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審決分類 審判 全部取消 商50条不使用による取り消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Y03
管理番号 1305100 
審判番号 取消2014-300797 
総通号数 190 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2015-10-30 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2014-10-02 
確定日 2015-08-17 
事件の表示 上記当事者間の登録第5005827号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第5005827号商標の商標登録は取り消す。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5005827号商標(以下「本件商標」という。)は、「ぱな」の平仮名及び「PANA」の欧文字を二段に横書きしてなり、平成18年4月19日に登録出願、第3類「せっけん類,歯磨き,化粧品,香料類(「精油からなる食品香料」を除く。)」を指定商品として、同年11月24日に設定登録されたものである。
そして、本件審判請求の登録日は、平成26年10月22日である。

第2 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求めると申し立て、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第6号証を提出した。
1 請求の理由
本件商標は、いずれの指定商品についても、継続して3年以上日本国内において使用されていないから、その登録は、商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきである。
2 弁駁の理由
(1)被請求人は、答弁書において、過去3年以上にわたって本件商標が不使用であるとの事実を認めているため、被請求人が、本件商標を、本件取消審判の請求の登録前3年以内に使用していなかったことについて争いはない。一方で、被請求人は、不使用であったことについて正当な事由があるとして、取り消されるべきではないと主張している。
しかしながら、以下に述べるように、被請求人の主張する「正当な事由」は、商標法第50条第2項但書で規定されている正当な理由(以下、「正当な理由」という。)には該当しないため、当該主張は認められないものである。
(2)「正当な理由」について
商標法第50条第2項但書では、指定商品又は指定役務についてその登録商標の使用をしていないことについて、正当な理由があれば不使用による取消が免れる旨規定されている。
そして、判決及び学説に鑑みれば、正当な理由が認められるのは、あくまで天災地変や時限立法等、商標権者の責めに帰することができない特別な事情があるような場合に限られるとされており、厳格に解釈されるべきである。
(3)被請求人が主張する「正当な事由」について
被請求人は、(ア)自身が沖縄県国頭郡今帰仁村において化粧品の研究開発及び製造販売を目的として設立された法人である旨、(イ)沖縄県独特の植物を原料とした化粧品について平成26年春頃に完成の目途が立った旨、(ウ)潤沢な資金を有する企業ではないため、直ちに事業化することができなかった旨、(エ)沖縄県バイオ産業活性化共同体が斡旋する「バイオ産業活性化支援事業」の支援を受けるために事業化支援提案書を提出し、「補助先候補者」として決定された(乙1及び乙2)旨、(オ)その後、沖縄県から支援事業交付金が交付されることになり、補助交付金申請書を提出したところ、補助金の交付が決定された(乙3及び乙4)旨、等々を説明して被請求人に正当な事由があることを主張している。
すなわち、本件商標が使用されなかったのは、当該商標を付する商品が完成しなかったこと及び資金難によるものであるとの説明である。しかしながら、被請求人の説明は、単に被請求人の内部事情を説明しているにすぎず、当該事情をもって正当な理由に該当するということはできない。
不使用の正当な理由は、商標権者の責めに帰することができない特別な事情があるような場合に限り認められるものであり、被請求人の主張する正当な事由は、専ら自己都合によるものであることは明らかである。
被請求人が潤沢な資金を有する企業ではないとの事情は、被請求人に限らず、一部の大企業を除いた多くのいわゆる中小企業が抱えている事情であるとも考えられるため、このことをもって、本件商標を使用していなかった正当な理由と認めることはできない。このような事情を正当な理由として認めてしまうと、資金に乏しい企業若しくは個人であれば、一定期間登録商標の使用をしていなくても取消されないことになり、資金繰りをして事業を行っている他の商標権者との間で不平等が生じることになる。
また、本件商標を付する商品の研究開発が遅れて完成の目途が立たなかったとしているが、本件商標を付する対象の商品を研究段階の商品に限定していることは被請求人の都合であり、研究対象の商品以外の商品に本件商標を付するという選択肢もあったはずである。
さらに、本件商標を付する商品の製造販売にあたって、乙第1号証ないし乙第4号証に示されているバイオ産業活性化共同体からの事業支援を受けなければならないとする特段の事情も見当たらない。
加えて、被請求人の提出する証拠(乙1ないし乙4)には、本件商標の記載は一切ないから、これら乙号証によっては、「沖縄県産ハイビスカスエキスを配合した高機能頭皮ケア美容液の商品化及び販売促進事業」について事業支援を受ける必要性があることは認められたとしても、「沖縄県産ハイビスカスエキスを配合した高機能頭皮ケア美容液の商品」に、本件商標を付することの必要性を認めることはできない。
したがって、被請求人の提出した各証拠は、本件商標を使用することができなかったこと、本件商標を使用することができなかったことに正当な理由があったことを何ら証明するものではなく、被請求人は、上記商品について本件商標ではなく、別な商標を選択して使用すれば解決できるのであって、不使用である本件商標を維持させる必要性は認められない。
してみれば、被請求人の主張は、被請求人の内部事情又は自己都合の範囲であって、商標権者の責めに帰することができない事情とは認められず、商標法第50条第2項但書に規定する「正当な理由」に該当しない。
3 まとめ
以上のとおり、被請求人の主張及び提出する証拠によっては、本件商標が本件審判の請求の登録日前3年以内にその指定商品について使用されていることは証明されておらず、かつ、その不使用につき正当な理由があるとも認められないから、本件商標の登録の取消は免れ得ないものである。

第3 被請求人の答弁
被請求人は、本件審判請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする、との審決を求め、その要旨を以下のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第4号証を提出した。
1 答弁の理由
(1)本件商標を過去3年以上にわたり不使用の事実を認める。
(2)本件商標の不使用については、以下に述べる正当な事由がある。
ア 被請求人は、沖縄県国頭郡今帰仁村において化粧品の研究開発及び製造販売を目的として設立された法人である。対象とする化粧品は、沖縄県独特の植物、例えば月桃(オオクマタケラン)、仏桑華(ハイビスカス)、シークワーサー等の植物を原料として使用するもので、永年の研究の結果、平成26年春頃に完成の目途がつくに至った。
しかし、潤沢な資金を有する企業ではないため、直ちに事業化することは適わず融資先を模索していたところ、沖縄県バイオ産業活性化共同体が斡旋する「バイオ産業活性化支援事業」の存在を知り、平成26年6月27日、同共同体に対し沖縄県産ハイビスカスエキスを配合した高機能頭皮ケア美容液の商品化及び販売促進事業についての事業化支援提案書(乙1)を提出した。
沖縄県バイオ産業活性化共同体とは、企業者と沖縄県とのパイプ役として設けられている団体で、提出された提案の内容を県に代わって検討し、結果を県に報告する役割の機関である。上記提案に対して同年7月29日付で沖縄県商工労働部長名で「補助先候補者として決定する」旨の決定がなされ、その通知書(乙2)を受領した。その後、同年8月1日付で該補助金交付申請書を沖縄県知事あてに提出したところ、同日付で補助金の交付決定がなされた(乙3及び乙4)。
イ 本件商標は、平成18年11月24日に設定登録となっているにも拘わらず、今日まで使用されなかったのは、この商標を付す対象商品がなかなか完成しなかったことが最大の原因であるが、商品化の目途が立った後も、資金繰りに苦慮していたことによるものでもある。上記アの補助金の交付決定によって実施化のスタートを切ることが出来るようになったが、今後、この商標を実際に商品に付して販売することが出来るようになるのは、更に数か月を要する予定である。
ウ 商標法の目的は、商標を保護することにより商標の使用をする者の業務上の信用の維持を図り、このことによって産業の発達に寄与し、あわせて需要者の利益を保護するところにある。
不使用取消しの制度は、登録後一定期間、登録商標が使用されない場合には、これを消滅させようということで設けられた制度であるが、この制度は、商標を使用する者(商標権者)の業務上の信用の維持育成を図るという商標法の目的を度外視して運用されてはならない。
したがって、その不使用の事実が、天変地異、判例に表れているような進駐軍の指示による障害や販売許可の遅れというような場合に限らず、場合によっては、社会的、経済的その他商標権者に起因する固有の事情によるものであるとしても、やむを得ないものとして弾力的に正当理由の存在を肯定して良い場合があると考えるべきであり、従来の正当な理由の狭い解釈では、商標法の目的を果たすことができない。

第4 当審の判断
1 商標法第50条第2項は、その本文において、商標法第50条第1項による商標登録の取消しの審判の請求があったときは、「その審判の請求の登録前3年以内に日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかがその請求に係る指定商品又は指定役務のいずれかについての登録商標の使用をしていることを被請求人が証明しない限り、商標権者は、その指定商品又は指定役務に係る商標登録の取消しを免れない。」と規定しているところ、被請求人は、本件商標をその指定商品について、審判の請求の登録前3年以内に日本国内において使用していたことを証明しておらず、自ら、審判事件答弁書において、3年以上に亘って不使用であったことを認めている。
2 商標法第50条第2項は、そのただし書において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者が指定商品又は指定役務に登録商標を使用していないとしても、「登録商標の使用をしていないことについて正当な理由」があることを商標権者である被請求人が明らかにしたときは、その商標登録は取り消されない旨規定している。
ところで、同項が規定する正当な理由とは、地震、水害等の不可抗力、放火、破損等の第三者の故意又は過失による事由、法令による禁止等の公権力の発動に係る事由等、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者の責めに帰することができない事由が発生したために、商標権者等において、登録商標をその指定商品又は指定役務について使用をすることができなかった場合をいうと解すべき(東京高等裁判所 平成7年(行ケ)第124号判決、知的財産高等裁判所 平成20年(行ケ)第10160号判決、知的財産高等裁判所 平成22年(行ケ)第10012号判決)ものである。
3 被請求人は、本件商標の使用をしていないことについて正当な理由がある旨主張し、乙第1号証ないし乙第4号証を提出している。そこで以下検討する。
(1)被請求人の提出した証拠によれば、以下の事実を認めることができる。
ア 乙第1号証は、被請求人がバイオ産業活性化支援共同体宛てに提出した平成26年6月27日付けの「平成26年バイオ産業活性化支援事業提案書(事業化支援)」と題する書面(写し)であり、「事業化支援テーマ名」の項目には、「沖縄県産ハイビスカスエキスを配合した高機能頭皮ケア美容液の商品化及び販売促進事業」の記載がある。
イ 乙第2号証は、沖縄県商工労働部部長から被請求人に宛てた平成26年7月29日付けの「平成26年度バイオ産業活性化支援事業に係る企画提案の審査結果について(通知)」と題する書面(写し)であり、被請求人が応募した企画提案の審査結果として、「補助先候補者として決定する。」の記載がある。
ウ 乙第3号証は、被請求人が沖縄県知事に宛てて提出した平成26年8月1日付けの「平成26年度バイオ産業活性化支援事業補助金交付申請書」と題する書面(写し)であり、補助事業名として、「平成26年度バイオ産業活性化支援事業補助金【事業化支援】『沖縄県産ハイビスカスエキスを配合した高機能頭皮ケア美容液の商品化及び販売促進事業』」の記載及び補助事業の実施期間として、「平成26年8月1日から平成27年3月15日まで」の記載がある。
エ 乙第4号証は、沖縄県知事から被請求人に宛てた平成26年8月1日付けの「平成26年度バイオ産業活性化支援事業補助金交付決定通知書」と題する書面(写し)であり、補助事業名として、「平成26年度バイオ産業活性化支援事業提案書【事業化支援】『テーマ名 沖縄県産ハイビスカスエキスを配合した高機能頭皮ケア美容液の商品化及び販売促進事業』」の記載及び該事業について申請された補助金の交付が決定した旨の記載がある。
(2)上記(1)によれば、被請求人が、沖縄県が行う事業支援に申請(平成26年6月27日)し、その補助金の交付が決定したことが認められる。
(3)被請求人が正当な理由として主張しているのは、要するに、本件商標を付す対象商品が完成しなかったこと及び資金難であり、しかも、被請求人の提出した乙各号証によって認められるのは、「沖縄県産ハイビスカスエキスを配合した高機能頭皮ケア美容液の商品化及び販売促進事業」について、補助金の申請をしたこと及び該補助金の交付が決定したことであって、上記2のような、第三者の故意又は過失による事由、法令による禁止等の公権力の発動に係る事由や、商標権者等の責めに帰することができない事由に該当することを明らかにしたということはできない。
してみれば、被請求人の主張の理由及び提出した証拠をもって、本件商標の使用をしていないことについて、商標法第50条第2項に規定する正当な理由があるということはできない
4 まとめ
以上のとおり、被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかがその請求に係る指定商品について、本件商標の使用をしていることを証明したということはできず、また、被請求人は、本件商標の使用をしていないことについて正当な理由があったということもできない。
したがって、本件商標の登録は、商標法第50条の規定により、取り消す
べきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2015-06-18 
結審通知日 2015-06-22 
審決日 2015-07-09 
出願番号 商願2006-35815(T2006-35815) 
審決分類 T 1 31・ 1- Z (Y03)
最終処分 成立  
前審関与審査官 齋藤 貴博 
特許庁審判長 林 栄二
特許庁審判官 梶原 良子
中束 としえ
登録日 2006-11-24 
登録番号 商標登録第5005827号(T5005827) 
商標の称呼 パナ 
代理人 新垣 盛克 

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