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審決分類 審判 査定不服 商3条2項 使用による自他商品の識別力 取り消して登録 W10
審判 査定不服 商3条1項4号 ありふれた氏、名称 取り消して登録 W10
管理番号 1304194 
審判番号 不服2014-11575 
総通号数 189 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2015-09-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-06-18 
確定日 2015-08-26 
事件の表示 商願2013-47547拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願商標は、登録すべきものとする。
理由 1 本願商標
本願商標は、別掲のとおりの構成からなり、第10類「医療用機械器具,医療用薬液注入装置」を指定商品として、平成25年6月20日に登録出願されたものである。そして、その指定商品については、原審における平成25年11月18日付け及び当審における同26年12月26日付けの手続補正書により、最終的に、第10類「血管造影剤注入装置及びその部品並びに付属品」となったものである。

2 原査定の拒絶の理由の要点
原査定は、「本願商標は、ありふれた氏の一つと認められる『根本』に通じる『Nemoto』のローマ文字を表示してなるものであるから、ありふれた氏普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標と認める。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第4号に該当する。また、出願人が提出した証拠によっては、本願のすべての指定商品について商標法第3条第2項の要件が立証されているものとは認められない。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

3 当審の判断
(1)商標法第3条第1項第4号該当性について
本願商標は、別掲のとおり、「Nemoto」の欧文字を横書きしてなるところ、その構成中の「t」の文字の横線を縦線から左側へ突き抜けない「ヒ」の片仮名のように表し、ややデザイン化した書体からなるものの、商標全体としては、そのデザイン化の程度は格別特異なものともいえないものであるから、普通に用いられる方法の範囲内で表された標章と認められるものである。
そして、「根本」の文字は、我が国においては、氏を表す語として広く一般に用いられているものとみるのが相当であり、また、一般の商取引においては、氏は必ずしも漢字だけで表すものではなく、ローマ字で表す場合も決して少なくないものである。
そうすると、本願商標に接する取引者、需要者は、これをありふれた氏である「根本」をローマ字で表したもの、すなわち、ありふれた氏普通に用いられる方法で表示したものと理解し、認識するにすぎないといわざるを得ない。
したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第4号に該当する。
(2)商標法第3条第2項について
ア 出願人(請求人)は、本願商標は、商標法第3条第2項の規定により、商標登録を受けることができる旨主張し、証拠方法として第1号証ないし第10号証及び甲第11号証ないし甲第24号証(枝番号を含む。括弧内における証拠番号は、以下「1号証」、「甲11」のように省略して記載する。)を提出している。
そこで、本願商標が商標法第3条第2項の要件を具備するか否かについてみるに、出願人の主張及び提出に係る証拠並びに当審における職権調査によれば、以下の事実が認められる。
(ア)出願人は、1939年創業のX線CT用、血管造影用及びMRI用造影剤注入装置、カテーテル等の医療機器の研究、企画開発、設計、製造、販売及び保守等を行う医療機器メーカーであり、営業所又は営業部を札幌、仙台、新潟、東京、名古屋、大阪、福岡に置き、これらの営業所等から日本各地の病院施設へ製品の販売及びそれに付随する保守・整備等の役務の提供を行っており、2011年度の売上高は94億円である(甲12-1)。
また、出願人は、1981年に世界で初めてCT検査用血液造影剤注入装置を開発、販売し(甲12-1、甲22-1)、それを契機に、医療用検査装置のMRやCTに特化した造影剤注入装置を開発、販売してきた結果、同市場のニッチトップ企業として科学技術の進歩等に貢献したことが評価され、平成25年度の「東京都功労者賞(技術振興功労)」を受賞し(甲12-2)、また、出願人の造影剤注入システムは、日本発明振興協会及び日刊工業新聞社共催の「2013年度発明大賞」を受賞している(甲12-3)。
(イ)出願人は、「Nemoto」の欧文字を本願商標と同一にデザイン化された書体で表してなる商標(以下「使用商標1」という。)と図形との結合商標(甲13-1。以下「使用商標2」という。)を、出願人のハウスマークとして、出願人のウェブサイト(1-1号証、甲12-1、甲13-4、甲14-1)、商品カタログ(2号証、5?9号証、甲13-1?13-3、甲13-5?13-9、甲14-6)、雑誌等における宣伝広告(甲18、甲19)、展示会における出展ブース(甲20-2?20-3)等に表示している。
(ウ)使用商標2は、出願人の取扱いに係る商品自体又はその包装に付されており、その表示方法は、印刷並びに成形による文字及び図形の浮き上がらせによるものである(甲13-1?13-3、甲13-5?13-9、甲14-2?14-6)。
(エ)2006年9月、2010年4月、2011年7月、同年11月、2014年3月及び同年4月に作成された商品カタログ(甲13-2?13-3、甲13-5?13-9)の表紙には、使用商標2が表示されている。
そして、出願人は、平成14年(2002年)以降、11種類の血管造影剤注入装置を製造及び販売した事実が認められ(4号証、甲13、甲18-1、甲19-1)、そのうちの1つであるX線CT用血管造影剤注入装置「DUAL SHOT GX7」の商品カタログ(甲13-7)は、2011年8月から2014年3月の2年7月間に1万9千部作成され、その制作費は約1,525万円に及ぶ(甲17)。これらの商品カタログは、全国の病院施設及び医療機器関連の展示会等で配布されている。
(オ)平成14年(2002年)2月に発行された「日本放射線技術学会第58回総会学術大会[予稿集]」(4号証)、医療系雑誌「Rad Fan」の2003年3月、2004年1月、2005年12月、2008年1月、2010年1月、2011年7月、2012年1月、同年7月及び2013年7月発行号(甲18-1?18-9)並びに医療系雑誌「INNERVISION」の平成22年(2010年)を除く平成15年(2003年)ないし平成25年(2013年)の12月発行号(甲19-1?19-10)に掲載された出願人の商品の広告には、使用商標2が表示されている。
そして、当審における職権調査によれば、雑誌「Rad Fan」及び「INNERVISION」は、それぞれ、毎号1万8千部及び1万5千部程度発行される月刊誌である。
(カ)本願の補正後の指定商品は、CT装置、MRI装置等の透視撮像装置を用いた精密検査において使用される商品であり、その需要者は、上記透視撮像装置を備えた病院及び医療研究施設等で血管造影並びにそれによる診療及び研究に携わる循環器内科、脳外科及び放射線科等の医師や検査技師・看護師等の医療従事者及び医療系の研究者等であるといえる。そして、当審における職権調査によれば、公益社団法人日本放射線技術学会のウェブサイトには(http://www.jsrt.or.jp/data/about/outline-01/)、「会員数 17,222名(2015年2月末現在) 会員構成 国内外の診療放射線技師をはじめ、医師、教員、企業技術者・研究者、臨床検査技師、大学理工系研究者、学生など放射線技術学の領域全般にわたる研究者、技術者、団体で構成。」との記載がある。
そうすると、上記ウェブサイトから想定できる血管造影に携わる医療関係者の数を考慮すれば、補正後の指定商品を扱う業界においては、上記(エ)の商品カタログ及び上記(オ)の雑誌の発行部数をもって、その宣伝活動・実績は、相当程度高いとみて差し支えないものということができる。
(キ)出願人は、2011年を除く2004年から2014年に、医療用画像診断機器及び関連機器を集めた「国際医用画像総合展」に毎年出展し、出展ブースの看板に使用商標2を大きく表示するか、使用商標2を表示した血管造影剤注入装置等の商品を展示するか、または、その両方を行っていることが認められる(甲20-2?20-3)。そして、上記展示会の来場者数は、延べ約20万人である(甲20-1)。
(ク)出願人の血管造影剤注入装置は、2005年、2006年及び2012年において、全国各地の主要大学病院、国公立病院等で使用されていることが認められる(甲16)。
(ケ)本願の指定商品の需要者は、上記(カ)のとおり、循環器内科、脳外科及び放射線科等の医師や検査技師・看護師等の医療従事者及び医療系の研究者等であり、これらの者は、当該商品の使用の際には、患者の安全確保のため細心の注意を払い、付属品であるシリンジや延長チューブの包装に記載された「メーカー名」、「商品名」、「型番」等を検査の度に確認した上で、血管造影剤注入装置本体にセットしなければならないため、使用商標1及びそれを含む使用商標2は、商品の使用の度に意識的に視認され、需要者の記憶に留まり易くなるものであるといえる。
イ 以上のことからすると、出願人は、2002年から約12年間継続して、「血管造影剤注入装置及びその部品並びに付属品」について、本願商標と実質的に同一である使用商標1及びそれを含む使用商標2を使用したものであり、継続してその宣伝広告を行い、遅くとも2005年頃には、既に全国の主要大学病院及び国公立病院において、その商品が使用されていることが認められる。
さらに、職権調査によれば、出願人以外の者が「Nemoto」の文字を本願の補正後の指定商品について使用している事実は発見できなかった。
してみれば、本願商標は、その指定商品「血管造影剤注入装置及びその部品並びに付属品」について、出願人により使用をされた結果、需要者が出願人の業務に係る商品であることを認識するに至ったものと判断するのが相当であるから、本願商標は、商標法第3条第2項の要件を具備している。
(3)むすび
以上のとおり、本願商標は、商標法第3条第1項第4号に該当するものの、同法第3条第2項の規定により商標登録を受けることができるものであるから、原査定は、取消しを免れない。
その他、本願について拒絶の理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲(本願商標)


審決日 2015-08-11 
出願番号 商願2013-47547(T2013-47547) 
審決分類 T 1 8・ 14- WY (W10)
T 1 8・ 17- WY (W10)
最終処分 成立  
前審関与審査官 山田 忠司 
特許庁審判長 酒井 福造
特許庁審判官 藤田 和美
堀内 仁子
商標の称呼 ネモト 
代理人 伊藤 克博 
代理人 小野 暁子 

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