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審決分類 審判 全部取消 商50条不使用による取り消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) 041
管理番号 1307435 
審判番号 取消2014-300939 
総通号数 192 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2015-12-25 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2014-11-21 
確定日 2015-10-19 
事件の表示 上記当事者間の登録第4024254号商標の登録取消審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 登録第4024254号商標の商標登録は取り消す。 審判費用は,被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4024254号商標(以下「本件商標」という。)は,「全日本ダンス選手権」の文字を書してなり,平成4年10月1日に登録出願,第41類「ダンスの興行の企画・運営又は開催」を指定役務として,同9年7月11日に設定登録され,同19年9月18日に商標権の存続期間の更新登録がなされ,現に有効に存続しているものである。
なお,本件審判の請求の登録は,平成26年12月9日である。

第2 請求人の主張
請求人は,結論同旨の審決を求め,審判請求書及び審判事件弁駁書において,その理由を要旨以下のように述べ,証拠方法として甲第1号証ないし甲第13号証を提出した。
1 請求の理由
請求人の調査によれば,被請求人は,本件商標を,その指定役務について継続して3年以上日本国内において使用していない。
また,本件商標について専用使用権者は存在せず,通常使用権者として本件商標を使用している者も存在しない。
したがって,本件商標は,継続して3年以上日本国内において,商標権者,専用使用権者又は通常使用権者のいずれによっても,その指定役務につき使用されていないものである。
2 答弁に対する弁駁
(1)「被請求人主張の商標」は本件商標と社会通念上同一ではない
ア 本件商標について
本件商標は,「全日本ダンス選手権」の横一連の文字からなる商標である。
イ 本件使用に係る商標
被請求人が,本件商標の使用証拠として提出された書証(乙6)をみると,いずれも,「プロフェッショナル/統一全日本ダンス選手権大会」と表示されていることは明らかである。
また,被請求人の提出の乙第3号証からも明らかなとおり,上記の「プロフェッショナル/統一全日本ダンス選手権大会」は,請求人である公益社団法人日本ダンス議会(以下「JDC」という場合がある。),特定非営利活動法人日本プロフェッショナルダンス競技連盟(以下「JCF」という場合がある。)及び被請求人である公益財団法人日本ボールルームダンス連盟(以下「JBDF」という場合がある。)が,三者個別に開催されてきた全日本ダンス選手権大会を統一し,日本プロダンス協議会(以下「JNCPD」という場合がある。)を創設して,そこで,「統一大会」を開催し,「統一大会」における優秀選手を日本代表と認定して,世界大会に派遣する目的で平成12年以降開催してきたダンス選手権大会である。
このような大会開催経緯からも,平成12年以降の上記ダンス選手権大会は,乙第6号証に示されるように「統一全日本ダンス選手権」(以下「使用商標」という場合がある。)と「統一」の文字が明記されて開催されている。
このように,本件商標と「統一全日本ダンス選手権(大会)」とでは,かかる経緯からも,その参加者(サービスの提供を受ける者,大会出場者)から,明らかに異なる大会と認識されてきたものである。
また,上記経緯を考慮しないとしても,本件商標と「統一全日本ダンス選手権(大会)」では,その全体としての外観において明瞭な差異がある。
「統一」は,「多くのものを一つにまとめあげること。」(広辞苑第六版)といった意味をもつ言葉として,我が国で広く理解され,使用され,定着してきている言葉であり,「統一」の有無によって明らかに観念の異なる概念として理解されてきている。
このような事実に照らしても,使用商標と本件商標とでは,概念の異なるものと容易に理解できるというべきである。
また,「トウイツゼンニホンダンスセンシュケン」と「ゼンニホンダンスセンシュケン」の全体的称呼は,十分に区別できるものである。
「統一」の言葉は,使用商標にあって,単なる付記的な言葉ではなく,全体として当該商標の要部を構成するものである。
ウ 本件商標と使用商標の社会通念上の非同一性
以上のとおり,本件商標と使用商標は,全体として,外観,称呼及び観念のいずれにおいても異なるものであり,社会通念上同一のものではないことは明らかである。
(2)本件商標の指定役務と使用商標の使用にかかる役務との非類似性
ア 本件商標は,第41類の「ダンスの興行の企画・運営又は開催」をその指定役務とするものである。
特許庁の商品役務名リストによれば,「ダンスの興行の企画又は運営」には,「41E01」の類似群が付与されており,これは,当該役務が,いわゆる「娯楽の提供」に属する役務と解されていることが明らかである。
これに対して,「スポーツダンス競技会の企画・運営又は開催」という役務も認められており,当該役務は,いわゆる「スポーツの興行の企画等」に属するものとされ,「41F01」の類似群が付与されている。
すなわち,「ダンスの興行の企画・運営又は開催」と「スポーツダンス競技会の企画・運営又は開催」とは,その内容の相違から非類似の役務と判断されている。
ここで,被請求人が,本件商標が使用されていると主張する「統一全日本ダンス選手権大会」が,上記いずれの役務に属するか検討すると,この「ダンス選手権」は,審査員としての資格をもつ複数の審査員の合議体によって,同大会出場選手は採点され,優勝者から6位までの入賞者が選出され,表彰されるものである。また,同大会における優秀選手は,日本代表として認定され,世界ダンス議会公認の世界選手権大会に派遣される(乙3)。
このように,当該「統一全日本ダンス選手権大会」は,「娯楽」としての「ダンスの大会(ダンスの興行の企画・運営又は開催)」に該当するものではなく,「スポーツダンスの競技会(の企画・運営又は開催)」に該当するものである。
なお,被請求人提出の乙第6号証(各大会のパンフレットの抜粋)では,当該ダンス大会が,スポーツダンスの競技会であることが必ずしも明らかではない。
そこで,請求人は,同パンフレットにおいて,同大会がスポーツダンスの競技会であることが理解できる「ご挨拶」,「審査員紹介」,「招待選手・第1シード選手」,「歴代ファイナリスト」,「大会役員」等の該当頁をその証拠として提出する(甲1及び甲2)。
イ 以上のとおり,本件商標の指定役務は,「ダンスの興行の企画・運営又は開催」であるところ,使用証拠(乙6)に示されている役務は,「スポーツダンスの大会(興行)の企画・運営又は開催」であり,かつ,これらの役務は非類似の役務と解されているものである。
かかる観点からも,本件商標が,その指定役務である「ダンスの興行の企画・運営又は開催」に使用されたという事実は全く立証されていないというべきである。
(3)被請求人による,正当な理由(商標法第50条第1項但書)に関する主張について
被請求人は,独自に使用していないことについて正当な理由がある旨を主張し,商標法第50条第1項但書の「正当な理由」に関する主張を行うが,以下のとおり,商標法第50条第1項但書の「正当な理由」たり得る事実は何もないから,被請求人の主張は失当である。
ここで,不使用についての「正当な理由」とは,審判便覧では,東高判平9.10.16(平9(行ケ)53号)を引用する(甲3及び甲4)。
本件商標において,被請求人は,上述のとおり,請求人らと協議合意の上,三者個別に開催されてきた全日本ダンス選手権大会を統一し,日本プロダンス協議会(JNCPD)を創設し,そこで,「統一全日本ダンス選手権大会」を開催することとしたものであって,その目的にしたがい,「統一大会」開催の平成12年以降は,当然のこととして,独自主催の「全日本ダンス選手権大会」の開催を自らの意思で行わないこととしたものである。
いいかえれば,自ら本件商標の使用をしないことを選択したものであって,上記自らの意思とは逆にやむを得ずその商標の使用を禁止されたような場合ではないことは明白である。
よって,被請求人が,本件商標の不使用について,「正当理由」を有していないことは明らかである。
(4)その他事情に関する反論
日本プロダンス協議会(JNCPD)が被請求人から商標権の使用許諾を受けたことはなく,さらに,同協議会による「統一全日本ダンス選手権」の使用は,本件商標の指定役務と非類似の範囲での使用であって,本件商標権の禁止権が及ばない範囲での使用であるから,同協議会として,被請求人から商標権の使用許諾を受ける必要性はない。
なお,同協議会設立後も,請求人ら(JDC及びJCF)と被請求人(JBDF)は,それぞれが独自の団体として存続しており,それぞれが独自のダンス競技会を開催してきた。
ただし,被請求人が独自に開催する大会名称として「統一全日本ダンス選手権」という名称を使用した事実はないし,JDCやJCFにおいても独自で開催する大会名称として「統一全日本ダンス選手権」という名称を使用した事実はない。

第3 被請求人の答弁
被請求人は,本件審判の請求は成り立たない,審判費用は請求人の負担とする,との審決を求め,審判事件答弁書において,その理由を要旨以下のように述べ,証拠方法として乙第1号証ないし乙第7号証(枝番号を含む。)を提出した。
答弁の理由
1 本件商標が使用されていること
(1)被請求人は,平成4年以降,本件商標を用いて,「全日本ダンス選手権」を主催してきた。
全日本ダンス選手権はその名のとおり,ダンス競技における日本一の競技者を決定するためのダンス競技会である。
全日本ダンス選手権の歴史は古く,昭和26年に,当時日本におけるボールルームダンス競技会を統括する唯一の全国組織である旧財団法人日本ボールルームダンス連盟(以下「旧連盟」という。)により開催されていた「全日本舞踏競技選手権大会」を受け継いでいる。
「全日本日本舞踏競技選手権大会」は,昭和49年以降51年までは「全日本協議ダンス選手権大会」の商標により,昭和52年から平成3年までは「全日本ダンス選手権」の商標により旧連盟によって開催され,平成4年以降は,旧財団法人日本ボールルームダンス連盟を受け継いだ被請求人が「全日本ダンス選手権」を用いて開催するに至った(乙1)。
(2)他方,平成6年に設立された請求人の日本ダンス議会(JDC)は,「JDC全日本オープンダンス選手権大会」という名称で,平成9年にJDCから独立した請求人の日本プロフェッショナルダンス競技連盟(JCF)は,「JCF全日本ダンス選手権大会」という名称で,それぞれ独自にダンスの全国大会を開催するようになった。
これによってダンス日本一を決する「全日本」選手権が国内で複数開催されているという異常な状況になり,国内外のダンス界に多くの混乱が生じた。
(3)「全日本ダンス選手権」は,被請求人の登録商標であるところ(乙2),いうまでもなく,請求人らが本件商標を用いてダンス大会を開催することは,被請求人の商標権を侵害するため許されない。
被請求人が本件商標を用いて「全日本ダンス選手権」を開催することができる立場にある唯一の団体であり,請求人らのダンス大会の開催に対して,商標使用の差止め等を請求することも可能であった。
しかしながら,被請求人は,当時の文部省スポーツ局生涯スポーツ課による求めもあり,各団体が力を合わせダンス界の発展を目指すという観点から,被請求人らと共に,本件商標の使用方法や全国大会の統一について検討することとした。
被請求人は,請求人らと協議を重ね,平成12年2月10日,被請求人,請求人らを構成員とする「日本プロダンス協議会・英名Japan National Council of Professional Dance・通称ニューカウンシル」(以下「JNCPD」という。)を設立する旨合意した(以下「本件協定」という。乙3ないし乙5)。
これによって,三者個別に開催されてきた全日本ダンス選手権大会を統一し,平成12年以降は,被請求人がJNCPDに対して本件商標の使用を許諾し(乙5),JNCPDが日本プロダンス界で「唯一」の「全日本ダンス選手権」を開催することとなった(乙3)。
これにより被請求人及び請求人らは,JNCPDとして平成25年に至るまで継続して「統一全日本ダンス選手権」を開催してきた。(乙6)。
(4)本件商標は,標準文字であり,かつ,称呼も一致しているのであるから,「統一全日本ダンス選手権」という名称は,本件商標と同一性が認められる。
したがって,被請求人は,平成12年以降同25年に至るまで,JNCPDの構成員として本件商標を用い,「統一全日本ダンス選手権」を開催してきたのであるから本件商標を自ら使用している。
また,JNCPDは,「統一全日本ダンス選手権」を開催していたのであるから,被請求人は,JNCPDに対して本件商標の使用を許諾し,JNCPDが通常実施権者として本件商標を使用していたことは明らかである。
2 独自に使用していないことについての正当な理由について
(1)平成12年以降,被請求人は,独自に「全日本ダンス選手権」を開催していないが,これは請求人らとの間で締結した本件協定によるものである。
すなわち,被請求人は,本件協定により,独自に「全日本ダンス選手権」を開催することができなかったのであり,仮に,上記1の主張が認めらないとしても,「全日本ダンス選手権」を開催していないことをもって,本件商標の使用をしていないというのであれば,被請求人が独自に本件商標の使用をしていないことについて正当な理由がある。
(2)前述のとおり,請求人らは,被請求人が商標登録しているにもかかわらず,「全日本ダンス選手権」なる競技会を独自に開催し,ダンス界に混乱を生じさせていたものであるが,被請求人は,ダンス界の未来の発展のため請求人らと協議して本件協定を締結し,平成12年以降は,JNCPDが日本プロダンス界で「唯一」の「全日本ダンス選手権」を開催することに合意した。
統一全日本ダンス選手権が開催されることになったのは複数の「全日本ダンス選手権」が存在することによる混乱を回避するためなのであるから,被請求人が独自に「全日本ダンス選手権」を開催することはできず,また,実際に請求人は被請求人に対して,「全日本ダンス選手権」という名称の大会を開催することは不正競争防止法に違反するなどと主張し,被請求人に対して,「統一全日本ダンス選手権」以外に「全日本ダンス選手権」を開催しないよう求めていた。
これによって,「統一全日本ダンス選手権」とは別個に,被請求人独自で「全日本ダンス選手権」を開催することはできなかった。
(3)また,そもそも前述のとおり,被請求人は本件商標の権利者であるところ,被請求人が,請求人らが商標権を侵害して「全日本ダンス選手権」を開催していたことに対して,法的権利を行使せず,本件協定を結んだのは,請求人らの利益のためである。
請求人らは,本件協定を結び,被請求人と共に本件商標を使用して,「統一全日本ダンス選手権」を開催してきたことを十分に認識している。
それにも関わらず,被請求人が本件協定によって,「統一全日本ダンス選手権」の他に,独自に「全日本ダンス選手権」を開催することができなかったことを奇貨として,被請求人らが本件商標を使用していないなどと主張して取消請求しているのである。
本審判請求前の平成26年10月7日に,請求人(JDC)の副局長によって,本件商標と同一の名称,称呼及び指定役務について商標登録出願がされているが(乙7),このことを併せ考えると,請求人らが,被請求人を陥れて,本件商標を奪い去ろうとしていることは明らかであり,このような請求人らの請求は信義に反し許されない。
(4)以上のとおり,被請求人が,本件商標を使用しないことについて被請求人の責めに帰すことができないやむを得ない事情があり,不使用を理由に本件商標の登録を取り消すことが社会通念上被請求人に酷であることは明らかである。
よって,被請求人は,本件協定により,独自に「全日本ダンス選手権」を開催することができなかったのであり,本件商標の使用をしていないことについて正当な理由がある。

第4 当審の判断
1 不使用取消審判について
商標法第50条第1項の規定に基づく商標登録の取消しの審判が請求された場合には,同条第2項において,その審判の請求の登録前3年以内(本件の場合は,平成23年12月9日から平成26年12月8日)に日本国内において商標権者,専用使用権者又は通常使用権者のいずれかがその請求に係る指定役務のいずれかについての登録商標の使用をしていることを被請求人が証明しない限り,使用をしていないことについて正当な理由があることを明らかにした場合を除いて,商標権者は,その指定役務に係る商標登録の取消を免れないとされている。
2 被請求人の主張及び提出した証拠によれば,以下のとおりである。
(1)乙第3号証は,平成12年2月10日付けの「JBDF 専務理事」,「JDC 会長」及び「JCF 会長」の連名による「覚書」とする書面(写し)であり,「財団法人日本ボールルームダンス連盟(JBDF),日本ダンス議会(JDC)及び日本プロフェッショナルダンス競技連盟(JCF)(以下『三者』という。)は,下記を条件として,別添「プロダンス界の統合的再編に関する協定(案)」(以下『協定』という。)を締結することを確約する。」旨の記載,「記」として「1 三者の理事会が,それぞれ協定の内容を承認すること。2 三者が,調印までの間も協定の趣旨に則って協調すること。3 三者が平成12年2月27日までに,世界ダンス議会(WD/DSC)に対して日本プロダンス協議会としての加盟権を申請し,その際,上記協定を申請書に添付すること。」の記載がある。
そして,その2葉目及び3葉目は,平成12年2月29日付けの「JBDF 専務理事」,「JDC 会長」及び「JCF 会長」の連名による「プロダンス界の統合的再編に関する協定」とする書面(写し)であり,三者は,「・・・日本ダンス界の発展のため,平成11年12月27日付けの基本協定に基づき,下記のとおり了解する。」として,「1 日本プロダンス協議会の創設」,「2 世界ダンス議会への加盟」,「3 全日本ダンス選手権大会の統一」及び「4 連絡協議会の発展的解消」について,それぞれ記載されている。
また,「1 日本プロダンス協議会の創設」には,「三者は,付属書Iのとおり,日本プロダンス界の唯一の代表機関として『日本プロダンス協議会』(英名をJapan National Council of Professional Danceと称する。以下,『ニューカウンシル』という。)を設立する。」の記載があり,「3 全日本ダンス選手権大会の統一」には,「(1)三者個別に開催されてきた全日本ダンス選手権大会を統一し,平成12年以降は,ニューカウンシルが日本プロダンス界で唯一の全日本ダンス選手権大会(以下,『統一大会』という。)を開催することとする。」の記載がある。
その4葉目の「付属書I」(写し)には,ニューカウンシルを本日付で設立する旨,及び,5葉目の「付属書II」(写し)には,ニューカウンシルの理事長の選出方法等についての了解事項が記載されている。
(2)乙第4号証は,平成11年12月27日付けの「JBDF 専務理事」,「JDC 会長」及び「JCF 会長」の連名による「基本協定」とする書面(写し)であり,その内容は,「JBDF,JDC及びJCFは,三者平等の原則の下で,連絡協議会を設け,プロダンス界に係る国内問題及び国際問題について誠意をもって協調して協議する。」ことを了解する旨である。
(3)乙第5号証は,「新カウンシル設立に関して」との表題の書面(写し)であり,これには,「1,基本協定について」,「2,プロダンス界の統合的再編に関する協定(案)と覚書について」,「3,平成11年12月27日付けの『基本協定』と『プロダンス界の統合的再編に関する協定(案)』の相違点」について,それぞれ記載されている。
(4)乙第6号証の1は,「統一全日本ダンス選手権大会」(平成25年開催)のパンフレット(写し,抜粋)であり,その1葉目には,「2013 ALL JAPAN PROFESSIONAL DANCE CHAMPIONSHIPS」の文字が大きく表示され,その下には,「2014年WDC世界選手権・日本代表選出コンペ」の表示と,「文部科学大臣杯」,「第14回プロフェッショナル」及び「統一全日本ダンス選手権大会」の各文字が三段に表示され,下部分には,「主催:日本プロダンス協議会(JNCPD)」及び「後援:文部科学省」の記載がある。
そして,2葉目には,該選手権大会の開催日時及び場所を示す「平成25年11月3日(日・祝)グランドプリンスホテル新高輪『飛天』」の記載があり,「タイムテーブル」として,「ラテンアメリカ」及び「ボールルーム」について,それぞれ「1次予選」,「2次予選」,・・・「審査員紹介」,・・・「準決勝」,「決勝」等の進行と,「表彰式」が行われることなどを示す表が掲載されている。
乙第6号証の2は,同号証の1と同様の内容を示す2012年(平成24年)11月3日に開催された第13回のもの(写し,抜粋)であり,乙第6号証の3は,同じく2011年(平成23年)11月3日に開催された第12回のもの(写し,抜粋)である。
3 本件商標の使用について,上記2によれば,以下のとおりである。
(1)使用商標について
本件商標は,「全日本ダンス選手権」の文字を表してなるのに対し,本件審判の請求の登録前3年以内と認められる,平成25年11月3日(乙6の1)及び同24年11月3日(乙6の2)に開催された選手権大会のパンフレットに表示された使用商標は,「統一全日本ダンス選手権大会」の文字からなるものであるから,本件商標の書体のみに変更を加えた同一の文字からなる商標,平仮名,片仮名及びローマ字の文字を相互に変更するものということができない。
そして,本件商標からは,「ゼンニホンダンスセンシュケン」の称呼が生ずるのに対し,使用商標からは,「トウイツゼンニホンダンスセンシュケンタイカイ」の称呼が生じるものであるから,同一の称呼を生ずるものとはいえない。
また,本件商標からは,「全日本のダンスに関する選手権」程の観念を生じるのに対し,使用商標からは,選手権大会の名称としての「統一全日本ダンス選手権大会」程の観念を生じるものであるから,同一の観念を生ずるものとはいえない。
したがって,使用商標は,本件商標と社会通念上同一のものということができない。
(2)本件商標の使用者について
「統一全日本ダンス選手権大会」のパンフレットには,「主催」として「日本プロダンス協議会(JNCPD)」の記載がある。
そして,「プロダンス界の統合的再編に関する協定」(乙3)によれば,本件商標権者は,「JDC」及び「JCF」と共に,該協定を設立したものであるから,「日本プロダンス協議会(JNCPD)」の一員であるということができる。
しかしながら,本件商標権者と「日本プロダンス協議会(JNCPD)」とは,異なる者というべきであり,「日本プロダンス協議会(JNCPD)」が,本件商標権の通常使用権者等であることを証する書面は提出されていない。
したがって,「日本プロダンス協議会(JNCPD)」は,本件商標権の通常使用権者ということができない。
(3)提供に係る役務について
本件取消請求に係る役務は,第41類「ダンスの興行の企画・運営又は開催」であり,該役務は,「入場料又は観覧料等を取って大衆にダンスを公開する催しの企画,運営又は開催」に関する役務の提供である。
これに対し,使用商標の使用に係る役務は,乙第6号証の1及び2によれば,1葉目に「WDC世界選手権・日本代表選出コンペ」の記載があること,2葉目の「タイムテーブル」には,「ラテンアメリカン」及び「ボールルーム」の「ダンス」について,それぞれ「1次予選」,「2次予選」,・・・「準決勝」,「決勝」等のように進行され,「審査」が行われること,「表彰式」が行われることなどからすれば,WDC世界選手権に日本代表を選出するために開催された「ダンス競技会の開催」に関する役務というのが相当である。
そうとすれば,該「ダンス競技会の開催」は,本件取消請求に係る役務とは異なる役務と認められる。
(4)その他,本件商標が本件取消請求に係る指定役務について使用されていることを示す証拠はない。
4 本件商標を使用していないことの正当な理由について
被請求人は,被請求人が独自に本件商標をしていないことについて正当な理由がある旨主張しているので,以下検討する。
(1)商標法第50条第2項の解釈
商標法第50条第2項にいう「正当な理由があること」とは,地震,水害等の不可抗力によって生じた事由,放火,破壊等の第三者の故意又は過失によって生じた事由,法令による禁止等の公権力の発動に係る事由その他の商標権者,専用使用権者又は通常使用権者の責めに帰すことができない事由が発生したために,商標権者等において,登録商標をその指定商品又は指定役務について使用することができなかった場合をいうと解するのが相当である(知財高裁 平成19年11月29日判決 平成19年(行ケ)第10227号)。
(2)被請求人の主張は,「被請求人は,請求人らと協議して本件協定を締結し,平成12年以降は,JNCPDが日本プロダンス界で『唯一』の『全日本ダンス選手権』を開催することに合意した。・・・また,実際に請求人は被請求人に対して,『全日本ダンス選手権』という名称の大会を開催することは不正競争防止法に違反するなどと主張し,被請求人に対して,『統一全日本ダンス選手権』以外に『全日本ダンス選手権』を開催しないよう求めていた。これによって,『統一全日本ダンス選手権』とは別個に,被請求人独自で『全日本ダンス選手権』を開催することができなかった。」旨である。
(3)被請求人の主張する上記不使用の理由は,その内容からすれば,本件商標権者と請求人らとの間の事情というべきものであるから,前記(1)の「地震,水害等の不可抗力によって生じた事由」,「法令による禁止等の公権力の発動に係る事由」及び「放火,破壊等の第三者の故意又は過失によって生じた事由」のいずれにも該当しないこと明らかである。
また,被請求人は,請求人らと協議して・・・「唯一」の「全日本ダンス選手権」を開催することに合意したものであるから,「その他の商標権者,専用使用権者又は通常使用権者の責めに帰すことができない事由」に該当するということもできない。
さらに,「請求人は被請求人に対して,『全日本ダンス選手権』という名称の大会を開催することは不正競争防止法に違反するなどと主張し,・・・『全日本ダンス選手権』を開催しないよう求めていた」旨主張するが,該事実を証する書面の提出はない。
したがって,被請求人の主張は,本件商標の不使用がやむを得なかったといえる事情には該当せず,本件商標の不使用についての正当な理由とは認められないものである。
5 まとめ
上記3のとおり,被請求人の提出に係る証拠からは,本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において,商標権者,専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが,その指定役務のいずれかについて,本件商標を使用していることを証明したものということができない。
また,上記4のとおり,被請求人は,本件指定役務について,本件商標を使用していないことについて正当な理由があるものと認めることもできない。
したがって,本件商標の登録は,商標法第50条の規定により,取り消すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
審理終結日 2015-08-25 
結審通知日 2015-08-28 
審決日 2015-09-10 
出願番号 商願平4-262222 
審決分類 T 1 31・ 1- Z (041)
最終処分 成立  
特許庁審判長 金子 尚人
特許庁審判官 大井手 正雄
田中 亨子
登録日 1997-07-11 
登録番号 商標登録第4024254号(T4024254) 
商標の称呼 ゼンニッポンダンスセンシュケン、ダンスセンシュケン、ゼンニッポン 
代理人 久米 輝代 
代理人 東谷 幸浩 
代理人 齋藤 貴弘 
代理人 ▲高▼野 芳徳 
代理人 正林 真之 
代理人 久米 輝代 
代理人 ▲高▼野 芳徳 
代理人 正林 真之 
代理人 黒田 英文 
代理人 東谷 幸浩 

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