるかどうか、すなわち、この証明者が三菱食品株式会社において、どのような部署に所属し、どのような立場であり、何を担当しているのか一切不明である。 (イ)具体性を欠く内容について 乙第16号証に記載の「弊社の営業担当者」及び「御社の商品購入担当者」とは誰なのか、具体的に明らかになっていない。 (ウ)プレゼンタイトルの齟齬について 被請求人の主張によれば、三菱食品株式会社は、「食品の卸売・流通・販売等」の事業を行う企業であるが、コンビニエンスストアを運営していることは確認できない。その一方で、本件プレゼン資料の表紙には「2014年秋 新商品説明会 CVS」との記載があり、コンビニエンスストア向けの資料であることが明示されている。コンビニエンスストアを対象としたプレゼンテーションを、三菱食品株式会社に対して行っているのは不自然であり、その理由が不明である。 (エ)プレゼンテーションの態様について 乙第16号証に係るプレゼンテーションが行われていたとしても、具体的にどのように行われたかが不明である。被請求人は、本件プレゼン資料及び乙第16号証を使用して、商標法第2条第3項第8号に係る使用事実を証明しようとしているが、プレゼンテーションが具体的にどのような態様であるかが不明であるため、同法第2条第3項第8号に係る使用に該当するとは認められない。 (オ)まとめ 上記のとおり、乙第16号証に記載されている内容を、証拠として信用することはできず、仮に乙第16号証を証拠として採用したとしても、被請求人は、本件商標を使用したことを証明していない。 4 上申書における主張 (1)乙第15号証について ア 乙第15号証に押印された印鑑は、白石氏本人の印鑑ではなく、「凸版印刷株式会社中四国事業部」の社印(角印)である。すなわち、乙第15号証の印鑑は、白石氏本人が押印したものでなく、中四国事業部の他人が押印したことが疑われる。 イ 乙第15号証に記載の証明者の肩書きは「中四国事業部」であり、住所は広島県内であるのに対して、乙第22号証の名刺の肩書きは「中四国事業部・・・東京連絡室」とあり、住所も東京都内の住所が大きく記載されており、広島県内の住所は東京都内の住所の下に小さく括弧書きとなっている。そして、白石氏の住所は東京都内であると考えるのが自然であるが、乙第15号証に記載の住所は広島県内である。 したがって、乙第15号証は、白石氏ではない中四国事業部の他人が署名・押印したか、又は白石氏が注意力を欠いた状態で署名・押印をしたことが疑われる。いずれの場合にも、乙第15号証の内容を信用することはできない。 ウ 被請求人は、乙第23号証の1及び2(パンフレット納品に係る送り状の写し)を挙げて乙第15号証の真正を主張しているが、該乙号証はすべて送り状の写しであり、荷受人が荷物をいつ受領したかを証明するものではない。 そもそも、送り状の荷送人の欄には、乙第15号証の証明者が属する「凸版印刷株式会社」とは異なる法人名が記載されている。 したがって、送り状は、乙第15号証及び乙第6号証の2(請求書)とは無関係の送り状であり、乙第15号証の真正を示す証拠となり得ない。 (2)乙第17号証について ア 被請求人は、乙第17号証は使用権者であるカンロ(株)が各流通店・小売店等に対して本件商標を使用していることを証明するためのものであり、乙第17号証によれば、「株式会社みのや」が本件パンフレットを要証期間内に受領した事実が証明されると主張しているが、乙第17号証によれば、「平成27年6月中に・・・配布を受けたこと。」と記載されており、実際にいつ受領したか、具体的な日付の記載がない。乙第17号証の証明者は、いかなる情報を基にして、受領した日が、5月でも7月でもなく、「6月中」であった、といっているのか不明である。 イ 乙第17号証に係る書類は、平成27年4月30日にカンロ(株)の代表取締役から株式会社みのやの証明者に配布され、同日に証明者が署名・押印して返送している。証明者が証明するにあたってどのような調査を行ったのかが不明であるが、1日に満たない短い検討期間で署名・押印していることから、推測だけに基づき署名・押印していることが疑われる。そのため、乙第17号証は信用できない。また、乙第17号証の記載内容を裏付ける客観的な証拠が何ら存在しないため信用できない。 (3)乙第19号証について 被請求人は、乙第19号証によれば、使用権者であるカンロ(株)から株式会社ドルチェに対して本件商標を使用したプレゼンテーションが平成26年6月26日に行われた事実が証明されていると主張している。しかし、プレゼンテーションの具体的な態様が依然として不明である。すなわち、具体的にどの商標がどのようにして取引者、需要者の目に触れて信用を蓄積したかという点について、何ら明らかにされていない。 また、乙第19号証に添付されたプレゼンテーションのシートには、本件プレゼン資料には添付されていた表紙のシートが存在しない。証明者が、何と何を照合して乙第19号証に添付されたプレゼンテーションを受けた、と判断したかが不明であり、乙第19号証は信用できない。加えて、乙第19号証の記載内容を裏付ける客観的な証拠が何ら存在しないため信用できない。 (4)乙第25号証について 被請求人は、乙第25号証(陳述書)によって、証明願2に係る被請求人の主張が正しいことが証明されると主張している。しかし、該陳述書は、使用権者の従業員が、使用権者が商標を使用した旨を陳述する書面であるから、そもそも客観性を欠いている。陳述書の(2)の「新商品説明(プレゼンテーション)を・・・複数の取引先様に行いました。」のように抽象的であり、具体的な商標の使用態様について何ら説明されていない。 すなわち、具体的にどの商標がどのようにして取引者、需要者の目に触れて信用を蓄積したかという点について、何ら明らかにされていない。そして、該陳述書の記載内容を裏付ける客観的な証拠は何ら存在しないため信用できない。 したがって、陳述書及び証明願2によっても、本件商標が使用されたことは何ら証明されない。 5 まとめ 以上の述べたとおり、要証期間内に、日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが、本件取消審判請求に係る指定商品のいずれかについて、本件商標を使用していることを、被請求人は証明していない。 したがって、商標法第50条第2項に基づき、商標権者たる被請求人は、本件取消審判請求に係る指定商品についての商標登録の取り消しを免れない。 第3 被請求人の主張 被請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を審判事件答弁書、口頭審理陳述要領書並びに同27年4月30日付け上申書(1)、同年5月15日付け上申書(2)、同月19日付け上申書(3)及び同年6月2日付上申書(4)(以下、これら上申書をまとめて「上申書」という。)により要旨以下のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第27号証(枝番号を含む。)を提出している。 1 答弁の理由 本件商標は、以下のとおり、被請求人が商標の使用を許諾した通常使用権者(以下「使用権者」という。)が、要証期間内に、少なくともその請求に係る指定商品中の「菓子」に含まれる「キャンディー(のど飴)」に使用しているものである。 (1)乙各号証について ア 乙第2号証は、使用権者が本件商標を使用した商品を発売するにあたり、パッケージデザインをデザイン会社に依頼した、平成26年4月1日付けの発注書の写しである。 イ 乙第3号証の1は、被請求人と使用権者であるカンロ(株)との間で、平成26年5月16日付で締結した商標使用許諾契約書の写しである。 ウ 乙第3号証の2及び3は、使用権者が、商標使用許諾契約の内容に基づいて、使用を計画している本件商標の態様が表されているパッケージデザインについて、使用許諾契約との関係で問題がないかを確認するために、被請求人代理人に対して送った平成26年5月22日付けのメールの写し及びこれに添付されたパッケージのデザイン画像である。 エ 乙第4号証の1及び2は、被請求人と使用権者の契約書について、使用権者の調印が完了したことを、被請求人代理人が被請求人の関係者に伝えるとともに、使用権者から提供を受けた本件商標の使用態様について被請求人の確認を得るために、使用権者から提供を受けた本件商標のパッケージのデザイン画像を被請求人に送った平成26年5月22日付けのメール及びこれに対する返信の写しである。 オ 乙第5号証は、被請求人代理人がパッケージデザインに問題がない旨の返答を使用権者側に対して行ったことに対して、使用権者側から確認返信が行われた平成26年5月27日付けのメールの写しである。 カ 乙第6号証の1及び2は、使用権者の取扱商品をまとめた「2014秋総合パンフレット」(本件パンフレット)の抜粋の写しと、当該パンフレットの印刷・製本等を使用権者から請け負い、作製・納品した印刷業者からの平成26年6月20日付請求書の写しである。 キ 乙第7号証は、平成26年6月16日付けで、使用権者が得意先(コンビニエンスストア)向けに行った新商品説明会の際に使用したプレゼンシート(本件プレゼン資料)の抜粋の写しである。 ク 乙第8号証の1ないし5は、本件商標が使用されている商品「のど飴」を撮影した写真の写しである。 (2)商標の使用態様について ア 本件商標は、指定商品「菓子」に含まれる「キャンディー(のど飴)」の包装に付される形で使用されている。また、このように商品「のど飴」の包装に本件商標が付されている商品(以下「使用商品」という。)についての宣伝を行う形式で、使用商品の写真が商品パンフレット、プレゼンテーション資料に掲載されている。 イ 包装の中央部分に、本件商標に商品の普通名称「のど飴」を付加した「百年のど飴」の文字が縦書きされ、当該文字の下部には、本件商標を欧文字で表した「HYAKUNEN」の文字が横書きされている(乙3の3、乙6の1、乙7及び乙8の1ないし4)。また、商品の個別包装においても、表側に「百年のど飴」が縦書きされ、裏側には「HYAKUNEN」の文字が横書きされている(乙8の5)。 ウ 「百年のど飴」の文字からなる商標は、その構成中の「のど飴」の文字部分が商品の普通名称であって、自他商品の識別標識たり得ない部分であることを考慮すれば、その構成中「百年」の文字部分が商標の要部である。 したがって、本件商標と「百年のど飴」の文字からなる商標は、社会通念上同一の商標と認められる。 また、同じく「HYAKUNEN」の文字からなる商標について、「百年」に対応する欧文字が「HYAKUNEN」と認められ、観念及び称呼についても本件商標と共通するため、両者は、社会通念上同一の商標と認められる。 (3)本件商標の使用者 本件商標については、被請求人と使用権者であるカンロ(株)の間で、商品「キャンディー」を対象とした商標使用許諾契約を、平成26年5月16日付で締結しており、使用権者がその契約内容に基づいて本件商標の使用を行っている(乙3の1)。 (4) 商標の使用期間等 ア 使用権者は、上記(3)の商標使用許諾約以前から、具体的に本件商標を使用した新商品発売の計画をもっており、発売に向けて商品の開発及びパッケージの作成等を進めていた。しかし、その最中に本件商標について商標権を取得している者が存在することを発見したため、権利者である被請求人に対し商標の使用許諾を求め、被請求人がこれに応えて平成26年5月16日付で商標使用許諾契約を締結した(乙3の1)。 イ 使用権者が本件商標を使用した商品の開発を少なくとも平成26年4月1日の時点において開始していたことは、デザイン会社に対し、パッケージデザインを依頼する発注書を平成26年4月1日付けで発行していることから明らかである(乙2)。 使用権者は、商標使用許諾契約後、被請求人代理人を介して商品パッケージにおける商標の使用態様の確認(乙3の2ないし乙5)を行いながら、本件商標を使用した商品パッケージを完成させた。 ウ 本件パンフレット(乙6の1)は、流通店・小売店等への配布用の、使用権者の2014年秋の商品パンフレットの写しの抜粋である。本件パンフレットにおいて、第1頁、第16頁に使用商品が秋の新商品として紹介・宣伝されている。 本件パンフレットは、使用権者が印刷会社に対して1万部を越えるオーダーで依頼して作製したものである。これについて、使用権者は印刷会社から平成26年6月20日付で費用請求を受け、支払いを同年7月15日に行うこととしていた(乙6の2)。 また、本件パンフレットの第21頁には、平成26年6月現在の「商品荷姿一覧表」に使用商品の荷姿が掲載されている。 エ 以上のとおり、平成26年6月20日付で本件パンフレットの作製者である印刷会社から作製費用請求を受けたこと、流通店・小売店等に対して新商品をいち早く告知・宣伝すべく配布する取引者向けの本件パンフレットが1万部を超える数量製作され、当該パンフレットに使用商品が掲載され、また、使用商品の同年6月現在の商品荷姿も掲載されている(乙6の1及び2) したがって、使用商品に関する宣伝・広告が掲載されている本件パンフレットが、取引者に対して頒布されるという形で、本件商標の自他商品の識別標識としての機能を発揮する使用が、本件審判の予告登録日である平成26年7月16日より前に開始されている。 オ 本件プレゼン資料(乙7)は、平成26年6月16日付で、使用権者が得意先(コンビニエンスストア)向けに行った新商品説明会の際に使用したプレゼンシートの抜粋である。 ここでも、本件パンフレットと同様に、使用商品が新たに発売される目玉商品の一つとして取引者に対して紹介・宣伝されており、この点からも、本件商標の使用が開始されている事実を把握することができる。 カ 使用権者は、平成26年6月中に、複数の異なる得意先に対して、本件プレゼン資料を用いて、使用商品の紹介・宣伝を含めたプレゼンテーションを行っている。各得意先に対してプレゼンテーションを行うたびごとに、パワーポイントデータの1頁目における日付の表示を上書きで変更し、また、内容も、各得意先用に編集・再編集、上書き保存しているが、いずれの得意先に対してもパワーポイントデータ12頁に掲載されている使用商品の紹介・宣伝を行っている。 キ 以上の各証拠は、全て、本件審判の請求登録の日である平成26年7月16日以前の日付のものである。 なお、今回提出した各証拠中には、審判の請求登録前3月から審判の請求登録の日までの間の日付となっているものも存在するが、請求人から被請求人に対して、本件商標に係る譲渡交渉・ライセンス交渉等いかなる接触があった等の事実もなく、被請求人は本件審判の請求がされる事を知り得る状態にはなかった。 したがって、当該期間の使用はいわゆる駆け込み使用に該当するものではない。 ク 本件パンフレット、本件プレゼン資料に明らかなように、使用権者は、本件審判請求の登録日である平成26年7月16日より前に、使用商品の宣伝・広告を取引者に対して行っており、本件商標は、本件審判の予告登録より前から、商標法の保護対象である信用が化体する状態になっていた。 また、乙第8号証の1ないし5は、使用商品の写真であり、本件パンフレット、本件プレゼン資料で、平成26年6月より取引者向けに使用商品の紹介・宣伝を行ってきた。 以上より、使用権者が、要証期間内に、本件商標を、請求にかかる指定商品中、少なくとも「菓子」について使用している事実は明らかである。 2 口頭審理陳述要領書における主張 (1)食品関連企業の新商品の開発について ある程度以上の規模を有する食品関連の企業は、新商品の開発において、企画から実際の販売開始まで、少なくとも半年から一年程度は期間を要するものであって、その間、市場調査、パッケージ制作、カタログやパンフレットの製作、取引者への広告・宣伝、一般需要者への広告・宣伝等、様々な過程を経ている。 これは使用商品についても同様であり、使用権者であるカンロ(株)の運営するFACEBOOKのサイトにおける、平成26年9月22日の発売開始告知(乙9)をみれば、これに向けて上記のような過程を経て商品の開発が進められたことが明らかであり、たとえ、子細な日付の記載等の抜けが有ったとしても、これまでに提出した種々の証拠が存在していること自体が本件商標の使用がなされていたことを物語っている。 (2)審理事項通知書における暫定的見解に対する被請求人の主張 ア 本件パンフレットは、本件商標の使用権者であるカンロ(株)が、新商品を含む2014年秋の自社商品を紹介・宣伝をするために、流通店・小売店等に対して配布したものであり、その配布は遅くとも審判請求の登録前である平成26年6月には開始されている。 本件パンフレットの構成を確認するに、その表紙部分には、左上隅に「2014 AUTUMN PRODUCTS GUIDE」、その下に大きく使用権者の社名の略称のアルファベット表記である「KANRO」、さらに、その下部右側に、葉様の図形中に「2014 秋 製品ご案内」と記載されている。また、その第1頁には、新発売商品である使用商品が掲載され、第16頁や第21頁には、使用権者の取扱商品が幅広く記載されており、裏表紙部分には、中央の図形部分の周囲に沿うように「2014 AUTUMN PRODUCTS GUIDE」と記されている。 これらの点をみるに、本件パンフレットが新商品も含めた2014年秋のカンロ(株)の取扱商品を総合的に掲載したパンフレットであることは容易に理解可能である。 イ 一方、本件パンフレットの印刷及び製本の依頼を受け、納品を行った凸版印刷株式会社から使用権者に宛てた請求書(乙6の2)には品名の欄に「2014秋総合パンフレット」と記載され、その日付は平成26年6月20日付けとなっている。 そして、該請求書の品名欄は、本件パンフレットの表紙部分の記載と異なっているものの、依頼を受けた「凸版印刷株式会社」にとってみれば、請求書の品名の欄は、被請求人の依頼した本件パンフレットに係るものであることが自社及び依頼主である使用権者にとって把握できる程度に特定されていれば十分である。本件パンフレットの表題や内容からすれば、これが「2014年秋の(新発売を含む)商品を網羅的に記載した総合パンフレット」であることは明らかであるので、請求書の品名の欄を、例えば、依頼に係るパンフレットの表紙の表題とおり、「2014 AUTUMN PRODUCTS GUIDE KANRO 2014秋製品ご案内」等と記載する必要性に乏しく、その内容を反映した「2014秋総合パンフレット」という表記であれば、これを特定するのに充分であるといえる。 ウ したがって、請求書の品名の記載が、新商品を含めた2014年秋の商品を網羅した本件パンフレットを示すものである事を特定できる程度に記載されている点を考慮すれば、請求書が本件パンフレットの印刷及び製本の依頼に係るものである事を容易に理解可能である。 (3)審判事件弁駁書における請求人の主張に対する反論 ア 本件パンフレットについて 請求人は、本件パンフレットについて、「表紙には、『2014年秋製品ご案内』の記載が有るため、平成26年秋に流通されたものと考えるのが自然である。」旨を述べている。 しかしながら、秋の新製品の紹介及び販促活動は、その発注数の確保及び販売店における棚の確保等のために、実際の販売を開始する秋に先駆けて行われるものであるから、流通店や販売店といった取引者向けに作成した「秋の製品案内」のカタログやパンフレットを、「秋」に配布開始するという事はありえない。 本件パンフレットをみると、その第16頁や第21頁には、JANコード(バーコード)が記載されており、POSシステムでの発注等にも対応可能なものになっている。これは一般消費者向けに作成する商品パンフレットとは明らかに趣が異なるものであり、当該パンフレットが主に流通店や販売店等といった取引者向けに、秋の販売商品を紹介・宣伝する目的で作成されたものである事は明らかである。したがって、本件パンフレットについては、実際に商品の販売が開始される「秋」に先駆けて配布が開始されると考えるのが自然であって、これを「平成26年秋に流通されたものと考えるのが自然である。」とする請求人の主張は失当である。 イ 商標の同一性に係る請求人の主張について (ア)請求人は、「カンロ」の文字がカンロ(株)を表す著名な商標であるから本件の使用商標に接する取引者、需要者が、これを商品の出所を表す要部であると認識すると述べる一方で、「百年」の文字部分からは特定の出所を想起させることはないとしている。その根拠としては、「カンロ」と「百年」の文字が並ぶことにより、「カンロ株式会社が創業百年である」という観念を生じるという、単なる主観に基づいた主張を行うのみであり、当該「百年」の文字部分がなぜ、商品の識別標識足り得ないのかは示されていない。 そして、「百年」という文字について検討するに、当該文字は「100の年数、100年間、長い年月」程の観念を有する語であるが、自他商品の識別標識となりえないもの、すなわち、自他商品の識別力が弱いものであるとする特段の理由は見当たらない。 これまでにも「百年」の文字又はこれに商品の普通名称が結合した商標の登録は多数認められており、食品分野においても多数の登録が認められている(乙10)。この点をふまえれば、使用商標中の「カンロ」の文字部分の他、「百年」という文字も、それ自体で自他商品の識別標識たり得るものであると判断するのが適切である。 (イ)取引者、需要者にとって目印となる部分は、いずれも商標の要部になり得る。これを本件にあてはめれば、商品の内容を図形化した文字で表した「飴」の部分、商品の製造・販売者名の略称を表す「カンロ」の文字部分、自他商品の識別力を有する語である「百年」の文字に商品の普通名称「のど飴」の文字を結合した「百年のど飴」の各部分、更にはこれらとは離れた位置に記されている「HYAKUNEN」の欧文字部分は、それぞれが取引者、需要者の目を惹き、本件商標の要部といえる。また、「百年のど飴」の構成中、「のど飴」の文字は、商品の普通名称を表す部分であるため、「百年」の文字も本件商標の要部となる。よって、使用商標は、取引者、需要者の目を惹く部分を複数有するものであり、その要部の一つにおいて、本件商標と社会通念上同一の商標が使用されていると考えるのが適切である。 (ウ)自他商品の識別力を有する語である「百年」を欧文字で表した「HYAKUNEN」の欧文字部分は、「百年」の文字と同様に自他商品の識別力を有する本件商標の要部たり得るものであり、これに接する取引者、需要者は、これを「HYAKUNEN(百年)」という飴であると考える。 (エ)商標法第50条第1項の括弧書きに例示されている文字種間以外の変更であっても、「同一の称呼及び観念」を生じるものであれば、社会通念上同一と取り扱っても問題はなく、同一の「ヒャクネン」の称呼を生じ、かつ、「百の年数,百年間」等の観念も共通する、「百年」とその欧文字表記「HYAKUNEN」は、社会通念上同一の商標として取り扱うのが当然であり、審決等においても同様の判断がなされている(乙13)。 また、辞書を調べる限り、「HYAKUNEN」という文字列からなる英単語が存在しない一方で(乙14の1ないし3)、我が国の言語である日本語においては、我が国の一般的な取引者、需要者が共通して認識する単語「百年」が存在している。そのため、日本語を理解するほぼ全ての取引者、需要者は、当該語を「『百年』という語を欧文字で表記したもの」と認識すると考えられる。当該文字列に相応する日本語の単語が存在し、これに相応する英単語が存在しないにも関わらず、英語風の読みを無理やりあてはめたうえで「ハイアクネン」の自然称呼が生じるとする請求人の主張は、到底認められるものではない。 したがって、使用商標に付された「HYAKUNEN」の部分は、本件商標と同一の称呼及び観念を生じる社会通念上同一の商標であるといえる。 3 上申書における主張 (1)乙第15号証について 乙第15号証は、使用権者であるカンロ(株)が、凸版印刷株式会社に対し、記載された事項の証明を依頼したものである。当該証明願によれば、請求書(乙6の2)は、使用権者が依頼した本件パンフレットの印刷及び製本に係るものであり、該パンフレットの表題と請求書の品名が一致するものであるという事実、その納品が平成26年の6月中に行われたものであるという事実が証明されている。 (2)乙第16号証について 乙第16号証は、使用権者であるカンロ(株)が、三菱食品株式会社に対し、記載された事項の証明を依頼したものである。三菱食品株式会社は、食品の卸売・流通・販売等を業とする企業であり、使用権者の取引先であり、当該証明者の記載によれば、平成26年6月26日に、使用権者から三菱食品株式会社に対して、使用商品のプレゼンテーションが行われたという事実が証明されている。 (3)乙第17号証について 乙第17号証は、菓子類等の小売を行う店舗「おかしのまちおか」を運営する株式会社みのやより受領した「証明願」である。該証明願により、平成26年6月中に、本件パンフレットの受領がなされていたことが証明されており、既に審判の請求登録前である6月の時点において、取引者に対する使用商品の広告・宣伝活動が開始されていた事実が把握できる。 合わせて、証明者である「高谷氏」が当該企業に所属である事を証明するために、名刺の写し(乙18)を提出する。 以上によれば、平成26年6月中に、使用権者の顧客である、埼玉県に所在する株式会社みのやに対し、本件パンフレットが配布されていることが証明されている。 (4)乙第19号証について 乙第19号証は、菓子の卸事業等を行う企業である「株式会社ドルチェ」より受領した「証明願」であり、平成26年6月26日に、使用権者が使用商品のプレゼンテーションを行った事実が証明されるものである。 合わせて証明者である「中野氏」が当該企業に所属する事を証明するために、名刺の写し(乙20)を提出する。 (5)乙第21号証及び乙第22号証について 乙第21号証は、請求書(乙6の2)の一部黒塗り部分をなくしたものである。乙第21号証の右上部分をみると、日付の下に「凸版印刷株式会社西日本事業本部」との記載があり、その下に西日本事業本部の所在地の住所が記されている、また、更にその下部には、小さい文字で「九州事業部」、「中四国事業部」の記載がされ、それぞれの住所が記されている。これは、当該企業において「西日本事業本部」という組織の中に、「九州事業部」及び「中四国事業部」というそれぞれの事業部が存在するという位置づけになっているためである。そのため、これら各事業部に依頼した業務についての請求書は、これを統括する「西日本事業本部」の名で発行されることになっており、両書類の捺印は、「西日本事業部」のものとなっている。 そして、使用権者は山口県で創業した企業であるという関係等もあり、従来より中四国事業部との間で主に取引を行っている。但し、現在は使用権者が東京に本社を構えている関係から、印刷・製本等の業務を依頼する際には、東京に所在する「凸版印刷株式会社中四国事業部」の「東京連絡室」に連絡を取り、その依頼等を行う流れとなっている。その為、乙第15号証において、使用権者が印刷・製本等を依頼した本件パンフレットと請求書(乙6の2)が一致する事を証明しうるものとして、凸版印刷株式会社における東京連絡室の担当者の「白石氏」に署名捺印を頂いた次第である。なお、白石氏の所属を証明する為に、名刺の写し(乙22)を提出する。 以上のとおり、乙第15号証に係る証明願は、その証明をするに適切な資格を備えた者によりされているものである。 また、請求書(乙6の2)と乙第15号証の印影が一致しない点については、請求書は、使用権者の担当である「白石氏」が所属する中四国事業部を統括する「西日本事業本部」の印が捺印されたものであり、乙第15号証の証明願については、白石氏が所属する「中四国事業部」の印を捺印したものであり、この違いにより、その証明内容の信頼性に疑いが生じるものではない。 (6)乙第23号証について 乙第23号証の1及び2は、本件パンフレットの印刷・製本等を行った「凸版印刷株式会社」が、その依頼者である「カンロ(株)」に宛てて印刷・製本済の本件パンフレットを発送した際の送り状の写しである。当該送り状の写しをみれば、凸版印刷株式会社より、カンロ(株)の全国の支店及び各部署宛に直接パンフレットの納品が行われていること、各支店部署ごとに多ければ千部以上、少なくとも10部単位で納品がされていること、カンロ(株)へ向けてのパンフレットの発送日が平成26年6月25日であり、かつ、その着日指定が同月27日又は30日となっている事実を客観的に把握することが出来る。 これをみれば、使用権者の各地の支店・部署に対し、6月中に本件パンフレットの納入が完了していることが明らかである。 (7)乙第24号証ないし乙第26号証について 乙第24号証は、乙第16号証に証明者として記載されている、三菱食品株式会社の担当者の名刺の写しである。当該企業は食品の卸売・流通・販売を業としており、使用権者の取引先である。コンビニエンスストアへの一部商品の納入は、三菱食品株式会社を通して行われている。証明を依頼した仲谷氏は、その名刺の記載からもわかるとおり、CVS本部、即ちコンビニエンスストア向けの部署の菓子部門の所属である。 したがって、コンビニエンスストア向けの商品プレゼンテーションに、コンビニエンスストアに対し商品を納入する三菱食品株式会社の担当者が出席している事に何ら不自然な点はないし、そのプレゼンテーション資料の題名に「コンビニエンスストア向け」であることを想起させる「CSV」の文字が記載されている事も、当該担当者が前記のような部署に所属している事を考慮すれば、その証明内容の信頼性を左右するものではないことが明らかである。 また、乙第25号証の陳述書とその陳述をおこなった者の名刺の写し(乙26)を合わせて提出する。当該陳述書は、プレゼンテーションにおいて、商品説明を担当した、使用権者の社員がその事実を陳述したものであり、乙第26号証は、陳述者の所属を明らかにするためのものである。 (8)請求人提出の上申書に対する主張 ア 乙第15号証に係る請求人の主張について (ア)請求人は乙第15号証に関し、捺印された印が「白石氏ではない中四国営業所の他人が署名押印したか、白石氏が注意力を欠いた状態で署名捺印したことが疑われる。」という主張を行っている。 しかしながら、これは、単なる請求人の推論にすぎず事実ではない。白石氏の凸版印刷株式会社での所属は、「中四国事業所」である。「中四国事業所」の所属である白石氏が、その所属部署に対して依頼された業務に係る事項について、これが真正なものであること立証するために、その所属部署名を表す「中四国事業所」の印を使用することに何ら問題はない。近年コンプライアンスが強く叫ばれる等、会社印等が厳格に管理されている企業の状況等を考えれば、むしろ個人の印を捺印した場合よりも、その真正性は高いとすらいえる。 (イ)送り状(乙23)については、いずれの送り状も必着で着日指定をして荷物の発送を行っており、各方面に発送された総部数で1万部を越える荷物の全てがその日程に届かない事は常識的に考えてありえず、仮に、これらがいずれも届いていないとすれば、パンフレットの依頼人であるカンロ(株)と、凸版印刷株式会社との間で商品未着に関するトラブルがおきるはずであり、これが起こっていない点から、凸版印刷株式会社の担当者が指定日とおりに商品が到着した事を認識し、それに基づいて証明を行ったとしても何ら問題は無いものといえる。 さらに、請求人は、送り状の送り主が「凸版印刷株式会社」となっておらず、「凸版物流株式会社」となっている点をもって、送り状の真正を示す証拠にはならない旨も主張している。しかし、「凸版物流株式会社」は、その名称からも想像がつくとおり、「凸版印刷株式会社」のグループ会社(子会社)であって、その物流の一端を担っている企業である(乙27)。 したがって、「凸版物流株式会社」の名称が送り状に記載されていることをもって、乙第15号証及び請求書(乙6の2)とは無関係であるという請求人の主張は誤りであり、乙第15号証の真正を示す証拠とはなりえないとの主張も同様である。 (ウ)以上の点からみても、乙第15号証に係る請求人の主張は、その形式的な部分のみに着目したものにすぎず、全体を通してみれば、請求人のこれらの主張により証拠の真正が疑われるものではない。 イ 乙第17号証に係る請求人の主張について 乙第17号証の証明者である「株式会社みのや」は、使用権者にとっては、自社商品の購入をしている顧客であり、両者の関係も考えれば、いきなり証明願を送り付け、証明を依頼することはありえない。証明を依頼するにあたっては、当然ながら「平成26年6月中に本件商標を使用した新商品が記載された『2014年秋総合パンフレット』の配布を受けたこと」を、事実に基づいて証明してもらえるかの打診を事前に行い、その了承が得られた後に、使用権者捺印済の「証明願」に署名、捺印してもらっている。既に、証明内容を確認済のものについて証明を依頼しているのであるから、その日付が同日であっても証拠の真正を疑う理由にはなりえない。 ウ 乙第19号証に係る請求人の主張について 乙第19号証の証明者にとっては、自己の記憶等に基づいて、該号証に添付されているプレゼンテーションのシート(「カンロ百年のど飴」のスライド)が含まれているプレゼンテーションを受けたか否か、それをいつ受けたものであるかを確認した結果、その事実を証明できるために、証明願に署名・捺印をしたものであって、請求人の主張は乙第19号証が真正であることについて影響を与えるものではない。 エ 乙第25号証に係る請求人の主張について 乙第25号証は、乙第16号証、乙第24号証で証明されている平成26年6月16日の新商品説明(プレゼンテーション)に、コンビニエンスストア(ナチュラルローソン)の商品購入担当者と、乙第16号証、乙第24号証の証明者であり、コンビニエンスストアへの商品卸売業者である、三菱食品株式会社が出席していたことを証明するものである。これまでに提出した各証拠とも合わせて考慮すれば、新商品の発売に向け、各顧客に対するプレゼンテーションが行われていた事実が証明されるものである。 4 まとめ 以上のとおり、本件商標について、要証期間内に、日本国内において、その使用権者であるカンロ(株)が、本件審判請求に係る指定商品中「菓子」について本件商標を使用している事実が十分に証明されている。 第4 当審の判断 1 被請求人の主張及び同人の提出した証拠によれば、以下のとおりである。 (1)乙第2号証は、2014年4月1日付の株式会社デザインメントのディレクター宛にカンロ(株)が作成した「発注書」の写しであるところ、「委託業務」として「『70g百年のど飴(仮)』デザイン作成」、「納期」として「2014年4月末日」、「納入場所」として「カンロ株式会社」の記載がある。 (2)乙第3号証の1は、本件商標の「商標使用許諾契約書」の写しであるところ、同号証によれば、平成26年5月16日付けで、甲を商標権者、乙をカンロ(株)とし、その第1条第1項には「甲は、乙が、本商標を、以下の範囲と条件において使用することを認める。」とあり、その範囲が「(1)許諾商品 キャンディー」、「(2)許諾地域 日本全域」と記載され、また、第3条第1項には「本契約の契約期間は、本契約締結日後1年間とする。」と記載されている。 (3)乙第6号証の1は、「2014 AUTUMN PRODUCTS GUIDE」、「KANRO」の表題のパンフレットの抜粋(本件パンフレット)であるところ、その表紙には「2014 秋 製品ご案内」の表示があり、その2葉目には、「のどを包み込む『とろみ新製法』 和の伝統を活かした新体感のど飴」の記載があり、別掲のとおりの態様からなる包装袋の標章(乙第8号証の1ないし3の使用商品の包装袋の写真と同一と認められる。)が表示され、該表示には黒色で「飴」の文字を二重丸で囲んだ図形(以下「飴図形」という。)及び縦書きの「百年のど飴」の文字、その下部に金色で「HYAKUNEN」の欧文字、及び飴図形と「百年のど飴」文字の間に、「百」の文字の上部の横線と同じ幅で「カンロ」の片仮名が横書きで表示され、右下には、液体が入った容器と匙とともに「のど飴」の写真が表示されている。 さらに、5葉目には、「カンロ株式会社」、「本社:東京都中野区新井2-○○」と記載され、「首都圏東支店:東京都中野区新井1-××」及びその他8件の支店等の名称及び住所が記載されている。 (4)乙第6号証の2は、平成26年6月20日付で、「凸版印刷株式会社」が「カンロ株式会社 商品戦略室」宛てに作成した「請求書」であるところ、「年月日」欄には「260620」の記載、「品名」欄には「2014秋総合パンフレット」及び「請求書No.」として「30441-01」の記載がある。 なお、乙第6号証の2の黒塗り部分を少なくしたものとして、乙第21号証が提出されているが、同号証によれば、作成を担当した部署として「凸版印刷株式会社 西日本事業本部」の記載、及び「中四国事業部 広島市安佐南区祇園△△」の記載がある。 (5)乙第15号証は、平成27年4月10日付でカンロ(株)が凸版印刷株式会社宛に作成した「証明願」であるところ、平成26年6月20日付発行の請求書No.30441-01の品目欄に記載されている「2014秋総合パンフレット」は、「2014年AUTUMN PRODUCTS GUIDE KANRO 2014年 秋 製品ご案内」であること、該請求書はその作製費用に関するものであること、及び作製した印刷物は平成26年6月中に納品されたことを証明するとして、平成27年4月20日付で、証明者として、凸版印刷株式会社中四国事業部の白石氏の記名、住所「広島市安佐南区祇園△△」の記載があり、「凸版印刷株式会社中四国事業部」の印が押印され、本件パンフレット及び乙第6号証の2の請求書の写しが添付されている。 (6)乙第17号証は、平成27年4月30日付でカンロ(株)が株式会社みのや宛に作成した「証明願」であるところ、カンロ(株)が発行した「2014年AUTUMN PRODUCTS GUIDE KANRO 2014年 秋 製品ご案内」を平成26年6月中にカンロ(株)から配布を受けたことを証明するとして、平成27年4月30日付で、証明者として、株式会社みのやの高谷氏の記名及び押印があり、本件パンフレットの写しが添付されている。 (7)乙第18号証は、乙第17号証の証明者である高谷氏の名刺であり、「株式会社みのや」及び役職として「商品部第1課課長」の記載がある。 (8)乙第22号証は、被請求人の主張によれば、乙第15号証の証明者である白石氏の名刺であるところ、「中四国事業部 第一営業部 市場開発部 東京推進室」の記載及び「凸版印刷株式会社」、「東京都台東区台東○○」、「(広島市案佐南区祇園△△)」の記載があり、記載されている氏名、「広島市案佐南区祇園△△」の住所は、乙第15号証の証明者の氏名及び住所と同一であることから、乙第22号証の名刺は、乙第15号証の証明者のものと認められる。 (9)乙第23号証の1及び2は、2014年(平成26年)6月25日を受付日とするパンフレットの送り状の写し20枚であるところ、「お届け先」欄にはカンロ(株)の各支店又は販売所の記載、「荷送人」欄に「広島県福山市神辺町旭丘4番地 凸版印刷物流株式会社 福山物流課」の記載、「品名」欄に「2014秋総合パンフレット」の記載、「100部×16」等の部数(その合計は、12,280部である。)及び「6月27日着指定」又は「6月30日着指定」の記載がある。 そのうち、乙第23号証の2の3枚には、「お届け先」欄に「東京都中野区新井2-○○ カンロ(株)」又は「東京都中野区新井1-×× カンロ(株) 首都圏東支店」の記載がある。 (10)乙第27号証の1は、2014年4月現在の「凸版印刷株式会社」の「企業情報」であるところ、「主なグループ企業」の見出しの下、その第2頁には、「凸版物流株式会社」の記載及びその事業内容として、「運送および倉庫取り扱い」の記載がある。また、乙27号証の2は、「凸版物流株式会社」の会社概要であるところ、「株主」欄に「凸版印刷株式会社(90%)」の記載がある。さらに、乙第27号証の3は、凸版印刷株式会社のニュースリリースであるところ、「凸版物流は、凸版印刷の物流部門の子会社として、印刷物の輸送だけでなく、それに伴う製品の保管、セット梱包、コントラクト作業など流通加工業務を受け持っています。」の記載がある。 2 上記1によれば、以下の事実を認めることができる。 (1)商標権者は、カンロ(株)に、商品「キャンディー」について、平成26年5月16日の後1年間、本件商標の使用権を許諾した。(上記1(2))。 (2)カンロ(株)は、本件パンフレットの印刷を凸版印刷株式会社に発注したところ、該パンフレットは、カンロ(株)に凸版印刷株式会社の子会社である凸版物流株式会社を通して平成26年6月27日又は同月30日に納品されたものである。 そして、カンロ(株)は、同年6月中に取引先である株式会社みのやに、本件パンフレットを頒布した(上記1(3)ないし(10))。 (3)上記(2)の本件パンフレットには、別掲のとおりの態様からなる標章が表示された商品「のど飴」(使用商品)の包装袋の写真が掲載されている(上記1(3)。 3 判断 (1)使用者について 上記2(1)によれば、カンロ(株)に対し、本件商標の商標権者は、少なくとも平成26年5月17日から1年間、本件商標の通常使用権を許諾していたことが認められる。 してみれば、カンロ(株)は、下記(4)の使用時期には、本件商標の通常使用権者と認めることができる。 (2)使用商品について カンロ(株)が、本件パンフレットに掲載した使用商品「のど飴」は、請求に係る指定商品中の「菓子」の範ちゅうに属するものといえる。 (3)使用商標について ア 本件パンフレットに表示された標章は、別掲のとおりの構成からなるところ、その構成及び態様上、「カンロ」と「百年のど飴」、さらに、「百年のど飴」と「HYAKUNEN」の各文字は、文字の大きさ、書体、種類、縦書きか横書きか等の点において大きく異なるものであり、加えて、その他の飴図形や「のど包み込むとろみ新製法」等の文字とも、その表示態様が全く異なるものであるから、「カンロ」、「百年のど飴」及び「HYAKUNEN」の文字は、それぞれが独立した商標として把握、認識されるものといえる。そして、そのうちの「百年のど飴」の文字からなる商標(以下「使用商標」という。)は、その構成中の「のど飴」の文字部分が使用商品の普通名称であって、自他商品の識別標識として機能し得ないものであり、加えて、その下部に「百年」の文字部分の読みをローマ字表記したものといえる「HYAKUNEN」の文字を伴うものであって、看者には、「百年」の文字部分が強調して印象付けられることから、「百年」の文字が自他商品識別標識として認識されるといえる。 そうすると、使用商標における「百年」の文字は、本件商標と同一の文字であり、「ヒャクネン」(百年)の称呼及び観念を共通にするものであるから、使用商標と本件商標とは、社会通念上同一の商標ということができる。 イ なお、請求人は、別掲の態様からなる標章のうち、「カンロ」の文字が、カンロ株式会社を表すものとして著名であって、該文字が支配的要素であるから、「百年のど飴」の文字部分は独立性が失われている旨主張するが、商取引の場においては、商品を製造・販売する事業者を表すいわゆるハウスマークと、その取扱い商品を表すいわゆるペットマークを同時に使用することは普通に行われており、「カンロ」をハウスマーク、使用商標をペットマークとして認識することに何ら不自然なところはないから、請求人のかかる主張は採用できない。 (4)使用時期について 上記2(2)によれば、少なくとも本件パンフレットがカンロ(株)に納品された平成26年6月27日から同年6月末までの間に、取引先である「株式会社みのや」に本件パンフレットを配布したものと認められる。そして、平成26年6月27日ないし6月末日までの期間は、本件審判請求の登録(平成26年7月12日)前3年以内である。 (5)上記(1)ないし(4)によれば、通常使用権者は、要証期間内にその請求に係る指定商品中「菓子」の範ちゅうに含まれる「のど飴」に本件商標(社会通念上同一と認められる商標を含む。)を付したものを掲載したパンフレットを頒布した(商標法第2条第3項第8号)と認めることができる。 4 まとめ 以上のとおりであるから、被請求人(商標権者)は、本件審判の請求の登録前3年以内において、通常使用権者がその請求に係る指定商品の範ちゅうに属する商品について本件商標(社会通念上同一と認められる商標を含む。)の使用をしていることを証明したといわなければならない。 したがって、本件商標の登録は、請求に係る指定商品について、商標法第50条の規定により、取り消すべき限りでない。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
別掲(本件パンフレットに表示された標章の態様) |
審理終結日 | 2015-09-11 |
結審通知日 | 2015-09-15 |
審決日 | 2015-09-28 |
出願番号 | 商願平8-47731 |
審決分類 |
T
1
32・
1-
Y
(030)
|
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 内山 進 |
特許庁審判長 |
林 栄二 |
特許庁審判官 |
梶原 良子 中束 としえ |
登録日 | 1998-08-07 |
登録番号 | 商標登録第4174675号(T4174675) |
商標の称呼 | ヒャクネン |
代理人 | 鈴木 一永 |
代理人 | 川角 栄二 |
代理人 | 山本 典弘 |
代理人 | 涌井 謙一 |
代理人 | 工藤 貴宏 |
代理人 | 三井 直人 |