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審決分類 審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) 039
管理番号 1298293 
審判番号 取消2013-301021 
総通号数 184 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2015-04-24 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2013-11-20 
確定日 2015-02-09 
事件の表示 上記当事者間の登録第3126202号商標の登録取消審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 登録第3126202号商標に係る指定役務中の第39類「鉄道輸送に関する情報の提供,車両輸送に関する情報の提供,船舶輸送に関する情報の提供,航空機輸送に関する情報の提供」については,その登録は取り消す。 審判費用は,被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第3126202号商標(以下「本件商標」という。)は,別掲のとおりの構成からなり,平成4年9月24日に登録出願,第39類「主催旅行の実施,旅行者の案内,旅行に関する契約(宿泊に関するものを除く。)の代理・媒介又は取次ぎ,旅行業法に規定する旅程管理業務・当該旅程管理業務に付随して行なう旅行者の便宜となるサ?ビスの提供,空港等に設けられた建築物内において行う旅行者に対する送迎サ?ビスの提供,旅行情報の提供(宿泊に関するものを除く),旅行に関する相談,自動車の貸与,鉄道輸送に関する情報の提供,車両輸送に関する情報の提供,船舶輸送に関する情報の提供,航空機輸送に関する情報の提供」を指定役務として,平成8年3月29日に設定登録されたものである。

第2 本件審判請求後の手続の経緯
平成25年11月20日 審判請求書
平成25年12月10日 審判の請求の登録
平成26年 2月 3日 審判事件答弁書
平成26年 3月12日 審判事件弁駁書
平成26年 9月 9日 口頭審理陳述要領書(被請求人)
平成26年 9月19日 口頭審理陳述要領書(2)(被請求人)
平成26年10月 3日 口頭審理陳述要領書(請求人)
平成26年10月10日 証人尋問,口頭審理

なお,本件審判の請求の登録は,平成25年12月10日にされており,商標法第50条第2項に規定する「審判の請求の登録前3年以内」とは,同22年(2010年)12月10日ないし同25年(2013年)12月9日である(以下「要証期間」という場合がある。)

第3 請求人の主張
請求人は,結論同旨の審決を求め,その理由,答弁に対する弁駁の理由,口頭審理陳述要領書及び口頭審理における陳述を要旨以下のように述べ,証拠方法として,甲1を提出した。
1 請求の理由
本件商標は,その指定役務のうち「鉄道輸送に関する情報の提供,車両輸送に関する情報の提供,船舶輸送に関する情報の提供,航空機輸送に関する情報の提供」(以下「本件役務」という場合がある。)について,継続して3年以上日本国内において,商標権者,専用使用権者又は通常使用権者のいずれによっても使用されていないから,商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきである。
2 弁駁の理由
答弁書及びこれに添付の乙1ないし乙13からは,本件商標が審判請求登録前3年以内に,商標権者,専用使用権者又は通常使用権者によって使用されていることの証明はされていない。
3 口頭審理陳述要領書
(1)被請求人は,答弁書において,株式会社NTTデータテラノス(以下「NTTデータテラノス」という。)が使用許諾を受けて本件商標を使用していた旨を主張し,証拠を提出しているが,これは株式会社近畿日本ツーリスト北海道が本件商標を使用していた旨を主張するものであると解される。
しかし,被請求人は,口頭審理陳述要領書においては,本件商標の使用者は近畿日本ツーリスト株式会社(以下,この項では「近畿日本ツーリスト」という。)であると主張し,確認書(乙14)をさらに提出した。
このように,被請求人は,「誰が本件商標を使用していたのか?」という基本的な事項ですらその主張を変遷させており,これは本件商標の使用事実に関する主張・立証責任が果たされていないことを裏付けるものである。
また,被請求人は,本件商標が要証期間内に本件役務に使用されているといった漠然とした主張を展開しているにすぎず,本件商標が商標法第2条第3項各号のいずれ態様で「使用」されていたのか,その具体的な使用態様を一切明らかにしていない。
(2)被請求人の提出に係る証拠は,本件商標の使用を立証するものではない。
ア 確認書(乙14)は,本件審判手続開始後に作成されたものであるから,証拠としての信用性がない。また,その信用性が肯定されたとしても,これは,近畿日本ツーリストが本件商標の使用許諾を受けていたことを証するにすぎず,近畿日本ツーリストが要証期間内に本件役務に本件商標を使用していた事実を証するものではない。
イ 乙15,乙16も,本件の審判手続開始後に作成されたものであり,要証期間内の本件商標の使用の事実を示すものではない。
また,乙15の画面が乙11ないし乙13の画面が表示される前にディスプレイ上に表示されるものであるとの被請求人の主張を裏付ける客観的証拠は提出されていない。
さらに,商標法50条2項にいう「商標の使用」とは,登録商標が自他商品役務の識別機能を発揮するかたちで使用される必要があるところ,乙15及び乙16のディスプレイ本体に本件商標のシールが貼られ,ディスプレイ上に本件商標が表示されるとしても,これら本件商標と本件役務の関連性が明らかではなく,これらを本件役務の出所を表示する使用とはいえない。仮に,需要者がディスプレイ本体に貼られた本件商標を目にすることがあっても,需要者は,これをコンピュータの出所を示すものと認識するであろう。
また,商標としての使用が認められるためには,少なくとも需要者の目に触れる必要があることは当然であるが,被請求人の主張によれば,乙15及び乙16のコンピュータは,近畿日本ツーリストの事業所内に設置されているものであるから,これらのコンピュータ画面が要証期間内に需要者の目に触れたことは何ら立証されていない。
したがって,乙15及び乙16は,本件商標が要証期間内に使用されていたことを証明するものではない。
ウ 被請求人は,背面に本件商標が貼られたタブレット端末(乙17の1)は,一般の顧客に見せることがあるから,本件商標は本件役務に使用されていた旨主張するが,これは本件の審判手続開始後に作成されたものであり,要証期間内の本件商標の使用の事実を示すものではない。
仮に,需要者がタブレットの画面を見ることがあるとしても,ディスプレイ本体に本件商標が付されている場合と同様,タブレットの本体,しかも背面に本件商標が付されていたのでは,本件商標と本件役務との関連性が全く明らかにならず,これを本件役務の出所を表示するものとはいえない。
したがって,乙17の1は,本件商標が使用されていたことを立証するものではない。また,乙17の2ないし5は,いずれの写真にも本件商標は表示されておらず,立証趣旨が不明である。

第4 被請求人の答弁
被請求人は,本件審判請求は成り立たない,審判費用は請求人の負担とするとの審決を求め,その理由を,答弁書,口頭審理陳述要領書,口頭審理陳述要領書(2),口頭審理における陳述及び証人による証言を要旨以下のように述べ,証拠方法として,書証(乙1ないし乙17(枝番を含む。))及び人証(深野武文)を申出した。
1 被請求人について
被請求人は、大手旅行代理店であり、平成25年1月1日に前身の近畿日本ツーリスト株式会社(以下「旧近畿日本ツーリスト」という。)を商号変更した会社である。被請求人は、いわゆる持株会社であり、事業部門は予め設立されていたKNT団体株式会社及びKNT個人株式会社に分割譲渡され、前者が団体旅行事業を取り扱う近畿日本ツーリスト株式会社(以下「新近畿日本ツーリスト」という。)に、後者が個人旅行事業を取り扱う近畿日本ツーリスト個人旅行株式会社に商号変更され、その他複数の事業会社をぶらさげ、事業をしている(乙1、乙2、図1参照)。
2 本件商標の使用者
本件商標は,被請求人又は許諾会社により,本件役務について要証期間内に使用されている(答弁書4頁)。
本件商標の使用者は,新近畿日本ツーリストである。新近畿日本ツーリストは,平成24年9月3日に設立され,平成25年1月1日より,業務を開始した被請求人の子会社であり,被請求人の前身の旧近畿日本ツーリストから現在まで一貫して旅行関係の事業をしている。
本件に関していえば,分社化された平成25年1月1日の前後を通じて,新旧の近畿日本ツーリストは,本件役務を一貫して営んでおり,この業務をするに当たり,本件商標の使用について被請求人から許諾を受け,分社化の前後から現在まで本件商標を使用している。
被請求人と新旧の近畿日本ツーリストとは,持株会社と事業会社であって,両社社員の一部は兼務社員であり,東京の同一ビル内で業務をしており,実質的に一体といえるほどの関係にあるため,商標使用許諾契約の契約書は作成されていないので,その事情を説明した確認書(乙14)を提出する。
3 本件商標の使用時期,使用標章及び使用役務
(1)被請求人は,新旧の近畿日本ツーリストを通じて1990年10月以来現在まで本件商標を使用している(乙4,乙8の1,2,乙14)。
乙13の印刷日は本件審判請求後であり,乙15及び乙16の撮影日も平成26年8月12日であるが,その内容は,いずれも1990年10月以来現在まで,新旧の近畿日本ツーリストが一貫して本件商標を使用していることを立証するものである。
さらに,乙14の確認日は,平成26年8月8日,乙17の撮影日は平成26年9月18日であるが,その確認の内容は,要証期間内の2013年(平成25年)1月1日から現在に至るまでを立証するものである。
(2)被請求人が新旧の近畿日本ツーリストを通じて使用している商標(以下「使用標章」という。)は,本件商標と同一の商標である(乙14,乙15,乙4,乙3)。
乙15は,乙11ないし乙13が表示される前に表示される画面であるが,表示時間が短くすぐ消えてしまい印刷が困難であるので,その画面を撮影した写真を提出する。
また,乙16の1は,乙15の画面を表示する同一の端末機に乙11の画面を表示させた状態の写真であり,同様にして該端末機に乙12及び乙13の画面を表示させることができる(乙16の2A)。乙16の2Bは,かかる端末機を使用し,新近畿日本ツーリストの事業所で業務をしているときの写真である。
さらに,使用標章は,新近畿日本ツーリストが使用するコンピュータ(営業マンが使用するタブレットを含む。)に付されて使用されている(乙15,乙17の1?5)。
新近畿日本ツーリストの営業マンが使用するタブレット端末は,背面に使用標章が付されており(乙17の1),その画面には,乙17の2ないし乙17の5に示すように,本件役務に関する情報が表示される。
なお,乙17の2ないし5の画面に表示される上記情報は,乙11ないし乙13の情報とは別の例である。かかる画面は一般の顧客に見せることがあり,このようにして本件商標は,本件役務に使用されている。
(3)新近畿日本ツーリストが使用する役務は,乙13の画面に表示された役務,すなわち,本件役務である。
なお,乙7に記載の「使用役務」との関係についていえば,「メイト予約業務」の予約業務に付随する業務として,例えば,「鉄道輸送に関する情報の提供」が含まれる。
4 口頭審理における陳述
本件商標の使用役務ついての使用行為は,商標法第2条第3項第7号に該当するものである。
5 証人による証言
乙16の1の業務用パソコンは,事業所内に設置されているものであって顧客がその画面をみることはない。また,乙17の2のタブレット端末の画面に表示された「Kボックス」は,トラベルアイの抜粋であり,例えば,PDFファイルでインストールするなどして営業マンが使うものである。

第5 当審の判断
1 被請求人の主張及び提出に係る証拠及び証人による証言によれば,以下の事実が認められる。
(1)本件商標は,旧近畿日本ツーリストを商標権者として,平成8年3月29日に設定登録され,平成25年8月12日に,被請求人(商標権者)に登録名義人の表示の変更がされている。
そして,被請求人は,平成25年1月1日に旧近畿日本ツーリストを商号変更した,いわゆる持ち株会社であり,商号変更時における被請求人の子会社として,団体旅行を取り扱う新近畿日本ツーリスト,個人旅行を取り扱う「近畿日本ツーリスト個人旅行株式会社」などが存在する(乙1,乙2)。
(2)テラノス(TERANOS)は,被請求人が使用する総合旅行システムの名称であり(乙4,乙8の1及び2),同システムは,旧近畿日本ツーリストが1990年に導入し,2011年7月からは,「TERANOS-V」として運用されている(乙3,乙4;以下,被請求人が使用する当該システムを「被請求人システム」という。)。
そして,現在,その「被請求人システム」の管理・運営を行っているのは,NTTデータテラノスであるところ(乙4),NTTデータテラノスは,株式会社NTTデータの資本参加により,2006年10月に,旧近畿日本ツーリストの子会社である株式会社近畿日本ツーリスト情報システムから,商号変更された会社である(株式会社NTTデータ51%,旧近畿日本ツーリスト49%;乙5,乙6)。
また,1997年(平成9年)10月を作成日とする,旧近畿日本ツーリストと株式会社近畿日本ツーリスト情報システムが併記されたパンフレットには,本件商標とほぼ同じ態様の標章(使用標章)が表題として使用され,その説明書きに被請求人システムの概要等が記載され,そのうちの「トラベルアイ(旅行情報システム)」の項には,「旅行に関するあらゆる情報を提供する旅行情報システムで,愛称を『トラベルアイ』といいます。国内の旅行情報では,宿泊,のりもの,観光施設などの最新情報を端末機からいつでも取り出すことができます。・・・」との記載がある(乙3)。
また,NTTデータテラノス作成の会社案内(CORPORATE PROFILE)にも,その表題として,使用標章が表示されている。
(3)乙13,乙16の2Aは,被請求人システムの「TERANOS-V」の画面(乙12)から遷移した「トラベルアイ」の画面と推認し得るところ,これからは,「近畿日本ツーリスト」の文字や「運輸機関検索結果」として,「車両情報」,「路線情報」等の表示が確認できる。
そして,乙14ないし乙16(枝番を含む)は,被請求人の主張によれば,新近畿日本ツーリストが事業所において使用する業務用パソコンの画面とするものであり,乙15の画面に使用標章が表示されている。
(4)乙17の1ないし5は,被請求人の主張によれば,新近畿日本ツーリストの営業マンが使用するタブレット端末とするものであり,その端末のふた(乙17の1)に使用標章を表示したシールが張られている。
そして,その端末には,「近畿日本ツーリスト」「K-BOX」「検索」の表示(乙17の2),その画面から遷移したと推認し得る「フライトスケジュール検索・旅程作成」とする入力画面,その検索結果である「ニッポンレンタカー」「SYMPHONY TOKYO BAY PARTY CRUISE」と題する画面が表示されている(乙17の3?5)。
(5)証人は,「乙16の1の業務用パソコンは,事業所内に設置されているものであって顧客がその画面をみることはない。」,また,「乙17の2のタブレット端末の画面に表示された『Kボックス』は,トラベルアイの抜粋であり,例えば,PDFファイルでインストールするなどして営業マンが使うものである。」と証言した。
2 判断
前記1で認定した事実によれば,テラノス(TERANOS)は,被請求人及びその子会社が使用し,NTTデータテラノスが管理・運営する総合旅行システム(被請求人システム)の名称であり,そのシステムは,「トラベルアイ」と称する鉄道車両や船舶の運行状況等の情報を検索する機能を有するものである。
新近畿日本ツーリストは,被請求人の子会社であって,本件商標権の通常使用権者と認められるところ,現近畿日本ツーリストは,被請求人システムを使用し,主催旅行の実施や旅行に関する契約(宿泊に関するものを除く。)の代理・媒介又は取次ぎ等の業務を行っていること,その主催旅行の実施等の業務を行うに当たり,被請求人システムを使用して得た情報,例えば,「鉄道輸送に関する情報」「車両輸送に関する情報」等の情報を顧客に提供していること(以下「本件情報の提供」という。)が推認し得る。
しかしながら,新近畿日本ツーリストが,本件商標を使用して,本件情報の提供を顧客に提供したとする具体的事実を示す証拠はなく,また,新近畿日本ツーリストが行う本件情報の提供が,顧客から対価を得るなど,独立して商取引の目的としてなされたことも確認できない。
そして,被請求人は,情報の提供を新近畿日本ツーリストの行う予約業務に付随する業務であると自認しているところである。
また,被請求人は,新近畿日本ツーリストが使用するタブレット端末の背面に表示された使用標章について,端末の画面を顧客に見せることがあるとして,これを使用標章の使用であると主張する。
しかしながら,顧客が端末画面を見ることがあるとしても,タブレット端末の背面に貼られた使用標章を新近畿日本ツーリストが提供する役務(本件情報の提供)の出所表示などとして認識するとはいい難く,むしろ,タブレット端末自体に付された標章であると認識するとみるのが自然である。
さらに,乙15のパソコン画面も,新近畿日本ツーリストの職員が事業所で使用するものであって,これを本件情報の提供に係る使用標章の使用とみる余地はない。
したがって,被請求人提出の全証拠及び証人による証言を参酌しても,使用標章は,本件情報の提供,すなわち,本件役務について使用されたものということはできない。
3 むすび
以上のとおりであるから,被請求人は,本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において商標権者,専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが請求に係る指定役務について,本件商標を使用していたことを証明したものと認めることはできない。また,被請求人は,本件商標を使用していないことについて正当な理由があることも明らかにしていない。
したがって,本件商標の登録は,商標法第50条の規定により,その登録を取り消すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
別掲 別掲
本件商標

審決日 2014-12-26 
出願番号 商願平4-201392 
審決分類 T 1 32・ 1- Z (039)
最終処分 成立  
前審関与審査官 小川 きみえ 
特許庁審判長 小林 由美子
特許庁審判官 渡邉 健司
大森 健司
登録日 1996-03-29 
登録番号 商標登録第3126202号(T3126202) 
商標の称呼 テラノス 
代理人 砂金 伸一 
代理人 浅野 勝美 
代理人 草深 充彦 
代理人 山本 健策 

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