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審決分類 審判 全部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない 003
管理番号 1299416 
審判番号 取消2013-300129 
総通号数 185 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2015-05-29 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2013-02-18 
確定日 2015-03-09 
事件の表示 上記当事者間の登録第3349914号商標の商標登録取消審判事件についてされた平成25年12月27日付け審決に対し、知的財産高等裁判所において審決取消の判決(平成26年(行ケ)第10036号平成26年7月17日判決言渡)があったので、さらに審理のうえ、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
登録第3349914号商標(以下「本件商標」という。)は、「ランドリータイム」の片仮名を横書きしてなり、平成7年9月20日に登録出願、第3類「せっけん類,洗濯用でん粉のり,洗濯用ふのり,家庭用帯電防止剤,家庭用脱脂剤,さび除去剤,染み抜きベンジン,洗濯用漂白剤」を指定商品として、同9年10月3日に設定登録されたものであり、その後、同19年10月9日に商標権の存続期間の更新登録がされたものである。
そして、本件審判の請求の登録は、平成25年3月7日にされたものである。

第2 請求人の主張
請求人は、本件商標は、商標法第50条第1項の規定により、その登録を取り消す、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を請求書、弁駁書、平成25年8月16日付け口頭審理陳述要領書、同月26日付け口頭審理陳述要領書(2)並びに同年9月25日付け及び同年10月16日付けの上申書において、要旨以下のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第17号証(ただし、甲第3号証ないし甲第5号証は欠号。)を提出した。
1 請求の理由
本件商標は、その指定商品について、継続して3年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実が存しないから、商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきものである。
2 弁駁の理由
(1)背景
ア 請求人である株式会社サンワード(熊本県熊本市上通町2-30)(以下「請求人サンワード」という場合がある。)と、本件商標の権利者であり、被請求人である株式会社サンワード(以下「被請求人サンワード」という場合がある。)との関係性、及び被請求人の提出した各証拠について説明を行い、被請求人の主張する本件商標の使用が商標法第50条第1項に規定する本件商標の使用には該当しないことを明らかにする。
イ 請求人の会社沿革について
甲第6号証は、請求人サンワードの会社案内の冊子である。甲第6号証の第2頁目左欄及び第3頁目右欄には、請求人の「家庭用ドライクリーニング溶剤」の商品の変遷が記載されている。ここには、「1981?/昭和56年1月 ハイ・ソープ」に始まり、「2008?/平成20年3月 製品リニューアル」までの流れが記載され、商品「ハイベック」シリーズが複数回にわたって製品リニューアルがなされてきたことが明らかである。
また、上記冊子の第3頁目左欄の「ハイ・ベック ランドリータイム」の商品写真の記載から明らかなように、本件商標と同一又は実質同一の表記がなされた洗濯用洗剤が存在することが分かる。
さらに、上記冊子の第3頁目右欄の下から2段目に「2007?/平成19年4月 新体制スタート<4月3日本社設立>」と記載され、請求人が平成19年4月から熊本に本社を設立し、新体制として、衣類用洗剤の製造販売を行っている事実が存在する。
なお、平成19年4月からの新体制として業務を開始している点は、上記冊子の第4頁目の会社概要の記載からも明らかである。
ウ 被請求人からの営業譲渡
甲第6号証に記載された平成19年4月の新体制による業務開始に関連して、同年8月31日付けで作成された営業譲渡契約書の写し(甲第7号証)を提出する。甲第7号証は、被請求人サンワードから、請求人サンワードへの営業権の譲渡に関する契約書である。甲第7号証から、請求人サンワードは、被請求人サンワードから平成19年8月31日に営業権の譲渡を受けて、営業を行っているものであることが明らかである。
エ 商品の製造委託について
請求人サンワードは、創業当初から、キイワ産業株式会社(東京都武蔵村山市榎2-84-5。以下「キイワ産業」という。)に対して洗濯用洗剤を含む商品の製造委託を行い、パッケージによる梱包までキイワ産業が行っている。また、請求人はキイワ産業にのみ製造を委託すること、及び製造した商品は請求人にのみ納品することを規定した事実の存在が製造委託契約書の写し(甲第8号証)の記載から明らかである。キイワ産業との間の製造委託契約については、請求人が被請求人から営業譲渡を受けた平成19年9月以後も同様であり、また、キイワ産業は、請求人の新体制による営業開始時から、製造した製品を請求人にのみ納品している事実が存在し、この点は、甲第9号証の上申書からも明らかである。すなわち、請求人の新体制の開始以後は、乙第1号証に記載された商品については、キイワ産業のみがパッケージ・梱包までの製造を行い、製造された商品は、請求人のみが入手できた状況にあったということになる。
以上の点を踏まえて、被請求人の主張に対して、意見を述べる。
(2)商標の使用主体について
被請求人は、本件商標の使用主体として、商標権者及び通常使用権者が存在することを主張している。
しかしながら、被請求人が提出した各証拠から商標権者が本件商標を使用した事実は確認できず、また、本件商標の登録原簿写し(甲第1号証)に本件商標に係る専用使用権者に関する記載がないことから、専用使用権者が存在しないことは明らかである。
よって、商標権者及び専用使用権者が、本件審判の請求の登録前3年以内(以下「要証期間内」という場合がある。)に、日本国内において、その指定商品について本件商標の使用をしている事実は存在しないものと判断されるべきである。なお、請求人は、本件商標を含めて、商標権者から営業権の譲渡を受けたものであり、商標権者が許諾した本件商標権の通常使用権者には該当しない。
また、本件商標に係るその他の通常使用権者についても記載がないことから、その他の通常使用権者が存在しないものと考えられる。
(3)インターネット上のホームページの記事(乙第1号証の1ないし3)について
乙第1号証の1ないし3に該当するホームページは、請求人が作成し、現在も使用しているホームページであり、商標権者又は通常使用権者に係るものではない。この点は、乙第1号証の3の第1頁目の「サンワード会社概要」の本社住所の欄が請求人の「熊本市上通町2-30」である点、創業が「平成19年4月3日」である点、代表取締役が請求人における代表取締役「山家宏輝」である点、自社工場の欄の住所「武蔵村山市榎2-84-5」が上述した製造委託をしているキイワ産業の住所である点などから明らかである。なお、請求人における代表取締役の氏名は、甲第6号証ないし甲第9号証に記載された代表取締役の氏名と同一である。
また、乙第1号証の3の第2頁目の「サンワード会社沿革」の欄にも「平成19年(2007年) (株)サンワード(本社・熊本)設立」と記載があり、この点からも、乙第1号証の1ないし3に係るホームページが請求人の使用するものであることが明らかである。
(4)小括
以上のとおり、本件商標権者、専用使用権者又は通常使用権者が、本件審判の請求の登録前3年以内に、日本国内において、その指定商品について本件商標の使用をしている事実は存在しない。
3 被請求人の主張並びに平成25年8月5日付けの答弁書(第2回)及び口頭審理陳述要領書に対して
(1)被請求人の主張に対しての意見
ア 緒言
請求人サンワードは、被請求人サンワードとは別個の独立した法人として、平成19年に設立された会社である(甲第12号証)。
また、平成19年8月31日付けで、被請求人サンワードから請求人サンワードへの営業権の譲渡がなされた(甲第7号証)。本件商標の請求人による使用は、営業権を有することを前提としたものであり、請求人のホームページ(乙第1号証)や、請求人の会社案内の冊子(甲第6号証)も、請求人の商品の出所を表示するものとして本件商標を使用している。
よって、被請求人の通常使用権者として、すなわち、本件商標を被請求人に係る商品の出所を表示するものとして請求人が使用した事実はなく、請求人の自己の商品に係るものとして、平成19年の会社設立当初から、本件商標を継続的に使用してきたものである。
イ 許諾による通常使用権について
商標法における通常使用権は、商標権者が他人にその商標権について使用の許諾をすることにより発生するものであり、例えば、商標登録原簿に登録されることが効力を生ずる要件とはなっていない(商標法第31条第4項で準用する特許法第99条第1項)ことから、商標登録原簿への登録がなくとも、当事者間の契約のみにより有効に成立し得るものである。
しかしながら、請求人と被請求人との間には、本件商標の通常使用権に関する明確な契約がなされた事実はなく、この契約に付随すべき契約書等の書面も存在しない。
また、通常使用権の許諾自体は、契約書等が存在せずとも、許諾自体が口頭の契約であっても有効とされる場合や、事実関係を考慮した上で黙示の許諾がなされたことが認められる場合があるが、本件商標について、請求人は本件商標における通常使用権者に該当しないことが、以下に示す理由から、明らかである。
(ア)営業譲渡を前提とした使用であること
請求人は、上述したように、被請求人からの営業譲渡が行われたことを前提に、事業活動を行い、自己の商品の出所を示すものとして本件商標の継続的な使用を行っている。請求人による事業活動は、被請求人とは全く無関係に行われているものであり、営業譲渡以後は、請求人と被請求人との間に緊密な関係が存在していない。
よって、請求人と被請求人との間に使用許諾の事実は存在せず、請求人による本件商標の使用は、通常使用権者による使用には該当しないものと判断されるべきである。
(イ)請求人が被請求人とは独立した法人であること
請求人は、被請求人との関係において、別個の独立した法人であり、これを示すものとして、請求人における履歴事項全部証明書の写し(甲第12号証)を証拠として提出する。
具体的には、請求人と被請求人との間に資本関係はなく、いずれかが子会社に該当する関係にもないものであって、請求人が発行する株については、そのすべてを請求人の代表者が保有し、被請求人による出資は一切存在しない。
また、請求人における取締役は、請求人の代表者1人のみであり、被請求人の関係者が経営に携わっている事実は存在しない上、請求人と被請求人とでは、代表者及び本社所在地が異なっている。
さらに、請求人は、被請求人の商品の製造を行っていた会社との間で新たに製造委託契約を結び(甲第7号証)(審決注:甲第8号証の誤記と考える。)、製造を委託された会社は、請求人との契約以後は、請求人にのみ商品の製造、納品を行っていることが明らかである(甲第9号証)。
なお、請求人が、被請求人の代表者に対し、請求人が取り扱う商品の販売促進を目的として、コンサルタント業務を委託していた時期があるが(甲第10号証)、このコンサルタント業務は、例えば、甲第11号証に示す「お洗濯ガイド」を用いて、商品の購入者に向けて洗濯に関する啓蒙活動を行い、商品の購入につなげる活動といった内容であり、請求人の実質的な経営に関係する業務を行っていたものではないから、被請求人の関係者が請求人の経営に携わっていた事実は存在しない。
以上のとおり、請求人と被請求人とは、明確な別法人であり、両者の間に、本件商標に関する通常使用権の黙示の許諾が認められるような事実関係は存在しない。
(ウ)被請求人による商標の使用に関する管理
請求人は、甲第6号証の第3頁目右下欄の「2008? 製品リニューアル」の項目にあるように、営業権の譲渡後の平成19年以降に、製品のリニューアルを行い、自社商品に本件商標を付して、新たな商品の提供を行っている。新たな製品に関する本件商標の使用は、被請求人とは全く無関係に行ったものである。
また、被請求人は、平成20年3月以降の製品リニューアル時にも、本件商標の使用に際して、登録商標の使用状態の確認や、リニューアル製品における登録商標の表記に関する提案といった、商標権者ならば当然に行うべき、許諾した登録商標の管理に関する行為を一切行っていない。
以上のことから、被請求人は、本件商標の使用許諾をした商標権者であるとは到底いえず、請求人と被請求人との間に、本件商標に関する通常使用権の黙示の許諾が認められるべき事実が全く存在しないことは明らかである。
(エ)契約の事実が存在しないこと
請求人と被請求人との間には、本件商標の使用許諾に関する契約書は存在せず、使用範囲や使用時期についての取り決めも存在しない。また、本件商標の使用に関する使用料に関する規定や、支払の事実も存在しない。
ここで、関連子会社等への使用許諾であれば、無償で通常使用権を設定する場合も考えられるが、請求人は被請求人との間で子会社には該当しないため、無償での使用を認めたケ-スではないと考えるのが自然である。
(2)平成25年8月5日付けの答弁書(第2回)及び口頭審理陳述要領書に対しての意見
ア 乙第1号証について
乙第1号証に該当するホームページは、請求人が作成し、現在も使用しているホームページであり、口頭審理陳述要領書において、被請求人もこの点を認めている。被請求人は、本件商標の通常使用権を請求人に黙示に許諾したことを根拠に、乙第1号証を本件商標の使用事実であると主張しているが、上述したように、請求人は、本件商標の通常使用権者には該当しない。乙第1号証は、請求人が自己の商品を紹介するために使用するホームページであり、本件商標を被請求人に係る商品の出所を表示するものとして請求人が使用したものではない。
また、当該部分に関連して、被請求人は、平成25年8月5日付け答弁書(第2回)において、「このような本件商標権の通常使用権許諾の事実は、請求人自身、上記甲第6号証のみならず、乙第1号証の1ないし3による本件商標の使用により、自認している。」と記載しているが、意味不明な主張である。請求人による甲第6号証及び乙第1号証は、いずれも請求人が自己の会社、事業内容及び商品について説明するために使用しているものであり、被請求人とは全く無関係な資料であるから、甲第6号証及び乙第1号証の使用が通常使用権の許諾の自認につながるとの論理構成は、上述した事実関係を全く無視したものであり、不自然極まりない主張である。
よって、乙第1号証を根拠に、本件商標の使用に該当するとの被請求人の主張は、全くの失当である。
なお、口頭審理陳述要領書の第2頁に記載された「アドレス(http://www.sunwardo.co.jp/)」については、正確な表記は「sunward」であり、このような誤記を行う点からも、被請求人が請求人と緊密な関係にないことを示している。
通常使用権者について
口頭審理陳述要領書において、被請求人は、請求人が通常使用権者であると主張している。
しかしながら、これまで重ねて言及しているように、請求人と被請求人との間に使用許諾の事実はない。
よって、被請求人の「請求人である株式会社サンワードが通常使用権者である」との主張は、全くの失当である。
ウ 営業譲渡について
請求人の事業活動は、被請求人からの営業譲渡を前提に行われているものであり、甲第7号証により、営業譲渡の事実が存在するものであることは明らかである。
また、被請求人は、口頭審理陳述要領書において、「被請求人(本件商標権者)が、本件商標権を請求人に譲渡した事実が無いことを疎明するために、被請求人(本件商標権者)作成の乙第2号証『意匠及び商標の使用中止を求める通告書』及び、請求人作成の乙第3号証『通知書』を提出する。」と記載している。
ここで、乙第2号証は、甲第7号証に示された営業譲渡契約の後に、被請求人が請求人に向けて送付したものであり、この通告書の内容及び通告した事実をもって、本件商標を請求人に譲渡した事実が無いとの証明になるものではなく、また、請求人が被請求人に向けて返送した乙第3号証の通知書にも、営業譲渡がなされたことに関する記載が存在し、例えば、「平成19年8月31日に営業譲渡契約書を締結し(・・・中略)、営業の全部を譲り受けました。」との記載があることからすれば、むしろ、乙第3号証に記載の内容は、これまでに請求人が示してきた事実、すなわち、甲第7号証の営業譲渡契約が存在したことを裏付けるものとなっている。
さらに、当該部分に関連して、被請求人は、平成25年8月5日付け答弁書(第2回)において、「被請求人は、請求人に対し口頭により認めた営業譲渡に基づき、本件商標権について、黙示の通常使用権を認めている。」と記載しているが、請求人は、被請求人との間で、口頭による営業譲渡をなされた事実は一切なく、適法に甲第7号証に示す営業譲渡契約を結んだ上で、譲渡を受けたものである。
4 平成25年9月13日付け上申書に対して
(1)甲第7号証及び甲第14号証に対しての意見
被請求人は、上申書の第4頁目第1行において、「甲第7号証及び甲第14号証は被請求人会社が請求人会社に預けておいた社判を利用して請求人が勝手に作成した虚偽文書・偽造文書と主張しているところのものである。」としており、甲第7号証及び甲第14号証の成立を否認している。
しかしながら、民事訴訟法第228条第4項には、「私文書は、本人又はその代理人の署名又は押印があるときは、真正に成立したものと推定する。」と規定され、書類に本人の印鑑による押印があれば、本人の真意に基づいて本人が作成したものと推定されることは明らかである(甲第15号証、昭和39年(オ)第71号/最高裁判所第三小法廷判決)。
本件についても、被請求人は、上申書において、甲第7号証及び甲第14号証の押印が被請求人の社判であることを認めており、この点を考慮すると、甲第7号証及び甲第14号証は、被請求人の意思に基づいて作成されたものと判断されるべきである。
よって、被請求人の主張は失当であり、甲第7号証及び甲第14号証は、その成立が否認されるものではない。
(2)被請求人のその他の主張に対しての意見
被請求人による上申書の記載は、いずれも商標法第50条第1項に規定する商標の使用に関するものではなく、登録商標の使用を立証する内容とはなっていない。
(3)甲第8号証に相当する証拠に対しての意見
請求人は、甲第8号証「製造委託契約書の写し」に相当する書類を甲第16号証として提出する。
5 平成25年10月16日付け上申書による甲第17号証の提出
請求人は、本件に関する証拠資料の甲第17号証として、平成24年(ワ)第430号商標権等移転登録手続請求事件に関する熊本地方裁判所民事第2部による平成25年10月9日付け判決言渡の原本の写しを提出する。

第3 被請求人の主張
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を平成25年4月16日付け答弁書、同年8月5日付けの答弁書(第2回)及び口頭審理陳述要領書、同年9月13日付け上申書並びに同年10月1日付け上申書2において、要旨以下のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第15号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 答弁の理由
本件商標については、その商標権者(被請求人)又は通常使用権者が、要証期間内に、日本国内において、その指定商品について、本件商標の使用をしている事実がある。
以下に、証拠方法に基づいて具体的に説明する。
(1)本件商標権者である被請求人サンワード又はその通常使用権者(以下「当社」という。)が、本件商標を当社商品「洗濯用洗剤」(せっけん類)について広告情報として使用した一例として、当社のインターネット上のホームページの記事の抜粋を提出する(乙第1号証の1ないし3)。
当社は、乙第1号証に係る当社ホームページの当社製品の広告情報の頁である「HOME」の頁(乙第1号証の1)の下段右欄の右端において、当社が製造販売する商品「洗濯用洗剤」(せっけん類)について、片仮名で「ランドリー・タイム」と横一連に本件商標と実質同一の商標を付して使用している。
また、上記当社ホームページの「商品紹介」の頁中、「トリートメントドライシリーズ」の頁(乙第1号証の2)の中段右において、上記と同様の本件商標と実質同一の商標を付して使用している。
さらに、上記頁(乙第1号証の2)の上段右端及び中段の商品説明の欄には、当社が製造販売する商品「洗濯用洗剤」(せっけん類)について、片仮名で「ランドリータイム」と横一連に本件商標と同一の商標を付して使用している。
(2)乙第1号証の1ないし3は、その各頁の下端に表記されているとおり、2013年4月10日付けにて、表記ホームページのアドレスからダウンロードしたものである。しかして、その「HOME」の頁(乙第1号証の1)の中段に「ハイ・ベック通信2009年春夏号(2009-06-11)」と記載され、また、会社概要の頁(乙第1号証の3)の記載からも、乙第1号証の1ないし3は、要証期間内を含め今日に至るまで継続して、当社が上記当社商品「洗濯用洗剤」(せっけん類)の広告情報として、継続して使用していたことは、明らかである。
(3)以上説明したように、本件商標は、その商品「洗濯用洗剤」(せっけん類)について、当社商品の広告情報(乙第1号証)に付して、要証期間内に、日本国内において、継続して使用をしている。
2 平成25年8月5日付けの答弁書(第2回)及び口頭審理陳述要領書の理由
(1)甲第6号証ないし甲第9号証に基づく請求人主張の弁駁理由について
ア 甲第6号証ないし甲第9号証の認否について
甲第6号証の成立は、認める。甲第7号証の成立は、否認する。甲第8号証及び甲第9号証は、不知である。
イ 甲第6号証に基づく請求人の主張理由について
(ア)甲第6号証は、請求人サンワードの会社案内の冊子であり、その第3頁右欄下部において、「2008/平成20年3月? 製品リニューアル」と記載されていることからも、要証期間内に、請求人自身、商品の広告として頒布して使用していたものであることが分かる。
しかして、この甲第6号証の第3頁左欄の中段には、商品「洗濯用洗剤」の包装に、本件商標と実質的に同一の標章「ランドリー・タイム」が記載されて使用されていたことが示されている。
(イ)被請求人は、本件商標権の通常使用権を、黙示により、請求人に対して許諾している。本件商標権の通常使用権許諾の事実は、請求人自身、甲第6号証による本件商標の使用により、自認している。
このように、上記甲第6号証による本件商標の請求人の使用は、本件商標権の通常使用権に基づく使用である。
(ウ)以上の事実からも、本件商標については、その通常使用権者(請求人)が、要証期間内に、日本国内において、その指定商品について、本件商標の使用をしている事実が、請求人提出の甲第6号証によっても証明されている。
ウ 請求人は、営業譲渡契約書(甲第7号証)の存在により、本件商標権も請求人に帰属したはずだと主張しているようであるが、被請求人が、本件商標権を請求人に譲渡した事実は全く無い。請求人の主張は、法律を無視した無法な主張であって、成り立たないことは明らかである。
被請求人は、請求人に対し口頭により認めた営業譲渡に基づき、本件商標権について、黙示の通常使用権を認めている。
なお、被請求人が、本件商標権を請求人に譲渡した事実が無いことを疎明するために、被請求人作成の乙第2号証「意匠及び商標の使用中止を求める通告書」及び請求人作成の乙第3号証「通知書」を提出する。被請求人は、乙第2号証「意匠及び商標の使用中止を求める通告書」により、要証期間内である平成24年2月22日付けで、請求人に対し、それまで黙示で認めていた本件商標権の使用中止を求めた事実がある。
(2)乙第1号証の1ないし3に基づく請求人主張の弁駁理由について
ア 請求人は、「乙第1号証の1ないし3に該当するホームページは、請求人が作成し、現在も使用しているホームページであり、」と述べているが、被請求人は、これを認める。
甲第6号証の第4頁下欄に記載されている「株式会社サンワード」のURL(インターネット上のホームページ)のアドレス(http://sunwardo.co.jp/)が、乙第1号証に係るインターネット上のホームページのアドレスと一致している。このような事実からも、乙第1号証が、要証期間内に、日本国内において、その指定商品について、本件商標の使用をしている事実を証明する証拠であることが認められる。
イ 被請求人は、上述したように、本件商標権の通常使用権を、黙示により、請求人に対して許諾している。本件商標権の通常使用権の許諾の事実は、請求人自身、甲第6号証のみならず、乙第1号証の1ないし3による本件商標の使用により、自認している。
このように、上記乙第1号証の1ないし3による本件商標の請求人による使用は、本件商標権の通常使用権に基づく使用である。
ウ 以上の事実からも、本件商標については、その通常使用権者(請求人)が、要証期間内に、日本国内において、その指定商品について、本件商標の使用をしている事実が証明されている。
3 平成25年9月13日付け上申書及び同年10月1日付け上申書2の理由
(1)営業譲渡契約書(甲第7号証)及び営業譲渡目録(甲第14号証)について
ア 甲第7号証及び甲第14号証の認否について
(ア)甲第7号証及び甲第14号証の成立は、否認する。
甲第7号証及び甲第14号証を対比するに、甲第14号証の営業譲渡目録は、甲第7号証の営業譲渡契約書第2条で定める譲渡する営業内容の別紙目録と目されるところ、それは、現に請求人を原告とし、被請求人及び別件商標権の権利者である小滝悦子を被告とする、熊本地方裁判所平成24年(ワ)第430号商標権等移転登録手続請求事件(以下「熊本事件」という。)における甲第1号証として、本件の上記甲第7号証と甲第14号証とを同一体のものとして(すなわち、甲第14号証は甲第7号証の別紙目録として)証拠申請されているものである。
しかしながら、これを書式的に見れば、甲第7号証と甲第14号証とは、それぞれ独立した文書とも思われるものであるが、甲第7号証も甲第14号証も縦上下の契印が打たれているようではあるものの、横左右の契印が無いことは、不可解である。すなわち、常識的には甲第7号証単独であっても2頁二葉にわたるものであるから、ホッチキス留めして横左右の契印がなければならないのに、これが無く、甲第14号証も同様である。
(イ)本件第1回口頭審理(以下「本件口頭審理」という。)において、甲第7号証の原本を確認した際、その原本にはホッチキス痕は無かった。また、甲第14号証の原本確認をしようとしたところ、請求人の代表者は、その原本は熊本事件の代理人弁護士の手元にあると発言し、それを持参していなかったので、その原本確認(ひいては、そのホッチキス痕の有無の確認)ができなかった。
そこで、甲第14号証の原本確認を求めたところ、請求人代理人から当該証拠を取り下げる旨の発言があったが、審判長は、その取下げを認めていない。
(ウ)被請求人は、甲第7号証及び甲第14号証について、被請求人が請求人に預けておいた社判を利用して、請求人が勝手に作成した虚偽文書・偽造文書であると主張しているものである。これらの証拠は、いずれも縦上下の契印の存することから、複数の部数(常識的には当事者用の2部と推測される。)のものが作成されたと思われるところ、請求人は、熊本事件において、そのうちの1部は被請求人の代表者が持ち帰った旨主張している。
しかしながら、請求人による上記主張は事実に反するものであり、被請求人の代表者はその書面の存在を全く知らずにいたものであって、本件当事者間に紛争の生じた後の2012年(平成24年)2月21日に至って初めて、キイワ産業からのファックス送信文書としてこれを知ったというのが現実である(乙第4号証の陳述書「7.」並びに別添(5)の1及び2のファックス参照。乙第4号証は、熊本事件において、乙第14号証として提出中のものである。)。
イ 甲第7号証及び甲第14号証に基づく請求人の主張について
仮に、甲第7号証及び甲第14号証の成立が認められたとしても、本件商標権が請求人に譲渡されたとの請求人の主張は、以下に述べる理由により、証拠がなく、認められない。
(ア)甲第7号証(営業譲渡契約書)の第2条には、「第2条 前条の営業譲渡実行日は、平成19年9月1日とし、本契約により譲渡する営業内容および対価は、別紙目録通りとする。」と記載されている。この記載の「別紙目録」であるとして、請求人が提出した、甲第14号証(営業譲渡目録)には、「2.知的所有権に関するもの・・・(中略)・・・特許・実用新案・商標・意匠にかかわらず特許庁認可のもの全て ・特許庁申請中のもの全て・・・(中略)・・・」と記載されている。
商標権の譲渡は登録されなければ効果がなく(特許法第98条第1項第1号(商標法第34条第4項によって準用))、その商標権の譲渡登録は、具体的な登録商標権の特定がなされなければならないが、甲第7号証及び甲第14号証には、肝心の商標権が特定されていない。
したがって、甲第7号証及び甲第14号証によって、本件商標権が請求人に譲渡されたとの請求人の主張は成り立たない。
(イ)本件口頭審理において、審判長から、請求人に対し、本件商標を譲り受けたにもかかわらずその移転登録を長期間にわたりしていない理由の説明が求められたところ、請求人代理人は、「移転登録には費用がかかるので、登録商標が順次更新時期を迎えるごとに、請求人名義で新規登録を受けた」旨釈明した。その後、審判長は、本件口頭審理に係る登録商標の中には請求人が譲渡を受けたとする事後に更新時期を迎えたものがあるとした上で、請求人に更なる説明を求めたが、請求人は何ら応答していない。
このような請求人の対応は、請求人が真に本件商標の譲渡を受けていなかったことの現れ以外の何物でもない。
(ウ)甲第7号証及び甲第14号証は、被請求人の営業が請求人に譲渡されたとの趣旨の文書であるところ、当該営業譲渡の対価についての規定らしきものとしては甲第7号証の第2条が存するが、その別紙としての対価目録がなく、他方、営業譲渡目録は甲第14号証として存することに対比して、営業譲渡契約書としては極めて不自然である。甲第7号証及び甲第14号証は虚偽文書であるが、当事者間の口頭による当該営業譲渡に伴い(乙第4号証の陳述書「6.」並びに別添(2)「10年先を見据えたハイベックについて」及び(4)「初心不可忘の決意」参照)、本件商標権を含む、被請求人所有の商標権の「通常使用権」を、被請求人が請求人に黙示で認めたことを請求人が一方的に文書化したことを示すものと推定される。これは、現に請求人が甲第6号証のホームページで本件商標を商品の販売広告に「通常使用」している根拠とせんとしたものである。また、請求人は、本件商標を使用した商品を平成23年度に年間84万8784円販売している(乙第9号証の2の上申書参照。これは、請求人が熊本事件の訴額算定のために提出した上申書である。)。
(エ)上記のとおり、本件営業譲渡契約に対価目録が無いこと、すなわち、対価の額又は範囲が明確に定められていないにもかかわらず、その対価として位置付けられる本件商標権の被請求人の金融機関に対する金融負債合計8300万円余りについては、これを対価から除外して被請求人の代表者である小滝悦功が個人的に責任をもって支払う旨の「覚書」が平成19年9月25日付けで被請求人の社判、代表印をもって作成され、熊本事件における甲第8号証として提出されているのであるが、これも被請求人の作成したものではない虚偽・偽造文書である。
被請求人は、上記「覚書」を乙第5号証として提出する。この覚書は、被請求人の代表者である小滝悦功が個人的に責任をもって支払う旨の文書でありながら、第1に肝心の同人の署名、捺印の無いものであり、第2に被請求人会社の社判は、本件口頭審理において審判長からも疑義の指摘されたコンサルタント業務契約書(甲第10号証)と同一のものである。請求人は、本件口頭審理において、当該社判について「古くなったので作り直した」旨の発言をしているが、当該社判は営業譲渡契約書(甲第7号証)が作成されたわずか25日後の文書作成に使用されているのであるから、請求人による当該発言は明らかに不自然なものである。
また、請求人は、熊本事件において、上記営業譲渡契約書の作成日を、当初、その文書上の作成日である平成19年8月31日と主張していたが、その後、被請求人の主張を受けて、上記「覚書」(乙第5号証)と同じ頃の平成19年9月末頃の作成である旨の主張に変更しているところ、そうとすれば、金融負債外しの「覚書」は、「覚書」として別途作成されるのではなく、当該営業譲渡契約書と一体としての対価目録なり何なりに定められるべきであるのに、わざわざ当該営業譲渡契約書の社判と違う社判を使って別途作成された動機ないし必要性も甚だ疑わしいといわなければならないことになる。
そして、上記「覚書」は、その前文の被請求人の住所と末尾社判の住所も異なっている等、誠にずさんにして不可解なものである。
さらに、請求人は、上記「覚書」に被請求人の代表者である小滝悦功個人の署名、捺印が無いとの点について、これは法人間の覚書であるから個人の署名、捺印は不要との、小滝悦功個人に責任を負わせようとするその作成意図に反する主張をしているが、そうとすれば、当該「覚書」の当事者である法人としての請求人の表記、表示の無いことが不備として指摘し得る。
加えて、請求人は、平成19年9月25日に「覚書」が請求人の社内で被請求人の代表者も係わって作成されたと主張しているが、これについては、被請求人の代表者にアリバイ(不在証明)があり、また、その前後に同様にして上記営業譲渡契約書が作成されたとの請求人の主張も、その頃の被請求人の代表者のスケジュール上、これまた不可能であることも立証されている(乙第6号証の報告書I.ないしIII.並びに別添チケット等参照。これは、熊本事件において、乙第23号証として提出中のものである。)。
したがって、この作成年月日の一点からだけでも、甲第7号証及び乙第5号証のいずれも被請求人の関与せざる虚偽・偽造文書であることは明らかなものである。
(オ)以上のように、甲第7号証の営業譲渡契約書及び甲第14号証の営業譲渡目録は、書式的非整合性、作成経緯及び実質的対価の人為的策謀等あらゆる点からして、当事者間で真正に成立したものとは認められないものであるから、これを根拠とする請求人の本件商標権の譲渡を受けたとの主張は、成り立たない。
(2)コンサルタント業務契約書(甲第10号証)について
甲第10号証の成立も、否認する。
甲第10号証には、被請求人(乙)の住所が記載されておらず、この種「コンサルタント業務契約書」としては、取引の常識に反しており、不自然であって、偽造されたものである。当該文書で使用されている被請求人の社判は、甲第7号証で使用されているものと明らかに相違するものである。
また、仮に甲第10号証の成立が認められたとしても、本件商標権が請求人に譲渡されたとの請求人の主張を証明するものではなく、商標の通常使用を認められたことに対する費用ないし対価の支払いが認められるにとどまるものである。
(3)被請求人の「履歴事項全部証明書」について
被請求人の「履歴事項全部証明書」(乙第7号証)を提出する。
また、本件商標の商標登録原簿上の被請求人の住所を被請求人の現住所に一致させるべく、登録名義人の表示変更登録申請書(乙第8号証)を特許庁に対して提出する。
(4)商標登録移転請求事件について
ア 請求人は、本件商標等の継続した3年以上の不使用を理由として、取消しを求めている本件商標「ランドリータイム」並びにほかの2件「トリートメントドライ」及び「ハイ・ベックドライ」の各登録商標が、現実には有効に存続していることを大前提として、それらを請求人に移転登録すべしとして、被請求人及び別件商標権の権利者である小滝悦子に対し、熊本事件を提訴している(乙第9号証の1)。
また、請求人は、登録商標「ランドリータイム」を使用した商品を平成23年度に84万8784円、同じく、「トリートメントドライ」を使用した商品を1280万8752円、同じく、「ハイ・ベックドライ」を使用した商品を333万2880円、それぞれ販売していることを自認し、これを熊本地方裁判所に上申している(乙第9号証の2)。
この熊本事件は、請求人の本件審判の請求と全く相反する矛盾したものであって、これは取りも直さず、被請求人から黙示で許諾された自己の「通常使用」の事実を認めた上での被請求人及び別件商標権の現権利者に対する各商標登録移転請求といわなければならないものである。
仮に、そうでないとすれば、請求人は、本件審判の請求書の取消事由で「本件商標は、その指定商品について、継続して3年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実が存しないから、商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきものである」と主張しているのであるから、かかる観点から、先の請求人のホームページでの広告使用、そして商品販売での(容器等への商標のラベル印刷物の貼付等による)使用は、どんな何の根拠に基づくものか明らかにすべきである。
イ 請求人は、別途、平成24年7月5日に、東京地方裁判所立川支部へ「株主総会招集許可申請書」を提出(乙第10号証、平成24年(ヒ)第29号株主総会招集許可申請事件)し、請求人が被請求人の大株主になったとする被請求人の作成になるとした株主名簿(乙第11号証)及び株式譲渡承認の臨時株主総会議事録(乙第12号証)を提出したが、その後の被請求人による当該名簿及び議事録が虚偽文書であるとの指摘及び担当裁判官からの取下げ勧告を受けて、平成25年2月7日付けで取下書を提出した。
被請求人は、上記臨時株主総会議事録と株主名簿の偽造を立証するための被請求人の本来的正規なものの写真撮影報告書(乙第13号証)及び上記取下書とその送達用封筒(乙第14号証の1及び2)を提出する。
ウ 上記のとおり、請求人は、裁判所に対してすら虚偽・偽造文書を書証として提出してはばかるところがないのであって、それは、本件審判における審理においても変わるところはなく、甲第7号証の営業譲渡契約書及び甲第14号証の営業譲渡目録も虚偽・偽造文書にほかならないのである。
なお、請求人は、上記株主総会招集許可申請事件に係る申請を取り下げて間もなく、平成25年2月18日に本件審判を請求すると同時に、本件審判により取消しを求めた「ランドリータイム」、「トリートメントドライ」、「ハイ・ベックドライ」の各商標について登録出願をしている。
(5)「意匠及び商標の使用中止を求める通告書」(乙第2号証)について
被請求人は、乙第2号証により、要証期間内である平成24年2月22日付けで、請求人に対し、それまで黙示で認めていた本件商標権の使用中止を、本件商標権を特定して求めた事実がある。
しかして、乙第2号証に記載された被請求人の住所「相模原市中央区横山台1丁目19番8号」は、被請求人の「履歴事項全部証明書」(乙第7号証)に記載されている被請求人の代表者である小滝悦功の住所であって、被請求人の営業所であることを付言する。
(6)甲第15号証について
請求人が提出する甲第15号証の判例は、一般的判示である。民事訴訟法第228条第4項の推定規定は、事実上の推定にとどまるのであって、その押印が本人の意思に基づいてなされたことを疑わせるほかの証拠があるときは、裁判所は、自由心証に基づいてその推定を破り、文書の真正な成立を否定することができるのは当然であり、法人が第三者たる法人に会社印及び代表者印を預託した場合に、第三者たる法人がこの預託された印章を使用して手形等を振り出したケースで、真正な成立の推定を破り、その成立を否定した判断を是認した最高裁判決(昭和47年10月12日第一小法廷)があるので、被請求人は、これを乙第15号証として提出する。

第4 当審の判断
1 商標権者について
本件商標の商標登録原簿によれば、本件商標の商標権者については、「株式会社サンワード 」(東京都日野市百草141番地の101)を商標権者とするものであることが認められ、商標権の移転の登録はなされていない。
2 被請求人提出の証拠によれば、以下の事実が認められる。
「インターネット上のホームページ(写し)」(乙第1号証の1)には、「ハイ・ベック商品ラインナップ」の見出しの下、「ドライマークのお洗濯はハイベックで!簡単・キレイ・自動洗濯機で洗えて仕上がりもプロ並み。」の記載があるとともに、「ハイ・ベック トリートメントドライシリーズ」として、包装容器に「ランドリー・タイム」の文字を表示した商品の写真が掲載されており、その写真の下には、当該商品が「プロ仕様の洗剤」である旨の表記がされている。そして、同頁の中段には、「サンワードからのお知らせ INFORMATION」として、「■ ハイ・ベック通信2009年春夏号(2009-06-11)」及び「■ハイ・ベックDX5について(2009-06-11)」の表示があり、右下には、紙出力した日付と思しき「2013/04/10」の表示があるのが認められる。
また、上記ホームページ(写し)の「商品紹介 ハイ・ベックシリーズ」(乙第1号証の2)には、包装容器に「ランドリー・タイム」を表示した上記同様の商品の写真が掲載されている。
さらに、上記ホームページ(写し)の「会社概要」(乙第1号証の3)には、商号として「株式会社サンワード」、本社として「熊本市上通町2-30」、本社事業所として「東京都武蔵村山市榎2-84-5」、創業として「平成19年4月3日」、代表取締役として「山家宏揮」の記載があるほか、平成20年までの会社沿革等の記載が認められる。
3 請求人提出の証拠によれば、以下の事実が認められる。
(1)請求人の履歴事項全部証明書(甲第12号証)には、商号として「株式会社サンワード」、本店の住所として「熊本市上通町2番30号」、会社設立の年月日として「平成19年4月3日」、支店の住所として「東京都武蔵村山市榎二丁目84番地の5」及び代表取締役の氏名として「山家宏輝」が記載されている。
(2)「営業譲渡契約書」(甲第7号証)(以下、該営業譲渡契約を「本件契約」といい、該契約書を「本件契約書」という。)は、「株式会社サンワード(本社東京都日野市百草141番地の101 代表取締役小滝悦功)を甲と、株式会社サンワード(本社熊本県熊本市上通町 2-30 代表取締役山家宏輝)を乙とする平成19年8月31日付けの営業譲渡の契約に関するものであり、「甲の所有にかかる営業権を乙に譲渡するにあたって、以下の通り契約を締結する。」として、「第1条 甲は、甲の平成19年9月1日現在における貸借対照表、財産目録及び・・・甲の営業全部を営業譲渡実行日において乙に譲渡し、乙はこれを譲受する。 第2条 前条の営業譲渡実行日は、平成19年9月1日とし、本契約により譲渡する営業内容及び対価は、別紙目録通りとする。」等の記載が認められる。
また、本件契約書には、本件契約に基づき譲渡される商標について、商標権の移転登録がなされる前の請求人よる使用に関する定めはない。
(3)「営業譲渡目録」(甲第14号証)は、「平成19年8月31日付け営業譲渡契約書に基づき、上記目録のみならず、甲の販売する全商品の仕入れ・販売に関する全ての有形・無形の権利を乙に譲渡することを確認するものとする。」とし、目録中に「2.知的所有権に関するもの」として、「(8) 特許・実用新案・商標・意匠にかかわらず特許庁認可のもの全て」等の記載が認められる。
4 上記1ないし3で認定した事実により、商標法第50条第2項で規定する被請求人が証明すべき事項について、以下のとおり判断する。
(1)本件商標と使用商標及び使用商品について
本件商標は、前記第1のとおり、「ランドリータイム」の文字からなるものであるのに対し、上記2において表示された標章は、「ランドリー・タイム」であり、両者は、同一の称呼を生ずるものである上、外観構成において中黒「・」の有無の微差で酷似し、かつ、観念における異同は見いだせないから、これをもって、本件商標と社会通念上同一の商標が表示されたと認め得るものである。
また、乙第1号証の1の「ドライマークのお洗濯はハイベックで!簡単・キレイ・自動洗濯機で洗えて仕上がりもプロ並み。」及び「プロ仕様の洗剤」の記載に照らせば、包装容器に「ランドリー・タイム」の文字が表示された商品は、「洗濯用洗剤」ということができ、該商品は、本件商標の指定商品中、「せっけん類」の範ちゅうの商品と認められるものである。
したがって、上記行為は、商品の広告を内容とする情報に商標を付して電磁的方法により提供する行為に該当すると認められる。
(2)使用時期について
乙第1号証の1には「■ ハイ・ベック通信2009年春夏号(2009-06-11)」及び「■ハイ・ベックDX5について(2009-06-11)」の表示があるところ、そのうち、「2009-06-11」の表示は、「ハイ・ベック通信2009年春夏号」の表示に照らせば、「2009(平成21年)年6月11日」を表したものと解されるものであり、加えて、同号証の右下の「2013/04/10」の記載によれば、乙第1号証は、2013年(平成25年)4月10日に紙出力されたものと認められることから、乙第1号証に係る情報は、平成21年6月11日から平成25年4月10日まで継続して掲示されていたと推認することができるものである。そして、その期間は要証期間(平成22年3月7日ないし同25年3月6日)を含むものである。
(3)使用者について
「会社概要」(乙第1号証の3)における商号、本社の住所、本社の事業所の住所、創業時期、代表取締役の表示は、審判請求書又は請求人の履歴全部証明書(甲第12号証)の記載内容と一致するものであるから、商品「洗濯用洗剤」の使用者は、請求人と認められる。なお、乙第1号証のホームページが請求人に係るものである点については、当事者間に争いはない。
また、本件契約書(甲第7号証)によれば、営業譲渡実行日を平成19年9月1日として権利者から請求人へ営業権を譲渡するとされていることが認められ(なお、平成26年(行ケ)第10036号判決によれば、商標権者である株式会社サンワードは、本契約を追認している。)、その譲渡する営業内容として、「営業譲渡目録」(甲第14号証)には、「2.知的所有権に関するもの」として、「(8)特許・実用新案・商標・意匠にかかわらず特許庁認可のもの全て」の記載があることからすれば、本件商標は、本件契約書における譲渡の対象であるということができる。そして、商標登録原簿によれば、本件商標権は権利者から請求人へ移転の登録がなされていないので、請求人が商標権者であるということはできないが、請求人が、譲渡を受けた営業を行うに当たり、本件商標権の移転登録前といえども本件商標を使用できることは当事者間の当然の前提であったものと解される。しかも、本件契約の文言上、本件商標権の移転登録前の請求人による本件商標の使用を禁止する旨の明示的な定めはないこと、上記(1)において認定したところによれば、本件商標は実際には洗濯用洗剤に付されて使用されるものであることがうかがえるところ、このような商品は日々販売され得るものであることに照らすと、本件契約が、請求人に対し、本件商標権の移転登録がなされるまでの間、本件商標を付した商品の販売の停止等まで求めることを内容とするとは解し難い。その上、上記1ないし3の証拠によれば、請求人は、実際に、本件契約締結後、本件商標権の移転登録を経ることなく本件商標と社会通念上同一と認められる商標を使用してきたと認められることも併せ考えると、本件契約は、本件商標権の移転登録がなされるまでの間、権利者が、請求人に対し、少なくとも本件商標権についての通常使用権を許諾する旨の黙示の合意を含むものであったと認めるのが相当である。
なお、被請求人は、「意匠及び商標の使用中止を求める通告書」(乙第2号証)により、要証期間内である平成24年2月22日付けで、請求人に対し、それまで黙示で認めていた本件商標権の使用中止を求めた事実がある旨述べているが、要証期間は平成22年3月7日ないし同25年3月6日であるから、少なくとも該日付以前の要証期間内において、請求人は、本件商標の通常使用権者であったものと認められる。
(4)小括
上記(1)ないし(3)によれば、本件商標の通常使用権者は、本件審判の請求に係る指定商品中の「せっけん類」の範ちゅうの商品である「洗濯用洗剤」に、本件商標と社会通念上同一の商標と認められる商標を付したものを、要証期間内に、広告を内容とする情報を付して電磁的方法により提供する行為(商標法第2条第3項第8号)をしたということができるものである。
5 まとめ
以上のとおりであるから、被請求人は、要証期間、すなわち、本件審判の請求の登録前3年以内に、日本国内において、その取消請求に係る指定商品に含まれる商品について、本件商標(社会通念上同一と認められる商標を含む。)の使用を、通常使用権者がしていたことを証明したものと認められる。
したがって、本件商標は、商標法第50条第1項の規定により、その登録を取り消すことはできない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2015-01-06 
結審通知日 2015-01-08 
審決日 2015-01-28 
出願番号 商願平7-96596 
審決分類 T 1 31・ 1- Y (003)
最終処分 不成立  
特許庁審判長 林 栄二
特許庁審判官 中束 としえ
土井 敬子
登録日 1997-10-03 
登録番号 商標登録第3349914号(T3349914) 
商標の称呼 ランドリータイム 
代理人 笠原 克美 
代理人 有吉 修一朗 
代理人 森田 靖之 
代理人 西村 教光 

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