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審決分類 審判 査定不服 商4条1項8号 他人の肖像、氏名、著名な芸名など 登録しない W293043
管理番号 1303010 
審判番号 不服2013-18639 
総通号数 188 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2015-08-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-09-26 
確定日 2015-07-06 
事件の表示 商願2012-9056拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。
理由 第1 本願商標
本願商標は、別掲1のとおり、「こんぴら製麺」の文字を横書きしてなり、第29類「カレーうどんのもと,油揚げ,魚介類の天ぷら,かつお節,干しえび,焼きのり」、第30類「うどんのめん,その他穀物の加工品,めんつゆその他の調味料,香辛料」及び第43類「飲食物の提供」を指定商品及び指定役務として、平成24年2月9日に登録出願されたものである。

第2 原査定の拒絶の理由
原査定は、「本願商標は、香川県仲多度郡琴平町所在の宗教法人金刀比羅宮の著名な略称である『こんぴら』の文字をその構成中に含むものであり、かつ、その者の承諾を得ているものとは認められない。したがって、本願商標は、商標法第4条第1項第8号に該当する。」旨判断し、本願を拒絶したものである。

第3 当審の判断
1 商標法第4条第1項第8号について
商標法第4条第1項第8号において、「他人の肖像又は他人の氏名若しくは名称若しくは著名な雅号、芸名若しくは筆名若しくはこれらの著名な略称を含む商標(その他人の承諾を得ているものを除く。)」は、商標登録を受けることができない旨規定している。
そして、 最高裁平成16年(行ヒ)343号判決(判決日 平成17年7月22日)において、この規定の趣旨は、「人(法人等の団体を含む。以下同じ。)の肖像、氏名、名称等に対する人格的利益を保護することにあると解される。すなわち、人は、自らの承諾なしにその氏名、名称等を商標に使われることがない利益を保護されているのである。略称についても、一般に氏名、名称と同様に本人を指し示すものとして受け入れられている場合には、本人の氏名、名称と同様に保護に値すると考えられる。」旨、判示されている。
2 商標法第4条第1項第8号の該当性について
(1)本願商標の構成について
本願商標は、前記1のとおり、「こんぴら製麺」の文字からなるところ、「こんぴら」の語は、「仏法の守護神の一つ,香川県の金刀比羅宮(ことひらぐう)のこと。」を、また、「製麺」の語は、「麺類を製造すること。」(ともに、広辞苑 第六版)をそれぞれ意味する語であることが認められる。
(2)「こんぴら」の著名性について
ア 「金刀比羅宮」について
香川県仲多度郡琴平町所在の「宗教法人金刀比羅宮」が、古くから「こんぴら(金毘羅・金比羅)」に敬称を付して「金毘羅さま」、「こんぴらさん」等と親しみを込め称されてきたことは、例えば、別掲2の記載からも、一般に広く知られているといえる。
イ 「こんぴら」について
上記アのとおり「宗教法人金刀比羅宮」が古くから「こんぴら(金毘羅・金比羅)」に敬称を付して、「こんぴらさん」等と称されていること、上記(1)のとおり「こんぴら」の文字が「香川県の金刀比羅宮(ことひらぐう)」を意味する語として広辞苑に掲載されていること、別掲3(1)ないし(3)のとおり、広辞苑以外の一般的な辞書にもその意味が掲載されていること、及び別掲3(4)ないし(9)のとおり、「金刀比羅宮に参詣すること」を「こんぴら参り」と称していることから、本願商標の構成中の「こんぴら」の文字は、「宗教法人金刀比羅宮」の略称として、本願商標の出願時において全国的に知られ、その状態が現在も継続しているものと認められる。
(3)「他人の承諾」を得たものであるかについて
請求人は、香川県仲多度郡琴平町所在の「宗教法人金刀比羅宮」から、本願商標を登録することについての承諾を得たことを証明するための書類(承諾書等)を提出していない。
したがって、本願商標は、これを登録することについて、他人の承諾を得たものとは認められない。
(4)小括
上記(1)ないし(3)で認定したとおり、本願商標は、他人の名称(宗教法人金刀比羅宮)の著名な略称(こんぴら)を含む商標であって、かつ、当該他人の承諾を得ているものとは認められないものであるから、商標法第4条第1項第8号に該当するものといわざるを得ない。
3 請求人の主張について
請求人は、「宗教法人金刀比羅宮」を略称する場合、「こんぴら」単独で呼び捨てでは使用されず、敬称を付して「こんぴらさん(様)」「こんぴら宮」等のように使用されるのが通常である旨、「こんぴら」という語は、香川県仲多度郡琴平町を含むその周辺地域を示す地名として認識されている旨、及び本願商標は、地名「こんぴら」と名称「製麺」からなり、一連して称呼され、一連結合して識別力を持つ商標「こんぴら製麺」として認識される商標である旨主張している。
しかしながら、「こんぴら」の語が単独では使用されずに敬称を付して使用されることが多いとしても、「こんぴら」の部分が「宗教法人金刀比羅宮」を指し示していることにはかわりがないものであるし、また、「こんぴら」の語が「宗教法人金刀比羅宮」の著名な略称として認められることは、上記2(2)で認定したとおりである。
また、金刀比羅宮のみならず、その付近一帯を表す場合に「こんぴら」の語が使用されている場合があるとしても、例えば「コンサイス日本地名事典<第5版> 株式会社三省堂」には、「ことひら 琴平」の見出しに「香川県中南部、仲多度郡琴平町。金刀比羅宮の門前町。【旧称】金毘羅」の記載はあるものの、「こんぴら」の見出し及びその説明は掲載されていない。
そうとすれば、「こんぴら」の文字は、地名を表したものと認識されるというよりは、「宗教法人金刀比羅宮」を指し示すものとして認識されると判断するのが相当である。
したがって、請求人の主張はいずれも採用することができない。
4 まとめ
以上のとおり、本願商標は、商標法第4条第1項第8号に該当し、登録することができない。
したがって、本願商標が同号に該当するとして本願を拒絶した原査定は、取り消すことはできない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲1(本願商標)


別掲2(「金刀比羅宮」について)
(1)「広辞苑 第六版(株式会社岩波書店発行)」には、「ことひらぐう【金刀比羅宮】」の見出しの下、「香川県仲多度郡象頭山(琴平山)の中腹にある元国幣中社。祭神は大物主神・崇徳天皇。もともとは金毘羅を祀り、船人に尊崇された。毎年10月10日の大祭は盛大。金毘羅大権現。金毘羅宮。金毘羅さま。」の記載がある。
(2)「大辞泉 増補・新装版(株式会社小学館発行)」には、「ことひらぐう【金刀比羅宮】」の見出しの下、「香川県仲多度郡琴平町にある神社。祭神は大物主神を主神とし、崇徳天皇を配祀。海上安全の守護神として信仰される。明治初頭までは神仏習合で、象頭山金毘羅大権現と称した。琴平神社。こんぴらさん。」の記載がある。
(3)「国語大辞典(新装版)(株式会社小学館発行)」には、「ことひらぐう【金刀比羅宮】」の見出しの下、「香川県仲多度郡琴平町にある旧国幣中社。祭神は大物主神、崇徳天皇。長保三年勅命により社殿を修築。江戸時代は神仏習合で、象頭山金毘羅大権現と称したが、明治初頭に神社となり金刀比羅宮と改めた。航海の守護神として崇敬されるほか、室町時代以降は伊勢参りとともに、金毘羅参りが庶民の間に流行した。金毘羅さま。」の記載がある。
(4)「大辞林第三版(株式会社三省堂発行)」には、「ことひらぐう【金刀比羅宮】」の見出しの下、「香川県琴平町の琴平山にある神社。大物主神・崇徳天皇をまつる。航海や漁業の守護神として崇敬され、各地に多くの分社がある。また、雷神・水神・農耕神・留守神としても信仰された。祈願のための流し樽の風習が残る。金毘羅様。金毘羅宮。旧称、金毘羅大権現。」の記載がある。
(5)日本農業新聞(1997年4月30日付け)
「[一村逸品]焼肉のたれ、香川県琴平町」の見出しの下、「“金比羅さん”の愛称で知られる金比羅大権現は讃州仲郡(香川県琴平町)にあり、同所は古くからニンニク栽培が盛んなところ。」の記載がある。
(6)香川県丸亀市のウェブサイトには、「金刀比羅宮」の見出しの下、「『こんぴらさん』の名で親しまれている金刀比羅宮は、仲多度郡の琴平山に鎮座し、住古には大物主神(おおものぬしのかみ)を祀り『琴平宮(ことひらのみや)』と称しました。中古になると『金毘羅大権現(こんぴらだいごんげん)』と改称し・・・その後、神仏分離により現在の『金刀比羅宮』となったのは、明治22年(1889)のことです。今も、農業・漁業・医薬・技芸など広汎な御神徳を持つ神様として、全国の人々の厚い信仰を集めています。」の記載がある。(http://www.city.marugame.kagawa.jp/sightseeing/spot/11/)

別掲3(「こんぴら」について)
(1)「大辞泉 増補・新装版(株式会社小学館発行)」には、「こんぴら【金毘羅・金比羅】」の見出しの下、「『金刀比羅宮』の異称。こんぴらさま。」の記載がある。
(2)「国語大辞典(新装版)(株式会社小学館発行)」には、「こんぴら【金毘羅・金比羅】」の見出しの下、「四国、讃岐(香川県)の金刀比羅宮の俗称。」の記載がある。
(3)「大辞林第三版(株式会社三省堂発行)」には、「こんぴら【金毘羅・金比羅】」の見出しの下、「ガンジス川の鰐が神格化されて仏教の守護神となったもの。・・・日本では大物主神の垂迹として金毘羅大権現といい、海上の守護神として広く民間に信仰される。香川県の金刀比羅宮がその中心的存在。」の記載がある。
(4)「国語大辞典(新装版)(株式会社小学館発行)」には、「こんぴらまいり【金毘羅参】」の見出しの下、「金刀比羅宮に参詣すること。また、その人」の記載がある。
(5)産経新聞(2011年10月28日付け 大阪夕刊)
「丸亀市が独断、金刀比羅宮指摘 ゆるキャラ愛称 公募中止」の見出しの下、「『こんぴら参り』で知られる香川県琴平町の金刀比羅(ことひら)宮にちなんで同県丸亀市が生み出した『ゆるキャラ』をめぐり、愛称の公募を独断で始めた市が同宮の指摘を受け、募集を中止したことが28日、分かった。」の記載がある。
(6)朝日新聞(2010年3月28日付け 大阪地方版/香川)
「(週刊まちぶら)丸亀市郡家町かいわい 歴史息づく、ため池群 /香川県」の見出しの下、「讃岐名物のため池の空撮でいつも登場するのが、丸亀市郡家町だそうだ。東西1・5キロ、南北3キロに10の池がひしめき合う。かつて郡司庁(役所)が置かれ、こんぴら参りの『丸亀街道』でにぎわった歴史あふれる地域を歩くと、町は今も水と共に、ゆったりと生きていた。」の記載がある。
(7)毎日新聞(2009年9月4日付け 地方版/香川)
「足湯:こんぴら参りの癒やしにどうぞ 琴平で無料、常設オープン /香川」の見出しの下、「『こんぴら参り』で多くの観光客が訪れる琴平町の中心部に3日、無料で足湯が楽しめる『ゆうび泉』がオープンした。」の記載がある。
(8)朝日新聞(2007年12月28日付け 大阪朝刊)
「こんぴら、行く年見る年 『金刀比羅宮 書院の美』あすから後期公開 【大阪】」の見出しの下、「初詣での参拝者を迎える準備がほぼ整った香川県琴平町の金刀比羅宮。・・・浪曲『森の石松』は、清水の次郎長の子分だった石松が、親分に代わってこんぴらさんに参拝したときの話だ。旅行が容易でなかった時代、金刀比羅宮には犬も代参していたという。これが通称『こんぴら犬』。飼い主の住所や名前を書いた木札、さい銭、路銀(えさ代)を入れた袋に『こんぴら参り』と記して犬の首にかけ、金刀比羅宮の方向へ行く旅人に犬を託す。道中、犬は旅人から旅人へと引き継がれ、最後は参拝の人に連れられてお宮にたどり着く。お守り札をもらった犬は行きと同様の方法で帰途につく。」の記載がある。
(9)朝日新聞(2007年12月22日付け 東京朝刊)
「(やって未体験)こんぴら参り つえを頼りに1368段」の見出しの下、「全国にこんぴらと呼ばれる神社は数あれど、香川県琴平(ことひら)町の金刀比羅宮(ことひらぐう)が総本山。・・・大門から本宮までの421段には、少しきつい傾斜も含まれる。参道の周囲が寂しくなる頃に見えてくる旭社は、国の重要文化財に指定されている。石松が本宮と間違えたのも無理はない立派な社だ。ここからわずか10分足らずの所に本宮がある。こんぴら参りの場合、ここで満足する人がほとんどだ。」の記載がある。


審理終結日 2014-09-30 
結審通知日 2014-10-01 
審決日 2014-10-21 
出願番号 商願2012-9056(T2012-9056) 
審決分類 T 1 8・ 23- Z (W293043)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 日向野 浩志 
特許庁審判長 土井 敬子
特許庁審判官 梶原 良子
高野 和行
商標の称呼 コンピラセーメン、コンピラ 
代理人 清原 義博 

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