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審決分類 審判 全部無効 観念類似 無効としない W41
審判 全部無効 外観類似 無効としない W41
審判 全部無効 商4条1項7号 公序、良俗 無効としない W41
審判 全部無効 商4条1項10号一般周知商標 無効としない W41
審判 全部無効 称呼類似 無効としない W41
管理番号 1301701 
審判番号 無効2014-890077 
総通号数 187 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2015-07-31 
種別 無効の審決 
審判請求日 2014-10-28 
確定日 2015-05-25 
事件の表示 上記当事者間の登録第5599590号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5599590号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲のとおりの構成よりなり、平成24年7月6日に登録出願、第41類「シンポジウム・討論会・会議又は研修会の手配及び運営,教育又は娯楽に関する競技会の運営,文化又は教育のための展示会の運営,写真による報道,書籍の制作,娯楽情報の提供,映画・演芸・演劇又は音楽の演奏の興行の企画又は運営に関する情報の提供及び助言,ラジオ及びテレビジョン番組の制作・配給,映画の企画・制作・上映又は配給,教育情報の提供,知識又は技芸の教授,通訳,翻訳」を指定役務として、同25年6月11日に登録査定、同年7月19日に設定登録されたものである。

第2 請求人の主張
請求人は、本件商標の登録を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第11号証を提出した。
1 請求の理由
(1)商標法第4条第1項第7号該当性
登録査定時の出願人「トランスメディア株式会社」は、審査において提出した意見書において、「特定非営利活動法人学校マルチメディアネットワーク支援センター」(以下「NPO法人SMN」という。)、スタジオ・ハードデラックス株式会社及び出願人との三者間で締結した「確認書」を根拠として、拒絶理由2(商標法第4条第1項第10号)における「NPO法人SMN」との関係性(他人ではなく協業事業者である)に基づき、本件商標は「他人の業務に係る商品・役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標と同一又は類似の商標であって、同一又は類似の商品・役務について使用するもの」に該当しない旨を主張したところ、拒絶理由2は解消したものと認定された。
この「確認書」は、「NPO法人SMN」を甲とし、「スタジオ・ハードデラックス株式会社」を乙とし、登録査定時の出願人「トランスメディア株式会社」を丙とする三者間で、商標「映画/甲子園」等につき協業する旨を定め、商標「映画/甲子園」の商標登録は丙が行い、一括管理する旨を、2011年(平成23年)6月1日付で確認し、「NPO法人SMN」理事の大崎徹哉氏が代表として押印している。
しかしながら、履歴事項全部証明書によると、大崎徹哉氏は「NPO法人SMN」において、平成21年4月30日理事に就任し、平成23年4月30日に退任したことが明らかであるため、「確認書」作成(平成23年6月1日)時点において、「NPO法人SMN」理事の大崎徹哉氏が代表権限を有していなかったから「確認書」は無効であり、本件商標登録出願の無効理由2(商標法第4条第1項第10号該当)は解消されていない。
さらに当該「確認書」作成(平成23年6月1日)時点を含む、平成23年5月1日ないし平成23年6月29日の間、「NPO法人SMN」は役員不存在の異常事態に陥っている事実が判明した。
このような状況の下で作成された無効の「確認書」を根拠として拒絶理由の解消を図る行為は、特許庁を欺罔して出願商標を登録せしめることであり、商標法第79条の詐欺の行為の罪に該当し、かかる商標登録は公序良俗(商標法第4条第1項7号)に違反する。
(2)商標法第4条第1項第10号及び商標法第4条第1項第11号該当性
登録査定時の出願人(トランスメディア株式会社)は、拒絶理由通知書における、「理由2 この商標登録出願に係る商標は、東京都千代田区外神田六丁目11番14-308号所在の『特定非営利活動法人学校マルチメディアネットワーク支援センター』が役務『映画に関するコンテスト・競技会・興行の企画・運営又は開催』について使用し、本願商標の登録出願前より取引者、需要者間に広く認識されている商標『映画甲子園』と同一または類似であり、かつ前記役務と同一又は類似の役務に使用するものと認めます。したがって、この商標登録出願に係る商標は、商標法第4条第1項第10号に該当します。」との指摘に対し、これを解消する目的で、「確認書」を根拠とした意見書を提出したところ、審査官は、当該出願人と「NPO法人SMN」とは協業事業者の関係にあり、他人の未登録周知商標との抵触関係は解消したと誤信し、商標法第4条第1項第10号に係る拒絶理由2は解消したものと認定した。
しかしながら、当該「確認書」が無効であれば、本件商標の商標法第4条第1項第10号該当性と同時に、無効の書証に基づく意見書の内容をもって、拒絶理由の解消を認定された拒絶理由3として通知された商標法第4条第1項第11号該当性も当然に維持される。
2 むすび
以上のとおり、本件商標は、その登録査定の時点(起案日:平成25年6月11日)において、商標法第79条の詐欺登録に該当し、同法第4条第1項第7号、同第10号及び同第11号に違反して登録されているものであるから、同法第46条第1項第1号により無効とされるべきものである。

第3 被請求人の主張
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証を提出した。
1 無効の主張について
(1)被請求人の権限
請求人は、本件確認書が作成された平成23年6月1日時点では、被請求人はNPO法人SMNの代表権限を有していなかったとするが、実際には、次に示すとおり代表権限を有していた。
すなわち、特定非営利活動促進法第24条第2項は、「・・・定款で役員を社員総会で選任することとしている特定非営利活動法人にあっては(α)、定款により、後任の役員が選任されていない場合に限り、同項の規定により定款で定められた任期の末日後最初の社員総会が終結するまでその任期を伸長することができる。(β)」としているところ、NPO法人SMNの定款第14条第1項で、「理事は・・・、総会において選任する。」と定めているので、(α)の要件を充たし、また、定款第16条第3項の「役員は、辞任又は任期満了後においても、後任者が就任するまでは、その職務を行わなければならない。」との定めは、(β)により、その内容のとおりの効力が認められることになる。
したがって、被請求人は、その職務権限に基づいて本件確認書を作成したものであるから、本件確認書は、最初から完全に有効である。
(2)「追認」構成
上記(1)で述べたように、本件確認書は最初から完全に有効である点で疑義がないが、かりに被請求人に代表権限がなかったとしても追認によって有効を導くことができる。
すなわち、無権代表者のなした法律行為が「無効」というのは、絶対的に無効というのではなく、法人(本人)の追認があれば、その法律行為の効果は有効かつ確定的に本人に帰属する(民法第113条参照)という意味での浮動的な無効である。
このように無権代表者のなした法律行為に対して追認の余地を認めるのは、「無効」との取扱が法人(本人)の利益保護にあることを端的に示すものである。
しかるところ、本件においては、本件確認書が作成されたとされる平成23年6月1日の時点では、法人登記上、一見代表権限がないように見える被請求人は、そのわずか約1か月後には理事に就任しているのである。
のみならず、本件確認書が無効とされれば、トランスメディア株式会社とNPO法人SMNは協業関係にないとの認定になるおそれがあり、そうなれば、本件確認書の相手方でありかつ「映画甲子園」の商標登録出願人であるトランスメディア株式会社の利益を損なうにとどまらず、同社から商標権移転の登録を受けたNPO法人SMNの利益をも損なうことになる。
これらのことから、NPO法人SMNは、被請求人が代表理事としてなした法律行為(=本件確認書作成)に対し、少なくとも黙示の追認をしたというべきである。
したがって、本件確認書作成当時、かりに被請求人に代表権限がなかったとしても追認によって有効となる。
(3)「公序良俗違反」の概念
請求人は、無効の本件確認書を根拠として拒絶理由の解消を図る行為は「詐欺の行為」(法第79条)であって法第4条第1項第7号公序良俗違反に該当すると主張する。
しかし、法第4条第1項第7号は、商標を構成する文字、図形、記号もしくは立体的形状もしくはこれらの結合またはこれらと色彩との結合(標章)それ自体が公序良俗に違反するような場合に、そのような商標について、登録商標による権利を付与しないことを目的として設けられた規定である。
本件商標は、それ自体として公序良俗違反ということはできないので、本件で、法第4条第1項第7号該当性を問題にする余地はない。
2 無効の主張権者
上記1(2)で述べたように、無権代表者のなした法律行為を「無効」とするのは、あくまでも法人(本人)保護のためである。
とすれば、法人(本人)の追認が認められる本件において、第三者である請求人は、「無効」を主張するだけの利益主体たりえないというべきである。
3 結論
請求人の無効の主張は、いずれも理由がないことに帰する。

第4 当審の判断
1 本件審判の請求の利益について
被請求人は、「請求人は無効(本件審判請求の利益)を主張しうる立場にない」との主張をしている。
そこで、当審において職権により調査したところによれば、請求人は、本件商標と類似する商標について登録出願(商願平2013-98729、同2013-98730)をしていることが認められ、また、当該登録出願は本件商標を引用した拒絶理由通知を受けていることが確認できるから、請求人は、本件審判の請求の利益を有するということができるものである。
よって、請求人は、本件審判の請求人適格有するものと認めるので、以下、本案に入って審理する。
2 商標法第4条第1項第7号該当性について
商標法第4条第1項第7号は、「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」につき、商標登録を受けることができないと規定しているところ、これに該当する商標には、「(a)その構成自体が非道徳的、卑わい、差別的、矯激若しくは他人に不快な印象を与えるような文字又は図形である場合、(b)当該商標の構成自体がそのようなものでなくとも、指定商品又は指定役務について使用することが社会公共の利益に反し、社会の一般的道徳観念に反する場合、(c)他の法律によって、当該商標の使用等が禁止されている場合、(d)特定の国若しくはその国民を侮辱し、又は一般に国際信義に反する場合、(e)当該商標の登録出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような場合等が含まれるというべきである。」と解されている(平成21年(行ケ)第10173号 知財高裁平成22年7月15日判決)。
そこで、上記判決の判示を踏まえて、本件商標をみるに、本件商標が上記の(a)ないし(d)に該当しないことは明らかであり、専ら(e)の場合が問題となるが、請求人による本件商標が同法第4条第1項第7号に該当するとの主張は、審査において拒絶理由を解消するために提出された証明書について特許庁を欺罔して本件商標の登録を得たと主張するものであるところ、審査において提出された「高校生のための文化の甲子園 事業協業の確認書」(甲4と同様)は、2011年(平成23年)6月1日付で作成されたものであり、「甲」として、「非営利特定法人 学校マルチメディアネットワーク支援センター」の「代表理事」として「大崎徹哉」の記名及び捺印がある。
そして、「NPO法人SMN」の履歴事項全部証明書(甲10)によれば、「大崎徹哉」は、平成21年4月30日に理事就任し、同23年4月30日にこれを退任、また、同6月30日に理事に就任し、同24年7月11日にこれを辞任、さらに、同25年1月21日に理事に就任して、現在に至っているものである。
そうとすれば、上記確認書が作成された2011年(平成23年)6月1日現在においては、「大崎徹哉」は、NPO法人SMNの「理事」ということができない。
しかしながら、「NPO法人SMN」の定款(乙1)によれば、その「(任期等)」(第16条)において、「3 役員は、辞任又は任期満了後においても、後任者が就任するまでは、その職務を行わなければならない。」と記載されていることから、同23年4月30日に理事を辞任した後、次に就任するまでの間、「NPO法人SMN」の「理事」としての職務を行うべき立場にあった者ということができる。
してみれば、「高校生のための文化の甲子園 事業協業の確認書」は、「NPO法人SMN」の理事の後任者が就任するまでの職務として、「大崎徹哉」が記名及び捺印したものであることから、本件商標の登録出願の経緯に、社会的相当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないものとはいえない。
してみれば、本件商標は、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標であるということはできないものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当しない。
3 商標法第4条第1項第10号該当性について
商標法第4条第1項第10号は、「他人の業務に係る商品若しくは役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標又はこれに類似する商標であって、その商品若しくは役務又はこれらに類似する商品若しくは役務について使用をするもの」については商標登録を受けることができない商標と定めている。
上記規定の趣旨は、特定人の業務等に係る商品等を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標について、同一又は類似の商品等につき、同一又は類似の商標の登録を上記特定人以外の者に認めたのでは商品等の出所を識別することが困難となり、商品流通秩序が損なわれるため、後者の商標登録を許さないとする点にある。
そうすると、上記規定の「他人」とは出願者以外の者を広く指称するものと解するのが相当であるところ、審査において提出された「高校生のための文化の甲子園 事業協業の確認書」(甲4と同様)は、「NPO法人SMN(甲)」、「スタジオ・ハードデラックス株式会社(乙)」及び登録査定時の出願人である「トランスメディア株式会社(丙)」との間で、2011年(平成23年)6月1日付で作成されたものであり、「【協業する活動内容】」には、「映画甲子園 インターネット、放送、出版、催事による顕彰と広報宣伝、活動促進と奨励。」と記載され、「【商標の登録と管理】」には、「・・・事業の協業が停止したときは、甲・乙・丙の三者は協議により商標の帰属先を決め、・・・商標権の譲渡を行う。」旨が記載されているものであるから、本件商標は、その登録査定時においては、登録査定時の出願人である「トランスメディア株式会社」と、「NPO法人SMN」及び「スタジオ・ハードデラックス株式会社」の三社の事業について使用される商標ということができる。
そうとすれば、本件商標は、上記規定にいう「他人の商標」に当たらないことは明らかである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当しない。
4 商標法第4条第1項第11号該当性について
(1)本件商標と審査において引用した登録第5509344号商標(以下、「引用商標」という。)との類否について
ア 本件商標は、上記第1のとおりの構成からなるところ、構成各文字は同じ書体、同じ大きさをもって外観上まとまりよく一体的に表され、また、これより生ずると認められる「エイガコウシエン」の称呼もよどみなく一連に称呼し得るものである。
そして、「映画」及び「甲子園」の文字部分とが上下二段に書されているとしても、まとまりよく表されている係る構成においては、両文字部分が分離して認識され、かつ、本件商標から「コウシエン」の称呼及び「兵庫県西宮市の一地区(株式会社岩波書店 広辞苑第六版)」の観念が生ずるということはできない。
もとより、本件商標を構成する「映画」の文字は「長いフィルム上に連続して撮影した多数の静止画像を、映写機で急速に(1秒間15こま以上、普通は24こま)順次投影し、眼の残像現象を利用して動きのある画像として見せるもの。(株式会社岩波書店 広辞苑第六版)」等の意味を有する語であり、「甲子園」の文字は「兵庫県西宮市の一地区」を意味する語ではあるが、本件商標全体としては、親しまれた既成の観念を有する熟語を形成するものではなく、一種の造語として認識し把握されるものとみるのが自然である。
そうすると、本件商標は、「エイガコウシエン」の一連の称呼のみを生ずるものであり、特定の観念を生じ得ないものというべきである。
イ 他方、審査において引用した登録第5509344号商標(以下「引用商標」という。)は、「甲子園」の文字を横書きしてなり、平成22年11月24日に登録出願、第41類「野球の興業の企画・運営又は開催,野球場の提供」を指定役務として、同24年7月20日に設定登録されたものであるところ、該構成文字に相応して、「コウシエン」の称呼、「兵庫県西宮市の一地区」の観念を生ずるものというべきである。
ウ しかして、本件商標から生ずる「エイガコウシエン」の称呼と、引用商標から生ずる「コウシエン」の称呼とは、称呼による識別において重要な語頭部おいて「エイガ」の音の有無に加え、その構成音及び構成音数が異なるものであるから、明瞭に区別することができるものである。
また、本件商標と引用商標とは、それぞれの構成に照らし、外観上判然と区別し得る差異を有するものであり、本件商標からは親しまれた既成の観念を生じない以上、観念上両者を比較することができず、類似するとはいえないものである。
してみれば、本件商標と引用商標とは、称呼、外観及び観念のいずれの点からみても相紛れるおそれのない非類似の商標というべきである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。
5 むすび
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第7号、同第10号及び同第11号に違反してされたものではないから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲(本件商標)





審理終結日 2015-03-27 
結審通知日 2015-04-01 
審決日 2015-04-16 
出願番号 商願2012-58396(T2012-58396) 
審決分類 T 1 11・ 261- Y (W41)
T 1 11・ 25- Y (W41)
T 1 11・ 263- Y (W41)
T 1 11・ 262- Y (W41)
T 1 11・ 22- Y (W41)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 杉本 克治 
特許庁審判長 井出 英一郎
特許庁審判官 今田 三男
田中 亨子
登録日 2013-07-19 
登録番号 商標登録第5599590号(T5599590) 
商標の称呼 エーガコーシエン、コーシエン 
代理人 高橋 利全 
代理人 特許業務法人共生国際特許事務所 

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